(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115999
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】長尺物の内面めっき用の内面電極
(51)【国際特許分類】
C25D 17/12 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
C25D17/12 J
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-124917(P2013-124917)
(22)【出願日】2013年6月13日
(65)【公開番号】特開2015-995(P2015-995A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】松田 一平
【審査官】
祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭49−010827(JP,A)
【文献】
特開2011−236500(JP,A)
【文献】
特開平10−306398(JP,A)
【文献】
特開昭58−058300(JP,A)
【文献】
特開昭55−038970(JP,A)
【文献】
特開昭55−034671(JP,A)
【文献】
特開平11−012791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状物品に電気めっきを行うときに、該管状物品の内面に電気めっきを施すために上記管状物品の内部に挿入されて使用される長尺状の内面電極において、
該内面電極は、導電体で形成される内面電極線と、該内面電極線に取付けられて上記内面電極線とめっき液が接触するとともに、上記管状物品の内面と上記内面電極線が接触することを防止する内面電極絶縁体を有し、
上記内面電極の根元部に電流を給電するとともに、該根元部から離れた上記内面電極線の部分に電流を給電する給電点を有し、上記内面電極線の上記給電点は、上記内面電極線の中間部分の上記内面電極絶縁体のめっき液と接触する隙間に設けられたことを特徴とする長尺状の内面電極。
【請求項2】
上記内面電極線の上記給電点は、上記内面電極線の先端に設けられた請求項1に記載の長尺状の内面電極。
【請求項3】
上記内面電極線の上記給電点は、上記内面電極線の先端と中間部分に設けられた請求項1又は請求項2に記載の長尺状の内面電極。
【請求項4】
上記内面電極線の上記給電点は、上記内面電極線に複数個設けられた請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の長尺状の内面電極。
【請求項5】
上記内面電極は、線状の可撓性を有する導電体で形成された上記内面電極線を有する請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の長尺状の内面電極。
【請求項6】
上記内面電極の上記内面電極線は、金属製のワイヤーを編んで形成された請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の長尺物の内面めっき用の内面電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状物品の内面に電気めっきを施すために使用される内面めっき用の内面電極に関するものである。特に、長尺の管状物、例えば自動車のフィラーパイプ等の内面に電気めっきを施すために管状物品の内部に挿入されて使用される内面めっき用の内面電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の物品に電気めっきを施すには、めっき槽内のめっき液に電極と被めっき物を浸漬して、電極を陽極、被めっき物を陰極にしてその間に通電して、めっき液中のイオン化した金属を被めっき物に析出させめっきを行っていた。
しかしながら、長尺の管状物品の内面側では、電気の流れが悪く、管状物品の内面へのめっき金属の析出状態はよくなかった。
【0003】
そのため、
図6に示すように、フィラーパイプ120の内部に内面電極110を挿入し、内面電極110により、フィラーパイプ120の内面をめっきしている。この内面電極110は、内面電極110の中心の内面電極線を絶縁体のスペーサでカバーして、内面電極110の内面電極線がフィラーパイプ120に接触しないようにするものがある。スペーサは、めっき液が内面電極110の内面電極線とフィラーパイプ120の内面との間で流通し、電流が流れるように形成されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0004】
しかしながら、この場合には、内面電極110に電気を給電するには、内面電極110の根元部に内面電極リード線106を接続して、電源から給電していた。この場合には、フィラーパイプ120のような長尺物の内面をめっきするときに、内面電極110の根元側の方が、電気が流れやすく、先端側の方が電気が流れにくいため、フィラーパイプ120の内面のめっき厚は、根元側で厚く、先端側で薄くなる
