(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115936
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】水質測定システム及び差圧調整弁
(51)【国際特許分類】
G01N 33/18 20060101AFI20170410BHJP
E21B 43/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
G01N33/18 Z
E21B43/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-14126(P2013-14126)
(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-145648(P2014-145648A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2016年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000133397
【氏名又は名称】株式会社ダイヤコンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100092495
【弁理士】
【氏名又は名称】蛭川 昌信
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100157118
【弁理士】
【氏名又は名称】南 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100097777
【弁理士】
【氏名又は名称】韮澤 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100091971
【弁理士】
【氏名又は名称】米澤 明
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(72)【発明者】
【氏名】岩月 輝希
(72)【発明者】
【氏名】細谷 真一
【審査官】
海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−219865(JP,A)
【文献】
特開2006−349565(JP,A)
【文献】
特開平07−012689(JP,A)
【文献】
特開2008−128780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/18
G01N 1/00
E21B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧性測定電極をフローセルに収容し、前記フローセルには、給水弁を備えた給水管と排水弁を備えた排水管を接続して高圧地下水を通水して前記耐圧性測定電極により水質を測定するようにした水質測定システムにおいて、
前記給水管における前記給水弁と前記フローセルの間と前記排水管における前記フローセルと前記排水弁の間には差圧調整弁を介在させてなり、
前記差圧調整弁は、前記給水管及び前記排水管より径が大きい径大部からなる差圧調整室を有しており、
前記差圧調整室には、前記給水管及び前記排水管より大径であり、かつ、前記径大部より小径の円板状の遮水板が通水方向に対し板面が垂直となるように配されており、
前記遮水板は2つのOリングの間、及び、2つの圧縮状態のばねの間に挟まれて設けられ、
2つの圧縮状態の前記ばねにより前記遮水板が2つの前記Oリングの中間位置に保持されると共に、上流側と下流側の差圧が所定の圧力を超えると前記遮水板が何れかの前記Oリングに押接された状態となりリーク用流路のみで通水され、
前記リーク用流路が前記遮水板に設けられる溝であることを特徴とする水質測定システム。
【請求項2】
耐圧性測定電極をフローセルに収容し、前記フローセルには、給水弁を備えた給水管と排水弁を備えた排水管を接続して高圧地下水を通水して前記耐圧性測定電極により水質を測定するようにした水質測定システムにおいて、
前記給水管における前記給水弁と前記フローセルの間と前記排水管における前記フローセルと前記排水弁の間には差圧調整弁を介在させてなり、
