【実施例】
【0033】
以下、本発明にかかわるDC−DC電源回路の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。
図3は本発明の実施例におけるDC−DC電源回路の構成を示す回路図である。
図3において、T1は直流電源の入力端子、T2は出力端子、1は制御回路(コントロールIC)、2は出力電圧検出回路、3は過電流検出回路、4は昇圧チョッパ、5は入力電圧判定回路、6は電圧シフト回路、Q1は発振用のスイッチング素子(NPN型トランジスタ)、Q2はシフト補正用のスイッチング素子(PNP型トランジスタ)、Q3,Q4はスイッチング素子(NPN型トランジスタ)、L1はチョークコイル、D1は整流ダイオード、C1,C2は平滑コンデンサ、C3はタイミング用コンデンサ、R1〜R12は抵抗素子、ZD1はツェナーダイオード(定電圧ダイオード)である。
【0034】
入力電圧判定回路5は、その構成要素として、ツェナーダイオードZD1、NPN型トランジスタで構成されたスイッチング素子Q3,Q4、抵抗素子R8,R9,R10を備えている。ツェナーダイオードZD1は入力電圧判定回路5における規定電圧Vthを定める要素である。入力端子T1にツェナーダイオードZD1のカソードが接続され、ツェナーダイオードZD1のアノードとグランド(GND)との間に抵抗素子R8,R9の直列回路が接続されている。直列接続の抵抗素子R8,R9の接続点にスイッチング素子Q3のベース端子が接続され、そのコレクタ端子が抵抗素子R10を介して入力端子T1(ツェナーダイオードZD1のカソード)に接続されている。スイッチング素子Q3のエミッタ端子はグランド(GND)に接続されている。スイッチング素子Q3のコレクタ端子にスイッチング素子Q4のベース端子が接続され、そのエミッタ端子はグランド(GND)に接続されている。
【0035】
電圧シフト回路6を構成するPNP型トランジスタで構成されたシフト補正用のスイッチング素子Q2では、そのエミッタ端子‐ベース端子間に抵抗素子R11が接続され、そのベース端子が抵抗素子R12を介して入力電圧判定回路5のスイッチング素子Q4のコレクタ端子に接続されている。
【0036】
その他の構成については、
図1に示した実施形態の場合と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0037】
次に、上記のように構成された本実施例のDC−DC電源回路の動作を説明する。
【0038】
入力端子T1に印加される入力電圧Vinが規定電圧Vthより低いとき(Vin<Vth)、ツェナーダイオードZD1は非導通状態となっている。また、ベース端子が抵抗素子R9を介してグランド(GND)に引かれているスイッチング素子Q3も非導通状態となっている。結果として、スイッチング素子Q4が導通状態にあり、電圧シフト回路6のPNP型トランジスタで構成されたシフト補正用のスイッチング素子Q2のベース端子が抵抗素子R12と導通状態のスイッチング素子Q4を介してグランド(GND)に引かれるため、シフト補正用のスイッチング素子Q2は導通状態となっている。したがって、電圧シフト回路6における補正用抵抗素子R7が出力電圧検出回路2のハイサイドの抵抗素子R5に対して並列に接続されることになる。
図1、
図2で説明したのと同様に、電圧シフト回路6による検出電圧Vd ′の強制上昇シフトが起こり、制御回路1は非活性化状態に保持される。すなわち、発振用のスイッチング素子Q1に対するサイクリックなオン/オフ切替制御の動作を停止する
ことで発振用のスイッチング素子Q1をオフ状態にする。したがって、従来例のように発振用のスイッチング素子Q1の導通電圧が持ち上がったままとなるような異常事態は発生せず、熱破損などの暴走現象は抑制される。
【0039】
時間経過に伴って入力電圧Vinが次第に上昇し、規定電圧Vth以上となってツェナーダイオードZD1が降伏し導通すると、スイッチング素子Q3のベース電圧が上昇してスイッチング素子Q3が反転し導通する。スイッチング素子Q3が導通してグランド(GND)に接続されると、スイッチング素子Q4のベース電圧が降下し、スイッチング素子Q4が反転し非導通となる。結果、シフト補正用のスイッチング素子Q2のベース電圧が上昇し、シフト補正用のスイッチング素子Q2が反転し非導通となる。したがって、直前まで出力電圧検出回路2のハイサイドの抵抗素子R5に対して並列に接続されていた電圧シフト回路6における補正用抵抗素子R7が抵抗素子R5から切り離されることになる。
