特許第6116212号(P6116212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116212
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/00 20060101AFI20170410BHJP
   A61B 3/13 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   A61B3/00 B
   A61B3/12 A
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-262671(P2012-262671)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-108136(P2014-108136A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】原 広志
(72)【発明者】
【氏名】酒井 潤
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−099272(JP,A)
【文献】 特開平06−142042(JP,A)
【文献】 特開2004−089327(JP,A)
【文献】 特開2005−143805(JP,A)
【文献】 特開2005−148247(JP,A)
【文献】 特開2002−078682(JP,A)
【文献】 特開平08−164114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光源により照明された被検眼からの光を受光する光学系を少なくとも有する装置本体と、前記装置本体を支持する支持体と、を備えた眼科装置であって、
前記装置本体に処理の指示を与える操作部が、前記支持体に対して回転不能に設けられ、
前記支持体に対して、前記光学系を、該光学系の光軸に直交する軸を回転軸として相対的に回転させることにより、前記支持体および前記操作部に対する前記光学系の位置を変化させることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
照明光源により照明された被検眼からの光を受光する光学系を少なくとも有する装置本体と、前記装置本体を支持する支持体と、を備えた眼科装置であって、
前記装置本体と前記支持体とは、前記装置本体に設けた装着部と、前記支持体の被装着部とを装着することで互いに連結されるよう構成され、
前記装置本体の前記装着部から前記支持体の前記被装着部を脱着することで、前記装置本体と前記支持体とを分離し、前記装置本体または前記支持体を、前記光学系の光軸に直交する軸を回転軸として相対的に回転し、前記装着部に前記被装着部を装着することにより、前記支持体に対して、前記光学系を、前記回転軸を中心に相対的に回転させ、前記支持体に対する前記光学系の位置を変化させることを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
照明光源により照明された被検眼からの光を受光する光学系を少なくとも有する装置本体と、前記装置本体を支持する支持体と、を備えた眼科装置であって、
前記支持体は、検者が把持する把持部と、前記検者が前記把持部を把持したときに、該把持部から前記検者の方向に突出し、前記検者の腕の上面に配置される支持部を、さらに有し、
前記支持体に対して、前記光学系を、該光学系の光軸に直交する軸を回転軸として相対的に回転させることにより、前記支持体に対する前記光学系の位置を変化させることを特徴とする眼科装置。
【請求項4】
前記光学系は被検者の前記被検眼に対向して配置する接眼部を有し、
前記被検者の被検眼に対向する方向に前記接眼部が配置された前記光学系を、前記回転軸を中心に相対的に回転させることにより、前記光学系の前記接眼部を、検者の被検眼に対向して配置するよう構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記装置本体と前記支持体とは、前記装置本体に設けた装着部と、前記支持体の被装着
部とを装着することで互いに連結されるよう構成され、
前記装置本体の前記装着部から前記支持体の前記被装着部を脱着することで、前記装置
本体と前記支持体とを分離し、前記装置本体または前記支持体を、前記回転軸を中心に相
対的に回転し、前記装着部に前記被装着部を装着することにより、前記支持体に対する前
記光学系の位置を変化させる請求項1またはに記載の眼科装置。
【請求項6】
前記装置本体と前記支持体とは、前記回転軸と同軸上に配置した支軸からなる軸支部によって互いに軸支されており、
前記支軸を回転軸として、前記支持体に対して前記装置本体を相対的に回転させることにより、前記支持体に対する前記光学系の相対的な位置を変化させる請求項1、3、4のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記光学系は、前記回転軸と同軸上に配置した支軸からなる軸支部によって前記装置本体に軸支されており、
前記支軸を回転軸として、前記光学系を前記装置本体に対して相対的に回転させることにより、前記支持体に対する前記光学系の位置を変化させる請求項1、3、4のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記支持体は、検者が把持する把持部を有している請求項1、2、4〜7のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記支持体は、前記検者が前記把持部を把持したときに、該把持部から前記検者の方向に突出し、前記検者の腕の上面に配置される支持部を、さらに有する請求項に記載の眼科装置。
【請求項10】
前記支持体は、前記装置本体を設置面に据置く据え置き台を有している請求項1〜のいずれか一項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼底検査などの眼科検査に使用される眼科装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、眼底検査や視力検査等に用いる眼科装置として、眼科医院や眼鏡店などに設置され、専門知識を有する医師等が使用する大型の眼科装置が存在する。また、近年では、持ち運びや操作が容易で、病院等以外の場所での集団検診等で手軽に眼科検査ができるような、軽量でコンパクトな眼科装置が開発されている(たとえば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1では、手持ち型と据え置き型とを兼用した眼科装置が開示されている。手持ち型の眼科装置とは、医師等の検査を行う者(以下、「検者」と呼ぶ。)が手で把持して使用する小型の眼科装置である。検者は、眼科装置に設けられた取手等を把持して、検査を受ける者(以下「被検者」と呼ぶ。)の眼を接眼部に近接させ、被検眼の観察や撮影を行う。また、据え置き型の眼科装置とは、机や作業台の設置面上に設置して使用するも眼科装置である。手持ち型では、使用場所を選ばず、手軽で自由度の高い検査が可能である。これに対して、据え置き型では、被検者のひたいや顎等をアライメントに載せることで、装置に対して頭部を固定して使用するため、被検者の被検眼をより確実に検査することができる。
