(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリコン半導体によって形成された電力用半導体素子を実装した第1基板、又は、ワイドバンドギャップ半導体によって形成された電力用半導体素子を実装した第2基板が搭載された本体と、
被加熱物を誘導加熱する加熱コイルと、
前記電力用半導体素子によって構成され、前記加熱コイルを駆動する駆動回路と、
前記駆動回路の駆動を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
時刻、日付、及び曜日の少なくとも1つに応じて、電力使用量の第1制限値、及び、該第1制限値より電力が大きい第2制限値が設定され、
前記本体に、前記第1基板又は前記第2基板の何れが搭載されているかを識別し、
前記第1基板が搭載されていると識別した場合、前記加熱コイルへ入力される電力が、前記第1制限値を超えないように、前記駆動回路の駆動を制御し、
前記第2基板が搭載されていると識別した場合、前記加熱コイルへ入力される電力が、前記第2制限値を超えないように、前記駆動回路の駆動を制御する
ことを特徴とする誘導加熱調理器。
シリコン半導体によって形成された電力用半導体素子を実装した第1基板、又は、ワイドバンドギャップ半導体によって形成された電力用半導体素子を実装した第2基板が搭載された本体と、
負荷回路と、
前記電力用半導体素子によって構成され、前記負荷回路を駆動する駆動回路と、
前記駆動回路の駆動を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
時刻、日付、及び曜日の少なくとも1つに応じて、電力使用量の第1制限値、及び、該第1制限値より電力が大きい第2制限値が設定され、
前記本体に、前記第1基板又は前記第2基板の何れが搭載されているかを識別し、
前記第1基板が搭載されていると識別した場合、前記負荷回路へ入力される電力が、前記第1制限値を超えないように、前記駆動回路の駆動を制御し、
前記第2基板が搭載されていると識別した場合、前記負荷回路へ入力される電力が、前記第2制限値を超えないように、前記駆動回路の駆動を制御する
ことを特徴とする電気機器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
本実施の形態1においては、本発明の電気機器の一例として、誘導加熱により加熱調理を行う誘導加熱調理器を例に説明を行う。なお、本発明の電気機器はこれに限定されるものではなく、空気調和装置、洗濯機、冷蔵庫などの家電機器、並びに、エレベータ、鉄道車両のモータ駆動装置など、任意の電気機器に適用することができる。
【0011】
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器100の外観を示す斜視図である。
図1において、誘導加熱調理器100の本体1の上部には、被加熱物(鍋等)が載置される天板が設けられている。天板の表面には、被加熱物の載置位置を示す例えば3つの円形状の左加熱口HL、右加熱口HR及び中央加熱口HC(以下「各加熱口」という)が印刷等の方法で表示されている。本体1内には、各加熱口に対応して3つの加熱コイルが配置されている。
【0012】
本体1内の中央下部には、魚などの被加熱物を出し入れ可能に前面が開口したグリル庫Gが設けられている。グリル庫G内には被加熱物を加熱するために、ヒーターなどの熱源(加熱手段)が備えられている。
【0013】
天板の前部側、及び本体1の前面には操作部2が設けられている。操作部2は、例えば、各加熱口にそれぞれ対応して設けられた火力設定操作部と、グリルの加熱を操作するグリル操作部からなっている。
また、天板の前部側には、表示部12が設けられている。表示部12は、例えば、各加熱口、グリル庫Gの火力、及び、動作状態をそれぞれ表示する。表示部12は、例えば液晶表示パネル、LED等により構成される。
【0014】
本体1の後部側には、吸気口21及び排気口22が形成されている。本体1内部に設けられた冷却ファン20は、吸気口21から本体1の外部の空気を吸気し、本体1内部に冷却風を供給する。本体1内に供給された冷却風は、本体1内部の部品を冷却した後、排気口22から本体1の外部に排気される。
【0015】
図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器100の駆動回路を示す図である。なお、駆動回路は各加熱口にそれぞれ設けられる。
図2では1つの駆動回路のみを図示する。
図2に示すように、駆動回路は、直流電源回路3と、インバータ回路4とを備え、負荷回路7に電力を供給する。
【0016】
直流電源回路3は、ダイオードブリッジ3a、リアクタ3b、平滑コンデンサ3cを備え、交流電源から入力される交流電圧を直流電圧に変換して、インバータ回路4へ出力する。
【0017】
