特許第6116071号(P6116071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116071
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】貼付シート、及び貼付シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/085 20060101AFI20170410BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20170410BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20170410BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   A61K31/085
   A61K9/70 401
   A61K47/34
   A61P3/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-103513(P2015-103513)
(22)【出願日】2015年5月21日
(65)【公開番号】特開2016-216396(P2016-216396A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2015年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】512292289
【氏名又は名称】株式会社ジェイクリエイト
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100100262
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 勉
(72)【発明者】
【氏名】門田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】西垣 広志
(72)【発明者】
【氏名】高谷 勝
【審査官】 上條 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−031584(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3069710(JP,U)
【文献】 特開2003−238420(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3104972(JP,U)
【文献】 特開2009−155219(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3110497(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 − 31/80
A61K 9/70
A61K 47/00 − 47/69
A61L 15/00 − 15/64
A61P 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に貼付して使用される貼付シートであって、
体液が通過可能な袋体と、
前記袋体に収容されている充填材と、
前記皮膚と接触させるために前記袋体の外面に形成された接触層とを備え、
前記充填材は前記袋体を通過した前記体液を吸収するための吸収成分を含有し、
前記接触層は前記皮膚に温感刺激を付与するための温感刺激成分と、酢酸ビニルウレタン系樹脂とを含有する塗料の硬化物であり、
前記温感刺激成分の含有量は、100質量部の前記塗料に対して7質量部以上20質量部以下である、
ことを特徴とする貼付シート。
【請求項2】
前記温感刺激成分はバニリルブチルエーテルであることを特徴とする請求項1に記載の貼付シート。
【請求項3】
体液が通過可能な袋体と、前記袋体に収容されている充填材と、皮膚と接触させるために前記袋体の外面に形成された接触層とを備え、かつ前記皮膚に貼付して使用される貼付シートを製造するための方法であって、
前記皮膚に温感刺激を付与するための温感刺激成分と、酢酸ビニルウレタン系樹脂とを含有する塗料を前記袋体の外面に塗布して硬化させることで前記接触層を形成することを含み、
