特許第6116075号(P6116075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6116075電気化学測定方法、電気化学測定装置及びトランスデューサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6116075
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】電気化学測定方法、電気化学測定装置及びトランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/30 20060101AFI20170410BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G01N27/30 F
   G01N27/416 336B
   G01N27/416 336M
【請求項の数】22
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-228042(P2015-228042)
(22)【出願日】2015年11月20日
【審査請求日】2015年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】林 泰之
(72)【発明者】
【氏名】國方 亮太
(72)【発明者】
【氏名】須田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】伊野 浩介
(72)【発明者】
【氏名】井上 久美
(72)【発明者】
【氏名】末永 智一
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−227089(JP,A)
【文献】 特開2013−092437(JP,A)
【文献】 特開2005−148058(JP,A)
【文献】 特表2003−532090(JP,A)
【文献】 KOSUKE INO et al.,Electrochemical Device with Interdigitated Ring Array Electrodes for Investigating the Relationship between Cardiomyocyte Differentiation from Embryonic Stem Cells and Alkaline Phosphatase Activity,Electrochemistry,2013年,Vol.81, No.9,p.682-687
【文献】 MUSTAFA SEN et al.,LSI-based amperometric sensor for real-time monitoring of embryoid bodelis,Biosensors and Bioelectronics,2013年,Vol.48,p.12-18
【文献】 YUSUKE KANNO et al.,Simulation Analysis of Positional Relationship between Embryoid Bodies and Sensors on an LSI-based Amperometric Device for Electrochemical Imaging of Alkaline Phosphatase Activity,Analytical Sciences,2015年 7月10日, Vol.31,p.715-719
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
G01N 33/48−33/98
C12M 1/00−3/10
C12Q 1/00−3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物を含む電解液中に、前記測定対象物と電子の授受を行って酸化還元反応をさせる作用極と、前記作用極と外部電源を介してつながった対極とが設けられ、前記作用極と前記対極との間に測定用電圧を印加して前記測定対象物の量に応じて前記作用極と前記対極との間に流れる電流を測定する電気化学測定方法において、
前記電解液中に測定対象物消却用電極を設け、
前記測定対象物消却用電極と前記対極との間に前記測定用電圧と同極性の消却用電圧を印加して前記測定対象物を酸化もしくは還元することで消却する測定対象物消却ステップと、
前記消却用電圧の印加停止後に新しい測定対象物を拡散させる測定対象物拡散ステップと、
前記新しい測定対象物を拡散させた後に前記作用極と前記対極との間に前記測定用電圧を印加して前記電流を測定する電気化学測定ステップとを実行することを特徴とする電気化学測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の電気化学測定方法において、
前記測定対象物消却ステップでは前記作用極にも前記消却用電圧を印加することを特徴とする電気化学測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電気化学測定方法において、
前記測定対象物消却用電極は前記作用極と同一平面上に設けられていることを特徴とする電気化学測定方法。
【請求項4】
請求項3記載の電気化学測定方法において、
前記測定対象物消却用電極はリング状をなし、前記作用極のまわりに配置されていることを特徴とする電気化学測定方法。
【請求項5】
請求項3記載の電気化学測定方法において、
