特許第6115802号(P6115802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6115802特定波長光照射によるカレイ目魚類の養殖方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115802
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】特定波長光照射によるカレイ目魚類の養殖方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/10 20170101AFI20170410BHJP
   A01K 63/06 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   A01K61/00 A
   A01K63/06 C
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-68668(P2012-68668)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-198430(P2013-198430A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年3月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、農林水産省、「有用水産生物の光応答メカニズムの解明と高度利用技術の開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】598041566
【氏名又は名称】学校法人北里研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】398052900
【氏名又は名称】株式会社ケイ・エムアクト
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100111464
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悦子
(74)【代理人】
【識別番号】100151998
【弁理士】
【氏名又は名称】春日 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100161621
【弁理士】
【氏名又は名称】越山 祥子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 明義
(72)【発明者】
【氏名】水澤 寛太
(72)【発明者】
【氏名】古藤 澄久
(72)【発明者】
【氏名】菊地 重人
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−72138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00 − 63/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
養殖領域内に、ピークトップが635±15nmのシングルピークからなる赤色光、ピークトップが465±15nmのシングルピークからなる青色光、ピークトップが520±15nmのシングルピークからなる緑色光、ピークトップが450±15nmのシングルピークとピークトップが550±20nmのシングルピークとを合成してなる白色光のいずれかを照射することを特徴とする、カレイ目魚類の養殖方法であって、
水温が10℃以下の場合に、前記青色光、緑色光または白色光のいずれかを照射し、かつ
水温が10℃を超えた場合に、前記赤色光を照射することを特徴とする、カレイ目魚類の養殖方法。
【請求項2】
上記カレイ目魚類がマツカワ(学名:Verasper moseri)であることを特徴とする請求項1記載のカレイ目魚類の養殖方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒラメ、カレイ、マツカワ等のカレイ目魚類の養殖方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒラメやカレイ等のカレイ目魚類は自然界での生息数が激減しているため、養殖による資源数の確保および増産が熱望されている。特に、カレイ目魚類の中でもマツカワ(学名:Verasper moseri)は冷水性高級魚として知られ、カレイ目の需要を満たすために水槽飼育する方法が提案されている(特許文献1)。特許文献1記載の技術は、水槽に白色背景色を採用し、孵化後6ヶ月経過後の稚魚を放つとメラニン凝集ホルモンの産生が刺激され食欲が増進されるため、飽食量給餌によって体重が増加するというものである。
【0003】
また、カレイ目魚類の養殖方法であって、カレイ目魚類の無眼側が接する内面が白色若しくは黄色に視認できるように形成した着色水槽を用いてカレイ目魚類を飼育する方法もある(特許文献2)。人工飼育したマツカワは、無眼側が黒化して商品価値が低下する場合がある。しかしながら、孵化した仔稚魚が着底するまで敷砂水槽内で飼育し、その後白色あるいは黄色水槽で飼育すると、メラニン凝集ホルモン遺伝子の発現量が増加し、無眼側の黒化を抑制することができる、という。なお、水温は10〜13℃が好ましいという。着色水槽での飼育水温と無眼側の黒化との関係を調査したところ、12℃前後の水温が黒化防除に有効であることが見出されたからである。
