(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る診断支援システムの実施の形態について、図を適宜参照して説明する。
図1は、診断支援システム1の全体構成を模式的に示した図である。診断支援システム1は、ネットワーク9を介して接続された3つの構成要素を有する。
第1に、医師3が操作する医師端末2である。医師端末2は、本体の他、表示部や、マウスやキーボードなどの指定入力手段から構成されている。これらの構成の詳細は
図2を用いて後述する。
【0024】
第2に、医師3とは遠隔地に在住しており、医師3により診断を受ける患者5が操作する患者端末4である。患者端末4は、一般に普及しているデスクトップパソコンやノート型パソコンのほか、タブレット端末などでも実現できる。本実施の形態では、
図1に示すようにタブレット端末を用いるとした。
患者端末4には、内蔵型のカメラ6が備わっており、患者5の顔画像を撮影して、ネットワーク9を介してサーバマシン8に送信する。内蔵型ではなく外付け型のカメラでもよい。また患者5の顔画像を撮影する際に、明るさが足りない、あるいは色合いを調整することを理由に照明装置が備わっていても良い。
また、患者端末4には、患者5の部屋の温度を測定するための温度計などのセンサ類が備わっていてもよい。室温は、患者5の口頭による自覚症状の申告に比べて、顔色が不自然に赤い、または青白いなどの場合、室温が大きな影響を与えているとして、医師3が診断の材料に活用できる。
【0025】
第3に、サーバマシン8である。サーバマシン8は、いわゆるデータセンタにおいて厳重な情報セキュリティ管理下に設置されている。サーバマシン8は、患者5の顔画像から顔の色情報を算出したり、医師3からの指示により患者5の過去の顔画像を検索する機能を実現する顔色診断処理部と、過去の患者5の顔画像などを大量に記憶できる記憶部を有する。サーバマシン8の構成については
図3を用いて後述する。
なお、以下ではネットワーク9をIP網として説明するが、一般公衆回線網、携帯電話網など画像の送受信に支障がなければこれに限るものではない。
【0026】
図2に、医師3が操作する医師端末2の概略構成を示す。本実施の形態では、医師端末2はノートパソコンにて実現されるとして説明する。医師端末2は、医師端末本体25の他に表示部26と指定入力手段27から構成される
医師端末本体25は、CPUや各種I/Fなどを内蔵し、いわゆるパソコン本体部分であり、端末制御部251、表示制御手段252、端末通信部253を有する。
端末制御部251は、図示しない内蔵ハードディスクなどによる記憶手段に記憶されたプログラムモジュールとして実現され、ネットワーク9を介して送信されてきた顔画像を表示部26に表示させるために表示制御手段252に渡すなど、医師端末本体25を制御する。
【0027】
表示制御手段252は、端末通信部253が受信した情報を表示部26に表示する際に、その表示内容を制御したり、マウスなどの指定入力手段で指定した顔画像上の座標を取得する機能を有し、端末制御部251と同様に、図示しない内蔵ハードディスクなどによる記憶手段に記憶されたグラフィック関係のプログラムモジュールや、グラフィックボードで実現される。
表示制御手段252が行う表示制御には、例えば、サーバマシン8に記憶されている患者5の過去に撮影された顔画像と、診断中の医師3が撮影指示をすることで取得された現在時刻の患者5の顔画像を並べて表示部26に表示させることがある。また、患者5の顔の色情報について、特定の条件を満たすと顔の色情報の差を表示する際に色づけしたり、患者の顔画像をその患者の顔の大きさそのままに原寸大表示するため拡大縮小などの処理を行う。
【0028】
端末通信部253は、ネットワーク9を介して患者端末4またはサーバマシン8と通信するためのI/Fであり、サーバマシン8から患者5の顔画像を受信したり、患者5を特定するための患者IDなどをサーバマシン8に送信したり、患者端末4に備わっているカメラ6に患者5の顔画像を撮影させるための撮影信号を送信したりする際のインターフェース機能を有する。
