(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のプライマー組成物を用いて機能性、例えば耐衝撃性能を上げる製造方法においては、レンズ基材の片面、もしくは両面にプライマー層を形成して耐衝撃性能を上げることができるし、アメリカFDAの規格には充分クリアするが、プライマー層を形成する方法では、低屈折レンズと比較して高屈折レンズの耐衝撃性が劣ってしまう問題がある。
【0007】
このため、特許文献2及び3に記載のように、耐衝撃性能等の機能性を持つフィルムをレンズ基材に貼り付けることにより、高屈折レンズの耐衝撃性等の所望の機能性を得ることができるが、特許文献2及び3に記載のフィルムの貼り付け方法では、レンズ基材の湾曲面を機械的に動かしてフィルムに押し付ける必要があるため、レンズ基材の片方の湾曲面への機能性フィルムの貼付は出来ても、機能性フィルムを同時に両面、例えば、両湾曲面、又は湾曲面及び平面の両方に貼り付けることができないという問題があった。
勿論、特許文献2及び3に記載のフィルムの貼付方法によりレンズ基材にその片面ずつ順次機能性フィルムを張り付けて両面に機能性フィルムが張り付けられたレンズを製造することはできるが、コストと手間がかかるし、先にフィルムが貼り付けられた表面をレンズ支持体やホルダで支持することになるので、フィルム表面に汚れや傷を付ける恐れがあるという問題もあった。
特に、既に所望される度数に仕上がっている眼鏡用レンズ等の光学素子の両面に機能性フィルムを張り付ける場合には、先にフィルムが貼り付けられた表面をレンズ支持体やホルダで支持することによるフィルム表面に汚れや傷は重大な問題となる。
【0008】
本発明は、以上のような従来技術の事情や問題点を鑑みて、光学用レンズや眼鏡用レンズ等の光学素子、特に既に所望される度数に仕上がっている眼鏡用レンズ等の光学素子の場合おいて、光学素子の第1面及び第2面の両面に、機能性フィルム、例えば偏光特性等の光学的特性や耐衝撃性能等の表面特性を持つフィルムを同時に貼り付けることができ、所望の機能性フィルムを張り付けることによって所望の機能性膜(フィルム)を備えた、新たな付加価値を有する光学素子を製造することができる機能性膜を備えた光学素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の光学素子の製造方法は、それぞれ密閉空間を形成する第1チャンバ、開閉可能な第2チャンバ、及び第3チャンバを用いて、光学素子の両表面にそれぞれ2枚の機能性フィルムをそれぞれ接着剤によって同時に貼り付ける貼付工程を有する機能性膜を備えた光学素子の製造方法であって、前記貼付工程は、前記第2チャンバを開放して前記両表面に前記光学素子をその端面を保持冶具で保持した状態で前記第2チャンバ内にセットした後に、前記第2チャンバを閉じると共に、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間、及び前記第2チャンバと前記第3チャンバとの間に前記2枚の機能性フィルムをそれぞれ配置して、各チャンバ内を密閉空間とした後、前記第1チャンバ、前記第2チャンバ、及び前記第3チャンバ内をそれぞれ減圧して、それぞれ所定の圧力に維持し、前記第1チャンバ、及び前記第3チャンバ内に気体を導入して両チャンバの内部を昇圧させ、前記第2チャンバにセットされた前記光学素子の両表面に両側からそれぞれ前記2枚の機能性フィルムを、前記接着剤を介して接触させ、前記光学素子の両表面に前記接着剤によって前記2枚の機能性フィルムを同時に貼り付けるものであり、前記光学素子の両表面と前記2枚の機能性フィルムとの少なくとも一方には、それぞれ前記接着剤よりなる接着層が形成されていることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記第1チャンバ、前記第2チャンバ、及び前記第3チャンバ内をそれぞれ減圧した後、前記第1チャンバ、及び前記第3チャンバ内に気体を導入する前に、前記光学素子の両側に配置された前記2枚の機能性フィルムを加熱して柔軟にすることが好ましい。
また、前記貼付工程の後に、さらに、前記第2チャンバを開放して、前記2枚の機能性フィルムがそれぞれ前記両表面に貼り付けられた機能性フィルム付き光学素子を取り出す取出工程と、前記保持冶具から前記機能性フィルム付き光学素子を取り外すと共に、前記光学素子からはみ出した前記機能性フィルムをカットするカット工程と、このカット工程の後に、前記2枚の機能性フィルムと前記光学素子の両表面との間の前記接着層をそれぞれ硬化させて、前記機能性膜を備えた光学素子を製造する硬化工程とを有することが好ましい。
若しくは、前記貼付工程の後に、さらに、前記2枚の機能性フィルムと前記光学素子の両表面との間の前記接着層をそれぞれ硬化させる硬化工程と、この硬化工程の後に、前記第2チャンバを開放して、前記2枚の機能性フィルムがそれぞれ前記両表面に貼り付けられた機能性フィルム付き光学素子を取り出す取出工程と、前記保持冶具から前記機能性フィルム付き光学素子を取り外すと共に、前記光学素子からはみ出した前記機能性フィルムをカットして、前記機能性膜を備えた光学素子を製造するカット工程とを有することが好ましい。
【0011】
また、前記接着層は、前記貼付工程の前に、予め前記光学素子の両表面にそれぞれ形成されており、前記保持冶具は、前記光学素子を吊り下げて保持するものであり、予め前記両表面に前記接着層が形成された前記光学素子は、その端面を保持冶具で保持された状態で前記第2チャンバ内にセットされるものであり、前記第1チャンバ、前記第2チャンバ及び前記第3チャンバは、水平方向に配置されるものであることが好ましい。
また、前記貼付工程の前に、さらに、前記光学素子の端面を前記保持冶具で保持させて前記保持冶具に前記光学素子をセットする保持工程と、前記保持冶具にセットした状態で、前記光学素子を洗浄し、乾燥する洗浄工程と、前記保持冶具にセットした状態で、乾燥後の前記光学素子に接着剤を塗布して前記光学素子の両表面に前記接着層を形成する塗布工程とを有することが好ましい。
