(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この予熱運転は、実際の暖房運転に近づければ近づけるほど暖房運転開始時に空気調和機は室内に高温風を短時間で吹き出せるが、予熱運転中の消費電力が増加してしまうという課題がある。そこで、本発明は、前記した課題を解決し、空気調和機が暖房運転開始時に高温風を短時間で吹き出せるようにしつつ、予熱運転中の消費電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した課題を解決するため、本発明の空気調和機は、室内の人体を検出する人体検出部と、室内温度を検出する室内温度検出部(例えば、室内温度計123)と、外気温度を検出する外気温度検出部(例えば、室外温度計206)と、利用者により予め入力され
たタイマー設定時刻の第1の所定時間(例えば、
図6に示す60分)前から空気調和機の圧縮機の第1の予熱(例えば、低能力予熱)運転を実行し、前記タイマー設定時刻
後の第2の所定時間(例えば、
図6に示す30分)
が経過するまでの間に、前記人体検出部が人体を検出したとき、前記第1の予熱運転より前記圧縮機の回転数が高く、かつ、通常
暖房運転
の上限より前記圧縮機の回転数が低い範囲で第2の予熱(例えば、高能力予熱)運転を実行
し、リモコンからの暖房運転開始の指示信号が入力されると前記通常暖房運転に入る駆動制御部とを備え、前記駆動制御部は、前記タイマー設定時刻の第1の所定時間前において、前記室内温度検出部が検出した室内温度が室内の所定値未満であり、かつ、前記外気温度検出部が検出した外気温度が外気の所定値未満であるとき、前記第1の予熱運転を開始することを特徴とする。その他の構成については、実施の形態の項で述べる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、空気調和機が暖房運転開始時に高温風を短時間で吹き出せるようにしつつ、予熱運転中の消費電力を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0009】
<空気調和機の構成>
図1は、本実施形態に係る空気調和機の室内機、室外機およびリモコンの正面図である。
図1に示すように、空気調和機Aは、室内機100と、室外機200と、リモコンReと、を備えている。室内機100と室外機200とは冷媒配管(図示せず)で接続され、周知の冷媒サイクルによって、室内機100が設置されている室内を空調する。また、室内機100と室外機200とは、通信ケーブル(図示せず)を介して互いに情報を送受信するようになっている。
【0010】
リモコンReはユーザによって操作され、室内機100のリモコン受信部Qに対して赤外線信号を送信する。当該信号の内容は、運転要求、設定温度の変更、タイマー、運転モードの変更、停止要求等の指令である。空気調和機Aは、これらの信号に基づいて、冷房モード、暖房モード、除湿モード等の空調運転を行う。
また、室内機100の前面パネル106の左右方向中央の下部には、人体検出センサ110が設置されている。この人体検出センサ110は、赤外線センサや、音センサ、カメラ等により、室内機100の設置される室内における人体検出を行うセンサである。ここでは、人体検出センサ110がカメラである場合を例に説明する。また、予熱開始を表示する予熱ランプ121および運転開始を表示する運転ランプ122が設置されている。
【0011】
図2は、室内機の側断面図である。筐体ベース101は、室内熱交換器102、室内ファン103、フィルタ108等の内部構造体を収容している。
室内熱交換器102は複数本の伝熱管102aを有し、室内ファン103により室内機100内に取り込まれた空気を、伝熱管102aを通流する冷媒と熱交換させ、前記空気を加熱又は冷却するように構成されている。なお、伝熱管102aは、前記した冷媒配管(図示せず)に連通し、冷媒サイクルの一部を構成している。
【0012】
左右風向板104は、室内機マイコン(制御手段)130(後記する
図4参照)からの指示に従い、下部に設けた回動軸(図示せず)を支点にして左右風向板用モータ(図示せず)により回動される。
上下風向板105は、室内機マイコン130からの指示に従い、両端部に設けた回動軸(図示せず)を支点にして上下風向板用モータ(図示せず)により回動される。
前面パネル106は、室内機100の前面を覆うように設置されており、下端を軸として前面パネル用モータ(図示せず)により回動可能な構成となっている。ちなみに、前面パネル106を、下端に固定されるものとして構成してもよい。
