(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。なお、
図1から
図5においては苗移植機の前進方向に向かってそれぞれ左右、前後という。
【0026】
従来の苗移植機は、その側面図および平面図を
図1、
図2にそれぞれ示すように、左右の前輪10と左右の後輪11とによる走行部および、エンジン20と一体に変速動力を伝動するミッションケース12、左右の前輪10を伝動支持する左右の前輪ファイナルケース13、左右の後輪11を伝動支持する左右の後輪ギアケース18等の伝動部を備えて圃場走行可能に走行車体2を構成し、この走行車体2の後部に昇降リンク機構3によって昇降動作可能に設けられて苗株の植付けを行う苗植付装置4とを備えて構成される。
【0027】
苗移植機の動力伝達経路は以下のようになる。エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
【0028】
走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13に伝達されて前輪10を駆動すると共に、残りが後輪ギアケース18に伝達されて後輪11を駆動する。左右の前輪ファイナルケース13は、ミッションケース12の側方で左右の前輪10を伝動支持し、左右の後輪ギアケース18は、機体左右側に左右の後輪11を軸着する車軸を機体左右側に突出させて設け、該ミッションケース12から左右それぞれの変速動力を受ける。
【0029】
作業者は主変速レバー19を操作することで油圧式無段変速装置23を前進7段から中立位置を経て後進4段まで連続的(無段階的)に変速でき、副変速レバー(不図示)を操作することで歯車式変速装置内の周知の副変速装置により「路上走行モード」と「植付作業走行モード」とを変更することができる構成である。なお、上記の油圧式無段変速装置23の操作段階は一例であり、段数をより細かく設定可能としてもよく、あるいは段数を大まかに設定可能としてもよい。
【0030】
次に、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25内部の植付クラッチ機構に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付装置4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構(不図示)によって施肥装置5へ伝動される。この苗植付装置4は、機体後部の植付伝動軸26から動力を受ける伝動ケース50を備え、苗載台51に作業者が苗を供給するとともに、植付条別に並列配置した苗植込杆52で載置された苗株の圃場への植付けを行う。
【0031】
上記苗植付装置4の構成は以下のようになる。
本件に示す苗移植機の走行車体2の後方に設けられた苗植付装置4は、4条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、そして伝動ケース50から後方に延びる植付伝動ケース50a,…の各後端両側部に設け、苗取出口51a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植込杆52、…等を備えている。苗植付装置4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらフロート55、56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55、56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植込杆52、…により苗が植付けられる。各フロート55、56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ昇降油圧シリンダを制御する油圧バルブを切り替えて苗植付装置4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。苗植付装置4には整地装置の一例であるロータ27(センターロータ27a,サイドロータ27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付装置4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0032】
苗植付装置4を昇降させる昇降リンク機構3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41を備えている。これらリンク40,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形の後部フレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付装置4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付装置4がローリング自在に連結されている。そしてメインフレーム15に設けた昇降油圧シリンダを油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付装置4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。なお、後部フレーム42と、上リンク40及び下リンク41との間には昇降検知部材であるポテンショメータを配置し、苗植付装置4の上昇または下降を検知している。