また、前記洗浄工程は、前記保持冶具に吊り下げて保持された前記光学素子を洗浄槽内の洗浄液に浸漬させて洗浄した後に、乾燥させるものであり、前記塗布工程は、前記保持冶具に吊り下げて保持された前記光学素子を接着剤槽内の接着剤液に浸漬させて引き上げて前記光学素子に前記接着剤を所定厚さに塗布して、前記光学素子の両表面にそれぞれ前記所定厚さの前記接着層を形成するものであることが好ましい。
【0012】
また、前記保持冶具は、前記光学素子を水平に保持するものであり、前記接着層は、予め前記2枚の機能性フィルムの片面にそれぞれ形成されており、それぞれ前記片面に前記接着層が形成された前記2枚の機能性フィルムは、前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間、及び前記第2チャンバと前記第3チャンバとの間にそれぞれ配置されるものであり、前記第1チャンバ、前記第2チャンバ及び前記第3チャンバは、垂直方向に配置されるものであることが好ましい。
また、前記貼付工程の前に、さらに、前記光学素子を洗浄し、乾燥する洗浄工程と、前記光学素子の端面を前記保持冶具で保持させて前記保持冶具に前記光学素子をセットする保持工程と、予め前記2枚の機能性フィルムの片面にそれぞれ前記接着層を形成する接着層形成工程とを有することが好ましい。
また、前記接着層形成工程は、前記2枚の機能性フィルムの片面にそれぞれに両面接着タイプの接着剤シートを貼り付けて前記所定厚さの前記接着層を形成するものであることが好ましい。
【0013】
また、前記光学素子は、光学用レンズ又は眼鏡用レンズであることが好ましい。
また、前記眼鏡用レンズは、すでに所望される度数に仕上がっている眼鏡用レンズであることが好ましい。
ところで、本発明の光学素子の製造方法は、結局、機能性膜を備えた光学素子の製造方法であって、光学素子の第1面及び第2面の両表面に接着剤を塗布して前記両表面に接着層を形成する工程と、前記接着層が形成された前記光学素子の両表面に、2枚の機能性フィルムをそれぞれ同時に貼り付ける工程とを含む、若しくは、2枚の機能性フィルムの片面にそれぞれ両面接着タイプの接着シートを貼り付けて接着層を形成する工程と、
前記光学素子の両表面に、片面に前記接着層が形成された2枚の機能性フィルムを同時に貼り付ける工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以上のように構成されているので、光学用レンズや眼鏡用レンズ等の光学素子、特に既に所望される度数に仕上がっている眼鏡用レンズ等の光学素子の第1面及び第2面に機能性フィルム、例えば偏光特性等の光学的特性や耐衝撃性能等の表面特性を持つフィルムを同時に貼り付けることが可能となる。
また、本発明によれば、所望の機能性フィルムを張り付けることによって所望の機能性膜(フィルム)を備えた、新たな付加価値を有する光学素子を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る機能性膜を備えた光学素子の製造方法を添付の図面に示す好適な実施形態を参照して詳細に説明する。
まず、本発明法によって製造される機能性膜を備えた光学素子について説明する。
図1は、本発明に係る機能性膜を備えた光学素子の製造方法によって製造された光学素子である眼鏡用レンズの一例の断面図である。
同図に示すように、機能性膜を備えた光学素子である眼鏡用レンズ10は、機能性膜の無い光学素子である眼鏡用レンズ12と、眼鏡用レンズ12の2つの主面(第1面12a及び第2主面12b)の両面上にそれぞれ積層された接着層14(14a及び14b)と、接着層14(14a及び14b)上にそれぞれ積層された機能性フィルム16(16a及び16b)とを有する。
以下では、機能性膜付き眼鏡用レンズ10を構成する各要素(眼鏡用レンズ12、接着層14、機能性フィルム16)についてそれぞれ詳述する。
【0017】
(眼鏡用レンズ)
眼鏡用レンズ12(以下、単にレンズ12という)は、既に所望される度数に仕上がっている、機能性膜の無い眼鏡用レンズであり、2つの主面として第1面12a及び第2主面12bの両面を有する。
レンズ12の種類は、特に制限されず、プラスチック、無機ガラス等の通常のレンズを用いることができ、なかでも取扱い性に優れる点で、プラスチックレンズが好ましく、特に、眼鏡用プラスチックレンズがより好ましい。
プラスチックレンズの材料は、特に制限されないが、例えば、アクリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、メタクリル系樹脂、アリル系樹脂、エピスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエ−テルサルホン樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)、ポリ塩化ビニル樹脂、ハロゲン含有共重合体、またはイオウ含有共重合体などが挙げられる。
【0018】
レンズ12の厚さは、特に制限されず、用途に応じて適宜設定されるが、通常の眼鏡用レンズに用いられる厚さであれば良いが、取扱い性の点から、1〜30mm程度の場合が多い。
また、レンズ12は、透光性を有していれば、透明でなくてもよく、着色されていてもよい。
さらに、
図1においては、レンズ12の両面(12a,12b)の表面形状は,凸面及び凹面であるが、その表面形状は限定されず、平面、凸面、凹面等の任意の形状から選択される。また、レンズ12の両面(12a,12b)の凹凸面は、球面であっても、非球面であっても良い。
【0019】
