特許第6115959号(P6115959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115959
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】流体熱交換装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 3/10 20060101AFI20170410BHJP
   F24H 3/00 20060101ALI20170410BHJP
   F24H 1/10 20060101ALN20170410BHJP
【FI】
   F24H3/10 A
   F24H3/00 B
   !F24H1/10 C
【請求項の数】19
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-255813(P2013-255813)
(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公開番号】特開2015-114033(P2015-114033A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2015年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】305054854
【氏名又は名称】株式会社フィルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】古村 雄二
(72)【発明者】
【氏名】村 直美
(72)【発明者】
【氏名】西原 晋治
(72)【発明者】
【氏名】清水 紀嘉
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05658537(US,A)
【文献】 特開2011−001591(JP,A)
【文献】 特開2004−333083(JP,A)
【文献】 米国特許第05016707(US,A)
【文献】 特開2013−235945(JP,A)
【文献】 特開2004−144461(JP,A)
【文献】 特開2011−258386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/10−1/16
F24H 3/00
F24H 3/06
F24H 3/10
F22G 3/00
F28D 7/16
F28F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートの表裏両面にタブを複数段一方向に並べて設けてあり,片面のひとつのタブが反対面の連接する二つタブと重なる部分があり,当該重なり部分には両面タブを連結するタブの深さより長い孔が設けられてあり,両面のタブはプレートの両面に備えられ、加熱したあるいは冷却した密閉板2枚で気密に密閉されてあり,当該プレートの一方の端のタブに流体を導入する導入口が備えてあり,他方の端のタブに当該流体の吹き出し口が備えてあり,前記流体が前記密閉板に高速に衝突することにより当該密閉板と当該流体が熱交換することを特徴とする流体熱交換装置。
【請求項2】
前記流体がガスまたは液体であることを特徴とする請求項1記載の流体熱交換装置。
【請求項3】
前記ガスが窒素やアルゴン,ヘリューム,炭化水素,フッ化炭素を含む不活性ガスである,あるいは水素または水素を放出する還元ガス,酸素やイオウ,セレン,テルルなど6属の元素を含むガスである,あるいはフッ素など7属の元素を含むガスである,あるいは当該ガスの複数組み合わせたガスであることを特徴とする請求項2記載の流体熱交換装置。
【請求項4】
前記ガスが水または空気を含むガスであることを特徴とする請求項2または3記載の流体熱交換装置。
【請求項5】
前記液体が水であることを特徴とする請求項2記載の流体熱交換装置。
【請求項6】
前記密閉板と前記プレートが金属,または異種金属を被覆した金属であることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の流体熱交換装置。
【請求項7】
前記密閉板と前記プレートが石英やアルミナ,シリコンカーバイドなどを含むセラミクス,またはカーボンナノチューブやグラフェンなどのカーボンを含む複合材料であることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の流体熱交換装置。
【請求項8】
前記プレートを加熱することを特徴とする請求項1から7のいずれか記載の流体熱交換装置。
【請求項9】
前記プレートを冷却することを特徴とする請求項1から8のいずれか記載の流体熱交換装置。
【請求項10】
前記流体熱交換装置を流れと直角方向に拡張して,または並列接続して,流体の導入口と出口を複数設ける,または流体出口形状をスリット状に長くすること特徴とする請求項1から9のいずれか記載の流体熱交換装置。
【請求項11】
3枚の前記密閉板で2枚の前記プレートをサンドイッチにし,中心の密閉板の熱をそれを挟む当該プレートを介して流体に伝えること特徴とする請求項1から10のいずれか記載の流体熱交換装置。
【請求項12】
