特許第6115910号(P6115910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115910
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】二重床パネルの開口部用蓋
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/024 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   E04F15/024 601E
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-245260(P2012-245260)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-95176(P2014-95176A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103404
【氏名又は名称】オーエム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 誠二
(72)【発明者】
【氏名】赤木 孝明
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−048532(JP,U)
【文献】 特開2005−232808(JP,A)
【文献】 実開昭61−170345(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重床パネルのパネル外周面を凹ませ、パネル表面からパネル裏面まで連通して形成される開口部を平面部により閉蓋する二重床パネルの開口部用蓋において、
開口部をすべて塞ぐ大きさの定常時平面部と、前記開口部に隙間を残して塞ぐ大きさの通線時平面部と、前記定常時平面部及び通線時平面部を上下二段に結ぶ連結部とから構成され、
定常時平面部は、開口部で分断されたパネル外周面に連続する外側外周縁部と、開口部の表面側内周縁に沿って前記外側外周縁部の両端を結ぶ内側外周縁部とに囲まれた平面視形状で、
通線時平面部は、開口部で分断されたパネル外周面から奥まった外側外周縁部と、開口部の表面側内周縁に沿って前記外側外周縁部の両端を結ぶ内側外周縁部とに囲まれた平面視形状であり、
定常状態で定常時平面部を上、通線時平面部を下にして、前記定常時平面部により開口部を塞ぎ、通線状態で通線時平面部を上、定常時平面部を下にして、前記通線時平面部により開口部を塞いで残る隙間を通線口として利用させることを特徴とする二重床パネルの開口部用蓋。
【請求項2】
定常時平面部は、開口部で分断されたパネル外周面に連続する外側外周縁部に、前記パネル外周面から一部奥まった凹部を形成した請求項1記載の二重床パネルの開口部用蓋。
【請求項3】
連結部は、定常時平面部又は通線時平面部が開口部を塞いだ状態で、凹ませたパネル外周面に圧接する弾性突起を突出させている請求項1又は2いずれか記載の二重床パネルの開口部用蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重床パネルのパネル外周面を凹ませ、パネル表面からパネル裏面まで連通して形成される開口部を平面部により塞ぐ二重床パネルの開口部用蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
