(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード素子で白色光を得る技術の進歩にともなって、白熱灯、蛍光灯、水銀灯のような照明灯から発光ダイオード式照明灯への転換が急速に進んでいる。そして、テニスコートのような運動場ないしは競技場の夜間照明、庭園の照明、あるいは看板の照明に使用されている比較的光量が多い大型の投光器の光源としても主に水銀灯に代えて発光ダイオード素子が利用されるようになってきている。以下、本発明では、電極を含む発光ダイオードの半導体チップを発光ダイオード素子(LED)という。
【0003】
LED式投光器に対して水銀灯式投光器と同じだけの照射距離を求めると、LEDの発熱量が許容量を超えてしまう。そこで、投光器には、翼面積を大きくすることができる平板形状のフィンを備えたヒートシンクが設けられている。しかしながら、光源のLEDの温度が手を触れることができないほどの高温になる大光量の投光器においては、大型のヒートシンクによるだけでは、エネルギ損失を十分に低減することができず、依然としてLEDが破損するおそれがある。
【0004】
ヒートシンク本体の体積を大きくするとともに、平板形状のフィンの数を多くしてフィンの総面積をより広くすることによって放熱効果を高くすることが可能である。しかしながら、ヒートシンク本体を大きくしすぎると、ヒートシンクの質量が増大して投光器の総重量が重くなる。また、金属の一体成形加工では、翼面積がより大きくて薄い平板形状のフィンを十分な数だけ増設することが難しい。
【0005】
送風ファンまたは水冷装置のように強制的に冷却する冷却装置を設けると、部品点数が増大して投光器の構造がより繊細になる。そのため、生産性が低下する。また、直射日光と風雪雨に曝される屋外の照明設備では、冷却装置を搭載した投光器は、より損傷しやすくなる。その結果、冷却装置が不要である水銀灯式投光器のようないわゆる電球を光源とする投光器に比べて、設置、点検、修理、あるいは交換による設備と維持管理に要する作業と費用の負担がより大きくなる。
【0006】
例えば、特許文献1に示されるように、複数のLEDを配設した基板の下面に設けられ、中空空間内に冷却媒体を収容したヒートシンク本体と複数の放熱フィンとの間にペルチェ素子を設けて成る発光ダイオードモジュールが知られている。ペルチェ素子は、原理上、冷却効率がそれほど優れているとは言い難いが、冷却装置を比較的小さくできる利点がある。また、冷却装置の構造が比較的簡単である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ペルチェ素子は、吸収側から熱を吸収し、排熱側に熱を移動させ、排熱側から熱を排熱させる構成であるので、ペルチェ素子を効果的に冷却しないと冷却効率が向上しない。特に、十分に放熱されずに熱が溜まった状態になると、ペルチェ素子自体が焼損するおそれがある。そのため、屋外で使用する投光器の冷却装置としてペルチェ素子を利用した場合は、依然として冷却装置が故障するおそれが高い。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みて、構成が比較的簡単で、より効率よく放熱できるヒートシンクを備えたLED式投光器を提供することを目的とする。本発明の利点は、具体的な発明の実施の形態の説明において、その都度示される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の投光器は、上記課題を解決するために、光源である複数の発光ダイオード素子(2)が配設された基板(3)と、
内側に穴形状の空間が形成されるように構成され前記空間が形成されていない面に基板(3)を密着固定する基体(61)
と、空間に蓋をして塞ぐように基体(61)に固定され
基体(61)における基板(3)を密着固定する面に対して反対側の面に複数の直線の溝がそれぞれ平行に形成されている振動体(62)とで成る本体(6A)と、
薄板で形成され可能な限り小さい所定の間隔で互いに平行になるように本体(6A)
の振動体(62)に形成されている複数の直線の各溝にそれぞれ嵌め合わせて設けられる複数のフィン(6B)と、本体(6A)
の基体(61)と振動体(62)との間に形成された空間に
振動体(62)に接触するように設けられフィン(6B)を振動させる
角板形状または円板形状の超音波振動子(6C)と、で成るヒートシンク(6)と、を有するようにされる。
【0011】
上記投光器は、好ましくは、超音波振動子(6C)が基体(61)と振動体(62)との間に設けられるようにされる。なお、上記括弧内に記載された符号は、説明の便宜上、図面を参照することができるように図面に設けられた符号を付したものであって、本発明を図面に示されている具体的な実施の形態に限定するものではない。
