特許第6116148号(P6116148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116148
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】シールリング
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20170410BHJP
   F16K 5/06 20060101ALN20170410BHJP
【FI】
   F16J15/08 J
   !F16K5/06 C
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-156032(P2012-156032)
(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公開番号】特開2014-20378(P2014-20378A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年1月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】藤原 優
(72)【発明者】
【氏名】杉田 克紀
(72)【発明者】
【氏名】林 洋樹
【審査官】 村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−038465(JP,U)
【文献】 米国特許第05421594(US,A)
【文献】 特開平07−027231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08
F16K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製で0.03mm〜0.1mmの厚さを有する第1リングと、マイカ製で0.2mm〜1.0mmの厚さを有する第2リングとが積層一体化されてなるシールリングであって、
躯体および前記躯体の径方向内側に配置されたリテーナからなるシール対象箇所にそれぞれ圧接可能な外径部分および内径部分を有し、
前記第1リングのリング軸心に関する径方向で切った、前記シールリングの断面形状が、前記外径部分と前記内径部分との間で前記リング軸心の方向に凸となる屈曲形状に設定され
前記躯体と前記リテーナとの間をシールすべく、前記躯体と前記リテーナとの間で挟圧された場合に、前記外径部分が前記躯体の内周面に圧接されかつ前記内径部分が前記リテーナの外周面に圧接されるように拡がり変形する構成とされているシールリング。
【請求項2】
前記第2リングが凸屈曲形状における山側に配置される状態に構成されている請求項1に記載のシールリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、発電と工場用蒸気供給機能を備えた蒸気タービンの流入部など、高温蒸気といった高温流体の配管装置に装備される弁に用いられるシールリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の弁は、例えば、特許文献1において開示されるように、蒸気タービンの主蒸気流入部に装備されたものが知られている。即ち、前記特許文献1の図2になどに示されるように、蒸気加減弁(10)は、弁体(10a)、ディフューザと一体な弁座(10b)、弁棒(10c)、弁体駆動用の油圧シリンダ(10d)との組立体で、弁ケーシング〔弁箱〕(12)に形成した球殻構造の弁箱部分に組み込まれている。
【0003】
蒸気加減弁は、高温の蒸気での配管途中に設置されるため、弁軸と弁箱との間をシールする軸封機構には高温の蒸気に対する配慮が必要である。その軸封機構として、従来では、特許文献2や特許文献3において開示される手段が知られている。即ち、従来の軸封機構は、膨張黒鉛でなるグランドパッキンを備えるだけでなく、金属材とマイカとを積層してなるシールリングも配列し、パッキン押えで押付ける構造のものであった。
【0004】
金属材とマイカとの積層体でなるシールリングの採用により、摺動性が良好で柔らかく馴染み易く高温でもシール性に優れる特性を発揮しながら、マイカの形崩れなくシールリングの移動運搬や組付け分解作業が行える、という優れた作用効果を奏するものであるが、場合によっては、うまくいかないことがあった。
例えば、金属材やマイカシートの厚さが厚かったり薄かったりすると、シール用空間部に入れ難く装填し難いとか、使用時におけるパッキン押えなどによる押圧力によって十分に径方向に拡がり変形できず、所期するシール性能が得られないことがある。