二重床パネルは、ケーブル(通信ケーブルや給電ケーブル)を通すため、建物床に対して床下空間を空けて敷き詰められる。そして、二重床パネルは、前記ケーブルを引き出す通線口を形成する必要から、パネル外周面を凹ませ、パネル表面からパネル裏面まで連通する開口部が形成される。しかし、開口部が常時開口していると、二重床パネルに不要な窪みが形成され、好ましくない。これから、二重床パネルは、定常状態で前記開口部を開口部用蓋で完全に塞ぎ、通線状態で前記開口部から開口部用蓋を取り外したり、隙間を残して開口部を開口部用蓋で塞いだりして、必要に応じて通線口を形成する(特許文献1又は特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1は、開口部(ケーブル引出口)の表面側内周縁(開口周縁)に形成された低段面(段差部の水平部)に載せられ、前記開口部を塞ぐ定常時平面部(塞ぎ板)と、前記定常時平面部の端部から直角方向へ延設され、定常時平面部が床下に収納された状態で前記低段面に載せられ、前記開口部を塞ぐ通線時平面部(通線用板)と、前記通線時平面部に貫通された通線口とから構成される開口部用蓋(塞ぎパネル)を開示する(引用文献1・[請求項1])。特許文献1が開示する開口部用蓋は、レイアウトの変更等に応じて、定常時平面部により開口部を塞いだり、通線時平面部により開口部の範囲に通線口を形成したりできる(特許文献1・[0026])。
【0004】
特許文献2は、定常時平面部(長辺板部)及び通線時平面部(短辺板部)により形成され、前記定常時平面部及び前記通線時平面部を交互に二重床パネル(フロアパネル)の開口部に設置できる開口部用蓋(フロアパネル開口部用蓋)を開示する(引用文献2・[請求項1])。特許文献2は、通線時平面部に回動板部を設けた構成の開口部用蓋も開示している(引用文献2・[請求項2])。特許文献2が開示する開口部用蓋は、定常時平面部及び通線時平面部を交互に開口部(フロアパネル開口部)に設置できるため、必要に応じて開口部の開口面積を変え、不必要な開口の形成を防止できる(特許文献2・[0022])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07-269079号公報
【特許文献2】特開2003-041753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1又は特許文献2が開示する開口部用蓋は、形成される具体的な通線口が異なるものの、開口部をすべて塞ぐ定常時平面部(特許文献1:塞ぎ板、特許文献2:長辺板部)と、通線口となる隙間を残して前記開口部を塞ぐ通線時平面部(特許文献1:通線用板、特許文献2:短辺板部)とを直交させた側面視L字状の全体構成が同じである。そして、特許文献1又は特許文献2が開示する開口部用蓋は、前記側面視L字状の全体構成に起因して、共通する問題を抱えている。
【0007】
特許文献1又は特許文献2が開示する開口部用蓋は、開口部の表面側内周縁に沿ってパネル表面に設けた低段面(特許文献1:段差部の水平部、特許文献2:フランジ部)に通線時平面部を載せるため、下向きにする定常時平面部が前記低段面と干渉しないように、定常時平面部及び通線時平面部の交差縁をパネル外周面に揃える。このため、パネル外周面から通線時平面部を挟んで奥まったパネル表面内に「閉じた通線口」が形成される(特許文献1・[図2]、特許文献2・[図7])。これは、下向きになる定常時平面部が通線口から取り出すケーブルの邪魔になるほか、隣り合う二重床パネルに対向する開口部を設けても、開口部を塞いだ開口部用蓋が形成する通線口を合わせて大きな通線口にできない問題をもたらす。
【0008】
また、特許文献1又は特許文献2が開示する開口部用蓋は、通線時平面部が開口部を塞ぐ場合、定常時平面部が下向きになるため、前記定常時平面部の下向きの長さが二重床パネルのパネル表面から建物床までより長くできない制約がある。そして、開口部は、定常状態で定常時平面部により完全に塞がれる必要があるから、前記制約は開口部の大きさを制限する。例えば定常時平面部の下向きの長さが二重床パネルの厚み以下であれば、定常時平面部が建物床に干渉しなくなるが、この場合、定常時平面部により塞がれる開口部はとても小さなものになり、実用的でなくなる。
【0009】
このように、特許文献1又は特許文献2が開示する開口部用蓋は、同じ全体構成に起因して、(1)通線口がパネル外周面から通線時平面部を挟んで奥まったパネル表面内に形成され、下向きとなった定常時平面部が通線口から取り出すケーブルの邪魔になり、隣り合う二重床パネル同士の通線口を一体にできない問題や、(2)定常時平面部の下向きの長さに制約があり、前記制約が開口部の大きさを制限する問題がある。そこで、前記問題(1)(2)を解決すべき課題として、開口部用蓋について検討した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