【0004】
また、特許文献2では、装置本体に対して、光軸を回転軸として取手を回転可能とした手持ち型の眼科装置が開示されている。このような構成により、カメラ本体に対して取手の角度を自由に設定することができ、検者と被検者とが互いに正面で向き合って検査する必要がなくなる。そのため、ベッドに寝ている被検者を、ベッドの何れの方向からでも検査することができるなど、検査の自由度を高めようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−234184号公報
【特許文献2】特開平9−224910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2のような従来の眼科装置では、接眼レンズ等を被検者の被検眼に近接させた状態で、検者が操作し易い位置に操作ボタンや操作パネルが配置されている。つまり、被検者以外の者が、被検者の眼科検査を行うことを前提にしているため、被検者が自身で眼科検査を行うことは想定されていない。そのため、手持ち型の眼科装置で被検者が検者となって自身の眼科検査を行うときには、眼科装置を180°回転させ、自身の被検眼に接眼レンズ等を近接した状態で、操作ボタン等を操作する必要がある。この場合、操作ボタン等も180°反転するため、操作ボタンの位置を手探りして操作するか、手首を不自然に折り曲げるなど不安定な状態で操作することとなり、検査精度に影響することがある。また、据え置き型の眼科装置の場合は、検者が自身の眼科検査を行うときは、被検者の位置にわざわざ移動する必要があって煩わしく、また、操作パネル等が操作しにくい位置に向いてしまうことがある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、集団検診等などで手軽に使用することができ、検者が被検者の眼科検査を行うだけでなく、被検者が自ら検者となって、または、検者が自身の眼科検査も精度よく行うことが可能な、操作性に優れた眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本願に係る眼科装置は、照明光源により照明された被検眼からの光を受光する光学系を少なくとも有する装置本体と、前記装置本体を支持する支持体と、を備えた眼科装置であって、前記装置本体に処理の指示を与える操作部が、前記支持体に対して回転不能に設けられ、前記支持体に対して、前記光学系を、該光学系の光軸に直交する軸を回転軸として相対的に回転させることにより、前記支持体および前記操作部に対する前記光学系の位置を変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、眼科検査に用いる光学系を回転させることにより、支持体に対して光学系の位置を変化させることができる。そのため、光学系を被検者の被検眼に対向する位置に配置するだけでなく、光学系を検者自身の被検眼に対向する位置に配置することもできる。したがって、集団検診等などで手軽に使用することができ、検者が被検者の眼科検査を行うだけでなく、被検者が自ら検者となって、または、検者が自身の眼科検査も精度よく行うことが可能な、操作性に優れた眼科装置を提供することができる。その結果、眼科検査を精度よく行うことが可能となり、眼科装置の光学性能も向上させることができる。また、被検者が眼科装置を備えた病院等に出向く必要がなく、公民館や企業等、医療施設外で行う集団健診等であっても手軽に検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本願の実施例1に係る光走査型検眼鏡の斜視図である。
図2】実施例1に係る光走査型検眼鏡の光学系の構成と、制御回路部のシステム構成とを説明するための説明図である。
図3】実施例1に係る光走査型検眼鏡で、検者が被検者の眼底撮影を行っている状態(他者撮影モード)を示す概略図である。
図4】実施例1に係る手持ち型の光走査型検眼鏡で、検者が自身の眼底撮影を行っている状態(自己撮影モード)を示す概略図である。
図5】実施例1に係る手持ち型の光走査型検眼鏡において、他者撮影モード時の装置本体と支持体との相対位置関係を示す概略図であって、(a)は装置本体側から見た平面図であり、(b)は接眼部から見た正面図であり、(c)は側面図である。
図6】実施例1に係る手持ち型の光走査型検眼鏡の装置本体から、支持体を脱着した状態を示す概略図である。
図7】実施例1に係る手持ち型の光走査型検眼鏡において、自己撮影モード時の装置本体と支持体との相対位置関係を示す概略図であって、(a)は装置本体側から見た平面図であり、(b)は接眼部から見た正面図であり、(c)は側面図である。
図8】実施例2に係る手持ち型の光走査型検眼鏡の装置本体を、支持体に対して回転させた際の装置本体と支持体との相対位置関係を示す平面図であって、(a)は回転前の初期位置(他者撮影モード)を示し、(b)は初期位置から90°回転させた状態(第2の他者撮影モード)を示し、(c)は初期位置から180°回転させた状態(自己撮影モード)を示す。
図9】実施例3に係る手持ち型の光走査型検眼鏡において、他者撮影モード時の装置本体と支持体との相対位置関係を示す概略図であって、(a)は装置本体側から見た平面図であり、(b)は接眼部から見た正面図であり、(c)は側面図である。
図10】実施例3に係る手持ち型の光走査型検眼鏡において、自己撮影モード時の装置本体と支持体との相対位置関係を示す概略図であって、(a)は装置本体側から見た平面図であり、(b)は接眼部から見た正面図であり、(c)は側面図である。
図11】実施例4に係る据え置き型の光走査型検眼鏡において、他者撮影モード時の装置本体と支持体との相対位置関係を示す概略図であって、(a)は装置本体側から見た平面図であり、(b)は接眼部から見た正面図であり、(c)は側面図である。
図12】実施例4に係る据え置き型の光走査型検眼鏡において、自己撮影モード時の装置本体と支持体との相対位置関係を示す概略図であって、(a)は装置本体側から見た平面図であり、(b)は接眼部から見た正面図であり、(c)は側面図である。
図13】実施例5に係る据え置き型の光走査型検眼鏡において、他者撮影モード時の装置本体と支持体との相対位置関係を示す概略図であって、(a)は装置本体側から見た平面図であり、(b)は接眼部から見た正面図であり、(c)は側面図である。
図14】実施例5に係る据え置き型の光走査型検眼鏡において、自己撮影モード時の装置本体と支持体との相対位置関係を示す概略図であって、(a)は装置本体側から見た平面図であり、(b)は接眼部から見た正面図であり、(c)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
