【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発、ミリ波帯ワイヤレスアクセスネットワーク構築のための周波数高度利用技術の研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1インピーダンス回路および前記第2インピーダンス回路はそれぞれ、ゲートがバイアスされたMOSトランジスタを含むことを特徴とする請求項1に記載の差動増幅器。
【背景技術】
【0002】
電気信号を増幅するために、電圧/電流変換器(トランスコンダクタンスアンプ)や演算増幅器(本明細書において、差動増幅器と総称する)が利用される。
【0003】
図1は、本発明者らが検討した差動増幅器の構成を示す回路図である。差動増幅器2rは、第1入力端子IN_a、第2入力端子IN_b、第1出力端子OUT_a、第2出力端子OUT_bを備え、入力端子IN_a、IN_bの入力電圧Vin_a、Vin_bの差分に応じた電流Iout_a、Iout_bを出力する完全差動型の電圧/電流変換器である。
【0004】
NMOSトランジスタM1n_a、M1n_bは、入力差動対を形成する。NMOSトランジスタM1n_a、M1n_bそれぞれのソースの間には、抵抗R
sが設けられる。NMOSトランジスタM1n_a、M1_bそれぞれのソースと接地ラインの間には、NMOSトランジスタM2n_a、M2n_bが設けられる。NMOSトランジスタM2n_a、M2n_bそれぞれのゲートは、NMOSトランジスタM1n_a、M1n_bのドレインと接続されている。
【0005】
NMOSトランジスタM3n_a、M3n_bのそれぞれのソースは接地され、それらのゲートは、NMOSトランジスタM2n_a、M2n_bのゲートと接続され、それらのドレインは出力端子OUT_a、OUT_bと接続される。
【0006】
NMOSトランジスタM1n_a、M1_bそれぞれのドレインと電源ラインの間には、ゲートがバイアスされたPMOSトランジスタM4p_a、M4p_bが設けられる。
【0007】
PMOSトランジスタM5p_a、M5p_bのゲートは、PMOSトランジスタM4p_a、M4p_bと共通に接続される。PMOSトランジスタM5p_a、M5p_bのソースは電源ラインと接続され、それらのドレインは、出力端子OUT_a、OUT_bと接続される。
【0008】
ゲートがバイアスされたPMOSトランジスタM4p_a、M4p_b、M5p_a、M5p_bはそれぞれ電流源を形成しており、NMOSトランジスタM1n_a、M1n_b、M2n_a、M2n_b、M3n_a、M3n_aにバイアス電流を供給する。
【0009】
図2は、
図1の差動増幅器の小信号等価回路図である。
図1の差動増幅器2rは、回路の対称性によりどちらか一方の小信号等価回路により、差動増幅器2r全体の動作を解析できる。ここでは
図1において添え字aが付される左側について解析する。
G
s=1/R
sであり、各トランジスタのトランスコンダクタンスをg
m、ドレインコンダクタンスをg
d、負荷コンダクタンスをg
L、内部ノードの電圧をv
sと記す。キルヒホッフの法則により、式(1a)、(1b)が得られる。添え字はトランジスタの番号を表す。
g
m3v
o+2G
sv
s+g
d1(v
s−v
o)−g
m1(v
in−v
s) …(1a)
g
d1(v
o−v
s)+g
Lv
o+g
m1(v
in−v
s) …(1b)
これらを整理すると、式(2a)、(2b)が得られる。
(2G
s+g
d1+g
m1)v
s+(g
m3−g
d1)v
o=g
m1v
in …(2a)
(g
d1+g
m1)v
s−(g
d1+g
L)v
o=g
m1v
in …(2b)
したがって、
図1のトランスコンダクタンスアンプの入力電圧−出力電流特性は、式(3)で与えられる。
i
o/v
in=Mg
m3v
o/v
in
=−2MG
s/{1+g
d1/g
m1+g
L/g