ここでは、機能性膜となる機能性フィルムが張り付けられる本発明に用いられる光学素子として、既に所望される度数に仕上がっているが、フレームに対する加工は行われていない眼鏡用レンズを挙げて説明しているが、本発明においては、これに限定されず、フレームに対する加工を施した眼鏡用レンズであっても良い。また、本発明の光学素子としては、眼鏡用レンズに限定されず、眼鏡用レンズ以外の光学用レンズでも良く、所定のパワーに仕上げられているレンズであっても良いし、また、パワーの無いレンズであっても良く、例えば、スキー用ゴーグル、溶接用ゴーグル、潜水用ゴーグル等のゴーグル、安全メガネ、クリップオン式偏光レンズなどであっても良い。
なお、本発明に係る光学素子としては、特許文献1〜3に記載の光学素子やレンズ等も用いることができるのは勿論である。
また、本発明機能性膜付き眼鏡用レンズ10である光学素子においては、機能性フィルム16をレンズ12に貼り付けたのち、プライマー、ハード、反射防止、耐水・耐油等のための表面処理を行っても良いことは勿論である。
【0020】
(接着層)
接着層14は、レンズ12と機能性フィルム16との密着性を確保するための接着剤からなる層である。
接着層14を形成する接着剤には、エステル系ポリウレタンが含まれる
ことが好ましい。エステル系ポリウレタンとはエステル結合が含まれるポリウレタンであって、例えば、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとが共重合して得られるポリマーである。ポリエステルポリオールは、多塩基カルボン酸と多価アルコールとを反応して得られるものである。なお、本発明においては、接着効果がより優れる点で、エステル系ポリウレタンには芳香族基が含まれていることが好ましい。
【0021】
接着層14を形成する接着剤として、上記のようなエステル系ポリウレタンが含まれる接着剤が好ましいが、本発明は、これに限定されず、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、エポキシ系、アクリル系、シリコン系、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン系、ポリビニルアルコール系、セルロース系等の接着剤であっても良い。なお、接着剤のタイプとしては、熱硬化性、熱可塑性(ホットメルトタイプ)、又は紫外線熱硬化性のいずれであっても良い。
なお、本発明に係る接着剤としては、特許文献1〜3に記載の接着剤等も用いることができるのは勿論である。
【0022】
接着層14の厚みは特に制限されないが、レンズ12と機能性フィルム16との密着性がより優れる点で、3.8μm以上が好ましく、4.0μm以上がより好ましい。
接着層14の形成方法は、特に制限されず、上記エステル系ポリウレタンのラテックスを含む組成物からなる液状の接着剤を予めレンズ12上に塗布しておき、機能性フィルム16の貼付の後に硬化処理を施す方法や、上記の接着剤からなる両面接着タイプの接着剤シートを別途作製し、予め機能性フィル
ム16の片面の貼着面に貼り合せておき、接着剤シートが貼り付けられた2枚の機能性フィル
ム16をそれぞれレンズ12の両面に貼り付けた後に硬化処理を施す方法などが挙げられる。なお、レンズ12の両面に予め両面接着タイプの接着剤シートをそれぞれ張り付けて接着層14を形成するようにしても良いし、上記液状の接着剤を予め機能性フィル
ム16の片面に塗布して接着層14を形成するようにしておいても良い。
【0023】
(機能性フィルム)
機能性フィルム16は、上述した接着層14上に貼り合せるフィルムであり、レンズ12に耐衝撃性(表面の力学的特性)等の機能性を付与するためのものである。
このような機能性フィルム16の材料としては、特に制限的ではなく、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、オレフィンエラストマー、トリアセチルセルロール、シクロオレフィンポリマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコールなどのポリマー材料が挙げられる。
機能性フィルム16の厚みは、特に制限されないが、光学素子10の最低厚みを考慮すると機能性フィルム16の厚みは0.2mm以下が好ましく、0.1mm以下がより好ましい。
【0024】
また、本発明に用いられる機能性フィルムとして、眼鏡用レンズの両面に貼り付ける耐衝撃性フィルムを挙げて説明しているが、本発明は制限的ではなく、眼鏡用レンズや光学用レンズ等の光学素子に所定の機能性を付与するものであれば、どのようなものでも良く、例えば、偏光フィルム、コントラスト強調フィルム、フォトクロミックフィルム、反射防止フィルム等の光学的特性を付与するフィルムや、疎水性、防汚性、防傷性(耐衝撃性、耐摩耗性、耐引掻き傷性)などの表面特性を付与するフィルム、易染色性、特定波長カットフィルム(紫外線・赤外線カットフィルム)等の所望の特性を持つ機能性フィルムであっても良い。
なお、本発明に係る機能性フィルムとしては、特許文献1〜3に記載の機能性フィルム等も用いることができるのは勿論である。
【0025】
(機能性膜を備えた光学素子の製造方法)
(第1実施形態)
図2は、本発明の第1実施形態に係る機能性膜を備えた光学素子の製造方法の一例の全体を示すフローチャートである。
図2に示すように、まず、ステップS10では、レンズ12を用意し、レンズセットを行う。具体的には、レンズセット工程S10においては、
図3に示すように、レンズ12の端面の3点を保持冶具(レンズ保持冶具)18の3つのアーム18aで支持することにより、レンズ12の端面に対して保持冶具18をセットする。なお、保持冶具18にセットされたレンズ12の保持形態は、
図3に示す保持形態に限定されず、如何なる保持形態であっても良く、レンズ12の形状に応じて保持冶具18の形状を適宜選択すればよいし、保持冶具18の形状に応じてレンズ12の保持形態を適宜選択すればよい。なお、
図3には、レンズ12及び保持冶具18の形状は、説明のために模式的に示されるものであり、本発明は、図示されている形状にとらわれないのは言うまでもない。
