特許第6116036号(P6116036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116036
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】給排水ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/20 20060101AFI20170410BHJP
   F01N 1/00 20060101ALI20170410BHJP
   F02B 63/06 20060101ALI20170410BHJP
   F02B 67/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   F01P3/20 T
   F01N1/00 F
   F02B63/06 B
   F02B67/00 F
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-161179(P2016-161179)
(22)【出願日】2016年8月19日
(65)【公開番号】特開2017-67066(P2017-67066A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2016年8月30日
(31)【優先権主張番号】特願2015-196013(P2015-196013)
(32)【優先日】2015年10月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592048545
【氏名又は名称】株式会社マツサカエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】和田 保樹
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−158118(JP,U)
【文献】 実開昭54−046921(JP,U)
【文献】 特開昭54−153306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 3/20
F01N 1/00
F02B 63/06
F02B 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン部と、
前記エンジン部の駆動により水を給排水するポンプ部と、
前記エンジン部と前記ポンプ部の間で前記ポンプ部の本体に取り付けられた熱交換用ブロックとを有し、
前記熱交換用ブロック内に前記エンジン部の排気口と接続される排気用通路が形成されるとともに前記ポンプ部の本体に形成された給排水用通路と繋がる冷却用通路が前記排気用通路に沿って形成され
前記ポンプ部の本体と前記熱交換用ブロック間にはボリュート室が形成されるとともに、前記熱交換用ブロックには前記給排水通路内の水が前記ボリュート室を介して前記冷却用通路へ送り込まれる取水口と前記冷却用通路内の水を前記給排水通路に送り出す排出口が形成されていることを特徴とする給排水ポンプ。
【請求項2】
前記熱交換用ブロック内には前記排気用通路と繋がるマフラー用通路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の給排水ポンプ。
【請求項3】
前記エンジン部のポンプ駆動軸の先端は前記熱交換用ブロックを介して前記ボリュート室内に挿入され、前記ポンプ駆動軸の先端には給排水用のインペラが取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の給排水ポンプ。
【請求項4】
前記排気用通路内には放熱用フィンが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の給排水ポンプ。
【請求項5】
前記ポンプ部の前部には内部と連通する開口部が形成され、前記開口部には蓋体が開閉自在に取付けられている請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の給排水ポンプ。
【請求項6】
エンジン部と、
前記エンジン部の駆動により水を給排水するポンプ部と、
前記エンジン部と前記ポンプ部の間で前記ポンプ部の本体に取り付けられた熱交換用ブロックとを有し、
