特許第6115934号(P6115934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6115934ガラス板接着用の仮止材、ガラスの加工方法、及び電子機器用カバーガラスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115934
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】ガラス板接着用の仮止材、ガラスの加工方法、及び電子機器用カバーガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/10 20060101AFI20170410BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20170410BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20170410BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   C03C27/10 E
   B32B17/10
   C09J4/02
   C09J11/06
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-288400(P2012-288400)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-129197(P2014-129197A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506051762
【氏名又は名称】ホーヤ ガラスディスク フィリピン インコーポレーテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】591084207
【氏名又は名称】サンライズ・エム・エス・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 勲
(72)【発明者】
【氏名】坂口 誠司
(72)【発明者】
【氏名】桜井 正
(72)【発明者】
【氏名】木村 生
(72)【発明者】
【氏名】吉平 真由子
(72)【発明者】
【氏名】横尾 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宏介
【審査官】 山田 頼通
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−100831(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/089964(WO,A1)
【文献】 特開2010−095627(JP,A)
【文献】 特開2010−079958(JP,A)
【文献】 特開2005−091595(JP,A)
【文献】 特開2004−107602(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/042906(WO,A1)
【文献】 特開2012−229445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00−29/00
B32B 17/10
C09J 4/02
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板同士を接着するための仮止材を用いた接着層を介して相互に固定された複数枚のガラス板からなるガラス板積層体の形状加工処理に対応する、ガラス板接着用の仮止材であって、
前記仮止材は、(メタ)アクリレート成分、発泡剤及び光開始剤を含み、
前記(メタ)アクリレート成分は、(メタ)アクリレート成分を100重量%としたとき、単官能モノマーが60〜90重量%、オリゴマーが10〜40重量%から構成され
前記発泡剤は、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、1,1−アゾビス(シクロヘキサンカルボン酸メチル)、1, 2−ジデヒドロ-1-(1-シアノ-1-メチルエチル)セミカルバジド、2,2'−アゾビス(2,4,4トリメチルペンタン)、ジメチル1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレートから選ばれる1種類以上の化合物を含む
ことを特徴とするガラス板接着用の仮止材。
【請求項2】
前記ガラス板接着用の仮止材の粘度が200mPa・s以下であることを特徴とする請求項1に記載のガラス板接着用の仮止材。
【請求項3】
前記オリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス板接着用の仮止材。
【請求項4】
前記単官能モノマーは、芳香族及び脂環式構造の少なくともいずれかを骨格に有することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のガラス板接着用の仮止材。
【請求項5】
硬化後の前記仮止材のタイプDのデュロメータ硬さは、65〜85であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のガラス板接着用の仮止材。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかに記載のガラス板接着用の仮止材からなる接着層を介して複数枚のガラス板を積層し固定して、ガラス板積層体を形成する積層工程と、