インバータ回路4は、電力用半導体素子によって構成されたスイッチング素子4a、4bが、直流電源回路3の出力に直列に接続された、ハーフブリッジ型のインバータである。インバータ回路4は、直流電源回路3から出力される直流電力を高周波の交流電力に変換して負荷回路7へ供給する。なお、インバータ回路4は、ハーフブリッジ型に限らず、フルブリッジ型又は一石電圧共振型のインバータなどを用いた構成でも良い。なお、各加熱口のインバータ回路4の構成が異なっても良い。例えば左加熱口HLのインバータ回路4をフルブリッジ型とし、右加熱口HRのインバータ回路4をハーフブリッジ型としても良い。
負荷回路7は、加熱コイル5aと共振コンデンサ5bからなる共振回路によって構成される。
【0018】
制御用主マイコン9は、操作部2から入力された、加熱口の選択操作及び火力の設定操作等に応じた火力指令(電力指令)を、制御用従マイコン8に送信する。
制御用従マイコン8は、制御用主マイコン9からの指令に基づき、インバータ回路4のスイッチング素子4a、4bをオンオフ制御して、当該インバータ回路4の出力電力が設定火力となるように制御を行う。
【0019】
このように構成することで、加熱コイル5aには高周波電流が流れ、流れる高周波電流により発生する高周波磁束によって加熱コイル5aの直上の天板上に載置された被加熱物を誘導加熱する。
【0020】
なお、制御用主マイコン9及び制御用従マイコン8は、「制御手段」に相当する。
また、冷却ファン20は、本発明における「送風機」に相当する。
【0021】
少なくとも、直流電源回路3、インバータ回路4、及び制御用従マイコン8は、電子基板11に実装されている。電子基板11は、本体1内に搭載され、制御用主マイコン9が搭載された主基板14(後述)と着脱可能に接続される。また、電子基板11には、当該基板に搭載された電力用半導体素子の種類(以下「電子基板11の種類」ともいう)を識別するための回路部品として、プルアップ抵抗10a又はプルダウン抵抗10bが搭載されている。なお、
図2では説明のため、プルアップ抵抗10a及びプルダウン抵抗10bを両方図示している。
【0022】
ここで、電子基板11に搭載された電力用半導体素子(スイッチング素子4a、4b)の種類について説明する。
電力用半導体素子としては、例えばシリコン系からなる半導体(以下、シリコン半導体という)がある。
また、電力用半導体素子としては、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム系材料(ガリウムナイトライド;GaN)、又はダイヤモンド等のワイドバンドギャップ半導体がある。
【0023】
シリコン半導体によって形成された電力用半導体素子は、ワイドバンドギャップ半導体と比較して安価である。
一方、ワイドバンドギャップ半導体によって形成された電力用半導体素子は、耐電圧性及び許容電流密度が高く、電力損失が低いため、シリコン半導体と比較して高電力駆動が可能となる。また、シリコン半導体と比較して電力損失が低いので発熱量が少なく、また耐熱性も高いため、冷却装置及び放熱フィンの小型化又は省略、冷却能力の低減を図ることが可能となる。
【0024】
本実施の形態1における誘導加熱調理器100は、シリコン半導体によって形成された電力用半導体素子を実装した電子基板11(以下「第1電子基板11a」という)、又は、ワイドバンドギャップ半導体によって形成された電力用半導体素子を実装した電子基板11(以下「第2電子基板11b」という)の何れかを、選択的に搭載することが可能に構成されている。
【0025】
例えば、誘導加熱調理器100において、高火力調理を求める使用者に対しては第2電子基板11bを搭載し、高火力調理の必要が無く安価を求める使用者に対しては第1電子基板11aを搭載とすることで、使用者の目的及び用途に応じて、装置全体を交換する(買い換える)必要が無く、同一装置で電力用半導体素子を選択的に使用可能な、誘導加熱調理器100を提供することが可能となる。
【0026】
なお、本実施の形態1においては、インバータ回路4を構成するスイッチング素子4a、4bを、ワイドバンドギャップ半導体又はシリコン半導体の何れかにより構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2電子基板11bに搭載される直流電源回路3のダイオードブリッジ3a、及びスイッチング素子4a、4bに逆並列に接続されたダイオード(図示せず)等を、ワイドバンドギャップ半導体又はシリコン半導体の何れかにより構成するようにしても良い。
【0027】
次に、このような誘導加熱調理器100の回路構成の詳細について説明する。
【0028】
図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器100に搭載される電子基板11を説明するブロック図である。
図4は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器100に第1電子基板11aが搭載された状態を示すブロック図である。
図5は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器100に第2電子基板11bが搭載された状態を示すブロック図である。