【0005】
また、断面をV字状などの凸形状とした場合において、金属材の厚さが厚いと、使用時に断面V字形状が平らに変形し難くなり、所期するシール性が得られないとか、明確なV字形状のままだと隣のシール部材に押圧力が伝わり難く、結果としてシール性が悪化する。厚さが薄過ぎると形状を維持する能力(保形性)が足りず、製品とならない。
【0006】
マイカシートの厚さが厚いと、シールリングに形成した場合に亀裂が入り易くなり、折角のシール性が台無しになるおそれがある。また、当然ながら、薄過ぎると本来の性能が出ない。このように、前記シールリングを本来の性能が出るものとして実現させるには、金属材やマイカシートを如何なる状態のものに設定するか、という点において改善の余地が残されているものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−048216号公報
【特許文献2】特開平04−347068号公報
【特許文献3】特開2012−041886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、金属材とマイカシートとの積層体でなるシールリングについてさらなる鋭意研究を行うことにより、本来の性能を如何なく発揮することができる緒元(スペック)を求め、より好都合なシールリングとして提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、シールリングにおいて、金属製で0.03mm〜0.1mmの厚さを有する第1リング16と、マイカ製で0.2mm〜1.0mmの厚さを有する第2リング17とが積層一体化されてなることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のシールリングにおいて、前記第1リング16のリング軸心Pに関する径方向で切った断面形状が、前記リング軸心Pの方向に凸となる屈曲形状に設定されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のシールリングにおいて、前記第2リング17が凸屈曲形状における山側に配置される状態に構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、第1リング(金属材)の厚さが厚いことによる重量増加や寸法肥大などの無駄がないとともに、薄いことによる補強機能不足もないので、無駄なく軽い状態で必要となる強度(保形性)が出せるようになる。そして、第2リング(マイカ)の厚さが厚いことによる亀裂発生が無く、かつ、薄いことによる性能不足もなくなる。その結果、金属材とマイカシートとの積層体でなるシールリングの各種緒元(スペック)を求める工夫により、本来の性能を如何なく発揮することができるシールリングを提供することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、断面をV字状などの凸形状とした場合に、金属材が厚くて使用時に平らに変形し難くなって所期するシール性が得られず、また、凸字形状のままだと結果としてシール性が悪化するとか、厚さが薄くて形状を維持する能力(保形性)が足りない、という種々の不都合が解消又は軽減されるようになる。従って、シールリングの装填が軽く楽に行える好都合なものでありながら、十分なシール性も得られ、請求項1の発明による前記効果が強化される利点がある。
【0014】
請求項3の発明によれば、その形状特性故に、押圧力が作用して平ら又はそれに近い形状に変形することで山側のマイカ材が、軸外周や弁箱内周などのシール対象箇所に確実に当接する状態でシールできるようになり、より高温流体でも十分な機能が発揮できる好ましいシールリングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ボール弁を示す断面図
図2図1のボール弁の要部を示す拡大断面図
図3】シールリングを示す断面図(実施例1)
図4】マイカシートの可撓性を示す図表
図5】シールリングの性能を示す図表
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明によるシールリングの実施の形態を、ボール弁に適用されたものとして図面を参照しながら説明する。
【0017】
〔実施形態1〕
