(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
まず、
図1乃至
図8を参照して、太陽光発電システムの構成、および、期待発電量を推定する発電電力推定モデルに基づく異常判断に関する概略的な説明を行う。
【0017】
図1は、太陽光発電システムの構成例を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、太陽光発電システム11は、太陽光発電モジュール12、電力計測部13、インバータ14、日射計15、および、異常判断部16を備えて構成される。そして、太陽光発電システム11は、太陽からの日射(太陽エネルギー)を入力として、日射を電力(電気エネルギー)に変換し、系統または負荷へ電力を出力する。
【0019】
太陽光発電モジュール12は、複数枚の太陽電池パネルを直列で配線した太陽電池ストリングが、所定の出力が得られるように並列に接続されて構成された太陽電池アレイにより構成され、日射強度に応じて発電した電力を出力する。
【0020】
電力計測部13は、太陽光発電モジュール12およびインバータ14を接続する電力線に配置され、太陽光発電モジュール12により発電された発電電力を計測する。
【0021】
インバータ14は、太陽光発電モジュール12から出力される電力をDC/AC(Direct Current / Alternating Current)変換して、系統または負荷へ出力する。
【0022】
日射計15は、太陽光発電モジュール12の近傍に配置されており、太陽から照射される日光の日射強度を計測する。
【0023】
異常判断部16は、所定の単位時間(例えば、秒または分)ごとに、電力計測部13により計測された発電電力を読み出して、発電電力の時間的な変化を記録した発電電力データを取得する。同様に、異常判断部16は、所定の単位時間ごとに、日射計15により計測された日射強度を読み出して、日射強度の時間的な変化を記録した日射強度データを取得する。異常判断部16は、太陽光発電システム11で得られる発電電力が日射強度に追従して変化することに基づき、日射強度データおよび発電電力データを用いて、太陽光発電システム11に異常が発生したか否かを判断する。
【0024】
例えば、
図2には、異常判断部16が取得した日射強度データおよび発電電力データについて、ある7日間(一週間)の例が示されている。
【0025】
図2Aは、異常判断部16が取得した日射強度データを示しており、縦軸は日射強度を示し、横軸は計測日時を示している。異常判断部16は、日射計15により計測された日射強度から、
図2Aに示すように変化する日射強度データを取得する。
【0026】
図2Bは、異常判断部16が取得した発電電力データを示しており、縦軸は発電電力を示し、横軸は計測日時を示している。異常判断部16は、電力計測部13により計測された発電電力から、
図2Bに示すように変化する発電電力データを取得する。
【0027】
そして、異常判断部16は、1日ごとの日射強度を積算することで1日当たりの日射量を算出し、1日ごとの発電電力を積算することで1日当たりの発電電力量を算出する。
【0028】
図3を参照して、異常判断部16により算出された日射量および発電電力量と、日射量(即ち、太陽光発電モジュール12に照射される太陽光のエネルギー量)から求められる太陽光発電モジュール12が発電することが期待される期待発電電力量とについて説明する。
【0029】
図3Aには、異常判断部16により算出された日射量および発電電力量が示されており、左側の縦軸は発電電力量を示し、右側の縦軸は日射量を示し、横軸は計測日を示している。
図3Aに示されている日射量は、
図2Aに示した日射強度を日ごとに積算して求められた値であり、発電電力量は、
図2Bに示した発電電力を日ごとに積算して求められた値である。
【0030】
このように日射量および発電電力量を管理することによって、日射量が高いから発電が良好であるのか、日射量が低いから発電が良好でないのかなど、日射量に対する発電電力量の妥当性の判断を定性的に行うことができる。
【0031】
図3Bには、
図3Aに示されている日射量および発電電力量に、発電されることが期待される期待発電電力量が加えられて示されている。
【0032】
図3Bに示すように、例えば、2日目および6日目における日射量に対する発電電力量のように、日射量が低いと、その日射量に応じて低い電力量しか発電されていないことより、日射量に対する発電電力量は妥当性であると判断することができる。このように、日射量および発電電力量の集積データを用いて、発電低下の基準となる期待発電電力量を推定することにより、日射量に対する発電電力量の妥当性を判断すること、即ち、期待通りに発電できているか否かを判断することができる。