(手持ち型の光走査型検眼鏡の外観構成の概要)
以下、本願の実施例1に係る眼科装置について、図1図7を参照しながら説明する。図1は、実施例1の眼科装置としての手持ち型(ポータブルタイプともいう)の光走査型検眼鏡100であり、装置本体1と、この装置本体1を支持する支持体2と、を有して構成している。
【0012】
以下、本明細書では、光走査型検眼鏡100を図1のように通常の使用形態(正姿勢)で構えた状態での上下方向に対応して、装置本体1方向を上、支持体2方向を下と定義する。したがって、光走査型検眼鏡100を傾けた状態や、逆さに配置した状態でも、装置本体1側を上、支持体2側を下というものとする。なお、正姿勢で構えたときに、装置本体が下に、支持体が上に位置するような構成の眼科装置では、支持体側を上、装置本体側を下と定義してもよい。また、前後左右方向については、基本的には、図1に示すように、被検者の眼科検査を行う際に接眼部が位置する方向を前、検者の方向を後、接眼部から見て左側を左、右側を右と定義するが、説明上、前後左右を入れ替えて説明することがある。
【0013】
装置本体1には、図1図6等に示すように、被験眼に対面させる、接眼部としての接眼鏡筒部3が設けられている。また、装置本体1の、この接眼鏡筒部3とは反対側に、眼底画像等を表示するモニタ部4と、支持体2を装着する装着部としての装着面5と、が設けられている。
【0014】
また、装置本体1の内部には、図2に示すように、眼底の観察と撮影を行う観察撮影光学系としてのレーザ走査光学系200、このレーザ走査光学系200、その他の動作を制御する制御回路部30等が備えられている。これらの詳細については後述する。装置本体1には、さらに、図示はしないが、各部に電源電力を供給する電源等、その他眼底観察撮影に必要な駆動機構、電源オン・オフ用の電源ボタン等が設けられている。電源は、バッテリ交換形式の内蔵型のものであってもよいし、充電式のものであってもよい。
【0015】
支持体2は、光走査型検眼鏡100を操作する検者Aが手指や掌で把持する把持部6と、装置本体1に処理の指示を与える操作部としての操作ボタン7と、装置本体1の装着面5に装着する被装着部としての支持部8と、が設けられている。なお、この支持部8と装着面5とは、装置本体1を支持体2に対して相対的に回転させ、支持体2に対するレーザ走査光学系200の位置を変化させる位置設定部10としても機能する。
【0016】
把持部6は、図1に示すように、通常の使用状態で光走査型検眼鏡100を配置したとき、装置本体1の前方に位置するような構成としている。そして、装置本体1から下方向に四角柱形に突出形成された、簡易な構造となっている。なお、把持部6が実施例1の構造に限定されることはなく、他の異なる実施形態として、例えば、掌で握り易くいように、円柱形に形成してもよく、指を配置し易いように把持部6の表面に指型の凹凸等を設けてもよい。検者Aが握り易い形状であれば、他の何れの形状の把持部6としてもよい。
【0017】
実施例1および以降の実施例では、操作部として操作ボタン7を設け、押しボタン形式を採用している。この操作ボタン7を押すことで、アライメント、眼底撮影、合焦等、光学系による眼底撮影時の様々な動作を実行する指示を与え、また、動作を停止する指示を与えるような構成としている。実施例1では、図1図7に示すように、操作ボタン7を一つのみ図示し、すべての動作をこの一つの操作ボタン7で行うような構成としている。しかし、本願がこれに限定されることはなく、撮影ボタン、アライメントボタン、合焦ボタン等、処理ごとに複数の操作ボタンを設けてもよい。また、操作部が押しボタンに限定されることはなく、検者Aが操作し易いものであれば、引き金形式など、他の何れの形式としてもよい。
【0018】
また、支持体2の操作ボタン7からの装置本体1の制御回路部30への観察、撮影、アライメント、合焦等の指令の伝達手段としては、従来公知のいずれの手段を用いてもよい。例えば、無線の電気信号等によって伝達するものであってもよいし、図示しないコード等によって電気信号等を伝達するものであってもよい。また、カムやリンクを用いた機械的な伝達手段を用いてもよい。以降の実施例でも同様である。
【0019】
支持部8は、把持部6の上端から、装置本体1の底面に沿って把持部6に対して直角方向に延びる板状に形成され、把持部6と一体に形成されている。このよう把持部6と支持部8との構成により、図5(c)等に示すように、支持体2の側面形状がL字形となっている。なお、支持部8は、板状に限定されることはなく、手の甲や上腕に載せ易いように、これらの形状に対応した曲面等を有する形状としてもよい。
【0020】
支持部8には、マグネット部材(図示せず)が設けられている。このマグネット部材の吸着力により、支持部8が装置本体1の装着面5に装着される。これにより、装置本体1と支持体2とが連結される。装置本体1の装着面5は、装置本体1の下面に、マグネット部材に吸着される磁性部材を設けることにより形成している。この磁性部材は、装置本体1の下面全体または、少なくとも支持体2を装着する部位に設けられている。または、装置本体1の筐体を、磁性を有する金属等の磁性部材で形成し、上下左右の何れの面にも支持部8を装着できるようにしてもよい。
【0021】
検者Aが、被検者Bの眼科検査を行う際には、図5(a)、(b)に示すように、接眼鏡筒部3が把持部6側に位置するような方向で、支持体2を装置本体1に装着する。また、検者Aが自身の眼科検査を行う際には、図7(a)、(b)に示すように、接眼鏡筒部3とは反対側のモニタ部4側に把持部6が位置するような方向で、支持体2と装置本体1とを装着する。このように、装着面5に対する支持部8の装着方向を変えることで、検者Aに対する接眼鏡筒部3の位置を、0°から180°に変化させる位置設定部10としての機能を発揮することができる。なお、実施例1では、支持部8の左右方向の装着位置は、いずれの場合でも装置本体1の中心よりも右寄りになっているが、検者Aにとって操作が容易であれば、装置本体1の左右何れの位置に支持部8を装着してもよい。
【0022】
また、支持部8は、装置本体1と支持体2との連結手段および位置設定部としての機能だけでなく、光走査型検眼鏡100の支持手段としての機能をも有している。すなわち、検者Aが光走査型検眼鏡100を構え、把持部6を把持したときに、検者Aの手の甲や腕の上面に支持部8が配置されることで、装置本体1の自重を腕で支えることができる。このように、装置本体1を腕で支持することで、手持ち時の安定性が向上し、手ブレ等を抑制して、光走査型検眼鏡100による眼底の観察や撮影等を、より高精度に行うことができる。
【0023】
なお、本願の装着部と被装着部としての装着面5と支持部8とが上記に限定されることはなく、マグネット部材を装着面5に設け、磁性部材を支持部8に設けてもよい。また、支持部8および装着面5に、それぞれ正、負のマグネット部材を設けてもよく、より強固な吸着力を得ることができる。また、装着部と被装着部とが、装着面5と支持部8とに限定されることもなく、装置本体1に、支持部8の形状に対応した凹凸やレール部材を設けて装着部を形成し、この凹凸またはレールからなる装着部に支持部8を嵌合して、装着するように構成してもよい。この場合でも、装着部に対して、支持部8の装着方向を変えて装着することで、位置設定部10としての機能を発揮することができる。