検討の結果開発したものが、二重床パネルのパネル外周面を凹ませ、パネル表面からパネル裏面まで連通して形成される開口部を平面部により閉蓋する二重床パネルの開口部用蓋において、開口部をすべて塞ぐ大きさの定常時平面部と、前記開口部に隙間を残して塞ぐ大きさの通線時平面部と、前記定常時平面部及び通線時平面部を上下二段に結ぶ連結部とから構成され、定常状態で定常時平面部を上、通線時平面部を下にして、前記定常時平面部により開口部を塞ぎ、通線状態で通線時平面部を上、定常時平面部を下にして、前記通線時平面部により開口部を塞いで残る隙間を通線口として利用させることを特徴とする二重床パネルの開口部用蓋である。
【0011】
本発明の開口部用蓋は、開口部をすべて塞ぐ定常時平面部と、通線口となる隙間を残して前記開口部を塞ぐ通線時平面部とを、上下二段にして連結部により結んだ側面視C字状又はI字状の全体構成である。側面視C字状の全体構成は、定常時平面部及び通線時平面部を平行にして、前記定常時平面部及び通線時平面部の外側外周縁部を水平方向に揃え、前記外側外周縁部を連結部で結んだ構成である。また、側面視I字状の全体構成は、定常時平面部及び通線時平面部を平行にして、前記定常時平面部及び通線時平面部の外側外周縁部を水平方向に揃え、前記外側外周縁部以外の部分を連結部で結んだ構成である。内側外周縁部は、開口部の表面側内周縁に沿った輪郭(外周)及び輪郭に隣接する周縁部分を、外側外周縁部は、前記内側外周縁部を除いた輪郭を及び輪郭に隣接する周縁部分をそれぞれ意味する。
【0012】
定常時平面部は、開口部で分断されたパネル外周面に連続する外側外周縁部と、開口部の表面側内周縁に沿って前記外側外周縁部の両端を結ぶ内側外周縁部とに囲まれた平面視形状で、通線時平面部は、開口部で分断されたパネル外周面から奥まった外側外周縁部と、開口部の表面側内周縁に沿って前記外側外周縁部の両端を結ぶ内側外周縁部とに囲まれた平面視形状であるとよい。これにより、通線時平面部が開口部を塞いで残る隙間は、前記通線時平面部の外側外周縁部より外側に形成され、開口部で分断されたパネル外周面を結ぶ直線を含む「開かれた通線口」を形成できる。
【0013】
定常時平面部は、二重床パネルに大きな開口が形成されることを防ぐため、定常時に開口部を塞ぐ。しかし、ハイヒールの踵が落ち込まない程度の小さな隙間が形成されることは許容され、前記隙間を利用して細いケーブル(例えば通信ケーブル等)であれば引き出せるようにできる。これから、定常時平面部は、開口部で分断されたパネル外周面に連続する外側外周縁部に、前記パネル外周面から一部奥まった凹部を形成し、隣り合う二重床パネルの開口部を塞ぐ開口部用蓋の同じ定常時平面部を突き合わせた時、前記凹部同士が形成する隙間から数本程度のケーブルが引き出せるようにするとよい。凹部に通すケーブルが干渉する場合、通線時平面部や連結部にも凹部を形成するとよい。
【0014】
定常時平面部及び通線時平面部は、開口部を囲むパネル表面に内側外周縁部を上方から直接掛合させてもよいし、開口部に沿ってパネル表面に設けた低段面に内側外周縁部を上方から掛合させてもよい。前者の場合、開口部に対する定常時平面部又は通線時平面部の位置関係は、連結部の周面を開口部の表面側内周縁に内接させて特定する。また、後者の場合、開口部に対する定常時平面部又は通線時平面部の位置関係は、低段面に定常時平面部又は通線時平面部がずれなく収まるようにして特定する。この場合、連結部は、周面を開口部の表面側内周縁に内接させてもよいし、内接させなくてもよい。
【0015】