ボール弁Vは、図1に示すように、第1躯体1Aと第2躯体1Bとで成るとともに内部に円筒状の流路2が形成される弁箱1、この弁箱1に回動移動可能に収容されるボール3、ボール3を回動操作するためのステム4などを備えて構成されている。ハウジングは、流路方向に分割されてボールが挿入されるサイドエントリ形、縦方向に分割されてボールが挿入されるトップエントリ形などの構造が宜に選択設定される。ステム4の周辺における弁箱1とボール3とで囲まれる空間であるキャビティ5が形成されている。
【0018】
流路2と連通する円筒状の貫通孔3aが形成されて弁箱1の内部に配備されるボール3は、流路2と直交する方向に配置された一対のステム部4A,4Bに支持されている。つまり、ボール3は、ステム部4A,4Bでなるステム4を回動支点としており、貫通孔3aにより流路2を開閉する方向に回動可能に装着されている。
ボール3は、金属材等で形成されている。金属材では、ステンレス鋼、炭素鋼、ダクタイル鉄、鉄、青銅、黄銅が用いられるが、金属からなる芯体をステライトやメッキによって表面処理されたものも用いられる。
【0019】
ボール弁Vには、ボール3と弁箱1との間をシールするボールシール機構Sが装備されている。ボールシール機構Sは、図1図2に示すように、流路2とキャビティ5との間をシールして、流体が流路2からキャビティ5へ漏出するのを防止するためのものであり、第1躯体1Aと第2躯体1Bとのそれぞれに設けられている。
【0020】
第2躯体1B側のもので説明すれば、ボールシール機構Sは、第2躯体1Bにスライド移動可能に第2躯体1Bに内嵌される環状のリテーナ6、リテーナ6の先端側に保持されてボール3の球面状の外周面3bに接するシール用のシートリング7、シートリング7を外周面3bに圧接させるべく第2躯体1Bに対してリテーナ6を押圧付勢する複数のコイルバネ8、及び、リテーナ6と第2躯体1Bとをシールするリテーナシール機構9などを有して構成されている。なお、10はシートリング7をリテーナ6に保持するための保持リング、19,20は内外のスペーサリングである。
【0021】
リテーナシール機構9は、図2に示すように、第2躯体1B側のものにおいて、複数のシールリング12と、環状のリング押え13と、コイルバネ8とを有して構成されており、リテーナ6の外周面6aと第2躯体1Bの中間内周面1bとの間をシールする。
リテーナシール機構9においては、複数のコイルバネ8がリング押え13を押圧付勢し、リング押え13におけるリング状の外周押え部13aがシールリング12をそのリング軸心P方向に押付けることにより、リテーナ6と第2躯体1Bとで形成されるシール用空間部18に配置されるシールリング12が拡がり変形し、リテーナ6の中間外周面6b及び中間内周面1bに密着してシールすることができる。
【0022】
次に、リテーナシール機構9に用いられるシールリング12について説明する。
シールリング12は、図3に示すように、ステンレス箔などの金属製で0.03mm〜0.1mmの厚さを有する第1リング16と、マイカ製で0.2mm〜1.0mmの厚さを有する第2リング17とが積層一体化されることで構成されている。そして、シールリング12は、第1リング16のリング軸心Pに関する径方向で切った断面形状が、リング軸心P方向に凸となる屈曲形状、具体的にはV字形状に設定されている。
シールリング12は、そのV字形断面における山側(谷側)に第1リング16を配置するか、第2リング17を配置するかにより、Aシールリング14とBシールリング15とに分類される。
【0023】
Aシールリング14は、図3(a)に示すように、V字形の折れ曲がりにおける谷側に位置する環状のマイカシート、即ち、第2リング17と、山側に位置する環状のステンレス箔、即ち、第1リング16とが接着剤を用いて積層一体化されて成る構造のシールリング12である。つまり、第2リング17が凸屈曲形状における谷側に配置される構造である。
Bシールリング15は、図3(b)に示すように、V字形の折れ曲がりにおける谷側に位置する第1リング16と、山側に位置する第2リング17とが接着剤を用いて積層一体化されて成る構造のシールリング12である。つまり、第2リング17が凸屈曲形状における山側に配置される構造である。
A,Bの両シールリング14,15は、図3に示すように、自然状態におけるV字状断面の挟角θは共に152度に設定されているが、その限りではない。
【0024】
第1リング16を構成するステンレス箔16の厚さは、前述のように0.03mm〜0.1mmの範囲に設定される。第2リング17は、シート状のマイカから打ち抜かれて形成された環帯状体(マイカリング)であリ、前述のようにその厚さは、0.2mm〜1.0mmの範囲に設定される。いずれ16,17も断面がV字形状に形成され、接着剤は熱硬化性の接着剤が望ましいが、熱可塑性接着剤や粘着剤であっても良い。