前記熱交換用ブロック内に前記エンジン部の排気口と接続される排気用通路が形成されるとともに前記ポンプ部の本体に形成された給排水用通路と繋がる冷却用通路が前記排気用通路に沿って形成され
前記エンジン部及び前記熱交換用ブロックは筐体を構成する仕切り板を境にして前記筐体の内部に位置するとともに、前記ポンプ部は前記仕切り板を境にして前記筐体の外部に位置することを特徴とする給排水ポンプ。
【請求項7】
前記熱交換用ブロック内には前記排気用通路と繋がるマフラー用通路が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の給排水ポンプ。
【請求項8】
前記ポンプ部の本体と前記熱交換用ブロック間にはボリュート室が形成されるとともに、前記熱交換用ブロックには前記給排水通路内の水が前記ボリュート室を介して前記冷却用通路へ送り込まれる取水口と前記冷却用通路内の水を前記給排水通路に送り出す排出口が形成されていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の給排水ポンプ。
【請求項9】
前記エンジン部のポンプ駆動軸の先端は前記熱交換用ブロックを介して前記ボリュート室内に挿入され、前記ポンプ駆動軸の先端には給排水用のインペラが取り付けられていることを特徴とする請求項8に記載の給排水ポンプ。
【請求項10】
前記排気用通路内には放熱用フィンが設けられていることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の給排水ポンプ。
【請求項11】
前記仕切り板と前記熱交換用ブロックの接合部分には防振機能及び防音機能を備えたシール部材が取付けられている請求項6乃至請求項10のいずれかに記載の給排水ポンプ。
【請求項12】
前記筐体には前記筐体内の空気を外部に排出する排気口が形成されている請求項6乃至請求項11のいずれかに記載の給排水ポンプ。
【請求項13】
前記ポンプ部の前部には内部と連通する開口部が形成され、前記開口部には蓋体が開閉自在に取付けられている請求項6乃至請求項12のいずれかに記載の給排水ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン駆動により水を給排水する給排水ポンプに関し、特にエンジンの防音機能を備えた給排水ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関からなるエンジンによって駆動される給排水ポンプが知られている。給排水ポンプは農業や土木等における灌漑や排水、揚水などに用いられ、その用途範囲は広い。
【0003】
近年では、エンジンの騒音による周囲の環境への影響を考慮して、エンジンとポンプを防音カバーで覆い、エンジンの騒音が外部へなるべく漏れないようにした防音型の給排水ポンプが検討されている。
ところが、このようにエンジンとポンプを防音カバーで覆うと、十分な換気を行い難いためにエンジンの冷却を十分に行えない。反対に、十分な冷却性能を得ようとすると、防音カバーに大きな換気口を設けることが必要となり、防音性が低下してしまうことが課題となっていた。
【0004】
そのために、エンジン駆動の給排水ポンプにおいて、冷却性と防音性の両方を兼ね備えた給排水ポンプの実現が望まれたていた。
【0005】
そこで、本発明者等は冷却性と防音性の両方を兼ね備えた給排水ポンプとして、特許文献1に開示されている防音型エンジンポンプを提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−152847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の防音型エンジンポンプでは、ケース内にエンジン部とポンプ部が収納されている。エンジン部とポンプ部は一体に取り付けられており、排気管と消音器はケース内で接続されるとともに、排気ガスは排気管を介してケース外に排出される構造となっている。また、排気管と消音器はケース内に組み込まれた冷却ジャケットで覆われている。
そして、冷却ジャケットを構成する冷却用管路が排気管及び消音器の周りに組み付けられるとともに、冷却用管路はポンプの排出管路に接続された構造となっている。
【0008】
このような構成の防音型エンジンポンプによれば、ポンプ全体の配管構造が複雑となり、ポンプ全体の組立が煩雑となる。