【0026】
次に、
図2に示すステップS12では、レンズ12の洗浄及び乾燥を行う。具体的には、洗浄・乾燥工程S12においては、レンズ12を保持冶具18にセットした状態で、図示しない洗浄槽内の液状洗浄剤に浸漬させて、レンズ12に付着しているゴミや汚れを洗浄した後、レンズ12を保持冶具18にセットした状態で洗浄剤から引き上げて洗浄槽から引き出し、乾燥させる。
洗浄・乾燥工程S12におけるレンズ12の洗浄及び乾燥は、特に制限的ではなく、従来公知の洗浄方法及び乾燥方法を適用することができ、洗浄方法に応じた従来公知の洗浄剤を用いることができる。
【0027】
レンズ12を洗浄するための洗浄剤は、特に制限的ではなく、公知の洗浄剤を用いることができ、例えば、レンズ、特にプラスチックレンズを洗浄するのに用いるのに適した、特許第3355160号公報に記載のアルキレンオキサイド化合物を5wt%以上、オレフィン系炭化水素等を含む炭素数10〜18の炭化水素を95〜5wt%、平均HLBが4〜18の非イオン性界面活性剤を0.5〜35wt%、及び窒素原子数が1〜5で分子量が50〜300の範囲にあるアミン系化合物を0.1〜70重量%含有する洗浄剤に水、任意の添加剤などを常法により混合して用いることができる。また、特に、ガラスレンズの場合には、特許第5137389号公報に記載の水酸化ナトリウム等の水溶性アルカリ化合物を1〜30wt%となるように水等に溶解して得たアルカリ洗浄剤を用いることができる。なお、このようなアルカリ洗浄剤を用いる場合には、必要な洗浄性が確保される限りにおいて、必要に応じて通常洗浄剤に含まれる公知の成分が配合されていてもよい。かかる成分としては、例えば、界面活性剤、キレート剤、金属イオン封鎖剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、酸化防止剤、窒素原子数が1〜5で分子量が50〜300の範囲にあるアミン系化合物、ヤシ脂肪酸メチルや酢酸ベンジル等のエステル、炭化水素系溶剤またはアルコール類等の溶剤等が挙げられる。
【0028】
次に、
図2に示すステップS14では、レンズ12の両表面に接着剤塗布を行う。具体的には、接着剤塗布工程S14においては、
図4に示すように、レンズ12を保持冶具18にセットした状態で、接着剤槽20内の液状接着剤22に浸漬させて引き上げることで、レンズ12の両表面に接着層14を形成するために、レンズ12の両表面に接着剤を所定厚さに塗布する。
なお、レンズ12の両表面に接着剤を塗布する方法は、
図4に示す接着剤槽20内の液状接着剤22への浸漬法に限定されず、如何なる塗布方法であっても良く、例えば、スピンコート(回転塗布)やブレード塗布等の公知の方法を用いることができ、保持冶具18によるレンズ12の保持状態に応じて適宜選択すれば良い。なお、
図4は、説明のために模式的に示されるものであり、本発明は、図示されている接着剤塗布方法にとらわれないのは言うまでもない。
【0029】
次に、
図2に示すステップS16では、レンズ12の両表面に機能性フィルム16(16a及び16b)の貼付を行う。具体的には、貼付工程(プロセス)S16においては、まず、
図5に示すように、各チャンバが分割されて開放された貼付装置24に、レンズ12を保持冶具18にセットした状態でセットし(ステップS18)、
図6に示すように分割された各チャンバを閉じて、各チャンバに減圧(ステップS20)、加熱(ステップS22)及び昇圧(大気圧開放又は加圧)(ステップS24)を行い、レンズ12の両表面(12a及び12b)にそれぞれ機能性フィルム16(16a及び16b)の貼付を行う。
【0030】
図5及び
図6に示す貼付装置24は、
図2に示す装置セット工程S18、減圧工程S20、加熱工程S22、及び昇圧工程S24からなる貼付プロセスS16を実施するためのもので、第1チャンバ26、それぞれ2つの分割チャンバ28aと28bからなる第2チャンバ28、及び第3チャンバ30との4つの直方体空間に分割される直方体空間を持つ3つのチャンバを有する。
また、第1、第2及び第3チャンバ26、28及び30には、それぞれ配管32a,32b及び32cが接続され、これらの配管32a,32b及び32cは、本配管32に接続され、本配管32は、図示しない真空ポンプ等の真空装置や空気源又はポンプ等の加圧装置に接続される。また、配管32a,32b及び32cには、それぞれ電磁弁34a,34b及び34cが接続され、それぞれの配管32a,32b及び32cの開閉を行う。
さらに、第1チャンバ26、及び第3チャンバ30内には、それぞれヒータ36a、及び36bが取り付けられている。
【0031】
このような貼付装置24を用いる、
図2に示す貼付プロセスS16の装置セット工程S18においては、
図5に示すように、貼付装置24は、第1チャンバ26、第2チャンバ28の分割チャンバ28a、28b、及び第3チャンバ30の4つのチャンバ空間に分割されている。第2チャンバ28の、シール可能に2つに分割された分割チャンバ28aと28bとの間の空間に、接着剤塗布工程S14でその第1面12a及び第2面12bの両面に接着剤が塗布されたレンズ12を保持冶具18にセットした状態でセットする。これと共に、シール可能に分割された第1チャンバ26と第2チャンバ28の分割チャンバ28aとの間の空間、及びシール可能に分割された第2チャンバ28の分割チャンバ28bと第3チャンバ30との間の空間に、機能性フィルム16a及び16bをセットする。
なお、ここで、機能性フィルム16a及び16bは、同一の機能性フィルムであっても良いし、異なる機能性を備える異なる機能性フィルムであっても良く、眼鏡用レンズの用途に合わせて適宜選択すればよい。