【0033】
苗移植機の作業者周辺の構成は以下のようになる。
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10を操向操作するハンドル34が設けられている。ハンドル34の右側には、主変速レバー19とその下方に副変速レバー(不図示)を設けている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になって畦クラッチペダル等が配置されている。フロアステップ35は一部格子状になっており、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥がフロアステップ35上に留まらず、圃場に落下する構成としている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0034】
施肥装置5は、走行車体2の後上部に設け、施肥ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート55,56の左右両側に取り付けた施肥ガイドまで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体64、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0035】
走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載せ台38、38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられ、予備苗載せ台38、38は走行車体2のフロアステップ35の下部に基部側を配置した支持フレーム49に支持される。
【0036】
苗植込杆52の構成及び動作について、
図3から
図5を用いて説明する。
図3は従来の実施形態にかかる苗植込杆52周辺の側面図である。複数の苗植込杆52のうち、図の左側に位置するものは断面図として示すと共に、その先端の軌跡Pを示す。
図4にはロータリケース110及び苗植込杆52の後方からの断面図を、
図5には植付伝動ケース50aに取付けるロータリケース110の側方からの断面図を示す。
【0037】
植付伝動ケース50aの後端部にはロータリケース軸111が回転自在に支承されており、この軸の左右突出部にロータリケース110の中央部を一体回転するよう固定して取り付け、さらにこのロータリケース110の両端部に植込杆用軸受121、…によって植付ケース軸119、119を回転自在に支承し、これら両植付ケース軸119、119のそれぞれに植込杆ケース120、120を固定して取り付けている。植込杆ケース120には、苗植付体としての苗取部材101と、苗押出体としての押出部材102とが設けられている。苗取部材101は、先端側が鋭利に形成された二股のフォーク状をしている。
【0038】
ロータリケース110の内部には、ロータリケース軸111の外周部に嵌合して植込杆ケース120と一体で非回転な太陽ギヤ112と、この太陽ギヤ112に噛合する遊星ギヤ113、113と、この遊星ギヤに噛合する植付ギヤ114、114とからなるギヤ機構が収納されている。太陽ギヤ112は、太陽ギヤ用軸受122によってロータリケース110に支持されている。遊星ギヤ113は、遊星ギヤ軸115に取り付けられ、ロータリケース110に対し遊転するようになっている。また、植付ギヤ114は、キーによって植付ケース軸119に一体回転するように取り付けられている。
【0039】
ロータリケース軸111が駆動回転すると、ロータリケース110が一定方向に回転し、太陽ギヤ112の回りを植付ギヤ114、114が公転するとともに、1回公転する間に公転方向とは逆向きに植付ギヤ114、114が1回自転する。これにより、植付ギヤ114、114と一体に設けられている植込杆ケース120、120が一定姿勢のまま所定の軌道上を移動する。
図3におけるPは苗取部材101の先端軌跡である。各ギヤ112、113、114は偏心ギヤになっていて、植込杆ケース120の移動速度は苗取出位置及び苗植付位置付近では遅く、両位置間を移動する時は速くなるように調整している。
【0040】
また、ロータリケース110の内部には、キーにて植付ケース軸119に一体回転するように取り付けた制動カム116と、この制動カム116の外周面に当接する制動アーム117と、この制動アーム117を制動カム116に押し付けるスプリング118とからなる位相ずれ防止機構が設けられている。制動カム116は
図5に示すような形状をしており、植込杆ケース120が苗取出位置及び苗植付位置にある時に植付ギヤ114の回転を制動し、各ギヤ間のバックラッシュを吸収して、苗分離及び苗植付の動作が正確に行われように作用する。
【0041】