加熱または冷却する構造を有する基体面に複数のタブを隔離して配列させ,隣接するタブ同士を複数の孔で連結させ,当該孔を通る流体をタブの壁に高速に衝突させ,当該壁と当該流体間で熱交換をさせ,当該配列の一方の端のタブから導入した流体を当該配列の反対側の端のタブから放出させる流路を備え,前記孔は前記タブが配列されている方向に対して交差する方向に設けられており、当該流体の上流下流の関係にある直近の孔の軸が重ならないことを特徴とする流体熱交換装置。
【請求項13】
前記流路が円柱または角柱の基体表面に形成されたことを特徴とする請求項12記載の流体熱交換装置。
【請求項14】
前記流路の前記基体の材料が金属または多元金属,または異種金属を被覆した積層金属,または金属の酸化物や酸化シリコン,酸化アルミニューム,酸化チタン,酸化ニッケル,シリコンカーバイドなどを含むセラミクス,またはシリコンカーバイドを被覆したカーボン,またはカーボンナノチューブやグラフェンなどのカーボンを含む複合材料であることを特徴とする請求項12または13記載の流体熱交換装置。
【請求項15】
前記流体が窒素やアルゴン,ヘリューム,炭化水素,フッ化炭素を含む不活性ガス,あるいは水素または水素を放出する還元ガス,酸素やイオウ,セレン,テルルなど6属の元素を含む酸化ガス,フッ素など7属のハロゲン元素を含むガスであることを特徴とする請求項12から14のいずれか記載の流体熱交換装置。
【請求項16】
前記流体が水または空気を含むガスであることを特徴とする請求項12から15のいずれか記載の流体熱交換装置。
【請求項17】
前記流体が水または水溶液であることを特徴とする請求項12から15のいずれか記載の流体熱交換装置。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか記載の流体熱交換装置を複数、直列接続し、それぞれの流体熱交換装置の設定温度を変えて用いる流体熱交換装置。
【請求項19】
請求項1から8、10から18のいずれか記載の流体熱交換装置で作り出した高温スチームと有機物を接触させる装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,流体,特にガスを瞬時に加熱または冷却する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱交換装置として例えばガスを加熱する装置がある。一般に最もよくも用いられる機構は加熱したパイプにガスを通じて加熱する機構である。または,フィンのついたパイプに加熱した流体を流し,そのフィンの間を通じてガスを加熱する。これはガスの加熱だけでなく,液体の加熱や水の蒸気を作るときもよく使用される。
【0003】
ガスを加熱するのと反対にガスを冷却する装置も同様の機構である。この機構が現在最も一般的な機構である。
【0004】
この一般的な機構を改善する従来の発明例を図1図2に示した。
【0005】
図1は衝突噴流という加熱機構を実現した一例の特許(再公表特許W02006/030526)の図を模式的に転写したものである。パイプを通過したガスが加熱した空洞円板にあたり熱交換する。加熱のためのランプヒーターは図示してない。
【0006】
図2は板状の形状をした加熱ガスを瞬時に発生させる装置の特許の図(特開2010−001541号公報,膜形成方法および膜形成装置の図5)を転写したものである。
【0007】
ガスを瞬時に加熱して高温ガスを噴き出す装置の応用には,暖房や乾燥だけでなく,基板の上に塗布したさまざまの材料(金属や誘電体など)を加熱して焼成する工程がある。以上の発明は水などの液体の加熱にも有効である。
【0008】
以下,加熱を例に述べるが,同技術は冷却にも応用できるので,本発明の名称は総合的に流体熱交換装置とする。本発明はガスを瞬時に加熱または冷却する装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】再公表特許W02006/030526
【特許文献2】特開2010−001541号公報
【特許文献3】特開2011−001591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
熱の交換効率をよくしてガスを加熱するまたは冷却する装置をできるだけ小型にしたい。また構造材料を選び製造方法を簡単にし,安価に製造したい。
【0011】
例えば加熱するとき温度範囲も室温から1000℃またはそれ以上の温度を実現したい。加工が簡単になれば製造コストも安価にできる。安価になるとガス加熱装置の応用産業が広がる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
課題を解決する本発明の基本機構を図3に示す。図3は熱交換を効率よくさせる基本原理を示す。
【0013】
図3はプレートと密閉板で熱交換させる機構の模式図である。プレートは高速ガスを作り出し,それを密閉板に衝突させることを連続して起こさせる。
【0014】
プレート300上面にはタブG11,G21が,下面にはタブG12,G22が作られている。当該タブは密閉板303,305でプレートの上と下に流路の一部として密閉されてある。タブ12はタブG11,G21をまたぐ平面配置で連結孔H12,H21で連結されている。
【0015】
タブ21はタブG12,G22をまたぐ平面配置で連結孔H21,H22で連結されている。タブ配列の右端のタブG11には流体導入口301がある。タブ配列の左端のタブG22には流体出口307が連結されてある。
【0016】