前記差圧調整弁は、前記給水管及び前記排水管より径が大きい径大部からなる差圧調整室を有しており、
前記差圧調整室には、前記給水管及び前記排水管より大径であり、かつ、前記径大部より小径の円板状の遮水板が通水方向に対し板面が垂直となるように配されており、
前記遮水板は2つのOリングの間、及び、2つの圧縮状態のばねの間に挟まれて設けられ、
2つの圧縮状態の前記ばねにより前記遮水板が2つの前記Oリングの中間位置に保持されると共に、上流側と下流側の差圧が所定の圧力を超えると前記遮水板が何れかの前記Oリングに押接された状態となりリーク用流路のみで通水され、
前記リーク用流路が前記Oリングに設けられる溝であることを特徴とする水質測定システム。
【請求項3】
耐圧性測定電極をフローセルに収容し、前記フローセルには、給水弁を備えた給水管と排水弁を備えた排水管を接続して高圧地下水を通水して前記耐圧性測定電極により水質を測定するようにした水質測定システムにおいて、
前記給水管における前記給水弁と前記フローセルの間と前記排水管における前記フローセルと前記排水弁の間には差圧調整弁を介在させてなり、
前記差圧調整弁は、前記給水管及び前記排水管より径が大きい径大部からなる差圧調整室を有しており、
前記差圧調整室には、前記給水管及び前記排水管より大径であり、かつ、前記径大部より小径の円板状の遮水板が通水方向に対し板面が垂直となるように配されており、
前記遮水板は2つのOリングの間、及び、2つの圧縮状態のばねの間に挟まれて設けられ、
2つの圧縮状態の前記ばねにより前記遮水板が2つの前記Oリングの中間位置に保持されると共に、上流側と下流側の差圧が所定の圧力を超えると前記遮水板が何れかの前記Oリングに押接された状態となりリーク用流路のみで通水され、
前記リーク用流路が前記径大部に設けられる溝であることを特徴とする水質測定システム。
【請求項4】
配管より径が大きい径大部からなる差圧調整室を有しており、
前記差圧調整室には、前記配管より大径であり、かつ、前記径大部より小径の円板状の遮蔽板が通流方向に対し板面が垂直となるように配されており、
前記遮蔽板は2つのOリングの間、及び、2つの圧縮状態のばねの間に挟まれて設けられ、
2つの圧縮状態の前記ばねにより前記遮蔽板が2つの前記Oリングの中間位置に保持されると共に、上流側と下流側の差圧が所定の圧力を超えると前記遮蔽板が何れかの前記Oリングに押接された状態となりリーク用流路のみで通流され、
前記リーク用流路が前記遮蔽板に設けられる溝であることを特徴とする差圧調整弁。
【請求項5】
配管より径が大きい径大部からなる差圧調整室を有しており、
前記差圧調整室には、前記配管より大径であり、かつ、前記径大部より小径の円板状の遮蔽板が通流方向に対し板面が垂直となるように配されており、
前記遮蔽板は2つのOリングの間、及び、2つの圧縮状態のばねの間に挟まれて設けられ、
2つの圧縮状態の前記ばねにより前記遮蔽板が2つの前記Oリングの中間位置に保持されると共に、上流側と下流側の差圧が所定の圧力を超えると前記遮蔽板が何れかの前記Oリングに押接された状態となりリーク用流路のみで通流され、
前記リーク用流路が前記Oリングに設けられる溝であることを特徴とする差圧調整弁。
【請求項6】
配管より径が大きい径大部からなる差圧調整室を有しており、
前記差圧調整室には、前記配管より大径であり、かつ、前記径大部より小径の円板状の遮蔽板が通流方向に対し板面が垂直となるように配されており、
前記遮蔽板は2つのOリングの間、及び、2つの圧縮状態のばねの間に挟まれて設けられ、
2つの圧縮状態の前記ばねにより前記遮蔽板が2つの前記Oリングの中間位置に保持されると共に、上流側と下流側の差圧が所定の圧力を超えると前記遮蔽板が何れかの前記Oリングに押接された状態となりリーク用流路のみで通流され、