【発明の効果】
【0012】
本発明の投光器は、超音波振動子によって薄い平板形状のフィンに微細な振動を付与する。互いに平行に設けられたフィンのそれぞれ隣り合うフィンとフィンとの間に形成される空間において放熱によって温度が上昇した空気が振動するフィンに煽られて対流が促進する。そのため、上記空間における空気が循環し、放熱効果が向上し、基板の温度を所定温度以下に維持することができる。その結果、設備と維持管理に要する作業と費用の負担が軽減される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1ないし
図3は、本発明の投光器の実施の形態を示す。本発明では、
図1に示されるように、投光器を設置して光を照射する直線方向を照射方向Dxとする。そして、照射方向Dxに向かう面を投光器の前面または正面とし、前面の反対面を後面または背面とする。また、照射方向Dxに対して右側を右側面、左側を左側面、上側を上面、下側を下面とする。なお、照射方向Dxに沿って後面から前面に向かう方向を前後方向、上面から下面の方向を上下方向または縦方向、左右両側面の方向を左右方向または横方向として説明する。
【0015】
LED式投光器は、
図1ないし
図3に示されるように、投光器本体1と、投光器本体1に設けられる光源である複数の発光ダイオード素子(LED)2と、複数のLED2が配設された基板3と、投光器本体1を支持する支持体4と、光源のLED2を囲繞するように設けられるリフレクタ5と、投光器本体1に設けられ基板3に対して全面で接触するように基板3を密着固定するヒートシンク6と、を有する。
【0016】
複数のLED2には、投光器本体1から遠く離れた場所に設けられている図示しない直流電源から電力が供給される。例えば、投光器本体1の下側に入力端子が設けられ、入力端子と直流電源との間がケーブルで接続される。投光器本体1と直流電源との間の距離には制限があるので、施設の規模によっては、複数の投光器に複数の直流電源からそれぞれ給電されるようにすることができる。
【0017】
複数のLED2は、電気的に数個ないし十数個単位で直列に接続される。直列に接続された複数のLED2で成る直列ユニットは、それぞれ並列に接続される。直流電源から定格最大の電流値が供給されたときに得ることができる最大の光量が所要の光量を十分に超えるように、光量に余裕をもたせた個数だけ基板3に配設されている。LED2が損傷して直列ユニットが電気的に切断されても、所要の光量の光を照射し続けることができる。
【0018】
基板3は、良熱伝導性の金属で成る。したがって、基板3は、LED2から生じる熱を短時間に吸熱する。具体的に、基板3は、銅で成る。基板3に隣接して図示しないプリント基板が設けられていて、プリント基板を通して基板3に電流を供給する。基板3は、シリコングリースあるいはグラファイトシートのような柔軟な熱伝達体を介在させてヒートシンク6にLED2が配設されていない裏面全面が密着するように固定される。そのため、LED2が発する熱は、基板3を通して速やかにヒートシンク6に伝達される。
【0019】
投光器本体1は、支持体4によって照明設備における照明塔あるいは照明柱の照明架台に設置される。支持体4は、鉄のような剛性の高い金属の板金の両側を折り曲げて製作されている。支持体4は、照明架台に固定する取付金属とボルトを含めて投光器本体1の荷重に耐える強度を有する。例えば、支持体4は、投光器本体1が高所において、予測可能な強風による負荷を受けたときでも、直ちに破断しない強度を有する。
【0020】
支持体4における板金の折り曲げられている両端に挟まれた中間部位の2箇所に取付孔が設けられている。1つの取付孔は、弧状の長孔である。支持体4の取付穴の位置と照明架台側に設けられている取付穴の位置を合わせて一方の取付穴にボルトを通して投光器本体1を完全に固定することによって、投光器が照明設備に設置される。
【0021】
リフレクタ5は、
図1に示されるように、銅の基板3の表面に内筒端の少なくとも一部が接触するように全体がヒートシンク6のヒートシンク本体6Aに取り付けられて固定される。リフレクタ5の内筒端が本体6Aに接触するように固定することもできる。実施の形態における投光器のリフレクタ5は、内筒端が銅の基板3の表面に接触することによって、リフレクタ5がLED2から生じる熱を放熱する放熱板の役割を有する。そのため、実施の形態の投光器は、放熱効果が一層優れる利点を有する。
【0022】