【0024】
また、装置本体1には、図5図6に点線で示すように、接眼鏡筒部3の上部に、額当て部9を設けてもよい。そして、光走査型検眼鏡100を使用する際は、被検者B(または検者A自身)が額当て部9に額を当てることで、被検眼Eに対向するように接眼鏡筒部3を配置することができる。さらに、被検者Bの頭部を装置本体1に対して固定することができ、手ブレ等を抑制して、高精度な撮影が可能となる。また、額当て部9に、接眼鏡筒部3から見て左右2か所に額のカーブに沿った窪みを設けることで、右側の窪みに額を当てれば左目の検査を行うことができ、左側の窪みに額を当てれば右目の検査ができる。このように、額当て部9は、被検眼Eの位置合わせ機能をも備えている。
【0025】
(光走査型検眼鏡のレーザ走査光学系、制御回路部の概要)
次に、図2を用いて、実施例1、および、以降の実施例で使用するレーザ走査光学系200と、制御回路部30について説明する。なお、本願の光学系や制御回路部がこれらに限定されることはなく、検査目的や設計等に応じて、適宜のものを使用することができる。図2に示すように、レーザ走査光学系200は、照明光源から照明光を照射する照明用光源部20と、被検眼Eからの光を受光する受光部21と、を有している。
【0026】
照明用光源部20は、赤外光を照射する照明光源としての赤外光源20a、青色光(以下、「B光」と呼ぶ。)を発生する照明光源としての青色光源20b、緑色光(以下、「G光」と呼ぶ。)を発生する照明光源としての緑色光源20g、および、赤色光(以下、「R光」と呼ぶ。)を発生する照明光源としての赤色光源20rから構成されている。これらの光源にはレーザが用いられている。
【0027】
赤外光源20aから発せされた赤外光Paは、集光レンズ20a’により集光されて、反射ミラー20a”に導かれる。青色光源20bから発せられたB光は、集光レンズ20b’により集光されて、ダイクロイックミラー20b”に導かれる。その緑色光源20gから発せられたG光は、集光レンズ20g’により集光されて、ダイクロイックミラー20g”に導かれる。赤色光源20rから発せられたR光は、集光レンズ20r’により集光されて、ダイクロイックミラー20r”に導かれる。
【0028】
ダイクロイックミラー20b”は、赤外光Paを透過し、B光を反射する機能を果たす。ダイクロイックミラー20g”は、赤外光PaおよびB光を透過し、G光を反射する機能を果たす。ダイクロイックミラー20r”は、R光を透過し、G光、B光および赤外光Paを反射する機能を果たす。
【0029】
赤外光Pa、B光、G光、R光は、反射ミラー20a”、ダイクロイックミラー20b”、20g”、20r”によりその照明光路が合成されて、ビームスプリッタ22に導かれ、このビームスプリッタ22を透過して2軸走査器(走査器)としての例えばMEMSミラー23に導かれる。
【0030】
赤外光Pa、B光、G光、R光は、このMEMSミラー23によって、二次元方向にスキャンされつつ、リレーレンズ24に導かれ、被検眼Eの眼底Erと共役な面Er’にスポット光として空中結像される。
【0031】
眼底Erと共役な面Er’に結像されたスポット光は、合焦レンズとしての対物レンズ25により集光され、被検眼Eの瞳孔Ep、水晶体Ecを通って眼内に導かれ、面Er’と共役な眼底Erの共役面Er”にスポット光Spとして結像される。
【0032】
対物レンズ25は、実施例1および以降の実施例では、接眼鏡筒部3にマニュアル操作によりその軸方向に前後動可能に設けられている。被検眼Eの屈折力に応じて、接眼鏡筒部3の環状リング部材(図示を略す)を回転させると、対物レンズ25が光軸方向に前後動する。その結果、共役面Er”が眼底Erに合致され、眼底Erに鮮明なスポット光が形成される。
【0033】
眼底Erは、MEMSミラー23による二次元的走査によって、眼底Erが走査される。また、眼底Erからのスポット反射光は、水晶体Ec、瞳孔Epを通って対物レンズ25に導かれ、その眼底Erと共役な面Er’にいったん空中結像される。その後、スポット反射光は、リレーレンズ24によって集光され、MEMSミラー23を経由してビームスプリッタ22に導かれる。このビームスプリッタ22により反射されたスポット反射光は、受光部21に導かれる。
【0034】
受光部21は、R光を反射し、G光、B光、赤外光Paを透過するダイクロイックミラー21r”、G光を反射し、B光、赤外光Paを透過するダイクロイックミラー21g”、および、B光を反射し、赤外光Paを透過するダイクロイックミラー21b”を有している。
【0035】
ダイクロイックミラー21r”の反射方向前方には、結像レンズ21r’が設けられ、R光はその結像レンズ21r’により受像素子としてのPDセンサ21rにスポット状に結像される。ダイクロイックミラー21g”の反射方向前方には、結像レンズ21g’が設けられ、G光はその結像レンズ21g’により受像素子としてのPDセンサ21gにスポット状に結像される。ダイクロイックミラー21b”の反射方向前方には、結像レンズ21b’が設けられ、G光はその結像レンズ21b’により受像素子としてのPDセンサ21bにスポット状に結像される。ダイクロイックミラー21b”の反射方向後方には、結像レンズ21a’が設けられ、G光はその結像レンズ21a’により受像素子としてのPDセンサ21aにスポット状に結像される。
【0036】
各PDセンサ21a、21b、21g、21rからの受光信号は、後述する眼底像構築部33に入力される。なお、PDセンサ21aは赤外領域に感度を有し、PDセンサ21bは青色波長領域に感度を有し、PDセンサ21gは緑色波長領域に感度を有し、PDセンサ21rは赤色波長領域に感度を有する。
【0037】
上述のようなレーザ走査光学系200が、可動ケース(図示せず)等に設けられ、装置本体1の内部に収納されている。そして、駆動機構(図示せず)により、可動ケースが装置本体1に対して、前後上下左右方向に駆動されることにより、被検眼Eに対するレーザ走査光学系200のアライメント、合焦等が行われる。
【0038】
また、装置本体1の内部には、上述の制御回路部30が備えられている。この制御回路部30は、操作ボタン7の押し動作による検者Aの指示にしたがって、レーザ走査光学系200、駆動機構等の動作を制御し、眼底Erの画像を構築してモニタ部4に表示する等、光走査型検眼鏡100全体を制御する。制御回路部30は、各種演算や各部の駆動制御を実行するCPU(Central Processing Unit)、コンピュータプログラム等の固定的データを予め記憶するROM(Read Only Memory)、各種データを書き換え自在に記憶するワークエリア等として機能するRAM(Random Access Memory)等のハードウェアを備えている。