前記ガラス板積層体に対して形状加工処理を施す形状加工処理工程と、
前記形状加工処理工程の後の前記ガラス板積層体から前記接着層を剥離する剥離工程と
を含むことを特徴とするガラスの加工方法。
【請求項7】
前記ガラス板の厚さは、0.1〜1.0mmであることを特徴とする請求項に記載のガラスの加工方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載のガラス板接着用の仮止材からなる接着層を介して複数枚のガラス板を積層し固定して、ガラス板積層体を形成する積層工程と、
前記ガラス板積層体に対して形状加工処理を施す形状加工処理工程と、
前記形状加工処理工程の後の前記ガラス板積層体から前記接着層を剥離する剥離工程と
を含むことを特徴とする電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項9】
前記ガラス板積層体の80℃以上、5分間の温水浸漬により、前記ガラス板積層体から前記接着層を剥離することを特徴とする請求項8に記載の電子機器用カバーガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板同士を接着する接着層を介して相互に固定された複数枚のガラス板からなるガラス板積層体の形状加工処理に対応する、前記接着層を構成するガラス板接着用の仮止材、及びガラスの加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス板同士を接着する接着層を介して相互に固定された複数枚のガラス板からなるガラス板積層体の形状加工処理を行う工程を含むガラスの加工方法としては、例えば特許文献1に開示されている。この文献には、例えば携帯電話のLCD保護レンズやLCD表示ガラス等を得るための素材板ガラスを多数枚積み重ねるとともに、各素材板ガラスを、各素材板ガラス間に介在させた剥離可能な固着剤により一体的に固着してなる素材ガラスブロックを形成し、該素材ガラスブロックを面方向に分割して小面積の分割ガラスブロックを形成し、該分割ガラスブロックの少なくとも外周を加工して平面視製品形状となる製品ガラスブロックを形成し、該製品ガラスブロックを端面加工した後、該製品ガラスブロックを個別に分離する板ガラスの加工方法が記載されている。
【0003】
このような板ガラスの加工方法において用いられる上記剥離可能な固着剤としては、例えば特許文献2に示すようなものがある。特許文献2には、ハードディスク用のガラス基板の穴あけ加工時においてガラス基板同士を仮接着するための接着剤であって、少なくとも、(メタ)アクリレート化合物、光開始剤、及び気体発生剤を含有する仮接着用接着剤が開示されている。この特許文献2に開示されているものは紫外線照射により硬化する光硬化性の接着剤である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−256125号公報
【特許文献2】特開2010−79958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば上記特許文献1に開示されているような、ガラス板同士を接着する接着層を介して相互に固定された複数枚のガラス板からなるガラス板積層体の形状加工処理においては、ガラス積層体の端面部分に例えば回転砥石等を接触させて研削することにより、所望の形状加工を行っている。
本発明者らの検討によれば、このような形状加工処理における加工品質は、ガラス板積層体におけるガラス板同士を接着する接着層の物理的特性が影響することを見出した。
【0006】
なお、上記特許文献2は、円盤状に成型したガラス基板の複数枚を接着剤を用いて貼り合わせて積層し、この円板状の各ガラス基板が水平に載置された状態の積層体に対して上方からドリルで一括して中央部に穴あけ加工を施す際の、ガラス基板同士を仮接着するための上記接着剤を開示している。上記特許文献2には、本発明が課題とするガラス板積層体の端面の形状加工処理における加工品質に関する示唆はない。
従って、従来の特許文献2等に開示されているような仮止用の接着剤を使用しても、形状加工処理の際に欠けや割れ等の問題が発生し、安定した加工品質の向上を図ることが困難な場合がある。
【0007】
本発明はこのような従来の問題を解決すべくなされたものであって、その目的は、ガラス板積層体の形状加工処理における加工品質を向上させることができるガラス板接着用の仮止材、及びガラスの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の構成の発明により上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(構成1の発明)
ガラス板同士を接着する接着層を介して相互に固定された複数枚のガラス板からなるガラス板積層体の形状加工処理に対応する、ガラス板接着用の仮止材であって、(メタ)アクリレート成分、発泡剤及び光開始剤を含み、前記(メタ)アクリレート成分は、(メタ)アクリレート成分を100重量%としたとき、単官能モノマーが60〜90重量%、オリゴマーが10〜40重量%から構成されることを特徴とするガラス板接着用の仮止材である。
【0009】
(構成2の発明)
前記ガラス板接着用の仮止材の粘度が200mPa・s以下であることを特徴とする構成1に記載のガラス板接着用の仮止材である。
(構成3の発明)
前記オリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートであることを特徴とする構成1又は2に記載のガラス板接着用の仮止材である。