また、ポンプの使用時に、排気管、消音器及び冷却ジャケット等を保護するために、ポンプは全体がケースで覆われる構造となっており、ポンプの大型化が避けられないことが課題となっていた。
【0009】
本発明は上述した従来の課題に鑑みてなされたものであり、排気管等の配管構造が簡単であり、組立の作業を簡単に行え、冷却性と防音性の両方を兼ね備えた給排水ポンプを提供することを目的とする。
また、本発明はポンプの小型化に寄与する給排水ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した従来の課題を解決し、上述した目的を達成するため、本発明の給排水ポンプは、エンジン部と、前記エンジン部の駆動により水を給排水するポンプ部と、前記エンジン部と前記ポンプ部の間で前記ポンプ部の本体に取り付けられた熱交換用ブロックとを有し、前記熱交換用ブロック内に前記エンジン部の排気口と接続される排気用通路が形成されるとともに前記ポンプ部の本体に形成された給排水用通路と繋がる冷却用通路が前記排気用通路に沿って形成されてなることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、給排水ポンプ全体の配管構造が簡単になり、給排水ポンプの組立を簡単に行うことができる。
【0012】
好適には、本発明は、前記給排水ポンプにおいて、前記熱交換用ブロック内には前記排気用通路と繋がるマフラー用通路が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、排気ガスの防音効果を高めることができる。
【0013】
好適には、本発明は、前記給排水ポンプにおいて、前記ポンプ部の本体と前記熱交換用ブロック間にはボリュート室が形成されるとともに、前記熱交換用ブロックには前記給排水通路内の水が前記ボリュート室を介して前記冷却用通路へ送り込まれる取水口と前記冷却用通路内の水を前記給排水通路に送り出す排出口が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、前記冷却用通路の配管を簡単に行うことができる。
【0014】
好適には、本発明は、前記給排水ポンプにおいて、前記エンジン部のポンプ駆動軸の先端は前記熱交換用ブロックを介して前記ボリュート室内に挿入され、前記ポンプ駆動軸の先端には給排水用のインペラが取り付けられていることを特徴とする。
この構成によれば、前記冷却用通路の配管を簡単に行うことができる。
【0015】
好適には、本発明は、前記給排水ポンプにおいて、前記排気用通路内には放熱用フィンが設けられていることを特徴とする
この構成によれば、排気ガスの放熱効果を高めることができる。
【0016】
好適には、本発明は、前記給排水ポンプにおいて、前記熱交換用ブロックはアルミダイキャストにより成形されていることを特徴とする。
この構成によれば、排気ガスの放熱効果を高めることができる。
【0017】
好適には、本発明は、前記給排水ポンプにおいて、前記エンジン部及び前記熱交換用ブロックは筐体を構成する仕切り板を境にして前記筐体の内部に位置するとともに、前記ポンプ部は前記仕切り板を境にして前記筐体の外部に位置することを特徴とする。
この構成によれば、前記エンジン部の作動音及び前記熱交換用ブロックから発せられる音等の外部への放出を抑えることができる。
また、前記熱交換用ブロックが前記エンジン部と前記ポンプ部の間で前記ポンプ部の本体に取り付けられていることから、前記ポンプ部の本体における吸込口及び吐出口が前記筐体で覆われない。そのため、前記ポンプ部の吸込口及び吐出口へのホースの着脱を簡単に行うことができる。
【0018】
好適には、本発明は、前記給排水ポンプにおいて、前記仕切り板と前記熱交換用ブロックの接合部分には防振機能及び防音機能を備えたシール部材が取付けられていることを特徴とする。
この構成によれば、前記仕切り板と前記ポンプ部の接合部分からの音の漏れを防ぐとともに、ポンプ部の作動時におけるポンプ全体の振動及び前記筐体の振動を軽減することができる。
【0019】
好適には、本発明は、前記給排水ポンプにおいて、前記筐体には前記筐体内の空気を外部に排出する排気口が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、前記筐体内に滞留する前記エンジン部の排気ガス等を外部へ排出することができる。
【0020】