【0039】
また、図2に示すように、制御回路部30には、光学制御回路部31、点灯制御回路部32、眼底像構築部33等が設けられている。光学制御回路部31は、レーザ走査光学系200の動作を制御するもので、被検眼Eに対して装置本体1のアライメント調節処理、被検眼Eの眼底Erに対する合焦調節処理、眼底Erの観察処理、眼底Erの撮影処理等を実行させる。点灯制御回路部32は、照明用光源部20を制御し、各処理に応じて赤外光、B光、R光、G光を照射させる。眼底像構築部33は、受光部21から入力される信号に基づいて、眼底画像を構築し、モニタ部4への表示や記憶を行う。
【0040】
以下、上述のようなレーザ走査光学系200と制御回路部30とを用いた、被検眼Eに対する光走査型検眼鏡100の観察モード時、撮影モード時の動作について説明する。また、説明は省略するが、観察や撮影を行う際には、レーザ走査光学系200のアライメント調節や合焦調節が行われる。例えば、アライメント調整では、受光部21での受光結果に基づいて、可動ケースごとレーザ走査光学系200全体を上下左右に移動させることで行われる。合焦調節は、受光結果に基づいて、レーザ走査光学系200全体を前後に移動させるか、対物レンズ25やリレーレンズ24の位置を調整すること等により行われる。
【0041】
(観察モード時)
検者Aによる操作ボタン7の操作により、光走査型検眼鏡100が観察モードとなったとき、点灯制御回路部32の制御によって、照明用光源部20の赤外光源20aが点灯される。これにより、被検眼Eの眼底Erに赤外光であるスポット光が形成される。
【0042】
MEMSミラー23は、光学制御回路部31制御により、所定範囲の眼底Erを走査する。この走査により生じた眼底Erからのスポット反射光が、赤外受光用のPDセンサ21aに受光される。このPDセンサ21aからの受光信号は、眼底像構築部33に入力される。
【0043】
眼底像構築部33は、受光信号に基づいて、眼底観察用の眼底画像を構築し、その画像信号をモニタ部4に向かって出力する。これにより、モニタ部4の液晶表示画面に眼底像EGrが表示される。検者Aは、この眼底観察用の眼底像EGrを観察しつつ、操作ボタン7を操作することにより、光走査型検眼鏡100が撮影モードに移行する。
【0044】
(撮影モード時)
撮影モード時には、点灯制御回路部32の制御によって、照明用光源部20の青色光源20b、緑色光源20g、赤色光源20rが同時に点灯される。その点灯時間は、例えば100ミリ秒である。この青色光源20b、緑色光源20g、赤色光源20rの点灯時間の間に、MEMSミラー23は観察用の眼底画像を構築する際の走査軌跡と同一の走査軌跡を描くように駆動される。
【0045】
その結果、観察の際と同様に、可視光である白色のスポット光により眼底Erが走査される。その反射光はPDセンサ21b、21g、21rに受光されることで、撮影が行われ、その撮影結果である各受光信号が、眼底像構築部33に入力される。
【0046】
眼底像構築部33は、PDセンサ21b、21g、21rからの受光信号に基づいて、カラー眼底像を構築する。この眼底像は内蔵メモリ部等に、カラー画像として保存される。また、装置本体1に、再生ボタン(図示せず)を設けて、再生ボタンを操作することにより、モニタ部4にカラーの眼底像を表示させてもよいし、電話回線等を通じて、撮影と同時に自動的に診療機関に眼底像を送信する構成としてもよい。
【0047】
上述のように構成された実施例1の光走査型検眼鏡100を用いて、検者Aが被検者Bの被検眼Eの眼底撮影を行う場合、および、検者Aが、自身の被検眼Eの眼底撮影を行う場合の作用について、図面を用いて以下に説明する。本明細書では、検者Aが被検者Bの眼底撮影を行うことを、「他者撮影モード」と呼び、検者A(被検者Bが自ら検者Aとなる場合も含むものとする。)が、自身の眼底撮影を行うことを、「自己撮影モード」と呼ぶ。
【0048】
(他者撮影モード)
検者Aが被検者B(他者)の眼底撮影を行う場合、図5(b)に示すように、支持体2の把持部6側に、接眼鏡筒部3側が位置するように、装置本体1と支持体2とを装着する。この状態で検者Aが掌で後方側から把持部6を把持すると、図5に示すように、操作ボタン7が、接眼鏡筒部3と同じ方向、つまり、被検者Bに対面する方向(前方)に配置される。また、支持部8は、把持部6から、検者Aに対面する方向(後方)に延びるよう配置される。
【0049】
また、このように検者Aが把持部6を把持することで、人差し指等の位置に、操作ボタン7が配置される。そのため、手指や掌で把持部6をしっかりと把持した状態で、人差し指で操作ボタン7を容易に押すことが可能となる。そして、検者Aが被検者Bの被検眼Eに対して光走査型検眼鏡100を正面から構え、額当て部9に被検者Bの額に当てると、被検者Bの被検眼Eに近接して接眼鏡筒部3が配置される(図3参照)。また、このように検者Aが光走査型検眼鏡100を構えることで、支持部8が検者Aの手の甲や上腕の上面に当たるので、装置本体1の自重を上腕で支持しながら眼底撮影を行うことができる。
【0050】
次に、検者Aが操作ボタン7を人差し指等で押すことで、レーザ走査光学系200による眼底撮影が開始される。検者Aは、人差し指以外の指と掌全体で把持部6を安定よく握った状態で、操作ボタン7の操作を行うことができる。レーザ走査光学系200では、上述したような光学動作により、被検者Bの眼底撮影を行うことができる。このように、実施例1の手持ち型の光走査型検眼鏡100を用いることで、検者Aは被検者Bの眼底撮影を、手軽かつ容易に行うことができる。
【0051】
(自己撮影モード)
次に、自己撮影モードについて説明する。まず、図6に示すような他者撮影モードから、自己撮影モードへ切り替える際の動作について説明する。他者撮影モードでの装置本体1と支持体2との位置関係では、接眼鏡筒部3を検者A自身の被検眼Eに近接させると、把持部6の操作ボタン7が検者Aに対面する方向(前方)に向いて配置され、支持部8は検者Aとは反対方向(後方)に向かって配置される。そのため、把持部6を把持すると、支持部8を上腕で支持できなくなる。また、検者Aは、親指を把持部6から離して操作ボタン7を操作することとなり、撮影時の光走査型検眼鏡100の安定性が低下し、円滑な撮影ができなくなることがある。または、手首を折り曲げて操作ボタン7の背面側から把持部6を把持し、人差し指等で操作ボタン7を操作する等、無理な体勢で撮影することとなり、やはり安定性が低下することがある。
【0052】
したがって、自己撮影を容易かつ安定して行うため、実施例1では、光走査型検眼鏡100に上述のような位置設定部10を設けている。自己撮影モードへ切り替えるためには、まず、図6に示すように、検者Aは、装置本体1の装着面5から、支持体2の支持部8を脱着し、装置本体1と支持体2とを分離する。次に、レーザ走査光学系200の光軸Lとは交差する方向であって、把持部6の突出方向(上下方向)と平行な軸を回転軸Xとして、装置本体1を180°回転させる。実施例1では、例えば、図5図7に示すように、支持部8の中心と光軸Lとが交差する位置を通る軸を回転軸Xとしている。しかし、分離した状態で、装置本体1または支持体2を水平方向に180°回転させることができればよく、必ずしも支持部8の中心と光軸Lとが交差する位置を回転軸としなくてもよい。このように初期位置から180°回転した状態で、装着面5に支持部8を装着し、装置本体1と支持体2とを連結する。