前記リーク用流路が前記径大部に設けられる溝であることを特徴とする差圧調整弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧配管内に流れる高圧の液体や気体などの流体を対象として計測機器を設置、計測・メンテナンスを行う分野に関するものであり、特に水質測定システム及び該システムに使用する計測機器に作用する流体(例えば、高圧地下水)の圧力を調整するのに好適な差圧調整弁に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧状態にある液体(高圧地下水)を対象とした物理化学パラメータ(pHや酸化還元電位など)の測定においては、溶存ガスの脱ガスによる測定値の変化を防止するため、高圧環境下に計測機器を設置して測定を行う必要がある。この計測作業においては、計測機器を流体の流れる配管に取り付け測定を開始するときに、急激な液体の流入に伴うウオーターハンマー現象により計測機器に急激な圧力上昇が生じる。逆に、維持管理のため高圧環境から計測機器を取り外す際には計測機器に急激な圧力低下が生じる。市販されている耐圧性の計測機器は、ウオーターハンマー現象などによる急激な圧力上昇や低下があると、計測機器内の電極内部液の押し込みまたは逸散により電極が故障(破損)してしまうため、流体の流入を緩慢にして急激な圧力変化を防止する必要がある。
【0003】
従来、流体の流入を緩慢にするためのバルブとして、ニードルバルブなどの流量調整弁が存在しているが、流入側と流出側の圧力差がなくなった後も流速が制限されるため、計測作業の開始及び終了に際してバルブを解放する作業が必要であり、遠隔地などメンテナンスが容易でない環境では、メンテナンス作業に時間を要するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−63825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、計測機器への急激な流体(高圧地下水)の流入または流出を抑制し、ウオーターハンマー現象などによる圧力変化を緩慢にして計測機器を破損から保護するとともに、計測機器にかかる圧力が安定した後は流体(高圧地下水)が測定に好ましい流速で流れる水質測定システム及び該システムに使用するのに好適な差圧調整弁を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水質測定システムは、耐圧性測定電極をフローセルに収容し、前記フローセルには、給水弁を備えた給水管と排水弁を備えた排水管を接続して流体(高圧地下水)を通水するように構成し、更に、前記給水管における前記給水弁と前記フローセルの間と前記排水管における前記フローセルと前記排水弁の間には差圧調整弁を介在させた構成とする。
ここで、本発明に係る水質測定システムにおいては、前記差圧調整弁は、前記給水管及び前記排水管より径が大きい径大部からなる差圧調整室を有しており、前記差圧調整室には、前記給水管及び前記排水管より大径であり、かつ、前記径大部より小径の円板状の遮水板が通水方向に対し板面が垂直となるように配されており、前記遮水板は2つのOリングの間、及び、2つの圧縮状態のばねの間に挟まれて設けられ、2つの圧縮状態の前記ばねにより前記遮水板が2つの前記Oリングの中間位置に保持されると共に、上流側と下流側の差圧が所定の圧力を超えると前記遮水板が何れかの前記Oリングに押接された状態となりリーク用流路のみで通水され、前記リーク用流路が前記遮水板に設けられる溝であることを特徴としている。
また、本発明に係る水質測定システムにおいては、前記差圧調整弁は、前記給水管及び前記排水管より径が大きい径大部からなる差圧調整室を有しており、前記差圧調整室には、前記給水管及び前記排水管より大径であり、かつ、前記径大部より小径の円板状の遮水板が通水方向に対し板面が垂直となるように配されており、前記遮水板は2つのOリングの間、及び、2つの圧縮状態のばねの間に挟まれて設けられ、2つの圧縮状態の前記ばねにより前記遮水板が2つの前記Oリングの中間位置に保持されると共に、上流側と下流側の差圧が所定の圧力を超えると前記遮水板が何れかの前記Oリングに押接された状態となりリーク用流路のみで通水され、前記リーク用流路が前記Oリングに設けられる溝であることを特徴としている。