図5に示す貼付装置24では、第1、第2及び第3チャンバ26、28及び30が、4つの空間に分割されているが、本発明は特制限的ではなく、1チャンバ26と第2チャンバ28の分割チャンバ28aとの間、及び第2チャンバ28の分割チャンバ28bと第3チャンバ30との間に、機能性フィルム16a及び16bをそれぞれシール可能にセットできれば、例えば、機能性フィルム16a及び16bをそれぞれ通過させることができるシール可能なスリットを設けることによりセットできれば、1チャンバ26と第2チャンバ28の分割チャンバ28aとは、かつ第2チャンバ28の分割チャンバ28bと第3チャンバ30とは、分割できないように一体物として構成されていても良く、図示の形態にはとらわれないのは勿論である。
【0032】
その後、
図6に示すように、第1、第2及び第3チャンバ26、28、及び30がそれぞれ独立した空間になるように、分割されている第1チャンバ26、第2チャンバ28の分割チャンバ28a、28b、及び第3チャンバ30を閉めて分割可能に一体化する。
第1、第2及び第3チャンバ26、28、及び30がそれぞれ独立した空間になり、一体化された貼付装置24のシール構造の一例を
図7に示す。
図7に示すように、貼付装置24は、第1チャンバ26を定義する、1面が開放された直方体容器38と、それぞれ第2チャンバ28の分割チャンバ28a及び28bを定義する、両面が開放された枠体によって構成される直方体容器40a及び40bと、第3チャンバ30を定義する、1面が開放された直方体容器42を有する。
【0033】
図7に示す一体化された貼付装置24では、第1チャンバ26を定義する容器38の開放端の壁面39には、容器38の開放面を密閉するように機能性フィルム16aがセットされ、容器38の壁面39と、セットされた機能性フィルム16aを介して壁面39に当接する容器40aの一方端の壁面41aとの間には、Oリング44が介挿され、容器38と容器40aとの当接面がシールされ、容器38内の第1チャンバ26内の空間が密閉される。
また、共に第2チャンバ28を定義する、容器40aの他方端の壁面41bと、これに当接する容器40bの一方端の壁面41cとの間にも、Oリング44が介挿され、容器40aと容器40bとの当接面がシールされる。
【0034】
また、第3チャンバ30を定義する容器42の開放端の壁面43には、容器42の開放面を密閉するように機能性フィルム16bがセットされ、容器42の壁面43と、セットされた機能性フィルム16bを介して壁面43に当接する容器40bの他方端の壁面41dとの間には、Oリング44が介挿され、容器40bと容器42との当接面がシールされる。
その結果、容器42内の第3チャンバ30内の空間が密閉されると共に、容器40a及び容器40b内の第2チャンバ28内の空間が密閉される。
なお、第2チャンバ28内にレンズ12をセットするための保持冶具18の吊り下げ部分は、第2チャンバ28の外部に伸びているので、容器40aと容器40bとの当接面をシールする際には、図示しないが、保持冶具18の吊り下げ部分と、容器40bと容器42との当接面41b及び41cとの間もパッキンやOリング等の公知のシール部材等によりシールされるのは言うまでもない。
【0035】
図7に示す例では、機能性フィルム16a及び16bを、それぞれ容器38及び容器42の開放面を塞ぐように容器38及び容器42と略同一のサイズとして、容器38と容器40aとの当接面(39、41a)間、及び容器40bと容器42との当接面(41d、43)間に挟み込んで、シールする構造としといるが、本発明はこれに限定されず、容器38及び容器42の開放端側の壁面を内側に延ばして、その開口面のサイズを、レンズ12のサイズより大きいサイズである必要はあるが、容器38及び容器42の開放端側の端面のサイズより小さくし、機能性フィルム16a及び16bを小さくなった開口面を塞ぐことができる小さなサイズにした上で、各容器間をシールするシール構造としても良い。
【0036】
図6及び
図7に示すように、貼付装置24の第1、第2及び第3チャンバ26、28、及び30をそれぞれ独立した空間した後、
図2に示すステップS20において、第1、第2及び第3チャンバ26、28、及び30の減圧を行う。具体的には、減圧工程S20においては、
図6及び
図7に示すように、配管32a、32b及び32cの電磁弁34a〜34cを開放し、配管32の他端を図示しない真空ポンプ等に接続して、第1、第2及び第3チャンバ26、28及び30を配管32、32a、32b及び32cを通して、レンズ12の両表面と機能性フィルム16a及び16bとの間の接着の際に機能性フィルム16a及び16bにしわや接着ムラ等が生じないように減圧し、若しくは真空引きする。
ここで、各チャンバ26、28及び30を、例えば、高真空度1.333 ×10
-1kPa(1トール)以下にするのが良い。その理由は、気泡を全く残すことなく貼り合せが行なわれることとなるからである。
【0037】
次に、
図2に示すステップS22において、機能性フィルム16a及び16bの加熱を行う。具体的には、加熱工程S22においては、
図6及び
図7に示すように、第1及び第3チャンバ26及び30内に設置されているヒータ36a及び36bで、機能性フィルム16a及び16bを加熱して柔らかくする。
なお、機能性フィルム16(16a及び16b)が、加熱して柔らかくする必要が無い程度に、ある程度柔軟性がある場合には、加熱工程S22は省略することができる。
機能性フィルム16の伸度が400%以上であれば、加熱工程S22が不要とすることができる。
したがって、この加熱工程S22は、使用する機能性フィルム16に対して、必要に応じて行えばよい。
【0038】
次に、
図2に示すステップS24において、第1及び第3チャンバ26及び30内の昇圧を行う。具体的には、昇圧工程S24においては、
図6及び
