特許第6115989号(P6115989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115989
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】電力変換器の制御方法および制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 11/36 20060101AFI20170410BHJP
   H02P 29/40 20160101ALI20170410BHJP
【FI】
   G05B11/36 P
   H02P29/40
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-33065(P2013-33065)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-164387(P2014-164387A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利次
(72)【発明者】
【氏名】井上 馨
【審査官】 稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−287804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 11/36
H02P 29/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離散化状態方程式が(1−1)式で表されるシステムを構成する、少なくとも1つのスイッチ素子を含む電力変換器をリアプノフ関数および制御装置を利用して制御する制御方法であって、
【数1】
(ただし、xは状態変数ベクトル、uは入力変数、yは出力変数、Aはシステム行列、bは入力係数ベクトル、cは出力係数ベクトル)
ある時刻における基準状態変数ベクトルxr、補償器の補助変数ベクトルwおよび基準出力変数yrに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、次の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを求めることが可能な制御則を決定しておく第1ステップと、
全時刻における基準出力変数yrを参照可能にしておく第2ステップと、
最初の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwを決定する第3ステップと、
を予め実行しておき、その後、
時刻iにおいて前記システムの状態変数ベクトルxを構成する各要素を測定し、これにより時刻iにける状態変数ベクトルxを求める第4ステップと、
前記制御則と、時刻iにおける基準出力変数yr、基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、時刻i+1における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを数値的に求める第5ステップと、
(1−2)式を用いて、時刻iにおける偏差状態変数ベクトルx〜を求める第6ステップと、
【数2】
時刻iにおける偏差入力変数u〜を(1−3)式および(1−4)式で表される前記リアプノフ関数の収束条件を満足するように決定する第7ステップと、
【数3】
(ただし、Qは正定行列)
(1−5)式を用いて、時刻iにおける入力変数uを求める第8ステップと、
【数4】
第8ステップで求めた時刻iにおける入力変数uに基づいて、時刻i〜i+1における前記スイッチ素子のデューティを制御する第9ステップと、
前記制御装置に繰り返し実行させることを特徴とする制御方法。
【請求項2】
離散化状態方程式が(2−1)式で表されるシステムを構成する、少なくとも1つのスイッチ素子を含む電力変換器をリアプノフ関数および制御装置を利用して制御する制御方法であって、
【数5】
(ただし、xは状態変数ベクトル、uは入力変数、dは外乱変数ベクトル、yは出力変数、Aはシステム行列、bは入力係数ベクトル、Hは外乱係数行列またはベクトル、cは出力係数ベクトル)
ある時刻における基準状態変数ベクトルxr、補償器の補助変数ベクトルw、外乱変数ベクトルdおよび基準出力変数yrに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、次の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを求めることが可能な制御則を決定しておく第1ステップと、
全時刻における基準出力変数yrを参照可能にしておく第2ステップと、
最初の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwを決定する第3ステップと、
を予め実行しておき、その後、
時刻iにおいて前記システムの状態変数ベクトルxおよび外乱変数ベクトルdを構成する各要素を測定し、これにより時刻iにける状態変数ベクトルxおよび外乱変数ベクトルdを求める第4ステップと、
前記制御則と、時刻iにおける基準出力変数yr、基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwと、第4ステップで求めた時刻iにおける外乱変数ベクトルdとに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、時刻i+1における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを数値的に求める第5ステップと、
(2−2)式を用いて、時刻iにおける偏差状態変数ベクトルx〜を求める第6ステップと、
【数6】