好適には、本発明は、前記給排水ポンプにおいて、前記ポンプ部の前部には内部と連通する開口部が形成され、前記開口部には蓋体が開閉自在に取付けられていることを特徴とする。
この構成によれば、前記筐体を取り外さなくても前記ポンプ部の内部の清掃を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、排気用通路等の配管構造が簡単となり、ポンプの組立の作業を簡単に行えるとともに、冷却性と防音性の両方を兼ね備えた小型の給排水ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る給排水ポンプの外観斜視図である。
図2】給排水ポンプの内部構造を示す一部切り欠き側面図である。
図3】給排水ポンプの内部構造を示す分解斜視図である。
図4】ポンプ部の内部構造を示す一部切り欠き側面図である。
図5】ポンプ部の内部構造を示す正面図である。
図6】熱交換用ブロックをポンプ部側から見た正面図である。
図7】熱交換用ブロックをポンプ部側から見た斜視図である。
図8】熱交換用ブロックをエンジン部側から見た背面図である。
図9】熱交換用ブロックをエンジン部側から見た分解斜視図である。
図10】熱交換用ブロックの排気用チャンバーの部分を示す拡大断面図である。
図11】熱交換用ブロックの排気用通路の部分を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は拡大斜視図である。
図12】熱交換用ブロックのマフラー用通路の部分を示す側面図である。
図13】熱交換用ブロックの第2チャンバーの部分を示す斜視図である。
図14】熱交換用ブロックの第2チャンバーの第1取水口の部分を示す拡大斜視図である。
図15】熱交換用ブロックの冷却用通路をポンプ部側から見た正面図である。
図16】熱交換用ブロックの冷却用通路をエンジン部側から見た背面図である。
図17】給排水ポンプの分解斜視図である。
図18】給排水ポンプの筐体を構成する仕切り板を取外した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る給排水ポンプ1について説明する。
図1は給排水ポンプ1の外観側面図である。図2は給排水ポンプ1の内部構造を説明するための一部切り欠き側面図である。図3は給排水ポンプの内部構造を説明するための分解斜視図である。図4はポンプ部3内における水の給排水状態を説明するための一部切り欠き側面図である。図5はポンプ部内における水の給排水状態を説明するための正面図である。
【0024】
(給排水ポンプの全体構成)
図1図5に示すように、給排水ポンプ1は、エンジン部2と、エンジン部2の駆動により水を給排水するポンプ部3と、エンジン部2とポンプ部3の間に設けられエンジン部2の排気ガスの熱を冷却するための熱交換用ブロック4を有している。エンジン部2及び熱交換用ブロック4は箱形状の筐体6で覆われている。
【0025】
(エンジン部)
エンジン部2は内燃機関からなる空冷のエンジンであり、駆動シャフト(図示は省略する)にはポンプ駆動軸10が一体に取り付けられている。ポンプ駆動軸10の先端10aは熱交換用ブロック4を通り抜けて、ポンプ部3を構成するボリュート室7内に挿入され、先端10aにはインペラ12が取り付けられている。なお、エンジン部2のポンプ駆動軸の後端にはエンジン部2の冷却用ファン(図示は省略する)が取り付けられている。
筐体6内において、エンジン部2の本体2Aの上部には燃料タンク5が取り付けられている。
【0026】
(ポンプ部)
ポンプ部3は、アルミダイキャストにより形成された本体3aと、本体3aの前部の上側に開口形成された吸込口3Aと、本体3aの左右両側部の上側に同軸状に開口形成された吐出口3B、3Bを有している。
ポンプ部3の本体3aと熱交換用ブロック4間にはボリュート室7が形成されている。ボリュート室7は給排水通路を構成する第1チャンバー8と連通している。熱交換用ブロック4の前方側にはボリュート室7と連通する第2チャンバー9が形成されている。
吸込口3Aは第1チャンバー8と連通し、第1チャンバー8はボリュート室7と連通している。吐出口3B、3Bは第2チャンバー9と連通している。
第2チャンバー9の中央部分にはポンプ駆動軸10の先端10aが挿入される軸孔4Aが貫通形成されている。ポンプ駆動軸10の先端10aは軸孔4Aを介して第2チャンバー9内に挿入され、さらに先端10aはボリュート室7内に設けられたインペラ12に取り付けられている。