【0010】
(構成4の発明)
前記発泡剤は、アゾアミド、アゾアルキル、アゾエステルから選ばれる1種類以上の化合物であることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載のガラス板接着用の仮止材である。
(構成5の発明)
前記単官能モノマーは、芳香族及び脂環式構造の少なくともいずれかを骨格に有することを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載のガラス板接着用の仮止材である。
【0011】
(構成6の発明)
硬化後の前記仮止材のタイプDのデュロメータ硬さは、65〜85であることを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載のガラス板接着用の仮止材である。
【0012】
(構成7の発明)
構成1乃至6のいずれかに記載のガラス板接着用の仮止材からなる接着層を介して複数枚のガラス板を積層し固定して、ガラス板積層体を形成する積層工程と、前記ガラス板積層体に対して形状加工処理を施す形状加工処理工程と、前記形状加工処理工程の後の前記ガラス板積層体から前記接着層を剥離する剥離工程とを含むことを特徴とするガラスの加工方法である。
(構成8の発明)
前記ガラス板の厚さは、0.1〜1.0mmであることを特徴とする構成7に記載のガラスの加工方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガラス板積層体に対する形状加工処理の際に欠けや割れ等の発生を抑制でき、安定した加工品質が得られる。すなわち、ガラス板積層体の形状加工処理における加工品質を向上させることができるガラス板接着用の仮止材、及び該仮止材を用いたガラスの加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るガラスの加工方法を説明するための模式図である。
図2】ガラス板積層体の層構成を示す断面図である。
図3】本発明に係るガラスの加工方法によって得られる電子機器用カバーガラスの一例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
[ガラス板接着用の仮止材]
まず、本発明に係るガラス板接着用の仮止材の実施の形態について説明する。
本発明に係るガラス板接着用の仮止材は、上記構成1にあるように、ガラス板同士を接着する接着層を介して相互に固定された複数枚のガラス板からなるガラス板積層体の形状加工処理に対応する、ガラス板接着用の仮止材であって、(メタ)アクリレート成分、発泡剤及び光開始剤を含み、前記(メタ)アクリレート成分は、(メタ)アクリレート成分を100重量%としたとき、単官能モノマーが60〜90重量%、オリゴマーが10〜40重量%から構成されることを特徴とするガラス板接着用の仮止材である。
【0016】
図2は、ガラス板積層体の層構成を示す断面図である。
図2に示されるように、ガラス板1同士を接着する接着層2を介して相互に固定された複数枚のガラス板1からなるガラス板積層体10において、本発明に係るガラス板接着用の仮止材は上記接着層2を構成するものである。なお、図2では、10枚のガラス板1を各ガラス板間に接着層2を介して積層したガラス板積層体を示しているが、勿論これは一例であって、一般には数十枚程度のガラス基板を積層することが多い。
【0017】
本発明に係る仮止材は、前記ガラス板積層体に対する所定波長の紫外線照射により、前記接着層が硬化可能である。
当該仮止材は、(メタ)アクリレート成分、発泡剤、及び光開始剤を含有している。そして、該(メタ)アクリレート成分は、(メタ)アクリレート成分を100重量%としたとき、単官能モノマー(単官能(メタ)アクリレートモノマー)が60〜90重量%、オリゴマー(アクリレートオリゴマー)が10〜40重量%から構成される。
【0018】
上記単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)クリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド2モル変性)(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド8モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(プロピレンオキサイド2.5モル変性)(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性フタル酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性コハク酸(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、β−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、n−(メタ)アクリロイルオキシアルキルヘキサヒドロフタルイミド、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が好ましく挙げられる。
なお、単官能モノマーとしては、これらの1種又は2種以上を使用しても良い。
【0019】