【0004】
また、カレイ目魚類の養殖方法であって、養殖領域内に赤色成分を含まない光を照射することを特徴とするカレイ目魚類の養殖方法もある(特許文献3)。赤色光が、カレイ目の成長の妨げになっていることを突き止め、400〜600nmの範囲内の光を照射し、カレイ目魚類の成長を促進させるというものである。蛍光灯光にカラーフィルターを透過させて得た青、緑、赤および白色光を照射した場合、赤色によって白色光より体重の増加率が低下している。また、青、緑、赤、黄色の発光ダイオード(以下、単にLEDと称する)光を照射し7ヶ月間飼育した場合に、LED照射光による体重および体長の差は観察されていない。
【0005】
また、カレイ目魚類の養殖温度に関する技術として、魚類の生息領域内に、600nm以下の波長の光を、雌雄決定前から雌雄決定までの間、毎日9〜15時間照射することを特徴とする、魚類の性統御方法もある(特許文献4)。水温を18℃以下にすると雌化が促進され、水温を27℃以上にすると雄化が促進されるという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3822865号公報
【特許文献2】特開2004−357513号公報
【特許文献3】特開2009−072138号公報
【特許文献4】特開2009−125012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
養殖魚は天然魚に比べて市場価格が低いものの餌等の飼育コストがかかるため、自然界に生息するより成長速度を促進して養殖できることが好ましい。前記特許文献1記載の方法は、白色背景色の水槽を使用して体重増加を図るものであり、特許文献3記載の方法は、赤色光を照射しないことで自然光よりも成長を促進させるものであるが、より迅速に成長を促進しうる方法が望まれる。
なお、特許文献2記載の方法は、白色または黄色水槽で飼育することで無眼側の黒化を防止するものである。商品価値を向上させるには、成長率を確保しつつ無眼側の白色を維持しうるカレイ目魚類の養殖方法が望まれる。
さらに、特許文献4に示すように、カレイ目は水温によって雌雄の割合が変動する可能性がある。雌雄が変化することで、商品価値が低下する場合がある。よって、雌雄を変動させることなく成長率を確保しうるカレイ目魚類の養殖方法が望まれる。
【0008】
上記現状に鑑み、本発明は、成長効率に優れるカレイ目魚類の養殖方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、カレイ目魚類の養殖方法を詳細に検討した結果、カレイ目魚類の成長は照射光に含まれる異なる波長に対応して成長すること、LEDによる青、緑、赤、白色光を照射すると、自然光を照射した場合よりもカレイ目魚類の成長を促進しうることが判明した。特に、水温が10℃以下の場合に青、緑、白色光を照射すると日間成長率が促進され、水温が10℃を超える場合には青、赤、白色光を照射すると日間成長率を促進させることができる。このため、水温に応じてLED照射光の波長を変化させることでより効率的なカレイ目魚類の養殖を行うことができる。
【0010】
すなわち本発明は、養殖領域内に、ピークトップが635±15nmのシングルピークからなる赤色光、ピークトップが465±15nmのシングルピークからなる青色光、ピークトップが520±15nmのシングルピークからなる緑色光、ピークトップが450±15nmのシングルピークとピークトップが550±20nmのシングルピークとを合成してなる白色光のいずれかを照射することを特徴とする、カレイ目魚類の養殖方法であって、
水温が10℃以下の場合に、前記青色光、緑色光または白色光のいずれかを照射し、かつ
水温が10℃を超えた場合に、前記赤色光を照射することを特徴とする、カレイ目魚類の養殖方法を提供するものである。
【0013】
更に、本発明は、上記カレイ目魚類がマツカワ(学名:Verasper moseri)であることを特徴とする上記のカレイ目魚類の養殖方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ピークトップが635±15nmのシングルピークからなる赤色光、ピークトップが465±15nmのシングルピークからなる青色光、ピークトップが520±15nmのシングルピークからなる緑色光、ピークトップが450±15nmのシングルピークとピークトップが550±20nmのシングルピークとを合成してなる白色光のいずれかを照射することで、自然光照射よりもカレイ目魚類の成長を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1の養殖において、水温と各LED光照射の際の摂餌量の推移を示す図である。
図2】実施例1の養殖において、マツカワの体重と体長の推移を示す図である。
図3】実施例1の養殖において、マツカワの各期の摂餌量を示す図である。
図4】実施例1の養殖において、マツカワの各期の日間成長率を示す図である。
図5】実施例2の養殖において、水温と各LED光照射の際の摂餌量の推移を示す図である。
図6】実施例2の養殖において、マツカワの各期の日間成長率を示す図である。
図7】比較例1で用いた蛍光灯とカラーフィルタとからなる光源の波長を示す図である。Aは青色透過光、Bは緑色透過光、Cは赤色透過光、Dは自然光を示す。