【0033】
このような期待発電電力量の推定に用いられる発電電力推定モデルは、日射強度および発電電力の高い相関性に基づいて構築される。
【0034】
図4は、日射強度および発電電力の相関関係の一例を示す図である。
図4において、縦軸は発電電力を示し、横軸は日射強度を示している。
【0035】
図4では、例えば、
図2に示した日射強度および発電電力がプロットされている。このように、日射強度および発電電力には高い相関性があることが示されており、日射強度(x)から発電電力(y)を推定する関数(y=f(x))が発電電力推定モデルとして求められる。具体的には、
図4に示すような線形回帰式(y=αx+β)が発電電力推定モデルとして求められる。
【0036】
そして、このようにして求められた発電電力推定モデルを使用して、異常判断部16は、期待発電量を推定し、推定された期待発電電力量と、実際に計測された発電電力量との差分を発電ロスとして算出する。例えば、異常判断部16は、期待発電電力量を推定する対象となる対象日の前日における日射強度(x)を発電電力推定モデルに入力して、期待発電電力(y’)を算出する。
【0037】
例えば、
図5Aに示すような日射強度を発電電力推定モデルに入力することにより、
図5Bに示すような期待発電電力量が算出される。
【0038】
その後、
図5Cに示すように、対象日における発電電力が実際に計測されると、異常判断部16は、発電電力量と期待発電電力量との差分を、発電ロス(=発電電力量−期待発電電力量)として算出することで、太陽光発電モジュール12に異常が発生したか否かを判定することができる。例えば、異常判断部16は、発電ロスがほぼゼロである(例えば、所定の閾値以下)である場合に、太陽光発電モジュール12に異常が発生していない、即ち、太陽光発電モジュール12が正常であると判断することができる。
【0039】
図6を参照して、太陽光発電モジュール12に異常が発生したか否かの判断について説明する。
【0040】
図6には、異常判断部16が集積した集積データの例が示されている。
図6において、左側の縦軸は、発電電力量、期待発電電力量、および発電ロスを示し、右側の縦軸は、日射量を示し、横軸は、計測日を示している。
【0041】
例えば、
図6Aに示すように、発電ロスがほぼゼロである場合には、異常判断部16は、太陽光発電モジュール12が正常であると判断する。
【0042】
一方、太陽光発電モジュール12が有する機器が故障すると、
図6Bに示すように、発電ロスが発生し、異常判断部16は、太陽光発電モジュール12に異常が発生したと判断することになる。
図6Bの例では、5日目において異常が発生したと判断される。
【0043】
ところが、太陽光発電モジュール12が有する機器が故障していないにもかかわらず、日射量が十分にあるのに、期待通りの発電電力量が得られないことがある。
【0044】
即ち、
図6Cに示すように、発電ロスが検出された4日目以降の6日目に着目すると、6日目の日射量は4日目と同程度であって、6日目には発電ロスが発生していないことより、太陽光発電モジュール12が有する機器は故障していないと判断される。逆に言うと、太陽光発電モジュール12が有する機器は故障していないのに、6日目と同様の発電を行うことができる程度の日射量があったのにもかかわらず、4日目には期待通りの発電を行うことができなかったということができる。このことより、4日目に発生した発電ロスは、機械故障以外の要因であると推定される。つまり、4日目の発電ロスから異常が発生したと判断することは、誤検出であるということができる。
【0045】
このように、太陽光発電モジュール12が有する機器が故障していないにもかかわらず、同程度の日射量で発電量に差異が発生するのは、日射の日内変動の影響により、1日の日射量に対して、発電電力量が低くなることがあると推定されるためである。
【0046】
例えば、
図7には、ある2日間において測定された、日射強度、太陽光発電モジュール12から出力される直流電力、およびインバータ14から出力される交流電力が示されている。
【0047】
例えば、
図7には、1日目の午前中において、日射強度と直流電力および交流電力とがずれていることより、日射の日内変動に発電が追従できていないことが示されている。つまり、1日目の午前中の時間帯の日射と発電との相関性が著しく低くなる。また、2日目には、日射強度と直流電力および交流電力とが略一致していることより、日射の変動に発電が追従できていることが示されている。つまり、2日目は、一日を通して日射と発電との相関性は著しく高くなる。