前記充填材は前記袋体を通過した前記体液を吸収するための吸収成分を含有し、
前記温感刺激成分の含有量は、100質量部の前記塗料に対して7質量部以上20質量部以下である、
ことを特徴とする貼付シートの製造方法。
【請求項4】
前記塗料をグラビア印刷して前記接触層を形成することを特徴とする請求項3に記載の貼付シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付シート、及び貼付シートの製造方法に関し、詳細には、足裏等の皮膚に温感刺激を付与するために好適に用いられる貼付シート、及び貼付シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、体内の血流を改善して健康維持することが高まっている。このため、ストレッチ、マッサージ等で血流を改善することにより、体内の老廃物を排出させ易くすることが試みられている。しかし、例えば、マッサージの場合、マッサージの技量によって充分な効果が期待しにくい場合があり、また、マッサージに要する時間が必要であった。このため、手軽に血流を改善することは困難であった。
【0003】
そこで、特許文献1では、木酢液を主成分とする粉体を充填して形成された血行促進用貼付シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−31584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、皮膚から発汗させた老廃物を含む体液で時間をかけて粉体を湿らせる必要があった。このため、使用時の実感を得ることが困難な場合があった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、血流の促進を図り、皮膚より老廃物を含む体液の排出を促すことで、疲労感を軽減することができる貼付シート、及び貼付シートの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る貼付シートは、皮膚に貼付して使用される貼付シートであって、体液が通過可能な袋体と、前記袋体に収容されている充填材と、前記皮膚と接触させるために前記袋体の外面に形成された接触層とを備え、前記充填材は前記袋体を通過した前記体液を吸収するための吸収成分を含有し、前記接触層は前記皮膚に温感刺激を付与するための温感刺激成分と、酢酸ビニルウレタン系樹脂とを含有する塗料の硬化物であり、前記温感刺激成分の含有量は、100質量部の前記塗料に対して7質量部以上20質量部以下である。
【0008】
本発明に係る貼付シートでは、前記温感刺激成分はバニリルブチルエーテルであってもよい。
【0009】
本発明に係る貼付シートの製造方法は、体液が通過可能な袋体と、前記袋体に収容されている充填材と、皮膚と接触させるために前記袋体の外面に形成された接触層とを備え、かつ前記皮膚に貼付して使用される貼付シートを製造するための方法であって、前記皮膚に温感刺激を付与するための温感刺激成分と、酢酸ビニルウレタン系樹脂とを含有する塗料を前記袋体の外面に塗布して硬化させることで前記接触層を形成することを含み、前記充填材は前記袋体を通過した前記体液を吸収するための吸収成分を含有し、前記温感刺激成分の含有量は、100質量部の前記塗料に対して7質量部以上20質量部以下である。
【0010】
本発明に係る貼付シートの製造方法では、前記塗料をグラビア印刷して前記接触層を形成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、血流の促進を図り、皮膚より老廃物を含む体液の排出を促すことで、疲労感を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1Aは本実施形態の貼付シートにおける概略断面図の一例を示し、図1Bは本実施形態に係る貼付シートを使用する場合の一例を示す。
図2図2は本実施形態の参考例の貼付シートにおける概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0014】