図8】実施例1で使用したLED光の波長を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、養殖領域内に、ピークトップが635±15nmのシングルピークからなる赤色光、ピークトップが465±15nmのシングルピークからなる青色光、ピークトップが520±15nmのシングルピークからなる緑色光、ピークトップが450±15nmのシングルピークとピークトップが550±20nmのシングルピークとを合成してなる白色光のいずれかを照射することを特徴とする、カレイ目魚類の養殖方法である。特に、水温が10℃以下の場合に、前記青色光、緑色光または白色光のいずれかを照射することが好ましく、水温が10℃を超えた場合に、前記青色光、赤色光、白色光のいずれかを照射すれば、自然光の下で養殖する場合より成長率に優れる。
【0017】
カレイ目魚類としては、マツカワ属、アブラガレイ属、ムシガレイ属、マコガレイ属などのカレイ科、ガンゾウビラメ属、ヒラメ属、アラメガレイ属などのヒラメ科、その他ウシノシタ科、ダルマガレイ科、スコブタルムス科、コケビラメ科(以上カレイ亜目)、ボウズガレイ科(以上ボウズガレイ亜目)などを例示することができる。以下、便宜のため、カレイ目魚類としてマツカワ(学名:Verasper moseri)を養殖する場合で説明するが、他の魚類も同様である。
【0018】
本発明の養殖方法は、孵化後所定の期間を経過した稚魚を使用することが好ましい。魚種によってはLED光の照射によって雌雄が変化する場合があるからである。マツカワの場合であれば、孵化後100日令を経過した稚魚を使用することが好ましい。
【0019】
本発明で使用する養殖装置は、自然光の照射を防止しうる遮光性のある魚類養殖用の水槽であって、ピークトップが635±15nmのシングルピークからなる赤色光、ピークトップが465±15nmのシングルピークからなる青色光、ピークトップが520±15nmのシングルピークからなる緑色光、ピークトップが450±15nmのシングルピークとピークトップが550±20nmのシングルピークとを合成してなる白色光の光源が配設される養殖装置を広く使用することができる。上記要件を満たせば、材質や形状に限定はない。たとえば、プラスチック、金属、木製、その他で構成される略円柱状の水槽や方形の水槽に、LED照射装置が配設され、同質または異なる素材からなる遮光部材で被覆される装置を例示することができる。
【0020】
養殖装置は、カレイ目魚類の特性に応じて水槽の内面は白色または黄色などの淡色で構成されることが好ましい。カレイ目魚類は淡色背景の場合にメラニン凝集ホルモンの産生が刺激され、当該ホルモンの食欲増進効果によって摂餌量が増加する場合があるからである。
【0021】
照射する光は、ピークトップが635±15nmのシングルピークからなる赤色光、ピークトップが465±15nmのシングルピークからなる青色光、ピークトップが520±15nmのシングルピークからなる緑色光、ピークトップが450±15nmのシングルピークとピークトップが550±20nmのシングルピークとを合成してなる白色光である。このような光を照射する装置としては、LED照射装置がある。これらの波形の一例を図8に示す。本発明で使用するLED照射装置は上記4色のいずれか1色を照射しうるものであればよい。以降、便宜のため、LED光で説明するが、各青色光、青色光、赤色光、白色光が上記条件を満たせば、LED照射装置に限るものではない。
【0022】
養殖用水を導入した養殖装置に、マツカワを収容し遮光する。この遮光された養殖装置に、LED照射装置から青色光、緑色光、赤色光、白色光のいずれかを照射する。LED光の照射時間は特に限定はないが、一日あたり8時間を基準とする照射時間が好ましい。上記時間で体重および体長の成長率に優れるからである。LED光を照射すると水温の如何を問わず、自然光を照射した場合と比較して日間成長率が増加する。
魚類は水温の影響を受けやすく水温が低いと成長が遅延若しくは停止する。例えば、マツカワの成長は、水温が10℃より高い場合には良好であるが、水温が10℃以下では摂餌量が激減し、それに伴い成長が低下する。LED光を照射した際の水温による成長率の変化を評価したところ、緩成長の10℃以下の水温の状況で、前記青色光、緑色光、赤色光は自然光よりも成長を促進し、特に前記青色光、緑色光および白色光は赤色光よりも優れて成長を促進することが判明した。
なお、水温が10℃を超えて12〜15℃の範囲では、前記青色光、緑色光、赤色光の照射が自然光を照射した場合よりも成長を促進させた。水温が10℃を超えるとマツカワは自然光のもとでも成長を停止することなく、経過日ごとに体重を増加させるが、自然光に代えて前記青色光や白色光を照射すると、更に日間成長率を増加させることができる。
このことは、水温に対応してLED光の波長を変えることでより成長率を向上させることができることを意味する。10℃以下の水温の場合に前記青色光、緑色光、白色光を照射することで、特に成長が緩慢な時期に魚体を効率的に成長させ、10℃を超え、特に10℃を超えて15℃以下の範囲で前記青色光、赤色光、白色光を照射することで更に魚体を成長させることができる。なお、水温が15℃を超えるとLED光照射を照射した魚体成長率は自然光を照射した場合と略同等であるから、LED光照射を停止することで電力を節約することができる。
【0023】
本発明の養殖方法は、マツカワ以外のカレイ目魚類に適用することができる。
【実施例】
【0024】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0025】
(実施例1)