また、上記オリゴマーとしては、例えば、主鎖骨格が、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、及びこれらの水素添加物、からなる群から選ばれる少なくとも1種であって、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有し、重量平均分子量が1000以上であるオリゴマーを含有することが好ましい。
なお、ここで言う重量平均分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される、標準物質はポリスチレンの場合の重量平均分子量を指す。
【0020】
上記オリゴマー成分としては、例えば1,2−ポリブタジエンウレタン(メタ)アクリレート、前記水素添加物、1,4−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート、ポリイソプレン末端(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリート、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートとしては、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ポリカーボネートジオール変性ウレタンアクリレート、ビスA型エポキシ(メタ)アクリレート等が好ましく挙げられる。
【0021】
上記単官能モノマーを含有することにより、硬化前の仮止材の粘性を下げることができ、仮止材の塗布が容易であり、接着層形成後の気泡の除去も容易に行うことができる。また、上記オリゴマーを含有することにより、硬化後の接着層に靭性をもたせることができ、ガラス板積層体の形状加工処理における加工品質を向上させることができる。
【0022】
従って、単官能モノマーとオリゴマーとからなる(メタ)アクリレート成分において、相対的に単官能モノマーの割合が多いと(相対的にオリゴマーの割合が少ないと)、硬化前の仮止材の粘性を下げて塗布性を良好にすることができるものの、硬化後の接着層の靭性が十分に得られず、加工品質の向上が図れない。一方、相対的に単官能モノマーの割合が少ないと(相対的にオリゴマーの割合が多いと)、硬化後の接着層が靭性を備え、加工品質を向上させることが可能であるものの、硬化前の仮止材の粘性が高くなり、塗布性が悪くなってガラス板間に均一な接着層を形成することが困難となる場合がある。
【0023】
本発明においては、仮止材の良好な塗布性と、加工品質の向上を両立させるため、上記(メタ)アクリレート成分中の単官能モノマーとオリゴマーの配合割合は、単官能モノマーを60〜90重量%、オリゴマーを10〜40重量%とすることが好適である。
【0024】
また、本発明に係る仮止材は、前記ガラス板積層体に対する所定波長の紫外線照射により、前記接着層が硬化可能とするため、上記(メタ)アクリレート成分の他に、光開始剤を含有する。光開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンジル及びその誘導体、エントラキノン及びその誘導体、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のベンゾイン誘導体、ジエトキシアセトフェノン、4−t−ブチルトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、p−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジフェニルジスルフィド、チオキサントン及びその誘導体、カンファーキノン、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−ブロモエチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−メチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸クロライド等のカンファーキノン誘導体、2−メチル−1−[4-(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等のα−アミノアルキルフェノン誘導体、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシポスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル及びオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル)等が挙げられる。
上記光開始剤の含有量は、上記(メタ)アクリレート成分100重量%に対して、1〜10重量%程度とすることが適当である。
【0025】
また、本発明に係る仮止材は、さらに発泡剤としてアゾ化合物を含有することができる。このアゾ化合物は、紫外線照射もしくは所定温度(加温)において発泡可能となる発泡成分であり、アゾ化合物を含有することにより、前記ガラス板積層体に対する形状加工処理工程の後のガラス板積層体から接着層を剥離する剥離工程において、接着層の剥離性を向上させることができる。
本発明においてアゾ化合物の種類は特に制約されるものではないが、取り分け、アゾアミド、アゾアルキル、及びアゾエステルから選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0026】