【0025】
リテーナシール機構9の組付前の自由状態(コイルバネ8で押されていない状態)においては、シールリング12の内径を中間外周面6bの径よりも僅かに大きく、かつ、シールリング12の外径を中間内周面1bの径よりも僅かに小さい寸法に形成しておけば、中間外周面6bへの嵌合装着やシール用空間部18への装填が軽く楽に行えて好都合である。
【0026】
複数のコイルバネ8による所定の押圧力が作用した組付状態(図2に示す状態)では、図示は省略するが、押圧力により各シールリング12における断面V字形の角度が自然状態のときよりも緩く(平らに)変形する。その変形によってシールリング12の外径は若干大きくなり、かつ、内径は若干小さくなるから、中間内周面1b及び中間外周面6bに圧接されるようになり、従って、リテーナ6と第2躯体1B(弁箱1)との間が良好にシールされる。次に、シールリング12の製法や特性、構成要素などについて説明する。
【0027】
まず、実施例1によるシールリング12の作り方について説明する。以下の工程1.〜9.を行うことにより作製される。
1.ステンレス材(SUS316Lなど)からなる厚さ0.05mmのステンレス箔を作製する。
・備考:シールリング12自身の変形を容易にし、機器への密着性を高めるとともに、他のシールリング12へリング押え13からの応力を容易に伝える。
【0028】
2.工程1.による作製物(ステンレス箔)の片面にフェノール系接着剤を全面に塗布する。接着剤の塗布量は、5〜10g/m、厚さ0.06mm(片側)とする。
・備考:接着剤の塗布は両面でも可。一部でも可。他の種類の接着剤でも可。接着剤に代えて粘着剤でも可。
【0029】
3.工程2.により片面に接着剤が塗布されたステンレス箔に、少量のバインダーを用いてマイカをシート状とされた厚さ0.2mmのマイカシートを、加圧加熱接着(条件:温度80℃、面圧2〜3N/mm、時間2〜3分)させ、薄いシート体を作製する。
・備考(1):マイカ材だけのシールリングに比べて、シール性が向上する(浸透漏れの防止)。
・備考(2):マイカシートが厚い場合、締付によるマイカの変形時に亀裂が入り、薄い場合は、シールリング12と、これの流体側に配置されるシールリング12(又はグランドパッキン)との接触面での接面漏洩を防止することはできない。マイカシートの製法は、特開平05−118444号公報(段落:0015など)に記載のものと同様である。マイカシートの厚さは、好ましくは0.5mm以下。
・備考(3):接着による一体化は、グランド部(シール用空間部18)への挿入時にマイカシートとステンレス箔とがずれて、ステンレス箔がグランド部の金属部分に接触することを避けるためである。
【0030】
4.工程3.によるシート体を、トムソン型を用いて、適用するグランドのステム径(中間外周面6bの径)より0.2mm小さい内径で、かつ、適用するグランドのボックス内径(中間内周面1bの径)より0.2mm大きい外径のリング体として打ち抜く。
・備考:平らな状態では、グランド部(シール用空間部18)の投影面積より大きな面積とし、変形により機器への密着を高める。
【0031】
5.工程4.により打ち抜かれたリング体を、断面形状がV字形で、かつ、その径方向での交差角度(挟角)が152度となるような成形が可能な金型へ投入し、面圧5N/mmでプレス成形する。
・備考:V字形として外径の縮小化及び内径の拡大化を図り、グランド部(シール用空間部18)への挿入を容易にする。但し、交差角は152度に限定されない。
【0032】
6.工程5.を行う際に、断面V字状の谷側がマイカシート17(第2リング17)で、かつ、山側がステンレス箔16(第1リング16)となる状態にセットして成形することによりAシールリング14(12)を作製する。
それとは反対に、断面V字状の谷側がステンレス箔16(第1リング16)で、かつ、山側がマイカシート17(第2リング17)となる状態にセットして成形することによりBシールリング15(12)を作製する。
・備考:シールリング12は、V字の谷側がマイカシート17でもステンレス箔16でも形成可能である。
【0033】
〔シールリングのガスシール特性〕
工程6、により作製された種々のシールリング14(12),15(12)を、図5に示すガスシール特性により評価し、合否を分けた。合格したシールリング12を、V字における尖った側から先にグランド部(シール用空間部18)に挿入する。一例として、4枚のBシールリング15(12)を挿入し、それから1枚のAシールリング14(12)を挿入する、といった具合である。