【0005】
この場合に、フィラーパイプ120の先端側の防錆性を確保するため、フィラーパイプ120の先端側においてもめっき厚を充分に行う必要があるが、そのためには、長時間のめっきが必要となり、めっき時間が長くなりめっき工程の効率が低下するとともに、コストも増加している。
【0006】
そのため、
図7に示すように、めっき槽201の中に、陽電極203と長尺物220を浸漬して、長尺物220の外面をめっきするとともに、長尺物220の内面をめっきするために2本の内面電極210を長尺物220の両方の端からそれぞれ挿入してめっきするものがある(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
この場合には、内面電極210が2本必要であり、2本の内面電極210を長尺物220の内部に挿入する手間がかかるとともに、内面電極210の先端同士が接触したり絡みあったりする場合があり、面倒であり、屈曲した長尺物に2本の内面電極210を挿入することも困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−236500号公報
【特許文献2】特開平11−12791号公報
【特許文献3】特開2009−24242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのため、本発明は、長尺の管状物品の内面が均一にめっきすることができる長尺物の内面めっき用の内面電極を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、管状物品に電気めっきを行うときに、管状物品の内面に電気めっきを施すために管状物品の内部に挿入されて使用される長尺状の内面電極において、
内面電極は、導電体で形成される内面電極線と、内面電極線に取付けられて内面電極線とめっき液が接触するとともに、管状物品の内面と内面電極線が接触することを防止する内面電極絶縁体を有し、
内面電極の根元部に電流を給電するとともに、根元部から離れた内面電極線の部分に電流を給電する給電点を有
し、内面電極線の給電点は、内面電極線の中間部分の内面電極絶縁体のめっき液と接触する隙間に設けられたことを特徴とする長尺状の内面電極である。
【0011】
請求項1の本発明では、内面電極は、導電体で形成される内面電極線を有する。このため、長尺の管状物品の全長に亘り挿入されて、管状物品の内面に電流を確実に流すことができ、管状物品の内面の全長に亘りめっきを施すことができる。内面電極線は、直線状の剛性を有するものでも、線状の可撓性を有するものでも、いずれでも使用することができる。
【0012】
内面電極は、内面電極線に取付けられて内面電極線とめっき液が接触するとともに、管状物品の内面と内面電極線が接触することを防止する内面電極絶縁体を有する。このため、管状物品の内部に挿入された内面電極線が管状物品の内面と接触せずに、管状物品の内面と内面電極線を、めっき液を介して電流を流すことができ、管状物品の内面にめっきを施すことができる
【0013】
内面電極の根元部に電流を給電するとともに、根元部から離れた内面電極線の部分に電流を給電する給電点を有する。このため、内面電極の全長に亘り電流分布を均一化することができ、管状物品の内面のめっき厚分布を均一化することができる。このため、めっき厚がばらつく場合に比べて、全ての内面が所定のめっき厚を得るためのめっき時間を短縮して、めっきの効率化を図ることができ、めっき電流を少なくすることができるとともに、内面電極線の消耗が減少し、内面電極線の耐久性を増加させることができ、めっき液不純物の増加を減少させることができる。
内面電極線の給電点は、内面電極線の中間部分に設けられたため、内面電極線の根元部と中間部分から電流を流すことができ、管状物品の内面の中間部分の電流分布を均一化することができ、管状物品の内面のめっき厚分布を均一化することができる。内面電極線の中間部分は、内面電極絶縁体と内面電極絶縁体の隙間に設けることができる。
【0014】
請求項2の本発明は、内面電極線の給電点は、内面電極線の先端に設けられた長尺状の内面電極である。
【0015】
請求項2の本発明では、内面電極線の給電点は、内面電極線の先端に設けられたため、内面電極線の根元部と先端部の両側から電流を流すことができ、内面電極線の全長に亘り電流分布を均一化することができ、管状物品の内面のめっき厚分布を均一化することができる。
【0018】
請求項3の本発明は、内面電極線の給電点は、内面電極線の先端と中間部分に設けられた長尺状の内面電極である。
【0019】
請求項3の本発明では、内面電極線の給電点は、内面電極線の先端と中間部分に設けられたため、内面電極の根元部と、中間部分及び先端部から電流を流すことができ、内面電極の全長に亘り電流分布をより均一化することができ、管状物品の内面のめっき厚分布をより均一化することができる。
【0020】
請求項4の本発明は、内面電極線の給電点は、内面電極線に複数個設けられた長尺状の内面電極である。
