特許第6116306号(P6116306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6116306ガスタービン用燃料の予熱装置、これを備えているガスタービンプラント、及びガスタービン用燃料の予熱方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116306
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】ガスタービン用燃料の予熱装置、これを備えているガスタービンプラント、及びガスタービン用燃料の予熱方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/224 20060101AFI20170410BHJP
   F02C 6/18 20060101ALI20170410BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20170410BHJP
   F02C 9/16 20060101ALI20170410BHJP
   F01K 23/10 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   F02C7/224
   F02C6/18 A
   F02C7/18 C
   F02C9/16 A
   F01K23/10 X
   F01K23/10 F
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-62276(P2013-62276)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185612(P2014-185612A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】堀田 克広
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−509456(JP,A)
【文献】 米国特許第3038308(US,A)
【文献】 特開2006−46132(JP,A)
【文献】 特開2007−298192(JP,A)
【文献】 特開2004−211654(JP,A)
【文献】 特開2008−215184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/18 − 7/224
F02C 6/18
F02C 9/16
F01K 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器、及び前記燃焼ガスにより駆動するタービンのうちいずれかの部品であって前記燃焼ガスに接する高温部品に対して、前記高温部品の冷却用として蒸気を供給する冷却蒸気ラインと、
前記高温部品を通過した前記蒸気である過熱蒸気が通る過熱蒸気ラインと、
前記過熱蒸気ラインから供給される前記過熱蒸気と前記燃焼器に供給される前記燃料とを熱交換させて、前記燃料を予熱し、前記加熱蒸気を凝縮させる予熱器と、
を備えているガスタービン用燃料の予熱装置。
【請求項2】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器、及び前記燃焼ガスにより駆動するタービンのうちいずれかの部品であって前記燃焼ガスに接する高温部品に対して、前記高温部品の冷却用として蒸気を供給する冷却蒸気ラインと、
前記高温部品を通過した前記蒸気である過熱蒸気が通る過熱蒸気ラインと、
前記過熱蒸気ラインから供給される前記過熱蒸気と前記燃焼器に供給される前記燃料とを熱交換させて、前記燃料を予熱する複数の予熱器と、
複数の前記予熱器に前記燃料が順次流入するよう、複数の前記予熱器を直列的に接続する燃料ラインと、
を備え、
前記過熱蒸気ラインは、複数の前記予熱器のそれぞれに対して前記過熱蒸気を供給する、
ガスタービン用燃料の予熱装置。
【請求項3】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器、及び前記燃焼ガスにより駆動するタービンのうちいずれかの部品であって前記燃焼ガスに接する高温部品に対して、前記高温部品の冷却用として蒸気を供給する冷却蒸気ラインと、
前記高温部品を通過した前記蒸気である過熱蒸気が通る過熱蒸気ラインと、
前記高温部品を通過しない蒸気が通る前段蒸気ラインと、
前記前段蒸気ラインから供給される前記蒸気と前記燃焼器に供給される前記燃料とを熱交換させて、前記燃料を予熱する前段予熱器と、
前記過熱蒸気ラインから供給される前記過熱蒸気と前記燃焼器に供給される前記燃料とを熱交換させて、前記燃料を予熱する予熱器としての後段予熱器と、
前記前段予熱器で予熱された前記燃料が前記後段予熱器に供給されるよう、前記前段予熱器と前記後段予熱器とを接続する燃料ラインと、
を備えているガスタービン用燃料の予熱装置。
【請求項4】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器、及び前記燃焼ガスにより駆動するタービンのうちいずれかの部品であって前記燃焼ガスに接する高温部品に対して、前記高温部品の冷却用として蒸気を供給する冷却蒸気ラインと、
前記高温部品を通過した前記蒸気である過熱蒸気が通る過熱蒸気ラインと、
前記過熱蒸気ラインから供給される前記過熱蒸気と前記燃焼器に供給される前記燃料とを熱交換させて、前記燃料を予熱する予熱器と、
前記過熱蒸気ラインから分岐し、前記過熱蒸気ラインを流れる前記過熱蒸気の一部を前記予熱装置外に導く分岐蒸気ラインと、
前記冷却蒸気ラインを経て、前記高温部品に供給する前記蒸気の流量を調節する冷却蒸気調節弁と、
前記過熱蒸気ラインを経て、前記予熱器に供給する前記過熱蒸気の流量を調節する過熱蒸気調節弁と、
を備えているガスタービン用燃料の予熱装置。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載のガスタービン用燃料の予熱装置において、
前記過熱蒸気ラインから分岐し、前記過熱蒸気ラインを流れる前記過熱蒸気の一部を前記予熱装置外に導く分岐蒸気ラインと、
前記冷却蒸気ラインを経て、前記高温部品に供給する前記蒸気の流量を調節する冷却蒸気調節弁と、
前記過熱蒸気ラインを経て、前記予熱器に供給する前記過熱蒸気の流量を調節する過熱蒸気調節弁と、
を備えているガスタービン用燃料の予熱装置。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか一項に記載のガスタービン用燃料の予熱装置において、
前記予熱器は、前記燃料との熱交換で前記過熱蒸気を凝縮させる、
ガスタービン用燃料の予熱装置。
【請求項7】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器、及び前記燃焼ガスにより駆動するタービンのうちいずれかの部品であって前記燃焼ガスに接する高温部品に対して、前記高温部品の冷却用として蒸気を供給する冷却蒸気ラインと、前記高温部品を通過した前記蒸気である過熱蒸気が通る過熱蒸気ラインと、前記過熱蒸気ラインから供給される前記過熱蒸気と前記燃焼器に供給される前記燃料とを熱交換させて、前記燃料を予熱する予熱器と、を有するガスタービン用燃料の予熱装置と、
前記燃焼器及び前記タービンを有するガスタービンと、
蒸気を発生する蒸気発生源と、
前記蒸気発生源で発生した蒸気を水に戻す復水器と、
前記復水器で生成された水を前記蒸気発生源に供給する給水ラインと、
前記予熱器で前記燃料との熱交換により前記過熱蒸気が凝縮した水を前記復水器又は前記給水ラインに送る水回収ラインと、
を備え、
前記冷却蒸気ラインは、前記蒸気発生源で発生した蒸気を前記高温部品に供給する、
ガスタービンプラント。
【請求項8】
請求項2から請求項6のいずれか一項に記載のガスタービン用燃料の予熱装置と、
前記燃焼器及び前記タービンを有するガスタービンと、
蒸気を発生する蒸気発生源と、
前記蒸気発生源で発生した蒸気を水に戻す復水器と、
前記復水器で生成された水を前記蒸気発生源に供給する給水ラインと、
前記予熱器で前記燃料との熱交換により前記過熱蒸気が凝縮した水を前記復水器又は前記給水ラインに送る水回収ラインと、
を備え、
前記冷却蒸気ラインは、前記蒸気発生源で発生した蒸気を前記高温部品に供給する、
ガスタービンプラント。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記蒸気発生源は、前記タービンからの排気ガスの熱で蒸気を発生する排熱回収ボイラーを有する、