前記測定対象物消却用電極は格子状をなし、前記作用極のまわりに配置されていることを特徴とする電気化学測定方法。
【請求項6】
請求項3記載の電気化学測定方法において、
前記測定対象物消却用電極は前記作用極のまわりに全面配置されていることを特徴とする電気化学測定方法。
【請求項7】
請求項1又は2記載の電気化学測定方法において、
前記測定対象物消却用電極は前記電解液中に3次元の広がりをもつ構造を有して設けられていることを特徴とする電気化学測定方法。
【請求項8】
請求項7記載の電気化学測定方法において、
前記測定対象物消却用電極は3次元格子状をなし、前記電解液中において前記作用極が設けられている面の上方に前記作用極から離間して配置されていることを特徴とする電気化学測定方法。
【請求項9】
請求項1又は2記載の電気化学測定方法において、
前記測定対象物消却用電極は、前記作用極と同一平面上に設けられた電極と、前記平面の上方に前記作用極から離間して配置され、3次元の広がりをもつ構造を有する電極とを合わせて持つ形状とされていることを特徴とする電気化学測定方法。
【請求項10】
電解液と前記電解液中で測定対象物を発生させる生体試料とを収容する電解液槽と、前記電解液槽に設けられ、前記測定対象物と電子の授受を行って酸化還元反応をさせる作用極と、前記電解液槽に設けられた対極と、前記作用極と前記対極との間に測定用電圧を印加する測定用電圧印加手段と、前記測定用電圧を印加している時に前記測定対象物の量に応じて前記作用極と前記対極との間に流れる電流を測定する電流測定手段とを備える電気化学測定装置において、
前記電解液槽に、前記測定対象物と電子の授受を行って酸化還元反応をさせる測定対象物消却用電極が設けられ、
前記作用極と前記対極との間に前記測定用電圧を印加していない時に、前記測定対象物消却用電極と前記対極との間に前記測定用電圧と同極性の消却用電圧を印加する消却用電圧印加手段を有していることを特徴とする電気化学測定装置。
【請求項11】
請求項10記載の電気化学測定装置において、
前記測定対象物消却用電極は前記作用極と同一平面上に設けられていることを特徴とする電気化学測定装置。
【請求項12】
請求項11記載の電気化学測定装置において、
前記測定対象物消却用電極はリング状をなし、前記作用極のまわりに配置されていることを特徴とする電気化学測定装置。
【請求項13】
請求項11記載の電気化学測定装置において、
前記測定対象物消却用電極は格子状をなし、前記作用極のまわりに配置されていることを特徴とする電気化学測定装置。
【請求項14】
請求項11記載の電気化学測定装置において、
前記測定対象物消却用電極は前記作用極のまわりに全面配置されていることを特徴とする電気化学測定装置。
【請求項15】
請求項10記載の電気化学測定装置において、
前記測定対象物消却用電極は前記電解液中に3次元の広がりをもつ構造を有して設けられていることを特徴とする電気化学測定装置。
【請求項16】
請求項15記載の電気化学測定装置において、
前記測定対象物消却用電極は3次元格子状をなし、前記電解液中において前記作用極が設けられている面の上方に前記作用極から離間して配置されていることを特徴とする電気化学測定装置。
【請求項17】
請求項10記載の電気化学測定装置において、
前記測定対象物消却用電極は、前記作用極と同一平面上に設けられた電極と、前記平面の上方に前記作用極から離間して配置され、3次元の広がりをもつ構造を有する電極とを合わせて持つ形状とされていることを特徴とする電気化学測定装置。
【請求項18】
電解液と前記電解液中に浸漬される生体試料とを収容することができる電解液槽がLSIチップ上に搭載されてなり、前記生体試料から発生する測定対象物の電気化学測定に用いるトランスデューサであって、
前記電解液槽の底面に画定されたセンサ領域には、アレイ状に配列されて、前記LSIチップに設けられている複数の第1の電極と、前記複数の第1の電極のそれぞれのまわりに位置するように前記LSIチップに設けられている第2の電極とが位置しており、
前記センサ領域上には、3次元格子状をなす第3の電極が設けられていることを特徴とするトランスデューサ。
【請求項19】
請求項18記載のトランスデューサにおいて、
前記第2の電極はリング状電極群によって構成されていることを特徴とするトランスデューサ。
【請求項20】
電解液と前記電解液中に浸漬される生体試料とを収容することができる電解液槽がLSIチップ上に搭載されてなり、前記生体試料から発生する測定対象物の電気化学測定に用いるトランスデューサであって、
前記電解液槽の底面に画定されたセンサ領域には、アレイ状に配列されて、前記LSIチップに設けられている複数の第1の電極と、前記複数の第1の電極のそれぞれのまわりに位置するように前記LSIチップに設けられている第2の電極とが位置しており、
前記第2の電極は格子状とされていることを特徴とするトランスデューサ。
【請求項21】
電解液と前記電解液中に浸漬される生体試料とを収容することができる電解液槽がLSIチップ上に搭載されてなり、前記生体試料から発生する測定対象物の電気化学測定に用いるトランスデューサであって、
前記電解液槽の底面に画定されたセンサ領域には、アレイ状に配列されて、前記LSIチップに設けられている複数の第1の電極と、前記複数の第1の電極のそれぞれのまわりに位置するように前記LSIチップに設けられている第2の電極とが位置しており、
前記第2の電極は前記第1の電極と導通することなく、前記センサ領域に全面形成されていることを特徴とするトランスデューサ。
【請求項22】
請求項20又は21記載のトランスデューサにおいて、