流体導入口から導入される導入流体302は密閉された上記タブと連結孔G11,H12,G12,H21,G21,H22,G22を経由して流体出口307より放出流体308として放出される。密閉板303,305にはヒーター304,305が備えられ加熱されている。ヒーターは何本でも望む投入電力に応じて自由に備えられる。
【0017】
細い連結孔H12を通過した流体は速度を増して垂直に密閉板305に高速で衝突する。この垂直高速衝突を起こさせるために,タブを囲む密閉板と連結孔の出口の距離は当該連結孔の長さより短い。このように構造を作製すると垂直高速流体と密閉板の壁の間に作られる停滞層は薄いので瞬時に密閉板の熱が流体に熱交換される。
【0018】
同じことが連結孔H21,H22で起きる。このように垂直高速衝突を繰り返すと,ヒーターで加熱された密閉板の熱は高い効率で流体に伝えられる。結果として放出流体の温度は密閉板の温度に近い温度になる。当該高速衝突の垂直度は,停滞層が薄くなればよいだけなので,厳密である必要はない。
【0019】
このようにして,図3に示した流体熱交換装置は瞬時に熱交換を行い,加熱された流体を作り出す。
【0020】
密閉板を冷却すると,当該装置は瞬時に冷却流体を作る装置となる。当該装置の機構を構成する材料(機構材料)は流体の性質や所望の温度に応じて,金属やセラミクスが利用できる。
【0021】
当該装置の機構材料として複合材を選ぶことが可能である。複合材としては金属やカーボンの繊維を混ぜたプラスチクスがある。またそのカーボンとしては,熱伝導の良いカーボンナノチューブやグラフェンがある。
【0022】
当該機構は機構材料を切削して作ることが可能である。当該装置の材料の性質に応じて,ガスや液体のさまざまの流体を加熱冷却できる。流体出口や流体入口の数や形状は自由に設計できる。
【0023】
従って,加熱冷却されたガスの自在形状ビームも作り出せる。
【0024】
以上当該装置の基本構造の作用と材料を説明した。以上の構造では流路は当該プレートを貫いて横切るように形成される。当該プレートの表面にこれを貫かない流路を形成することも可能である。
【0025】
図3におけるプレートの上面と下面に形成するタブをプレートの片面に交互に配置して,隣接するタブを連結孔で連結する構造は,連結孔がプレートを貫かない片面構造である。
【0026】
この片面流路の構造はプレートの片面に流路を形成するので部品点数を少なくできる特徴がある。
【0027】
また,プレート片面を円柱表面にして,その表面に流路を形成することが可能である。図8にその基本構造を示した。
【0028】
図3に示したタブは簡単な矩形である。断面でみたとき開口の長さより,また連結孔の長さよりタブの深さが浅い。
【0029】
これとは対照的に図8に示したタブG81,G82,G83,G84は相対的に深い。即ち,断面でみると開口の長さよりタブの深さは深い。連結孔H812,H823,H834も相対的に長い。
【0030】
連結孔から出た流体がタブを囲む壁に垂直高速衝突を起こすように,裏に隠れて底が上から見えないタブの切削加工がここでは必要になる。
【0031】
このタブの加工を単純にするために,連結孔の向きを斜めにする構造がある。
【0032】
実施例では斜めの連結孔構造を採用してタブの切削加工を容易にする構造を用いた。閉じた流路を形成するために当該プレートは密閉板804で密閉される。
【0033】
板形状のプレートで説明したが当該流路構造はプレートの面だけでなく円柱の表面や角柱または多角柱の上にも作製できる。このとき,密閉板は離れていてもよい。密閉板を連結すると密閉板は筒状の形状になる。
【0034】
以上の熱交換装置で加熱冷却する流体はガスでも液体でもよい。前記流体は例えば窒素やアルゴン,ヘリューム,炭化水素,フッ化炭素でガスでも液体でもよい。あるいは水素または水素を放出する還元ガス,酸素やイオウ,セレン,テルルなど6属の元素を含む酸化ガスも流体として利用できる。
【0035】
フッ素など7属のハロゲン元素を含むガスも利用できる。
【0036】
前記ガスは水または蒸気,100℃以上の蒸気,空気を含むガスであってもよい。水は特別にガスを用意しなくても,スチームガスの原料にできるので酸素ガスを含まないガスとして利用できる。
【0037】
特に500℃から1000℃,またはそれを超える温度の高温スチームは有機物を分解する能力が高い。肉や野菜,木片,プラスチクスの有機廃棄物を当該高温スチームに接触させると分子を切断または分解して水素や炭素,酸素を含むガスを発生させる。この温度より低くても,肉に触れさせると肉の筋が変化して噛みやすい柔らかい肉に変化する。
【0038】
上記高温スチームと廃棄物と接触させて取り出したケミカルポテンシャルの高い上記ガスはエネルギー資源として再利用ができる。従って,これを行う装置は有機廃棄物の処理装置となる。
【0039】
空気を圧搾して用いると安価に加熱ガスを得ることができる。上記熱交換装置を冷却して用いると空気から水分を液化させるのに用いることができる。
【0040】
前記ガスは放射能を放出する元素を含むガスであってもよい。原子力発電所で物をガスで冷却するとき発生する大量の放射能を含む高温ガスを急速に冷却する必要がある。このようなとき,当該装置を直列並列接続して使用できる。
【0041】
前記流体は水または水溶液であってもよい。上記熱交換装置は加熱冷却の設定温度を変えて,直列接続して用いることができる。例えば,海水を上記熱交換装置で加熱し,それを上記熱交換装置を通した高温空気で噴霧すると,海水から塩を固体として分離させることができる。
【0042】
