【課題を解決するための手段】
【0012】
課題を解決する本発明の基本機構を
図3に示す。
図3は熱交換を効率よくさせる基本原理を示す。
【0013】
図3はプレートと密閉板で熱交換させる機構の模式図である。プレートは高速ガスを作り出し,それを密閉板に衝突させることを連続して起こさせる。
【0014】
プレート300上面にはタブG11,G21が,下面にはタブG12,G22が作られている。当該タブは密閉板303,305でプレートの上と下に流路の一部として密閉されてある。タブ12はタブG11,G21をまたぐ平面配置で連結孔H12,H21で連結されている。
【0015】
タブ21はタブG12,G22をまたぐ平面配置で連結孔H21,H22で連結されている。タブ配列の右端のタブG11には流体導入口301がある。タブ配列の左端のタブG22には流体出口307が連結されてある。
【0016】
流体導入口から導入される導入流体302は密閉された上記タブと連結孔G11,H12,G12,H21,G21,H22,G22を経由して流体出口307より放出流体308として放出される。密閉板303,305にはヒーター304,305が備えられ加熱されている。ヒーターは何本でも望む投入電力に応じて自由に備えられる。
【0017】
細い連結孔H12を通過した流体は速度を増して垂直に密閉板305に高速で衝突する。この垂直高速衝突を起こさせるために,タブを囲む密閉板と連結孔の出口の距離は当該連結孔の長さより短い。このように構造を作製すると垂直高速流体と密閉板の壁の間に作られる停滞層は薄いので瞬時に密閉板の熱が流体に熱交換される。
【0018】
同じことが連結孔H21,H22で起きる。このように垂直高速衝突を繰り返すと,ヒーターで加熱された密閉板の熱は高い効率で流体に伝えられる。結果として放出流体の温度は密閉板の温度に近い温度になる。当該高速衝突の垂直度は,停滞層が薄くなればよいだけなので,厳密である必要はない。
【0019】
このようにして,
図3に示した流体熱交換装置は瞬時に熱交換を行い,加熱された流体を作り出す。
【0020】
密閉板を冷却すると,当該装置は瞬時に冷却流体を作る装置となる。当該装置の機構を構成する材料(機構材料)は流体の性質や所望の温度に応じて,金属やセラミクスが利用できる。
【0021】
当該装置の機構材料として複合材を選ぶことが可能である。複合材としては金属やカーボンの繊維を混ぜたプラスチクスがある。またそのカーボンとしては,熱伝導の良いカーボンナノチューブやグラフェンがある。
【0022】
当該機構は機構材料を切削して作ることが可能である。当該装置の材料の性質に応じて,ガスや液体のさまざまの流体を加熱冷却できる。流体出口や流体入口の数や形状は自由に設計できる。
【0023】
従って,加熱冷却されたガスの自在形状ビームも作り出せる。
【0024】
以上当該装置の基本構造の作用と材料を説明した。以上の構造では流路は当該プレートを貫いて横切るように形成される。当該プレートの表面にこれを貫かない流路を形成することも可能である。
【0025】
図3におけるプレートの上面と下面に形成するタブをプレートの片面に交互に配置して,隣接するタブを連結孔で連結する構造は,連結孔がプレートを貫かない片面構造である。
【0026】
この片面流路の構造はプレートの片面に流路を形成するので部品点数を少なくできる特徴がある。
【0027】
また,プレート片面を円柱表面にして,その表面に流路を形成することが可能である。
図8にその基本構造を示した。
【0028】
図3に示したタブは簡単な矩形である。断面でみたとき開口の長さより,また連結孔の長さよりタブの深さが浅い。
【0029】
これとは対照的に
図8に示したタブG81,G82,G83,G84は相対的に深い。即ち,断面でみると開口の長さよりタブの深さは深い。連結孔H812,H823,H834も相対的に長い。
【0030】
連結孔から出た流体がタブを囲む壁に垂直高速衝突を起こすように,裏に隠れて底が上から見えないタブの切削加工がここでは必要になる。
【0031】
このタブの加工を単純にするために,連結孔の向きを斜めにする構造がある。
【0032】
実施例では斜めの連結孔構造を採用してタブの切削加工を容易にする構造を用いた。閉じた流路を形成するために当該プレートは密閉板804で密閉される。
【0033】