前記センサ領域上には、3次元格子状をなす第3の電極が設けられていることを特徴とするトランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は細胞や細胞塊、組織片その他の生体試料及び生体関連物質を含む非生体試料(以下、本願では一括して単に「生体試料」という。)に由来する化学物質(化学反応生成物)を測定する電気化学測定方法、電気化学測定装置及び電気化学測定に用いるトランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞や細胞塊、組織片等の生体試料で起こる化学反応によって生成される物質を定量することは、医療、創薬等の現場において生体試料の生死判定、機能性評価等に必要な技術である。生体試料から放出される化学反応生成物の定量方法の1つに電気化学測定があり、例えば非特許文献1では肝細胞の分化の進行状態の観察を電気化学測定によって行っている。
【0003】
電気化学測定は、外部電源とつながった2つ以上の電極が挿入されている電解液内の測定対象物に対し、電極を介して測定対象物から電子を奪うか、もしくは測定対象物へ電子を供与することで、酸化もしくは還元反応をおこさせると同時に、電極間を流れる電流を測定して酸化還元反応の有無、即ち測定対象物の有無を検出する方法である。
【0004】
一般的な電気化学測定装置は、測定対象物と電子の授受を行って酸化還元反応をさせる作用極、作用極と外部電源を介してつながり、作用極で生じる電子移動を補償する対極、測定系内のイオンを介した電子の移動を可能とし、測定系全体を閉回路とするための電解液、電圧の基準を取るための参照極等で構成される。
【0005】
非特許文献1では、マウスの胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES細胞)より作製したES細胞塊である胚様体(embryoid body:EB)に対し、ES細胞の細胞膜に存在する未分化マーカーであるアルカリホスファターゼ(Alkaline Phosphatase : ALP)を電気化学測定にて間接的に測定している。
【0006】
機能が限定されていない幹細胞が、機能が限定された体細胞に変化する反応は、一般に分化とよばれており、分化が起こっていないことを示す物質は未分化マーカーと呼ばれている。
【0007】
ALPは細胞の未分化マーカーであると同時に、アルカリ性条件下でリン酸エステル化合物を加水分解する性質をもつ。ALPは例えば、リン酸エステル化合物p−アミノフェニルホスフェート(p-aminophenyl phosphate:PAPP)をp−アミノフェノール(p-aminophenol:PAP)へ変化させる反応の酵素として働く。酵素反応によって生成されたPAPは電気化学的活性のある物質であり、参照極を基準として作用極へ電圧印加することによって、p−キノンイミン(p-quinone imine : PQI)へ酸化される。即ち、酵素反応、酸化還元反応の2回の反応によって、ALPの存在は電気化学測定における電流値として検出される。
【0008】
非特許文献1では、φ40μmの作用極を250μmピッチで20×20=400個、アレイ状に備えた多点電極電流測定装置を用いて測定している。この装置は400個の電極から得られる電極電流値により数μm〜数百μmの生体試料の反応の様子を2次元的かつ経時的にイメージングしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】M.Sen,et al.,“Biosensors and Bioelectronics” 2013年,48巻,p.12−18
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した非特許文献1における測定は、
・PAPPを4.7×10−3mol/L含有した電解液にマウスEBを投入
・投入直後から酵素反応が開始し、細胞膜内ALPによってPAPPはPAPへ変化
・PAPはEB表面から電極付近まで拡散し、電極表面に到達
・拡散が安定するのを待ち、電極に電圧を印加
・PAPはPQIへ変化
・電極間電流値を取得
といった過程で行われており、図1はこの過程を横軸を時間として示したものである。
【0011】
図1において、EBを電解液に投入し、酵素反応が始まった瞬間から電圧印加までの時間Aは、EB表面からPAPが拡散を開始し、電解液内のPAP濃度分布が安定する時間を想定して設けられており、電圧印加から電流値を取り込むまでの時間Bは、電極でおこる酸化還元反応によって電極付近のPAP濃度分布の変化が安定する時間を想定して設けられている。
【0012】
ところで、このような過程を経るEBのALP活性測定では、測定の不確かさが生じうるものとなっている。
【0013】
例えば、複数のEBを同時測定する場合において、ピペット等でアレイ状の電極上へEBを配置する際、複数回に分けて配置を行った場合にはEBがPAPPに触れるタイミングに違いが生じるため、酵素反応開始から電圧印加までの時間Aは、各々のEBで違い、EBまわりのPAP濃度分布及び電流値は仮に全てのEBが同様の活性(単位時間あたりのPAP放出速度)を持っていたとしても違う値を示す。即ち、測定電流値には、EBの持つALP活性の大きさの違いと、酵素反応開始から電圧印加までの時間Aの長さによる違いの双方が混在することになる。
【0014】
また、仮に、複数のEBを同時にPAPP溶液に入れたとしても、ある時に行ったEB群の測定結果と、違う時に行ったEB群の測定結果は、例えばEB投入時の作業者の入れ方に基因する液揺れの違いなどにより、それらEB群間の測定結果の比較が難しいことが考えられる。