【0048】
このように、相関性が著しく低い日射強度および発電電力を、
図4に示したようにプロットすると、そのような相関関係から求められる発電電力推定モデルの正確性が低下することになる。
【0049】
即ち、
図8には、相関性が著しく低い日射強度および発電電力も含めてプロットされた日射強度および発電電力の相関関係が示されている。
【0050】
図8に示すように、日照不足や日射の日内変動(気象の激しい変化)などが要因となって、日射強度および発電電力の相関関係にノイズが発生している。そこで、このようなノイズを排除することにより、発電電力推定モデルの正確性を向上させる必要がある。
【0051】
図9は、本技術を適用した太陽光発電システムの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0052】
図9に示すように、太陽光発電システム21は、太陽光発電モジュール22、日射計23、異常判断処理装置24、および電力制御装置25を備えて構成される。
【0053】
太陽光発電モジュール22は、複数枚の太陽電池パネルを直列で配線した太陽電池ストリングが、所定の出力が得られるように並列に接続されて構成された太陽電池アレイにより構成される。そして、太陽光発電モジュール22は、太陽光を受光して発電を行い、日射強度に応じて得られる電力を電力制御装置25に供給する。
【0054】
日射計23は、太陽光発電モジュール22の近傍に配置され、太陽から照射される太陽光の日射強度を計測する。
【0055】
異常判断処理装置24は、電力制御装置25と通信を行って、電力制御装置25において記録された日射強度データおよび発電電力データを取得し、太陽光発電モジュール22に異常が発生したか否かを判断する。なお、異常判断処理装置24の詳細な構成については、
図10を参照して後述する。
【0056】
電力制御装置25には、電力系統31、AC(Alternating Current)負荷32、並びに、DC(Direct Current)負荷33−1および33−2が接続されている。そして、電力制御装置25は、太陽光発電モジュール22による発電電力や、AC負荷32並びにDC負荷33−1および33−2における消費電力などに従って、AC負荷32並びにDC負荷33−1および33−2に対する電力の供給、および、電力系統31への電力の逆潮流を制御する。
【0057】
また、電力制御装置25は、AC/DC変換部41、PV(Photovoltaic)用DC/DC変換部42、電力計測部43、負荷用DC/DC変換部44−1および44−2、データ記録部45、並びに、通信部46を備えて構成されている。そして、電力制御装置25の内部では、AC/DC変換部41、PV用DC/DC変換部42、並びに、負荷用DC/DC変換部44−1および44−2がDCバス47を介して接続されている。
【0058】
AC/DC変換部41は、電力系統31およびAC負荷32に接続されており、電力系統31から供給される電力をAC/DC変換し、DCバス47を介して負荷用DC/DC変換部44−1および44−2に供給する。また、AC/DC変換部41は、太陽光発電モジュール22により発電されてDCバス47を介して供給される電力をDC/AC変換して、AC負荷32に供給したり、電力系統31に逆潮流したりする。
【0059】
PV用DC/DC変換部42は、太陽光発電モジュール22に接続されており、太陽光発電モジュール22で発電された電力の電圧を、DCバス47を介して供給可能な電圧にDC/DC変換し、太陽光発電モジュール22からの電力をDCバス47に出力する。
【0060】
電力計測部43は、太陽光発電モジュール22およびPV用DC/DC変換部42を接続する電力線に配置され、太陽光発電モジュール22により発電された発電電力を計測する。
【0061】
負荷用DC/DC変換部44−1および44−2は、AC/DC変換部41またはPV用DC/DC変換部42からDCバス47を介して供給される電力の電圧を、それぞれDC負荷33−1および33−2の駆動に必要な電圧に変換して出力する。
【0062】
データ記録部45は、所定の単位時間(例えば、秒または分)ごとに、日射計23により計測された日射強度を読み出して、日射強度の時間的な変化を記録した日射強度データを取得する。同様に、データ記録部45は、所定の単位時間ごとに、電力計測部43により計測された発電電力を読み出して、発電電力の時間的な変化を記録した発電電力データを取得する。
【0063】