【0027】
ボリュート室7内のインペラ12が回転すると、図4中矢印に示すように、吸込口3Aから水が第1チャンバー8内に吸い込まれる。第1チャンバー8内の水は図4中矢印で示すように、ボリュート室7を介して第2チャンバー9内に送り込まれ、そして第2チャンバー9内の水は図4中矢印で示すように、吐出口3B、3Bより外部に排出される構造となっている。
すなわち、農業用水路などの水を給排水する場合、先ず、エンジン部2のポンプ駆動軸10を駆動させ、インペラ12をボリュート室7内で回転させる。そうすると、インペラ12の回転により生じる圧力により、水は吸込口3Aから第1チャンバー8に吸い込まれる。第1チャンバー8内に吸込まれた水は第2チャンバー9に送り込まれる。そして、第2チャンバー9内に送り込まれた水は吐出口3B、3Bを介して外部に排出される構造となっている。
【0028】
ポンプ部3の前部の下側には、ボリュート室7と連通する開口部3Cが形成されている。開口部3Cには蓋体3Dがネジ3Eにより開閉自在に取り付けられている。したがって、蓋体3Dの開閉操作により、ボリュート室7内の清掃を簡単に行うことができる。
【0029】
(熱交換用ブロック)
次に、図6図12を参照しながら、熱交換用ブロック4の構造について詳細に説明する。
図6は熱交換用ブロック4の第2チャンバー9を説明するための正面図である。図7は熱交換用ブロック4の冷却用通路13を説明するための斜視図である。図8は熱交換用ブロック4の排気用通路18を説明するための背面図である。図9は熱交換用ブロック4の排気用通路18及びマフラー用通路21を説明するための分解斜視図である。図10は熱交換用ブロック4の排気用チャンバー18Aを説明するための拡大断面である。図11は熱交換用ブロック4の排気用通路18の部分を示し、(a)は斜視図であり、(b)は拡大斜視図である。図12はマフラー用通路21を説明するための背面図である。
【0030】
熱交換用ブロック4は放熱効果の高いアルミダイキャストにより成形されている。
図6に示すように、熱交換用ブロック4において、ポンプ部3の本体3aに取り付けられる正面部側には第2チャンバー9の約半周部分を取り囲むように円弧状の冷却用通路13が形成されている。
熱交換用ブロック4は第1シール板11を介してポンプ部3の本体3aに取り付けられている。なお、熱交換用ブロック4はポンプ部3の本体3aに着脱自在に取り付けられているので、後述する冷却用管路13の途中にゴミ等の異物が詰まったとき、又は熱交換用ブロック4のオーバーホールが必要なとき、その作業を簡単に行うことができる。
冷却用通路13は、第1シール板11により、密閉され、防水された構造となっている。
【0031】
第2チャンバー9の下部側の側壁には第1取水口14Aが冷却用通路13と連通するように形成されている。第2チャンバー9内の冷却水は第1取水口14Aを介して冷却用通路13に送り込まれる。
第2チャンバー9の上部側の側壁には第1排出口15Aが形成されている。冷却水用通路13の上部側には冷却用チャンバー13Aが形成されている。冷却用チャンバー13Aには冷却水接続孔13Bが形成されており、冷却水接続孔13Bと第1排出口15Aは連通する構造となっている。
【0032】
冷却用通路13に送り込まれた冷却水は冷却用チャンバー13Aから冷却水接続孔13B及び第1排出口15Aを介して第2チャンバー9に戻される。なお、第2チャンバー9の側壁には冷却用通路13と連通する第2取水口14B及び第3取水口14Cが形成されている。
すなわち、ボリュート室7内に設けられたインペラ12の回転駆動により、第1チャンバー8に吸込まれた水は第1チャンバー8、第2チャンバー9、冷却用通路13、第2チャンバー9に排出される。
【0033】
このような構成によれば、ポンプ部3により給排水された水を冷却用通路13の冷却水として使用することができる。従って、常に適切な温度の冷却水を冷却用通路13に送り込むことができ、後述する排気用通路18の冷却性能の向上を図ることができる。
【0034】
熱交換用ブロック4の背面部側は基板16及び第2シール板17を介してエンジン部2の本体2Aに取り付けられている。熱交換用ブロック4の背面部側において、冷却用通路13と背中合わせとなる部分には冷却用通路13に沿って円弧状の排気用通路18が形成されている。