【0015】
この発明の目的はこのような問題に鑑み、複数回繰り返される測定の各回間及び1回で複数のサンプルを測定する場合の各サンプル間において、測定条件の均一化を図れるようにし、よって正確な測定を可能とし、複数回測定の各回間及び1回の測定の各サンプル間の測定結果の比較を正確に行えるようにした電気化学測定方法、電気化学測定装置及びその電気化学測定に用いるトランスデューサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明によれば、測定対象物を含む電解液中に、測定対象物と電子の授受を行って酸化還元反応をさせる作用極と、作用極と外部電源を介してつながった対極とが設けられ、作用極と対極との間に測定用電圧を印加して測定対象物の量に応じて作用極と対極との間に流れる電流を測定する電気化学測定方法において、電解液中に測定対象物消却用電極を設け、測定対象物消却用電極と対極との間に測定用電圧と同極性の消却用電圧を印加して測定対象物を酸化もしくは還元することで消却する測定対象物消却ステップと、消却用電圧の印加停止後に新しい測定対象物を拡散させる測定対象物拡散ステップと、新しい測定対象物を拡散させた後に作用極と対極との間に測定用電圧を印加して電流を測定する電気化学測定ステップとを実行する。
【0017】
請求項2の発明では請求項1の発明において、測定対象物消却ステップでは前記作用極にも消却用電圧を印加する。
【0018】
請求項3の発明では請求項1又は2の発明において、測定対象物消却用電極は作用極と同一平面上に設けられる。
【0019】
請求項4の発明では請求項3の発明において、測定対象物消却用電極はリング状をなし、作用極のまわりに配置される。
【0020】
請求項5の発明では請求項3の発明において、測定対象物消却用電極は格子状をなし、作用極のまわりに配置される。
【0021】
請求項6の発明では請求項3の発明において、測定対象物消却用電極は作用極のまわりに全面配置される。
【0022】
請求項7の発明では請求項1又は2の発明において、測定対象物消却用電極は電解液中に3次元の広がりをもつ構造を有して設けられる。
【0023】
請求項8の発明では請求項7の発明において、測定対象物消却用電極は3次元格子状をなし、電解液中において作用極が設けられている面の上方に作用極から離間して配置される。
【0024】
請求項9の発明では請求項1又は2の発明において、測定対象物消却用電極は、作用極と同一平面上に設けられた電極と、前記平面の上方に作用極から離間して配置され、3次元の広がりをもつ構造を有する電極とを合わせて持つ形状とされる。
【0025】
請求項10の発明によれば、電解液と電解液中で測定対象物を発生させる生体試料とを収容する電解液槽と、電解液槽に設けられ、測定対象物と電子の授受を行って酸化還元反応をさせる作用極と、電解液槽に設けられた対極と、作用極と対極との間に測定用電圧を印加する測定用電圧印加手段と、測定用電圧を印加している時に測定対象物の量に応じて作用極と対極との間に流れる電流を測定する電流測定手段とを備える電気化学測定装置において、電解液槽に測定対象物と電子の授受を行って酸化還元反応をさせる測定対象物消却用電極を設け、作用極と対極との間に測定用電圧を印加していない時に、測定対象物消却用電極と対極との間に測定用電圧と同極性の消却用電圧を印加する消却用電圧印加手段を有するものとされる。
【0026】
請求項11の発明では請求項10の発明において、測定対象物消却用電極は作用極と同一平面上に設けられる。
【0027】
請求項12の発明では請求項11の発明において、測定対象物消却用電極はリング状をなし、作用極のまわりに配置される。
【0028】
請求項13の発明では請求項11の発明において、測定対象物消却用電極は格子状をなし、作用極のまわりに配置される。
【0029】
請求項14の発明では請求項11の発明において、測定対象物消却用電極は作用極のまわりに全面配置される。
【0030】
請求項15の発明では請求項10の発明において、測定対象物消却用電極は電解液中に3次元の広がりをもつ構造を有して設けられる。
【0031】
請求項16の発明では請求項15の発明において、測定対象物消却用電極は3次元格子状をなし、電解液中において作用極が設けられている面の上方に作用極から離間して配置される。
【0032】
請求項17の発明では請求項10の発明において、測定対象物消却用電極は、作用極と同一平面上に設けられた電極と、前記平面の上方に作用極から離間して配置され、3次元の広がりをもつ構造を有する電極とを合わせて持つ形状とされる。
【0033】
請求項18の発明によれば、電解液と電解液中に浸漬される生体試料とを収容することができる電解液槽がLSIチップ上に搭載されてなり、生体試料から発生する測定対象物の電気化学測定に用いるトランスデューサは、電解液槽の底面に画定されたセンサ領域に、アレイ状に配列されてLSIチップに設けられている複数の第1の電極と、複数の第1の電極のそれぞれのまわりに位置するようにLSIチップに設けられている第2の電極とが配置され、センサ領域上には3次元格子状をなす第3の電極が設けられているものとされる。
【0034】
請求項19の発明では請求項18の発明において、第2の電極はリング状電極群によって構成されているものとされる。
【0035】