苗の押出部材102の押出体102aは、苗取部材101に近い側が先割れし、正面視で縦U字型形状をしており、植込杆ケース120に摺動自在に支持された押出ロッド102bの先端部に苗取部材101の裏面に近接させて取り付けられ、押出ロッド102bの作動により苗取部材101の先端側へ突出、及び苗取部材101の根元側へ後退するようになっている。
【0042】
植付杆ケース120内には、押出部材102の作動機構が収容されている。押出カム123は、植付杆ケース120内に突出したロータリケース110のボス部の内周部に一体的に嵌合し、植付ケース軸119及び植込杆ケース120に対し回転自在に設けられている。この押出カム123の外周面に摺接するカムアーム124は、アーム軸125に回動自在に軸支されている。また、アーム軸125にはカムアーム124と一体に回動する押出規制アーム126が軸支されていて、この押出規制アーム126の先端部と前記押出ロッド102bのケース内部側の端部とが継手部材を介して連結されている。そして、この継手部材を介して押出ロッド102bを苗取部材突出側に付勢するように押出スプリング127が設けられている。
【0043】
植付ケース軸119に対し押出カム123が相対的に回転し、押出カム123とカムアーム124とからなるカム機構の働きで、押出規制アーム126が揺動する。押出スプリング127を圧縮する位置に押出規制アーム126があるときは、押出体102aが後退した状態にある。その位置から押出規制アーム126が回動して押出スプリング127の圧縮が緩和されると、押出スプリング127の弾発力で押出ロッド102bが押し出され、押出体102aが突出する。
【0044】
苗植付杆52は植付作業時には次のように作動する。ロータリケース軸111が駆動回転することにより、ロータリケース110に取り付けられている一対の植付杆ケース120、120が、苗植込杆52が先端軌跡Pを描く同一軌道上を互いに1/2周期の間隔を保ったまま一定姿勢で移動する。苗取出位置で苗植込杆52が苗取出口51aを通過し、苗載置台51の苗を一株分離して取り出す。このとき、押出体102aは後退した状態にある。植込杆ケース120が下動して苗植付位置まで移動すると、押出体102aが突出し、苗取部材101が保持している苗の土部を下向きに押すことにより、苗を苗取部材101から押し出して圃場に植付ける。その後、植込杆ケース120が下動時よりも後方の軌道を通って上動するとともに、押出体102aが後退する。
【0045】
図6、
図7には本発明の第一実施形態にかかる苗植付装置4に設けた苗植込杆52先端を示す。
図6は苗押出部材102が後退位置にあるときの状態を示し、
図6(a)は平面図、
図6(b)は側方からの断面図を示す。
図7は苗押出部材102が前進位置にあるときの状態を示し、
図7(a)は苗取を行う先端の方向から見た正面図、
図7(b)は側方からの断面図を示す。なお
図6、
図7においては苗取部材101を基準とし、その上方から見た図を平面図、側方から見た図を側面図、苗取を行う先端から見た図を正面図とし、左右と前後については、
図6の左手を前方向とし、この前方向に向かって左右とする。
【0046】
苗植込杆52には、苗を挟み取るために二股形状をした苗取部材101と、この苗取部材101の下方に、押出部材102の押出体102aを配置する。そして、苗取部材101と共に苗を保持する苗保持部材103を設ける。この苗保持部材103は、第一実施形態では苗取部材101とは別部材とし、棒形状の原材料を折り曲げて作製し、苗取部材101に沿う形状とする。他の実施形態においては苗取部材101と苗保持部材103とが一体となった構成とすることもできる。
【0047】
即ち二股形状を構成する苗取部材101の二本の棒を含む面の下方に位置し、これら二本の棒と略平行な棒状体が苗保持部材103である。
【0048】
棒形状の苗保持部材103の一方では、部材を湾曲させて円環を作成し、この円環に苗取部材101を植込杆ケース120に固定している一本のボルトを差し込み、苗取部材101の上側で、苗取部材101と共に締上げることにより植込杆ケース120に固定する。なお、従来苗取部材101は、現在のボルトの前方に位置する別のボルトを加えた二本のボルトで固定されており、二本のボルトで固定する従来機種に合わせるために、前側のボルト穴の上方を回避する形態とする。
【0049】
苗保持部材103は二股形状の分岐部で、下方に向けて大きく、例えば60度程度折り曲げ、苗取部材101の下端周辺で、前の角度よりも小さい角度、例えば45度程度上方に向けて折り曲げる。このような構成とすることで二股部分の間を通過し、苗取部材101の下方に位置するようになると共に、二股部分の分岐開始部から前端に向けて下方に15度程度傾斜する。そして、更に苗保持部材103の前端部分103aを15度よりも小さい10度程度で下方に屈曲させ、前端部分103aは25度程度で傾斜するようにする。加えて、苗保持部材103の前端は、苗取部材101の前端よりも後方に位置するようにする。苗保持部材103を二股形状の分岐部で折り曲げたことで、苗保持部材103は、二股部分に接触する構成とでき、苗保持部材103の左右位置がずれるのを防止できる。