通信部46は、無線通信を利用して異常判断処理装置24と通信を行い、所定期間(例えば、1時間または1日)ごとに、データ記録部45が記録した日射強度データおよび発電電力データを、異常判断処理装置24に送信する。
【0064】
次に、
図10は、異常判断処理装置24の構成例を示すブロック図である。
【0065】
図10に示すように、異常判断処理装置24は、発電電力保持部51、日射強度保持部52、日射変動判定部53、日射変動判定閾値保持部54、日射変動判定結果保持部55、発電電力推定部56、期待発電電力量保持部57、機器異常判定部58、日射不足判定閾値保持部59、機器異常判定閾値保持部60、発電ロス保持部61、異常判定結果保持部62、モデル更新部63、および発電電力推定モデル保持部64を備えて構成される。
【0066】
発電電力保持部51は、
図9の電力制御装置25の通信部46から送信される発電電力データを保持する。
【0067】
日射強度保持部52は、電力制御装置25の通信部46から送信される日射強度データを保持する。
【0068】
日射変動判定部53は、所定の局所区間ごとに、発電電力保持部51に保持されている発電電力データと、日射強度保持部52に保持されている日射強度データとの類似性の度合いが高いか否かを判定する。例えば、日射変動判定部53は、ある局所区間における発電電力データと日射強度データとの相関係数を算出し、算出した相関係数が、所定の日射変動判定閾値より大である場合、その局所区間における発電電力データと日射強度データとの類似性の度合いが高いと判定する。なお、日射変動判定部53による処理については
図11を参照して後述する。
【0069】
日射変動判定閾値保持部54は、日射変動判定部53が、発電電力データと日射強度データとの類似性の度合いを判定するのに用いる日射変動判定閾値(例えば、0.7などの値)を保持する。
【0070】
日射変動判定結果保持部55は、日射変動判定部53による日射変動の判定結果、即ち、局所区間ごとに発電電力データと日射強度データとの類似性の度合いが高いか否かを示す結果(OK/NG)を保持する。
【0071】
発電電力推定部56は、日射変動判定部53による日射変動判定結果が、発電電力データと日射強度データとの類似性の度合いが高いことを示している場合、その局所区間の日射強度データを日射強度保持部52から読み出す。そして、発電電力推定部56は、日射強度データを積算して日射量を算出し、発電電力推定モデル保持部64に保持されている発電電力推定モデルに入力して、期待発電電力量を推定する。
【0072】
期待発電電力量保持部57は、発電電力推定部56により推定された期待発電電力量を保持する。
【0073】
機器異常判定部58は、まず、日射強度保持部52から日射強度データを読み出して1日分の日射量を算出し、その日射量と所定の日射不足判定閾値と比較して、日射不足か否かを判定する。そして、機器異常判定部58は、日射不足でないと判定された場合、発電電力保持部51から発電電力データを読み出して発電電力量を算出し、期待発電電力量保持部57に保持されている期待発電電力量との差分を求めて発電ロスを算出する。機器異常判定部58は、発電ロスと所定の機器異常判定閾値とを比較して、異常が発生したか否かを判定する。なお、機器異常判定部58は、日射不足であると判定された場合、異常が発生したか否かの判定を正確に行うことができないと判断して、異常が発生したか否かの判定を行う処理をスキップし、異常が発生したか否かの判定を行わない。
【0074】
日射不足判定閾値保持部59は、機器異常判定部58が日射不足を判定するのに用いる日射不足判定閾値を保持する。
【0075】
機器異常判定閾値保持部60は、機器異常判定部58が異常を判定するのに用いる機器異常判定閾値を保持する。
【0076】
発電ロス保持部61は、機器異常判定部58により算出された発電ロスを保持する。
【0077】
異常判定結果保持部62は、機器異常判定部58による判定結果、即ち、異常が発生したか否かを示す結果を保持する。
【0078】
モデル更新部63は、発電電力推定モデル保持部64に保持されている現在の発電電力推定モデルを構築するのに用いた統計情報(
図4に示した日射強度および発電電力の相関関係)に、異常が発生していないと判定された日射強度および発電電力を追加し、統計情報を更新する。そして、モデル更新部63は、更新された統計情報を用いて新たな発電電力推定モデルを構築する。即ち、モデル更新部63は、異常が発生していないと判定された発電電力から算出される1日分の発電電力量と、異常が発生していないと判定された日射強度から算出される1日分の日射量との相関関係、即ち、発電電力量と日射量との日ごとの相関関係に基づいて、発電電力推定モデルを構築する。なお、モデル更新部63は、局所区間ごとの相関関係に基づいて発電電力推定モデルを構築してもよい。