【0021】
請求項4の本発明では、内面電極線の給電点は、内面電極線に複数個設けられたため、内面電極線の複数部分から電流を流すことができ、内面電極の全長に亘り電流分布をより一層均一化することができ、管状物品の内面のめっき厚分布をより一層均一化することができる。
【0022】
請求項5の本発明は、内面電極は、線状の可撓性を有する導電体で形成された内面電極線を有する長尺状の内面電極である。
【0023】
請求項5の本発明では、内面電極は、線状の可撓性を有する導電体で形成される内面電極線を有する。このため、管状物品が屈曲して形成されていても、内面電極は屈曲に沿って柔軟に変形して、長尺の管状物品の全長に亘り挿入されることができ、管状物品の内面の全長に亘りめっきを施すことができる。
【0024】
請求項6の本発明は、内面電極の内面電極線は、
金属製のワイヤーを編んで形成された長尺物の内面めっき用の内面電極である。
【0025】
請求項6の本発明では、内面電極の内面電極線は、
金属製のワイヤーを編んで形成されたため、可撓性と強度に優れ、管状物品の内部に内面電極を挿入するときに一方の端から挿入して他方の端まで押し込むことが容易である。
【発明の効果】
【0026】
内面電極の根元部に電流を給電するとともに、根元部から離れた内面電極線の部分に電流を給電する給電点を有するため、内面電極の全長に亘り電流分布を均一化することができ、管状物品の内面のめっき厚分布を均一化することができる。従って、めっき時間を短縮して、めっきの効率化を図ることができる。
内面電極線の給電点は、内面電極線の中間部分に設けられたため、内面電極線の根元部と中間部分から電流を流すことができ、管状物品の内面の中間部分の電流分布を均一化することができ、管状物品の内面のめっき厚分布を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態で使用するめっき装置の概念図である。
【
図2】本発明の実施の形態で使用する内面電極を管状物品に挿入した状態の断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態で使用するめっきハンガーの側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態である内面電極をフィラーパイプの内部に使用した状態の断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態である内面電極線の表面に内面電極絶縁体を取付けた状態の一部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について、管状物品である自動車用のフィラーパイプ20の内面に亜鉛めっきをする場合を例に取り、そのめっきに使用する内面電極10について、
図1〜
図5に基づき説明する。
なお、本発明の内面電極10は、フィラーパイプ20以外にも、管状物品の内面にめっきをする場合に広く使用することができる。また、亜鉛めっき以外の他のめっきにも使用することができる。
【0029】
フィラーパイプ20等の管状物品のめっきは、
図1に示すように行われる。
めっき槽1内にめっき液2が入れられて、めっき液2内には水酸化ナトリウム及びシアン化ナトリウムと亜鉛イオンが含まれている。さらに、めっき槽1内には亜鉛板で形成される陽電極3、4が挿入され、被めっき物であるフィラーパイプ20の内部には内面電極10が挿入されている。内面電極10については後述する。
なお、フィラーパイプ20は、めっき工程の前に、脱脂工程、洗浄工程により表面を清浄にされる。
【0030】
陽電極3、4には、陽極リード線5が取り付けられ、内面電極10には内面電極リード線6が取り付けられている。フィラーパイプ20には陰極リード線7が取り付けられている。陽極リード線5と内面電極リード線6はめっき電流の供給装置である外面用電源からの陽極に、陰極リード線7は外面用電源の陰極に接続されて、外面用電源から電流が供給されてめっきが行われる。
【0031】
このとき、フィラーパイプ20はめっき槽1内に並んで多数浸漬されて、めっきが行われるが、めっき槽1内のフィラーパイプ20の保持は
図3に示すようにめっきハンガー30により行われる。
フィラーパイプ20は、めっきハンガー30に取り付けられてめっき槽1内に浸漬される。めっきハンガー30は、フィラーパイプ20に電流を供給する陰極板31と、内面電極10に電流を供給する陽極板35から構成され、陰極板31と陽極板35は中央付近で相互に絶縁されて接合されている。
【0032】
陰極板31の上方の先端は、断面略U字形に曲げられて陰極板係合部32を形成している。陰極板係合部32は、めっき槽1に設けられた陰極バー8に係合され、めっきハンガー30とフィラーパイプ20は、めっき槽1内に保持される。陰極バー8には外面用電源から陰極電流が供給され、めっきハンガー30の陰極板31と電気的に接続される。
【0033】