m3+(2G
s(g
d1+g
L)+g
d1g
L)/g
m1g
m3} …(3)
ここでMはミラー比である。
【0010】
通常、g
d≪g
m、g
L≪g
m、G
s<g
mであるので、式(3)の分母項はほぼ1となり、この回路は高い線形性を有することがわかる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0022】
(第1の実施例)
図3は、第1の実施例に係る差動増幅器2の構成を示す回路図である。差動増幅器2は、第1入力端子IN_a、第2入力端子IN_b、第1出力端子OUT_a、第2出力端子OUT_b、第1電源ラインV
DD、第2電源ラインV
SS、有する。
【0023】
差動増幅器2は、第1入力端子IN_a、第2入力端子IN_bそれぞれに入力された第1入力電圧Vin_a、第2入力電圧Vin_bの差分を増幅し、差分に応じた電流信号Iout_a、Iout_bの少なくとも一方を、第1出力端子OUT_a、第2出力端子OUT_bから出力する電圧/電流変換器である。
図3には、完全差動型の電圧/電流変換器が示される。
【0024】
差動増幅器2は、複数のPMOSトランジスタM1p_a、M1p_b、M2p_a、M2p_b、M3p_a、M3p_bならびに複数のNMOSトランジスタM1n_a、M1n_b、M2n_a、M2n_b、M3n_a、M3n_b、第1インピーダンス回路Rb_a、第2インピーダンス回路Rb_b、第1カップリング回路Rs1、第2カップリング回路Rs2を備える。
複数のPMOSトランジスタM1p_a、M1p_b、M2p_a、M2p_b、M3p_a、M3p_bを順に、第1PMOSトランジスタ〜第6PMOSトランジスタと称し、複数のNMOSトランジスタM1n_a、M1n_b、M2n_a、M2n_b、M3n_a、M3n_bを順に、第1NMOSトランジスタ〜第6NMOSトランジスタと称する。
【0025】
第1PMOSトランジスタM1p_aのゲートおよび第1NMOSトランジスタM1n_aのゲートは、第1入力端子IN_aと接続され、第2PMOSトランジスタM1p_bのゲートおよび第2NMOSトランジスタM1n_bのゲートは、第2入力端子IN_bと接続される。
【0026】
第1インピーダンス回路Rb_aは、第1PMOSトランジスタM1p_aのドレインと第1NMOSトランジスタM1n_aのドレインの間に設けられ、第2インピーダンス回路Rb_bは、第2PMOSトランジスタM1p_bのドレインと第2NMOSトランジスタM1n_bのドレインの間に設けられる。
【0027】
第1カップリング回路Rs1は、第1PMOSトランジスタM1p_aのソースと、第2PMOSトランジスタM1p_bのソースの間に設けられ、第2カップリング回路Rs2は、第1NMOSトランジスタM1n_aのソースと第2NMOSトランジスタM1n_bのソースの間に設けられる。
【0028】
第3PMOSトランジスタM2p_aのゲートは、第1PMOSトランジスタM1p_aのドレインと接続され、そのソースは、第1電源ラインV
DDと接続される。
第4PMOSトランジスタM2p_bのゲートは、第2PMOSトランジスタM1p_bのドレインと接続され、そのソースは、第1電源ラインV
DDと接続される。
【0029】
第5PMOSトランジスタM3p_aのゲートは、第1PMOSトランジスタM1p_aのドレインと接続され、そのソースは、第1電源ラインV
DDと接続され、そのドレインは、第1出力端子OUT_aと接続される。
第6PMOSトランジスタM3p_bのゲートは、第2PMOSトランジスタM1p_bのドレインと接続され、そのソースは、第1電源ラインV
DDと接続され、そのドレインは、第2出力端子OUT_bと接続される。
【0030】
第3NMOSトランジスタM2n_aのゲートは、第1NMOSトランジスタ第1NMOSトランジスタM1n_aのドレインと接続され、そのソースは、第2電源ラインV