ことを特徴とするガスタービンプラント。
【請求項10】
請求項4又は5に記載のガスタービン用燃料の予熱装置と、
前記燃焼器及び前記タービンを有するガスタービンと、
前記タービンからの排気ガスの熱で蒸気を発生する排熱回収ボイラーと、
前記排熱回収ボイラーで発生した前記蒸気で駆動する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンを駆動した前記蒸気を水に戻す復水器と、
前記復水器で生成された水を前記排熱回収ボイラーに供給する給水ラインと、
前記予熱器で前記燃料との熱交換により前記過熱蒸気が凝縮した水を前記復水器又は前記給水ラインに送る水回収ラインと、
を備え、
前記排熱回収ボイラーは、前記排気ガスの熱で蒸気を発生する蒸気発生部と、前記蒸気発生部で発した蒸気を過熱し、過熱された該蒸気を前記蒸気タービンに送る再熱部と、を有し、
前記冷却蒸気ラインは、前記蒸気発生部で発生した蒸気であって前記再熱部で過熱される前の蒸気を前記高温部品に供給し、
前記分岐蒸気ラインは、前記過熱蒸気を前記蒸気タービンに導く、
ことを特徴とするガスタービンプラント。
【請求項11】
請求項7から請求項10のいずれか一項に記載のガスタービンプラントにおいて、
前記蒸気発生源は、前記タービンからの排気ガスとは異なる熱源で蒸気を発生する補助ボイラーを有する、
ことを特徴とするガスタービンプラント。
【請求項12】
請求項4又は5に記載のガスタービン用燃料の予熱装置と、
前記燃焼器及び前記タービンを有するガスタービンと、
前記タービンからの排気ガスとは異なる熱源で蒸気を発生する補助ボイラーと、
前記補助ボイラーで発生した前記蒸気を水に戻す復水器と、
前記復水器で生成された水を前記補助ボイラーに供給する給水ラインと、
前記予熱器で前記燃料との熱交換により前記過熱蒸気が凝縮した水を前記復水器又は前記給水ラインに送る水回収ラインと、
を備え、
前記冷却蒸気ラインは、前記補助ボイラーで発生した蒸気を前記高温部品に供給し、
前記分岐蒸気ラインは、前記過熱蒸気を前記復水器に導く、
ことを特徴とするガスタービンプラント。
【請求項13】
燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器、及び該燃焼ガスにより駆動するタービンのうちいずれかの部品であって前記燃焼ガスに接する高温部品に対して、該高温部品の冷却用として蒸気を供給する冷却用蒸気供給工程と、
前記高温部品を通過した前記蒸気である過熱蒸気と前記燃焼器に供給される前記燃料とを熱交換させて、該燃料を予熱する燃料予熱工程と、
を実行し、
前記燃料予熱工程では、前記燃料との熱交換で前記過熱蒸気を凝縮させる、
ことを特徴とするガスタービン用燃料の予熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する複数の燃焼器と、燃焼ガスにより駆動するタービンとを備えているガスタービンにおけるガスタービン用燃料の予熱装置、これを備えているガスタービンプラント、及びガスタービン用燃料の予熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する複数の燃焼器と、燃焼ガスにより駆動するタービンと、を有している。燃焼器に供給される燃料は、燃焼器での燃焼効率を高めるために、燃焼器に供給される前に予熱されることが多い。
【0003】
以下の特許文献1には、燃焼器に供給する燃料を予熱するガスタービンプラントが開示されている。このガスタービンプラントは、ガスタービンと、このガスタービンからの排気ガスの熱で蒸気を発生させる排熱回収ボイラーと、この排熱回収ボイラーで発生した蒸気で駆動する蒸気タービンと、燃焼器に供給される燃料を加熱する予熱器と、を備えている。予熱器には、排熱回収ボイラーで発生した蒸気を予熱器での燃料の加熱源として供給する第一蒸気ラインが接続されている。さらに、この予熱器には、燃料を加熱した蒸気を燃焼器の尾筒に導く第二蒸気ラインが接続されている。また、燃焼器の尾筒には、この尾筒を冷却した蒸気を蒸気タービンに導く第三蒸気ラインが接続されている。このガスタービンプラントは、さらに、第二蒸気ラインを流れている蒸気、つまり燃料を加熱した蒸気を冷却するために、第二蒸気ラインに対して水を噴射する減温スプレーラインを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−131719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術では、燃料を加熱した蒸気を水で冷却した後、この蒸気を燃焼器の尾筒に供給しているため、燃料を加熱した蒸気の熱を有効に利用できず、ガスタービンプラント全体での熱効率があまりよくない、という問題点がる。
【0006】
また、このガスタービンプラントにおいて、ガスタービンの起動時で、排熱回収ボイラーで蒸気が発生していない段階では、外部からの蒸気で燃料を加熱することが予想される。この場合でも、燃料を加熱した蒸気で燃焼器の尾筒を冷却した後、高温の蒸気が蒸気タービンに送られる。しかしながら、蒸気タービンが駆動していない段階で、少量の高温の蒸気が蒸気タービンに送られても、この蒸気は蒸気タービンの駆動に寄与することはない。このため、高温の蒸気が持っている熱を廃棄することになる。よって、上記特許文献1に記載の技術では、この観点からも、熱効率がよくない。
【0007】
そこで、本発明は、ガスタービンプラント全体での熱効率を高めることができるガスタービン用燃料の予熱装置、これを備えているガスタービンプラント、及びガスタービン用燃料の予熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するための発明に係る一態様としてのガスタービン用燃料の予熱装置は、
燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器、及び該燃焼ガスにより駆動するタービンのうちいずれかの部品であって前記燃焼ガスに接する高温部品に対して、該高温部品の冷却用として蒸気を供給する冷却蒸気ラインと、前記高温部品を通過した前記蒸気である過熱蒸気が通る過熱蒸気ラインと、前記過熱蒸気ラインから供給される前記過熱蒸気と前記燃焼器に供給される前記燃料とを熱交換させて、該燃料を予熱し、前記加熱蒸気を凝縮させる予熱器と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
当該予熱装置では、燃焼器の冷却により過熱された過熱蒸気で燃料を加熱しているので、燃焼器の熱を有効に利用することができる。よって、当該予熱装置によれば、ガスタービンプラント全体での熱効率を高めることができる。
【0011】
当該予熱装置では、燃料を加熱する際、過熱蒸気が凝縮するので、過熱蒸気が持っている熱を十分に利用することができる。さらに、当該予熱装置では、過熱蒸気を燃料との熱交換で凝縮させているので、過熱蒸気と燃料との熱交換率が高まり、予熱器の小型化を図ることができる。
【0012】
上記問題点を解決するための発明に係る他の態様としてのガスタービン用燃料の予熱装置は、
燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器、及び前記燃焼ガスにより駆動するタービンのうちいずれかの部品であって前記燃焼ガスに接する高温部品に対して、前記高温部品の冷却用として蒸気を供給する冷却蒸気ラインと、前記高温部品を通過した前記蒸気である過熱蒸気が通る過熱蒸気ラインと、前記過熱蒸気ラインから供給される前記過熱蒸気と前記燃焼器に供給される前記燃料とを熱交換させて、前記燃料を予熱する複数の予熱器と、複数の前記予熱器に前記燃料が順次流入するよう、複数の前記予熱器を直列的に接続する燃料ラインと、を備え、前記過熱蒸気ラインは、複数の前記予熱器のそれぞれに対して前記過熱蒸気を供給する。
【0013】
上記問題点を解決するための発明に係るさらに他の態様としてのガスタービン用燃料の予熱装置は、
燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器、及び前記燃焼ガスにより駆動するタービンのうちいずれかの部品であって前記燃焼ガスに接する高温部品に対して、前記高温部品の冷却用として蒸気を供給する冷却蒸気ラインと、前記高温部品を通過した前記蒸気である過熱蒸気が通る過熱蒸気ラインと、前記高温部品を通過しない蒸気が通る前段蒸気ラインと、前記前段蒸気ラインから供給される前記蒸気と前記燃焼器に供給される前記燃料とを熱交換させて、前記燃料を予熱する前段予熱器と、前記過熱蒸気ラインから供給される前記過熱蒸気と前記燃焼器に供給される前記燃料とを熱交換させて、前記燃料を予熱する予熱器としての後段予熱器と、前記前段予熱器で予熱された前記燃料が前記後段予熱器に供給されるよう、前記前段予熱器と前記後段予熱器とを接続する燃料ラインと、を備えている。