時刻iにおける偏差入力変数u〜を(2−3)式および(2−4)式で表される前記リアプノフ関数の収束条件を満足するように決定する第7ステップと、
【数7】
(ただし、Qは正定行列)
(2−5)式を用いて、時刻iにおける入力変数uを求める第8ステップと、
【数8】
第8ステップで求めた時刻iにおける入力変数uに基づいて、時刻i〜i+1における前記スイッチ素子のデューティを制御する第9ステップと、
前記制御装置に繰り返し実行させることを特徴とする制御方法。
【請求項3】
離散化状態方程式が(3−1)式で表されるシステムを構成する、少なくとも1つのスイッチ素子を含む電力変換器をリアプノフ関数および制御装置を利用して制御する制御方法であって、
【数9】
(ただし、xは状態変数ベクトル、uは入力変数、yは出力変数、Aはシステム行列、bは入力係数ベクトル、cは出力係数ベクトル)
ある時刻における基準状態変数ベクトルxr、補償器の補助変数ベクトルwおよび基準出力変数yrに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、次の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを求めることが可能な制御則を決定しておく第1ステップと、
全時刻における基準出力変数yrを参照可能にしておく第2ステップと、
最初の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwを決定する第3ステップと、
を予め実行しておき、その後、
時刻iにおいて前記システムの状態変数ベクトルxを構成する各要素を測定し、これにより時刻iにける状態変数ベクトルxを求める第4ステップと、
前記制御則と、時刻iにおける基準出力変数yr、基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、時刻i+1における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを数値的に求める第5ステップと、
(3−2)式を用いて、時刻iにおける偏差状態変数ベクトルx〜を求める第6ステップと、
【数10】
(3−3)式を用いて、時刻iにおける偏差入力変数u〜を求める第7ステップと、
【数11】
(ただし、αは(3−4)式で表される前記リアプノフ関数の収束条件を満足するように決定された制御パラメータ、Qは正定行列)
【数12】
(3−5)式を用いて、時刻iにおける入力変数uを求める第8ステップと、
【数13】
第8ステップで求めた時刻iにおける入力変数uに基づいて、時刻i〜i+1における前記スイッチ素子のデューティを制御する第9ステップと、
前記制御装置に繰り返し実行させることを特徴とする制御方法。
【請求項4】
離散化状態方程式が(4−1)式で表されるシステムを構成する、少なくとも1つのスイッチ素子を含む電力変換器をリアプノフ関数および制御装置を利用して制御する制御方法であって、
【数14】
(ただし、xは状態変数ベクトル、uは入力変数、dは外乱変数ベクトル、yは出力変数、Aはシステム行列、bは入力係数ベクトル、Hは外乱係数行列またはベクトル、cは出力係数ベクトル)
ある時刻における基準状態変数ベクトルxr、補償器の補助変数ベクトルw、外乱変数ベクトルdおよび基準出力変数yrに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、次の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを求めることが可能な制御則を決定しておく第1ステップと、
全時刻における基準出力変数yrを参照可能にしておく第2ステップと、
最初の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwを決定する第3ステップと、
を予め実行しておき、その後、
時刻iにおいて前記システムの状態変数ベクトルxおよび外乱変数ベクトルdを構成する各要素を測定し、これにより時刻iにける状態変数ベクトルxおよび外乱変数ベクトルdを求める第4ステップと、
前記制御則と、時刻iにおける基準出力変数yr、基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwと、第4ステップで求めた時刻iにおける外乱変数ベクトルdとに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、時刻i+1における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを数値的に求める第5ステップと、
(4−2)式を用いて、時刻iにおける偏差状態変数ベクトルx〜を求める第6ステップと、
【数15】
(4−3)式を用いて、時刻iにおける偏差入力変数u〜を求める第7ステップと、
【数16】
(ただし、αは(4−4)式で表される前記リアプノフ関数の収束条件を満足するように決定された制御パラメータ、Qは正定行列)
【数17】
(4−5)式を用いて、時刻iにおける入力変数uを求める第8ステップと、
【数18】
第8ステップで求めた時刻iにおける入力変数uに基づいて、時刻i〜i+1における前記スイッチ素子のデューティを制御する第9ステップと、
前記制御装置に繰り返し実行させることを特徴とする制御方法。
【請求項5】
請求項1または3に記載の制御方法を用いて少なくとも1つのスイッチ素子を含む電力変換器を制御する制御装置であって、
前記第1ステップで決定した制御則と、(1−1)〜(1−5)式または(3−1)〜(3−5)で使用するベクトルおよび変数とを少なくとも一時的に格納する記憶部と、
前記第5ステップにおける前記状態変数ベクトルxを構成する各要素の測定を行う測定部と、