SSと接地される。第4NMOSトランジスタM2n_bのゲートは、第2NMOSトランジスタM1n_bのドレインと接続され、そのソースは、第2電源ラインV
SSと接続される。
【0031】
第5NMOSトランジスタM3n_aのゲートは、第1NMOSトランジスタM1n_aのドレインと接続され、そのソースは第2電源ラインV
SSと接続され、そのドレインは第1出力端子OUT_aと接続される。
【0032】
第6NMOSトランジスタM3n_bのゲートは、第2NMOSトランジスタM1n_bのドレインと接続され、そのソースは第2電源ラインV
SSと接続され、そのドレインは第2出力端子OUT_bと接続される。
【0033】
本実施例において、第1インピーダンス回路Rb_a、第2インピーダンス回路Rb_bはそれぞれ抵抗を含む。第1カップリング回路Rs1、第2カップリング回路Rs2もそれぞれ抵抗素子を含む。
【0034】
以上が差動増幅器2の構成である。
図1の差動増幅器2rでは、PMOSトランジスタが電流源としてしか用いられておらず、電圧/電流変換には直接寄与しておらず、NMOSトランジスタのみによって電圧/変換が行われている。これに対して
図3の差動増幅器2では、PMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタの両方を利用して電圧/変換を行い、それぞれの出力電流を出力端において合成している。
【0035】
加えて、第1PMOSトランジスタM1p_aのドレインと第1NMOSトランジスタM1n_aのドレインとは、第1インピーダンス回路Rb_aを介して接続されており、第2PMOSトランジスタM1p_bのドレインと第2NMOSトランジスタM1n_bのドレインも、第2インピーダンス回路Rb_bを介して接続される。これにより、PMOSトランジスタM1p_a、M1p_bのドレイン電流を、NMOSトランジスタM1n_a、M1n_bのドレイン電流を互いに共有でき、言い換えれば再利用することができる。したがって、消費電力を増大させることなく、電圧/電流変換係数(利得)を2倍程度に高めることができ、ひいては高速化を図ることができる。
【0036】
図3の差動増幅器2では、
図1の差動増幅器2rに比べて、電圧/電流変換係数(トランスコンダクタンス)g
mが2倍に向上している反面、消費電力は同一であり、電流利用効率が2倍に高められているとも言える。このため、遮断周波数f
Tが以下の式で表される電子回路において、電圧/電流変換係数g
mが上昇することにより、同一負荷容量C
Lを想定したときの周波数帯域を2倍に向上することができる。
f
T=g
m/(2πC
L)
【0037】
別の観点から言えば、
図3の差動増幅器2を、
図1の差動増幅器2rと同一の電圧/電流変換係数を実現するよう構成した場合、必要とされる消費電力(消費電流)を半減することが可能となる。
【0038】
加えて、NMOSトランジスタで構成される回路と、PMOSトランジスタで構成される回路は、相補的に動作する。たとえば入力電圧Vin_aが上昇すると、第1NMOSトランジスタM1n_aのドレイン電圧は低下するが、このとき第1PMOSトランジスタM1p_aのドレイン電圧もそれに追従して同様に低下する。つまり第1インピーダンス回路Rb_aの両端間に印加される電圧(電圧降下)は変化せず、一定の電流が流れる。つまり、第1インピーダンス回路Rb_aがあたかも定電流源として振る舞うものと理解され、これによりPMOSトランジスタM1p_a、NMOSトランジスタM1n_aのドレインから見た負荷インピーダンスR
Lを極めて高くすることができる。これは、式(3)のg
L(=1/R
L)がほぼゼロとなることを意味するため、差動増幅器2は、極めて高い線形性を有することになる。
【0039】
(第2の実施例)
図3の差動増幅器2では、第1インピーダンス回路Rb_a、第2インピーダンス回路Rb_bとして、抵抗素子が利用されており、回路構成を簡素化でき、低電圧動作に適するという利点を有する。その反面、(i)動作電流が電源電圧V