【0079】
発電電力推定モデル保持部64は、モデル更新部63により新たに構築された発電電力推定モデルを保持する。
【0080】
図11を参照して、日射変動判定部53が、所定の局所区間ごとに、発電電力データと日射強度データとの類似性の度合いが高いか否かを判定する処理について説明する。
【0081】
図11には、ある一日において発電が行われている任意期間(04:00〜20:00)の日射強度データおよび発電電力データが示されている。日射変動判定部53は、日射強度と発電電力との相関係数を、1日を複数の局所区間に区切った局所区間ごとに算出し、それらの局所区間ごとに判定を行う。
【0082】
例えば、日射変動判定部53は、相関係数を求めるために、まず、日射強度データおよび発電電力データを、サンプリング数i(i=1,2,・・・,I)を用いて、日射強度x
iおよび発電電力y
iと定義する。
【0083】
また、局所区間幅ΔIは、発電電力データと日射強度データとの類似性の度合いを判定する任意期間Iを分割数Nで除算ことにより求められる。即ち、局所区間幅ΔIは、次の式(1)で求められる。
【0085】
図11に示すように、分割数Nが4である場合、局所区間幅ΔIは、次の式(2)で求められる。
【0087】
従って、1番目の局所区間I
1,2番目の局所区間I
2,3番目の局所区間I
3,および4番目の局所区間I
4は、I
0=0とすると、次の式(3)で求められる。
【0089】
つまり、J番目の局所区間I
Jは、次の式(4)で求められる。
【0091】
ここで、サンプリング数iは、i=1,2,・・・,I
1,I
1+1,・・・,I
2,・・,I
3,・・,I
4であり、I
4=Iである。
【0092】
そして、日射強度xおよび発電電力yの相関係数ρ
xyは、日射強度xの平均μ
x、発電電力yの平均μ
y、日射強度xの分散(標準偏差)σ
X2、発電電力yの分散(標準偏差)σ
y2を用いて、次の式(5)で求められる。
【0094】
従って、式(5)に基づいて、J番目の局所区間I
Jにおける日射強度xおよび発電電力yの相関係数ρ
xy[I
J]は、日射強度xの平均μ
x[I
J]、発電電力yの平均μ
y[I
J]、日射強度xの分散(標準偏差)σ
X2[I
J]、発電電力yの分散(標準偏差)σ
y2[I
J]を用いて、次の式(6)で求められる。
【0096】
このように、日射変動判定部53は、J番目の局所区間I
Jにおける日射強度xおよび発電電力yの相関係数ρ
xy[I
J]を求めることができる。
【0097】
そして、日射変動判定部53は、局所区間ごとの相関係数が、日射変動判定閾値保持部54に保持されている日射変動判定閾値より大である場合、その局所区間における発電電力データと日射強度データとの類似性の度合いが高いと判定する判定結果(OK)を出力する。一方、日射変動判定部53は、局所区間ごとの相関係数が、日射変動判定閾値保持部54に保持されている日射変動判定閾値以下である場合、その局所区間における発電電力データと日射強度データとの類似性の度合いが低いと判定する判定結果(NG)を出力する。
【0098】
例えば、
図11Aに示されている発電電力データと日射強度データとでは、日射変動判定閾値を0.7とすると、全ての局所区間における判定結果がOKとされている。つまり、一日を通して局所区間の相関係数が高いという結果が求められている。
【0099】
一方、
図11Bに示されている発電電力データと日射強度データとでは、日射変動判定閾値を0.7とすると、局所区間I
1および局所区間I
2での判定結果がNGとされ、局所区間I
3および局所区間I
4での判定結果がOKとされている。つまり、一日の中で相関係数が低くなる局所区間が存在するという結果が求められている。
【0100】
従って、判定結果がNGとされた局所区間の発電電力データおよび日射強度データを、発電電力推定モデルを構築する際に使用しないことで、発電電力推定モデルの正確性を向上させることができる。
【0101】
即ち、蓄積された全ての発電電力データおよび日射強度データを使用した場合には、
図12の左側に示すようにノイズが発生するが、判定結果がNGとされた局所区間の発電電力データおよび日射強度データを使用しないことにより、
図12の右側に示すように、より相関性が高くない、日射の日内変動の影響を排除することができる。これにより、誤検出を防止することができる。
【0102】