【0029】
表示部26は、いわゆるモニタ装置であり、
図1で模式的に示したように医師端末2をノートパソコンで実現する場合には、医師端末本体25と同一筐体の液晶モニタ部分となる。可視性を考慮して大型の外部モニタや、操作性を向上させるため、タッチパネルモニタなどを用いても良い。
【0030】
指定入力手段27は、各種情報をタイプ入力するためのキーボードや、表示部26に表示されたUI上に設定された処理開始のボタンを押下するためマウスや静電パッドで実現される。表示部26にタッチパネルモニタを用いている場合には、表示部26と指定入力手段27は同一の機器として実現できる。更に、医師端末をタブレット端末にて実現する場合には、医師端末本体25と表示部26と指定入力手段27を同一の機器とできる。
【0031】
図3に、サーバマシン8の概略構成を示す。サーバマシン8は、いわゆるラック収納型のサーバ用パソコンやワークステーションなどで実現可能であり、診断処理部80、記憶部81、サーバ通信部82を有する。
記憶部81は、サーバマシン8の処理に必要なプログラムや各種のデータ、パラメータなどを記憶しているハードディスクなどの周辺部品にて構成される。記憶部81には、患者リスト811、診断履歴テーブル812、3次元顔形状813が記憶される。
患者リスト811は、患者5に関する情報がテーブル化されたものであり、患者を特定するための個人名などの個人情報の他、ID情報などが格納されている。患者リスト811の内容を
図4を用いて詳述する。
【0032】
図4には、患者リスト811が、模式的にテーブル化されて示されている。患者リスト811は、少なくとも患者ID8111、患者氏名8112、登録顔画像8113、顔サイズデータ8114を含むものとする。これらは例示であり、顔色診断に必要な他の情報が適宜患者それぞれに対応して記憶されていてもよい。例えば、各患者の年齢や性別、病歴なども記憶しておいてもよい。
【0033】
患者ID8111は、患者を特定するためのID情報であり、患者1名に対して1つ付与される。患者ID8111は、各患者の初診時に、医師3または病院事務担当者により付与される。
図4においては、数字が格納されるとして示しているが、一意に特定できるものであれば、他の文字を使用してもよい。
【0034】
患者氏名8112は、患者ID8111と対応し、各患者の氏名である。
登録顔画像8113は、各患者の顔画像であり、診察時のログインの際の顔画像認証に用いられる。登録顔画像8113は、初診時に患者端末4のカメラ6にて取得され、医師3または病院事務担当者により登録される。別途デジタルカメラにて撮影された証明書用写真などを利用してもよい。
【0035】
顔サイズデータ8114は、各患者の顔の実寸法である。この顔サイズデータ8114は、医師3が表示部26を目視して診断する際、その患者の顔の大きさを原寸大表示するための、画面表示の拡大縮小の基準となるデータとして用いられる。患者の顔あるいは頭部全体の大きさを特定できるデータであれば特に限定は無いが、本実施の形態では、顔画像認証技術で一般に用いられている特徴点どうしの距離として、両目の目尻間の距離、口の左右の口角点どうしの距離、目頭の中点として把握できる鼻根点と口角点の中点として把握できる口点との距離を用いるものとする。このほかに、目尻と鼻尖点との距離、鼻尖点と口角点との距離を適宜用いてもよい。
これらの顔サイズデータ8114は、患者5が初診時に自らの顔のサイズを計測しておき、その計測結果を医師3または病院事務担当者に伝えるものとする。患者端末4に測距手段が備わる場合には自動的に計測してもよい。
【0036】
図3に戻り、診断履歴テーブル812は、過去に診断支援システム1を用いて医師3により診断されたときの各種情報がテーブル化されたものである。診断履歴テーブル812を、
図5を用いて詳述する。