【0050】
苗保持部材103は、ばね鋼などにより製作され、押出部材102が前進したときには、その押出部材102を構成する押出体102aに設けた溝の底に接触する。押出体102aは正面視で上方に向け開口している縦U字形状であり、苗保持部材103は、その谷底に接し、そしてその谷底よりも上方に位置する。
【0051】
苗植込杆52に、苗取部材101と共に苗を保持する苗保持部材103を設けることにより、苗取部材101と苗保持部材103とで苗を押えることができるので、苗を取ったときに苗を束ねる土が崩れても、苗が苗取部材101から落下することを防止できる。
【0052】
苗保持部材103が、苗取部材101に沿う棒形状であり、この棒形状の他方を苗取部材101の二股部分の間を通過させて、苗取部材101の下方に位置させたことにより、苗保持部材103と苗取部材101が苗の下部を三点で保持することができる。これにより、苗を取ったときに苗を束ねる土が崩れても、苗が苗取部材101から落下することが防止でき、欠株が発生することが防止され、苗の植付精度が向上する。
【0053】
また、苗保持部材103が苗取部材101に沿う棒形状であり、苗保持部材103の前端は、苗取部材101の前端よりも後方に位置することにより、苗保持部材103が苗取部材101の前後幅及び左右幅内に収まり、苗を植付ける際に圃場に余分な穴が形成されることを防止できる。これにより植え付けた苗が倒れることがなく、苗の生育が安定する。
【0054】
苗保持部材103が、二股部分の分岐開始部から前端に向けて下方に傾斜することにより、苗取部材101と苗保持部材103とが平行である場合に比較して前方において苗取部材101と苗保持部材103との上下間距離を大きくすることができ、苗の挟み込みが容易になると共に、苗保持部材103が苗マットの苗の下部に入り込んで苗を傷つけることが防止される。加えて後方では苗取部材101と苗保持部材103との上下間距離が短くなり、苗の保持がより強固となる。
【0055】
また、苗保持部材103の前端部分が、分岐開始部での傾斜角よりも小さい角度で更に下方に屈曲していることにより、更に苗の挟み込みが容易になる。
【0056】
加えて押出部材102が、前方へ押し出されたときに、苗保持部材103の前端が、正面視で上方に向けて開口している縦U字形状を形成している押出体102aの谷底よりも上方に位置することにより、押出体102aにより確実に苗を押し出すことができ、苗の植付精度が向上する。
【0057】
図8には、本発明の第二実施形態にかかる苗植付装置4に設けた苗植込杆52先端を示す。
図8(a)は平面図、
図8(b)は側方からの断面図、
図8(c)は底面図を示す。なお、
図8においても
図6、7と同様苗取部材101を基準として前後左右上下とする。また、
図8(c)は、押出体102aのみを表示する。
【0058】
第二実施形態にかかる押出体102aは、第一実施形態と同じく正面視で上方に向けて開口している縦U字形状を形成している。これに加えて第二実施形態にかかる押出体102aは、平面視(底面視)で前端に向かって開口している横U字形状を形成すると共に、縦U字形状の左右の押出側壁102c、102cの前端部の上部を切り欠く。前端部の上部を切り欠くことで、押出側壁102cの上部の前端が、押出体102aの前端よりも後方に位置する。そして、苗保持部材103の前端が、横U字形状の谷部を通過し押出体102aよりも下方に位置するように構成する。
【0059】
押出体102aが、平面視で前端に向かって開口している横U字形状を形成し、苗保持部材103の前端が、横U字形状の谷部を通過させて押出体102aよりも下方に位置することにより、前方において苗取部材101と苗保持部材103との上下間距離を大きくとることができる。これにより、苗の挟み込みが容易になると共に、苗保持部材103が苗マットの苗の下部に入り込んで苗を傷つけることが防止される。加えて後方では苗取部材101と苗保持部材103との上下間距離が短くなるので、苗の保持がより強固となる。
【0060】
押出体102aが、正面視で上方に向けて開口している縦U字形状を形成しており、この縦U字形状の左右の押出側壁102cの前端部の上部を切り欠いたことにより、苗取部材101と苗保持部材103とで苗を保持する際に押出体102aの前部に苗が接触しにくくなり、苗が確実に保持される。これにより、苗の植付精度が向上し、生育が安定する。
【0061】
図9には、本発明の第三実施形態にかかる苗植込杆52の後方からの断面図を示す。苗植込杆52とロータリケース110との取付角を調整する際には、手動で苗植込杆52を回転させる必要がある。この際従来は植付伝動軸26からの伝動を切り、手動で苗植付方向に苗植込杆52を回転させるのみであり、逆方向に苗植込杆52を回転させることはできなかった。これは押出規制アーム126が、非円形である押出カム123に接触するためである。そこで第三実施形態では、苗植込杆52の植込杆ケース120の上部、詳細には、押出部材102を構成する押出ロッド102bの軸線よりも側面視で上方に、押出規制アーム126の回動動作を規制する係止部材104を設け、更にその係止部材104を苗植込杆52の外側から抜き差しできる構成とした。係止部材104には、ピン形状であり、これに嵌装する解放用スプリング104aを設け、通常時は係止部材104が植込杆ケース120内部に入り込むことはない。また、第三実施形態では、係止部材104は、側面視で押出ロッド102bの軸線よりも上方に設けたが、下方に設けることも可能である。