図3に示すように、制御用主マイコン9が搭載された主基板14には、ハーネス16によって、第1電子基板11a又は第2電子基板11bの何れかが選択的に接続される。
図4に示すように、第1電子基板11aが本体1に搭載された場合、ハーネス16と第1電子基板11aのコネクタ15aとが接続される。
また、
図5に示すように、第2電子基板11bが本体1に搭載された場合、ハーネス16と第2電子基板11bのコネクタ15bとが接続される。
【0029】
第1電子基板11aには、プルアップ抵抗10aが搭載されており、所定電位(例えば+5V)が、コネクタ15a及びハーネス16を介して、制御用主マイコン9の電子基板種類識別用の入力ポートに入力される。
また、第2電子基板11bには、プルダウン抵抗10bが搭載されており、所定電位(例えばGND)が、コネクタ15b及びハーネス16を介して、制御用主マイコン9の電子基板種類識別用の入力ポートに入力される。
制御用主マイコン9は、電子基板種類識別用の入力ポートに入力された電位によって定まるHi論理又はLo論理から、本体1に搭載された電子基板11の種類を識別する。例えば、入力ポートがHiであれば第1電子基板11aが搭載されていると識別し、入力ポートがLoであれば第2電子基板11bが搭載されていると識別する。
【0030】
このように、第1電子基板11a及び第2電子基板11bに実装された回路部品の取り付け状態を相違させることにより、制御用主マイコン9は、第1電子基板11a又は第2電子基板11bの何れが搭載されているかを識別する。
【0031】
なお、ここでは、プルアップ抵抗10a及びプルダウン抵抗10bによって、搭載された電子基板11の種類を識別する場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1電子基板11a及び第2電子基板11bに、ディップスイッチを実装して、切り換え状態を相違させることで、種類を識別するようにしても良い。また、例えばジャンパ線等によって取り付け状態を相違させることで、種類を識別するようにしても良い。つまり、第1電子基板11a及び第2電子基板11bに実装された回路部品の、取り付け状態又は接続切り換え状態に基づき、種類を識別するようにすれば良い。
【0032】
なお、第1電子基板11aは、本発明における「第1基板」に相当する。
また、第2電子基板11bは、本発明における「第2基板」に相当する。
【0033】
(動作)
次に、本実施の形態1における誘導加熱調理器100の加熱動作について説明する。
制御用主マイコン9は、操作部2からの操作により、加熱口が選択され火力が設定されると、選択された加熱口に対応する制御用従マイコン8へ火力指令を送信する。
制御用従マイコン8は、制御用主マイコン9からの指令に基づき、インバータ回路4のスイッチング素子4a、4bを駆動し、インバータ回路4の出力電力が所望の設定火力となるように制御を行う。
なお、制御用主マイコン9は、操作部2から火力設定が変更される操作がされると、変更後の火力指令値を制御用従マイコン8に送信し、制御用従マイコン8は、この火力指令値に応じて、所望の設定火力となるようにインバータ回路4の出力を制御する。
【0034】
(上限火力設定)
上述したように各加熱口に設定される火力、即ち、インバータ回路4から加熱コイル5aへ入力される電力(火力)は、火力指令によって設定されるが、この電力(火力)には上限が設定される。
制御用主マイコン9は、第2電子基板11bが搭載されていると識別した場合、1つの加熱コイル5aへ入力される電力の上限を、第1電子基板11aが搭載されていると識別した場合より大きく設定する。
例えば、第1電子基板11aが搭載されている場合においては、1つの加熱コイル5aへ入力される電力の上限を2000Wに設定する。一方、第2電子基板11bが搭載されている場合においては、1つの加熱コイル5aへ入力される電力の上限を3000Wに設定する。
これによって、ワイドバンドギャップ半導体によって形成された電力用半導体素子を実装した第2電子基板11bが搭載されている場合には、高火力調理が可能となり、シリコン半導体によって形成された電力用半導体素子を実装した第1電子基板11aが搭載されている場合には、調理器の省エネルギー使用が可能となる。また、制御用主マイコン9は、搭載された基板種類の識別結果に応じて、電力の上限を各々設定できるよう、制御用主マイコン9の制御情報(プログラム等)を保有させることで、電子基板11の種類を変更した場合であっても、制御用主マイコン9の制御情報(プログラム等)を変更することなく、電子基板11の種類に応じた制御が可能となる。
【0035】
(全電力使用量制御)
本実施の形態1の誘導加熱調理器100のように、複数の加熱口(加熱コイル5a)を有する場合、装置全体の電力使用量の閾値が設定される。この閾値は、例えば製品仕様等によって設定される。
制御用主マイコン9は、複数の加熱口(加熱コイル5a)へ入力される電力の合計である全電力使用量が、閾値を超えないように、各インバータ回路4の駆動を制御する。