上記アゾアミドとしては、例えば、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−メチルプロピル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、1,1−アゾビス(シクロヘキサンカルボン酸メチル)、1, 2−ジデヒドロ-1-(1-シアノ-1-メチルエチル)セミカルバジド等が挙げられる。上記アゾアルキルとしては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4,4トリメチルペンタン)等が挙げられる。また、上記アゾエステルとしては、例えば、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート、2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
上記アゾ化合物の含有量としては、上記(メタ)アクリレート成分100重量%に対して、アゾ化合物を1〜30重量%とすることが好ましい。アゾ化合物の含有量が1重量%未満であると、温水で剥がれない。一方、アゾ化合物の含有量が30重量%を超えると、粘度が高くなり、光透過率が低下する。
【0028】
また、本発明に係る仮止材は、上記(メタ)アクリレート成分を含む樹脂成分や、上記光開始剤、アゾ化合物(発泡成分)の他に、本発明の目的を損わない範囲で、例えば、スペーサー、消泡剤、脱泡剤、充填剤等を含有してもよい。
上記スペーサーとしては、アクリル、スチレン、6ナイロン等の粒子が望ましい。
【0029】
本発明に係る仮止材を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリレート成分、上記光開始剤、上記発泡剤(アゾ化合物)、その他の添加剤等を従来公知の方法により混練する方法等が挙げられる。
【0030】
本発明に係る仮止材の硬化前の粘度は、200mPa・s以下である。仮止材の塗布性を良くしてガラス板間に均一な接着層を形成することが可能である。なお、仮止材の硬化前の粘度の測定方法としては、例えば、仮止材の温度が20度のときに、東機産業株式会社製RB-85S形粘度計(H11号ロータ使用)のロータ回転速度を100rpmに設定した状態で測定することができる。
【0031】
また、硬化後の本発明に係る仮止材のタイプDのデュロメータ硬さ(以下、「硬度」とする)は65〜85である。本発明者らの検討によれば、接着層を介して積層されたガラス板積層体に対する形状加工処理における加工品質は、ガラス板同士を接着する接着層の物理的特性が影響しており、特に接着層が適度な靭性を備えることで良好な加工品質が得られることを見出した。なお、硬度の測定方法としては、測定環境の温度を23℃とした条件下で、JIS K 7215(ASTM D2240)に規定された測定方法により測定することができる。
【0032】
[ガラスの加工方法]
本発明は、上記本発明に係る仮止材を用いたガラスの加工方法についても提供するものである。
本発明に係るガラスの加工方法は、上記本発明に係るガラス板接着用の仮止材からなる接着層を介して複数枚のガラス板を積層し固定して、ガラス板積層体を形成する積層工程と、前記ガラス板積層体に対して形状加工処理を施す形状加工処理工程と、前記形状加工処理工程の後の前記ガラス板積層体から前記接着層を剥離する剥離工程とを含むことを特徴とするものである。
【0033】
次に、上記本発明に係るガラスの加工方法について説明する。ここでは、ガラスの加工方法の一実施の形態として、携帯電話機等の電子機器用カバーガラスの製造を例として説明する。
図1は、本発明に係るガラスの加工方法を説明するための模式図である。また、図2は、前述のガラス板積層体の層構成を示す断面図である。また、図3は、本発明に係るガラスの加工方法によって得られる電子機器用カバーガラスの一例の平面図である。
【0034】
通常、大きなサイズのガラス板の積層体を機械加工等により所定の大きさにカッティング(小片化)する。
図1(a)に示すように、ラミネーター40を使用して、フロート法やダウンドロー法等で製造された厚さが例えば0.5mm程度のガラス板1を複数枚(例えば数十枚程度)積層(ラミネート)してガラス板積層体10を形成する(積層工程)。各ガラス板間には、上述の本発明に係るガラス板接着用の仮止材を塗布して接着層2(図2参照)を設ける。接着層2の厚さは特に制約されるものではないが、本発明においては例えば10〜100μm程度が好適である。
【0035】
例えば携帯電話機等の電子機器用カバーガラスを製造する場合、上記ガラス板1を構成するガラスは、化学強化が可能なアモルファスのアルミノシリケートガラスとすることが好ましい。このようなアルミノシリケートガラスからなるガラス板は、化学強化後の強度が高く、電子機器用カバーガラスには好適である。このようなアルミノシリケートガラスとしては、例えば、SiO2が58〜75重量%、Al23が4〜20重量%、Li2Oが0〜10重量%、Na2Oが4〜20重量%を主成分として含有するアルミノシリケートガラスを用いることができる。なお、ガラス板1を構成するガラスとしては、ソーダライムガラスやアルミノボロシリケートガラスを用いてもよい。
【0036】
上記ガラス板1の厚さは、最近の携帯機器等の電子機器の薄型化・軽量化のマーケットニーズに応える観点から例えば0.1mm〜1.0mm程度の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.5mm〜0.7mm程度の範囲である。
【0037】
次に、このガラス板積層体10に対して所定波長の紫外線照射を行い、ガラス板同士を接着する上記複数層の接着層2を硬化させる。この場合の紫外線照射の条件(光源波長、光源出力、照射時間など)は適宜設定することができる。