特に,加熱して上記熱交換装置を用いるとき,流体との反応を考慮して構成する材料は金属やセラミクス,カーボンや金属を含む複合材から適宜選択して用いる。
【0043】
金属を構成材料に用いるとき,用いる流体により異種金属を被覆した金属を用いてもよい。
【0044】
金属のほか,構成材料には金属の酸化物や酸化シリコン,酸化アルミニューム,酸化チタン,酸化ニッケル,シリコンカーバイドなどを含むセラミクスから適宜選択して用いることができる。
【0045】
炭素の上にシリコンカーバイドを被覆した材料も選ぶことができる。カーボンを含む複合材料を構成材料とするとき,熱交換に優れたカーボンナノチューブやグラフェンを選べる。カーボンを含むプラスチクスは加工が金型ででき,切削加工も容易なので,安価に構造を作製できる。
【0046】
上記カーボン複合材料で本発明の構造を作製すると,酸やアルカリを含む高温の蒸気を熱源とした熱交換装置を作製して使用できる。上記熱交換装置のタブや孔の数,またはその大きさは自由に設計して組合すことができる。
【0047】
本発明は,請求項1に記載のように,プレートの表裏両面にタブを複数段一方向に並べて設けてあり,片面のひとつのタブが反対面の連接する二つタブと重なる部分があり,当該重なり部分には両面タブを連結するタブの深さより長い孔が設けられてあり,両面のタブはプレートの両面に備えた密閉板2枚で気密に密閉されてあり,当該プレートの一方の端のタブに流体を導入する導入口が備えてあり,他方の端のタブに当該流体の吹き出し口が備えてあり,当該密閉板と当該流体が熱交換することを特徴とする流体熱交換装置である。
【0048】
請求項2に係る発明は,前記流体がガスまたは液体であることを特徴とする請求項1記載の流体熱交換装置である。
【0049】
請求項3に係る発明は,前記ガスが窒素やアルゴン,ヘリューム,炭化水素,フッ化炭素を含む不活性ガスである,あるいは水素または水素を放出する還元ガス,酸素やイオウ,セレン,テルルなど6属の元素を含むガスである,あるいはフッ素など7属の元素を含むガスである,あるいは当該ガスの複数組み合わせたガスであることを特徴とする請求項2記載の熱交換装置である。
【0050】
請求項4に係る発明は,前記ガスが水または空気を含むガスであることを特徴とする請求項2,3記載の熱交換装置である。
【0051】
請求項5に係る発明は,前記液体が水であることを特徴とする請求項2記載の熱交換装置である。
【0052】
請求項6に係る発明は,前記密閉板と前記プレートが金属,または異種金属を被覆した金属であることを特徴とする請求項1〜5記載の熱交換装置である。
【0053】
請求項7に係る発明は,前記密閉板と前記プレートが石英やアルミナ,シリコンカーバイドなどを含むセラミクス,またはカーボンナノチューブやグラフェンなどのカーボンを含む複合材料であることを特徴とする請求項1〜5記載の熱交換装置である。
【0054】
請求項8に係る発明は,ヒーターを挿入または密着させて前記密閉板を加熱する,または前記プレートを加熱することを特徴とする請求項1〜7記載の熱交換装置である。
【0055】
請求項9に係る発明は,前記密閉板または前記プレートを冷却することを特徴とする請求項1〜8記載の熱交換装置である。
【0056】
請求項10に係る発明は,前記交換装置を流れと直角方向に拡張して,または並列接続して,流体の導入口と出口を複数設ける,または流体出口形状をスリット状に長くすること特徴とする請求項1〜9記載の熱交換装置である。
【0057】
請求項11に係る発明は,3枚の前記密閉板で2枚の前記プレートをサンドイッチにし,中心の密閉板の熱をそれを挟む当該プレートを介して流体に伝えること特徴とする請求項1〜10記載の熱交換装置である。
【0058】
請求項12に係る発明は,加熱または冷却する構造を有する基体面に複数のタブを隔離して配列させ,隣接するタブ同士を複数の孔で連結させ,当該連結孔を通る流体をタブの壁に衝突させ,当該壁と当該流体の熱交換をさせ,当該配列の一方の端のタブから導入した流体を当該配列の反対側の端のタブから放出させる流路を持つ流体熱交換装置において,当該流体の上流下流の関係にある直近の連結孔の軸が重ならないことを特徴とする熱交換装置である。
【0059】
請求項13にかかる発明は,前記流路が円柱または角柱の基体表面に形成されたことを特徴とする請求項12記載の流体熱交換装置である。
【0060】
請求項14にかかる発明は,前記流路の前記基体の材料が金属または多元金属,または異種金属を被覆した積層金属,または金属の酸化物や酸化シリコン,酸化アルミニューム,酸化チタン,酸化ニッケル,シリコンカーバイドなどを含むセラミクス,またはシリコンカーバイドを被覆したカーボン,またはカーボンナノチューブやグラフェンなどのカーボンを含む複合材料であることを特徴とする請求項12,13記載の流体熱交換装置である。
【0061】
請求項15にかかる発明は,前記ガスが窒素やアルゴン,ヘリューム,炭化水素,フッ化炭素を含む不活性ガス,あるいは水素または水素を放出する還元ガス,酸素やイオウ,セレン,テルルなど6属の元素を含む酸化ガス,フッ素など7属のハロゲン元素を含むガスであることを特徴とする請求項12,13,14記載の流体熱交換装置である。
【0062】
請求項16にかかる発明は,前記ガスが水または空気を含むガスであることを特徴とする請求項12,13,14,15記載の流体熱交換装置である。
【0063】