本発明の開口部用蓋は、開口部を塞ぐように、定常時平面部又は通線時平面部の内側外周縁部を、前記開口部の表面側内周縁に沿ったパネル表面や低段面に載せるだけなので、がたつく虞がある。そこで、連結部は、定常時平面部又は通線時平面部が開口部を塞いだ状態で、凹ませたパネル外周面に圧接する弾性突起を突出させるとよい。本発明の開口部用蓋は、定常時平面部又は通線時平面部の内側外周縁部をパネル表面や低段面に載せた状態で、パネル外周面に圧接させた弾性突起により二重床パネルに対して弾支され、がたつきが抑制又は防止される。弾性突起は、弾性変形できる部位であればよく、個数も問わない。また、弾性突起は、形状も特定されず、連結部の周面から突出するブロック状、棒状又は針状の突起や弾性片が含まれる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の開口部用蓋は、定常時平面部及び通線時平面部を連結部により結んだ側面視C字状又はI字状の全体構成により、開口部を通線時平面部で塞いだ時、(1)通線口が通線時平面部より手前(パネル外周面寄り)に形成され、定常時平面部及び連結部は前記通線時平面部の外側外周縁部より奥に位置するため、前記定常時平面部及び連結部が通線口から取り出すケーブルの邪魔にならない。また、例えば隣り合う二重床パネル同士を突き合わせて一対の通線口を大きな通線口として利用できる。更に、定常時平面部と通線時平面部とは、いずれか一方で開口部を塞いだ場合の他方の位置は連結部の長さによって決まることから、(2)定常時平面部の下向きの長さは基本的に制約がなく、開口部の大きさを自由に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の開口部用蓋と二重床パネルとの関係を表す斜視図である。
図2】本例の開口部用蓋を背面側斜め下から見た斜視図である。
図3】本例の開口部用蓋を正面側斜め上から見た斜視図である。
図4】本例の開口部用蓋の正面図である。
図5】本例の開口部用蓋の背面図である。
図6】本例の開口部用蓋の平面図である。
図7】本例の開口部用蓋の底面図である。
図8】本例の開口部用蓋の左側面図である。
図9】別例1の開口部用蓋を正面側斜め上から見た斜視図である。
図10】別例2の開口部用蓋を正面側斜め上から見た斜視図である。
図11】本例の開口部用蓋の定常時平面部を低段面に載せた定常状態の二重床パネルを表す部分平面図である。
図12】本例の開口部用蓋の定常時平面部を低段面に載せた定常状態の二重床パネルを表す部分正面図である。
図13】本例の開口部用蓋の定常時平面部を低段面に載せた定常状態の二重床パネルを表す図11中A−A断面図である。
図14】本例の開口部用蓋の通線時平面部を低段面に載せた通線状態の二重床パネルを表す部分平面図である。
図15】本例の開口部用蓋の通線時平面部を低段面に載せた通線状態の二重床パネルを表す部分正面図である。
図16】本例の開口部用蓋の通線時平面部を低段面に載せた通線状態の二重床パネルを表す図14中B−B断面図である。
図17】隣り合う二重床パネルの開口部を突き合わせ、本例の開口部用蓋の定常時平面部を各開口部の低段面に載せた定常状態を表す部分平面図である。
図18】隣り合う二重床パネルの開口部を突き合わせ、本例の開口部用蓋の通線時平面部を各開口部の低段面に載せた通線状態を表す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の開口部用蓋1は、図1に見られるように、定常時平面部11(又は通線時平面部12)の内側外周縁部112(内側外周縁部122、後掲図6及び図7参照)を、開口部24の表面側内周縁に沿ってパネル表面21に形成した低段面241に上方から掛合させて載せ、前記開口部24を塞ぐ。本例の開口部用蓋1は、平面視長方形である定常時平面部11及び通線時平面部12それぞれの内側外周縁部112の対向する短辺を揃えているため、例えば定常時平面部11の内側外周縁部112を低段面241に上方から掛合させようとすると、通線時平面部12の内側外周縁部122が前記低段面241に干渉する。このため、本例の開口部用蓋1は、開口部24に側方から差し込み又は引き抜いて着脱する(図1中白抜き矢印参照)。
【0019】