また、線形回帰式による発電電力推定モデルは、次の式(7)で求められる。
【0104】
ここで、式(7)において、回帰係数α
J’および回帰係数β
J’は、ノイズを除去した後の過去の全てのデータを用いて算出される。
【0105】
そして、局所区間I
Jの相関係数ρ
xy[I
J]を用いて日射変動判定および発電電力推定が行われる。
【0106】
例えば、モデル更新部63は、局所区間I
Jの相関係数ρ
xy[I
J]が、日射変動判定閾値ρ
thより大である場合(ρ
xy[I
J]>ρ
th)、回帰係数α
J’および回帰係数β
J’を更新し、上述の式(7)に基づいて発電電力推定モデルを新たに構築する。
【0107】
一方、モデル更新部63は、局所区間I
Jの相関係数ρ
xy[I
J]が、日射変動判定閾値ρ
thより大でない場合(ρ
xy[I
J]≦ρ
th)、回帰係数α
J’および回帰係数β
J’の更新は行わない。例えば、この場合、モデル更新部63は、発電電力の実績値を入力してもよい。
【0108】
また、発電電力推定部56は、次の式(8)を用いて、日射強度x
iおよび発電電力y
iを計測する際のサンプリングレートS
Rより、日射強度x
iから日射量Xを求め、発電電力y
iから発電電力量Yを求め、発電電力y
i’から期待発電電力量Y’を求めることができる。
【0110】
次に、
図13は、異常判断処理装置24において行われる処理を説明するフローチャートである。
【0111】
例えば、発電電力保持部51および日射強度保持部52に、発電電力データおよび日射強度データが新たに保持されると処理が開始される。まず、ステップS11において、日射変動判定部53は、発電電力推定モデルが既に存在し、発電電力推定モデル保持部64に保持されているか否かを判定する。そして、日射変動判定部53は、発電電力推定モデルが発電電力推定モデル保持部64に保持されていると判定した場合、処理はステップS12に進む。
【0112】
ステップS12において、日射変動判定部53は、上述した式(6)を用いて、新たに保持された発電電力データおよび日射強度データについて、局所区間ごとに、日射強度および発電電力の相関係数を算出する。
【0113】
ステップS13において、日射変動判定部53は、ステップS12で算出した相関係数が、日射変動判定閾値保持部54に保持されている日射変動判定閾値以下であるか否かを判定する。
【0114】
ステップS13において、日射変動判定部53が、相関係数が日射変動判定閾値以下でない(日射変動判定閾値より大である)と判定した場合、処理はステップS14に進む。
【0115】
ステップS14において、日射変動判定部53は、発電電力データと日射強度データとの類似性の度合いが高いことを示す判定結果(OK)を日射変動判定結果保持部55に保持させる。これに従って、発電電力推定部56は、日射強度データを積算して日射量を算出し、発電電力推定モデル保持部64に保持されている発電電力推定モデルに入力して、期待発電電力量を推定し、推定した期待発電電力量を期待発電電力量保持部57に保持させる。
【0116】
一方、ステップS13において、日射変動判定部53が、相関係数が日射変動判定閾値以下であると判定した場合、処理はステップS15に進む。
【0117】
ステップS15において、日射変動判定部53は、発電電力データと日射強度データとの類似性の度合いが低いことを示す判定結果(NG)を日射変動判定結果保持部55に保持させる。これに従って、発電電力推定部56は、期待発電電力量を推定することはできないと判断して、例えば、実績の発電電力を期待発電電力量保持部57に保持させる。
【0118】
ステップS14またはS15の処理後、処理はステップS16に進み、日射変動判定部53は、一日分の発電電力データおよび日射強度データについて、相関係数を算出する処理が終了したか否かを判定する。
【0119】
ステップS16において、日射変動判定部53が、一日分の相関係数を算出する処理が終了していないと判定した場合、処理はステップS12に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【0120】
一方、ステップS16において、日射変動判定部53が、一日分の相関係数を算出する処理が終了したと判定した場合、処理はステップS17に進む。
【0121】
ステップS17において、機器異常判定部58は、発電電力保持部51から発電電力データを読み出して一日分の発電電力量を算出する。また、機器異常判定部58は、期待発電電力量保持部57に保持されている期待発電電力量を読み出して、一日分の期待発電電力量を算出する。
【0122】