こうして、ガラス板1同士を接着する接着層2を介して相互に固定された複数枚のガラス板1からなるガラス板積層体10が形成される。
【0038】
次に、図1(b)に示すように、ガラス用カッター50を用いて、上記ガラス板積層体10を所定の大きさの小片に切断して、小片化されたガラス板積層体20を形成する。小片の大きさは、製品のカバーガラスの大きさに外周形状加工に必要なマージン等を加えた大きさを考慮して決定される。なお、小片化したガラス板を積層してガラス板積層体20としてもよい。
【0039】
次に、上記小片化されたガラス板積層体20に対して形状加工処理を施す(形状加工処理工程)。図1(c)に示すように、例えば回転砥石51、52などを使用して形状加工処理を行い、製品カバーガラスの外形形状を形成する。また、レシーバーホールを形成するための孔開け加工を施す場合もある。こうして、形状加工処理を施したガラス板積層体30を形成する。
【0040】
本発明に係る仮止材を用いることによって、ガラス板積層体20のガラス板同士を接着する硬化後の接着層が適度な靭性を発揮し、ガラス板積層体20に対する形状加工処理の際に機械加工による欠けや割れ等の発生を抑制でき、良好で安定した加工品質が得られる。つまり、ガラス板積層体20の形状加工処理における加工品質を向上させることができる。
【0041】
次に、図1(d)に示すように、形状加工処理を施したガラス板積層体30を、例えば温水を収容した液槽60中に浸漬させて、ガラス板積層体30から複数の各接着層2を剥離する(剥離工程)。こうして、積層状態のガラス板は1枚ずつ分離される。
本発明に係る仮止材からなる硬化した接着層を剥離するためには、80℃以上の温水が好適である。浸漬時間は適宜決定することができる。
以上の工程によって、例えば図3に示すような電子機器用カバーガラス3が得られる。
【0042】
なお、携帯電話機等の電子機器に用いられる電子機器用カバーガラスは、大面積、薄型であっても高い強度が要求されるため、上記形状加工処理を施したカバーガラス3に対して化学強化処理を行うことが望ましい。
化学強化処理の方法としては、例えば、ガラス転移点の温度を超えない温度領域、例えば摂氏300度以上500度以下の温度で、イオン交換を行う低温型イオン交換法などが好ましい。化学強化処理とは、溶融させた化学強化塩とガラス板とを接触させることにより、化学強化塩中の相対的に大きな原子半径のアルカリ金属元素と、ガラス板中の相対的に小さな原子半径のアルカリ金属元素とをイオン交換し、ガラス板の表層に該イオン半径の大きなアルカリ金属元素を浸透させ、ガラス板の表面に圧縮応力を生じさせる処理のことである。化学強化塩としては、硝酸カリウムや硝酸ナトリウムなどのアルカリ金属硝酸を好ましく用いることができる。化学強化処理されたガラス板は強度が向上し耐衝撃性に優れているので、特にタッチパネル式の電子機器に用いられるカバーガラスには好適である。
【0043】
以上のようにして、本発明に係るガラスの加工方法を適用して得られたカバーガラス3は、携帯電話機等の電子機器に組み込まれる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例は、仮止材に関するものである。オリゴマーとしてポリエーテル変性ウレタンアクリレートオリゴマーを25重量%、及び単官能モノマーとしてのシクロヘキシル(メタ)アクリレートを75重量%で、(メタ)アクリレート成分として合計100重量%に混合し、光開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンを2重量%、発泡剤として2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)を10重量%添加し、実施例1の仮止材を作成した。得られた仮止材に対して、粘度、硬度、コーティング性、硬化安定性及びチッピング(加工特性)について評価(又は測定)した。この評価結果について表1に示す。
【0045】
ここで、粘度の測定は、次のように行った。実施例1の仮止材の温度を20度に調整し、東機産業株式会社製RB-85S形粘度計(H11号ロータ使用)のロータ回転速度を100rpmに設定した状態で測定した。また、硬度の測定は、次のように行った。測定環境の温度を23℃とした条件下で、JIS K 7215(ASTM D2240)に規定された測定方法により、実施例1の仮止材の硬化後の硬度を測定した。
【0046】
コーティング性の評価は次のように行った。2枚のガラス板(450mm×415mmの0.5mm厚)間に、実施例1の仮止材を塗布して厚さ50μmの接着層を形成し、その後に一方のガラス板を面の中心から外周へ向けて加圧領域を移動させるとともに、10〜1000g/cmの範囲で適宜圧力を変えながらプレスし、接着層に混入した気泡の排出処理を行った。その排出処理後に目視により気泡が残存しているか否かにより評価した。この評価結果に関して、目視により気泡が確認できなければ○とし、気泡が残存していることが確認できた場合には×として表1に示す。
【0047】
硬化安定性の評価は次のように行った。2枚のガラス板(450mm×415mmの0.5mm厚)間に厚さ50μmの接着層を形成して硬化させた際の接着層の外周の部分的な剥離の有無を目視により観察し、接着層に部分的に剥離が生じている場合には剥離している部分の長さを測定した。なお、複数箇所で剥離している場合には、最長の剥離箇所を評価対象とした。この測定結果に関して、接着層の外周に剥離が生じていなければ○、剥離している部分が5mm以下であれば△、剥離している部分の寸法が5mmを超過していれば×として表1に示す。