例えば、全電力使用量が5800Wに設定されている場合において、第2電子基板11bが搭載されていると識別して、1つの加熱コイル5aへ入力される電力を3000Wに設定したときは、他の加熱口及びグリル庫Gへの電力の合計を2800W未満に制御する。
これによって、ワイドバンドギャップ半導体によって形成された電力用半導体素子を実装した第2電子基板11bが搭載されている場合に、高火力調理を実施した場合であっても、装置全体の電力使用量を閾値以内にすることが可能となる。
【0036】
(冷却ファン制御)
ワイドバンドギャップ半導体によって形成された電力用半導体素子は、シリコン半導体と比較して電力損失が低いので発熱量が少なく、また耐熱性も高い。このため、冷却ファン20の冷却能力を低減するようにしても良い。
制御用主マイコン9は、第2電子基板11bが搭載されていると識別した場合、冷却ファン20の送風量を、第1電子基板11aが搭載されていると識別した場合より小さくし、又は、冷却ファン20を動作させないようにしても良い。
これによって、冷却ファン20の動作に伴う騒音を低下することができる。また、冷却ファン20の消費電力を低減することができる。
【0037】
以上のように本実施の形態においては、シリコン半導体によって形成された電力用半導体素子を実装した第1電子基板11a、又は、ワイドバンドギャップ半導体によって形成された電力用半導体素子を実装した第2電子基板11bが、選択的に搭載可能である。このため、使用者の目的及び用途に応じて、装置全体を交換する(買い換える)必要が無く、同一装置で選択的に使用可能な、誘導加熱調理器100を提供することが可能となる。
【0038】
また、制御用主マイコン9は、本体1に、第1電子基板11a又は第2電子基板11bの何れが搭載されているかを識別し、識別結果に応じて、少なくともインバータ回路4の駆動を制御する。このため、制御用主マイコン9の制御情報(プログラム等)を変更することなく、電子基板11の種類に応じた制御が可能となる。
【0039】
実施の形態2.
本実施の形態2においては、時刻、日付、及び曜日等に応じて電力使用量を制限するスケジュール制御を、電子基板11の種類に応じて行う動作について説明する。
【0040】
本実施の形態2における制御用主マイコン9は、時期をカウントするカレンダー機能、及び時間帯をカウントする時計機能を有している。また、制御用主マイコン9には、時刻、日付、及び曜日の少なくとも1つに応じた電力使用量の制限値が設定されたスケジュール情報が記憶されている。
その他の構成は、上記実施の形態1と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。
【0041】
図6は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器100のスケジュール制御を説明する図である。
図6に示すように、制御用主マイコン9には、例えば1年を4分割した時期と、一日の時刻に対応して、省エネモード1を実施する期間と、省エネモード2とを実施する期間とが設定されている。
省エネモード1は、第1電子基板11a搭載時において、全電力使用量を制限値TH1(例えば4800W)に制限し、第2電子基板11b搭載時において、全電力使用量を、制限値TH1より電力が大きい制限値TH2(例えば5800W:定格電力値)に制限するモードである。
省エネモード2は、第1電子基板11a搭載時において、全電力使用量を制限値TH12(例えば4300W)に制限し、第2電子基板11b搭載時において、全電力使用量を、制限値TH12より電力が大きい制限値TH22(例えば5300W)に制限するモードである。
ここで、制限値TH12は制限値TH1より小さく、制限値TH22は制限値TH2より小さい値に設定する。つまり、省エネモード2は、省エネモード1と比較して、電力制限量(電力ピークカット量)が大きいモードである。
【0042】
制御用主マイコン9は、第1電子基板11aが搭載されていると識別した場合、省エネモード1が設定された時期及び時刻に、全電力使用量が制限値TH1を超えないように、インバータ回路4の駆動を制御する。また、第2電子基板11bが搭載されていると識別した場合、省エネモード1が設定された時期及び時刻に、全電力使用量が制限値TH2を超えないように、インバータ回路4の駆動を制御する。
また、制御用主マイコン9は、第1電子基板11aが搭載されていると識別した場合、省エネモード2が設定された時期及び時刻に、全電力使用量が制限値TH12を超えないように、インバータ回路4の駆動を制御する。また、第2電子基板11bが搭載されていると識別した場合、省エネモード2が設定された時期及び時刻に、全電力使用量が制限値TH22を超えないように、インバータ回路4の駆動を制御する。
【0043】
なお、ここでは、全電力使用量の制限値を設定する場合を説明するが、各加熱コイル5aに入力される電力についてそれぞれ制限値を設定するようにしても良い。
【0044】
なお、制限値TH1、制限値TH12は、本発明における「第1制限値」に相当する。