ステップS18において、機器異常判定部58は、ステップS17で算出した発電電力量と期待発電電力量との差分を求めて発電ロスを算出する。
【0123】
ステップS19において、機器異常判定部58は、日射強度保持部52から日射強度データを読み出して日射量を算出し、その日射量と所定の日射不足判定閾値と比較して、日射不足か否かを判定する。
【0124】
ステップS19において、日射不足でないと判定した場合、処理はステップS20に進み、機器異常判定部58は、ステップS18で算出した発電ロスと、機器異常判定閾値保持部60に保持されている機器異常判定閾値とを比較して、異常が発生したと判断できるか否かを判定する。例えば、発電ロスが機器異常判定閾値以上である場合、異常が発生したと判断できると判定され、発電ロスが機器異常判定閾値以上でない場合、異常が発生したと判断できないと判定される。
【0125】
ステップS20において、異常が発生したと判断できないと判定された場合、処理はステップS21に進む。
【0126】
ステップS21において、モデル更新部63は、発電電力推定モデル保持部64に保持されている現在の発電電力推定モデルを構築するのに用いた統計情報(
図4に示した日射強度および発電電力の相関関係)に、異常が発生していないと判定された日射強度および発電電力を追加し、統計情報を更新する。そして、モデル更新部63は、更新された統計情報を用いて新たな発電電力推定モデルを構築する。
【0127】
なお、ステップS11において、発電電力推定モデルが発電電力推定モデル保持部64に保持されていないと判定された場合も、処理はステップS21に進む。この場合には、モデル更新部63は、新たに保持された発電電力データおよび日射強度データを用いて発電電力推定モデルを構築して、発電電力推定モデル保持部64に保持させる。
【0128】
一方、ステップS19において日射不足であると判定された場合、ステップS20において異常が発生したと判断できると判定された場合、または、ステップS21の処理後、処理は終了される。
【0129】
以上のように、異常判断処理装置24では、日射変動に起因して発電電力データと日射強度データとの類似性の度合いが低い場合には、その発電電力データおよび日射強度データが、発電電力推定モデルの構築に使用されることが回避される。従って、類似性の度合いが高い発電電力データおよび日射強度データだけに基づいて発電電力推定モデルを構築することができるので、より正確に異常の発生を判断可能な発電電力推定モデルを構築することができる。
【0130】
さらに、正確性の高い発電電力推定モデルから期待発電電力量を推定することができるので、発電ロスを正確に算出することができ、異常の発生を確実に検出することができる。これによって、異常の発生を見逃したり、異常が発生していないのに異常が発生したと判断されることが回避され、より適切に太陽光発電システム11の監視および保守を行うことができる。
【0131】
また、異常判断処理装置24は、電力制御装置25と通信を行ってデータを取得し、異常の発生を判断することができるので、太陽光発電システム11の監視および保守を遠隔地から行うことができる。
【0132】
なお、電力制御装置25が異常判断処理装置24を内蔵するように構成してもよく、この場合、電力制御装置25単独で、太陽光発電システム11の異常の発生を判断することができる。
【0133】
また、例えば、日射計23により計測された日射強度を読み出して日射強度の時間的な変化を記録した日射強度データを取得し、電力計測部43により計測された発電電力を読み出して発電電力の時間的な変化を記録した発電電力データを取得するデータ記録部45が単独の装置で構成されるようにしてもよい。この場合、データ記録部45が、日射強度データおよび発電電力データを集積するとともに、異常判断処理装置24としての機能を備えるようにすることができる。従って、データ記録部45単独で、太陽光発電システム11の異常の発生を判断することができる。
【0134】
なお、本実施の形態においては、太陽光発電モジュール22を単位として日射強度および発電電力を計測し、期待発電電力量を推定し、異常の発生を判断する処理が行われているが、例えば、太陽光発電モジュール22を構成する太陽電池パネル、ストリング、またはアレイを単位として、それらの処理が行われるようにしてもよい。例えば、ストリングを単位として、日射強度および発電電力を計測し、期待発電電力量を推定することで、ストリングごとに異常の発生を判断することができる。
【0135】