前記記憶部に格納された前記制御則、前記ベクトルおよび前記変数と、前記測定部で測定された前記状態変数ベクトルxを構成する各要素を参照しつつ、前記第5〜第8ステップを実行する演算部と、
前記演算部が前記第8ステップを実行することにより求められた前記入力変数uに基づいて、前記スイッチ素子のデューティを制御するスイッチ素子駆動部と、
を備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項2または4に記載の制御方法を用いて少なくとも1つのスイッチ素子を含む電力変換器を制御する制御装置であって、
前記第1ステップで決定した制御則と、(2−1)〜(2−5)式または(4−1)〜(4−5)式で使用するベクトルおよび変数とを少なくとも一時的に格納する記憶部と、
前記第5ステップにおける前記状態変数ベクトルxおよび前記外乱変数ベクトルdを構成する各要素の測定を行う測定部と、
前記記憶部に格納された前記制御則、前記ベクトルおよび前記変数と、前記測定部で測定された前記状態変数ベクトルxおよび前記外乱変数ベクトルdを構成する各要素を参照しつつ、前記第5〜第8ステップを実行する演算部と、
前記演算部が前記第8ステップを実行することにより求められた前記入力変数uに基づいて、前記スイッチ素子のデューティを制御するスイッチ素子駆動部と、
を備えたことを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー関数であるリアプノフ関数を利用した電力変換器の制御方法および制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換器の制御では、通常、補償器および状態フィードバックを考慮して構築した制御系を使用する。そして、この制御系の制御ゲインは、最適制御等の線形手法により決定するのが一般的である。
【0003】
ところで、相互干渉する電力変換器、例えば、グリッド連系インバータのような電力変換器を複数個同時に制御するためには、相互干渉の影響を考慮するべく、同時に使用される全ての電力変換器を含むシステム全体の制御系を、その安定性を解析により検討しながら構築する必要がある。この制御系の構築は、極めて煩雑であり、実用的ではない。
【0004】
そこで、従来から、相互干渉の影響を考慮することなく個々の電力変換器を制御する手法として、エネルギー関数であるリアプノフ関数を利用した制御方法が検討されている(例えば、非特許文献1参照)。この制御方法によれば、リアプノフ関数を利用して安定性を確保しつつ複数の電力変換器を個別に制御することにより、結果的にシステム全体の安定性をも確保することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Seth R. Sanders et al., "Lyapunov-Based Control for Switched Power Converters", IEEE Transactions on Power Electronics, Vol.7, No.1, January 1992, p.17-24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記非特許文献1には、基準波形の生成をどのようにするのかについて、特に、数値的に基準波形を生成する場合の一般的な手法が何も開示されていない。またそのディジタル制御法についても何も開示されていない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、基準波形の生成が容易な電力変換器の制御方法および制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る第1の制御方法は、離散化状態方程式が(1−1)式で表されるシステムを構成する、少なくとも1つのスイッチ素子を含む電力変換器をリアプノフ関数および制御装置を利用して制御する制御方法であって、
【数1】
(ただし、xは状態変数ベクトル、uは入力変数、yは出力変数、Aはシステム行列、bは入力係数ベクトル、cは出力係数ベクトル)
ある時刻における基準状態変数ベクトルxr、補償器の補助変数ベクトルwおよび基準出力変数yrに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、次の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを求めることが可能な制御則を決定しておく第1ステップと、
全時刻における基準出力変数yrを参照可能にしておく第2ステップと、
最初の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwを決定する第3ステップと、
を予め実行しておき、その後、
時刻iにおいて前記システムの状態変数ベクトルxを構成する各要素を測定し、これにより時刻iにける状態変数ベクトルxを求める第4ステップと、
前記制御則と、時刻iにおける基準出力変数yr、基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、時刻i+1における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを数値的に求める第5ステップと、
(1−2)式を用いて、時刻iにおける偏差状態変数ベクトルx〜を求める第6ステップと、
【数2】
時刻iにおける偏差入力変数u〜を(1−3)式および(1−4)式で表される前記リアプノフ関数の収束条件を満足するように決定する第7ステップと、
【数3】
(ただし、Qは正定行列)
(1−5)式を用いて、時刻iにおける入力変数uを求める第8ステップと、
【数4】
第8ステップで求めた時刻iにおける入力変数uに基づいて、時刻i〜i+1における前記スイッチ素子のデューティを制御する第9ステップと、