また、本発明に係る水質測定システムにおいては、前記差圧調整弁は、前記差圧調整弁は、前記給水管及び前記排水管より径が大きい径大部からなる差圧調整室を有しており、前記差圧調整室には、前記給水管及び前記排水管より大径であり、かつ、前記径大部より小径の円板状の遮水板が通水方向に対し板面が垂直となるように配されており、前記遮水板は2つのOリングの間、及び、2つの圧縮状態のばねの間に挟まれて設けられ、2つの圧縮状態の前記ばねにより前記遮水板が2つの前記Oリングの中間位置に保持されると共に、上流側と下流側の差圧が所定の圧力を超えると前記遮水板が何れかの前記Oリングに押接された状態となりリーク用流路のみで通水され、前記リーク用流路が前記径大部に設けられる溝であることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係る差圧調整弁は、配管より径が大きい径大部からなる差圧調整室を有しており、前記差圧調整室には、前記配管より大径であり、かつ、前記径大部より小径の円板状の遮蔽板が通流方向に対し板面が垂直となるように配されており、前記遮蔽板は2つのOリングの間、及び、2つの圧縮状態のばねの間に挟まれて設けられ、2つの圧縮状態の前記ばねにより前記遮蔽板が2つの前記Oリングの中間位置に保持されると共に、上流側と下流側の差圧が所定の圧力を超えると前記遮蔽板が何れかの前記Oリングに押接された状態となりリーク用流路のみで通流され、前記リーク用流路が前記遮蔽板に設けられる溝であることを特徴とする。
また、本発明に係る差圧調整弁は、配管より径が大きい径大部からなる差圧調整室を有しており、前記差圧調整室には、前記配管より大径であり、かつ、前記径大部より小径の円板状の遮蔽板が通流方向に対し板面が垂直となるように配されており、前記遮蔽板は2つのOリングの間、及び、2つの圧縮状態のばねの間に挟まれて設けられ、2つの圧縮状態の前記ばねにより前記遮蔽板が2つの前記Oリングの中間位置に保持されると共に、上流側と下流側の差圧が所定の圧力を超えると前記遮蔽板が何れかの前記Oリングに押接された状態となりリーク用流路のみで通流され、前記リーク用流路が前記Oリングに設けられる溝であることを特徴とする。
また、本発明に係る差圧調整弁は、配管より径が大きい径大部からなる差圧調整室を有しており、前記差圧調整室には、前記配管より大径であり、かつ、前記径大部より小径の円板状の遮蔽板が通流方向に対し板面が垂直となるように配されており、前記遮蔽板は2つのOリングの間、及び、2つの圧縮状態のばねの間に挟まれて設けられ、2つの圧縮状態の前記ばねにより前記遮蔽板が2つの前記Oリングの中間位置に保持されると共に、上流側と下流側の差圧が所定の圧力を超えると前記遮蔽板が何れかの前記Oリングに押接された状態となりリーク用流路のみで通流され、前記リーク用流路が前記径大部に設けられる溝であることを特徴とする。
これにより、本発明に係る差圧調整弁は、遮蔽板(遮水板)の上流側と下流側間に大きな差圧が生じた場合には該遮蔽板を中立状態に保持するばねに逆らって一時的に移動させて流路を閉じることにより、耐圧性測定電極(計測機器)に作用する圧力の急激な変化を防止する。そして、流体のリーク用流路を設けて少量の通流(通水)を行い、この通流によって遮蔽板における上流側と下流側の差圧が所定の圧力に低下すると該遮蔽板を保持するばねの力により該遮蔽板を中立状態に戻して流路を開放することにより流体(高圧地下水)が好ましい流量で円滑に流れるようにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、測定開始及び終了時に計測機器(耐圧性測定電極)に作用する液体(高圧地下水)の急激な圧力変化を抑制して計測機器の破損を防止するとともに、計測機器にかかる圧力が安定した後は流体(高圧地下水)が測定に好ましい流量で流れる水質測定システム及び該システムに使用するのに好適な差圧調整弁を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例を示す水質測定システムの模式図である。
【
図2】差圧調整弁の内部構成を示す縦断正面図及び側面図である。
【
図3】差圧調整弁の動作状態を示す縦断正面図であり、(a)は差圧が大きい状態、(b)は差圧が小さい状態を示している。
【
図4】差圧調整弁による圧力変化特性を模擬試験(フローセル取り付け時)したときの圧力測定データの曲線図である。
【