また、制限値TH2、制限値TH22は、本発明における「第2制限値」に相当する。
【0045】
図7は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器100の動作結果を示す図である。
図7では、省エネモード1のみが設定された時期(
図6の12月〜2月)での電力ピークカット動作例を示している。
図7(a)に示すように、第1電子基板11aが搭載された場合、全電力使用量が制限値TH1(例えば4800W)を超えないように制御される。
これによって、全電力使用量が増大する時期、時間帯において、第1電子基板11a搭載時は、電力使用制限動作(電力ピークカット動作)をさせることが可能となり、省エネルギー運転(節電)が可能となる。
【0046】
図7(b)に示すように、第2電子基板11bが搭載された場合、全電力使用量が、制限値TH1より大きい制限値TH2(例えば5800W:定格電力値)を超えないように制御される。
これによって、第2電子基板11b搭載時は、省エネモード1が設定された時刻においても高火力調理を実現することができる。
【0047】
なお、第1電子基板11aが搭載された場合にのみ制限値を設定し、第2電子基板11bが搭載された場合には、スケジュール設定に基づく制限値を設けないようにしても良い。この場合であっても、上記実施の形態1で説明したように、製品仕様等によって定まる装置全体の電力使用量の閾値によって電力が制限される。
【0048】
図8は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器100の動作結果を示す図である。
図8では、省エネモード1及び省エネモード2が設定された時期(
図6の6月〜8月)での電力ピークカット動作例を示している。
図8(a)に示すように、第1電子基板11aが搭載された場合、省エネモード1が設定された時刻において全電力使用量が制限値TH1(例えば4800W)を超えないように制御され、省エネモード2が設定された時刻において全電力使用量が制限値TH12(例えば4300W)を超えないように制御される。
図8(b)に示すように、第2電子基板11bが搭載された場合、省エネモード1が設定された時刻において全電力使用量が制限値TH2(例えば5800W:定格電力値)を超えないように制御され、省エネモード2が設定された時刻において全電力使用量が制限値TH22(例えば5300W)を超えないように制御される。
これによって、複数の省エネモードと電子基板の種類に応じて、きめ細やかな省エネルギー運転の設定が可能となる。
【0049】
なお、
図6に示したスケジュール設定、及び制限値の数値は一例であり、本発明はこれに限定されない。
また、
図6の例では、時期と時刻に応じて各省エネモードを設定した場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。時刻、日付、及び曜日の少なくとも1つに応じて電力使用量の制限値を設定すればよい。
【0050】
以上のように本実施の形態においては、時刻、日付、及び曜日の少なくとも1つに応じて設定された電力使用量の制限値と、搭載された電子基板11の種類に応じて、加熱コイル5aに入力される電力を制限することができる。
【0051】
実施の形態3.
本実施の形態3においては、本発明の電気機器の一例として、空気調和装置、洗濯機、冷蔵庫などの家電機器、並びに、エレベータ、鉄道車両などに搭載されたモータを駆動するモータ駆動装置に、本発明を適用した形態について説明する。
【0052】
図9は、実施の形態3に係るモータ駆動装置の回路を示す図である。
図9において、インバータ回路4は、電力用半導体素子によって構成されたスイッチング素子4a〜4fを各々ブリッジ接続して構成される。インバータ回路4は、直流電源回路3で整流された直流電圧出力が入力され、例えばPWM制御によって、入力された直流電圧を任意電圧、任意周波数の三相交流に変換する。
負荷回路7は、例えば三相モータ70によって構成され、インバータ回路4からの三相交流によって回転駆動される。三相モータ70は、空気調和装置、冷蔵庫の送風機及び圧縮機を駆動するモータ、洗濯機の洗濯槽を駆動するモータなど、家電機器に搭載されるモータとして用いられる。また、三相モータ70は、エレベータの昇降駆動モータ、鉄道車両の動力用モータとして用いられる。
その他の構成は、上記実施の形態1と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。
【0053】
本実施の形態3においても、シリコン半導体によって形成された電力用半導体素子を実装した第1電子基板11a、又は、ワイドバンドギャップ半導体によって形成された電力用半導体素子を実装した第2電子基板11bが、選択的に搭載可能である。
このため、電力用半導体素子を変更するために、電気機器全体を交換する必要が無く、同一装置で電力用半導体素子を選択的に使用可能な、電気機器を提供することが可能となる。
【0054】
実施の形態4.