本実施形態に係る貼付シート10は、図1Bのように足裏等の皮膚5に貼付して使用される。貼付シート10を貼付するにあたって、足裏の他に、肩、腕、ふくらはぎ等の身体の各箇所における皮膚5に貼付シート10を貼付することもできる。図1A及び図1Bのような本実施形態に係る貼付シート10は、体液が通過可能な袋体1と、袋体1に収容されている充填材2と、皮膚5と接触させるために袋体1の外面17に形成された接触層3とを備える。充填材2は袋体1を通過した体液を吸収するための吸収成分を含有する。接触層3は皮膚5に温感刺激を付与するための温感刺激成分を含有する。
【0015】
図1Aのような袋体1は、ベースシート13と、カバー材12とを更に備える。ベースシート13はカバー材12よりも低い通気性の材料を備えることが好ましい。このようなベースシート13は1種類の材料から形成されてもよいし、複数の材料から形成されてもよい。ベースシート13はベース本体15を備える。ベースシート13が1種類の材料から形成される場合、プラスチックフィルムや金属蒸着フィルム等のフイルム材料から形成されたベース本体15をベースシート13にすることができる。また、ベースシート13が複数の材料から形成される場合、ベースシート13は、ベース本体15の他に、フィルムコートを備えるとよい。このようなベースシート13は、ベース本体15の少なくとも片面にフィルムコートされているとよい。フィルムコートしてベースシート13を作製するにあたって、例えば、樹脂製フィルムとベース本体15とを加熱加圧成形で一体にしてもよいし、樹脂製塗料によりベース本体15における塗布面全体を覆うようにして塗布してもよい。ベース本体15は、シート状の材料から形成されていれば特に限定されないが、例えば、不織布、紙、布が挙げられる。ベース本体15の一例として挙げられている不織布は、例えば機械的又は化学的作用によって、繊維を織らずに絡み合わせた布状の材料である。
【0016】
カバー材12は、カバー本体18と、その外面(塗布面)17に形成された接触層3とを備える。カバー本体18は、ベースシート13よりも高い通気性をカバー材12に付与するシート状の材料から形成されていれば特に限定されないが、例えば不織布が挙げられる。このような不織布は、例えば機械的又は化学的作用によって、繊維を織らずに絡み合わせた布状の材料となる。
【0017】
接触層3は塗料からなり、この塗料は温感刺激成分を含有する。温感刺激成分を含む塗料を、例えばグラビア印刷で、カバー本体18の塗布面17となる片面に直接塗布して接触層3を形成することができる。グラビア印刷して接触層3を形成する場合、作業現場で温感刺激成分を含有する塗料を飛散させ難くすることができる。カバー本体18に接触層3を形成するにあたって、塗料はlmのカバー本体18に対して2g〜8gで塗布されていることが好ましい。このようにして接触層3が形成されていると、皮膚5から排出され、且つ老廃物を含有する体液が、カバー材12を通過することが可能になる。
【0018】
上述のように接触層3が温感刺激成分を含有することで、接触層3の主成分として含有される塗料が硬化して温感刺激成分を接触層3内に保持させ易くなる。このため、貼付部分の皮膚5に温感刺激を与えることができ、この温感刺激に基いて接触層3が接している皮膚5付近における血流の促進を図ることができる。
【0019】
温感刺激成分を接触層3に含有させるにあたって、100質量部の塗料に対して5.0質量部よりも多い温感刺激成分を配合させていることが好ましく、更に好ましくは7質量部以上であり、まだ更に好ましくは10質量部以上である。温感刺激成分の含有量について、その上限は特に限定されないが、温感刺激成分の含有量の増加に伴って刺激が強くなりすぎる傾向があるため、実用上、20質量部にすることができる。
【0020】
温感刺激成分は、例えば、バニリルブチルエーテルであってもよいし、ノニル酸ワニリルアミドであってもよい。また温感刺激成分の他例として、温感刺激成分を内包させたマイクロカプセルを挙げることができる。
【0021】
接触層3の塗料は樹脂成分を含有する。つまり、塗料は樹脂成分を温感刺激成分の他に含有する。樹脂成分は、体内の老廃物を吸収し、且つ皮膚5から排出される体液で、接触層3に吸湿性を付与する材料であるとよい。接触層3が吸湿性を有することで、接触層3の水分が作用することにより温感刺激成分が使用部分の皮膚5に温感刺激を与えやすくなる。
【0022】