図7に示すように、配管32a及び32cの電磁弁34a及び34cのみを開放し、配管32の他端を開放、若しくは加圧源(ポンプ)等に接続して、配管32、32a及び32cを通して、空気等の気体を第1及び第3チャンバ26及び30内に、機能性フィルム16a及び16bにしわや接着ムラ等を生じさせないように、徐々にゆっくり導入して第1及び第3チャンバ26及び30内の圧力を上昇させて、第1及び第3チャンバ26及び30内の空間を大気圧又は加圧状態にする。この昇圧工程S24の間、第2チャンバ28内の空間は、減圧状態を維持した状態にしておく。
【0039】
その結果、昇圧工程S24では、機能性フィルム16a及び16bは、接着剤塗布レンズ12の両表面12a及び12b側に変形し、レンズ12の両表面12a及び12bに近付き、その接着層14a及び14bにぴったりと接触して、機能性フィルム16a及び16bを、レンズ12の両側から両表面12a及び12bにそれぞれ接着層14a及び14bを介して同時に貼り合わせる。
こうして、機能性フィルム16のレンズ12への貼付プロセスS16は、終了する。
ここで、第1及び第3の各チャンバ26及び30の圧力は、大気圧とするのが好ましく、より好ましくは、大気圧以上とするのが良い。その理由は、加圧圧着することで密着性がアップすることが可能だからである。
昇圧工程S24の間、第1及び第3チャンバ26及び30の圧力は、略同一の圧力となるようにバランスを取りながら昇圧するのが好ましいが、機能性フィルム16a及び16bが異なる場合には、第1及び第3チャンバ26及び30に圧力差をつけながら昇圧しても良いし、最終的な貼付時においても、圧力差があっても良い。
【0040】
次に、
図2に示すステップS26において、貼付装置24からのレンズ取出を行う。具体的には、レンズ取出工程S26においては、
図6及び
図7に示す貼り付け装置24の少なくとも、第2チャンバ28の2つの分割チャンバ28aと28bとの間を開いて、
図8に示すような、機能性フィルム16を貼り合わせた機能性フィルム付きレンズ12を取り出す。
次に、
図2に示すステップS28において、レンズ12からはみ出したフィルムカットを行う。具体的には、フィルムカット工程S28においては、
図8に示す機能性フィルム付きレンズ12に対して、はみ出した機能性フィルム16(16a、16b)をレンズ12の端面を目印にカットする。こうして、
図1に示すような機能性フィルム16を貼り合わせたレンズ12を得ることができる。
【0041】
次に、
図2に示すステップS30において、機能性フィルム貼合レンズ12の接着剤硬化を行う。具体的には、接着剤硬化工程S30においては、フィルムカット工程S28でカットされた機能性フィルム貼合レンズ12をオーブン等に入れて加熱し、機能性フィルム貼合レンズ12の両表面12a及び12bと、機能性フィルム16a及び16bとの間の接着層14a及び14bの接着剤を硬化させて機能性膜付き眼鏡用レンズ10を得ることができる。
なお、ここでは、接着層14a及び14bの接着剤として、熱硬化性の接着剤を用いているために、オーブン等による加熱を行って接着剤の硬化を行っているが、接着剤が紫外線硬化性の接着剤を用いている場合には、機能性フィルム貼合レンズ12に紫外線を照射して接着剤を硬化させるようにしても良い。
また、第1及び第3チャンバ26及び30内に設置されたヒータ36a及び36bが、接着剤を硬化させるだけ加熱できる場合や、第1及び第3チャンバ26及び30内に紫外線ランプ等が設置されている場合には、
図9を参照して後述するが、
図2に示す製造方法において、最後の接着剤硬化工程S30を、貼付プロセスS16の昇圧工程S24と、レンズ取出工程S26との間で行っても良い。
こうして、
図2に示す本発明の第1実施形態に係る機能性膜を備えた光学素子の製造方法は終了する。
【0042】
以上の製造方法により、一連の流れで眼鏡用レンズの第1面および第2面の両面に同時に機能性フィルムを貼り付けることができる。
なお、図示しないが、天井に設けられた軌条に保持時具18を、垂下して、公知のコントローラによって公知の水平移動装置及び上下動装置の移動量を制御しつつ水平移動させるとともに上下動させると共に、貼付装置24の各チャンバ26、28a,28b,及び30の開閉や電磁弁34a,34b及び34c開閉や各チャンバ26、28及び30内の密閉空間の圧力の制御、ヒータ36a及36bのオンオフを公知の開閉機構、例えば金型の開閉機構等や公知の切替機構や公知の圧力制御機構を適用することにより、レンズ12が保持時具18にセットされた状態で、少なくとも、洗浄・乾燥工程S12からレンズ取出工程S26まで全自動で行うことができる。なお、水平移動装置及び上下動装置における移動量の制御は、水平移動装置及び上下動装置の回転駆動部や駆動源の回転駆動部等に設けられたエンコーダ等を用いて行うことができる。
【0043】
なお、
図5〜
図7に示す貼付装置24は、第1〜第3チャンバ26、28(28a,28b)、及び30は、水平に配置されるものであったが、本発明はこれに限定されず、鉛直方向に配置されるものであっても良い。なお、本発明では、保持冶具18によるレンズの保持が吊り下げでなくても良く、水平でも良い場合には、
図5〜
図7に示す貼付装置24を、そのまま鉛直方向に配置しても良い。
また、
図2に示す例では、予めレンズ12の両表面にそれぞれ接着剤を塗布しておき、貼付装置24を用いて両表面に接着剤が塗布されたレンズ12に、2枚の機能性フィルムを両側から貼り合せているが、本発明は、これに限定されず、予め2枚の機能性フィルムの各片面にそれぞれ接着剤を塗布しておき、レンズ12の両表面に、2枚の機能性フィルムのそれぞれ接着層を両側から貼り合せても良い。
【0044】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態に係る機能性膜を備えた光学素子の製造方法の一例の全体を示すフローチャートである。
図9に示す製造方法は、
図2に示す製造方法と、レンズセット工程と洗浄・乾燥工程とが逆転しており、レンズに対する接着剤塗布工程の代わりに、機能性フィルムに対する接着層形成工程があり、貼付プロセスを実施する貼付装置が水平型(横型)ではなく鉛直型(縦型)であり、接着剤硬化工程が貼付プロセスの昇圧工程とレンズ取出工程との間で行われている点を除いて、同様の工程で行われるものであるので、異なる部分を主に説明する。