DD、V
SSや温度に依存し、および/または、(ii)NMOS側の電圧/電流変換係数と、PMOS側の電圧/電流変換係数にミスマッチが生じた場合に、インピーダンス回路Rb_a、Rb_bの両端間電圧が変化し、ドレインからみた負荷抵抗R
Lが減少するため、線形性が幾分悪化するという課題を有している。これらの課題は、第2の実施例により解決される。
【0040】
図4は、第2の実施例に係る差動増幅器2aの示す回路図である。差動増幅器2aの第1インピーダンス回路Rb_a、第2インピーダンス回路Rb_bは、
図3の抵抗に代えて、ゲートがバイアスされたトランジスタを含む。
【0041】
具体的には、第1インピーダンス回路Rb_aは、縦積みされたNMOSトランジスタM6n_a、PMOSトランジスタM6p_aを含む。同様に第2インピーダンス回路Rb_bは、縦積みされたNMOSトランジスタM6n_b、PMOSトランジスタM6p_bを含む。NMOSトランジスタM6n_a、M6n_bのゲートは、バイアス電圧Vbnで、PMOSトランジスタM6p_a、M6p_bのゲートは、バイアス電圧Vbpでバイアスされる。
【0042】
第2の実施例によれば、バイアス電圧Vbn、Vbpを適切に設定することにより、動作電流を電源電圧V
DD、V
SSとは独立して設定することが可能となり、差動増幅器2aを、電源電圧変動や温度変動の影響をほとんど受けずに動作させることができる。それに加えて、第1インピーダンス回路Rb_a、第2インピーダンス回路Rb_bが定電流源として動作するため、NMOSトランジスタM1n_a、M1n_b、PMOSトランジスタM1p_a、M1p_bのドレインから見た負荷抵抗R
Lが極めて高くなり、良好な線形性を維持することができる。
【0043】
(変形例2.1)
第1の実施例と第2の実施例を組み合わせて、インピーダンス回路Rb_a、Rb_bそれぞれを、抵抗素子とゲートがバイアスされたMOSトランジスタの直列接続で構成してもよい。
【0044】
(第3の実施例)
図1の差動増幅器2rでは、第1PMOSトランジスタM1p_a、第2PMOSトランジスタM1p_bのソース間、および第1NMOSトランジスタM1n_a、第2NMOSトランジスタM1n_bのソース間に、第1カップリング回路Rs1、第2カップリング回路Rs2が挿入されている。本発明者らは、
図1の差動増幅器2rについて検討し、この差動増幅器2rにおいて、ソース間のインピーダンス回路Rs1、Rs2のインピーダンスをゼロとし、すなわちソース間を短絡すれば、電圧/電流変換器ではなく、演算増幅器を構成できることを見いだした。
【0045】
図5は、第3の実施例に係る差動増幅器2bの構成を示す回路図である。
この差動増幅器2bは、第1入力端子IN_a、第2入力端子IN_bそれぞれに入力された第1入力電圧Vin_a、第2入力電圧Vin_bの差分を増幅し、差分に応じた電圧信号Vout_a、Vout_bを、第1出力端子OUT_a、第2出力端子OUT_bから出力する完全差動型の演算増幅器である。
【0046】
図5の差動増幅器2bは、
図1の差動増幅器2rから、第1カップリング回路Rs1、第2カップリング回路Rs2を省略し、第1PMOSトランジスタM1p_aのソースと第2PMOSトランジスタM1p_bのソースの間を配線で結線し、同様に第1NMOSトランジスタM1n_aのソースと第2NMOSトランジスタM1n_bのソースの間を、配線で結線したものである。
【0047】
コモンモードフィードバック回路10は、出力電圧Vout_a、Vout_bのコモンモード電圧(平均電圧)V
COMが、所定の基準電圧Vcmoと一致するように、差動増幅器2bのバイアス状態をフィードバック制御する。
【0048】
差動増幅器2bにおいて、コモンモードフィードバック回路10は、コモンモード電圧V
COMが基準電圧Vcmoと一致するように、PMOSトランジスタM5p_a、M5p_bのゲート電圧をフィードバック制御する。