請求項20の発明によれば、電解液と電解液中に浸漬される生体試料とを収容することができる電解液槽がLSIチップ上に搭載されてなり、生体試料から発生する測定対象物の電気化学測定に用いるトランスデューサは、電解液槽の底面に画定されたセンサ領域に、アレイ状に配列されてLSIチップに設けられている複数の第1の電極と、複数の第1の電極のそれぞれのまわりに位置するようにLSIチップに設けられている第2の電極とが配置され、第2の電極は格子状とされる。
【0036】
請求項21の発明によれば、電解液と電解液中に浸漬される生体試料とを収容することができる電解液槽がLSIチップ上に搭載されてなり、生体試料から発生する測定対象物の電気化学測定に用いるトランスデューサは、電解液槽の底面に画定されたセンサ領域に、アレイ状に配列されてLSIチップに設けられている複数の第1の電極と、複数の第1の電極のそれぞれのまわりに位置するようにLSIチップに設けられている第2の電極とが配置され、第2の電極は第1の電極と導通することなく、センサ領域に全面形成されているものとされる。
【0037】
請求項22の発明では請求項20又は21の発明において、センサ領域上には3次元格子状をなす第3の電極が設けられているものとされる。
【発明の効果】
【0038】
この発明による電気化学測定方法は、電解液中に生成、拡散した測定対象物を一旦、消却した後に、再度、測定対象物を生成、拡散させて測定を行うものとなっており、またこの発明による電気化学測定装置はこのような測定を行えるものとなっている。よって、この発明による電気化学測定方法、電気化学測定装置によれば、測定対象物の生成、拡散条件の均一化を図ることができ、即ち測定条件の均一化を図ることができ、正確な測定が可能となる。
【0039】
これにより、例えば複数回繰り返される測定の各回間や1回で複数のサンプル(生体試料)を測定する場合の各サンプル間の測定結果の比較を正確に行うことが可能となる。
【0040】
また、この発明によるトランスデューサはこのような電気化学測定に用いて好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】電気化学測定の従来の測定過程の一具体例を示すチャート。
図2図1に示した電気化学測定における酵素反応の時間Aの違いによって生じる電流値の計算結果の違いを示すグラフ。
図3】この発明における測定対象物消却用電極の第1の例を示す斜視図。
図4】この発明における測定対象物消却用電極の第2の例を示す斜視図。
図5図4に示した測定対象物消却用電極の平面図。
図6】Aは一部省略した図5の部分拡大図、Bは省略せずに示したAに対応する正面図。
図7】この発明による電気化学測定の測定過程を従来の測定過程と共に示したチャート。
図8】第1の例の測定対象物消却用電極による測定対象物消却ステップを実行した場合の電流値の計算結果を示すグラフ。
図9】第2の例の測定対象物消却用電極による測定対象物消却ステップを実行した場合の電流値の計算結果を示すグラフ。
図10】第3の例の測定対象物消却用電極による測定対象物消却ステップを実行した場合の電流値の計算結果を示すグラフ。
図11】対流がある場合の測定対象物消却ステップの実行有無による電流値の計算結果の違いを示すグラフ。
図12】この発明における測定対象物消却用電極の第4の例を示す斜視図。
図13】この発明による測定対象物消却用電極の第5の例を示す斜視図。
図14】この発明による電気化学測定装置の一実施例の構成を説明するための図。
図15】Aはこの発明によるトランスデューサの一実施例を示す平面図、Bはその断面図。
図16図15Aに示したトランスデューサの斜視図。
図17】Aは図4に示した測定対象物消却用電極を構成するための具体的部品形状を示す斜視図、BはAの部品を用いて構成された測定対象物消却用電極の斜視図。
図18図17Bに示した測定対象物消却用電極が設置されたトランスデューサの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
最初に、マウスEBのALP活性測定を例として、有限要素法による数値解析を行った結果について説明する。数値解析ソフトとして、COMSOL Multiphysics Ver4.4を用いた。以下に、解析モデル形状、境界条件を示す。
【0043】
<解析モデル形状>
2.3mm×2.3mm×1.3mmの解析空間を用意し、φ40μmの電極(作用極)を解析空間底面にアレイ状に設置した。電極の厚みは、十分無視できる程度の値として設定上、1nmを指定した。
【0044】
2.3mm×2.3mmの解析空間底面の中心に原点を置き、電極アレイ全体の中心と解析空間底面の中心を合わせて電極を250μmピッチで8×8=64個設置し、そのうち中心付近の4行目5列目の電極上へ中心を合わせてφ300μmのEBを模した球体を配置した。球体と直下の電極の間隔は解析メッシュの切りやすさを考慮し、3μmの距離をとった。
【0045】
<境界条件>
解析空間内は濃度4.7×10−3mol/Lの基質pAPPを設定して空間内濃度初期値とし、解析空間4辺の壁と天井は、解析空間外が濃度4.7×10−3mol/Lの解放境界として設定した。EB表面(球体表面)は下記に示すミカエリス・メンテンの式(1)に従って、表面付近のPAPPの濃度に依存してPAPが放出される境界とし、酵素反応のモデルとした。
【0046】
【数1】
【0047】
v:PAP放出速度[mol/s]
[S]:基質PAPP濃度(4.7×10−3mol/L)
max:PAPP濃度最大時反応速度(3.33×10−12mol/s)
:ミカエリス・メンテン定数(1.7×10−3mol/L)
【0048】