請求項17にかかる発明は,前記流体が水または水溶液であることを特徴とする請求項12,13,14,15記載の流体熱交換装置である。
【0064】
請求項18にかかる発明は,設定温度を変えて複数の前記流体熱交換装置を直列接続して用いる流体熱交換装置である。
【0065】
請求項19にかかる発明は,前記流体熱交換装置で作り出した高温スチームと有機物を接触させる装置である。
【発明の効果】
【0066】
請求項1に係る発明によれば,簡単なプレート機構と密閉板により形成される流路を通る流体が密閉板と高速で衝突して効率よく熱交換ができる。必要なプレート機構の加工はプレートのタブ切削加工とタブを連結する孔(以後,連結孔という)のドリル加工だけでよい。
【0067】
密閉板とプレートは溶接して完全に密閉することも,ネジで固定することも可能である。適切な直径のドリルで開けた細い連結孔を流体が流れるとき,流体の流速が増す。
【0068】
この高速の流体が前記密閉板またはタブの壁に勢いよく衝突して加熱した壁と瞬時に熱交換する。この衝突を連続して起こさせる機構はプレートの熱交換機構である。
【0069】
連結孔は複数あるので,流体の熱抵抗にならない。タブは1mm〜2mm程度の浅いタブであるので,密閉板と早い相対速度の流体となり,当該密閉板との間にできる淀み層は薄くなり,この薄さが熱交換の効率を増大させる。
【0070】
前記プレートは1〜2mm深さのタブをエンドミルで作る加工とタブをつなぐ連結孔をドリルで開ける加工だけで流路の加工が終わる。流体の入り口と出口もドリル加工だけである。
【0071】
この機構の製作工数は少なく簡単である。請求項2から5に係る発明によれば,流体としてガスと液体が扱える。酸素を選ぶと加熱した酸素を瞬時に作り出せる。
【0072】
水素を選ぶと強力な高温還元ガスを瞬時に作り出せる。これらの高温ガスを機材に吹き付けることにより,基材自体を加熱しないでも表面を加熱ガスで処理可能である。
【0073】
流体として水を用いると高温のスチームを瞬時に作り出せる。本加熱装置は小型に製作できるので,本スチームを照射したい基材に近づけて照射可能である。
【0074】
加熱した高温スチームは基材の薬品を使わない洗浄に有効であるので,本加熱装置は洗浄装置の部品として応用できる。
【0075】
請求項6,7に係る発明によれば,本加熱装置を金属やセラミクスで製作可能である。前記密閉板と前記プレートを金属で作製し,接続部分を溶接すると,密閉機構が可能で,外部環境と遮断した加熱装置が製作可能である。
【0076】
セラミックスなど酸化されない材料を用いると酸化性のガスや腐食性のある流体も瞬時に加熱可能である。また,金属汚染を嫌う用途に用いることが可能である。
【0077】
請求項8,9に係る発明によれば,前記密閉板に流体の流れ方向の孔をあけて,ここにヒーターを入れるだけで密閉板の加熱が可能である。本機構は簡単であり,ヒーターの本数を任意に設計できるので,交換可能な電力を簡単に設定できる。これらを断熱材で囲めば,断熱材の外に放出する熱を低く制御できるので,熱の利用効率が高くなる。
【0078】
前記密閉板を冷却すれば,導入流体を冷却することも可能である。冷却は通常の冷蔵庫に用いる冷媒を用いても,ペルチエ効果を用いた冷却板が市販されているので,それを用いてもよい。
【0079】
請求項10と11に係る発明によれば,前記装置を流れと直角方向に拡張して,幅の長い流体のビームをつくることが可能である。幅の長い加熱ガスビームは1m級以上の大型の金属薄板や,大型のガラスや樹脂シートの表面を加熱するのに利用できる。
【0080】
請求項12,13に係る発明によれば,円柱状の流体熱交換装置の作製が可能であり,大形の板状のものであっても加工が単純となる。円柱の流体熱交換装置のときタブを旋盤による切削加工とタブをつなぐ連結孔をドリルで開ける加工だけで流路の加工ができる。
連結孔の軸を傾けることで上流下流の関係にある直近の連結孔の軸は重ならない。この傾きが作る重ならない軸が,層流発生を防止して垂直衝突する乱流を連続して作る。これが熱交換効率を上昇させる。
【0081】
請求項14に係る発明によれば,扱う流体の化学的性質によって,流路を形成する材料を選ぶことができる。高温ではセラミクスが有効である。しかし溶接を必要とする密閉度を要求するときは金属が好適である。高温でも強度のある金属が高い温度の使用では有効である。カーボンナノチューブやグラフェンを含むプラスチクスを用いると化学的に腐食作用のある流体を扱えるし,熱源として化学的腐食作用のある流体を用いることが可能となる。これが可能になると地熱発電の熱交換器として用いることが可能になる。
【0082】
請求項15に係る発明によれば,使用目的に応じてガスの種類を選ぶことができる。不活性ガスは対象物の表面を瞬間加熱するのに有効であり,還元ガスは基板表面に塗布した材料を還元雰囲気焼成するのに有効になる。セレンなどを含むガスでアニールするのはCIGS(Cu,In,Ga,Se)の結晶を焼結するのに有効である。
【0083】
請求項16に係る発明によれば,煙突や施設・設備の高温廃棄ガスの成分と温度を維持した輸送できる。これは汚染監視に有効である。
【0084】
請求項17に係る発明によれば,高温のスチームを瞬間的に作るのに有効であり,薬品のユースポイントでの瞬間加熱にも便利である。
【0085】
請求項18に係る発明によれば,第1の流体熱交換装置で成分混合液体を加熱して急速蒸発させ濃縮し,次に液体を冷却して固形分凝縮させ,成分を分離するなど,の連続処理を小さな空間で行える。