【0062】
苗植込杆52に押出規制アーム126の回動運動を規制する係止部材104を外側から差し込み、苗植込杆52の逆転方向の回転動作を可能とする構成としたことにより、苗植込杆52の角度調節等の作業をする際に苗植込杆52を逆転方向に回転させながら作業をできる。これにより苗取量を変更する場合や、メンテナンスの場合の角度調節作業等が容易となり、作業能率が向上する。
【0063】
また、係止部材104を苗植込杆52の外側から差し込む構成としたことにより、容易に苗植込杆52の逆転方向の回転動作を可能とできる。
【0064】
図10には、第四実施形態にかかるマーカ棒周辺を示す。
図10(a)は平面図、
図10(b)は側面図である。第四実施形態にかかるマーカ棒は、鉛直部分だけでなく、走行車体2の前後方向に沿うマーカ棒水平部105aを設ける。そしてこのマーカ棒水平部105aを折りたたみ可能な構成とする。
【0065】
従来の鉛直部分のみから構成されるマーカ棒では、走行車体2の中央の位置を線引きマーカで事前に引いたマークに合わせ、走行車体2の横位置を合わせることが可能であったが、その際の走行車体2姿勢を知ることが困難であり、植付を継続すると植付位置が最初に合わせた位置からずれることがあった。本件においては、上記マーカ棒水平部105aがあることにより、作業者が走行車体2の姿勢を知ることができ、最初に合わせた位置からずれることがなくなり、的確な位置に苗を植え付けることができる。
【0066】
図11には、第五実施形態にかかる株間シフトレバー130の正面図と、A矢視図を示す。
図11(a)は、株間シフトレバー130が伸長した状態を実線で、収縮した状態を破線で示した正面図を示し、
図11(b)は
図11(a)にあるA矢印の方向から見た株間シフトレバー130を示す。走行方向に沿う株間は一定に保持する必要があるため、走行車体2の走行した距離に依存する構成とし、走行速度には依存しない構成とする。しかし、移植物の種類や圃場の状態によってこの株間を変更する場合がある。この場合、フロントカバー32等から突出した株間シフトレバー130により変更することにより行う。
【0067】
第五実施形態にかかる株間シフトレバー130は、レバー支点134の軸心を中心に回動する内棒131と、この内棒131に嵌装する外筒132と、外筒132に固着し、外筒132の姿勢保持を補助するL字サポータ133とから構成する。株間シフトレバー130を、レバー支点134を中心に
図11(a)の前後方向に回動することで、
図11(a)の右に位置するシフト変換機を動作させ、株間を変更する。なお株間を変更する場合株間シフトレバー130は伸長した状態で使用し、使用が終わると株間シフトレバー130は収縮した状態にして作業者が誤って操作することがないようにする。
【0068】
内棒131は、鋼製の丸断面の棒材を折り曲げて作製し、レバー支点134に溶接する。外筒132は、内棒131に挿入可能な円形の中空孔を有する円筒形状であり、その上端部を中心に向かって折り曲げた構成とする。内棒131に対し外筒132が嵌りこむ構成であることから、株間シフトレバー130を伸長した場合でもレバー全体の剛性を確保できる。また折り曲げた上端部があることにより外筒132の下方への移動を規制できる。
【0069】
外筒132には、内周を外筒132の外周形状に合わせた半円筒形状のL字サポータ133を下部に溶接により固着する。L字サポータ133は、レバー支点134に近いサイドで内部に向かって折り曲げる構成を採用し、この折り曲げた部分と、外筒132に固着する部分とでL字を構成する。その折り曲げた部分には、内棒131が挿入可能な孔を設け、内棒131に嵌装している。L字サポータ133を設けることにより、株間シフトレバー130を伸長した場合でも、外筒132と内棒131との間のガタを少なくできると共に、L字サポータ133がレバー支点134と接触することで、外筒132の下方への移動を規制できる。
【0070】
内棒131には、内棒131の軸心に垂直な方向に外筒132の下方への移動を規制する位置決めピン136を設ける。そして、この位置決めピン136と、L字サポータ133の折り曲げ部分との間に、内棒131に嵌装する収納用スプリング135を設ける。また、L字サポータ133にはこの位置決めピン136と係合するためのL字状の切欠き137を設ける。
【0071】
収納用スプリング135を設けることにより、伸長した状態の株間シフトレバー130を自動的に収縮状態にすることができる。また、L字サポータ133に設けたL字状の切欠き137に位置決めピン136を係合することにより、株間シフトレバー130を伸長した状態で保持することができる。なお、このL字状の切欠き137は、L字サポータ133の両サイドに設けることも可能である。この場合、外筒132をどちらの方向に回転させても係合できる。