図1、
図2で説明したのと同様に、制御回路1は活性状態に切り替えられる。制御回路1は出力電圧検出回路2における出力電圧検出ポイントP1での検出電圧Vd が規定電圧(非活性化閾値レベルVs )に安定化することとなるデューティサイクルにおいて、発振用のスイッチング素子Q1をオン/オフ切替制御する。
【0040】
ここで、数値的な具体例を挙げて説明する。
【0041】
制御回路1すなわちスイッチング電源用のコントロールICは、一般的にその発振開始起動電源電圧がIC内部で規定されていて、1〜3ボルトと極端に低く設定されているか、逆に10ボルト以上と高く設定されていて、その中間の電圧レベルに設定されている製品は少ない。いま例えば入力の直流電源として12ボルトのバッテリを使用し、入力電圧範囲の仕様につきDC9〜16ボルト、出力電圧をDC18ボルト、2.2Aとする。また、入力電圧範囲がDC9〜16ボルトであることに対応させて、制御回路1(コントロールIC)としてNJM2374A(新日本無線株式会社製)を取り上げる。この制御回路1は発振開始起動電源電圧が約2ボルトに設定されている。
【0042】
この実施例の場合の動作波形図を
図4、
図5に示す。また、比較のために入力電圧判定回路5と電圧シフト回路6を有しない
図9の従来例相当の場合の動作波形図を
図10に示す。
【0043】
まず、入力電圧判定回路5と電圧シフト回路6を有しない従来例相当の場合の動作について説明する。入力端子T1に印加する入力電圧VinとしてDC5.0ボルトを投入した起動初期の動作波形が
図10に示されている。
図10において、Vceは発振用のスイッチング素子Q1のコレクタ‐エミッタ間電圧、Vb はベース電圧、ic はコレクタ電流である。入力電圧Vinが5.0ボルトと低いものとなっていることから、発振用のスイッチング素子Q1のベース電圧Vb が“H”レベルになって、コレクタ電流ic が流れる発振用のスイッチング素子Q1の導通期間において、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceが持ち上がってしまい(ハッチング参照)、コレクタ電流ic が流れたままになる。その結果、発振用のスイッチング素子Q1の所定のデューティサイクルでのオン/オフ切替制御によって行われる出力電圧Vout の昇圧が所期通りには行われず、発振用のスイッチング素子Q1での損失が増大し、熱破壊を起こすおそれがある。
【0044】
これに対して、本発明実施例の場合には、次のような動作となる。
【0045】
(1)入力電圧Vinが規定電圧Vth以上のとき…
図4参照
入力端子T1に印加する入力電圧Vinとして規定電圧Vth以上であるDC8.5ボルトを投入した起動初期の動作波形が
図4に示されている。入力電圧Vinが8.5ボルトと規定電圧Vth以上であることから、入力電圧判定回路5が電圧シフト回路6を駆動することがなく、制御回路1は直ちに活性状態となって発振用のスイッチング素子Q1のオン/オフ切替制御を開始する。すなわち、所定のデューティサイクルで発振用のスイッチング素子Q1のオン/オフ切替制御(発振動作)が開始される。発振用のスイッチング素子Q1のベース電圧Vb が“L”レベルから“H”レベルに立ち上がると、コレクタ電流ic が流れ出すとともに、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceはそれまでの“H”レベルから“L”レベルへと立ち下がる。また、発振用のスイッチング素子Q1のベース電圧Vb が“H”レベルから“L”レベルに立ち下がると、コレクタ電流ic が止まるとともに、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceは“L”レベルから“H”レベルへと立ち上がる。コレクタ電流ic が流れる発振用のスイッチング素子Q1の導通期間において、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceは“L”レベルを維持して持ち上がることはない。つまり、導通期間において発振用のスイッチング素子Q1は完全な導通状態となる。発振用のスイッチング素子Q1の所定のデューティサイクルでのオン/オフ切替制御によって行われる出力電圧Vout の昇圧が所期通りに行われる。結果として、発振用のスイッチング素子Q1での損失増大や熱破壊は回避されることになる。