排気用通路18の上部にはドーム状の排気用チャンバー18Aが形成され、基板16にはエンジン部2から排出される排気ガスを排気用通路18に受け入れるための第1排気口19が形成されている。排気用チャンバー18Aの裏側に位置する冷却用通路13の部分には排気用チャンバー18Aの大きさに合わせて冷却用チャンバー13Aが形成されている。
【0035】
第1排気口19から排出された排気ガスは、図10中矢印に示すように、一旦排気用チャンバー18Aで受け止められ、分散される。その後、排気ガスは排気用通路18、そしてマフラー用通路21に送られ、第2排気口25から外部に排出される。
【0036】
このように、排気用通路18に排気ガスの熱を分散させる排気用チャンバー18Aを設けるとともに排気用チャンバー18Aに沿って冷却用チャンバー13Aを設けたことにより、排気ガスの冷却表面積を大きく取ることができ、ヒートスポットの発生を避けることができる。
【0037】
排気用通路18には複数の放熱用フィン20が排気ガスの送り出し方向に沿って所定間隔をおいて階段状に形成されている。放熱用フィン20により、排気圧力を調整し、排気温度を適温に調整することができる。そして、排気ガスは放熱用フィン20間に設けられた隙間20Aを介して排気用通路18の下方向に送り出される構造となっている。
【0038】
熱交換用ブロック4の背面部側には排気用通路18と繋がるマフラー用通路21が形成されている。排気用通路18の下部にはマフラー用通路21と連通する第1排気ガス接続孔22が形成されており、第1排気接続孔22を介して排気用通路18の排気ガスがマフラー用通路21に送り出されるようになっている。
【0039】
マフラー用通路21は排気ガスの送り出し方向に沿って複数のマフラー室23に区画されており、各マフラー室23の底壁には上下に隣り合うマフラー室23と連通する第2排気ガス接続孔24が形成されている。
マフラー用通路21を複数のマフラー室23に区画することにより、消音効果を向上させることができる。
マフラー用通路21の上部にはマフラー用通路21内の排気ガスを筐体6内に放出するための第2排気口25が設けられている。
排気用通路18は第2シール板17により密閉され、排気ガスがエンジン部2から直接筐体6内に漏れないようになっている。
【0040】
熱交換用ブロック4の背面部側の側壁には第2チャンバー9の側壁に形成された第2取水口14B及び第2排出口15Bと連通する第1冷却水収容部26Aが形成されている。第1冷却水収容部26Aには第2チャンバー9内の冷却水が第2取水口14Bを介して送り込まれ、そして第1冷却水収容部26A内の冷却水は第2排出口15Bから第2チャンバー9内に戻される。
【0041】
また、熱交換用ブロック4の背面部の側壁には第2チャンバー9の側壁に形成された第3取水口14C及び第3排出口15Cと連通する第2冷却水収容部26Bが形成されている。第2冷却水収容部26Bには第2チャンバー9内の冷却水が第3取水口14Cを介して送り込まれ、そして第2冷却水収容部26B内の冷却水は第3排出口15Cから第2チャンバー9内に戻される。
【0042】
このような構成の給排水ポンプ1によれば、冷却用通路13及び各冷却水収容部26A、26Bに送り込まれる冷却水により、排気用通路18を冷却することができる。従って、排気用通路18内において排気ガスの熱膨張を抑制することができ、排気ガスの防音を図ることができる。なお、排気ガスの熱膨張をマフラー用通路21に送り出す前に抑制することができるので、従来のようにマフラー用通路21が排気ガスの熱源となることはない。
【0043】
また、熱交換用ブロック4を放熱効果が高いアルミダイキャストにより成形したことにより、排気用通路18の冷却効果をさらに高めることができ、防音効果に寄与する。
【0044】
なお、ポンプ部3の駆動が停止しても、冷却用通路13内の冷却水は温度差により対流するので、常に適温の冷却水を冷却用通路13内で使用することができる。
排気用通路18にて、排気ガスの破裂音が小さくなった排気ガスは、次にマフラー用通路21に送り込まれ、マフラー用通路21でさらに消音が図られる。従って、マフラー用通路21から筐体6内に放出される排気ガスの防音性はさらに向上する。
なお、熱交換用ブロック4において、マフラー用通路21の裏側は第2チャンバー9の外側部に位置しており、第2チャンバー9内の冷却水により、マフラー用通路21も冷却することができる。
【0045】