【0045】
図9に示すように、まず、ステップS50では、レンズ12を用意し、レンズ12の洗浄及び乾燥を行う。レンズ12の洗浄及び乾燥は、どのように行っても良い。
次に、ステップS52では、
図9に示すように、レンズセットを行う。具体的には、レンズセット工程S52においては、
図10に示すように、レンズ12の端面の3点を、平板の中心にレンズ12の外径より大きい内径の開口部を持つ保持冶具52の3つの伸縮するアーム54で支持することにより、レンズ12を保持冶具52にセットする。ここで、保持冶具52の両側には、水平搬送に用いられる帯状搬送体56が取り付けられて、保持冶具52にセットされたレンズ12を水平搬送するのに用いられる。
なお、保持冶具52によるレンズ12の保持形態は、
図10に示す保持形態に限定されないのは言うまでもない。
【0046】
次に、
図9に示すステップS54では、機能性フィルム16(16c、16d)の片面に接着層形成を行う。具体的には、接着層形成工程S54においては、機能性フィルム16(16c、16d)の片面に、所定厚さの両面接着タイプの接着シートを接着して、両面接着タイプの接着シートを接着層14(14c、14d)を形成する。
次に、ステップS56では、
図11及び12に示す貼付装置58を用いて、レンズ12の両表面に機能性フィルム16(16c及び16d)の貼付を行う。具体的には、貼付工程(プロセス)S56においては、まず、
図10に示すように、各チャンバが分割されて開放された貼付装置58に、レンズ12を保持冶具52にセットした状態で帯状搬送体56で水平搬送してセットし(ステップS58)、
図6に示すように分割された各チャンバを閉じて、各チャンバに対して減圧(ステップS60)、加熱(ステップS62)及び昇圧(大気圧開放又は加圧)(ステップS64)を行い、レンズ12の両表面(12a及び12b)にそれぞれ機能性フィルム16(16c及び16d)の貼付を行う。
【0047】
図11及び
図12に示す貼付装置58は、
図9に示す装置セット工程S58、減圧工程S60、加熱工程S62、及び昇圧工程S64からなる貼付プロセスS56を実施するためのもので、第1チャンバ60、それぞれ2つの分割チャンバ62aと62bからなる第2チャンバ62、及び第3チャンバ64との4つの空間(直方体空間や円筒空間等)に分割される空間を持つ3つのチャンバが鉛直方向に積み重ねられた縦型構造を有する。
また、第1、第2及び第3チャンバ60、62及び64には、それぞれ配管32a,32b及び32cが接続され、本配管32に接続される。
図11及び
図12に示す貼付装置58は、
図5〜
図7に示す貼付装置24と同様に、装置向き(縦型・横型)、チャンバ形状(直方体・円筒)、ヒータ形状(縦型・円筒型)、レンズセット向き(垂直吊下・水平)を適宜選択した装置である以外は、同一であるので、同様な説明は省略する。
【0048】
図9に示す貼付プロセスS56の装置セット工程S58においては、
図11に示すように、貼付装置58は、第1チャンバ60、第2チャンバ62の分割チャンバ62a、62b、及び第3チャンバ64の4つのチャンバ空間に分割されている。第2チャンバ62の、シール可能に2つに分割された分割チャンバ62aと62bとの間の空間に、レンズセット工程S52で保持冶具18にセットされたレンズ12をその状態で帯状搬送体56で水平搬送してセットする。
これと共に、接着層形成工程S54で、その片面に接着シートが接着されて接着層14(14c、14d)が形成された機能性フィルム16(16c、16d)を、シール可能に分割された第1チャンバ60と第2チャンバ62の分割チャンバ62aとの間の空間、及びシール可能に分割された第2チャンバ62の分割チャンバ62bと第3チャンバ64との間の空間に、接着層14(14c、14d)をレンズ12に向けてセットする。
なお、ここで、機能性フィルム16c及び16dは、同一の機能性フィルムであっても良いし、異なる機能性を備える異なる機能性フィルムであっても良く、眼鏡用レンズの用途に合わせて適宜選択すればよい。
【0049】
その後、
図12に示すように、第1、第2及び第3チャンバ60、62、及び64がそれぞれ独立した空間になるように、分割されている第1チャンバ60、第2チャンバ62の分割チャンバ62a、62b、及び第3チャンバ64を閉めて分割可能に一体化する。
第1、第2及び第3チャンバ60、62、及び64がそれぞれ独立した空間になり、一体化された貼付装置58は、
図12に示すシール構造を有する。
図11及び
図12に示すように、貼付装置58は、第1チャンバ60を定義する、1面が開放された直方体容器66と、それぞれ第2チャンバ62の分割チャンバ62a及び62bを定義する、両面が開放された枠体によって構成される直方体容器68a及び68bと、第3チャンバ64を定義する、1面が開放された直方体容器70を有する。
【0050】
図12に示す一体化された貼付装置58では、第1チャンバ60を定義する容器66の開放端の壁面67には、容器66の開放面を密閉するように機能性フィルム16cがセットされ、容器66の壁面67と、セットされた機能性フィルム16cを介して壁面67に当接する容器68aの一方端の壁面69aとの間には、Oリング44が介挿され、容器66と容器68aとの当接面がシールされ、容器66内の第1チャンバ60内の空間が密閉される。この時、Oリング44が、機能性フィルム16cの接着層14cに接着されないように、接着層14cは、機能性フィルム16cのサイズ(直径)より小サイズ(小径)にしておくのが良い。
また、共に第2チャンバ62を定義する、容器68aの他方端の壁面69bと、これに当接する容器68bの一方端の壁面69cとの間にも、Oリング44が介挿され、容器68aと容器68bとの当接面がシールされる。