【0053】
以上の動作により、検者Aが手指や掌で把持部6を把持すると、支持部8が検者Aの腕の上方に配置され、検者Aの人差し指が操作ボタン7に配置される(図4参照)。また、図4図7の各図に示すように、接眼鏡筒部3が検者Aに対面する方向(後方)に向いて配置される。また、支持部8が検者Aの上腕の上方に配置されるため、検者Aは自己撮影モードにおいても、手の甲や上腕で装置本体1の自重を支えることができる。また、この場合も、装置本体1の右寄りに支持体2が位置しているため、装置本体1が検者Aの右手側に位置する。そのため、支持部8だけでなく、装置本体1の下面が検者Aの右腕に当たり、装置本体1の自重を右腕で支え易くなる。なお、検者Aが左手で操作する場合などは、装置本体1への支持部8の装着位置を変えてもよい。
【0054】
そして、検者Aが、自身の被検眼Eに対して光走査型検眼鏡100を構えた状態で、人差し指等で操作ボタン7を押すことで、レーザ走査光学系200により、眼底画像の撮影が行われる。さらに、再度、自己撮影モードから他者撮影モードへ切り替える場合は、装置本体1と支持体2とを分離し、支持体2に対して装置本体1を180°回転させた後、装置本体1と支持体2とを互いに連結するだけで、容易にモード切り替えが可能となる。
【0055】
以上、実施例1の光走査型検眼鏡100では、装置本体1の装着面5に対して、支持体2の支持部8を着脱するだけで、装置本体1と支持体2との相対位置(すなわち、検者Aに対する光学系の相対位置)を変化させ、他者撮影モードと自己撮影モードとの切り替えを行うことができる。そのため、検者Aは、被検者Bの眼底撮影を行う他者撮影モードでも、自身の眼底撮影を行う自己撮影モードにおいても、安定して把持部6を握って操作ボタン7を操作することができ、操作性が向上する。また、支持部8を介して、装置本体1の自重を上腕で支持することで、装置本体1の安定性が向上し、手ブレ等を抑制することができる。しがたって、実施例1の光走査型検眼鏡100では、他者撮影モードにおいても、自己撮影モードにおいても、より高精度な眼底撮影が可能となり、光学性能も向上する。
【0056】
(実施例2)
以下、実施例2の手持ち型の光走査型検眼鏡について、図8を用いて説明する。実施例2の光走査型検眼鏡110は、位置設定部10を、後述の軸支部による位置設定部に変えたこと以外は、実施例1の光走査型検眼鏡と同様の基本構成を有している。そのため、実施例1と同様の部材に同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。図8は、実施例2の光走査型検眼鏡110を回転させたときの変化を示したもので、図8(a)は初期状態(他者撮影モード)、図8(b)は初期状態から反時計回りに90°回転させた状態(第2の他者撮影モード)、図8(c)は初期状態から180°回転させた状態(自己撮影モード)を示す。
【0057】
図8の各図に示すように、実施例2の光走査型検眼鏡110は、実施例1と同様のレーザ走査光学系や制御回路部等を内装した装置本体1と、操作ボタン7、把持部6、支持部8等を備えた支持体2と、を有して構成されている。実施例1では、装置本体1と支持体2とを分離可能に形成し、装着面5への支持部8の装着方向を変えることで、支持体2に対する装置本体1の接眼鏡筒部3の位置を変化させる位置設定部10を構成している。
【0058】
これに対して、実施例2では、光軸Lと直交する回転軸Xと同軸上に配置した支軸(回転軸部材)によって、装置本体1と支持体2とを互いに回転可能に軸支している(以下、「軸支部11」と呼ぶ。)。そして、この軸支部11により、位置設定部10を構成している。すなわち、この軸支部11を支点(回転軸)として、装置本体1と支持体2とを相対的に回転させることで、検者Aに対する接眼鏡筒部3(光学系)の位置を変化させている。なお、図8の各図では、軸支部11を実線で表わしているが、実際は、装置本体1の下面と支持体2の上面との間に設けられているため、装置本体1の上面からは、視認できないようになっている。
【0059】
また、実施例1では、支持体2に対して装置本体1を水平方向に180°回転可能としている。これに対して、実施例2では、装置本体1が、支持体2に対して、水平方向に90°または180°の角度で回転し、様々な角度での撮影が可能となるように構成されている。このように、90°の位置(左右側)での撮影が可能となることで、検者Aが被検者Bの正面から撮影する必要がなく、検者Aによる被検者Bの眼底撮影の自由度を、さらに高めることができる。
【0060】
また、このように90°または180°回転させて位置設定を行った後に、装置本体1が支持体2に対して不必要に回転することがないよう、係止手段などを設けてもよい。例えば、装置本体1の下面に、上下に突没する突起を設け、支持体2の回転移動時は、突起が引っ込むようにすることで回転移動を妨げないようにする。そして、回転移動が完了した時は、突起が突出して支持体2に係合し、回転止めの機能を発揮するようにする。または、装置本体1と支持体2との摩擦力や、マグネット部材等の止着手段によって、位置設定の時以外の使用時には、互いの回転を抑制するようにしてもよい。
【0061】
上述のように構成した実施例2の光走査型検眼鏡110で、検者Aと被検者Bとが対面して撮影を行う、通常の他者撮影モードの際には、図8(a)に示すように、接眼鏡筒部3を被検者Bに対面する前方に配置する。この状態で、検者Aは、把持部6を把持して、被検者Bの正面から、当該被検者Bの被検眼Eに対して光走査型検眼鏡110を構えることで、被検者Bの眼底撮影を操作性よく行うことができる。
【0062】
次に、第2の他者撮影モードについて説明する。図8(a)の状態において、支持体2に対して、装置本体1を、軸支部11を回転軸Xとして、反時計回りに90°回転させ、図8(b)に示すように、接眼鏡筒部3が右方向に向くように位置設定する。このような配置とすることで、検者Aが把持部6を把持したときに、検者Aに対して、横方向(検者Aの左側)を向いて接眼鏡筒部3が配置される。そのため、検者Aは、正面でなく、左横に居る被検者Bに対しても、自身の体勢を変えることなく、眼底撮影を行うことができる。また、ベッド等の座っている患者等に対しても、ベッドに乗り上げる等して患者の上方から光走査型検眼鏡110を構える必要がなく、ベッドの横から患者の被検眼Eに対して光走査型検眼鏡110を容易に構えることができる。また、このように検者Aに対して、横向きに装置本体1を配置しても、検者Aに対する支持体2の向きは変化していない。したがって、把持部6を把持したときに、検者Aが操作し易い位置(人差し指の位置)に操作ボタン7が配置され、眼底撮影を操作性よく行うことができる。