上述の樹脂成分として、例えば、ウレタン系樹脂、酢ビウレタン樹脂(酢酸ビニルウレタン系樹脂)が挙げられる。酢ビウレタン樹脂は、酢酸ビニル樹脂とウレタン樹脂とを混合させたもの、あるいは酢酸ビニル樹脂をウレタン化合物で架橋したもの(水性ビニルウレタン樹脂)であるとよい。樹脂成分が酢ビウレタン樹脂である場合(接触層3が酢ビウレタン樹脂を含有する場合)、温感刺激成分による温感刺激を更に与えやすくなる傾向がある。これは樹脂成分が硬化した状態の分子構造に酸素原子が豊富に含まれていることから、硬化した樹脂成分内で極性が生じて接触層3が体液の水分を吸収しやすくなっていると考えられる。このため接触層3の水分が温感刺激成分に更に作用しやすくなり、接触層3と接触する皮膚5に温感刺激を更に与えやすくなっていると考えられる。
【0023】
また、接触層3を形成する条件に応じて、塗料に硬化剤、希釈剤等の各種添加剤を適宜配合させることができる。
【0024】
本実施形態に係る貼付シート10では、接触層3が設けられたカバー材12とベースシート13とから一体の袋体1が形成されているとよい。カバー材12とベースシート13とを一体に形成するにあたって、例えばロール方式の加熱加圧成形を経て、カバー本体18の外周縁14とベースシート13の外周縁16とを接着させるとよい。カバー材12とベースシート13と一体になった状態で、外周縁14の形状は外周縁16の形状と同一になっているとよい。ここで「同一」とは、外周縁14と外周縁16との厳密な形状関係ではなく、事実上同一となる形状関係を意味する。上述のようにカバー材12とベースシート13とから一体の袋体1が形成されることで、充填材2は、カバー材12とベースシート13とで挟まれて、袋体1の内部に収容される。袋体1の内部に充填材2を収容させるにあたって、平面視でカバー材12及びベースシート13の外周縁14、16よりも内側に充填材2を配置させているとよい。
【0025】
充填材2は、接触層3の樹脂成分よりも体液の吸収性が高い吸収成分を備える。体液の吸収性において充填材2が接触層3よりも高くなることで、皮膚5からの体液を充填材2(吸収成分)が接触層3よりも優位に吸収しやすくなる。
【0026】
また、皮膚からの体液を吸収した状態の接触層3と吸収成分とを比較して、接触層3は吸収成分よりも固い剛性を有することが好ましい。このような接触層3が、体液を吸収した状態で、吸収成分の剛性よりも固くすることで、接触層3が体液を吸収しても過剰に膨潤をさせ難くすることができる。接触層3の過剰な膨潤を抑制することで、温感刺激成分を体液と共に充填材2に拡散させ難くすることができる。温感刺激成分の充填材2への拡散が抑制されることで、接触層3からの温感刺激を可能な限り長く持続させることができる。なお、接触層3は粘着層として機能しなくてもよい。
【0027】
上述の吸収成分としては、一般的に炎症等の身体への負担が少ないと考えられている天然あるいは合成の親水性高分子を用いることができる。天然の親水性高分子には、デキストリン、澱粉、セルロースタピオカ、キサンタンガム、グアガム、ゲランガム、キトサン等の食物繊維を用いることができる。セルロースには常温では難水溶性であっても体温等の熱が加わると水溶性(易水溶性)に変化するものや常温で水溶性を有するものがあるが、本実施形態の貼付シート10では、吸収成分に、上記何れのセルロースも用いることができる。合成の親水性高分子には、PVA(ポリビニルアルコール)やPVP(ポリビニルピロリドン)、スメクタイトなどを用いることができる。
【0028】
充填材2は吸収成分の他に酸性成分を含有することができる。酸性成分としては、例えば、木酢液や竹酢液が挙げられる。充填材2が酸性成分を含有する場合、この酸性成分は上述の温感刺激成分と異なる成分として充填材2に配合することができる。
【0029】
また、充填材2を調製するにあたって、充填材2を構成する材料の各々を所定の割合で配合してブレンダー内で混合することができる。
【0030】
本実施形態に係る貼付シート10によれば、袋体1の外面17に温感刺激成分を含有する接触層3が形成されるので、温感刺激が接触層3から皮膚に与えやすくなる。温感刺激を与えやすくすると、接触層3が接した少なくとも皮膚5周辺における体内の血流の促進を図ることが可能になる。
【0031】