陰極板31の下方の先端には陰極板保持部33が形成され、管状物品であるフィラーパイプ20が保持される。陰極板保持部33は、フィラーパイプ20を保持するとともに、フィラーパイプ20に陰極電流を供給し、フィラーパイプ20の外周面部と内面(フィラーパイプ内面21)を電気めっきすることができる。
フィラーパイプ20の保持は、開口部を有するリング状に形成された陰極板保持部33に嵌め込んで保持したり、フィラーパイプ20の外面に形成されたブリーザーパイプ等に引っ掛けたりしてもよい。
【0034】
陽極板35の上方の先端は、陽極板接続部36を形成し、陽極板接続部36を介して内面用電源から陽極電流が供給される。陽極板35の下方の先端は、陽極板端部37が形成され、陽極板端部37には、後述する内面電極10の根元に形成される内面電極根元部17が内面電極止め具17aに取りつけられる。これにより、陽極板35から陽極電流が内面電極10に供給される。
【0035】
このとき、
図3に示すように、内面電極補助リード線9の根元側が陽極板端部37に取付けられている。内面電極補助リード線9の取付けは、内面電極根元部17の取付けと同様に、内面電極止め具17aで取付けられることができる。内面電極補助リード線9は、陽極板35から陽極電流が供給される。内面電極補助リード線9の先端側は、内面電極先端部18に取付けられており、取付けられた内面電極10の内面電極線11の部分が内面電極先端給電点15となる。後述するように、内面電極補助リード線9は、内面電極10に複数本取付けることができる。
【0036】
内面電極先端給電点15は、内面電極線11の先端に設けられたため、内面電極10は、内面電極根元部17と内面電極先端部18の両側から電流を流すことができ、内面電極10の全長に亘り電流分布を均一化することができ、フィラーパイプ20の内面のめっき厚分布を均一化することができる。
【0037】
このため、めっき厚がばらついていたときには、防錆性を確保するために、最もめっき厚が薄い部分が所定のめっき厚を有するまでめっきをする必要があり、全体としてはめっき時間が長くかかることとなっていたが、めっき厚分布を均一化したことにより、めっき時間を短縮して、めっきの効率化を図ることができる。そして、めっき電流を少なくすることができるとともに、内面電極10の消耗が減少し、内面電極10の耐久性を増加させることができ、めっき液2の不純物の増加を減少させることができる。
【0038】
また、
図2に示すように、内面電極10の給電点は、内面電極10の中間部分に設けることができる。この場合には、内面電極補助リード線9は、全体が絶縁性の物質、例えば、耐めっき液性の合成樹脂で被覆され、内面電極10に沿わせて取付けられて、内面電極補助リード線9の先端側は、絶縁性の物質が取り除かれて、内面電極10と接続する場所で内面電極10の内面電極線11に接続されている。内面電極線11への接続は、内面電極線11に取付けられた複数の内面電極絶縁体である内面電極スペーサ12と内面電極スペーサ12の間のめっき液と接触する隙間に接続されている。内面電極スペーサ12については、後述する。
【0039】
内面電極補助リード線9の先端側は、内面電極10の内面電極線11の中間部分にも取付けられており、取付けられた内面電極線11の部分が内面電極中間給電点16となる。
図2の実施の形態では、内面電極補助リード線9が2本取付けられて、内面電極中間給電点16は、フィラーパイプ20の屈曲部23の2箇所に設けられているが、1個所でも、3箇所以上でもいずれでもよい。内面電極中間給電点16が設けられたため、内面電極根元部17と中間部分から電流を流すことができ、フィラーパイプ20の内面の内面電極10の電流分布を均一化することができ、フィラーパイプ20の内面のめっき厚分布を均一化することができる。
【0040】
内面電極中間給電点16に接続される内面電極補助リード線9の根元側は、内面電極先端給電点15に接続される内面電極補助リード線9と同様に、陽極板端部37に、内面電極止め具17aで取付けられることができる。そして、内面電極補助リード線9は、先端側が内面電極10に取付けられて、内面電極10と一緒に、フィラーパイプ20の内部に挿入される。
【0041】
次に、内面電極10をフィラーパイプ20に挿入する場合には、
図4に示すように、フィラーパイプ20は、フィラーパイプ内面21の上部に燃料を注入する注入部22が設けられ、下方には自動車の車体の形状に沿って、屈曲部23が2箇所形成されている。屈曲部23の数は、自動車の車体に形状に応じて変化する。注入部22は燃料注入ガン(図示せず)を保持するために内部に張出した注入張出部24が形成され、注入張出部24の中央には注入口25が形成されている。
【0042】
内面電極10は、
図5に示すように、線状の導電体で形成される内面電極線11と、内面電極線11に巻き付けられる内面電極スペーサ12から構成される。
内面電極線11は、直線状の剛性を有する導電体で形成されるか、あるいは、線状の可撓性を有する導電体で形成されている。めっきされる管状物が直線状の場合には、直線状の剛性を有する内面電極線11を使用することができ、管状物が上記フィラーパイプ20のように屈曲部23を有する場合には、線状の可撓性を有する導電体で形成される内面電極線11を使用する。