【0014】
以上、複数の予熱器を備えている予熱装置では、燃料を二段階で加熱するので、より高温の燃料を燃焼器に供給することができ、燃焼器における燃料の燃焼効率を高めることができる。
【0015】
上記問題点を解決するための発明に係るさらに他の態様としてのガスタービン用燃料の予熱装置は、
燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器、及び前記燃焼ガスにより駆動するタービンのうちいずれかの部品であって前記燃焼ガスに接する高温部品に対して、前記高温部品の冷却用として蒸気を供給する冷却蒸気ラインと、前記高温部品を通過した前記蒸気である過熱蒸気が通る過熱蒸気ラインと、前記過熱蒸気ラインから供給される前記過熱蒸気と前記燃焼器に供給される前記燃料とを熱交換させて、前記燃料を予熱する予熱器と、前記過熱蒸気ラインから分岐し、前記過熱蒸気ラインを流れる前記過熱蒸気の一部を前記予熱装置外に導く分岐蒸気ラインと、前記冷却蒸気ラインを経て、前記高温部品に供給する前記蒸気の流量を調節する冷却蒸気調節弁と、前記過熱蒸気ラインを経て、前記予熱器に供給する前記過熱蒸気の流量を調節する過熱蒸気調節弁と、を備えている。
【0016】
当該予熱装置では、過熱蒸気ラインは、高温部品を介して冷却蒸気ラインに直列的に接続されているものの、冷却蒸気ラインを経て高温部品に供給する蒸気の流量、及び過熱蒸気ラインを経て予熱器に流入する過熱蒸気の流量をそれぞれ調節することができる。
【0017】
上記問題点を解決するための発明に係る一態様としてのガスタービンプラントは、
燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器、及び前記燃焼ガスにより駆動するタービンのうちいずれかの部品であって前記燃焼ガスに接する高温部品に対して、前記高温部品の冷却用として蒸気を供給する冷却蒸気ラインと、前記高温部品を通過した前記蒸気である過熱蒸気が通る過熱蒸気ラインと、前記過熱蒸気ラインから供給される前記過熱蒸気と前記燃焼器に供給される前記燃料とを熱交換させて、前記燃料を予熱する予熱器と、を有するガスタービン用燃料の予熱装置と、前記燃焼器及び前記タービンを有するガスタービンと、蒸気を発生する蒸気発生源と、前記蒸気発生源で発生した蒸気を水に戻す復水器と、前記復水器で生成された水を前記蒸気発生源に供給する給水ラインと、前記予熱器で前記燃料との熱交換により前記過熱蒸気が凝縮した水を前記復水器又は前記給水ラインに送る水回収ラインと、を備え、前記冷却蒸気ラインは、前記蒸気発生源で発生した蒸気を前記高温部品に供給する。
【0018】
当該ガスタービンプラントは、以上のいずれかのガスタービン用燃料の予熱装置を備えているので、ガスタービンプラント全体での熱効率を高めることができる。
【0019】
ここで、前記ガスタービンプラントにおいて、前記蒸気発生源は、前記タービンからの排気ガスの熱で蒸気を発生する排熱回収ボイラーを有してもよい。
【0020】
また、上記問題点を解決するための発明に係る他の態様としてのガスタービンプラントは、
前記分岐蒸気ラインを備えている前記ガスタービン用燃料の予熱装置と、前記燃焼器及び前記タービンを有するガスタービンと、前記タービンからの排気ガスの熱で蒸気を発生する排熱回収ボイラーと、前記排熱回収ボイラーで発生した前記蒸気で駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンを駆動した前記蒸気を水に戻す復水器と、前記復水器で生成された水を前記排熱回収ボイラーに供給する給水ラインと、前記予熱器で前記燃料との熱交換により前記過熱蒸気が凝縮した水を前記復水器又は前記給水ラインに送る水回収ラインと、を備え、
前記排熱回収ボイラーは、前記排気ガスの熱で蒸気を発生する蒸気発生部と、前記蒸気発生部で発した蒸気を過熱し、過熱された該蒸気を前記蒸気タービンに送る再熱部と、を有し、前記冷却蒸気ラインは、前記蒸気発生部で発生した蒸気であって前記再熱部で過熱される前の蒸気を前記高温部品に供給し、前記分岐蒸気ラインは、前記過熱蒸気を前記蒸気タービンに導いてもよい。
【0021】
当該ガスタービンプラントでは、燃料の予熱に用いられない余剰の過熱蒸気を分岐蒸気ラインを介して蒸気タービンに供給するので、余剰の過熱蒸気も有効に利用することができる。
【0022】
ここで、以上のいずれかの前記ガスタービンプラントにおいて、前記蒸気発生源は、前記タービンからの排気ガスとは異なる熱源で蒸気を発生する補助ボイラーを有してもよい。
【0023】
当該ガスタービンプラントでは、排熱回収装置を備えていない場合や、排熱回収装置を備えていても、ガスタービンが起動段階で排熱回収装置が定常運転していない場合でも、高温部品を冷却しつつ、燃料を予熱することができる。
【0024】
また、上記問題点を解決するための発明に係るさらに他の態様としてのガスタービンプラントは、
前記分岐蒸気ラインを備えている前記ガスタービン用燃料の予熱装置と、前記燃焼器及び前記タービンを有するガスタービンと、前記タービンからの排気ガスとは異なる熱源で蒸気を発生する補助ボイラーと、前記補助ボイラーで発生した前記蒸気を水に戻す復水器と、前記復水器で生成された水を前記補助ボイラーに供給する給水ラインと、前記予熱器で前記燃料との熱交換により前記過熱蒸気が凝縮した水を前記復水器又は前記給水ラインに送る水回収ラインと、を備え、
前記冷却蒸気ラインは、前記補助ボイラーで発生した蒸気を前記高温部品に供給し、前記分岐蒸気ラインは、前記過熱蒸気を前記復水器に導いてもよい
【0025】
また、上記問題点を解決するための発明に係る一態様としてのガスタービン用燃料の予熱方法は、
燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器、及び該燃焼ガスにより駆動するタービンのうちいずれかの部品であって前記燃焼ガスに接する高温部品に対して、該高温部品の冷却用として蒸気を供給する冷却用蒸気供給工程と、前記高温部品を通過した前記蒸気である過熱蒸気と前記燃焼器に供給される前記燃料とを熱交換させて、該燃料を予熱する燃料予熱工程と、を実行し、前記燃料予熱工程では、前記燃料との熱交換で前記過熱蒸気を凝縮させることを特徴とする。
【0026】
当該予熱方法では、燃焼器の冷却により過熱された過熱蒸気で燃料を加熱しているので、燃焼器の熱を有効に利用することができる。よって、当該予熱方法によれば、ガスタービンプラント全体での熱効率を高めることができる。
【0028】
当該予熱方法では、燃料を加熱する際、過熱蒸気が凝縮するので、過熱蒸気が持っている熱を十分に利用することができる。さらに、当該予熱方法では、過熱蒸気を燃料との熱交換で凝縮させているので、過熱蒸気と燃料との熱交換率を高めることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、燃焼器の冷却により過熱された過熱蒸気で燃料を加熱しているので、燃焼器の熱を有効に利用することができる。よって、本発明によれば、ガスタービンプラント全体での熱効率を高めることができる。ガスタービンの出力低下を抑えつつ、ランニングコストの増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る第一実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
図2】本発明に係る第一実施形態におけるガスタービンの模式的な断面図である。
図3】本発明に係る第二実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
図4】本発明に係る第三実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
図5】本発明に係る第一変形例における燃料予熱装置の系統図である。
図6】本発明に係る第二変形例における燃料予熱装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るガスタービンプラントの各種実施形態及び各種変形例について、図面を用いて説明する。
【0032】
「第一実施形態」