また、太陽光発電システム21では、日射計23により計測される日射強度から日射量(即ち、太陽光のエネルギー量)を算出する他、例えば、太陽光の照度を計測する照度計を用いて、太陽光発電モジュール22に照射される太陽光のエネルギー量を算出する構成を採用することができる。または、計測用の太陽電池パネルを用いて、その太陽電池パネルにより発電された電力量から、太陽光発電モジュール22に照射される太陽光のエネルギー量を算出してもよい。
【0136】
さらに、例えば、太陽光発電モジュール22の近傍に設置された日射計15を用いることなく、地域気象観測システムを構成する複数の気象観測所により観測された日射量のデータを取得してもよい。そして、それらの日射量のデータを用いて、気象観測所および太陽光発電モジュール22が設置された箇所の位置情報(緯度および経度)に基づき、太陽光発電モジュール22が設置されている箇所における日射量を推定してもよい。なお、この場合、太陽光発電モジュール22の近隣に設置されている気象観測所における日射量のデータを使用して日射量を推定することで、より信頼性を向上させることができる。
【0137】
なお、上述のフローチャートを参照して説明した各処理は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むものである。また、プログラムは、1のCPUにより処理されるものであっても良いし、複数のCPUによって分散処理されるものであっても良い。
【0138】
また、上述した一連の処理(情報処理方法)は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラムが記録されたプログラム記録媒体からインストールされる。
【0139】
図14は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
【0140】
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)101,ROM(Read Only Memory)102,RAM(Random Access Memory)103は、バス104により相互に接続されている。
【0141】
バス104には、さらに、入出力インタフェース105が接続されている。入出力インタフェース105には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部106、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部107、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部108、ネットワークインタフェースなどよりなる通信部109、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア111を駆動するドライブ110が接続されている。
【0142】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU101が、例えば、記憶部108に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース105及びバス104を介して、RAM103にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0143】
コンピュータ(CPU101)が実行するプログラムは、例えば、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)等)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア111に記録して、あるいは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供される。
【0144】
そして、プログラムは、リムーバブルメディア111をドライブ110に装着することにより、入出力インタフェース105を介して、記憶部108にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部109で受信し、記憶部108にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM102や記憶部108に、あらかじめインストールしておくことができる。また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0145】
なお、本実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。