【0013】
図2に示す室内ファン103が回転することによって、空気吸込み口107およびフィルタ108を介して室内空気を取り込み、室内熱交換器102で熱交換された空気が吹出し風路109aに導かれる。さらに、吹出し風路109aに導かれた空気は、左右風向板104および上下風向板105によって風向きを調整され、空気吹出し口109bから外部に送り出されて室内を空調する。
【0014】
図3は、
図1の空気調和機の冷媒サイクルの構成を示した図である。なお、説明を容易にするため、室内機100における、室内熱交換器102および室内ファン103以外の構成は図示を省略している。室外機200は、圧縮機205と、四方弁204と、室外熱交換器202と、室外ファン203と、膨張弁201とを備える。室外機200の圧縮機205で圧縮されて高温高圧となったガス冷媒は、四方弁204を介して、凝縮器として機能する室内熱交換器102に流入する。室内熱交換器102を通流する高温高圧のガス冷媒は、室内ファン103により送られてくる室内空気と熱交換し、凝縮する。
【0015】
室内熱交換器102から流出した中温高圧の液冷媒は、膨張弁201で減圧され、低温低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器として機能する室外熱交換器202に流入する。室外熱交換器202を通流する気液二相冷媒は、室外ファン203により送られてくる室外空気と熱交換して蒸発し、低温低圧のガス冷媒(または、若干の液冷媒を含む湿りガス冷媒)となる。室外熱交換器202から流入する低温低圧のガス冷媒は、四方弁204を介して圧縮機205に還流する。
【0016】
図4は、
図1の空気調和機の機能ブロック図である。
図4において、室内機100における、前面パネル106、上下風向板105、運転ランプ122、予熱ランプ121、人体検出センサ110、室内温度計123、室内ファン103、室内機マイコン130、タイマー150以外の構成は図示を省略している。また、室外機200における室外ファン203、圧縮機205、室外温度計206以外の構成は図示を省略している。
【0017】
図4に示すように空気調和機Aは、前面パネル106、上下風向板105、運転ランプ122、予熱ランプ121、人体検出センサ110、室内温度計123、室内ファン103、室内機マイコン(制御手段)130およびタイマー150を備える。室内温度計123は室温を室内機マイコン130に出力する。室内機マイコン130は、空気調和機A全体の制御を司り、駆動制御部131、人体検出部132および温度判断部133を備える。また、室内機マイコン130の備える記憶部(図示省略)の所定領域に、設定時刻(タイマー設定時刻)を記憶する。設定時刻は、リモコンReからの操作により入力される低能力予熱(詳細は後記)開始の時刻を算出するための基準の時刻である。
【0018】
駆動制御部131は、リモコンReからのリモコン信号や、人体検出部132による人体検出結果、温度判断部133による温度判断結果に基づき、室内機100の前面パネル106、上下風向板105、運転ランプ122、予熱ランプ121および室内ファン103と、室外機200の室外ファン203および圧縮機205とを制御し、低能力予熱
(第1の予熱)や、高能力予熱
(第2の予熱)や、通常暖房への運転切り替えを行う。低能力予熱、高能力予熱、通常暖房の詳細は後記する。
【0019】
人体検出部132は、人体検出センサ110から、人体検出信号を受信すると、この信号を駆動制御部131へ出力する。また、温度判断部133は、室内温度計123からの室温測定結果および室外温度計206からの外気温測定結果を受信すると、その結果に基づき、低能力予熱を開始するか否かの判断を行う。例えば、温度判断部133は、外気温10℃以上または室温18℃以上ならば予熱運転を行わないと判断する。
【0020】
次に、
図5および
図6を用いて空気調和機Aの室内機マイコン130の処理手順を説明する。まず、
図5を用いて、室内機マイコン130の処理の概要を説明する。
図5は、
図1の室内機の処理手順を示した図である。
図6は、
図1の室内機マイコンの処理手順の具体例を示したタイムチャートである。ここでは既に利用者がリモコンRe等により空気調和機Aがタイマー設定時刻(設定時刻)の入力を受け付け、室内マイコン130の所定領域に記憶されているものとする。また、空気調和機Aは、このタイマー設定時刻の所定時間前(ここでは60分前)になると低能力予熱を開始するものとする。