直径1000mm、深さ650mmのプラスチック製円柱状の水槽にLED照射装置を取り付けて養殖装置を構成した。この養殖装置を4基設置し、それぞれに深さ650mmとなるように養殖用水を仕込み、これに平均体重34.0±0.9g、平均体長11.1±0.1cmのマツカワをそれぞれ25個体投入した。養殖期間は、10月12日から翌年1月13日までとした。
3基の養殖装置に、LED照射装置から、ピークトップが464nmの青色単色光、ピークトップが518nmの緑色単色光、ピークトップが635nmの赤色単色光のそれぞれを照射した。LED光の照射は、午前9時から午後5時までの8時間とした。また、残り1基の養殖装置は天面を遮光せず自然光が照射される環境とした。4基の養殖装置には、手撒き給餌により一日一回、午後1時に飽食量の給餌を行い、給餌後30分経過後に残餌を回収した。各LEDの光量子束密度は、光源から15cmのところで7.2〜7.4μmol/m・sであった。
養殖装置内の水温は、自然環境温度に対応して温度5〜22℃の範囲で変動した。養殖期間内の水温を図1に示す。養殖期間を、養殖開始から1ヶ月ごとにI期、II期、III期に区分すると、各期の平均水温は、17.4℃、13.3℃、8.8℃と季節変動を生じた。図2にマツカワの体重と体長の推移を示す。また、図3に各期の摂餌量を、図4に各期の日間成長率を示す。
【0026】
結果
図2に示すように、いずれの光を照射した場合でも、魚体の成長は体長変化よりも体重変化に大きく表された。各期の摂餌量および日間成長率を比較すると、図3図4に示すようにI期では、青、緑、赤色光および自然光との間に摂餌量および日間成長率に差は認められず、II期およびIII期では、青色光の照射が最も摂餌量が多く、これに緑、赤、自然光の順に続いた。LED光は、青、緑、赤色光のいずれであっても、自然光と同等か自然光よりも魚体の日間成長率を促進させた。特に、水温が8.8℃のIII期では、自然光での日間成長率は0.5%であるが、青色光を照射した場合の日間成長率は0.8と自然光照射の1.6倍に増加した。なお、緑色光を照射した場合は、自然光の日間成長率の1.4倍であった。水温が13.3℃、17.4℃のII基やIII期では自然光照射の場合の日間成長率は0.8%であるが、日間成長率の低い低水温期に青、緑色光によって日間成長率を大きく促進させることができた。
【0027】
(実施例2)
実施例1と同様の養殖装置を4基使用し、それぞれに深さ650mmとなるように養殖用水を仕込み、これに平均体長19.7±0.2mm、平均体重173±5.5gのマツカワをそれぞれ15匹投入した。養殖期間は、4月1日から5月12日までとした。
4基の養殖装置に、LED照射装置から、ピークトップが464nmの青色単色光、ピークトップが518nmの緑色単色光、ピークトップが635nmの赤色単色光、ピークトップが447nmと550nmとからなる白色光とをそれぞれ照射した。LED光の照射は、午前9時から午後5時までの8時間とし、手撒き給餌により一日一回、午後1時に飽食量の給餌を行った。各LEDの放射照度は、光源から15cmのところで0.76〜0.80W/mであった。
養殖装置内の水温は、自然環境温度に対応して温度6〜17℃の範囲で変動した。養殖期間を、4月1日から4月22日までをI期、4月23日から5月12日までをII期に区分すると、各期の平均水温は、9.3±0.4℃、12.1±0.5℃と季節変動を生じた。図5に、水温と各LED光を照射した際のマツカワの摂餌量の推移を示す。
【0028】
結果
図5に示すように、水温が10℃を越える4月23日前後を境に摂餌行動が変化する傾向が観察された。赤色光は水温が低いI期では摂餌量が少なく、水温が高くなるII期では摂餌量を急激に増加させたが、青、緑、白色光はI期、II期ともに摂餌量を増加させることができた。図6にI期、II期の各照射光での日間成長率を示す。水温が9.3℃のI期では、青、緑、白色光により1.5%の日間成長率を示した。水温が12.1℃のII期では、赤色光は青色光と略同等の日間成長率を示した。白色光も同様であった。
【0029】
(比較例1)
実施例1と同様な養殖装置を4基使用し、それぞれに深さ530mmとなるように養殖用水を仕込み、これに平均体長17cm、平均体重83gのマツカワをそれぞれ10匹投入した。養殖期間は、12月7日から翌年3月16日までの約14週間とした。水温は13.8℃から15.6℃の間で変動した。
LED光に代えて、18ワットの蛍光灯2本にカラーフィルタを透過させて得た青色光、緑色光、赤色光、および白色光を照射し、2週間ごとに体重を測定した。結果を表1に示し、図7にカラーフィルター透過光の波長分布を示す。
【0030】
結果
表1に示すように、緑色、青色光が体重増加が大きく、白色光がこれに続き、赤色光は白色光よりも低い結果となった。図7に示すように蛍光灯からの白色光には青、緑、赤色波長が含まれるためこれらが総合的に作用し、緑色光、青色光、白色光は赤色光よりも成長を促進したと考えられる。実施例1では、LED光照射では自然光よりも成長が促進された。しかし、自然光と白色蛍光灯の波長成分はまったく異なることが、成長の結果に差異を及ぼしたことが考えられる。なお、参考のため、実施例1で使用したLED光源の波長を図8に示す。
【0031】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、高級魚であるマツカワなどのカレイ目魚類にLED光を照射することで成長を促進するため安全性に優れ、かつ安価に高級魚を生育でき有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8