本実施の形態4では、上記実施の形態1における誘導加熱調理器100、及び、上記実施の形態3におけるモータ駆動装置を搭載した電気機器の少なくとも一方を含む、複数の電気機器の電力使用量を管理する電力管理システムについて説明する。
【0055】
図10は、実施の形態4に係る電力管理システムの構成を示すブロック図である。
本実施の形態4に係る電力管理システムは、例えば、建物(住戸)内に設置された各電気機器が消費した電力を集計することにより、一括的に電力を管理するいわゆるHEMS(Home Energy Management System)である。
図10に示すように、電力管理システムは、複数の電気機器、太陽光発電モジュール120、及び、電力管理装置200によって構成される。
各電気機器は、電力を消費する任意の機器であり、例えば、誘導加熱調理器100、空気調和機101、冷蔵庫102などの家電機器から構成される。各電気機器は、商用電源からの電力及び太陽光発電モジュール120によって発電された電力が供給され、動作によって電力が消費される。
【0056】
各電気機器は、当該装置が消費している電力の情報を、電力管理装置200へ送信する。例えば、誘導加熱調理器100においては、上記実施の形態1の構成に加えて、電力管理装置200と通信する通信手段を備え、制御用主マイコン9は、現在の電力使用量の情報を、通信手段によって送信する。なお、電力線から各電気機器に供給される電力を計測する電力計等を設けて、この電力計の計測結果を電力管理装置200へ送信するようにしても良い。
【0057】
電力管理装置200は、各電気機器が消費している現在の電力の情報を取得し、管理対象の建物内に設置された電気機器全体の全電力使用量を監視、制御する。電力管理装置200は、例えば、時期をカウントするカレンダー機能、及び時間帯をカウントする時計機能を有しており、時刻、日付、及び曜日の少なくとも1つに応じた全電力使用量の制限値が設定されたスケジュール情報が記憶されている。
【0058】
電力管理装置200は、スケジュール情報に基づき、電気機器全体の全電力使用量が、制限値を超えないように、各電気機器に対して電力使用量の制限値を割り当て、当該情報を各電気機器に送信する。
各電気機器は、電力管理装置200から電力使用量の制限値の情報を取得し、当該装置の電力が、制限値を超えないように動作する。
【0059】
なお、各電気機器に対する電力使用量の制限値の割り当て方法は、これに限定されない。例えば、太陽光発電モジュール120の発電量に応じて、各電気機器に対する電力使用量の制限値を変更しても良い。また、蓄電装置を設け、蓄電量に応じて各電気機器に対する電力使用量の制限値を変更しても良い。
【0060】
さらに、上記実施の形態1で説明した誘導加熱調理器100、及び、上記実施の形態3で説明したモータ駆動装置を搭載した電気機器のように、第1電子基板11a又は第2電子基板11bが選択的に搭載される電気機器においては、搭載された電子基板11の種類の識別結果の情報を、電力管理装置200へ送信する。
電力管理装置200は、識別結果の情報と、複数の電気機器から取得した現在の使用電力量の情報とに基づき、各電気機器の電力使用量の制限値を設定する。例えば、第2電子基板11bが搭載された電気機器に対する制限値を増加させ、第1電子基板11aが搭載された電気機器に対する制限値を減少させる。これによって、複数の電気機器全体の全電力使用量を一定にしつつ、第2電子基板11bを搭載した電気機器を高出力駆動することができる。
【0061】
以上のように本実施の形態においては、各電気機器での電力使用量の制限値を電力管理装置200から設定するので、各電気機器にカレンダー機能及び時計機能を備える必要が無く、安価な制御用マイコンを搭載した、安価な電気機器によりピークカット動作を実現することが可能となる。
また、複数の電気機器全体の全電力使用量を制限値未満としつつ、第2電子基板11bを搭載した電気機器を高出力駆動することができる。