前記制御装置に繰り返し実行させることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る第2の制御方法は、離散化状態方程式が(2−1)式で表されるシステムを構成する、少なくとも1つのスイッチ素子を含む電力変換器をリアプノフ関数および制御装置を利用して制御する制御方法であって、
【数5】
(ただし、xは状態変数ベクトル、uは入力変数、dは外乱変数ベクトル、yは出力変数、Aはシステム行列、bは入力係数ベクトル、Hは外乱係数行列またはベクトル、cは出力係数ベクトル)
ある時刻における基準状態変数ベクトルxr、補償器の補助変数ベクトルw、外乱変数ベクトルdおよび基準出力変数yrに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、次の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを求めることが可能な制御則を決定しておく第1ステップと、
全時刻における基準出力変数yrを参照可能にしておく第2ステップと、
最初の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwを決定する第3ステップと、
を予め実行しておき、その後、
時刻iにおいて前記システムの状態変数ベクトルxおよび外乱変数ベクトルdを構成する各要素を測定し、これにより時刻iにける状態変数ベクトルxおよび外乱変数ベクトルdを求める第4ステップと、
前記制御則と、時刻iにおける基準出力変数yr、基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwと、第4ステップで求めた時刻iにおける外乱変数ベクトルdとに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、時刻i+1における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを数値的に求める第5ステップと、
(2−2)式を用いて、時刻iにおける偏差状態変数ベクトルx〜を求める第6ステップと、
【数6】
時刻iにおける偏差入力変数u〜を(2−3)式および(2−4)式で表される前記リアプノフ関数の収束条件を満足するように決定する第7ステップと、
【数7】
(ただし、Qは正定行列)
(2−5)式を用いて、時刻iにおける入力変数uを求める第8ステップと、
【数8】
第8ステップで求めた時刻iにおける入力変数uに基づいて、時刻i〜i+1における前記スイッチ素子のデューティを制御する第9ステップと、
前記制御装置に繰り返し実行させることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る第3の制御方法は、離散化状態方程式が(3−1)式で表されるシステムを構成する、少なくとも1つのスイッチ素子を含む電力変換器をリアプノフ関数および制御装置を利用して制御する制御方法であって、
【数9】
(ただし、xは状態変数ベクトル、uは入力変数、yは出力変数、Aはシステム行列、bは入力係数ベクトル、cは出力係数ベクトル)
ある時刻における基準状態変数ベクトルxr、補償器の補助変数ベクトルwおよび基準出力変数yrに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、次の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを求めることが可能な制御則を決定しておく第1ステップと、
全時刻における基準出力変数yrを参照可能にしておく第2ステップと、
最初の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwを決定する第3ステップと、
を予め実行しておき、その後、
時刻iにおいて前記システムの状態変数ベクトルxを構成する各要素を測定し、これにより時刻iにける状態変数ベクトルxを求める第4ステップと、
前記制御則と、時刻iにおける基準出力変数yr、基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、時刻i+1における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを数値的に求める第5ステップと、
(3−2)式を用いて、時刻iにおける偏差状態変数ベクトルx〜を求める第6ステップと、
【数10】
(3−3)式を用いて、時刻iにおける偏差入力変数u〜を求める第7ステップと、
【数11】
(ただし、αは(3−4)式で表される前記リアプノフ関数の収束条件を満足するように決定された制御パラメータ、Qは正定行列)
【数12】
(3−5)式を用いて、時刻iにおける入力変数uを求める第8ステップと、
【数13】
第8ステップで求めた時刻iにおける入力変数uに基づいて、時刻i〜i+1における前記スイッチ素子のデューティを制御する第9ステップと、
前記制御装置に繰り返し実行させることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る第4の制御方法は、離散化状態方程式が(4−1)式で表されるシステムを構成する、少なくとも1つのスイッチ素子を含む電力変換器をリアプノフ関数および制御装置を利用して制御する制御方法であって、
【数14】
(ただし、xは状態変数ベクトル、uは入力変数、dは外乱変数ベクトル、yは出力変数、Aはシステム行列、bは入力係数ベクトル、Hは外乱係数行列またはベクトル、cは出力係数ベクトル)