【0063】
そして、装置本体1をさらに回転させて、図8(c)に示すように、装置本体1の位置を、初期位置から180°の位置に配置する。この操作により、接眼鏡筒部3が把持部6とは反対側、すなわち、検者Aに対面する方向(後方)に向いて配置される。そのため、検者A(または、被検者Bが自ら)は、自身の眼底撮影をも容易に行うことができる(自己撮影モード)。
【0064】
なお、図8に示す実施例2では、90°および180°の角度で回転するように構成しているが、本願がこれに限定されることはない。例えば、支持体2に対して、120°(時計回りで90°)に装置本体1の位置を設定して、眼底撮影等を行えるようにしてもよい。さらには、装置本体1を360°方向に自在に回転させて、所望の角度に位置設定できるようにしてもよく、眼底撮影、その他の眼科検査時の自由度をさらに向上させることができる。
【0065】
また、実施例2では、支軸を用いた軸支部11により装置本体1と支持体2とを相対的に改定させているが、本願がこれに限定されることはなく、ギア、その他の回転機構等を用いて回転するよう構成してもよい。以降の実施例の軸支部も同様である。
【0066】
(実施例3)
以下、実施例3の光走査型検眼鏡について、図9図10を用いて説明する。なお、実施例3でも、実施例1と同様の部材については、同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。実施例3の光走査型検眼鏡120は、図9に示すように、実施例1と同様のレーザ走査光学系や制御回路部等を内装した装置本体1と、操作ボタン7、把持部6、支持部8等を備えた支持体2と、を有して構成されている。
【0067】
実施例3の装置本体1は、図9図10の各図に示すように、基板部1aと、この基板部1aの両側に上方に向かって突出形成した一対のアーム部1bと、この一対のアーム部1bに、一対の軸支部13を介して、回転可能に軸支した可動体12と、を有して構成されている。そして、可動体12に、レーザ走査光学系と接眼鏡筒部3とを設けている。また、一対の軸支部13は、図9(a)、図10(a)等に示すように、レーザ走査光学系の光軸Lに対して、水平方向(左右方向)に直交する軸X(回転軸X)と同軸上に配置されている。そのため、可動体12は、軸支部13を回転軸として、装置本体1に対して前後方向に回転可能となっている。実施例3では、このような軸支部13等により、検者Aに対する接眼鏡筒部3(レーザ走査光学系)の位置を変化させる位置設定部10を構成している。
【0068】
また、実施例1、実施例2では、支持体2に対して、装置本体1全体を相対的に回転させるよう構成している。これに対して、実施例3では、装置本体1に対して可動体12を回転させることで、検者Aに対する接眼鏡筒部3の位置を変化させているので、支持体2に対して装置本体1全体を回転可能に形成する必要がない。支持体2の支持部8と装置本体1とは、接着材やネジ等の接続手段により、分離しないように一体に連結され、互いの安定性を高めている。また、実施例3でも、基板部1aの上面等に、眼底画像等を表示するモニタ部4等を設けてもよい。基板部1aは回転しないため、他者撮影モードでも自己撮影モードでも、検者Aに対向する位置にモニタ部4等を配置することができる。
【0069】
上述のように構成した実施例3の光走査型検眼鏡120で、他者撮影モードを行う際には、図9の各図に示すように、可動体12の位置を調整して、接眼鏡筒部3が、操作ボタン7が向く方向と同じ方向に向くように配置する。この状態で、検者Aが操作ボタン7の背面側(後方)から、把持部6を把持すると、操作ボタン7に手指が掛った状態で、支持部8が検者Aの上腕に配置される。また、接眼鏡筒部3が検者Aとは反対方向、すなわち、被検者Bに対面する方向(前方)に向いて配置される。そして、被検者Bの被検眼Eに近接させて、検者Aが光走査型検眼鏡120を構え、操作ボタン7を押すことで、被検者Bの眼底撮影を容易に行うことができる。
【0070】
また、他者撮影モードから、自己撮影モードへ切り替える場合は、図10の各図に示すように、装置本体1に対して、軸支部13を回転軸Xとして可動体12を検者Aに対向する方向(後方)に回転する。なお、実施例3では、図9の初期位置から、可動体12を約135°回転させている。これにより、図10(c)に示すように、接眼鏡筒部3が、検者Aに対向する方向(後方)に対して、斜め上方を向くよう傾斜して配置される。
【0071】
したがって、検者Aは、光走査型検眼鏡120を目線の位置まで高く持ち上げて眼底撮影を行う必要がなくなるとともに、支持部8に上腕が当たり易くなって、装置本体1の自重を支え易くなる。そのため、自己撮影モードでの眼底撮影を、操作性よく容易に行うことができる。さらには、接眼鏡筒部3がモニタ部4側に大きく突出することがなく、モニタ部4の視認が妨げられることもない。勿論、180°の位置まで可動体12を回転させるよう構成してもよく、各部の位置関係や、使用目的等に応じて適宜の角度で可動体12を回転させることができる。また、装置本体1の部品点数や組付け工数は増えるが、位置設定の際に装置本体1全体を回転させる必要がなく、少ない労力で容易に位置設定を行うことができる。
【0072】
また、上記実施例1〜実施例3では、手持ち型の光走査型検眼鏡としているが、変形例として、実施例1〜3の光走査型検眼鏡を、適宜の据え置き台に据え置いて、据え置き型の光走査型検眼鏡として兼用できるような構成としてもよい。このような構成とすれば、通常は据え置き型として、より確実な眼底撮影を行うことが可能であり、据え置き台から取り外して、手持ち型の光走査型検眼鏡として使用することで、自由度の高い眼底撮影等が可能となる。特に、実施例1では、支持体2と装置本体1とを分離できるので、手持ち用の支持体2を脱着した状態で、操作ボタンを備えた据え置き台に装着するような構成とすることで、いずれの場合でも操作性のよい使用が可能となる。このように、手持ち型の手軽さや自由度の高さと、据え置き型の確実さとを兼ね備えた眼科装置を提供することが可能となる。また、操作ボタン7は、必ずしも支持体2に設ける必要はなく、検者Aが操作し易い位置であれば、装置本体1に設けてもよい。
【0073】
(実施例4)
(据え置き型の光走査型検眼鏡の外観構成およびその作用)
以下、実施例4の据え置き型の光走査型検眼鏡について、図11図12を用いて説明する。なお、実施例4でも、実施例1と同様の部材については、同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。実施例4の光走査型検眼鏡130は、図11図12の各図に示すように、レーザ走査光学系や制御回路部等を内装した装置本体1と、操作ボタン7、把持部6を備えた支持体2と、を有して構成されている。
【0074】
実施例3では、装置本体1とは別個に形成した可動体12を、装置本体1に軸支しているが、実施例4では、装置本体1そのものを、支持体2に回転可能に軸支している。また、実施例1〜3では、支持体2に把持部6を設けることで、手持ち型の光走査型検眼鏡としているが、実施例4では、支持体2に、机等の設置面に据置く据え置き台14を設けることで、据え置き型の光走査型検眼鏡140としている。