まず、図1及び図2を参照して、本発明に係るガスタービンプラントの第一実施形態について説明する。
【0033】
本実施形態のガスタービンプラントは、図1に示すように、ガスタービン10と、ガスタービン10の駆動で発電する発電機15と、ガスタービン10から排気された排気ガスEGの熱で蒸気を発生させる排熱回収装置100と、排熱回収装置100を通過した排気ガスEGを大気に放出する煙突40と、ガスタービン10に供給する燃料を予熱する燃料予熱装置50と、ガスタービン10や燃料予熱装置50等を制御する制御装置90と、を備えている。
【0034】
ガスタービン10は、空気を圧縮する圧縮機11と、圧縮機11で圧縮された空気中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスを生成する複数の燃焼器21と、高温高圧の燃焼ガスにより駆動するタービン31と、を備えている。タービン31のタービンロータと圧縮機11の圧縮機ロータとは、同一の軸線を中心として回転するもので、相互に連結されて、ガスタービンロータを成している。このガスタービンロータには、発電機15のロータが接続されている。
【0035】
燃焼器21は、図2に示すように、圧縮機11からの空気A中で燃料Fが燃焼し、燃焼ガスが生成される燃焼筒(又は尾筒)23と、この燃焼筒23内に圧縮機11からの空気A及び燃料Fを噴射する噴射器22と、を有している。噴射器22には、外部の燃料供給源からの燃料Fをこの噴射器22に供給する燃料ライン29が接続されている。また、燃焼筒23を形成する部材には、この部材を冷却するために、蒸気が通る蒸気流路24が形成されている。
【0036】
タービン31は、燃焼器21からの燃焼ガスにより、軸線Arを中心として回転するタービンロータ(以下、単にロータという)32と、このロータ32を回転可能に覆うケーシング35と、を有している。ロータ32は、軸線Arと平行な軸方向に延びるロータ本体33と、このロータ本体33の外周に固定されている複数の動翼34と、を有している。また、ケーシング35の内周面には、複数の静翼36が固定されている。ケーシング35の内周面とロータ本体33の外周面との間は、燃焼器21からの燃焼ガスが通る燃焼ガス流路37を成す。複数の燃焼器21は、軸線Arを中心として周方向に並んで、タービン31のケーシング35に固定されている。
【0037】
排熱回収装置100は、図1に示すように、タービン31を駆動させた燃焼ガス、つまりガスタービン10から排気された排気ガスEGの熱で蒸気を発生させる排熱回収ボイラー110と、排熱回収ボイラー110で発生した蒸気で駆動する蒸気タービン121a,121b,121cと、蒸気タービン121a,121b,121cの駆動で発電する発電機122と、蒸気タービン121aを駆動させた蒸気を水に戻す復水器123と、復水器123中の水を排熱回収ボイラー110に戻す給水ポンプ124と、を備えている。
【0038】
排熱回収装置100は、蒸気タービン121a,121b,121cとして、低圧蒸気タービン121a、中圧蒸気タービン121b、高圧蒸気タービン121cを有している。また、排熱回収ボイラー110は、低圧蒸気LSを発生する低圧蒸気発生部111aと、中圧蒸気ISを発生する中圧蒸気発生部111bと、高圧蒸気HSを発生する高圧蒸気発生部111cと、高圧蒸気タービン121cを駆動させた蒸気を加熱する再熱器115と、を有している。低圧蒸気発生部111a、中圧蒸気発生部111b、及び高圧蒸気発生部111cは、いずれも、水を加熱する節炭器112a,112b,112cと、節炭器112a,112b,112cで加熱された水を蒸気にする蒸発器113a,113b,113cと、蒸発器113a,113b,113cで発生した蒸気を過熱する過熱器114a,114b,114cと、を有している。中圧蒸気発生部111b及び高圧蒸気発生部111cは、節炭器112b,112c、蒸発器113b,113c及び過熱器114b,114cの他、低圧蒸気発生部111aの節炭器112aで加熱された水を自身の節炭器112b,112cに送るポンプ116b,116cを有している。
【0039】
なお、以下では、高圧蒸気発生部111cの節炭器112cを高圧節炭器112c、高圧蒸気発生部111cの蒸発器113cを高圧蒸発器113c、高圧蒸気発生部111cの過熱器114cを高圧過熱器114cとする。また、中圧蒸気発生部111bの節炭器112bを中圧節炭器112b、中圧蒸気発生部111bの蒸発器113bを中圧蒸発器113b、中圧蒸気発生部111bの過熱器114bを中圧過熱器114bとする。また、低圧蒸気発生部111aの節炭器112aを低圧節炭器112a、低圧蒸気発生部111aの蒸発器113aを低圧蒸発器113a、低圧蒸気発生部111aの過熱器114aを低圧過熱器114aとする。また、中圧蒸気発生部111bのポンプ116bを中圧ポンプ116bとし、高圧蒸気発生部111cのポンプ116cを高圧ポンプ116cとする。
【0040】
再熱器115、高圧過熱器114c、高圧蒸発器113c、高圧節炭器112c、中圧過熱器114b、中圧蒸発器113b、中圧節炭器112b、低圧過熱器114a、低圧蒸発器113a、及び低圧節炭器112aは、この順序で、タービン31から煙突40に向かう排気ガスEGの下流側に向かって並んでいる。
【0041】
復水器123と低圧節炭器112aとは、給水ライン131で接続されている。この給水ライン131には、前述の給水ポンプ124が設けられている。低圧過熱器114aと低圧蒸気タービン121aの蒸気入口とは、低圧過熱器114aからの低圧蒸気LSを低圧蒸気タービン121aに送る低圧蒸気ライン132で接続されている。低圧蒸気タービン121aの蒸気出口と復水器123とは、低圧蒸気タービン121aを駆動させた低圧蒸気LSが復水器123に供給されるよう互いに接続されている。高圧過熱器114cと高圧蒸気タービン121cの蒸気入口とは、高圧過熱器114cからの高圧蒸気HSを高圧蒸気タービン121cに送る高圧蒸気ライン138で接続されている。高圧蒸気タービン121cの蒸気出口と再熱器115の蒸気入口とは、高圧蒸気タービン121cからの高圧蒸気HSを再熱器115に送る高圧蒸気回収ライン139で接続されている。再熱器115の蒸気出口と中圧蒸気タービン121bの蒸気入口とは、再熱器115で過熱された高圧蒸気HSを再熱蒸気RHSとして中圧蒸気タービン121bに送る再熱蒸気ライン136で接続されている。中圧蒸気タービン121bの蒸気出口には、中圧蒸気回収ライン137が接続されている。この中圧蒸気回収ライン137は、低圧蒸気ライン132に合流している。中圧過熱器114bの蒸気出口には、中圧蒸気ライン133が接続されている。この中圧蒸気ライン133は、高圧蒸気回収ライン139に合流している。
【0042】
復水器123は、例えば、海水等と蒸気とを熱交換させて、蒸気を凝縮させる水冷式の復水器である。
【0043】
燃料予熱装置50は、燃焼器21に供給する燃料Fを加熱する予熱器51と、排熱回収ボイラー110で発生した蒸気を冷却蒸気CSとして燃焼器21に供給する冷却蒸気ライン55と、燃焼器21を通過して過熱された過熱蒸気SSを予熱器51に供給する過熱蒸気ライン57と、予熱器51で過熱蒸気SSが凝縮した水を排熱回収装置100の給水ライン131に送る水回収ライン61と、過熱蒸気ライン57から分岐している分岐蒸気ライン65と、を有している。
【0044】
予熱器51は、燃焼器21に燃料Fを供給する燃料ライン29中に設けられている。この予熱器51は、多管式熱交換器で、ケーシング52と、このケーシング52内に設けられている複数の管53とを有する。燃料ライン29を通ってきた燃料Fは、この管53内を通る。
【0045】
冷却蒸気ライン55は、高圧蒸気タービン121cからの高圧蒸気HSを再熱器115に送る高圧蒸気回収ライン139から分岐している。この冷却蒸気ライン55には、この冷却蒸気ライン55から燃焼器21に供給される蒸気流量を調節する冷却蒸気調節弁56が設けられている。この冷却蒸気ライン55は、図2に示すように、燃焼器21の燃焼筒23に形成されている蒸気流路24の一端部に接続されている。また、過熱蒸気ライン57の一端は、蒸気流路24の他端部に接続されている。この過熱蒸気ライン57の他端は、図1に示すように、予熱器51のケーシング52に接続されている。この過熱蒸気ライン57を通ってきた過熱蒸気SSは、予熱器51のケーシング52内であって予熱器51の管53外に流入する。この過熱蒸気ライン57には、この過熱蒸気ライン57を経て予熱器51に流入する過熱蒸気SSの流量を調節する過熱蒸気調節弁58が設けられている。水回収ライン61の一端は、予熱器51のケーシング52に接続されている。この水回収ライン61の他端は、排熱回収装置100の給水ライン131で、給水ポンプ124が設けられている位置よりも上流側(復水器側)の位置に接続されている。分岐蒸気ライン65は、過熱蒸気ライン57中で、過熱蒸気調節弁58が設けられている位置よりも上流側(燃焼器21側)の位置で過熱蒸気ライン57から分岐している。この分岐蒸気ライン65は、排熱回収装置100の再熱蒸気ライン136に接続されている。