また、図2のような貼付シート10で使用時の実感を得るために、温感刺激成分を配合して充填材2を作製することが考えられる。このような充填材2は乾燥状態になっていることから、未使用の袋体1から充填材2が飛散し、温感刺激成分が目や呼吸器等での粘膜部分に刺激を与える可能性がある。そこで、図1Aのように袋体1の外面17に接触層3を形成すると、この接触層3が温感刺激成分を含有するので、充填材2の飛散に起因する上記可能性を生じ難くすることができる。また、図2の別形態として、貼付シート10と、温感刺激成分を配合させたジェルやクリーム等のペーストとを別々に作製し、このペーストを使用直前に袋体1の外面17に指先等で塗布することが考えられる。このようなペーストは塗布後の指先に付着したままになる場合がある。このようにして塗布されずに残ったペーストは目や呼吸器等の粘膜部分に付着して温感刺激成分による刺激を与える可能性がある。そこで、図1Aのように袋体1の外面17に接触層3を形成すると、この接触層3が温感刺激成分を含有するので、指先等に残ったペーストに起因する上記可能性も生じ難くすることができる。
【0032】
図1A及び図1Bのような本実施形態に係る貼付シート10はシール材4を備えてもよい。シール材4は、シール本体41と、シール本体41の片面に形成された粘着層42を備える。シール本体41は、通気性を有するシート状の材料から形成され得る。シール本体41の材料としては、例えば、織布、不織布、紙、プラスチックシートが挙げられる。粘着層42は被着体と接着するように構成されていれば、粘着層42に粘着性を付与する公知の材料から適宜選択することができる。例えば、粘着層42は耐水性及び粘着性を付与する材料から形成されるとよい。このようにして粘着層42を設けることで、シール材4は被着体と接着することとなる。本実施形態の一例では、被着体はベースシート13及び皮膚5になる。シール材4を用いて袋体1を皮膚5に貼付する場合、粘着層42の一部とベースシート13とを接着させる。このようにして露出した粘着層42の残部(露出部)と接触層3とを皮膚5に貼付するとよい。
【0033】
なお、本実施形態に係る貼付シート10の未使用時には、粘着層42の露出部と接触層3とを任意の剥離シートで覆うことにより、保存可能になっていてもよい。
【0034】
また、袋体1とシール材4とが別々に用意されてもよい。この場合、使用直前に、袋体1とシール材4とを、上記のように接着させることで本実施形態に係る貼付シート10を皮膚5に貼付することができる。
【0035】
別例として、本実施形態に係る貼付シート10がシール材4を備えない場合、包帯や固定ネット等の固定材を適宜選択し、この固定材を用いて、接触層3を皮膚5に接触させて袋体1を貼付させることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0037】
下記説明の実施例及び比較例では、ベースシート13と、カバー本体18と、充填材2、シール材4とをそれぞれ下記材料を用いた。
【0038】
ベースシート13:日本製紙株式会社製
カバー本体18:シンワ株式会社製
シール材4:株式会社ユメックス製
【0039】
<充填材2の製造例>
吸収成分として50質量部のデキストリンと40質量部の可溶性澱粉、酸性成分として5質量部の木酢液、3質量部の天然塩(塩化ナトリウムや塩化マグネシウムなどのミネラル塩を含む粉末)、1質量部のヨモギの粉末、0.5質量部の甘草エキス、及び0.5質量部のウコンの粉末を均一に混合し、これを乾燥粉末にして充填材2を調製した。
【0040】
<実施例1>
樹脂成分として100質量部のウレタン系樹脂(大阪印刷インキ製造(株)製GV不織布;20質量%+大阪印刷インキ製造(株)製GV不織布インキ用メジウム;80質量%)、10質量部の硬化剤(大阪印刷インキ製造(株)製硬化剤M、化合物名;イソシアネート)、30質量部の希釈剤(大阪印刷インキ(株)社製GV不織布用#2溶剤、トルエン含有剤)、及び温感刺激成分として8質量部のバニリルブチルエーテル(高砂香料(株)製)を混合して塗料を調製した。この塗料をグラビア印刷機((株)日東グラビア製)に供し、カバー本体18の片面に塗料を印刷した。そして印刷された塗料を硬化させることで接触層3が設けられたカバー材12を作製した。カバー本体18に塗料を塗布する際、塗料の塗布量が1mのカバー本体18に対して4gとなるように、予め印刷版に模様を作製した。そして、カバー材12の外周縁14とベースシート13の外周縁16とを加熱加圧ロールにより一体にしつつ内部に充填材2を内包させることで袋体1を作製した。この袋体1のベースシート13をシール材4における粘着層42の一部と接着させて貼付シート10を作製した。
【0041】
<比較例1>