本例の二重床パネル2に設けた開口部24は、隣り合う二重床パネル2の対向するパネル外周面23に一対設けられる。本例の開口部24は、平面視略正方形である二重床パネル2の一辺の中央に、長辺が短辺の2倍で、パネル外周面23に長辺が平行な平面視略長方形で、分断されたパネル外周面23を結ぶ仮想直線と長辺の一方とを一致させている。これにより、隣接する二重床パネル2,2の開口部24,24が突き合わされて形成される開口は、平面視略正方形となり(後掲図17又は図18参照)、開口部用蓋1は各開口部24を塞ぐ。開口部24は、開口部用蓋1を取り除いた状態で、前記平面視略正方形の開口に収まる大きさのコンセントボックス(図示略)を嵌め込むことができる。
【0020】
本例の開口部用蓋1は、図2図8に見られるように、開口部24をすべて塞ぐ大きさの定常時平面部11と、前記開口部24に隙間を残して塞ぐ大きさの通線時平面部12とを上下二段で平行にして、連結部13により結んだ側面視C字状(図8参照)である樹脂一体成形品である。具体的には、定常時平面部11及び通線時平面部12の外側外周縁部111,121を水平方向に揃え、前記外側外周縁部111,121を連結部13の正面131と面一に揃えている。本例の開口部用蓋1は、定常時平面部11及び通線時平面部12の外側外周縁部111,121それぞれに凹部113,123を設け、連結部13の正面131にも凹部136を設け、これら凹部113,123,136を揃えて上下に連通させている。
【0021】
定常時平面部11は、開口部24で分断されたパネル外周面23を結ぶ仮想直線に一致する平面視直線状の外側外周縁部111と、開口部24の表面側内周縁に沿ってパネル表面21に形成された平面視コ字状の低段面241の外周縁と相似に延び、前記外側外周縁部111の両端を結ぶ内側外周縁部112とに囲まれた平面視長方形状である。通線時平面部12は、開口部24で分断されたパネル外周面23を結ぶ仮想直線から奥まった平面視直線状の外側外周縁部121と、開口部24の表面側内周縁に沿ってパネル表面21に形成された平面視コ字状の低段面241の外周縁と相似に延び、前記外側外周縁部121の両端を結ぶ内側外周縁部122とに囲まれた平面視長方形状である。
【0022】
定常時平面部11は、定常状態で開口部24を塞ぎ、二重床パネル2の一部として働く。これから、定常時平面部11は、人の歩行や備品の設置に対する強度を持たせておく必要がある。本例の定常時平面部11は、前記強度を確保するため、裏面に補強リブ135を設けている。これに対し、通線状態の開口部用蓋1は、通線時平面部12により、通線口14(後掲図14参照)を形成して開口部24を塞いでいる。この場合、通線口14からケーブル等を引き出しているため、前記ケーブル等に隣接する通線時平面部12の上を人が歩行したり、備品が設置されたりすることが考えにくい。また、連結部13からの突出量が定常時平面部11より通線時平面部12が短く、連結部13のみで十分な強度を確保できることから、通線時平面部12の裏面は補強リブを設けていない。
【0023】
本例の開口部用蓋1は、定常時平面部11と通線時平面部12の左右方向の幅(=対向する短辺の間隔)が等しいが、定常時平面部11の奥行き長さL(=短辺の長さ)が通線時平面部12の奥行き長さSより長くなっている。これにより、通線時平面部12の内側外周縁122の輪郭を外周縁に一致させて低段面241に載せると、前記奥行き長さLと奥行き長さSの差分として通線口14が形成される(後掲図13及び図14参照)。本発明の開口部用蓋1は、材料や構造又は構成を問わないが、入手が容易かつ安価で、成形に優れている樹脂製(ポリカーボネイト等)や板金による金属製が好ましい。本例の開口部用蓋1は、後述する弾性突起133を一体に設けることから、樹脂一体成形品である。
【0024】
連結部13は、定常時平面部11と通線時平面部12とを結びつければ形状を問わない。本例の連結部13は、開口部用蓋1を軽量化しながら必要な強度を確保するため、上下左右及び斜めの梁を交差させたトラス134(図5参照)を内蔵する直方体外形状で、左右に長尺な正面131を定常時平面部11及び通線時平面部12の平面視直線状の外側外周縁部111,121に揃え、前記定常時平面部11及び通線時平面部12の内側外周縁部112,122に対して左右の側面132,132や背面を内側に引っ込めて、定常時平面部11及び通線時平面部12に上下に挟まれた空間を形成している(図4及び図8参照)。