図5】差圧調整弁による圧力変化特性を模擬試験(フローセル取り外し時)したときの圧力測定データの曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水質測定システムは、耐圧性測定電極をフローセルに収容して計測機器を構成し、前記フローセルには、給水弁を備えた給水管と排水弁を備えた排水管を接続して高圧地下水を循環させて前記耐圧性測定電極により高圧地下水の水質を測定するように構成し、前記給水管における前記給水弁と前記フローセルの間と前記排水管における前記フローセルと前記排水弁の間には差圧調整弁を介在させる。
【0011】
前記差圧調整弁は、上流側と下流側の差圧に応動して流路を開閉する遮水板を備え、前記遮水板は、上流側と下流側で大きな差圧が生じた場合には遮水板を中立状態に保持するばねに逆らって一時的に移動して流路を閉じ、リーク用流路を通して少量の通水を可能とし、この通水によって遮水板における上流側と下流側の差圧が所定の圧力に低下すると該遮水板を保持するばねの力により遮水板が中立状態に戻って流路を開放することにより高圧地下水が所定の流量で流れるように構成する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の実施例を示す水質測定システムの模式図である。
【0013】
この水質測定システムにおいて、計測機器は、耐圧性測定電極1をフローセル2に収容して構成する。そして、フローセル2には、給水弁3を備えた給水管4と排水弁5を備えた排水管6が接続される。前記給水管4における前記給水弁3と前記フローセル2の間と前記排水管6における前記フローセル2と前記排水弁5の間には差圧調整弁7、8を介在させて前記フローセル2内の水圧の急変を防止する。
【0014】
前記差圧調整弁7、8は同一構成部品であるので、差圧調整弁7を対象にして、
図2を参照して内部構成を説明する。
【0015】
この差圧調整弁7は、給水管4の途中に介在させる差圧調整室7aを構成するための径大部7b1、7c1を有する2つの筒状体7b、7cを備える。径大部7b1、7c1は突き合わせて接続ねじ7dで締め付けることによって両径大部7b1、7c1を結合することにより内部に前記差圧調整室7aを形成する。
【0016】
前記差圧調整室7aは、筒状体7b、7cの径大部7b1、7c1の側壁面にOリング
7e、7fを備え、この両Oリング7e、7fの間に遮蔽板として円板状の遮水板7gを進退自在に収容する。この遮水板7gは、筒状体7b、7cの径大部7b1、7c1の内径よりも僅かに小径に形成することにより、この遮水板7gが何れのOリング7e、7fにも押接されていない状態ではその外周を通して自由に流れるように構成する。このときの流通量は、水質測定に望ましい量となるように構成部品の寸法を設定する。
【0017】
ばね7h、7iは、径大部7b1、7c1の側壁面と前記遮水板7gの間に圧縮状態に配置されて前記遮水板7gを前記両Oリング7e、7fの中間位置に保持するように機能する。
【0018】
なお、前記遮水板7gの外周縁部には、該遮水板7gが何れのOリング7e、7fに押接された状態でも僅かな通水を可能にするリーク用流路(例えば、細溝)7g1を備える。この僅かな通水量は、耐圧性測定電極1を損傷しないようにフローセル2内の水圧を徐々に上昇(下降)させることができる量に設定する。なお、このリーク用流路7g1はOリング7fや筒状体7cの径大部7c1においてOリング7fが当接する内壁面に当接幅よりも広く形成して備えることも可能である。また、Oリング7e、7fにステンレス線を巻いて絞ることにより該Oリング7e,7fの外周にリーク用流路溝を形成する構成とすることも可能である。
【0019】
この水質測定システムは、給水管4からフローセル2に高圧地下水を供給し、排水管6からフローセル2内の高圧地下水を排出するようにしてフローセル2内に高圧地下水を循環させながらフローセル2内の耐圧性測定電極1によって高圧地下水の水質を測定するように機能する。
【0020】
測定時におけるフローセル2に対する高圧地下水の給水(循環)は給水弁3と排水弁5を開放することにより行い、測定終了時には給水弁3と排水弁5を閉じてフローセル2に対する高圧地下水の循環を停止し、そして、計測機器メンテナンス時におけるフローセル2内の高圧地下水の排水は給水弁3を閉じた状態で排水弁5を開放することにより行う。
【0021】