PAPの酸化還元反応を表現する為、電極上では電圧印加時にPAP濃度をゼロとして設定し、PAP濃度勾配より電流値を計算した。電流値は電極に垂直な方向の濃度勾配に比例し、式(2)に従う。
【0049】
【数2】
【0050】
i:電極上の任意の点(x,y,z)における電流密度[A/m
C:任意の点(x,y,z)におけるPAP濃度[mol]
z:電極に垂直な成分
x,y:電極に水平な成分
F:ファラデー定数(96485C/mol)
D:酸化還元種PAP拡散係数(6.47×10−10/s)
n:反応電子数(n=2)
【0051】
なお、PAP濃度分布の影響を視覚的に分かりやすく評価するため、64個の電極の内、EBが載っている電極と同じ列の7個(Y軸に沿う7個)の電極の電流値を評価に使用した。
【0052】
最初に、図1に示した過程に従うものとし、酵素反応開始から電圧印加までの時間Aが3秒、電圧印加から電流値を取り込むまでの時間Bが0.1秒の場合の電流値と、時間Aが20秒、時間Bが0.1秒の場合の電流値を計算した。結果を図2に示す。図2に示すように酵素反応開始から電圧印加までの時間Aの違いが電流値に違いとなって現れた。なお、図2はEB直下の電極位置をy=0μmとし、EB直下の電極と両側3個ずつの電極からの電流値をプロットしている(後述する図8〜11のグラフも同様)。
【0053】
この発明は、電解液中に測定対象物消却用電極を設け、測定対象物消却用電極と対極との間に測定用電圧と同極性の消却用電圧を印加して測定対象物を酸化もしくは還元することで消却する測定対象物消却ステップと、消却用電圧の印加停止後に新しい測定対象物を拡散させる測定対象物拡散ステップと、新しい測定対象物を拡散させた後に作用極と対極との間に測定用電圧を印加して電流を測定する電気化学測定ステップとを実行するものであり、以下、数値解析に用いた測定対象物消却用電極の3つの形状(形状1〜3)について説明する。
【0054】
・形状1:作用極と同極性の測定対象物消却用電極を作用極と同一平面上に設ける。測定対象物消却用電極は作用極と導通しない程度の隙間をあけて作用極のまわりに全面配置。図3はこの測定対象物消却用電極を示したものであり、φ40μmの作用極10のまわりには同心の環状に20μmの隙間をあけて測定対象物消却用電極21が全面配置されている。図3中、31はφ300μmのEBを示す。EB31は作用極10の直上に位置している。
【0055】
・形状2:作用極と同極性の測定対象物消却用電極を3次元格子状として作用極の近傍に配置。図4〜6はこの測定対象物消却用電極22の配置、構成を示したものである。3次元格子はXY方向に沿った2次元格子をZ方向に3枚積層して構成されている。格子の太さは□30μm、ピッチは500μmとしている。250μmピッチの作用極10に対して図4〜6に示すような位置に配置した。なお、3枚の2次元格子のZ方向の間隔は100μmとした。
【0056】
・形状3:形状1と2を併用した構造。
【0057】
測定対象物消却用電極は、作用極と同じく、電圧印加時にPAP濃度がゼロとなるように解析境界条件を設定することで測定対象物消却用電極への電圧印加を再現した。
【0058】
図7(A)は上述の図2に示した計算結果の過程を示したものであり、図7(B)は測定対象物消却用電極による測定対象物消却ステップを含む過程、即ちこの発明による電気化学測定方法の過程を示したものである。
【0059】
酵素反応開始から3秒後と20秒後の状態に対し、作用極と測定対象物消却用電極に測定用電圧と同極性の消却用電圧を印加して10秒の測定対象物消却ステップ(PAP濃度分布消却ステップ)を実行した後に、消却用電圧の印加を停止し、再度、酵素反応を3秒起こさせて新しい測定対象物を拡散させる測定対象物拡散ステップを経た後に、作用極に測定用電圧を印加し、電気化学測定ステップを実行するものとし、0.1秒後の電流値を計算した。
【0060】
図8〜10は測定対象物消却用電極が形状1,形状2及び形状3の場合の電流値の計算結果をそれぞれ示したものである。
【0061】
測定対象物消却ステップ後の反応(測定対象物の生成、拡散・・・測定対象物拡散ステップ)は、測定対象物消却ステップ前の時間が3秒であるか、20秒であるかに関わらず、一定であるので、測定対象物消却ステップ前の時間が3秒、20秒の双方の結果が一致することが望ましい。形状1,2,3各々の結果は、図2に示した結果よりも十分に3秒と20秒の結果が近いものとなっている。
【0062】
次に、例えば電解液に対流が存在する場合、電解液の流れはEBの形成するPAP濃度分布を乱してしまい、測定に影響を与えることが考えられる。この点に関し、電解液に対流がある場合のこの発明による電気化学測定方法の効果について計算した結果について説明する。
【0063】
計算は下記3つのケース(ケース1〜3)について行った。
【0064】
・ケース1:酵素反応開始から電圧印加までの時間が10秒、電圧印加後0.1秒後の電流値
【0065】
・ケース2:酵素反応開始時に作用極の並びに対して平行な方向(Y方向)に対流が50μm/s存在する場合において、酵素反応開始から電圧印加までの時間が10秒、電圧印加後0.1秒後の電流値
【0066】
・ケース3:酵素反応開始時に作用極の並びに対して平行な方向(Y方向)に対流が50μm/s存在する場合で、10秒の対流の後、作用極及び作用極と同極性の測定対象物消却用電極を用いて10秒の測定対象物消却ステップを実行し、その後、消却用電圧の印加を停止して、再度、酵素反応をおこさせ、10秒の測定対象物拡散ステップを経た後に作用極に電圧を印加、電圧印加後0.1秒の電流値
【0067】