【0049】
差動増幅器2bは、以下のように把握することができる。
第1トランジスタM1n_a、第2トランジスタM1n_bは、第1の導電性(Nチャンネル、Pチャンネルの一方)を有し、それぞれのゲートは、第1入力端子IN_a、第2入力端子IN_bと接続され、それぞれのソースは共通に接続される。
第3トランジスタM4p_aは、第2の導電性(NチャンネルとPチャンネルの他方)を有し、第1トランジスタM1n_aのドレインと第1電源ライン(V
DDとV
SSの一方V
DD)の間に設けられ、そのゲートはバイアスされる。
第4トランジスタM4p_bは、第2の導電性(NチャンネルとPチャンネルの他方)を有し、第2トランジスタM1n_bのドレインと第1電源ライン(V
DD)の間に設けられ、そのゲートはバイアスされる。
【0050】
第5トランジスタM2n_aは、第1の導電性を有し、第1トランジスタM1n_aのソースと、第2電源ライン(V
DDとV
SSの他方V
SS)の間に設けられ、そのゲートは第1トランジスタM1n_aのドレインと接続される。
第6トランジスタM2n_bは、第1の導電性を有し、第2トランジスタM1n_bのソースと、第2電源ライン(V
SS)の間に設けられ、そのゲートは第2トランジスタM1n_bのドレインと接続される。
【0051】
第7トランジスタM5n_aは、第2の導電性を有し、第1電源ライン(V
DD)と第1出力端子OUT_aの間に設けられる。第8トランジスタM5n_bは、第2の導電性を有し、第1電源ライン(V
DD)と第2出力端子OUT_bの間に設けられる。第7トランジスタM5n_a、第8トランジスタM5n_bそれぞれのゲートはバイアスされる。
【0052】
第9トランジスタM3n_aは、第1の導電性を有し、第1出力端子OUT_aと第2電源ライン(V
SS)の間に設けられ、そのゲートは、第5トランジスタM2n_aのゲートと接続される。
第10トランジスタM3n_bは、第1の導電性を有し、第2出力端子OUT_bと第2電源ライン(V
SS)の間に設けられ、そのゲートは、第6トランジスタM2n_bのゲートと接続される。
【0053】
この差動増幅器(演算増幅器)2bは、極めて低電圧で動作させることができる。V
eff=V
GS−V
Tを有効ゲート電圧とすると、差動増幅器2bの最低動作電圧はV
Tn+2V
effとなるので、90nsプロセスのCMOSの典型的なパラメータであるV
T=0.2V、Veff=0.15Vを代入すると、わずか0.5Vで動作する低電圧演算増幅器を構成することが出来る。
【0054】
(変形例3.1)
図5の差動増幅器2bにおけるバイアスの態様は、特に限定されない。たとえば、出力側の電流源であるPMOSトランジスタM5p_a、M5p_bのゲートを所定のバイアス電圧によりバイアスし、入力側のトランジスタM1n_a、M1n_bにバイアス電流を供給する電流源であるPMOSトランジスタM4p_a、M4p_bのゲート電圧を、コモンモードフィードバック回路10により制御しても良い。
【0055】
(変形例3.2)
図5の差動増幅器2bは、完全差動の演算増幅器であったが、これをシングルエンドの演算増幅器として構成することもできる。
図6は、変形例に係る差動増幅器2cの構成を示す回路図である。差動増幅器2cは、第1入力端子IN_a、第2入力端子IN_bそれぞれに入力された第1入力電圧Vin_a、第2入力電圧Vin_bの差分を増幅し、差分に応じた電圧信号Vout_aを、出力端子OUT_bから出力する。
【0056】
差動増幅器2cは、
図5からコモンモードフィードバック回路10を省略し、PMOSトランジスタM5p_aのゲートを、そのドレインと接続し、トランジスタM5p_a、M5p_bをカレントミラー負荷としたものである。
【0057】
(変形例3.3)