【0025】
本例の連結部13は、既述したように、定常時平面部11及び通線時平面部12の凹部113,123に連通する凹部136を、正面131の左右中央に上下方向に設けている。上下に連通させた凹部113,123,136は、ハイヒール(図示略)の踵がカーペットを突き破って落ち込まない大きさで、開口部24を定常時平面部11で塞いだ二重床パネル2,2を突き合わせた際、2本のケーブル3,3を引き出す隙間を形成する(後掲図17参照)。本例において、突き合わせた凹部113,123,136により形成される隙間から引き出すケーブル3は、φ13mmを想定している。
【0026】
また、本例の連結部13は、左右の側面132,132それぞれの上下中間位置から、左右対称に一対の弾性突起133,133を突出させている。これに対し、本例のパネル外周面23は、上半分が垂直面、下半分がパネル表面21よりパネル裏面22を小さくする傾斜面で、凹ませたパネル外周面231は、左右の対称位置を正面視ハ字状断面にしている。弾性突起133,133は、開口部用蓋1を側方から開口部24に差し込むと、弾性変形しながら、開口部24を囲む対称位置のパネル外周面231にそれぞれ下方から掛合するように内接し、開口部用蓋1を二重床パネル2に対して弾性支持する。
【0027】
こうした弾性突起133の働きにより、低段面241に定常時平面部11又は通線時平面部12の内側外周縁部112,122を載せた開口部用蓋1は、がたつきなく、安定して開口部24を塞ぐことができる。また、弾性突起133は、開口部用蓋1を二重床パネル2に対して弾性支持するので、二重床パネル2の上を人が歩行した際でも、開口部用蓋1と二重床パネル2とのズレによるガタツキを抑え、音鳴りの発生を抑制又は防止する。更に、弾性突起133は、二重床パネル2に接着されたカーペット(図示略)を引きはがす際、同様に前記カーペットに接着された開口部用蓋1が浮き上がることを抑制又は防止する。
【0028】
連結部13は、定常時平面部11及び通線時平面部12を結ぶ連結部位であれば、正面131を定常時平面部11及び通線時平面部12の外側外周縁部111,121に揃える必要がない。別例1の開口部用蓋1は、図9に見られるように、定常時平面部11及び通線時平面部12の外側外周縁部111,121から内側に控えて、連結部13の正面131を形成してもよい。別例1の開口部用蓋1は、連結部13以外、定常時平面部11及び通線時平面部12の外形状や大きさ、特に奥行き長さL,Sが上記例示(図1図8参照)と同じであるため、代替して利用しうる。また、別例1の開口部用蓋1は、開口部24を定常時平面部11で塞いだ二重床パネル2,2を突き合わせた際、定常時平面部11の凹部113から引き出すケーブル3(図17参照)に対して連結部13が邪魔にならないので、定常時平面部11及び通線時平面部12のみに凹部113,123を設けている。
【0029】
別例2の開口部用蓋1は、図10に見られるように、連結部13の正面131が定常時平面部11及び通線時平面部12の外側外周縁部111,121から内側に控えると共に、通線時平面部12を奥行き方向に平行移動させて引っ込め、定常時平面部11にのみ凹部113を設けるようにしている。これにより、別例2の開口部用蓋1は、開口部24を定常時平面部11で塞いだ二重床パネル2,2を突き合わせた際、定常時平面部11の凹部113から引き出すケーブル3(図17参照)に対して連結部13及び通線時平面部12のいずれも邪魔にならないので、定常時平面部11のみに凹部113を設けている。しかし、通線時平面部12の奥行き長さSは、上記例示の開口部用蓋1(図1図8参照)と同じであるため、代替して利用しうる。
【0030】