【0075】
実施例4の装置本体1は、レーザ走査光学系と制御回路部とを内蔵し、接眼鏡筒部3を備えている。装置本体1は、両側に一対のアーム部1bを突出形成し、この一対のアーム部1bを、一対の支軸(軸支部13)を介して支持体2に軸支している。一対の軸支部13は、図10図11の各図に示すように、レーザ走査光学系の光軸Lに対して、水平方向(左右方向)に直交する軸X(回転軸X)と同軸上に配置されている。そのため、装置本体1は、軸支部13を回転軸として、支持体2に対して回転可能となっている。実施例4では、このような軸支部13等により、検者Aに対する接眼鏡筒部3(レーザ走査光学系)の位置を変化させる位置設定部10を構成している。
【0076】
また、実施例4では、操作ボタン7を、支持体2に上面に設けている。また、モニタ部等は、装置本体1に設けてもよいが、装置本体1全体を回転させるため、支持体2の後方(検者Aに対面する位置)に設ければ、検者Aが容易に視認することができる。
【0077】
上述のように構成した実施例4の光走査型検眼鏡130では、他者撮影モードの際には、図11(c)等に示すように、接眼鏡筒部3が、前方である被検者Bの方向に向かって配置されている。また、モニタ部等を設けた場合には、これらは検者A方向に向かって配置される。この状態で、被検者Bが被検眼Eを接眼鏡筒部3に近接させ、検者Aが操作ボタン7を押すことで、被検者Bの眼底撮影を行うことができる。また、検者Aは、モニタ部等で被検者Bの撮影画像等を確認しながら操作を行うことができる。
【0078】
次に、自己撮影モードへ切り替える場合は、支持体2に対して、軸支部13を回転軸Xとして、装置本体1を検者A方向に回転する。この操作により、図12の各図に示すように、接眼鏡筒部3が、検者Aに対面する方向(後方)に向いて配置される。
【0079】
したがって、据え置き型であっても、検者Aは、自己撮影モードのときに、被検者の位置までわざわざ移動する必要がなく、自身の眼底撮影を手軽に行うことなできる。また、再度他者撮影モードへ切り替える場合は、装置本体1を回転させて、接眼鏡筒部3を被検者Bの方向(前方)に向けるだけでよく、他者撮影モードと自己撮影モードとの切り替えを、容易に行うことができる。また、支持体2が回転していないため、支持体2の後方にモニタ部等を設けた場合は、撮影モードを切り替えても、これらは検者Aの方向(後方)を向いて配置される。そのため、検者Aは、他者撮影であっても自己撮影であっても、モニタ部により眼底画像等を容易に視認することができる。また、据え置き台14を設けて、光走査型検眼鏡130を据置いて使用することができるため、安定性が向上し、手ブレ等の心配のない、より高精度な眼底撮影が可能となる。
【0080】
(実施例5)
以下、実施例5の据え置き型の光走査型検眼鏡について、図12図13を用いて説明する。実施例5の光走査型検眼鏡140は、操作ボタン7を据え置き台14に設けたこと以外は、実施例4の光走査型検眼鏡130と同様の基本構成を有している。そのため、実施例4と同様の部材には、同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0081】
図12図13に示すように、実施例5の光走査型検眼鏡140は、レーザ走査光学系や制御回路部等を内装し、支持体2に対して軸支部13を回転軸Xとして、回転可能な装置本体1と、操作ボタン7、据え置き台14等を備えた支持体2と、を有して構成されている。実施例5においても、軸支部13等により、検者Aに対する接眼鏡筒部3(レーザ走査光学系)の位置を変化させる位置設定部10を構成している。
【0082】
また、実施例5では、据え置き台14の上面であって、支持体2の後方(検者Aに対面する方向)に、操作パネル15を設け、この操作パネル15に操作ボタン7を設けている。このように検者Aに対面する側に操作ボタン7を設けることで、撮影時に検者Aが操作ボタン7を押し易くなる。また、実施例5においても、支持体2の後方(検者Aに対面する位置)にモニタ部(図示せず)等を設けてもよい。
【0083】
上述のように構成した実施例5の光走査型検眼鏡130では、他者撮影モードの際には、図13(c)等に示すように、接眼鏡筒部3が、前方である被検者Bの方向に向かって配置されている。また、操作ボタン7を設けた操作パネル15やモニタ部等は、検者Aに対向する方向(後方)に向かって配置される。この状態で、被検者Bが被検眼Eを接眼鏡筒部3に近接させ、検者Aが操作ボタン7を押すことで、被検者Bの眼底撮影を行うことができる。また、検者Aは、モニタ部等で被検者Bの撮影画像等を確認しながら操作を行うことができる。
【0084】
次に、他者撮影モードから、自己撮影モードへ切り替える場合は、支持体2に対して、軸支部13を回転軸Xとして、装置本体1を検者A方向に回転する。この操作により、図14の各図に示すように、接眼鏡筒部3が、検者Aに対面する方向(後方)に向いて配置される。これに対して、操作ボタン7を設けた操作パネル15やモニタ部等は、位置が変化することがなく、検者A方向(後方)に向かって配置される。
【0085】
したがって、他者撮影モードおよび自己撮影モードのいずれの場合でも、検者A自身に向かって操作ボタン7やモニタ部を配置することができる。そのため、検者Aは操作ボタン7を操作性よく操作して、自己の眼底撮影を容易に行うことができる。また、検者Aはモニタ部等により、撮影後の画像等を確認することができる。勿論、実施例5でも、検者Aが自己撮影モードのときに、被検者Bの位置までわざわざ移動する必要がない。また、光走査型検眼鏡140を据置いて使用することができるため、安定性が向上し、手ブレ等の心配のない、より高精度な眼底撮影が可能となる。
【0086】
以上、各実施例について説明したが、本願の眼科装置がこれらに限定されるものではない。また、上記各実施例では、眼科装置として、光走査型検眼鏡を実施しているが、本願の眼科装置が光走査型検眼鏡に限定されるものではない。各実施例で説明したように、検者による被検者の眼科検査と、検者自身の眼科検査との切り替えが実施可能であれば、他の構成の眼科装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0087】
A 検者
B 被検者
E 被検眼
1 装置本体
2 支持体
5 装着面(装着部)
6 把持部
7 操作ボタン(操作部)
8 支持部(被装着部)
10 位置設定部
11 軸支部
12 可動体
13 軸支部
14 据え置き台
100,110、120、130、140 光走査型検眼鏡(眼科装置)
200 レーザ走査光学系(光学系)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
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図12
図13
図14