リフレクタ5は、光源のLED2の光を集光し、所定の照射距離に合わせて予め要求されている所定の照射範囲に光を当てるための反射筒である。リフレクタ5の内側は、複数枚の金属の平板で形成される。反射面は、可能な限り反射光を散乱させないように全体的に平滑面であり、高い反射率を有する反射材料が被覆されている。実施の形態の投光器のリフレクタ5は、内側の表面にアルミニウム、銀、酸化チタンのような反射面を形成し得る金属の微粒子を均一に蒸着したアルミニウム板で形成されている。
【0023】
リフレクタ5は、少なくとも、開口5Aの正面形状が四角形状である。実施の形態の投光器のリフレクタ5では、照射方向Dxに対して垂直方向の段面が四角形状である。平坦な照射面において照射された光の境界の形状は、所定の照射角度に応じて開口5Aを投影した形状になる。したがって、照射対象の照射面が平面であるとき、所定の照射範囲の形状は、おおよそ台形になる。なお、照射角度とは、平坦な照射面に対して照射方向Dxがなす角度である。
【0024】
照射領域の中央の領域には、光源のLED2からリフレクタ5の反射面で反射されずに直接照射面に当たる光と、反射面で反射した反射光とが重複して照射される。一方、所定の照射領域の外縁の領域では、LED2からリフレクタ5の反射面に反射されずに直接照射面に当たる光の中で比較的距離が長い光が当たる。したがって、外縁の領域における明るさは、中央の領域における明るさよりも暗くなる。そのため、所定の照射範囲を超えて強い光が当たらない。
【0025】
リフレクタ5は、具体的に、集光部位5Bと照射部位5Cとを含んで成る。集光部位5Bは、主に光源であるLED2の光を集光する役割を有する。集光部位5Bの内面である内側の反射面は、照射方向Dxに対して第1の角度αで外側に向かって四方に拡大する。照射部位5Cは、主に所定の照射距離に合わせて所定の照射範囲に光を当てる役割を有する。照射部位5Cの内側の反射面は、照射方向Dxに対して第1の角度αよりも小さい第2の角度βで外側に向かって四方に拡大する。
【0026】
集光部位5Bは、リフレクタ5において照射部位5Cよりも光源のLED2により近い場所に位置する。照射部位5Cは、リフレクタ5において集光部位5Bよりも開口5Aにより近い場所に位置する。照射部位5Cは、集光部位5Bに連接する。集光部位5Bと照射部位5Cとが連接する位置における間口の断面形状は、開口5Aの断面形状と相似の四角形状である。
【0027】
ヒートシンク6は、基板3を密着固定するヒートシンク基体61およびヒートシンク基体61に固定されるヒートシンク振動体62とで成るヒートシンク本体6Aと、本体6Aに設けられる薄い平板形状の複数のフィン6Bと、本体6Aに設けられ複数のフィン6Bに振動を付与する超音波振動子6Cと、で成る。特に、実施の形態の投光器のヒートシンク6には、ヒートシンク6の質量を軽減するために、本体6Aに中空空間が設けられている。具体的に、本体6Aは、ヒートシンク基体61とヒートシンク振動体62とで構成され、基体61と振動体62との間に中空空間が形成される。
【0028】
ヒートシンク基体61は、LED2を配設した銅の基板3を基板3の全面が密着するように固定する。基体61は、穴形状の空間が形成されているアルミニウムの鋳造体または複数のアルミニウムの板を組み合わせて内側に空間が形成されるように構成されている箱体である。基板3は、基体61の上記空間が形成されていない面に設けられる。ヒートシンク振動体62は、基体61に固定される。ヒートシンク振動体62は、アルミニウムで成り、上記空間に蓋をして塞ぐように基体61に固定される。その結果、基体61と振動体62で成る本体6Aに中空空間が形成される。
【0029】
フィン6Bは、アルミニウムの薄板で形成されている。複数のフィン6Bは、それぞれ可能な限り小さい所定の間隔でに互いに平行になるようにヒートシンク本体6Aに設けられる。望ましくは、複数のフィン6Bは、投光器本体1が照明架台に取り付けられる姿勢に応じて隣接するフィン6B同士で形成される空間(以下、放熱空間という)が上側に開放する方向に設けられる。実施の形態の投光器では、照射面に対して所定の照射角度をもって下向きに照射するものとして、複数のフィン6Bが投光器本体1の背面で上記空間が外側に開放されるように、本体6Aに対して垂直方向に立設され突出するように設けられている。
【0030】
ヒートシンク本体6Aには、基板3を密着固定する面に対して反対側(背面側)の面にフィン6Bを取り付けて固定するための複数の直線の溝がそれぞれ平行に形成されている。特に、実施の形態の投光器のヒートシンク6では、ヒートシンク振動体62に複数の溝が設けられている。上記複数の溝は、切削加工によって形成される。そして、複数のフィン6Bをそれぞれ各溝に嵌め合わせて熱伝導製の金属による溶接または高熱伝導率を有する接着剤による接着によって本体6Aに固着される。
【0031】