測定開始時における給水において、フローセル2内の水圧が低い状態で給水管4から高圧地下水が急激に流入してフローセル2内の水圧を急激に上昇させるような事態が発生したときには、
図3(a)に示すように、差圧調整弁7における差圧調整室7aにおける上
流側(給水弁3側)の水圧が急に上昇し、この差圧調整室7aに配置した遮水板7gが押されてばね7iの伸力に逆らって下流側(フローセル2側)に移動してOリング7fに押接されることから、差圧調整弁7が閉じた状態になって、給水管4からの高圧地下水が低圧状態にあるフローセル2内に急激に流れ込んでフローセル2内の水圧が急激に上昇して耐圧性測定電極1を破損するのを防止する。しかしながら、遮水板7gにはリーク用流路7g1が形成されていることから、このリーク用流路7g1を通して少量の通水が行われ、フローセル2内の水圧を徐々に上昇させて、差圧が小さくなった後に
図3(b)に示す
ように地下水を流し、耐圧性測定電極1による水質測定を可能にする。
【0022】
測定終了時には、給水弁3と排水弁5を閉じてフローセル2に対する高圧地下水の循環を停止する。
【0023】
そして、測定機器のメンテナンス時におけるフローセル2からの高圧地下水の排水は、給水弁3を閉じた状態で排水弁5を開放することにより行う。この排水時に水圧が高い状態のフローセル2から該フローセル2内の高圧地下水が排水管6を通して急激に流出してフローセル2内の水圧が急激に低下するような事態が発生したときには、差圧調整弁8が機能して高圧地下水の急激な流出を抑制する。この差圧調整弁8の機能を同一構成の差圧調整弁7を代用して説明すると、差圧調整室7aにおける下流側(排水弁5側)の水圧が
急に低下することから、この差圧調整室7aに配置した遮水板7gが押されてばね7iの伸力に逆らって下流側(反フローセル2側)に移動してOリング7fに押接されて差圧調整弁8が閉じた状態になり、フローセル2内の高圧地下水が排水管6から急激に流出して急激に水圧を低下させることにより耐圧性測定電極1が破損するのを防止する。しかしながら、遮水板7gにはリーク用流路7g1が形成されていることから、このリーク用流路7g1を通して少量の通水(排水)が行われ、フローセル2内の水圧を徐々に低下させて耐圧性測定電極1を破損することなく排水を実現することができる。
【0024】
フローセル2内の高圧地下水の圧力が安定している状態では、
図3(b)に示すように
、何れの差圧調整弁7、8の遮水板7gにも大きな差圧が作用しないことから該遮水板7gはばね7h、7iの伸力によってOリング7e、7fの中間の位置に保持され、高圧地下水は、遮水板7gの外周及び該遮水板7gとOリング7e、7fの間を通って水質測定に好ましい流量で流通する。
【0025】
この実施例では、ばね7h、7iの伸力により遮水板7gの前後の差圧が0.1〜0.2MPa以上の場合に遮水板7gがOリング7fに密着し、リーク用流路7g1を介した
流れとなる。また、差圧減少条件では差圧が0.02MPa未満になると遮水板7gがOリング7fから離れるようにしているが、伸力の異なるばねを付け替え使用することで任意の差圧調整が可能である。
【0026】
【表1】
因みに、表1は、差圧調整弁による圧力変化特性を模擬試験(フローセル取り付け時、フローセル取り外し時)したときの圧力測定データを示している。圧力の変化速度は、配管フローセルの容積に依存する。この模擬試験は、流入側及び流出側の容積を10cc程度の規模で行ったものであり、実際の容積はこれよりも大きくなるので、圧力の変化は更に緩慢になる。
【0027】
また、
図4及び
図5は、これらの圧力測定データを曲線図で示したものである。
【0028】
因みに、この模擬試験において使用した部品の寸法は、差圧調整弁7(8)は外径75mm、厚さ67mmであり、接続配管(給水管4と排水管6)は外径6mm、内径4mmであり、リーク用流路7g1は、Oリング7e、7fに0.1mmφのステンレス線を巻いて絞ることにより形成した溝によって構成し、その断面積は、0.0025mm
2程度
である。
【符号の説明】
【0029】
1…耐圧性測定電極、2…フローセル、3…給水弁、4…給水管、5…排水弁、6…排水管、7、8…差圧調整弁、7a…差圧調整室、7e、7f…Oリング、7g…遮水板、7g1…リーク用流路、7h、7i…ばね。