2質量部のバニリルブチルエーテルを配合した以外は、実施例1と同様にして貼付シート10を作製した。
【0042】
<比較例2>
6質量部のバニリルブチルエーテルを配合した以外は、実施例1と同様にして貼付シート10を作製した。
【0043】
<比較例3>
140質量部の希釈剤(大阪印刷インキ製造(株)製GV不織布用#2溶剤)及び8質量部のバニリルブチルエーテルを混合して塗料を調製し、霧吹き器で塗料をカバー本体18に塗布した以外は、実施例1と同様にして貼付シート10を作製した。
【0044】
実施例1及び比較例1−3の配合割合、及び貼付シート10を用いた結果を表1に示す。また表1の結果は下記方法に基いて評価された。表1で示される数値の単位は質量部とする。
【0045】
【表1】
【0046】
<実施例2>
樹脂成分として100質量部の酢酸ビニルウレタン系樹脂(東洋インキ(株)製VMハードナー;75質量%+東洋インキ(株)製R金Tメジウム;25質量%)、3質量部の希釈剤(東洋インキ(株)製LP溶剤SC、トルエン含有シンナー)、及び温感刺激成分として6質量部のバニリルブチルエーテルを混合して塗料を調製した。これ以外は実施例1と同様にして貼付シート10を作製した。
【0047】
<実施例3>
8質量部のバニリルブチルエーテルを配合した以外は、実施例2と同様にして貼付シート10を作製した。
【0048】
<実施例4>
12質量部のバニリルブチルエーテルを配合した以外は、実施例2と同様にして貼付シート10を作製した。
【0049】
<実施例5>
15質量部のバニリルブチルエーテルを配合した以外は、実施例2と同様にして貼付シート10を作製した。
【0050】
<比較例4>
2質量部のバニリルブチルエーテルを配合した以外は、実施例2と同様にして貼付シート10を作製した。
【0051】
<比較例5>
103質量部の希釈剤(東洋インキ(株)製LP溶剤SC)、及び15質量部のバニリルブチルエーテルを混合して塗料を調製し、霧吹き器で塗料をカバー本体18に塗布した以外は、実施例2と同様にして貼付シート10を作製した。
【0052】
実施例2−5及び比較例4、5の配合割合、及び貼付シート10を用いた結果を表2に
示す。また表2の結果は下記方法に基いて評価されたものである。表2で示される数値の単位は質量部とする。
【0053】
【表2】
【0054】
<温感刺激の評価>
実施例1−5及び比較例1、2、4の各々の貼付シート10に対して5人のモニターで得られた温感刺激を下記判定基準に準じて評価した。貼付シート10による温感刺激を評価する際、貼付シート10をモニターの足裏に3時間貼付した。
×:温感刺激を感じたのが1名以下であった。
△:温感刺激を感じたのが2〜3名であった。
○:温感刺激を感じたのが4名であった。
◎:温感刺激を感じたのがモニター全員であった。
【0055】
<接触層3による拡散抑制>
実施例1−5及び比較例1−5の各々の貼付シート10における温感刺激成分の拡散度合を評価した。内包されている充填材2の乾燥重量に対し、体液の代わりに、2倍質量の生理食塩水(食塩濃度0.9w/v%)を接触層3の上方から滴下して充填材2に吸収させた。次に、接触層3をポリエチレンフィルムで覆ってから各貼付シート10を37℃の恒温室内で6時間静置させた。次に各貼付シート10から充填材2を取り出し、その充填材2の各湿重量を測定した。次に、各充填材2をゆっくり撹拌してから1gを取り出し、それぞれに20mlの蒸留水を加えて十分に分散させた。この分散液にヘキサン1mlを添加して十分に混合させた。その後、この混合液を水溶液とヘキサン液とに分離させ、このヘキサン液だけを取り出してガスクロマトグラフィーに供した。ガスクロマトグラフィーで得られた結果に基いて下記拡散率(%)を算出し、拡散率が10%以下の場合を○とし、それ以外を×とした。
拡散率(%)=[1−{(A−B)/A}]×100
ここで、Aは使用前の接触層3における温感刺激成分の量(g)であり、Bは生理食塩水を吸収した充填材2における温感刺激成分の量(g)である。
【0056】
<評価結果>
実施例1−5は、比較例1、2、4に比べて良好な温感刺激を得ることが示された。また、樹脂成分を含有していない比較例3、5は、他の例と比べて温感刺激成分が充填材2に拡散する傾向が見出された。
【符号の説明】
【0057】
10 貼付シート
1 袋体
17 外面
2 充填材
3 接触層
5 皮膚
図1
図2