【0046】
冷却蒸気ライン55に設けられている冷却蒸気調節弁56、及び過熱蒸気ライン57に設けられている過熱蒸気調節弁58は、いずれも、制御装置90からの指示に応じて開閉動作する。
【0047】
なお、ここでは、水回収ライン61の他端を排熱回収装置100の給水ライン131に接続しているが、この水回収ライン61の他端を排熱回収装置100の復水器123に接続してもよい。また、ここでは、過熱蒸気SSの流量を調節する過熱蒸気調節弁58を過熱蒸気ライン57に設けているが、分岐蒸気ライン65に設けてもよい。
【0048】
次に、以上で説明した本実施形態のガスタービンプラントの動作について説明する。
【0049】
ガスタービン10の圧縮機11は、図2に示すように、大気中の空気Aを圧縮し、圧縮した空気Aを燃焼器21に供給する。また、燃焼器21には、燃料ライン29からの燃料Fも供給される。燃焼器21の燃焼筒23内では、圧縮された空気A中で燃料Fが燃焼して、高温高圧の燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスは、燃焼筒23からタービン31の燃焼ガス流路37内に送られ、このタービン31のロータ32を回転させる。このロータ32の回転で、ガスタービン10に接続されている発電機15は発電する。
【0050】
タービン31のロータ32を回転させた燃焼ガスは、排気ガスEGとしてガスタービン10から排気され、排熱回収ボイラー110を介して、煙突40から大気に放出される。排熱回収装置100は、ガスタービン10からの排気ガスEGが排熱回収ボイラー110を通る過程で、この排気ガスEGに含まれている熱を回収する。
【0051】
排熱回収ボイラー110中で、最も下流側(煙突40側)の低圧節炭器112aには、復水器123からの水が給水ライン131を介して供給される。低圧節炭器112aは、この水を排気ガスEGと熱交換させて加熱する。低圧節炭器112aで加熱された水の一部は、低圧蒸発器113aでさらに加熱されて蒸気になる。この蒸気は、低圧過熱器114aでさらに過熱されて低圧蒸気LSとして、低圧蒸気ライン132を介して低圧蒸気タービン121aに供給される。低圧蒸気タービン121aを駆動させた蒸気は、復水器123で水に戻る。この水は、復水器123から給水ライン131を介して再び低圧節炭器112aに供給される。
【0052】
低圧節炭器112aで加熱された水の他の一部は、中圧ポンプ116bで加圧されて中圧節炭器112bに送られ、低圧節炭器112aで加熱された残りの水は、高圧ポンプ116cで加圧されて高圧節炭器112cに送られる。
【0053】
高圧節炭器112cは、高圧ポンプ116cから送られてきた水を排気ガスEGと熱交換させて加熱する。高圧節炭器112cで加熱された水は、高圧蒸発器113cでさらに加熱されて蒸気になる。この蒸気は、高圧過熱器114cでさらに過熱されて高圧蒸気HSとして、高圧蒸気ライン138を介して高圧蒸気タービン121cに供給される。
【0054】
中圧節炭器112bは、中圧ポンプ116bから送られてきた水を排気ガスEGと熱交換させて加熱する。中圧節炭器112bで加熱された水は、中圧蒸発器113bでさらに加熱されて蒸気になる。この蒸気は、中圧過熱器114bでさらに過熱されて、一部が中圧蒸気ISとして、中圧蒸気ライン133及び高圧蒸気回収ライン139を介して、排熱回収ボイラー110中で最も上流側(ガスタービン10側)の再熱器115に送られる。
【0055】
高圧蒸気タービン121cを駆動させた高圧蒸気HS及び中圧過熱器114bからの中圧蒸気ISは、高圧蒸気回収ライン139を介して、排熱回収ボイラー110中で最も上流側(ガスタービン10側)の再熱器115に送られる。再熱器115は、この蒸気を排気ガスEGと熱交換させて過熱し、再熱蒸気RHSとして、再熱蒸気ライン136を介して、中圧蒸気タービン121bに供給する。
【0056】
中圧蒸気タービン121bを駆動させた再熱蒸気RHSは、中圧蒸気回収ライン137及び低圧蒸気ライン132を介して、低圧蒸気タービン121aに供給される。
【0057】
高圧蒸気タービン121cを駆動させた高圧蒸気HSの一部は、冷却蒸気CSとして、前述したように、高圧蒸気回収ライン139及び冷却蒸気ライン55を介して、燃焼器21に送られる。この際、冷却蒸気ライン55に設けられている冷却蒸気調節弁56により、燃焼器21に供給される冷却蒸気CSの流量が調節される。
【0058】
冷却蒸気ライン55からの冷却蒸気CSは、燃焼器21の燃焼筒23に形成されている蒸気流路24に流入する。冷却蒸気CSは、この蒸気流路24を通る過程で、火炎及び燃焼ガスで加熱される燃焼筒23と熱交換し、燃焼筒23を冷却する(冷却用蒸気供給工程)。この結果、冷却蒸気CSは、過熱されて過熱蒸気SSとなる。
【0059】
この過熱蒸気SSは、過熱蒸気ライン57を介して、予熱器51のケーシング52内に流入する。この際に、過熱蒸気ライン57に設けられている過熱蒸気調節弁58により、予熱器51のケーシング52内に流入する過熱蒸気SSの流量が調節される。燃焼器21からの過熱蒸気SSのうち、予熱器51のケーシング52内に流入しない過熱蒸気SS、つまり燃料Fの予熱に用いられない余剰の過熱蒸気SSは、分岐蒸気ライン65及び再熱蒸気ライン136を介して、中圧蒸気タービン121bに供給される。
【0060】
予熱器51のケーシング52内に流入した過熱蒸気SSは、予熱器51の管53内を流れる燃料Fと熱交換し、燃料Fを加熱する(燃料予熱工程)。この燃料Fは、燃料ライン29を介して、前述したように、燃焼器21の噴射器22に供給される。一方、過熱蒸気SSは、燃料Fとの熱交換で冷却されて凝縮し水となる。この水は、水回収ライン61を介して、排熱回収装置100の復水器123又は給水ライン131に戻る。
【0061】
以上のように、本実施形態では、燃焼器21の冷却により過熱された過熱蒸気SSで燃料Fを加熱しているので、燃焼器21の熱を有効に利用することができる。さらに、本実施形態では、燃料Fを加熱する際、過熱蒸気SSが凝縮するので、過熱蒸気SSが持っている熱を十分に利用することができる。また、本実施形態では、燃料Fの予熱に用いられない余剰の過熱蒸気SSを中圧蒸気タービン121bに供給しているので、余剰の過熱蒸気SSも利用することができる。よって、本実施形態では、ガスタービンプラント全体での熱効率を高めることができる。
【0062】
また、本実施形態では、過熱蒸気SSを燃料Fとの熱交換で凝縮させているので、過熱蒸気SSと燃料との熱交換率が高まり、予熱器51の小型化を図ることができる。
【0063】
ところで、ガスタービンプラントでは、多くの場合、ガスタービン10からの排気ガスEGとは異なる熱源、例えば、別途、燃料を燃焼させて発生する熱で蒸気を発生する補助ボイラーを備えている。この場合、この補助ボイラーで発生した蒸気の一部を冷却蒸気CSとして、冷却蒸気ライン55を介して燃焼器21に導くことにより、排熱回収ボイラー110が蒸気を発生していない段階、例えば、ガスタービン10の起動段階でも、燃焼器21の冷却及び燃料Fの予熱を行うことができる。予熱器51では、過熱蒸気SSが燃料と熱交換して凝縮し水となる。この水は、水回収ライン61を介して、復水器123又は給水ライン131に送られる。よって、本実施形態では、排熱回収ボイラー110が定常運転しておらず、補助ボイラーからの蒸気を用いる場合でも、この蒸気を燃料Fとの熱交換で凝縮させているので、この蒸気の熱を極めて有効に利用することができる。
【0064】
「第二実施形態」
次に、図3を参照して、本発明に係るガスタービンプラントの第二実施形態について説明する。
【0065】
本実施形態のガスタービンプラントは、ガスタービン10と、ガスタービン10の駆動で発電する発電機15と、ガスタービン10から排気された排気ガスEGを大気に放出する煙突40と、蒸気を発生する補助蒸気発生装置200と、燃焼器21に供給する燃料Fを予熱する燃料予熱装置50aと、ガスタービン10や燃料予熱装置50a等を制御する制御装置90と、を備えている。