排気ガスが排気用通路18内で冷やされることによって、排気用通路18内に凝縮水が生じても、凝縮水は、図11(a)(b)中矢印で示すように、背圧(排気ガス圧力)により、放熱用フィン20間の隙間20Aを介して下方向に導かれる。すなわち、凝縮水は排気通路18の上部から下部に順次導かれる。排気用通路18の下部には第1ドレン27が形成されており、排気用通路18の下部に導かれた凝縮水は第1ドレン27から外部に放出される。
【0046】
また、マフラー用通路21が冷やされることによって、マフラー用通路21内に凝縮水が生じても、凝縮水は、図12中矢印で示すように、マフラー室23の底壁を伝わり、第2排気ガス接続孔24を介して下側に位置するマフラー室23に順次導かれる。マフラー用通路21の下部には第2ドレン28が形成されており、マフラー用通路21の下部に導かれた凝縮水は第2ドレン28から外部に放出される。
【0047】
このような構成によれば、排気用通路18、そしてマフラー用通路21が冷却されることによって凝縮水が生じたとしても、凝縮水は第1ドレン27と第2ドレン28より外部に放出される。従って、アルミダイキャストにより成形された熱交換用ブロック4が、凝縮水に含まれる排気ガスの成分(硫黄など)の影響で腐食して、変形等の劣化を生じることを効果的に防止できる。
【0048】
図13及び図14に示すように、熱交換用ブロック4の第2チャンバー9の下部には第1取水口14Aを介して小石等の異物が冷却用通路13に入らないように抑制する抑制板29が取り付けられている。抑制板29の湾曲部29Bと第2チャンバー9の側壁との間に隙間29Aが形成されており、第1取水口14Aへの冷却水の流路が絞られている。
【0049】
このような構成によれば、給排水ポンプ1を農業用水路の給排水に使用した時に、小石等の異物を含む水を給水し、第1チャンバー8内に異物が入り込んでも、小石等の異物を隙間29Aで受け止めることができるので、異物が第1取水口14A介して冷却用通路13へ進入することを防ぐことができる。なお、抑制板29は、隙間29Aの大きさを調整できるように取り付けられている。従って、砂が交じる水を給排水するときには、隙間29Aの大きさを極力狭く設定することにより、冷却用通路13内への砂の流入を防ぐことができる。
【0050】
冷却用通路13に異物30が入り込んだ場合、異物30はポンプ部3の給排水の圧力により、図15中矢印で示すように、冷却用通路13の下部側から上部側に送られる。そして、図16中矢印で示すように、異物30はチャンバー接続孔13Bから第1排気口15Aに送られ、最終的に第2チャンバー9に送り戻される。従って、異物30が冷却用通路13内で滞り、異物30により冷却用通路13が詰まることを防止できる。
【0051】
(筐体)
図17及び図18に示すように、エンジン部2及び熱交換用ブロック4は、箱形状の筐体6に覆われている。筐体6は、左右両側板60、61と、後側板62と、天板63と、底板64とを有している。筐体6において、ポンプ部3が位置する前方側は開放され、開口部65が形成されている。開口部65には仕切り板66が着脱自在に取付けられており、開口部65は仕切り板によって開閉自在となっている。
エンジン部2及び熱交換用ブロック4は、筐体6を構成する仕切り板66を境にして筐体6の内部に位置するとともに、ポンプ部3は仕切り板66を境にして筐体6の外部に位置する状態に構成されている。
なお、本発明は左右側板60、61、後側板62、天板63及び仕切り板66が予め一体に形成された構成のものであってもよい。
【0052】
天板63には燃料タンク5の給油口5aが開口形成され、給油口5aには給油キャップ5Aが取付けられている。
【0053】
エンジン部2、ポンプ部3及び熱交換用ブロック4は、筐体6の底板64に設けられた防振脚部70によって弾性的に支持されている。したがって、エンジン部2、ポンプ部3及び熱交換用ブロック4の作動時の振動は、防振脚部70によって吸収される構成となっている。
【0054】
筐体6において、エンジン部2の後方側にはエンジン部2を冷却する空気を筐体6内に取り入れるための筐体側吸気口6Aが開口形成されている。また、筐体6において、熱交換用ブロック4の左側板には第2排気口25から筐体6内に放出される排気ガスを筐体6外に排出するための筐体側排気口6Bが開口形成されている。筐体6内に滞留するエンジン部2の排気ガスは、筐体側排気口6Bから筐体6の外部に排出される。
【0055】