ある時刻における基準状態変数ベクトルxr、補償器の補助変数ベクトルw、外乱変数ベクトルdおよび基準出力変数yrに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、次の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを求めることが可能な制御則を決定しておく第1ステップと、
全時刻における基準出力変数yrを参照可能にしておく第2ステップと、
最初の時刻における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwを決定する第3ステップと、
を予め実行しておき、その後、
時刻iにおいて前記システムの状態変数ベクトルxおよび外乱変数ベクトルdを構成する各要素を測定し、これにより時刻iにける状態変数ベクトルxおよび外乱変数ベクトルdを求める第4ステップと、
前記制御則と、時刻iにおける基準出力変数yr、基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwと、第4ステップで求めた時刻iにおける外乱変数ベクトルdとに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、時刻i+1における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを数値的に求める第5ステップと、
(4−2)式を用いて、時刻iにおける偏差状態変数ベクトルx〜を求める第6ステップと、
【数15】
(4−3)式を用いて、時刻iにおける偏差入力変数u〜を求める第7ステップと、
【数16】
(ただし、αは(4−4)式で表される前記リアプノフ関数の収束条件を満足するように決定された制御パラメータ、Qは正定行列)
【数17】
(4−5)式を用いて、時刻iにおける入力変数uを求める第8ステップと、
【数18】
第8ステップで求めた時刻iにおける入力変数uに基づいて、時刻i〜i+1における前記スイッチ素子のデューティを制御する第9ステップと、
前記制御装置に繰り返し実行させることを特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る第1の制御装置は、上記第1または第3の制御方法を用いて少なくとも1つのスイッチ素子を含む電力変換器を制御する制御装置であって、
前記第1ステップで決定した制御則と、(1−1)〜(1−5)式または(3−1)〜(3−5)式で使用するベクトルおよび変数とを少なくとも一時的に格納する記憶部と、
前記第5ステップにおける前記状態変数ベクトルxを構成する各要素の測定を行う測定部と、
前記記憶部に格納された前記制御則、前記ベクトルおよび前記変数と、前記測定部で測定された前記状態変数ベクトルxを構成する各要素を参照しつつ、前記第5〜第8ステップを実行する演算部と、
前記演算部が前記第8ステップを実行することにより求められた前記入力変数uに基づいて、前記スイッチ素子のデューティを制御するスイッチ素子駆動部と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る第2の制御装置は、上記第2または第4の制御方法を用いて少なくとも1つのスイッチ素子を含む電力変換器を制御する制御装置であって、
前記第1ステップで決定した制御則と、(2−1)〜(2−5)式または(4−1)〜(4−5)式で使用するベクトルおよび変数とを少なくとも一時的に格納する記憶部と、
前記第5ステップにおける前記状態変数ベクトルxおよび前記外乱変数ベクトルdを構成する各要素の測定を行う測定部と、
前記記憶部に格納された前記制御則、前記ベクトルおよび前記変数と、前記測定部で測定された前記状態変数ベクトルxおよび前記外乱変数ベクトルdを構成する各要素を参照しつつ、前記第5〜第8ステップを実行する演算部と、
前記演算部が前記第8ステップを実行することにより求められた前記入力変数uに基づいて、前記スイッチ素子のデューティを制御するスイッチ素子駆動部と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基準波形の生成が容易な電力変換器の制御方法および制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明における基準波形生成系のブロック図である。
図2】本発明による制御のフロー図である。
図3】本発明による制御のフロー図である。
図4】実施例1におけるシステムの(A)回路図、および(B)等価回路図である。
図5】実施例1における基準波形生成系のブロック図である。
図6】実施例1による制御の結果を示す波形図である。
図7】実施例2におけるシステムの(A)回路図、および(B)等価回路図である。
図8】実施例2における基準波形生成系のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る制御方法および制御装置で使用する状態方程式、リアプノフ関数、基準波形および制御フローについて説明し、その後、実施例として、LCLフィルタ付単相PWMインバータおよび降圧型DC−DCコンバータの制御について説明する。
【0017】
(状態方程式)
制御対象となる電力変換器を含むシステムの状態変数ベクトルをx、入力変数をu、出力変数をy、外乱変数ベクトルをdとすると、当該システムの連続系における状態方程式は次式の通りとなる。
【数19】
ただし、Aはシステム行列、bは入力係数ベクトル、Hは外乱係数行列、cは出力係数ベクトルである。
【0018】
また、時刻tがiT(ただし、Tはサンプリング時間、i=0,1,2・・・)となる毎にシステムの状態を測定して状態変数ベクトルxを構成する場合、離散系における状態方程式は次式の通りとなる。
【数20】
ただし、離散化システム行列A(以下、単にシステム行列という)、離散化入力係数ベクトルb(以下、単に入力係数ベクトルという)、離散化外乱係数行列H(以下、単に外乱係数行列という)および離散化出力係数ベクトルc(以下、単に出力係数ベクトルという)は、次式により求めることができる。