【0021】
まず、室内機マイコン130は、タイマー設定時刻と、タイマー150の示す現在時刻とを参照して、現在時刻が(設定時刻―60分)になったと判断すると(S1のYes)、温度判断部133は、室内温度計123から取得した室温および室外温度計206から取得した室外温度をもとに、予熱温度条件を満たすか否かを判断する(S2)。一方、まだ現在時刻が(設定時刻―60分)になっていない場合(S1のNo)、S1へ戻る。S2の予熱温度条件は、例えば、室温が18℃未満かつ外気温10℃未満ならば予熱運転を行うという条件である。S2において温度判断部133が予熱温度条件を満たすと判断したとき(S2のYes)、駆動制御部131を介して、予熱ランプ121を点灯させる(S3)。そして、S4へ進む。一方、S2において、温度判断部133が、予熱温度条件を満たさないと判断したとき(S2のNo)、駆動制御部131は予熱を禁止する(S16)。つまり、低能力予熱を行わない。そして、処理を終了する。このように、駆動制御部131が、予熱条件を満たさないときに低能力予熱を行わないようにすることで、空気調和機Aの予熱時の消費電力を低減できる。
【0022】
S3の後、駆動制御部131は、低能力予熱を開始する(S4)。そして、駆動制御部131は、カウントダウンを開始する(S5)。つまり、駆動制御部131はタイマー150を参照して、タイマー設定時刻から所定時間(例えば、30分)後までのカウントダウンを開始する。そして、駆動制御部131において、リモコンReからの暖房運転開始のリモコン信号等、暖房運転開始の信号の入力を受け付けると(S6のYes)、駆動制御部131は暖房運転を開始する(S10)。具体的には、駆動制御部131は、通常暖房(詳細は後記)に移行する。
【0023】
一方、駆動制御部131に暖房運転開始の信号が未入力の場合(S6のNo)、人体検出部132は、人体検出センサ110から人体検出信号の入力があるか否かを判断する(S7)。ここで、人体検出センサ110から人体検出信号の入力があった場合(S7のYes)、駆動制御部131は、圧縮機205を動作させて高能力予熱(詳細は後記)を開始する(S8)。そして、S9へ進む。
【0024】
一方、S6の後、人体検出部132は、人体検出センサ110からの人検出の信号の入力がない場合(S7のNo)、駆動制御部131は、タイマー150を参照して、S5のカウントダウン開始からタイムアップしている(タイマー設定時刻から所定時間(例えば、30分)経過している)か否かを判断する(S13)。ここでタイムアップしていなければ(S13のNo)、S6へ戻る。一方、タイムアップしていれば(S13のYes)、駆動制御部131は予熱(S4で開始した低能力予熱)を停止する(S15)。そして、駆動制御部131は、予熱ランプ121を消灯し、処理を終了する。つまり、タイマー設定時刻から所定時間経過しても、室内に人が入ってこなかった場合、および、タイマー設定時刻から所定時間経過してしまった場合、駆動制御部131は、低能力予熱を停止する。これにより、空気調和機Aの低能力予熱時の消費電力を低減できる。
【0025】
S9において、駆動制御部131は、リモコンReからの暖房運転開始のリモコン信号等、暖房運転開始の信号の入力を受け付けると(S9のYes)、暖房運転を開始する(S10)。また、駆動制御部131は運転ランプ122を点灯させる。そして、S11へ進む。一方、S9において、駆動制御部131は、駆動制御部131は、暖房運転開始の信号の入力を受け付けなかったとき(S9のNo)、S5のカウントダウン開始からタイムアップしている(タイマー設定時刻から所定時間(例えば、30分)経過している)か否かを判断し(S14)、タイムアップしていなければ(S14のNo)、S9へ戻る。一方、タイムアップしていれば(S14のYes)、駆動制御部131は予熱を停止する(S15)。そして、駆動制御部131は、予熱ランプ121を消灯し、処理を終了する。つまり、室内に人が入って来たが、結局、暖房運転の指示がされなかった場合、駆動制御部131は、高能力予熱を停止する。これにより、空気調和機Aの高能力予熱時の消費電力を低減できる。
【0026】
S11において、駆動制御部131は、リモコンReからの暖房停止のリモコン信号等、暖房停止の信号の入力を受け付けると(S11のYes)、暖房運転を停止する(S12)。そして、駆動制御部131は、運転ランプ122を消灯し、処理を終了する。一方、駆動制御部131は、リモコンReからの暖房停止のリモコン信号等、暖房停止の信号の入力がない場合(S11のNo)、S11へ戻る。