仕切り板66の略中央部には、ポンプ部3の本体3aを筐体6の仕切り板66から外部に突出させるための開口部67が形成されている。開口部67の形状は熱交換用ブロック4の外形形状に沿った形に形成されている。
【0056】
熱交換用ブロック4と仕切り板66の接合部分には、防振機能及び防音機能を備えたポリウレタン等からなるシール部材80が取り付けられている。
シール部材80は熱交換用ブロック4の外形形状に沿った環状に形成されており、熱交換用ブロック4の外周部に嵌合される。シール部材80は、仕切り板66を筐体6の開口部65に取付け、開口部65を閉じたとき、仕切り板66によって、熱交換用ブロック4のブロック面に押付けられる。これにより、熱交換用ブロック4と仕切り板66との接合部分はシール部材80によって閉じられる。
【0057】
なお、本発明は、ポリウレタン等のシール部材がポンプ部3と熱交換用ブロック4の接合部分に詰め込まれるようにして取付けられたものであってもよく、シール部材が環状に成形されているものには限定されない。
【0058】
(まとめ)
このように、本実施形態に係る給排水ポンプ1によれば、熱交換用ブロック4内に給排水ポンプ1の主要通路となる排気用通路18、冷却用通路13等を集約して形成することができる。また、熱交換用ブロック4をポンプ部3の本体3aに取り付けるだけで、給排水用通路を構成する各チャンバー8、9と冷却用通路13を接続することができ、給排水ポンプ1の配管を簡単に行うことができる。従って、給排水ポンプ1の小型化を図ることができる。
【0059】
また、排気ガスの消音を排気用通路18内で行うことができ、従来のような大型マフラーが不要になる。
【0060】
また、熱交換用ブロック4がポンプ部3の本体3aに着脱自在に取り付けられているため、給排水ポンプ1の冷却用通路13や排気用通路18等を掃除する場合に、熱交換用ブロック4をポンプ部3の本体3aから取り外すだけで簡単に作業を行うことができる。
【0061】
また、エンジン部2及び熱交換用ブロック4が筐体6で覆われることにより、エンジン部2のピストン・シリンダの駆動音やタペットの駆動音、冷却用ファンの作動音及び熱交換用ブロック4から発せられる音等の外部への放出を抑えることができる。しかも、エンジン部2及び熱交換用ブロック4等への塵や埃の付着を防ぐことができる。
【0062】
また、熱交換ブロック4がエンジン部2とポンプ部3との間でポンプ部3の本体3aに取り付けられた構造において、筐体6を構成する仕切り板66を境として、エンジン部2及び熱交換ブロック4が筐体6の内部に位置し、ポンプ部3が筐体6の外部に位置する。これにより、ポンプ部3の吸込口3や吐出口3Bが筐体6で覆われないため、吸込口3A及び吐出口3Bへのホースの着脱を簡単に行うことができる。
【0063】
また、熱交換用ブロック4と仕切り板66との接合部が防音機能を備えたシール部材80で塞がれるため、筐体6内の音の漏れを防止できる。更に、シール部材80が防振機能を備えることにより、エンジン部2の駆動に伴う振動及び筐体6に伝わる振動をシール部材80で吸収できる。
【0064】
また、熱交換用ブロック4から筐体6内に放出される排気ガスの温度が低く抑えられているので、小型の筐体6を使用することができ、冷却性と防音性の両方を兼ね備えたコンパクトな給排水ポンプ1を提供できる。
【0065】
本発明は上述した実施形態には限定されない。すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、エンジン駆動により水を給排水する構造であれば、洗浄用などの各種の用途のポンプに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・・・給排水ポンプ
2・・・・・エンジン部
3・・・・・ポンプ部
3a・・・・本体
3C・・・・開口部
3D・・・・蓋体
4・・・・・熱交換用ブロック
6・・・・・筐体
7・・・・・ボリュート室
8・・・・・第1チャンバー
9・・・・・第2チャンバー
10・・・・ポンプ駆動軸
10a・・・先端
12・・・・インペラ
14A・・・第1取水口
15A・・・第1排出口
18・・・・排気用通路
19・・・・エンジン排気口
20・・・・放熱用フィン
21・・・・マフラー用通路
66・・・・仕切り板
80・・・・シール部材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図18