【数21】
【0019】
(リアプノフ制御)
基準(目標)とする動作を与える基準波形が、基準状態変数ベクトルおよび基準入力変数uからなるとき、システムの離散系における状態方程式は次式のような形に表すこともできる。
【数22】
【0020】
そして、(2)式から(4)式を減算すると、偏差状態変数ベクトルx〜は次式の通りとなる。なお、本明細書中の符号“x〜”はチルダ付きのxを意味する。同様に、符号“u〜”はチルダ付きのuを意味する。
【数23】
なお、(5)式の右辺を構成する時刻iにおける偏差状態変数ベクトルx〜および偏差入力変数u〜は、それぞれ次式で表される。
【数24】
【0021】
この場合、偏差状態変数ベクトルx〜に関するリアプノフ関数Vは次式の通りとなる。
【数25】
ただし、Qは正定行列である。
【0022】
次に、(7)式で表されるリアプノフ関数Vの収束条件について検討する。離散系におけるリアプノフ関数Vは、時刻i+1におけるリアプノフ関数Vが時刻iにおけるリアプノフ関数Vよりも小さいときに収束する。したがって、リアプノフ関数Vの収束条件は、(8)式を経て最終的に(9)式の通りとなる。
【数26】
【数27】
だだし、(9)式中のγおよびβは、次式で定義されるスカラーである。
【数28】
【0023】
前述の通り、離散系におけるリアプノフ関数Vは、時刻i+1におけるリアプノフ関数Vが時刻iにおけるリアプノフ関数Vよりも小さいときに収束する。すなわち、(9)式の右辺全体が負定性を示すときに、リアプノフ関数Vは収束する。
【0024】
安定な系では、(9)式の右辺第1項は負定性を示す。したがって、(9)式の右辺全体が負定性を示すための条件は、(9)式の右辺第2項が負定性を示すための条件と一致する。(9)式の右辺第2項が負定性を示すための条件は、次式の通りである。
【数29】
すなわち、リアプノフ関数Vを収束させるためには、(11)式の条件を満足するように偏差入力変数u〜を決定すればよい。
【0025】
(9)式の右辺第1項が負定性を示すか否かも含めてリアプノフ関数Vの収束条件を求めたい場合は、制御パラメータα(ただし、α>0)を用いて偏差入力変数u〜を次式に基づいて求めればよい。
【数30】
【0026】
この場合、リアプノフ関数Vが収束するためには、(12)式を(8)式に代入することにより得た(13)式の右辺が負定性を示さなければならない。
【数31】
したがって、リアプノフ関数Vの収束条件は、次式の通りとなる。
【数32】
【0027】
つまり、制御パラメータαを(14)式に示されている範囲内で設定し、さらに、偏差入力変数u〜を(12)式に基づいて求めれば、リアプノフ関数Vは収束する。なお、制御パレメータαは、例えば、(13)式が最小となるように、次式に従って設定すればよい。
【数33】
【0028】
(基準波形)
本発明では、基準とする動作を与える基準波形、すなわち、基準状態変数ベクトルおよび基準入力変数uを、解析的にではなく数値的に求める。これにより、本発明は、解析的に基準波形を生成する場合に起こり得る種々の問題、例えば、次数が高い場合に計算が非常に複雑化するという問題を回避している。
【0029】
図1に、補償器のための補助変数ベクトルwを導入した基準波形生成系のブロック図を示す。また、図1に対応する制御則は、(16)式および(17)式に示す通りである。
【数34】
【数35】
ただし、yは基準出力変数、fは状態フィードバック係数、kは補償器のフィードバック係数、Cは補助変数ベクトル間の係数行列、kは出力偏差(基準出力変数y−出力変数y)と補助変数ベクトルとの間の係数ベクトルである。
【0030】
本発明では、予め決定しておいた上記制御則と、ある時刻(時刻i)における基準状態変数ベクトルxr、補償器の補助変数ベクトルw、外乱変数ベクトルdおよび基準出力変数yrとに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、次の時刻(時刻i+1)における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを求める。外乱を考慮しない場合の制御則については、後で説明する。
【0031】
(制御フロー)
続いて、本発明による制御フローについて説明する。図2から明らかなように、本発明による制御フローは、ステップS1−1〜S1−3からなる準備パートと、これに続く繰り返しパート(ステップS1−4〜S1−9)とからなる。準備パートは、最初に一度だけ実行される。一方、繰り返しパートは、iを更新しながら何度も実行される。
【0032】
まず、ステップS1−1では、上記(16)式および(17)式で表される制御則を決定する。制御則は、制御対象となる電力変換器を含むシステムから解析的にもしくは数値的な計算によりシステムパラメータ(A、b、H、c)を求めた後、さらにこのシステムパラメータに基づいて最適制御法等により制御ゲイン(f、k、k、C)を決定することにより決定される。
【0033】
ステップS1−2では、全時刻における基準出力変数yを参照可能にする。具体的には、このステップでは、時刻i(ただし、i=0,1,2・・・)における基準出力変数yを記憶部に格納したり、時刻iを代入することにより当該時刻における基準出力変数yを求められるようにしたiとyの関係式を記憶部に格納したりする。
【0034】
ステップS1−3では、基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwの初期値、つまり最初の時刻(i=0)における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwを決定する。基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwの初期値は、例えば0である。