開口部用蓋1は、凹部113,123,136を外側に向け、定常時平面部11を上に、通線時平面部12を下にした姿勢で二重床パネル2の開口部24に対して側方から差し込み(図1参照)、図11図13に見られるように、パネル表面21に設けた低段面241に定常時平面部11の内側外周縁部112を上方から掛合させて載せ、開口部24を塞ぐ定常状態とする。二重床パネル2は、通常、開口部24を同じ向きに揃えて並べられる。これから、開口部24は、パネル外周面23に挟まれた開放縁が隣り合う二重床パネル2に閉じられており、定常状態の開口部用蓋1は、隣り合う二重床パネル2との間に凹部113,123,136の隙間を残して、開口部24のほとんどすべてを塞ぐ。前記凹部113,123,136の隙間は、ハイヒール(図示略)の踵が落ち込まない程度の小さなものである。
【0031】
定常状態の開口部用蓋1は、低段面241の外周縁と定常時平面部11の内側外周縁部112とを一致させ、また補強リブ135の先端を凹ませたパネル外周面231の垂直面に付き当て(図11参照)、そして定常時平面部11と連結部13との境界に形成したテーパ面を開口部24の表面側内周縁に内接させて(図12参照)、位置決めされる。また、定常状態の開口部用蓋1は、連結部13の側面132から突出させた弾性突起133,133を弾性変形させ、開口部24を囲む対称位置のパネル外周面231にそれぞれ下方から掛合するように内接させ、二重床パネル2に対して弾性支持される(図13参照)。
【0032】
定常状態の開口部用蓋1は、定常時平面部11の平面視直線状である外側外周縁部111を、低段面241の左右対向位置に架け渡している。既述したように、定常時平面部11は、開口部24を塞いで二重床パネル2のパネル表面21に連続する平面を形成するため、人が歩行したり、備品を載せたりすることから、前記パネル表面21と同等の強度が必要とされる。これから、本例の開口部用蓋1は、外側外周縁部111に正面131を揃えて、定常時平面部11に連結部13を接続し、内部にトラス134を設けた連結部13により補強している。このため、本例の開口部用蓋1は、連結部13が外側外周縁部111よりに偏っている。また、本例の開口部用蓋1は、定常時平面部11全体の強度を高めるため、連結部13から延びる補強リブ135を設けている。
【0033】
開口部用蓋1は、定常状態の開口部用蓋1(図11図13参照)を二重床パネル2の開口部24から側方へ引き出し、凹部113,123,136を外側に向けたまま上下反転させ、通線時平面部12を上に、定常時平面部11を下にした姿勢で二重床パネル2の開口部24に対して側方から差し込み、図14図16に見られるように、パネル表面21に設けた低段面241に通線時平面部12の内側外周縁部122を上方から掛合させて載せ、隙間を残して開口部24を塞いで通線状態とする。二重床パネル2が開口部24を同じ向きに揃えて並べられため、開口部24が隣り合う二重床パネル2に閉じられているので、通線状態の開口部用蓋1は、隣り合う二重床パネル2との間に、定常時平面部11と通線時平面部12との差分に等しい通線口14を形成し、その余の開口部24を塞ぐ。
【0034】
通線状態の開口部用蓋1は、低段面241の外周縁と通線時平面部12の内側外周縁部122とを一致させ(図14参照)、通線時平面部12と連結部13との境界に形成したテーパ面を開口部24の表面側内周縁に内接させて(図15参照)、位置決めされる。また、通線状態の開口部用蓋1は、連結部13の側面132から突出させた弾性突起133,133を弾性変形させ、開口部24を囲む対称位置のパネル外周面231にそれぞれ下方から掛合するように内接させ、二重床パネル2に対して弾性支持される(図13参照)。弾性突起133,133は、連結部13の側面132の上下中間位置に設けているため、低段面241に定常時平面部11を載せても、通線時平面部12を載せても、同じようにパネル外周面231に内接し、開口部用蓋1を弾性支持できる。
【0035】