線状の可撓性を有する導電体の内面電極線11の場合には、ステンレススチール等の金属製の多数のワイヤーを編んで形成される。このため、可撓性と強度に優れ、管状物品であるフィラーパイプ20の内部に内面電極10を挿入するときに注入部22から挿入して、屈曲部23が複数個存在しても、フィラーパイプ20の形状に応じて、フィラーパイプ内面21に沿って、他方の出口端まで押し込むことが容易である。また、めっき液2のアルカリ性にも耐久性を有することができる。
【0043】
線状の可撓性を有する導電体の内面電極線11の場合には、金属製の多数のワイヤー以外でも、可撓性と導電性を有するものであれば使用することができる。
なお、
図2に示すように、内面電極線11の上側の先端には、上述したように内面電極根元部17が形成され、内面電極根元部17には、貫通孔が形成され、この貫通孔に内面陽極根元部止め具17aが挿入され、内面電極補助リード線19とともに、陽極板端部37の孔にネジ、クリップ等で取り付けられる。
【0044】
内面電極スペーサ12は、内面電極線11が剛性を有する直線状の場合には、1本の円筒に多数の孔をあけて、電流が管状物品の内面に流れるようにするものを使用できる。
内面電極線11が可撓性を有する場合には、内面電極スペーサ12は、非導電性で球状、楕円体状、円柱状又は多角柱状のスペーサ突起部13と複数のスペーサ突起部13を、間隔を置いて長手方向に連続して紐状に連結する可撓性のスペーサ連結部14から長尺状に形成される
このため、スペーサ突起部13が可撓性を有しなくても、内面電極スペーサ12全体を可撓性にすることができ、内面電極線11の外周に長尺状の内面電極スペーサ12を巻きつけることができる。そして、内面電極スペーサ12は、内面電極線11がフィラーパイプ20の内面に接触することを防止して、フィラーパイプ20の内面に確実にめっきを施すことができる。
【0045】
内面電極スペーサ12のスペーサ突起部13は、非導電性で球状、楕円体状、円柱状又は多角柱状等の形状を有する。
スペーサ突起部13は、内面電極10がフィラーパイプ20の内部に挿入されたときに、屈曲部があっても非導電性で球状のスペーサ突起部13がフィラーパイプ内面21に当接して、内面電極線11がフィラーパイプ内面21に接触することを防止することができる。このため、内面電極10により確実にフィラーパイプ内面21の電気めっきをすることができる。スペーサ突起部13とスペーサ突起部13の間には隙間があり、その隙間を通して、内面電極補助リード線9の先端を内面電極線11に接続することができる。これにより、内面電極中間給電点16を形成することができる。
【0046】
スペーサ突起部13は、非導電性の合成樹脂又はセラミックで形成されることが好ましい。例えば、合成樹脂では、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン等を使用することができる。合成樹脂又はセラミックを使用することができるためフィラーパイプ内面21に接触しても摩擦が少なく挿入性に優れるとともに、めっき液2に浸漬しても腐食することが少なく、耐久性に優れている。
【0047】
内面電極スペーサ12のスペーサ突起部13は、スペーサ突起部13の中心にスペーサ突起部孔(図示せず)が形成される。スペーサ突起部孔に紐状のスペーサ連結部14を挿入し、スペーサ突起部13を、それぞれ間隔を置いて長手方向に連続してスペーサ連結部14により紐状に連結する。
【0048】
このため、スペーサ突起部13が可撓性を有しなくても、内面電極スペーサ12全体を可撓性にして、内面電極線11の外周に長尺状の内面電極スペーサ12を巻きつけることができ、スペーサ突起部13を内面電極線11の所定の位置に保持することができる。また、後述するように、スペーサ突起部13が所定の範囲内でスペーサ連結部14に沿ってずれることができる。また、内面電極補助リード線9を取付ける内面電極中間給電点16を形成することができる。
【0049】
スペーサ連結部14は、非導電性の合成繊維又は合成樹脂で形成されている。例えば、合成繊維ではポリエステル等を使用することができ、合成樹脂ではポリエチレン、ポリプロピレン等を使用することができる。このため、可撓性に優れ、内面電極スペーサ12を内面電極線11に容易に巻き付けることができ、引張強度が強く、めっき液に浸漬しても強度が低下することが少なく、耐久性に優れている。
【0050】
上記のように、スペーサ突起部13とスペーサ連結部14を異なる材質のもので製造することができるため、スペーサ突起部13は硬度が大きく、フィラーパイプ内面21をスムースに摺動する材料を、スペーサ連結部14は可撓性に優れた材料を、それぞれに選択することができる。そのため、摺動性と可撓性に優れた内面電極10を得ることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 めっき槽
2 めっき液
10 内面電極
11 内面電極線
12 内面電極スペーサ
15 内面電極先端給電点
16 内面電極中間給電点
20 フィラーパイプ(管状物品)
21 フィラーパイプ内面