・備考:グランド(シール用空間部18)の金属部分にシールリング12のステンレス箔(第1リング16)が接触しない方向で装填させると好都合である。この点からは、図3(b)に示すBシールリング15が好適であるが、限定するものではない。場合によっては、グランド(シール用空間部18)の金属部分にステンレス箔(第1リング16)が接触する方向で装填し、使用することもある。
【0034】
〔マイカシートの可撓性について〕
図4に示す各厚みでのマイカシート(第2リング17)から内径31.8mm、外径49.2mmのリングを打ち抜き、これを前記工程5.にて説明した成形金型に投入し、面圧5N/mmでプレス成形した試験用マイカリングとし、外観の目視チェックにより亀裂の有無を確認した。それら試験用マイカリングは前述のマイカシート(第2リング17)を模擬している。この試験用マイカリングの目視チェックが、図4に示す1回目の亀裂の有無である。つまり、「1回目」とは、V字状断面の挟角θが所定角度(例:152度)に設定された自由状態のことである。
【0035】
その後、2枚の平板の間に試験用マイカリングを挟み、面圧5N/mmで再びプレス成形して締付時(組付時)を模擬した締付後マイカリングとし、外観の目視チェックにより亀裂の有無を確認した。この締付後マイカリングの目視チェックが、図4に示す2回目の亀裂の有無である。つまり、「2回目」とは、締付によりV字状断面が変形して挟角θが前述の所定角度(例:152度)から平ら又は平らに近い緩い角度(例えば175度)に変化した使用状態のことである。
【0036】
結果は、図4に示すように、厚みが1.0mmを超える場合(1.3、1.7:単位mm)は、1回目又は2回目の少なくともいずれかにおいて外観での亀裂が視認された。厚みが1.0mmm以下の場合(0.05、0.2、0.5、0.7、1.0:単位mm)は、1回目及び2回目のいずれにおいても外観での亀裂は視認されなかった。従って、マイカシート(第2リング17)の可撓性は、その厚みが1.0mm以下のものにおいて優れている。
【0037】
〔ステンレス箔の厚さ〕
ステンレス箔(第1リング16)の厚さが0.1mm超えの場合、締付時にシールリング12における断面のV字形が平らに変形し難いことが知見された。平らにならずV字形のままであると、流体側に配置される構造物(シールリング12やグランドパッキン等)に山折りの角部が突き刺さるように当接するため、応力伝達が不均一になり易い傾向がある。また、ステム外径(中間外周面6bの径)及びボックス内径(中間内周面1bの径)に密着し得ない。
ステンレス箔(第1リング16)の厚さが0.03mm未満の場合は、シールリング12の成形後におけるV字状断面を保持できないようになる。
【0038】
〔マイカシートの厚さ〕
マイカシート(第2リング17)の厚さが1.0mmを超えた場合、前述のように可撓性に乏しいため、変形によりマイカシートに亀裂が入り易い。この亀裂は、シールリング12と、これの流体側に配置される構造物(シールリング12やグランドパッキン等)との接触面での漏洩経路となるか、又は、シールリング12とリング押え13との接触面での漏洩経路となる。従って、シール性能を満足に発揮することはできない。
マイカシート(第2リング17)の厚さが0.2mm未満の場合は、グランド部(中間外周面6bや中間内周面1b)との馴染み性に劣り、やはり、シール性能を満足に発揮することはできない。
【0039】
本願発明のシールリング12による実用上の作用効果としては、以下のものが考えられる。
・使用時にV字形の断面が平ら(又は平らに近い緩い峡角)になる
・ステム外径(中間外周面6b)及びボックス内径(中間内周面1b)へ密着する
・流体側に配置される構造物(シールリング12やパッキンなど)へ応力が均一に伝わる
・成形時にマイカシート(第2リング17)に亀裂が入らない
・ステンレス箔(第1リング16)とマイカシート(第2リング17)とがずれない
【0040】
〔別実施形態〕
リング軸心P方向に凸となる断面形状としては、V字形状の他、W字形状に屈曲されたものや、湾曲状やS字形状に形成されたものでも良い。
図2に示すシールリング12は、4〜5個のBシールリング15のみ備える構造、複数又は単数のAシールリング14と複数又は単数のBシールリング15とを備える構造、その他でも良い。
また、図3に示すシールリング12におけるV字状断面は、リングの径方向幅の中心に尖り先端が位置する対象形状のV字であるが、多少径方向で内又は外に寄った箇所に尖り先端が位置する非対象形状でも良い。
【符号の説明】
【0041】
16 第1リング
17 第2リング
P リング軸心
図1
図2
図3
図4
図5