そのため、ヒートシンク6は、フィン6Bの翼面積をより大きくするとともに、厚さをより薄くすることができる。また、フィン6Bをヒートシンク本体6Aに取り付けるための取付代が不要である。また、隣接するフィン6B同士の所定の間隔をより小さくすることができる。したがって、より多くの数のフィン6Bを設けることができるとともに、放熱効果に対する相対的なヒートシンク6の質量の増大が最小限度に抑えられる。そして、薄い平板形状のフィン6Bは、全面が平坦であるので、放熱空間において円滑な流動を阻害せず、十分な放熱効果を得ることができる。
【0032】
単位時間当たりの放熱量を多くするために、可能な限り多くの数のフィン6Bを設けるべきである。ただし、隣接するフィン6B同士の間隔が小さすぎると、放熱空間における空気の流れが悪くなる。その結果、放熱によって温められた空気が放熱空間の中に滞留して温度が低い外気と交換されにくくなり、放熱効果が低下する。したがって、基本的に、複数のフィン6Bが配置される所定の間隔は、投光器の設置場所に依存して、少なくとも温められた空気が放熱空間から速やかに放出されるために最低限度必要な長さよりも長い。
【0033】
薄いアルミニウムのフィン6Bは、剛性が小さく曲りやすい。フィン6Bが曲がると、放熱空間が曲がったフィン6Bによって塞がれて空気の流動性を低下させるおそれがある。そこで、望ましくは、複数のフィン6Bとヒートシンク本体6A側に対して反対側の縁を固定して支持する補強材7を設ける。補強材7は、同時にフィン6Bが本体6Aから脱落することを防止する。
【0034】
超音波振動子6Cは、フィン6Bを振動させる手段である。超音波振動子6Cは、実質的にヒートシンク6Aの中に設けられる。より具体的には、超音波振動子6Cは、ヒートシンク振動体61に形成された取付空間に収納されるようにヒートシンク基体61と振動体62との間に設けられる。超音波振動子6Cは、
図2に示されるように、複数設けることができる。超音波振動子6Cは、基体61と振動体62との間の熱伝導の効率を著しく低下させることがない範囲で振動体62に接触するように設けられる。
【0035】
超音波振動子6Cは、図示しないリード線から高周波電流が供給されると、所定の周波数で拡大と縮小を繰り返す。超音波振動子6Cがヒートシンク振動体62と接触するように設けられているため、比較的質量が大きいヒートシンク基体61を殆ど振動させることなく、振動体62を微振動させる。このとき、振動体62に形成されている各溝にそれぞれ固着されているフィン6Bが薄い平板形状であるので、振動体62の振動によってフィン6Bが超音波振動する。
【0036】
超音波振動子6Cによって複数のフィン6Bに微振動が付与されると、放熱空間の中の空気が煽られて撹拌する。そのため、放熱によって温度が上昇している放熱空間の中の空気の対流が促進されて、熱い空気が積極的に投光器の外に放出され、比較的温度が低い外気と入れ換えられる。その結果、放熱空間の中の温度の上昇を抑えて放熱効果をより高めることができる。
【0037】
以上に説明されるように、実施の形態の投光器のヒートシンク6では、超音波振動子6Cがヒートシンク6のヒートシンク本体6の中に収容されているので、損傷しにくい。また、複数のフィン6Bが薄い平板形状であるために超音波振動によって容易に振動し、超音波振動子6Cは、人の聴力の範囲外の高周波で振動してフィン6Bを振動させるので、騒音の問題が生じない。特に、実施の形態の投光器では、超音波振動子6Cがヒートシンク振動体62を振動させる構成であるので、光源のLED2を殆ど振動させることがなく、人が体感できる範囲で光の揺らぎを発生させない。
【0038】
超音波振動子6Cは、具体的に、圧電セラミックスである。実施の形態の投光器では、焼結セラミックス板と電極板とを重ねて成る薄い角板形状または円板形状の超音波振動子6Cをヒートシンク本体6Aに対して電気的に絶縁した状態で複数分散配置している。例えば、
図2に示されるように、4個の四角板形状の圧電セラミックスを配設している。そのため、実施の形態の投光器によると、ヒートシンク基体61とヒートシンク振動体62との接合面において超音波振動子9Cが占有する面積を小さくし、熱伝導性の低下を抑えることができる。
【0039】
以上に説明される実施の形態の投光器は、薄い平板形状のフィンを超音波振動によって微細に振動させる構成であるので、放熱効果を向上させることができ、屋外で使用される比較的大型のLED投光器に適する。本発明の投光器は、図面に示される具体的な実施の形態に限定されず、すでにいくつかの例が挙げられているように、本発明の目的を逸脱しない範囲で実施の形態の投光器を変形し応用して実施することが可能である。例えば、ヒートシンク本体の外側におけるフィンの取付部位に複数の超音波振動子を設けることによって選択的に複数のフィンに直接振動を付与するようにすることができる。