板形状のプレートで説明したが当該流路構造はプレートの面だけでなく円柱の表面や角柱または多角柱の上にも作製できる。このとき,密閉板は離れていてもよい。密閉板を連結すると密閉板は筒状の形状になる。
【0034】
以上の熱交換装置で加熱冷却する流体はガスでも液体でもよい。前記流体は例えば窒素やアルゴン,ヘリューム,炭化水素,フッ化炭素でガスでも液体でもよい。あるいは水素または水素を放出する還元ガス,酸素やイオウ,セレン,テルルなど6属の元素を含む酸化ガスも流体として利用できる。
【0035】
フッ素など7属のハロゲン元素を含むガスも利用できる。
【0036】
前記ガスは水または蒸気,100℃以上の蒸気,空気を含むガスであってもよい。水は特別にガスを用意しなくても,スチームガスの原料にできるので酸素ガスを含まないガスとして利用できる。
【0037】
特に500℃から1000℃,またはそれを超える温度の高温スチームは有機物を分解する能力が高い。肉や野菜,木片,プラスチクスの有機廃棄物を当該高温スチームに接触させると分子を切断または分解して水素や炭素,酸素を含むガスを発生させる。この温度より低くても,肉に触れさせると肉の筋が変化して噛みやすい柔らかい肉に変化する。
【0038】
上記高温スチームと廃棄物と接触させて取り出したケミカルポテンシャルの高い上記ガスはエネルギー資源として再利用ができる。従って,これを行う装置は有機廃棄物の処理装置となる。
【0039】
空気を圧搾して用いると安価に加熱ガスを得ることができる。上記熱交換装置を冷却して用いると空気から水分を液化させるのに用いることができる。
【0040】
前記ガスは放射能を放出する元素を含むガスであってもよい。原子力発電所で物をガスで冷却するとき発生する大量の放射能を含む高温ガスを急速に冷却する必要がある。このようなとき,当該装置を直列並列接続して使用できる。
【0041】
前記流体は水または水溶液であってもよい。上記熱交換装置は加熱冷却の設定温度を変えて,直列接続して用いることができる。例えば,海水を上記熱交換装置で加熱し,それを上記熱交換装置を通した高温空気で噴霧すると,海水から塩を固体として分離させることができる。
【0042】
特に,加熱して上記熱交換装置を用いるとき,流体との反応を考慮して構成する材料は金属やセラミクス,カーボンや金属を含む複合材から適宜選択して用いる。
【0043】
金属を構成材料に用いるとき,用いる流体により異種金属を被覆した金属を用いてもよい。
【0044】
金属のほか,構成材料には金属の酸化物や酸化シリコン,酸化アルミニューム,酸化チタン,酸化ニッケル,シリコンカーバイドなどを含むセラミクスから適宜選択して用いることができる。
【0045】
炭素の上にシリコンカーバイドを被覆した材料も選ぶことができる。カーボンを含む複合材料を構成材料とするとき,熱交換に優れたカーボンナノチューブやグラフェンを選べる。カーボンを含むプラスチクスは加工が金型ででき,切削加工も容易なので,安価に構造を作製できる。
【0046】
上記カーボン複合材料で本発明の構造を作製すると,酸やアルカリを含む高温の蒸気を熱源とした熱交換装置を作製して使用できる。上記熱交換装置のタブや孔の数,またはその大きさは自由に設計して組合すことができる。
【0047】
本発明は,請求項1に記載のように,プレートの表裏両面にタブを複数段一方向に並べて設けてあり,片面のひとつのタブが反対面の連接する二つタブと重なる部分があり,当該重なり部分には両面タブを連結するタブの深さより長い孔が設けられてあり,両面のタブはプレートの両面に備えた密閉板2枚で気密に密閉されてあり,当該プレートの一方の端のタブに流体を導入する導入口が備えてあり,他方の端のタブに当該流体の吹き出し口が備えてあり,当該密閉板と当該流体が熱交換することを特徴とする流体熱交換装置である。
【0048】
請求項2に係る発明は,前記流体がガスまたは液体であることを特徴とする請求項1記載の流体熱交換装置である。
【0049】
請求項3に係る発明は,前記ガスが窒素やアルゴン,ヘリューム,炭化水素,フッ化炭素を含む不活性ガスである,あるいは水素または水素を放出する還元ガス,酸素やイオウ,セレン,テルルなど6属の元素を含むガスである,あるいはフッ素など7属の元素を含むガスである,あるいは当該ガスの複数組み合わせたガスであることを特徴とする請求項2記載の熱交換装置である。
【0050】
請求項4に係る発明は,前記ガスが水または空気を含むガスであることを特徴とする請求項2,3記載の熱交換装置である。