【0027】
次に、
図5を参照しつつ
図6を用いて、
図4の空気調和機Aの室内機マイコン130の処理手順の例を説明する。なお、このタイムチャートの横軸は時間の流れを示す。また、ここでも、予熱期間の開始時刻はタイマー設定時刻の60分前からであり、この予熱期間の終了時刻は、最大でタイマー設定時刻+30分までである場合を例に説明する。
【0028】
室内機マイコン130の駆動制御部131は、タイマー150を参照して、設定時刻(タイマー設定時刻)の60分前になったことを検知し(
図5のS1のYes)、温度判断部133により予熱温度条件を満たすことを確認すると(S2のYes)、予熱ランプ121を点灯させる(S3)。なお、この段階では、前面パネル106も上下風向板105もシャット(閉じた状態)のままとする。
【0029】
そして、駆動制御部131は、低能力予熱を開始する(S4)。具体的には、駆動制御部131は、まず圧縮機205を始動させ、予め設定された低能力予熱の回転数(例えば、
図6に示す予熱下限1の回転数〜予熱上限1の回転数)で回転させる。また、駆動制御部131は、室内ファン103を予熱専用回転数で回転させる。さらに、駆動制御部131は、室外ファン203の回転数を予熱専用回転数で回転させる。
【0030】
そして、駆動制御部131、タイマー150およびタイマー設定時刻を参照しながら、タイマー設定時刻+30分までのカウントダウンを開始する(S5)。そして、設定時刻+30分までの間に、人体検出部132が人を検出すると(S6のYes→S7のYes)、駆動制御部131は高能力予熱を開始する(S8)。つまり、駆動制御部131は、圧縮機205の回転数を高能力予熱の回転数まで上昇させる。例えば、駆動制御部131は、圧縮機205の回転数を、
図6に示す予熱上限2の回転数まで上昇させる。なお、このときの圧縮機205の回転数の下限値は、例えば、
図6に示す予熱下限の値とする。
【0031】
その後、駆動制御部131はリモコンReから暖房運転開始の信号の入力を受け付けると(S9のYes)、暖房運転を開始する(S10)。駆動制御部131は、まず、前面パネル106をオープンの状態にし、また、駆動制御部131は運転ランプ122を点灯させ、
【0032】
上下風向板105を暖房イニシャル位置(通常暖房のときの位置)まで移動させ、圧縮機205の回転数を通常暖房の回転数(
図6に示すMAX回転数〜暖房の下限)で回転させる。また、駆動制御部131は、室内ファン103については通常制御とし、室外ファン203については通常制御とする。
【0033】
なお、前記したとおり、駆動制御部131がリモコンReにより運転停止信号が入力されると、運転を停止させる。また、駆動制御部131は、タイマー設定時間から30分経過しても、つまり、延長運転時間が経過しても、リモコンReによる運転開始信号が入力されなかったとき、予熱(低能力予熱または高能力予熱)を停止する。
【0034】
このようにすることで、空気調和機Aは、低能力予熱を開始後、室内に利用者(人体)が居ることを検出してから高能力予熱を開始する。よって、空気調和機Aが暖房運転開始時に高温風を短時間で吹き出せるようにしつつ、予熱運転中の消費電力を低減することができる。
【0035】
なお、室内機100が室内に人体がいることを確実に検知できるよう、室内機100の人体検出センサ110として、カメラおよび明るさセンサ(図示省略)を用いるようにしてもよい。この場合、カメラが室内に人体がいることを検出しやすくするため、レンズ部分の首振り機能を備えていてもよい。そして、駆動制御部131は、明るさセンサにより、室内が所定の明るさ以上になったことを検知すると、カメラの首振り機能を動作させ、カメラによる撮像を開始させる。その後、人体検出部132はカメラからの画像により室内に人体がいると判断すると、駆動制御部131は、前記した高能力予熱を開始する。なお、駆動制御部131は、人体検出部132において室内に人体がいると判断されたとき、カメラの首振りを停止させる。このように、人体検出センサ110に首振り機能付きのカメラを用いる場合、明るさセンサを併用することで、室内に人体がいる可能性が高いときにカメラの首振りを行わせることができる。また、明るさをカメラの画像から検出することで明るさセンサを搭載することなく同様の機能を実現することができる。