図11はこれらケース1〜3の電流値の計算結果を示したものであり、測定対象物消却ステップがなければ、対流によってケース2のように結果が歪み、本来の位置(EBが存在する位置)からずれた位置に電流値のピークが生じるのに対し、測定対象物消却ステップを実行したケース3ではケース1の本来得られるはずの電流値に近い電流値が得られることがわかり、対流や液揺れの影響を除去することが可能であることがわかる。
【0068】
以上数値解析を行った結果について説明したが、測定対象物を含む電解液中に、測定対象物と電子の授受を行って酸化還元反応をさせる作用極と、作用極と外部電源を介してつながった対極とを設け、作用極と対極との間に測定用電圧を印加して測定対象物の量に応じて作用極と対極との間に流れる電流を測定する電気化学測定において、上述したように測定対象物消却ステップを実行すれば、電解液中の少なくとも測定に影響を与える範囲内に存在していた測定対象物はすべて酸化又は還元されることで消却され、その生成及び拡散の過程は初期化されて電解液中の状態がリセットされることになる。よって、後続する測定対象物拡散ステップの時間を一定に制御することで、複数回繰り返される測定の各回間及び1回で複数のサンプルを測定する場合の各サンプル間において、測定対象物の生成、拡散の条件を均一化することができ、つまり測定条件の均一化を図ることが可能となる。
【0069】
また、このように測定対象物消却ステップを実行することにより、電解液の液揺れや対流等の影響を排除することができ、さらには測定対象物を発生させるサンプル(生体試料)を電解液に投入した後、測定者の望むタイミングで測定を行うことが可能である。
【0070】
なお、上記においては測定対象物消却用電極及び作用極の双方に消却用電圧を印加して測定対象物消却ステップを実行するものとしているが、例えば消却用電圧を測定対象物消却用電極だけに印加して測定対象物消却ステップを実行するものとしてもよい。
【0071】
測定対象物消却用電極の形状は上述した例に限らず、例えば図12図13に示したような形状としてもよい。図12では測定対象物消却用電極23はリング状とされて作用極10と同一平面上に設けられており、φ40μmの作用極10のまわりに配置されている。リング状をなす測定対象物消却用電極23の外径は例えばφ120μmとされ、内径は例えばφ80μmとされる。
【0072】
図13は測定対象物消却用電極を2次元格子状としたものであり、測定対象物消却用電極24は作用極10と同一平面上に設けられ、作用極10のまわりに作用極10を囲むように配置されている。この例では格子の幅は50μmとされ、ピッチは250μmとされている。
【0073】
測定対象物消却用電極はこれら図12及び図13に示した形状に加え、前述の図4〜6に示した形状2(3次元格子)を合わせて持つものとしてもよい。なお、測定対象物を発生させる生体試料が小さい場合などには、測定対象物消却用電極は作用極と同一平面上に設けただけでも効果を発揮すると考えられる。
【0074】
その他、前述の形状2(3次元格子)とは異なる形状の3次元的な広がりを持つ測定対象物消却用電極を構築してもよい。例えば、金の細線をスチールウール状に凝縮したものに生体試料を内部に配置するための孔または凹部を設けて、作用極と接触しないように作用極の上方に支持または懸架してもよい。或いは、適度の空隙率をもつ多孔質状の素材の表面に金メッキを施した物などを用いることも可能である。
【0075】
次に、この発明による電気化学測定装置の構成について説明する。
【0076】
図14は電気化学測定装置の構成を模式的に示したものである。電気化学測定装置は電解液41と電解液41中で測定対象物を発生させる生体試料30とを収容する電解液槽40を備え、電解液槽40には作用極10と測定対象物消却用電極20と対極50と参照極60とが設けられた構成となっている。作用極10及び測定対象物消却用電極20は図14では簡略化して示しているが、前述したように作用極10は所定のピッチでアレイ状に多数配列された構成とされ、測定対象物消却用電極20は図3に示した測定対象物消却用電極21、図4〜6に示した測定対象物消却用電極22、図12に示した測定対象物消却用電極23、図13に示した測定対象物消却用電極24のいずれかの構成、もしくは測定対象物消却用電極21,23,24のいずれかと測定対象物消却用電極22とを併用した構成を有するものとされる。図14中、90は塩橋を示す。
【0077】
作用極10、測定対象物消却用電極20、対極50及び参照極60はこの例では図14に示したようにポテンショスタット70に接続されている。ポテンショスタット70は可変電源71と電圧計72と電流計73とを含んで構成されており、このポテンショスタット70により作用極10と対極50との間への測定用電圧の印加及び測定用電圧を印加している時に測定対象物の量に応じて作用極10と対極50との間に流れる電極間電流の測定が行われる。
【0078】
また、作用極10と対極50との間に測定用電圧を印加していない時に、測定対象物消却用電極20と対極50との間への測定用電圧と同極性の消却用電圧の印加もポテンショスタット70により行われる。作用極10への測定用電圧の印加はスイッチ81をON,スイッチ82,83をOFFにすることに行われ、測定対象物消却用電極20への消却用電圧の印加はスイッチ82,83をON,スイッチ81をOFFにすることにより行われる。なお、スイッチ81をONとして作用極10にも消却用電圧を印加するようにしてもよい。
【0079】
図14では測定対象物消却用電極20はポテンショスタット70から消却用電圧が印加されるものとなっているが、これに限らず、消却用電圧の印加はポテンショスタット70とは別の電源を用いて行うようにしてもよい。