【0051】
請求項5に係る発明は,前記液体が水であることを特徴とする請求項2記載の熱交換装置である。
【0052】
請求項6に係る発明は,前記密閉板と前記プレートが金属,または異種金属を被覆した金属であることを特徴とする請求項1〜5記載の熱交換装置である。
【0053】
請求項7に係る発明は,前記密閉板と前記プレートが石英やアルミナ,シリコンカーバイドなどを含むセラミクス,またはカーボンナノチューブやグラフェンなどのカーボンを含む複合材料であることを特徴とする請求項1〜5記載の熱交換装置である。
【0054】
請求項8に係る発明は,ヒーターを挿入または密着させて前記密閉板を加熱する,または前記プレートを加熱することを特徴とする請求項1〜7記載の熱交換装置である。
【0055】
請求項9に係る発明は,前記密閉板または前記プレートを冷却することを特徴とする請求項1〜8記載の熱交換装置である。
【0056】
請求項10に係る発明は,前記交換装置を流れと直角方向に拡張して,または並列接続して,流体の導入口と出口を複数設ける,または流体出口形状をスリット状に長くすること特徴とする請求項1〜9記載の熱交換装置である。
【0057】
請求項11に係る発明は,3枚の前記密閉板で2枚の前記プレートをサンドイッチにし,中心の密閉板の熱をそれを挟む当該プレートを介して流体に伝えること特徴とする請求項1〜10記載の熱交換装置である。
【0058】
請求項12に係る発明は,加熱または冷却する構造を有する基体面に複数のタブを隔離して配列させ,隣接するタブ同士を複数の孔で連結させ,当該連結孔を通る流体をタブの壁に衝突させ,当該壁と当該流体の熱交換をさせ,当該配列の一方の端のタブから導入した流体を当該配列の反対側の端のタブから放出させる流路を持つ流体熱交換装置において,当該流体の上流下流の関係にある直近の連結孔の軸が重ならないことを特徴とする熱交換装置である。
【0059】
請求項13にかかる発明は,前記流路が円柱または角柱の基体表面に形成されたことを特徴とする請求項12記載の流体熱交換装置である。
【0060】
請求項14にかかる発明は,前記流路の前記基体の材料が金属または多元金属,または異種金属を被覆した積層金属,または金属の酸化物や酸化シリコン,酸化アルミニューム,酸化チタン,酸化ニッケル,シリコンカーバイドなどを含むセラミクス,またはシリコンカーバイドを被覆したカーボン,またはカーボンナノチューブやグラフェンなどのカーボンを含む複合材料であることを特徴とする請求項12,13記載の流体熱交換装置である。
【0061】
請求項15にかかる発明は,前記ガスが窒素やアルゴン,ヘリューム,炭化水素,フッ化炭素を含む不活性ガス,あるいは水素または水素を放出する還元ガス,酸素やイオウ,セレン,テルルなど6属の元素を含む酸化ガス,フッ素など7属のハロゲン元素を含むガスであることを特徴とする請求項12,13,14記載の流体熱交換装置である。
【0062】
請求項16にかかる発明は,前記ガスが水または空気を含むガスであることを特徴とする請求項12,13,14,15記載の流体熱交換装置である。
【0063】
請求項17にかかる発明は,前記流体が水または水溶液であることを特徴とする請求項12,13,14,15記載の流体熱交換装置である。
【0064】
請求項18にかかる発明は,設定温度を変えて複数の前記流体熱交換装置を直列接続して用いる流体熱交換装置である。
【0065】
請求項19にかかる発明は,前記流体熱交換装置で作り出した高温スチームと有機物を接触させる装置である。
【発明の効果】
【0066】
請求項1に係る発明によれば,簡単なプレート機構と密閉板により形成される流路を通る流体が密閉板と高速で衝突して効率よく熱交換ができる。必要なプレート機構の加工はプレートのタブ切削加工とタブを連結する孔(以後,連結孔という)のドリル加工だけでよい。
【0067】
密閉板とプレートは溶接して完全に密閉することも,ネジで固定することも可能である。適切な直径のドリルで開けた細い連結孔を流体が流れるとき,流体の流速が増す。
【0068】
この高速の流体が前記密閉板またはタブの壁に勢いよく衝突して加熱した壁と瞬時に熱交換する。この衝突を連続して起こさせる機構はプレートの熱交換機構である。
【0069】
連結孔は複数あるので,流体の熱抵抗にならない。タブは1mm〜2mm程度の浅いタブであるので,密閉板と早い相対速度の流体となり,当該密閉板との間にできる淀み層は薄くなり,この薄さが熱交換の効率を増大させる。