【0035】
準備パートを構成するステップS1−1〜S1−3は、順番を入れ替えて実行してもよい。例えば、ステップS1−3を実行した後にステップS1−2を実行し、最後にステップS1−1を実行してもよい。
【0036】
ステップS1−4では、状態変数ベクトルxおよび外乱変数ベクトルdを構成する各要素を測定(サンプリング)し、これにより時刻iにける状態変数ベクトルxおよび外乱変数ベクトルdを求める。
【0037】
ステップS1−5では、ステップS1−1で予め決定しておいた(16)式の制御則に時刻iにおける基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwを代入し、時刻iにおける基準入力変数urを求める。また、ステップS1−5では、ステップS1−1で予め求めておいた(17)式の制御則に時刻iにおける基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwと、記憶部を参照することにより取得した時刻iにおける基準出力変数yと、ステップS1−4で求めた時刻iにおける外乱変数ベクトルdとを代入することにより、時刻i+1における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwを求める。
【0038】
i=0のときのステップS1−5では、ステップS1−3で決定した基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwの初期値を(16)式および(17)式に代入する。一方、i=1,2,3・・・のときのステップS1−5では、ひとつ前の時刻のステップS1−5で求めた基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwを(16)式および(17)式に代入する。
【0039】
ステップS1−6では、時刻iにおける基準状態変数ベクトルxrおよびステップS1−4で求めた時刻iにける状態変数ベクトルxを(6)式に代入し、時刻iにおける偏差状態変数ベクトルx〜を求める。i=0のときのステップS1−6では、ステップS1−5と同様、ステップS1−3で決定した基準状態変数ベクトルxrの初期値を(6)式に代入する。
【0040】
ステップS1−7では、(11)式および(10)式で表されるリアプノフ関数Vの収束条件を満足するように、時刻iにおける偏差入力変数u〜を決定する。なお、時刻iにおけるスカラーγは、ステップS1−6で求めた時刻iにおける偏差状態変数ベクトルx〜を代入することにより求められる。
【0041】
ステップS1−8では、ステップS1−5で求めた時刻iにおける基準入力変数urおよびステップS1−7で決定した時刻iにおける偏差入力変数u〜を(6)式に代入し、時刻iにおける入力変数uを求める。
【0042】
ステップS1−9では、ステップS1−8で求めた時刻iにおける入力変数uに基づいて、時刻i〜i+1(0≦t<T)におけるスイッチ素子のデューティを制御する。
【0043】
その後、iに1を加算し、2回目の繰り返しパート(ステップS1−4〜S1−9)を実行する。そして、これにより、T≦t<2Tにおけるデューティを制御する。
【0044】
(11)式および(10)式とは別の収束条件を使用する場合は、ステップS1−7に代えて、図3に示すステップS2−7を実行する。ステップS2−7では、(14)式の範囲内で設定された制御パラメータαと、ステップS1−6で求めた時刻iにける偏差状態変数ベクトルx〜とを(12)式に代入することにより、時刻iにおける偏差入力変数u〜を求める
【0045】
図3に示す制御フローのその他のステップS2−1〜S2−6、S2−8、S2−9は、それぞれ、図2に示す制御フローのステップS1−1〜S1−6、S1−8、S1−9と同一である。
【0046】
上記制御フローは、いずれも、本発明に係る制御装置により実行される。本発明に係る制御装置は、記憶部、測定部、演算部およびスイッチ素子駆動部からなる。記憶部は、ステップS1−1(S2−1)で決定した制御則の他、上記制御フローで使用するベクトルや変数を少なくとも一時的に格納する。測定部は、ステップS1−4(S2−4)における測定を行う。演算部は、記憶部および測定部の測定結果を参照しつつ、各ステップの演算を行う。また、スイッチ素子駆動部は、演算部がステップS1−9(S2−9)を実行することにより求めた入力変数uに基づいて、スイッチ素子のデューティを制御する。
【0047】
続いて、本発明に係る制御方法および制御装置の実施例について説明する。
【0048】
(実施例1:LCLフィルタ付単相PWMインバータの制御)
実施例1では、LCLフィルタ付きの単相フルブリッジ電圧形PWMインバータを制御する。図4(A)に示すように、本実施例のPWMインバータは、LCLフィルタを介して系統電圧vに接続されている。このため、本実施例では、系統電圧vが外乱となる。また、本実施例では、コイルLに流れる電流iL2が系統電圧vと位相が一致した正弦波状となるように、PWMインバータを構成する4つのスイッチ素子のデューティの制御を通じてインバータ出力電圧vを制御する。さらに、本実施例では、時刻tがiTとなる毎にコンデンサ電圧vC、コイル電流iL1およびコイル電流iL2を測定し、これらにより状態変数ベクトルxを構成する(ステップS1−4、S2−4)。
【0049】
ここで、インバータ出力電圧vと、PWMインバータの直流電圧Eおよび入力変数uとには、次式の関係がある。
【数36】
したがって、図4(A)に示すシステムは、図4(B)に示す回路と等価である。なお、本実施例では入力変数uのとり得る範囲が−1≦u≦1となる。
【0050】