【0046】
(2)入力電圧Vinが規定電圧Vthより低いとき…
図5および
図4参照
入力端子T1に印加する入力電圧VinとしてDC5.0ボルトを投入した起動初期の動作波形が
図5に示されている。入力電圧Vinが5.0ボルトと低いものとなっていることから、入力電圧判定回路5と電圧シフト回路6とが上記のように動作して、制御回路1が非活性状態にあって発振用のスイッチング素子Q1のオン/オフ切替制御が停止状態に維持される。すなわち、発振用のスイッチング素子Q1のベース電圧Vb は"L"レベルに維持され、
発振用のスイッチング素子Q1がオフ状態となってコレクタ電流ic は流れず、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceは"H"レベルに維持される。
【0047】
時間経過に伴って入力電圧Vinが上昇し規定電圧VthのDC8.5ボルト以上となったときの動作波形は
図4と同様になる。このとき、入力電圧判定回路5と電圧シフト回路6とが上記のように動作して、それまで非活性状態にあった制御回路1が活性状態に切り替わり、発振用のスイッチング素子Q1が所定のデューティサイクルでオン/オフ切替制御(発振動作)が開始される。すなわち、発振用のスイッチング素子Q1のベース電圧Vb が“L”レベルから“H”レベルに立ち上がると、コレクタ電流ic が流れ出すとともに、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceはそれまでの“H”レベルから“L”レベルへと立ち下がる。また、発振用のスイッチング素子Q1のベース電圧Vb が“H”レベルから“L”レベルに立ち下がると、コレクタ電流ic が止まるとともに、コレクタ‐エミッタ間電圧Vceは“L”レベルから“H”レベルへと立ち上がる。
【0048】
以上のようにして、本実施例においても、入力電圧Vinが起動時に低すぎて規定電圧Vthを下回るような場合であっても、その入力電圧Vinの時間経過に伴う上昇で、出力電圧検出回路2における出力電圧検出ポイントP1での検出電圧Vd ′が非活性化閾値レベルVs 以上となるまでは制御回路1による発振用のスイッチング素子Q1のオン/オフ切替制御を停止させるので、従来例のような駆動力が不足する状態のままでの発振用のスイッチング素子Q1に対するオン/オフ切替制御は規制され
、発振用のスイッチング素子Q1がオフ状態とされる。その結果として、発振用のスイッチング素子Q1の熱破損などの暴走現象も抑制される。
【0049】
電圧シフト回路6は1つのシフト補正用のスイッチング素子Q2と1つの補正用抵抗素子R7と2つの抵抗素子R11,R12の比較的簡単で部品点数の少ない回路構成のもとに実現化され、入力電圧判定回路5は1つのツェナーダイオードZD1と2つのスイッチング素子Q3,Q4と3つの抵抗素子R8,R9,R10の比較的簡単で部品点数の少ない回路構成のもとに実現化されている。
【0050】
電圧シフト回路6については、
図1に示す構成に代えて
図6、
図7、
図8のように構成してもよい。
【0051】
図6に示す電圧シフト回路6は、NPN型トランジスタで構成されたスイッチング素子Q2′と補正用抵抗素子R7′とで構成したものである。スイッチング素子Q2′と補正用抵抗素子R7′との直列回路を出力電圧検出回路2におけるローサイドの抵抗素子R6に並列接続している。スイッチング素子Q2′として
図1のPNP型トランジスタからなるスイッチング素子Q2とは逆極性のNPN型トランジスタを用いた点が異なっている。
【0052】
DC−DC電源回路の発振開始起動時において、入力電圧Vinが規定電圧Vthより低くなっていて、入力電圧判定回路5が"L"レベル信号を出力する場合に、スイッチング素子Q2′は非導通状態となって、補正用抵抗素子R7′は抵抗素子R6から切り離される。結果、出力電圧検出回路2における出力電圧検出ポイントP1での検出電圧Vd ′は非活性化閾値レベルVs 以上のレベルとなり、制御回路1による発振用のスイッチング素子Q1に対するオン/オフ切替制御は停止され