図5の差動増幅器2b、その変形例3.1、3.2において、PチャンネルMOSFETとNチャンネルMOSFETを置換し、天地を反転させた構成も、本発明の態様として有効である。この場合、第1電源ラインをVSS、第2電源ラインをVDD、第1の導電性をPチャンネル、第2の導電性をNチャンネルと読み替えればよい。
【0058】
(第4の実施例)
図7は、第4の実施例に係る差動増幅器2dの構成を示す回路図である。この差動増幅器2dは、
図5の演算増幅器2bに
図3の差動増幅器2を組み合わせた構成と把握できる。
【0059】
図7の差動増幅器2dでは、
図3と同様に、第1インピーダンス回路Rb_a、第2インピーダンス回路Rb_bそれぞれは抵抗素子で形成され、それぞれのセンターにタップTa、Tbが設けられている。コモンモードフィードバック回路10は、コモンモード電圧が基準電圧Vcmoと一致するように、タップの電位をフィードバック制御する。
【0060】
この差動増幅器2dによれば、
図3の差動増幅器2と同様に、電流を再利用することにより、トランスコンダクタンスg
mを2倍にしていることで,消費電流を増加させることなしに入力換算ノイズ電圧を1/√2倍に低減にすることができる。また利得帯域幅積を2倍に増加させることができる。
【0061】
(変形例4.1)
図7のコモンモードフィードバック回路10のバイアス制御は限定されない。たとえば第1インピーダンス回路Rb_a、第2インピーダンス回路Rb_bを、
図4に示すようにトランジスタで構成し、そのゲート電圧Vbp、Vbnを、コモンモードフィードバック回路10によってフィードバック制御してもよい。
当業者であれば、ここで例示されるもの以外のその他の回路構成によっても、コモンモードフィードバックが可能であることが理解される。
【0062】
(変形例4.2)
図8は、変形例に係る差動増幅器2eの構成を示す回路図である。この差動増幅器2eは、
図6の差動増幅器2dと同様、完全差動型の演算増幅器である。差動増幅器2eは、その出力段に、カスコード回路を形成するトランジスタM7p_a、M7p_b、M7n_a、M7n_bを有する。
【0063】
トランジスタM7p_a、M7n_aのゲートは、第1入力端子IN_aと接続され、トランジスタM7p_b、M7n_bのゲートは、第2入力端子IN_bと接続される。
【0064】
この構成によれば、出力トランジスタM3p_a、M3p_b、M3n_a、M3n_bのドレインと出力端子の間に、カスコード回路を挿入することにより、利得を大幅に、具体的には20〜30dB程度増大させることができる。
【0065】
(変形例4.3)
図8において、トランジスタM7p_a、M7n_a、M7p_b、M7n_bのゲートを、入力端子IN_a、IN_bと接続する代わりに、適切なバイアス電圧を供給してもよい。
【0066】
(変形例4.4)
図9は、変形例に係る演算増幅器2fの構成を示す回路図である。演算増幅器2fは、
図8の演算増幅器2eに加えて、電圧源14a、14b、16a、16bを備える。電圧源14a、14b、16a、16bは、出力段のトランジスタM3n_a、M3n_b、M3p_a、M3p_bそれぞれのゲートソース間電圧V
GSを小さくする。
これにより、AB級のバイアスが可能となり,低電力であっても大きな負荷駆動能力を得ることができる。
【0067】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0068】
ところで、以上における説明では位相補償回路を省略したが,発振防止のためには位相補償回路が必要なことは言うまでもない。
【0069】
上述のいくつかの実施例に係る差動増幅器2あるいはそれらの変形例は、演算増幅器、フィルタ、ミキサー、可変利得増幅器などアナログ電子回路に広く用いることができ、その用途は特に限定されず、高線形性、高速化、低消費電力化が求められるさまざまな用途に利用できる。
【0070】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。