【0066】
すなわち、本実施形態のガスタービンプラントは、第一実施形態のガスタービンプラントにおける排熱回収装置100を備えていない替りに、補助蒸気発生装置200を備えている。この補助蒸気発生装置200は、補助ボイラー201と、この補助ボイラー201で発生した蒸気を水に戻す復水器202と、復水器202からの水中の溶存気体を取り除く脱気タンク203と、脱気タンク203の水を補助ボイラー201に供給する給水ポンプ204と、を備えている。補助ボイラー201は、前述したように、ガスタービン10からの排気ガスとは異なる熱源、例えば、別途、燃料を燃焼させて発生する熱で蒸気を発生するボイラーである。
【0067】
補助ボイラー201には、ここで発生した蒸気を各種設備等に供給する補助蒸気ライン211が接続されている。復水器202には、各種設備等で利用された蒸気を復水器202に送る蒸気回収ライン212が接続されている。この復水器202は、例えば、蒸気を空気で冷却する空冷式の復水器である。復水器202と補助ボイラー201とは給水ライン213で接続されている。この給水ライン213には、前述の脱気タンク203、さらにその下流側に給水ポンプ204が設けられている。
【0068】
本実施形態の燃料予熱装置50aは、第一実施形態における燃料予熱装置50と同様に、燃焼器21に供給する燃料を加熱する予熱器51と、補助ボイラー201で発生した蒸気を冷却蒸気CSとして燃焼器21に供給する冷却蒸気ライン55aと、燃焼器21を通過して過熱された過熱蒸気SSを予熱器51に供給する過熱蒸気ライン57と、予熱器51で過熱蒸気SSが凝縮した水を補助蒸気発生装置200の脱気タンク203に送る水回収ライン61aと、過熱蒸気ライン57から分岐している分岐蒸気ライン65aと、を有している。
【0069】
予熱器51は、第一実施形態における予熱器51と同様、燃焼器21に燃料Fを供給する燃料ライン29に設けられている。冷却蒸気ライン55aは、補助蒸気発生装置200の補助蒸気ライン211から分岐している。この冷却蒸気ライン55aには、この冷却蒸気ライン55aから燃焼器21に供給される蒸気流量を調節する冷却蒸気調節弁56が設けられている。この冷却蒸気ライン55aは、第一実施形態と同様、燃焼器21の燃焼筒23に形成されている蒸気流路24の一端部に接続されている。また、過熱蒸気ライン57の一端は、この燃焼筒23に形成されている蒸気流路24の端部に接続されている。この過熱蒸気ライン57の他端は、予熱器51のケーシング52に接続されている。この過熱蒸気ライン57には、予熱器51に流入する過熱蒸気SSの流量を調節する過熱蒸気調節弁58が設けられている。水回収ライン61aの一端は、予熱器51のケーシング52に接続されている。この水回収ライン61aの他端は、補助蒸気発生装置200の脱気タンク203に接続されている。分岐蒸気ライン65aは、過熱蒸気ライン57中で、過熱蒸気調節弁58が設けられている位置よりも上流側(燃焼器21側)の位置で過熱蒸気ライン57から分岐している。この分岐蒸気ライン65aは、補助蒸気発生装置200の蒸気回収ライン212に接続されている。
【0070】
冷却蒸気ライン55aに設けられている冷却蒸気調節弁56、及び過熱蒸気ライン57に設けられている過熱蒸気調節弁58は、いずれも、第一実施形態と同様、制御装置90からの指示に応じて開閉動作する。
【0071】
なお、ここでは、水回収ライン61aの他端を補助蒸気発生装置200の脱気タンク203に接続しているが、補助蒸気発生装置200の復水器202に接続してもよい。
【0072】
次に、以上で説明した本実施形態のガスタービンプラントの動作について説明する。
【0073】
本実施形態においても、ガスタービン10は、第一実施形態と同様に動作する。
【0074】
補助蒸気発生装置200の補助ボイラー201で発生した蒸気の一部は、冷却蒸気CSとして、補助蒸気ライン211及び冷却蒸気ライン55aを介して、燃焼器21に送られる。この際、冷却蒸気ライン55aに設けられている冷却蒸気調節弁56により、燃焼器21に供給される冷却蒸気CSの流量が調節される。
【0075】
冷却蒸気ライン55aからの冷却蒸気CSは、第一実施形態と同様、燃焼器21の燃焼筒23に形成されている蒸気流路24に流入する。冷却蒸気CSは、この蒸気流路24を通る過程で、火炎及び燃焼ガスで加熱される燃焼筒23と熱交換し、燃焼筒23を冷却する。この結果、冷却蒸気CSは、過熱されて過熱蒸気SSとなる。
【0076】
この過熱蒸気SSは、第一実施形態と同様、過熱蒸気ライン57を介して、予熱器51のケーシング52内に流入する。この際に、過熱蒸気ライン57に設けられている過熱蒸気調節弁58により、予熱器51のケーシング52内に流入する過熱蒸気SSの流量が調節される。燃焼器21からの過熱蒸気SSのうち、予熱器51のケーシング52内に流入しない過熱蒸気SSは、分岐蒸気ライン65a及び補助蒸気発生装置200の蒸気回収ライン212を介して、補助蒸気発生装置200の復水器202に供給される。
【0077】
予熱器51のケーシング52内に流入した過熱蒸気SSは、予熱器51の管53内を流れる燃料Fと熱交換し、燃料Fを加熱する。この燃料Fは、燃料ライン29を介して、燃焼器21に供給される。一方、過熱蒸気SSは、燃料Fとの熱交換で冷却されて凝縮し水となる。この水は、水回収ライン61aを介して、補助蒸気発生装置200の復水器202又は脱気タンク203に戻る。
【0078】
以上のように、本実施形態でも、第一実施形態と同様、燃焼器21の冷却により過熱された過熱蒸気SSで燃料Fを加熱しているので、燃焼器21の熱を有効に利用することができる。さらに、本実施形態でも、燃料Fを加熱する際、過熱蒸気SSが凝縮するので、過熱蒸気SSが持っている熱を十分に利用することができる。よって、本実施形態でも、ガスタービンプラント全体での熱効率を高めることができる。
【0079】
「第三実施形態」
次に、図4を参照して、本発明に係るガスタービンプラントの第三実施形態について説明する。
【0080】
本実施形態のガスタービンプラントは、ガスタービン10と、ガスタービン10の駆動で発電する発電機15と、ガスタービン10から排気された排気ガスEGの熱で蒸気を発生させる排熱回収装置100と、排熱回収装置100を通過した排気ガスEGを大気に放出する煙突40と、蒸気を発生する補助蒸気発生装置200と、ガスタービン10に供給する燃料を予熱する燃料予熱装置50bと、ガスタービン10や燃料予熱装置50b等を制御する制御装置90と、を備えている。
【0081】
すなわち、本実施形態のガスタービンプラントは、第一実施形態のガスタービンプラントに、第二実施形態における補助蒸気発生装置200を追加したものである。
【0082】
本実施形態の燃料予熱装置50bは、第一実施形態と同様、燃焼器21に供給する燃料を加熱する予熱器51と、排熱回収ボイラー110で発生した蒸気を冷却蒸気CSとして燃焼器21に供給する冷却蒸気ライン55と、燃焼器21を通過して過熱された過熱蒸気SSを予熱器51に供給する過熱蒸気ライン57と、予熱器51で過熱蒸気SSが凝縮した水を排熱回収装置100の給水ライン131に送る水回収ライン61と、過熱蒸気ライン57から分岐している分岐蒸気ライン65と、を有している。さらに、本実施形態の燃料予熱装置50bは、補助ボイラー201で発生した蒸気を冷却蒸気CSとして燃焼器21に供給する補助冷却蒸気ライン55bと、水回収ライン61から分岐している補助水回収ライン61bと、分岐蒸気ライン65から分岐している補助分岐蒸気ライン65bと、を有している。
【0083】
補助冷却蒸気ライン55bは、補助蒸気発生装置200の補助蒸気ライン211から分岐し、冷却蒸気ライン55に合流している。この補助冷却蒸気ライン55bには、この補助冷却蒸気ライン55bから冷却蒸気ライン55を介して燃焼器21に供給される蒸気流量を調節する補助冷却蒸気調節弁56bが設けられている。補助水回収ライン61bは、水回収ライン61から分岐し、補助蒸気発生装置200の脱気タンク203に接続されている。この補助水回収ライン61bには、脱気タンク203に流入する水の流量を調節する補助回収水調節弁62bが設けられている。また、水回収ライン61で、補助水回収ライン61bが分岐している位置よりも排熱回収装置100の復水器123側の位置には、回収水調節弁62が設けられている。補助分岐蒸気ライン65bは、分岐蒸気ライン65から分岐し、補助蒸気発生装置200の蒸気回収ライン212に接続されている。この補助分岐蒸気ライン65bには、ここを流れる蒸気の流量を調節する補助回収蒸気調節弁66bが設けられている。また、分岐蒸気ライン65で、補助分岐蒸気ライン65bが分岐している位置よりも排熱回収装置100の中圧蒸気タービン121b側の位置には、ここを流れる蒸気の流量を調節する回収蒸気調節弁66が設けられている。