本実施例では、波形制御の対象となるコイル電流iL2が出力変数yに相当する。このため、上記制御フローのステップS1−2(S2−2)では、時間の経過とともに正弦波状に変化する基準出力変数yが参照可能とされる。
【0051】
このシステムの連続系および離散系における状態方程式は、以下の通りとなる。
【数37】
【数38】
ただし、システム行列A(A)、入力係数ベクトルb(b)、外乱係数ベクトルh(h)および出力係数ベクトルc(c)は、(21)式および(22)式により求められる。
【数39】
【数40】
また、前述の通り、状態変数ベクトルxの構成要素は、コンデンサ電圧v、コイル電流iL1およびコイル電流iL2である。
【数41】
【0052】
なお、(19)式および(20)式は、外乱係数行列H(H)ではなく外乱係数ベクトh(h)を含んでいる点において(1)式および(2)式と相違しているが、これは、外乱の種類による。つまり、外乱が1変数の場合には外乱係数はベクトルとなり、2変数以上の場合は行列となる。
【0053】
図5に、本実施例における基準波形生成系のブロック図を示す。同図から明らかなように、本実施例では、制御遅れおよび外乱を補償するべく、次式で表される伝達関数をもった正弦波補償器を用いる。
【数42】
ただし、kおよびkは正弦波補償器のゲインである。
【0054】
図5に対応する制御則は、(25)式および(26)式に示す通りである。
【数43】
【数44】
(16)式および(17)式と比べて次数が拡大されているのは、正弦波補償器が2次の伝達特性を持っているからである。
【0055】
本実施例では、ステップS1−5(S2−5)において、上記制御則と、ある時刻(時刻i)における基準状態変数ベクトルxr、補償器の補助変数ベクトルw、外乱変数ベクトルdに相当する系統電圧vおよび正弦波状に変化する基準出力変数yrとに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、次の時刻(時刻i+1)における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを求める。
【0056】
そして、その後、ステップS1−6(S2−6)以降を実行することにより、リアプノフ関数Vの収束条件を満足するように入力変数uを求め、4つのスイッチ素子のデューティを制御する。
【0057】
図6に、本実施例における制御の結果を示す。同図からは、コイル電流iL2が目標通り系統電圧vと位相が一致した正弦波状となったことが分かる。
【0058】
(実施例2:降圧型DC−DCコンバータの制御)
実施例2では、図7(A)に示す降圧型DC−DCコンバータを制御する。本実施例では、コンデンサCの両端に発生する電圧v、すなわち負荷Rに対して出力される電圧が一定となるように、スイッチ素子Sのデューティの制御を通じて電圧vを制御する。また、本実施例では、時刻tがiTとなる毎にコイルLに流れる電流iおよびコンデンサ電圧vを測定し、これらにより状態変数ベクトルxを構成する(ステップS1−4、S2−4)。
【0059】
ここで、電圧vと、電源の直流電圧Eおよび入力変数uとには、次式の関係がある。
【数45】
したがって、図7(A)に示すシステムは、図7(B)に示す回路と等価である。なお、本実施例では入力変数uのとり得る範囲が0≦u≦1となる。
【0060】
本実施例では、波形制御の対象となるコンデンサ電圧vが出力変数yに相当する。このため、上記制御フローのステップS1−2(S2−2)では、時間によって変化しない基準出力変数yが参照可能とされる。
【0061】
このシステムの連続系および離散系における状態方程式は、以下の通りとなる。
【数46】
【数47】
ただし、システム行列A(A)、入力係数ベクトルb(b)および出力係数ベクトルc(c)は、(30)式および(31)式により求められる。
【数48】
【数49】
また、前述の通り、状態変数ベクトルxの構成要素は、コイル電流iおよびコンデンサ電圧vである。
【数50】
【0062】
なお、(28)式および(29)式には外乱項が存在しない。本実施例のシステムでは、外乱を考慮する必要がないからである。
【0063】
図8に、本実施例における基準波形生成系のブロック図を示す。同図から明らかなように、本実施例では、補償器として次式で表される伝達関数をもった積分補償器を用いる。
【数51】
ただし、kは積分補償器のゲインである。
【0064】
図8に対応する制御則は、(34)式および(35)式に示す通りである。
【数52】
【数53】
【0065】
本実施例では、ステップS1−5(S2−5)において、上記制御則と、ある時刻(時刻i)における基準状態変数ベクトルxr、補償器の補助変数ベクトルwおよび一定の基準出力変数yrとに基づいて、該時刻における基準入力変数urと、次の時刻(時刻i+1)における基準状態変数ベクトルxrおよび補助変数ベクトルwとを求める。
【0066】
そして、その後、ステップS1−6(S2−6)以降を実行することにより、リアプノフ関数Vの収束条件を満足するように入力変数uを求め、スイッチ素子Sのデューティを制御する。
【0067】
以上、本発明に係る電力変換器の制御方法および制御装置について説明してきたが、本発明は前述の形態に限定されるものではない。
【0068】
例えば、上記実施例では、本発明に係る制御方法および制御装置でLCLフィルタ付単相PWMインバータおよび降圧型DC−DCコンバータを制御したが、制御対象となる電力変換器はこれらに限定されない。例えば、本発明に係る制御方法および制御装置によれば、三相PWMインバータを制御することもできる。
【0069】
また、上記実施例では、正弦波補償器および積分補償器を使用したが、使用する補償器の種類は適宜変更することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8