【0048】
加工特性の評価は次のように行った。10枚のガラス板(450mm×415mmの0.5mm厚)で接着層厚さ50μmの積層体を10cm×5cmの小片に切断して、小片化されたガラス板積層体に対して、回転砥石を使用して形状加工処理を行い、形状加工処理の際に生じたチッピングの長さを測定した。なお、複数箇所でチッピングが生じている場合には、最長のチッピング箇所を評価対象とした。この測定結果に関して、チッピングの長さが10μm以内であれば◎、チッピングの長さが10μmを超えて20μm以内であれば○、チッピングの長さが20μmを超えている場合には×として表1に示す。
【0049】
(実施例2〜15、比較例1〜3)
表1〜3に示す種類の原材料を表1〜3に示す組成で使用したこと以外は実施例1と同様にして仮止材を作成した。なお、実施例2〜15及び比悪例1〜3では、表1〜3のオリゴマー及び単官能モノマーを(メタ)アクリレート成分として合計100重量%に混合し、光開始剤及び発泡剤を表1〜3に示す割合で添加した。得られた仮止材について、実施例1と同様に、粘度、硬度、コーティング性、硬化安定性及び加工特性について評価(又は測定)した。それらの結果を表1〜3に示す。
【0050】
ここで、表1〜3では、一部の成分を簡略化して示す。簡略化した成分の正式名称は以下の通りである。
オリゴマー1:ポリエーテル変性ウレタンアクリレートオリゴマー
オリゴマー2:ポリエステル変性ウレタンアクリレートオリゴマー
オリゴマー3:1,2-ポリブタジエン変性ウレタンメタクリレートオリゴマー
オリゴマー4:脂肪族変性ウレタンアクリレートオリゴマー
光開始剤1:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン
発泡剤1:2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)
発泡剤2:2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル
発泡剤3:2,2'−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]
発泡剤4:1,2-ジデヒドロ-1-(1-シアノ-1-メチルエチル)セミカルバジド
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
(実施例16)
本実施例は、本発明のガラスの加工方法に関する実施例であり、具体的には携帯機器用カバーガラスの製造に関するものである。
以下の(1)積層工程、(2)形状加工処理工程、(3)剥離工程、(4)化学強化処理工程、を経て本実施例の携帯機器用カバーガラスを製造した。
【0055】
(1)積層工程
まず、ラミネーターを用いて、フロート法で製造されたアルミノシリゲートガラスからなる厚さ0.5mmのガラス板を20枚積層した。このアルミノシリケートガラスとしては、SiO:58〜75重量%、Al:4〜20重量%、LiO:3〜10重量%、NaO:4〜13重量%を含有する化学強化用ガラスを使用した。なお、各ガラス板間には、上記実施例1の仮止材を塗布して厚さ50μmの接着層を形成した。こうして、接着層を介して20枚のガラス板を積層したガラス板積層体を作製した。
【0056】
次に、このガラス板積層体に対して紫外線照射を行い、ガラス板同士を接着する上記複数層の接着層を硬化させた。紫外線照射は、波長365nmを含むメタルハライドランプを用い、光源出力、照射時間は適宜調節して行った。
以上のようにして、ガラス板同士を接着する接着層を介して相互に固定された20枚のガラス板からなるガラス板積層体を作製した。
【0057】
次に、ガラス用カッターを用いて、上記ガラス板積層体を所定の大きさ(10cm×5cm)の小片に切断して、小片化されたガラス板積層体を作製した。
【0058】
(2)形状加工処理工程
次に、上記小片化されたガラス板積層体に対して所定の形状加工処理を施した。具体的には、回転砥石などを使用して形状加工処理を行い、製品カバーガラスの外形形状を形成した。
ガラス板積層体の形状加工処理の際に、20μmを超えるチッピングを含む欠けや割れ等の発生はなく、良好で安定した加工品質が得られた。
【0059】
(3)剥離工程
次に、上記形状加工処理を施したガラス板積層体を、80℃以上の温水を収容した液槽中に5分間浸漬させて、ガラス板積層体から複数の各接着層を剥離した。こうして、積層状態のガラス板は1枚ずつ分離された。
【0060】
(4)化学強化処理工程
次に、上記剥離工程によって1枚ずつ分離されたガラス板に対して化学強化処理を施した。化学強化は硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合した化学強化液を用意し、この化学強化溶液を380℃に加熱し、上記ガラス板を約4時間浸漬して化学強化処理を行なった。化学強化を終えたガラス板を硫酸、中性洗剤、純水、純水、IPA、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄し、乾燥した。
【0061】
以上のようにして本実施例の携帯機器用カバーガラスを作製した。作製した本実施例のカバーガラスは、欠けや割れ等の欠陥はなく、高品質のものであった。
【符号の説明】
【0062】
1 ガラス板
2 接着層
3 電子機器用カバーガラス
10 ガラス板積層体
20 小片化されたガラス板積層体
30 形状加工されたガラス板積層体
40 ラミネーター
50 ガラス用カッター
51,52 回転砥石
60 液槽
図1
図2
図3