【0084】
本実施形態の燃料予熱装置50bにおける各調節弁56,56b,58,62,62b,66,66bは、いずれも、制御装置90からの指示に応じて開閉動作する。
【0085】
次に、以上で説明した本実施形態のガスタービンプラントの動作について説明する。
【0086】
本実施形態においても、ガスタービン10及び排熱回収装置100は、第一実施形態と同様に動作する。
【0087】
また、本実施形態において、ガスタービン10及び排熱回収装置100が定常運転している際、燃料予熱装置50bは、第一実施形態と同様に動作する。すなわち、本実施形態の燃料予熱装置50bは、以下のように動作する。
【0088】
高圧蒸気タービン121cを駆動させた高圧蒸気HSの一部は、冷却蒸気CSとして、高圧蒸気回収ライン139及び冷却蒸気ライン55を介して、排熱回収装置100の中圧過熱器114bからの蒸気の一部は、冷却蒸気CSとして、中圧蒸気ライン133及び冷却蒸気ライン55を介して、燃焼器21に送られる。この際、冷却蒸気ライン55に設けられている冷却蒸気調節弁56により、燃焼器21に供給される冷却蒸気CSの流量が調節される。また、この際、補助冷却蒸気調節弁56bは全閉状態である。
【0089】
冷却蒸気ライン55からの冷却蒸気CSは、燃焼器21の燃焼筒23との熱交換で、この燃焼筒23を冷却する。一方、この冷却蒸気CSは、過熱されて過熱蒸気SSとなる。
【0090】
この過熱蒸気SSは、過熱蒸気ライン57を介して、予熱器51のケーシング52内に流入する。この際に、過熱蒸気ライン57に設けられている過熱蒸気調節弁58により、予熱器51のケーシング52内に流入する過熱蒸気SSの流量が調節される。燃焼器21からの過熱蒸気SSのうち、予熱器51のケーシング52内に流入しない過熱蒸気SSは、分岐蒸気ライン65及び再熱蒸気ライン136を介して、中圧蒸気タービン121bに供給される。また、この際、回収蒸気調節弁66は全開状態であり、補助回収蒸気調節弁66bは全閉状態である。
【0091】
予熱器51のケーシング52内に流入した過熱蒸気SSは、予熱器51の管53内を流れる燃料Fと熱交換し、燃料Fを加熱する。この燃料Fは、燃料ライン29を介して、燃焼器21に供給される。一方、過熱蒸気SSは、燃料Fとの熱交換で冷却されて凝縮し水となる。この水は、水回収ライン61を介して、排熱回収装置100の復水器123又は給水ライン131に戻る。この際、回収水調節弁62は全開状態であり、補助回収水調節弁62bは全閉状態である。
【0092】
また、本実施形態において、ガスタービン10が起動段階等で、排熱回収装置100が定常運転していない際、燃料予熱装置50bは、第二実施形態と同様に動作する。すなわち、本実施形態の燃料予熱装置50bは、以下のように動作する。
【0093】
補助蒸気発生装置200の補助ボイラー201で発生した蒸気の一部は、冷却蒸気CSとして、補助蒸気ライン211及び補助冷却蒸気ライン55b、さらに冷却蒸気ライン55を介して、燃焼器21に送られる。この際、補助冷却蒸気調節弁56bにより、燃焼器21に供給される冷却蒸気CSの流量が調節される。また、この際、冷却蒸気調節弁56は全閉状態である。
【0094】
補助蒸気ライン211及び補助冷却蒸気ライン55b、さらに冷却蒸気ライン55からの冷却蒸気CSは、燃焼器21の燃焼筒23と熱交換し、燃焼筒23を冷却する。一方、この冷却蒸気CSは、過熱されて過熱蒸気SSとなる。
【0095】
この過熱蒸気SSは、過熱蒸気ライン57を介して、予熱器51のケーシング52内に流入する。この際に、過熱蒸気ライン57に設けられている過熱蒸気調節弁58により、予熱器51のケーシング52内に流入する過熱蒸気SSの流量が調節される。燃焼器21からの過熱蒸気SSのうち、予熱器51のケーシング52内に流入しない過熱蒸気SSは、分岐蒸気ライン65及び補助分岐蒸気ライン65b、さらに補助蒸気発生装置200の蒸気回収ライン212を介して、補助蒸気発生装置200の復水器202に供給される。この際、補助回収蒸気調節弁66bは全開状態であり、回収蒸気調節弁66は全閉状態である。
【0096】
予熱器51のケーシング52内に流入した過熱蒸気SSは、予熱器51の管53内を流れる燃料Fと熱交換し、燃料Fを加熱する。この燃料Fは、燃料ライン29を介して、燃焼器21に供給される。一方、過熱蒸気SSは、燃料Fとの熱交換で冷却されて凝縮し水となる。この水は、水回収ライン61及び補助水回収ライン61bを介して、補助蒸気発生装置200の復水器202又は脱気タンク203に戻る。この際、補助回収水調節弁62bは全開状態であり、回収水調節弁62は全閉状態である。
【0097】
以上、本実施形態では、ガスタービン10及び排熱回収装置100が定常運転している際には、この排熱回収装置100からの蒸気を用いて、燃焼器21を冷却しつつ燃料Fを予熱し、ガスタービン10が起動段階等で、排熱回収装置100が定常運転していない際には、補助蒸気発生装置200からの蒸気を用いて、燃焼器21を冷却しつつ燃料Fを予熱することができる。しかも、本実施形態では、ガスタービン10及び排熱回収装置100が定常運転している際でも、ガスタービン10が起動段階等で排熱回収装置100が定常運転していない際でも、ガスタービンプラント全体での熱効率を高めることができる。
【0098】
「燃料予熱装置の第一変形例」
次に、図5を参照して、以上の各実施形態における燃料予熱装置の第一変形例について説明する。
【0099】
本変形例の燃料予熱装置50cは、二基の予熱器51a,51bと、冷却蒸気ライン55と、過熱蒸気ライン57と、水回収ライン61と、過熱蒸気ライン57から分岐している分岐蒸気ライン65と、を有している。すなわち、本変形例の燃料予熱装置50cは、二基の予熱器51a,51bを有していることを除いて、基本的に、以上の実施形態における燃料予熱装置と同様である。二基の予熱器51a,51bは、燃料ライン29に直列的に設けられている。これら二基の予熱器51a,51bのうち、燃料ライン29の上流側に設けられている予熱器51aが第一予熱器51aを成し、燃料ライン29の下流側に設けられている予熱器51bが第二予熱器51bを成す。
【0100】
本変形例の冷却蒸気ライン55は、蒸気供給系70から分岐している。この蒸気供給系70は、第一及び第三実施形態における排熱回収装置100の中圧蒸気ライン133、又は第二及び第三実施形態における補助蒸気発生装置200の補助蒸気ライン211である。この冷却蒸気ライン55は、以上の各実施形態と同様に、燃焼器21の燃焼筒23に接続されている。また、この冷却蒸気ライン55には、冷却蒸気調節弁56が設けられている。
【0101】
燃焼器21の燃焼筒23に接続されている過熱蒸気ライン57は、途中で二つに分岐しており、一方が第一過熱蒸気ライン57aを成し、第一予熱器51aのケーシング52に接続され、他方が第二過熱蒸気ライン57bを成し、第二予熱器51bのケーシング52に接続されている。第一過熱蒸気ライン57aには、ここを通る過熱蒸気SSの流量を調節する第一過熱蒸気調節弁58aが設けられ、第二過熱蒸気ライン57bには、ここを通る過熱蒸気SSの流量を調節する第二過熱蒸気調節弁58bが設けられている。
【0102】
第一予熱器51aのケーシング52及び第二予熱器51bのケーシング52には、それぞれ水回収ライン61が接続されている。各水回収ライン61は、いずれも、復水・給水系71に接続されている。この復水・給水系71は、第一及び第三実施形態における排熱回収装置100の復水器123又は給水ライン131、又は第二及び第三実施形態における補助蒸気発生装置200の復水器202又は脱気タンク203である、
【0103】
過熱蒸気ライン57から分岐している分岐蒸気ライン65は、蒸気回収系72に接続されている。この蒸気回収系72は、第一及び第三実施形態における排熱回収装置100の再熱蒸気ライン136、又は第二及び第三実施形態における補助蒸気発生装置200の蒸気回収ライン212である、
【0104】
本実施形態においても、蒸気供給系70からの蒸気は、冷却蒸気CSとして、冷却蒸気ライン55を介して、燃焼器21に送られる。冷却蒸気ライン55からの冷却蒸気CSは、燃焼器21の燃焼筒23との熱交換で、この燃焼筒23を冷却する。一方、この冷却蒸気CSは、過熱されて過熱蒸気SSとなる。
【0105】