【0070】
前記プレートは1〜2mm深さのタブをエンドミルで作る加工とタブをつなぐ連結孔をドリルで開ける加工だけで流路の加工が終わる。流体の入り口と出口もドリル加工だけである。
【0071】
この機構の製作工数は少なく簡単である。請求項2から5に係る発明によれば,流体としてガスと液体が扱える。酸素を選ぶと加熱した酸素を瞬時に作り出せる。
【0072】
水素を選ぶと強力な高温還元ガスを瞬時に作り出せる。これらの高温ガスを機材に吹き付けることにより,基材自体を加熱しないでも表面を加熱ガスで処理可能である。
【0073】
流体として水を用いると高温のスチームを瞬時に作り出せる。本加熱装置は小型に製作できるので,本スチームを照射したい基材に近づけて照射可能である。
【0074】
加熱した高温スチームは基材の薬品を使わない洗浄に有効であるので,本加熱装置は洗浄装置の部品として応用できる。
【0075】
請求項6,7に係る発明によれば,本加熱装置を金属やセラミクスで製作可能である。前記密閉板と前記プレートを金属で作製し,接続部分を溶接すると,密閉機構が可能で,外部環境と遮断した加熱装置が製作可能である。
【0076】
セラミックスなど酸化されない材料を用いると酸化性のガスや腐食性のある流体も瞬時に加熱可能である。また,金属汚染を嫌う用途に用いることが可能である。
【0077】
請求項8,9に係る発明によれば,前記密閉板に流体の流れ方向の孔をあけて,ここにヒーターを入れるだけで密閉板の加熱が可能である。本機構は簡単であり,ヒーターの本数を任意に設計できるので,交換可能な電力を簡単に設定できる。これらを断熱材で囲めば,断熱材の外に放出する熱を低く制御できるので,熱の利用効率が高くなる。
【0078】
前記密閉板を冷却すれば,導入流体を冷却することも可能である。冷却は通常の冷蔵庫に用いる冷媒を用いても,ペルチエ効果を用いた冷却板が市販されているので,それを用いてもよい。
【0079】
請求項10と11に係る発明によれば,前記装置を流れと直角方向に拡張して,幅の長い流体のビームをつくることが可能である。幅の長い加熱ガスビームは1m級以上の大型の金属薄板や,大型のガラスや樹脂シートの表面を加熱するのに利用できる。
【0080】
請求項12,13に係る発明によれば,円柱状の流体熱交換装置の作製が可能であり,大形の板状のものであっても加工が単純となる。円柱の流体熱交換装置のときタブを旋盤による切削加工とタブをつなぐ連結孔をドリルで開ける加工だけで流路の加工ができる。
連結孔の軸を傾けることで上流下流の関係にある直近の連結孔の軸は重ならない。この傾きが作る重ならない軸が,層流発生を防止して垂直衝突する乱流を連続して作る。これが熱交換効率を上昇させる。
【0081】
請求項14に係る発明によれば,扱う流体の化学的性質によって,流路を形成する材料を選ぶことができる。高温ではセラミクスが有効である。しかし溶接を必要とする密閉度を要求するときは金属が好適である。高温でも強度のある金属が高い温度の使用では有効である。カーボンナノチューブやグラフェンを含むプラスチクスを用いると化学的に腐食作用のある流体を扱えるし,熱源として化学的腐食作用のある流体を用いることが可能となる。これが可能になると地熱発電の熱交換器として用いることが可能になる。
【0082】
請求項15に係る発明によれば,使用目的に応じてガスの種類を選ぶことができる。不活性ガスは対象物の表面を瞬間加熱するのに有効であり,還元ガスは基板表面に塗布した材料を還元雰囲気焼成するのに有効になる。セレンなどを含むガスでアニールするのはCIGS(Cu,In,Ga,Se)の結晶を焼結するのに有効である。
【0083】
請求項16に係る発明によれば,煙突や施設・設備の高温廃棄ガスの成分と温度を維持した輸送できる。これは汚染監視に有効である。
【0084】
請求項17に係る発明によれば,高温のスチームを瞬間的に作るのに有効であり,薬品のユースポイントでの瞬間加熱にも便利である。
【0085】
請求項18に係る発明によれば,第1の流体熱交換装置で成分混合液体を加熱して急速蒸発させ濃縮し,次に液体を冷却して固形分凝縮させ,成分を分離するなど,の連続処理を小さな空間で行える。
【0086】
請求項19に係る発明によれば,肉や野菜,木片から再利用可能なケミカルポテンシャルの高いガスを取り出して,それを燃料資源として再利用することが可能である。