【0051】
また、第3チャンバ64を定義する容器70の開放端の壁面71には、容器70の開放面を密閉するように機能性フィルム16dがセットされ、容器70の壁面71と、セットされた機能性フィルム16dを介して壁面71に当接する容器68bの他方端の壁面69dとの間には、Oリング44が介挿され、容器68bと容器70との当接面がシールされる。この時にも、Oリング44が、機能性フィルム16dの接着層14dに接着されないように、接着層14dは、機能性フィルム16dのサイズ(直径)より小サイズ(小径)にしておくのが良い。
こうして、容器70内の第3チャンバ64内の空間が密閉されると共に、容器68a及び容器68b内の第2チャンバ62内の空間が密閉される。
なお、第2チャンバ62内にレンズ12をセットするための保持冶具52及び帯状搬送体56は、両側において、第2チャンバ62の外部に伸びているので、容器68aと容器68bとの当接面をシールする際には、図示しないが、保持冶具52及び帯状搬送体56と、容器68bと容器70との当接面69b及び69cとの間もパッキンやOリング等の公知のシール部材等によりシールされるのは言うまでもない。
【0052】
図12に示すように、貼付装置58の第1、第2及び第3チャンバ60、62及び64をそれぞれ独立した空間した後、
図9に示すステップS60において、第1、第2及び第3チャンバ60、28、及び30の減圧を行う。具体的には、減圧工程S60においては、第1、第2及び第3チャンバ60、62及び64を配管32、32a、32b及び32cを通して、レンズ12の両表面と機能性フィルム16c及び16dとの間の接着の際に機能性フィルム16c及び16dにしわや接着ムラ等が生じないように減圧し、若しくは真空引きする。
次に、ステップS62において、機能性フィルム16c及び16dの加熱を行う。具体的には、加熱工程S62においては、
図12に示すように、第1及び第3チャンバ60及び64内に設置されている円筒状ヒータ72a及び72bで、機能性フィルム16c及び16dを加熱して柔らかくする。
なお、機能性フィルム16(16c及び16d)が、加熱して柔らかくする必要が無い程度に、ある程度柔軟性がある場合には、加熱工程S22は省略することができる。したがって、この加熱工程S22は、使用する機能性フィルム16に対して、必要に応じて行えばよい。
【0053】
次に、ステップS64において、第1及び第3チャンバ60及び64内の昇圧を行う。具体的には、昇圧工程S64においては、
図12に示すように、配管32、32a及び32cを通して、空気等の気体を第1及び第3チャンバ60及び64内に、機能性フィルム16c及び16dにしわや接着ムラ等を生じさせないように、徐々にゆっくり導入して第1及び第3チャンバ60及び64内の圧力を上昇させて、第1及び第3チャンバ60及び64内の空間を大気圧又は加圧状態にする。この昇圧工程S64の間、第2チャンバ62内の空間は、減圧状態を維持した状態にしておく。
その結果、昇圧工程S64では、接着層14a及び14bを持つ機能性フィルム16c及び16dは、レンズ12の両表面12a及び12b側に変形し、接着層14a及び14bが、レンズ12の両表面12a及び12bに近付いてぴったりと接触して、機能性フィルム16c及び16dを、レンズ12の両側から両表面12a及び12bにそれぞれ接着層14a及び14bを介して同時に貼り合わせる。
こうして、機能性フィルム16のレンズ12への貼付プロセスS56は、終了する。
【0054】
次に、ステップS66において、貼付装置58内において、機能性フィルム貼合レンズ12の接着剤硬化を行う。具体的には、接着剤硬化工程S66においては、第1及び第3チャンバ60及び64内に設置されたヒータ72a及び72bを用いて、機能性フィルム16を貼り合わせた機能性フィルム付きレンズ12を加熱し、このレンズ12の両表面12a及び12bと、機能性フィルム16c及び16dとの間の接着層14c及び14dの接着剤を硬化させる。なお、接着層14c及び14dの接着剤として紫外線硬化性の接着剤を用いている場合には、機能性フィルム貼合レンズ12に紫外線を照射して接着剤を硬化させるようにしても良い。
次に、ステップS68において、貼付装置58からのレンズ取出を行う。具体的には、レンズ取出工程S68においては、
図12に示す貼り付け装置58の少なくとも第2チャンバ62の2つの分割チャンバ62aと62bとの間を開いて、機能性フィルム16を貼り合わせた機能性フィルム付きレンズ12を、保持冶具52に保持された状態で帯状搬送体56で水平搬送して貼付装置58から取り出す。
【0055】
次に、ステップS70において、レンズ12からはみ出したフィルムカットを行う。具体的には、フィルムカット工程S70においては、機能性フィルム付きレンズ12に対して、はみ出した機能性フィルム16(16c、16d)をレンズ12の端面を目印にカットする。こうして、
図1に示すような機能性フィルム16を備える機能性膜付き眼鏡用レンズ10を得ることができる。
こうして、
図9に示す本発明の第2実施形態に係る機能性膜を備えた光学素子の製造方法は終了する。
図9に示す製造方法においても、自動制御される貼付装置58を用い、レンズ12が保持時具52にセットされた状態でコンベアベルト等の帯状搬送体によって水平搬送することにより、一連の自動化された流れで、少なくとも、装置セット工程S12からレンズ取出工程S26まで全自動で行うことができ、眼鏡用レンズの第1面および第2面の両面に同時に機能性フィルムを貼り付けることができる。
【0056】
以上に、本発明に係る機能性膜を備えた光学素子の製造方法について種々の実施形態及び実施例を挙げて説明したが、本発明は、上述の実施形態及び実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しないかぎり、種々の改良や設計の変更を行っても良いことはもちろんである。