【0086】
請求項19に係る発明によれば,肉や野菜,木片から再利用可能なケミカルポテンシャルの高いガスを取り出して,それを燃料資源として再利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1図1は,従来のガス加熱装置の一例(再公表特許W02006/030526)の模式図。
図2図2は,従来のガス加熱装置の一例(特開2010−001541号公報,ガス加熱装置の図5)の模式図。
図3図3は,プレートと密閉板で熱交換させる基本機構の模式図。
図4図4は,プレート部品を密閉板で挟んで流路を形成させた流体熱交換機構の斜視図。
図5図5は,流体熱交換機構部を収納したケース全体を表す流体熱交換 装置の断面模式図。
図6図6は,流体導入口と流体出口の変形様態を表す流体熱交換装置の斜視図。
図7図7は,2枚の熱交換プレートを備えた流体熱交換装置の断面模式図。
図8図8は,流路をプレート片面に形成した構造の断面模式図。
図9図9は,流路をプレート片面に形成した構造の断面模式図。
図10図10は,流路をプレート片面に形成した構造の断面模式図。
図11(A)】図11(A)は同一の連結孔の軸に上流下流の関係にある直近の連結孔を配置しない配置の模式図。
図11(B)】図11(B)はタブの位置を表す直線と連結孔の軸が平行でない配置の模式図。
図12(A)】図12(A)は,表面に流路を形成した円周位相P11のシリンダーの断面模式図。
図12(B)】図12(B)は,表面に流路を形成した円周位相P22のシリンダーの断面模式図。
図12(C)】図12(C)は,円周方向の連結孔のある位置の位相を示す図。
図13図13は,流路をプレートの両面に形成して,それをまとめてスリット状の流体出口から取り出す熱交換装置の斜視模式図。
【発明を実施するための形態】
【0088】
図4にプレート部品を密閉板で挟んで流路を形成させた流体熱交換機構400の斜視図を示す。密閉板403,404にはヒーター405,406,407,408が備えてある。
【0089】
プレート410と密閉板403,404はステンレス鋼であり,規格SUS316Lを用いた。プレート両面を加工してタブG11,G12,G21,G22,G31,G32,G41,G42,G51,G52,G61を2mmのスペースで作製した。タブ深さは1mm,面積は4mmX30mmである。タブを連結する連結孔H12,H21,H22,H31,H32,H41,H42,H51,H52,H61をタブ当たり5個の連結孔をドリルであけた。連結孔は2mm直径で長さは3mmである。
【0090】
連結孔の出口から流体が高速ででて,タブを囲む壁に高速で衝突するように,当該出口から衝突する壁の距離は連結孔の長さより短い。当該距離と連結孔の長さのこの関係は効率よく熱交換を起こさせるのに有効な関係である。
【0091】
流体導入口401,流体出口402とタブをつなぐ連結孔H11,H62はドリルであけた。流体導入口を溶接したあと洗浄して,密閉板403,404とプレート410を周辺で溶接した。これで流体の流路ができあがった。
【0092】
密閉板403,404にはヒーター405,406,407,408が挿入されてある。ヒーターが分かるように密閉板からとびださせて描いてある。ヒーターは実際には内部にあってもよい。
【0093】
ヒーターは密閉版の中央にあってもよい。4本の例を示したがヒーター本数は1本でもよく設計は自由である。
【0094】
図5は,流体熱交換機構400を収納したケース全体を表す流体熱交換装置500の断面模式図である。
【0095】
流体熱交換機構400はヒーター給電線505から給電されたヒーター503で加熱される。ヒーター503はシリコンカーバイド製であり,1000℃の加熱が可能である。
【0096】
流体熱交換装置500は,この場合流体熱交換機構400を断熱ケース501と外ケース502に入れたものである。
【0097】
流体熱交換機構400は断熱材504を収納した断熱ケース501で断熱される。断熱ケース501の外にステンレス製の外ケース502があり,その端はフランジ506に接続されてある。流体熱交換機構400の流体出口温度は図示しない熱電対で測定され,その温度に維持されるように電力が制御される。500℃の加熱された窒素を作り出すためにこの温度を500℃とした。
【0098】
流体導入口401から窒素ガスを100SLM供給する。窒素ガスは,流体熱交換機構400の中で瞬時に加熱される。500℃に加熱された窒素は流体出口402から外に出る。加熱温度を300℃に設定するとほぼ同じ温度300℃の窒素が得られる。
【0099】
以上,窒素ガスを加熱する実施例を述べた。本加熱機構は窒素ガス以外のガスを用いることは自由である。
【0100】
アルゴン,ヘリューム,炭化水素,フッ化炭素を含む不活性ガスである,あるいは水素または水素を放出する還元ガス,酸素やイオウ,セレン,テルルなど6属の元素を含むガス,あるいはFなど7属の元素を含むガスも,用いることが可能である。また当該ガスの複数を組み合わせたガスであってもよい。
【0101】
また前記ガスは水または空気を含むガスであってもよい。
【0102】
ガスのほかの流体でも用いることは自由である。例えば流体が水であると,高温のスチームを作り出すことが可能である。
【0103】
以上の実施例では部品をSUS316Lで作製した。使用する温度範囲や流体の性質に応じて好適な材料を選ぶことは自由である。部品を構成する材料はステンレスやアルミニュームなどの金属のほか,異種金属を被覆した金属であってもよい。