この過熱蒸気SSは、第一過熱蒸気ライン57aを介して、第一予熱器51aのケーシング52内に流入すると共に、第二過熱蒸気ライン57bを介して、第二予熱器51bのケーシング52内に流入する。この際、第一過熱蒸気調節弁58aにより、第一予熱器51aのケーシング52内に流入する過熱蒸気SSの流量が調節され、第二過熱蒸気調節弁58bにより、第二予熱器51bのケーシング52内に流入する過熱蒸気SSの流量が調節される。燃焼器21からの過熱蒸気SSのうち、第一予熱器51aのケーシング52内及び第二予熱器51bのケーシング52内に流入しない過熱蒸気SSは、分岐蒸気ライン65を介して、蒸気回収系72に送られる。
【0106】
第一予熱器51aのケーシング52内に流入した過熱蒸気SSは、燃料Fを加熱する。この燃料Fは、燃料ライン29を介して、第二予熱器51bに送れる。また、第二予熱器51bのケーシング52内に流入した過熱蒸気SSは、第一予熱器51aで加熱された燃料Fをさらに加熱する。この燃料Fは、燃料ライン29を介して、燃焼器21に供給される。一方、過熱蒸気SSは、各予熱器51a,51bにおける燃料Fとの熱交換で冷却されて凝縮し水となる。この水は、水回収ライン61を介して、復水・給水系71に送られる。
【0107】
以上、本変形例では、燃料Fを二段階で加熱するので、以上の実施形態よりもさらに高温の燃料Fを燃焼器21に供給することができ、燃焼器21における燃料Fの燃焼効率を高めることができる。
【0108】
「燃料予熱装置の第二変形例」
次に、図6を参照して、以上の各実施形態における燃料予熱装置の第二変形例について説明する。
【0109】
本変形例の燃料予熱装置50dも、第一変形例と同様、二基の予熱器51d,51bと、冷却蒸気ライン55と、過熱蒸気ライン57と、水回収ライン61と、過熱蒸気ライン57から分岐している分岐蒸気ライン65と、を有している。さらに、本変形例も、第一変形例と同様、二基の予熱器51d,51bは、燃料ライン29中に直列的に設けられている。これら二基の予熱器51d,51bのうち、燃料ライン29の上流側に設けられている予熱器51dが第一予熱器(前段予熱器)51dを成し、燃料ライン29の下流側に設けられている予熱器51bが第二予熱器(後段予熱器)51bを成す。
【0110】
本変形例の冷却蒸気ライン55も、第一変形例と同様、蒸気供給系70から分岐し、燃焼器21の燃焼筒23に接続されている。また、この冷却蒸気ライン55にも、冷却蒸気調節弁56が設けられている。この冷却蒸気ライン55は、冷却蒸気調節弁56の位置によりも蒸気供給系70側の位置で分岐しており、この分岐しているラインが第一予熱器用蒸気ライン(前段蒸気ライン)68を成す。この第一予熱器用蒸気ライン68は、第一予熱器51dのケーシング52に接続されている。この第一予熱器用蒸気ライン68には、第一予熱器用蒸気調節弁69が設けられている。
【0111】
燃焼器21の燃焼筒23に接続されている過熱蒸気ライン57は、第二予熱器51bのケーシング52に接続されている。この過熱蒸気ライン57にも、ここを通る過熱蒸気SSの流量を調節する過熱蒸気調節弁58が設けられている。
【0112】
第一予熱器51dのケーシング52及び第二予熱器51bのケーシング52には、第一変形例と同様、それぞれ水回収ライン61が接続されている。各水回収ライン61は、いずれも、復水・給水系71に接続されている。また、過熱蒸気ライン57から分岐している分岐蒸気ライン65も、第一変形例と同様、蒸気回収系72に接続されている。
【0113】
本変形例では、蒸気供給系70からの蒸気の一部が第一予熱器用蒸気ライン68を介して、第一予熱器51dのケーシング52内に流入する。この際、第一予熱器用蒸気調節弁69により、第一予熱器51dのケーシング52内に流入する蒸気の流量が調節される。第一予熱器51dのケーシング52内に流入した蒸気は、燃料Fを加熱する。この燃料Fは、燃料ライン29を介して、第二予熱器51bに送れる。一方、蒸気は、第一予熱器51dにおける燃料Fとの熱交換で冷却されて凝縮し水となる。この水は、水回収ライン61を介して、復水・給水系71に送られる。
【0114】
また、本変形例において、蒸気供給系70からの蒸気の残りの一部が、冷却蒸気CSとして、冷却蒸気ライン55を介して、燃焼器21に送られる。冷却蒸気ライン55からの冷却蒸気CSは、燃焼器21の燃焼筒23との熱交換で、この燃焼筒23を冷却する。一方、この冷却蒸気CSは、過熱されて過熱蒸気SSとなる。
【0115】
この過熱蒸気SSは、過熱蒸気ライン57を介して、第二予熱器51bのケーシング52内に流入する。この際、過熱蒸気調節弁58により、第二予熱器51bのケーシング52内に流入する過熱蒸気SSの流量が調節される。燃焼器21からの過熱蒸気SSのうち、第二予熱器51bのケーシング52内に流入しない過熱蒸気SSは、分岐蒸気ライン65を介して、蒸気回収系72に送られる。
【0116】
第二予熱器51bのケーシング52内に流入した過熱蒸気SSは、第一予熱器51dで加熱された燃料Fをさらに加熱する。この燃料Fは、燃料ライン29を介して、燃焼器21に供給される。一方、過熱蒸気SSは、第二予熱器51bにおける燃料Fとの熱交換で冷却されて凝縮し水となる。この水は、水回収ライン61を介して、復水・給水系71に送られる。
【0117】
以上、本変形例でも、第一変形例と同様、燃料Fを二段階で加熱するので、以上の実施形態よりもさらに高温の燃料Fを燃焼器21に供給することができ、燃焼器21における燃料Fの燃焼効率を高めることができる。
【0118】
なお、第一変形例では、燃焼器21の燃焼筒23を通って過熱された冷却蒸気CSを過熱蒸気SSとして、第一予熱器51aのケーシング52内及び第二予熱器51bのケーシング52内に供給するので、燃焼器21の燃焼筒23に供給する冷却蒸気CSの流量は、以上の各実施形態よりも多くなる。このため、燃焼筒23を冷却するために、多くの流量が必要な場合には、第一変形例の燃料予熱装置50cが有効である。
【0119】
一方、第二変形例では、燃焼器21の燃焼筒23を通って過熱された冷却蒸気CSを過熱蒸気SSとして第二予熱器51bのケーシング52内のみに供給するので、燃焼器21の燃焼筒23に供給する冷却蒸気CSの流量は、以上の実施形態と同様である。しかしながら、第二変形例でも、前述したように、燃料Fを二段階で加熱するので、以上の実施形態よりもさらに高温の燃料Fを燃焼器21に供給することができる。このため、高温の燃料Fを燃焼器21に供給しつつも、燃焼筒23を冷却するための蒸気の流量を抑えたい場合には、第二変形例の燃料予熱装置50dが有効である。
【0120】
「その他の変形例」
以上の各実施形態及び各変形例では、いずれも、蒸気で燃焼器21の燃焼筒23を冷却している例であるが、燃焼器21及びタービン31のうちいずれかの部品であって燃焼ガスに接する高温部品を蒸気で冷却し、高温部品を冷却した後の蒸気で燃料を予熱してもよい。なお、高温部品としては、例えば、タービン31の静翼36や動翼34(図2に示す)、さらに、タービン31のケーシング35の内周面のうち、動翼34に対向する部分を構成する分割環等がある。
【符号の説明】
【0121】
10:ガスタービン、11:圧縮機、21:燃焼器、22:噴射器、23:燃焼筒、24:蒸気流路、31:タービン、32:タービンロータ(又は単にロータ、33:動翼、35:ケーシング、36:静翼、40:煙突、50,50a,50b,50c,50d:燃料予熱装置、51:予熱器、51a:第一予熱器、51b:第二予熱器、51d:第一予熱器(前段予熱器)、55,55a:冷却蒸気ライン、55b:補助冷却蒸気ライン、56:冷却蒸気調節弁、56b:補助冷却蒸気調節弁、57:過熱蒸気ライン、57a:第一過熱蒸気ライン、57b:第二過熱蒸気ライン、58:過熱蒸気調節弁、58a:第一過熱蒸気調節弁、58b:第二過熱蒸気調節弁、61,61a:水回収ライン、61b:補助水回収ライン、65,65a:分岐蒸気ライン、65b:補助分岐蒸気ライン、100:排熱回収装置、110:排熱回収ボイラー、111a:低圧蒸気発生部、111b:中圧蒸気発生部、111c:高圧蒸気発生部、121a:低圧蒸気タービン、121b:中圧蒸気タービン、121c:高圧蒸気タービン、123:復水器、131:給水ライン、133:中圧蒸気ライン、136:再熱蒸気ライン、200:補助蒸気発生装置、201:補助ボイラー、202:復水器、203:脱気タンク、211:補助蒸気ライン、212:蒸気回収ライン、213:給水ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6