【0080】
次に、生体試料から発生する測定対象物の電気化学測定に用いるこの発明によるトランスデューサの構成について図15及び図16を参照して説明する。
【0081】
このトランスデューサはバイオLSIチップと称されるもので、電解液41と電解液41中に浸漬される生体試料とを収容することができる電解液槽40がLSIチップ100上に搭載された構成となっている。電解液槽40の中央には穴42が形成されており、LSIチップ100はこの穴42の下端に穴42を塞ぐように配置されている。
【0082】
LSIチップ100及び電解液槽40は基板110上に搭載固定されており、基板110にはトランスデューサの制御を行う外部装置との接続用の多数の配線パターン111が形成されている。図15B中、120はLSIチップ100と配線パターン111とを接続するボンディングワイヤを示す。
【0083】
LSIチップ100の上面にはセンサ領域101が構成されている。図15Aではセンサ領域101をハッチングを付して示しており、電解液槽40の底面の穴42の位置にセンサ領域101は画定されている。詳細図示を省略しているが、この例ではセンサ領域101にφ40μmの作用極(第1の電極)が250μmピッチで20×20=400個、アレイ状に配列されて形成されている。また、作用極と同一平面上、各作用極のまわりに位置するように測定対象物消却用電極(第2の電極)が形成されている。測定対象物消却用電極は前述の図3図12図13にそれぞれ示した測定対象物消却用電極21,23,24のいずれかの構成を有するものとされる。
【0084】
LSIチップ100は各作用極及び測定対象物消却用電極への電圧印加機能、各作用極での反応を電流値として検出し、増幅する機能さらにはスイッチング機能等を備えている。作用極及び測定対象物消却用電極は例えばリフトオフ法によって形成される。
【0085】
図15,16に示したトランスデューサは作用極と同一平面に測定対象物消却用電極を備えた構成となっているが、さらに前述の図4〜6に示したような3次元格子構造の測定対象物消却用電極を具備するものとしてもよい。
【0086】
図17はトランスデューサに配置する3次元格子構造の測定対象物消却用電極(第3の電極)の具体的な構成を示したものであり、図18図15,16に示したトランスデューサに対し、3次元格子構造の測定対象物消却用電極が追加されたトランスデューサを示したものである。
【0087】
3次元格子構造の測定対象物消却用電極130はこの例では3枚の金属板131と計12個のスペーサ132とによって構成されている。金属板131は銅もしくはニッケルよりなり、厚さは30μm程度とされる。フォトリソグラフィとエッチングなどで金属板131に図17Aに示したようにメッシュ131aを形成する。メッシュ131aのL/S(ライン/スペース)は30μm/470μmとする。メッシュ131aを形成した金属板131の四隅にスペーサ132を配置し、スペーサ132を介して3枚の金属板131を積層することで図17Bに示したような3次元格子構造の測定対象物消却用電極130となる。スペーサ132の厚さは70μmとし、これによりメッシュ131aが形成された金属板131が100μm間隔で積層される。スペーサ132と金属板131はスポット溶接等で固定され、積層後、金めっきを施すことにより3次元格子構造の測定対象物消却用電極130が完成する。
【0088】
3次元格子構造の測定対象物消却用電極130は図18に示したように穴42内に収容されてセンサ領域101上に配置される。図18中、140は測定対象物消却用電極130に消却用電圧を印加するための外部電源とつながる配線を示す。なお、LSIチップ100のセンサ領域101から測定対象物消却用電極130へ消却用電圧を印加する構成とすることもできる。
【0089】
対極及び参照極はトランスデューサとは別部品とされ、測定時(使用時)に電解液41中に投入される。
【符号の説明】
【0090】
10 作用極
20,21,22,23,24 測定対象物消却用電極
30 生体試料 31 EB
40 電解液槽 41 電解液
42 穴 50 対極
60 参照極 70 ポテンショスタット
71 可変電源 72 電圧計
73 電流計 81,82,83 スイッチ
90 塩橋 100 LSIチップ
101 センサ領域 110 基板
111 配線パターン 120 ボンディングワイヤ
130 測定対象物消却用電極 131 金属板
131a メッシュ 132 スペーサ
140 配線
【要約】
【課題】測定対象物の生成、拡散条件を均一化できるようにし、正確な測定を可能にする。
【解決手段】測定対象物を含む電解液中に、測定対象物と電子の授受を行って酸化還元反応をさせる作用極と、作用極と外部電源を介してつながった対極とが設けられ、作用極と対極との間に測定用電圧を印加して測定対象物の量に応じて作用極と対極との間に流れる電流を測定する電気化学測定方法において、電解液中に測定対象物消却用電極を設け、測定対象物消却用電極と対極との間に測定用電圧と同極性の消却用電圧を印加して測定対象物を酸化もしくは還元することで消却する測定対象物消却ステップと、消却用電圧の印加停止後に新しい測定対象物を拡散させる測定対象物拡散ステップと、新しい測定対象物を拡散させた後に作用極と対極との間に測定用電圧を印加して電流を測定する電気化学測定ステップとを実行する。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18