【0104】
また,金属汚染を特に嫌う応用では前記部品が石英やアルミナ,シリコンカーバイドなどを含むセラミクスであってもよい。
【0105】
図6にプレート410の変形例プレート610を示す。流体導入口601,602が備えられてある。それぞれの導入口から導入流体F11,F12が図示しない流量制御装置で流量が制御されて導入される。F11,F12は同じ流体でも,異なる流体でもよい。タブG11,G21,G31,G41,G51,G61のうちG11に連結孔H611,H612がある。連結孔H11,12は別のタブにあってもよい。
【0106】
タブG61に連結する連結孔H621は熱交換されて放出される放出流体F2の出口である流体出口603に連結している。流体出口603は長さL,幅Wのスリット状の形状である。
【0107】
流体出口603と密閉板403をプレートの間に長さL,隙間Wのギャップを作れば(図示してない),連結孔H621の加工無しで,当該ギャップが流体出口603の役目をする。
【0108】
プレート610の長さを拡張するに従い流体出口の長さLは大きくなる。放出流体の長さLはプレート610を並列接続して,一つの流体出口に合流させても,拡張できる。
【0109】
図7に流体熱交換装置の変形例700を示す。この例700は当該装置の中心に加熱センター密閉板701があり,当該密閉板にヒーター702が備えられている。当該密閉板701の両側にガス加熱流路を作る2つのプレート703,705が備えられている。当該プレートの外側に密閉板704,706が備えられて,これらの密閉板とプレートで密閉されたガス流路が2系統形成されて備えられてある。
【0110】
連結孔H711,712を経由して導入流体F1が2つに分かれて,2つのプレート703,705に導かれる。加熱された流体は連結孔721,722を経由して加熱センター密閉版701に集まり,流体出口603より放出流体F2が放出される。
【0111】
これら密閉板とプレートで形成される流体熱交換機構710を囲み断熱ケース501が備えられ,さらにこれを囲み外ケース602が備えられている。断熱ケース501と外ケース602はフランジ506に固定されてある。
【0112】
以上,中心にヒーターで加熱される密閉板701があり,それにガス導入口401が備えられ,それを熱交換の構造のプレート703,705で挟む構造の流体熱交換装置700が出来上がる。これは,大流量を得ることができ,外に向かう方向に温度が低下する構造を与える。
【0113】
以上は熱交換の為のタブがプレートの表裏両面に作製され,流路がプレートを横切る構造の実施例であった。基体としてのプレートの片面にタブを形成して流路が基体としてのプレートを横切らない構造の実施例を次に示す。
【0114】
図8に流路を基体としてのプレート800の片面に形成した構造の実施例を示す。
【0115】
図3のタブG11を図8のタブG81に対応させると,タブG82は図3におけるタブG12に相当する。同様にタブG83,G84は図3のG21,G22に相当する。連結孔H812,H823,H834は図3の連結孔H12,H21,H22に相当する。流体の流路は破線で示した。この流路はプレート800を横切らない。
【0116】
連結孔で流速を増した流体がプレート800の壁にほぼ垂直に衝突して壁と瞬時に熱交換をする。
【0117】
この実施例ではプレート800は加熱機構としてのヒーターを用いた熱源803で加熱されているので,流体は加熱される。加熱機構の代わりに冷媒を用いた冷却源803を当該プレートに備えれば,流体は冷却される。
【0118】
プレートの片面にタブを配置したタブは小さくなるので,最隣接の連結孔同士の位置も近くなる。流体の性質として,隣接連結孔同士が特定の流路を形成すると,等配分で流量分配がされなくなる。これを避けるために,連結孔は同一の連結孔の軸線上に並べないように配置することが望ましい。
【0119】
図9には連結孔を斜めにしてタブの大きさを更に小さくした構造を示す。タブまたは孔の配置の流体の流れ方向ピッチを図8の場合より小さくできる利点がある。そのとき,流体の上流と下流にある連結孔を遠ざけるために,上流下流にある直近の連結孔を同一の連結孔軸上に並べない。このことを示すために,図9では連結孔H923を破線で示した。
【0120】
図10にはタブの切削加工を図9より更に簡単にする実施例を示した。タブG101,G102,G103,G104の断面はおおよそ三角形であるので,切削加工がより簡単である。この場合も,上流下流にある直近の連結孔H1012,H1023,H1034は同一の連結孔軸上に配置しない。このことを示すために連結孔H1023は破線で示した。
【0121】
図11(A)は図10のXX断面図である。図11(A)は同一の連結孔の軸に上流下流の関係にある直近の連結孔を配置しない配置の実施例である。タブの位置を表す直線P1とP2と連結孔の軸1101は平行である。
【0122】
図11(B)はタブの位置を表す直線P1と連結孔の軸1101が平行でない配置の実施例である。この場合も,同一の連結孔の軸に上流下流の関係にある直近の連結孔を配置しない配置の実施例である。
【0123】
図12には基体としてのプレートの片面でなく,基体としてのシリンダー1200の表面に流路を設けた実施例を示した。流体を加熱するとき,ヒ-ター1201はシリンダー1200の内部にある。本実施例では中心に配置した。