このほか、低段面241の左右対向位置に架け渡す通線時平面部12の平面視直線状である外側外周縁部121は、正面131を揃えて連結部13を接続し、内部にトラス134を設けた連結部13により補強している。本例の開口部用蓋1は、既述したように、定常時平面部11の外側外周縁部121も、連結部13の正面131に揃えているため、全体として、連結部13が外側外周縁部111よりに偏った側面視C字状になる。これにより、平面時通線部11及び通線時平面部12の外側外周縁部111,121に設けた凹部113,123と連結部13の正面131に設けた凹部136とは、上下方向に連通している。
【0036】
通線時平面部12は、外側外周縁部121から対向する内側外周縁部122までの直交距離=奥行き長さSが、定常時平面部11の同じ奥行き長さLに比べて短いため(図3参照)、内側外周縁部122を低段面241の外周縁に一致させると、通線時平面部12の外側外周縁部121や前記外側外周縁部121に揃えられた連結部13の正面131、そして定常時平面部11の外側外周縁部111が、開口部241により分断されたパネル外周面23を結ぶ直線より奥まった位置となり、通線口14が形成される(図14参照)。本例の通線口14は、通線時平面部12の凹部123を加えた平面視略長方形状である(図14参照)。
【0037】
通線状態では、通線時平面部12の外側外周縁部121、連結部13の正面131や定常時平面部11の外側外周縁部111が、すべて奥まった位置となるため、通線時平面部12、連結部13及び定常時平面部11が、通線口14から取り出すケーブル(図示略)の引き出しを邪魔しない。また、定常時平面部11と補強リブ135は、パネル裏面22に差し込まれるように収納される(図16参照)ので、通線口14から取り出すケーブル(図示略)の取り回す際に邪魔しない。このように、本発明の開口部用蓋1は、通線口14を形成する通線状態において、各部がケーブルの引き出しや取り回しを邪魔しない効果を有する。
【0038】
ここで、図17に見られるように、隣り合う二重床パネル2,2の開口部24,24を突き合わせ、各開口部24を塞ぐ定常時平面部11それぞれに設けた凹部113,123,136を突き合わせて定常状態にすると、例えばφ13mmのケーブル3を2本引き出す隙間を形成できる。凹部113,123,136が突き合わされて形成される隙間は、凹部113,123,136単独より当然に大きくなる(奥行きが2倍)が、前述のように、ケーブル3を引き出すことにより、ハイヒールの踵が落ち込む虞はほとんどない。むしろ、必要最小限の隙間を形成することにより、必要最小限のケーブル(通信線ケーブル等)3を引き出せるので、開口部用蓋1の利便性を向上させる。
【0039】
また、図18に見られるように、隣り合う二重床パネル2,2の開口部24を突き合わせて通線状態にすると、通線時平面部12により形成される通線口14が、通常(図14参照)に比べて2倍となり、より多くのケーブル(図示略)を引き出せる。本発明の開口部用蓋1は、従来と異なり、通線口14が通線時平面部12より手前(パネル外周面23寄り)に形成され、定常時平面部11及び連結部13が前記通線時平面部の外側外周縁部より奥に位置するため、前記定常時平面部11及び連結部13が邪魔になることなく、隣り合う二重床パネル2,2の開口部24を突き合わせて大きな通線口14を形成できる。
【0040】
本例の大きな通線口14は、開口部24と同等の大きさであるから、例えば開口部24を同じ向きに揃えて並べ、隣り合う二重床パネル2のパネル外周面23に閉じられた開口部24から開口部用蓋1を取り除いて全開することも考えられるが、隣り合う二重床パネル2,2の開口部24を突き合わせ、通線時平面部12を載せて大きな通線口14を形成すれば、開口部用蓋1を別途保管する必要がなく、紛失する虞もなくなる。このように、本発明の開口部用蓋1を用いれば、開口部用蓋1を完全に取り除くことなく、開口部24相当の通線口14を形成できる利点が得られる。
【符号の説明】
【0041】
1 開口部用蓋
11 定常時平面部
12 通線時平面部
13 連結部
14 通線口
2 二重床パネル
21 パネル表面
22 パネル裏面
23 パネル外周面
24 開口部
241 低段面
3 ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18