、発振用のスイッチング素子Q1をオフ状態にする。入力電圧Vinが規定電圧Vth以上に上昇すると、入力電圧判定回路5は“H”レベル信号を出力し、スイッチング素子Q2′は反転して導通し、補正用抵抗素子R7′が抵抗素子R6に並列接続される。結果、検出電圧Vd は非活性化閾値レベルVs より低くなり、制御回路1による発振用のスイッチング素子Q1に対するオン/オフ切替制御が開始される。
【0053】
図7に示すものでは、出力電圧検出回路2におけるハイサイドの抵抗素子R5とローサイドの抵抗素子R6との間にスイッチング素子Q2bを挿入し、抵抗素子R5とスイッチング素子Q2bとの直列回路に、補正用抵抗素子R7′とシフト補正用のスイッチング素子Q2aとの直列回路を並列接続して電圧シフト回路6を構成したものである。シフト補正用のスイッチング素子Q2aは
図1の場合と同様にPNP型トランジスタで構成され、スイッチング素子Q2bは逆極性のNPN型トランジスタで構成されている。補正用抵抗素子R7′の抵抗値は抵抗素子R5の抵抗値よりも小さく設定されている。
【0054】
DC−DC電源回路の発振開始起動時において、入力電圧Vinが規定電圧Vthより低くなっていて、入力電圧判定回路5が"L"レベル信号を出力する場合に、シフト補正用のスイッチング素子Q2aは導通状態となり、スイッチング素子Q2bは非導通状態となる。つまり、ハイサイドの抵抗素子R5は切り離され、ローサイドの抵抗素子R6に対してはシフト補正用のスイッチング素子Q2aを介して補正用抵抗素子R7′が直列に接続された状態となる。結果、出力電圧検出回路2における出力電圧検出ポイントP1での検出電圧Vd ′は非活性化閾値レベルVs 以上のレベルとなり、制御回路1による発振用のスイッチング素子Q1に対するオン/オフ切替制御は停止され
、発振用のスイッチング素子Q1をオフ状態にする。入力電圧Vinが規定電圧Vth以上に上昇すると、入力電圧判定回路5は"H"レベル信号を出力し、シフト補正用のスイッチング素子Q2aは反転して非導通となり、スイッチング素子Q2bは反転して導通する。つまり、補正用抵抗素子R7′は切り離され、ローサイドの抵抗素子R6に対してはハイサイドの抵抗素子R5がスイッチング素子Q2bを介して直列に接続された状態となる。結果、検出電圧Vd は非活性化閾値レベルVs より低くなり、制御回路1による発振用のスイッチング素子Q1に対するオン/オフ切替制御が開始される。
【0055】
図8に示すものでは、出力電圧検出回路2におけるローサイドの抵抗素子R6とグランド(GND)との間にスイッチング素子Q2bを挿入し、抵抗素子R6とスイッチング素子Q2bとの直列回路に、補正用抵抗素子R7′とシフト補正用のスイッチング素子Q2aとの直列回路を並列接続して電圧シフト回路6を構成したものである。シフト補正用のスイッチング素子Q2aは
図1の場合と同様にPNP型トランジスタで構成され、スイッチング素子Q2bは逆極性のNPN型トランジスタで構成されている。補正用抵抗素子R7′の抵抗値は
図7とは逆で抵抗素子R5の抵抗値よりも大きく設定されている。
【0056】
DC−DC電源回路の発振開始起動時において、入力電圧Vinが規定電圧Vthより低くなっていて、入力電圧判定回路5が"L"レベル信号を出力する場合に、シフト補正用のスイッチング素子Q2aは導通状態となり、スイッチング素子Q2bは非導通状態となる。つまり、ローサイドの抵抗素子R6は切り離され、ハイサイドの抵抗素子R5に対しては補正用抵抗素子R7′が直列に接続された状態となる。結果、出力電圧検出回路2における出力電圧検出ポイントP1での検出電圧Vd ′は非活性化閾値レベルVs 以上のレベルとなり、制御回路1による発振用のスイッチング素子Q1に対するオン/オフ切替制御は停止され
、発振用のスイッチング素子Q1をオフ状態にする。入力電圧Vinが規定電圧Vth以上に上昇すると、入力電圧判定回路5は"H"レベル信号を出力し、シフト補正用のスイッチング素子Q2aは反転して非導通となり、スイッチング素子Q2bは反転して導通する。つまり、補正用抵抗素子R7′は切り離され、ハイサイドの抵抗素子R5に対してはローサイドの抵抗素子R6が直列に接続された状態となる。結果、検出電圧Vd は非活性化閾値レベルVs より低くなり、制御回路1による発振用のスイッチング素子Q1に対するオン/オフ切替制御が開始される。
【0057】
なお、発振用のスイッチング素子Q1をFET(電界効果トランジスタ)やMOSFET(金属酸化物半導体による電界効果トランジスタ)で構成する場合には、スイッチング素子Q1の駆動端子はゲート端子となる。