【0124】
タブはシリンダーの表面に配置されて隣接するタブは連結孔で連結されている。タブの構造は図8図9図10で示した構造を自由に選べる。上流下流にある直近の連結孔は同一の連結孔の軸上に配置されないように円周方向に位置を変えて配置する。
【0125】
図12(C)は円周方向の連結孔のある位置の位相を示す。これを円周位相と呼ぶことにする。上流下流にある直近の連結孔は,例えば上流側の連結孔は円周位相P12,P12,P13,P14に配置し,隣接の下流側の連結孔は円周位相P21,P22,P23,P24に配置する。
【0126】
図12(A)と図12(B)に表面に流路を形成した円周位相P11,P22のシリンダーの断面を示した。表面に流路が形成されたシリンダー1200に密閉筒1202が溶接されて閉じられ流路が形成される。連結孔で加速された流体がシリンダーの壁と高速で衝突して,熱交換を効率よく行う。
【0127】
図13は板状の熱交換機構の実施例である。基体としてのプレート1300の両面に流路が形成され,密閉板1303を溶接して閉じた流路を両面に形成させた。材料はSUS316Lである。両面で生成した加熱流体をまとめて,スリット状の流体出口1302から取り出した。当該加熱流体で板状の試料を加熱するのに好適である。
【0128】
以上,流体の加熱冷却を瞬時に行う熱交換装置の構造を容易に形成する方法を示した。当該熱交換装置はステンレス鋼やアルミニューム,ニッケル,鉄,クロム,タングステンを含む様々の金属を加工して作製できる。
【0129】
また,金属を積層したもの,または金属をメッキしたものが使用できる。
【0130】
セラミックスやSiCコートしたカーボンも使用できる。また,カーボンナノチューブやグラフェンなどのカーボンを含むプラスチクス複合材料を用いることができる。
【0131】
当該装置を一つだけを例に示したが,当該装置を直列,並列に接続し,温度の設定を任意に行うことができる。例えば,2つの流体熱交換機構を直列に接続して,設定した温度で流体を気体にして,それを任意に設定した温度の気体にすることが可能である。また,水から瞬時に高温スチームを作り出すことも,小型の当該装置で可能である。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は,大流量の高温加熱されたガスや液体を作り出す小型の部品を提供する。また超電導に用いる冷媒を冷却する装置にも小型の熱交換器を提供する。応用分野として印刷物の乾燥,小型の暖房器具,温室の暖房,洗浄のための高温の薬剤の生成,食品加熱,殺菌,バイオマス発電に用いる有機物分解用過熱スチームの発生,超電導設備の冷却装置の冷却器,に用いることができる。太陽電池やフラットパネル表示装置(FPD)をガラス基板などの大型基板の上に安価に成膜する技術にも好適である。
【0133】
300℃以下の温度を扱うときカーボンを含む複合材料を用いることができる。プラスチクス複合材料は安価に加工できて,耐薬品性があるので,本発明は地熱発電などの有害熱源を用いるときに効率の高い熱交換器を提供する。加熱の反対の冷却に用いると,当該部品は冷却されたガスや液体を作り出す熱交換部品となる。
【符号の説明】
【0134】
101;ガス入口
102;空洞ディスク
103;パイプ
104;ガス出口
300;プレート
301;流体入口
302;導入流体
303,305;密閉板
304,306;ヒーター
307;流体出口
308;放出流体
G11,G12,G21,G22;タブ
H12,H21,H22;連結孔
400;流体熱交換機構
401;流体導入口
402;流体出口
403,404;密閉板
405,406,407,408;ヒーター
410;プレート
G11,G12,G21,G22,G31,G32,G41,G42,G51,G52,G61;タブ
H12,H21,H22,H31,H32,H41,H42,H51,H52,H61;連結孔
F1;導入流体
F2;放出流体
500,700;流体熱交換装置
501;断熱ケース
502;外ケース
503;ヒーター
504;断熱材
505;給電線
506;フランジ
601;流体導入口
602;流体導入口
603;流体出口
610;プレート
611,612,621;連結孔
F11,F12;導入流体
L;流体出口の長さ
W;流体出口の幅
701;加熱センター密閉板
702;ヒーター
703,705;プレート
704,706;密閉板
710;流体熱交換機構
H711,H712,H721,H722;連結孔
800;プレート
801;流体導入口
802,806;流体
803;熱源または冷却源
804;密閉板
805;流体出口
G81,G82,G83,G84,G91,G92,G93,G94,G101,G102,G103,G104;タブ
H812,H823,H834,H912,H923,H934,H1012,H1023,H1034;連結孔
1101;連結孔の軸
P1,P2;タブの位置を表す直線
1200;シリンダー
1201;ヒーター
1202;密閉筒
P11,P12,P13,P14,P21,P22,P23,P24;円周位相
1300;両面に流路を形成したプレート
1301;スリット状の流体出口
1302;密閉板
1303;ヒーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11(A)】
図11(B)】
図12(A)】
図12(B)】
図12(C)】
図13