図5には、診断履歴テーブル812が模式的に示されている。診断履歴テーブル812は、履歴患者ID8121、診断日時8122、履歴顔画像8123、所見8124、コメント8125から構成され、診断履歴テーブルにおける1段が、1回の診断行為に対応しており、1つの診断履歴となる。
【0037】
履歴患者ID8121は、過去に医師3により診断行為が行われたときの患者を特定するためのID情報であり、患者リスト811から該当する患者のID情報が格納される。
診断日時8122は、医師3により診断行為が行われたときの日時であり、履歴顔画像8123が取得されたタイミングで、図示しない内部時計から日時情報を取得して格納する。診断行為の開始または終了時の日時を格納してもよい。
【0038】
履歴顔画像8123は、医師3により、患者5の顔を撮影すべく撮影信号が入力され、患者端末4に備わったカメラ6が取得した患者5の顔を含む画像である。履歴顔画像8123は、診断履歴テーブル812に格納される前に、後述する診断処理部80の特徴点抽出部803にて、少なくとも目尻、目頭、口角点を含む顔の特徴点8126が抽出され対応付けられているものとする。
【0039】
所見8124は、医師3により、顔画像を観察したり、別途電話回線を用いて患者5と問診して、診断結果としての所見を格納する。顔色がすぐれず、経過観察が必要と医師3が判断した場合には、医師3は指定入力手段27から、異常所見として、例えば「要観察」と入力し、その旨がネットワーク9を介して所見8124に格納される。同様に、特に問題がない場合には、正常所見として、例えば「異常なし」と格納される。
さらには、医師3が下した所見の他に、患者が自ら測定した体温や血圧、自覚症状などを含めて、健康状態を包括的に表す情報を記憶するようにしてもよい。
コメント8125は、医師3の判断により、任意に入力されるコメントが格納される。
また、患者端末4に温度計などのセンサ類が備わる場合には、各診断行為時の室温を診断履歴の一部に含めて記憶してもよい。
【0040】
図3に戻り、3次元顔形状813は、人物の顔の標準的な3次元形状をワイヤーフレームモデルにて表わしたものである。ワイヤーフレームモデルに限らず、サーフェイスモデル等、人物顔の3次元構造をモデル化できる方法であれば如何なる方法を用いてもよい。また複数の3次元顔形状813を記憶してもよい。
3次元顔形状813には、人間の顔の特徴的な部位について、特徴点が予め付与されており、後述するように、顔画像と位置合わせを行い、3次元顔画像を生成すること、および表示部26における拡大縮小処理の基準として用いられる。
本実施の形態では、特徴点として、左右の目の目頭と目尻、鼻尖点、口について左右の口角点の7箇所を設定するものとした。
【0041】
診断処理部80は、記憶部81に記憶された各情報を参照し、医師3が入力した指示に従い、各種処理をする。例えば、診断履歴テーブル812に記憶されている診断履歴を検索したり、指定された顔画像の一部から顔の色情報を算出するなどを行う。そのために、診断処理部80は、診断処理制御部801、診断履歴検索部802、特徴点抽出部803、顔色判定領域算出部804、色差算出部805、診断結果設定部806、3次元顔画像合成部807を有する。これらは、記憶部81に記憶されたプログラムを実行することで実現される機能モジュールである。
【0042】
診断処理制御部801は、診断処理部80全体の処理の流れを制御し、例えば患者端末4から送信されてきた顔画像を記憶部に記憶させたり、医師3が指定した顔色判定領域の座標値を求めるべく顔色判定領域算出部804に顔画像を渡すなどの処理を行う。
【0043】
診断履歴検索部802は、医師3が表示部26を参照し、指定入力手段27を操作すると、診断履歴テーブル812から、履歴患者ID8121や診断日時8122を手がかりに診断履歴を特定する手段である。
特徴点抽出部803は、医師3により撮影が指示されて取得された最新の患者の顔画像から、顔を構成する特徴的な部位に関する点を抽出し、その位置を求める。
図6を参照して、特徴点の例を示す。
図6には、患者の最新の顔画像60から左右の目頭、左右の目尻、鼻尖点、左右の口角点の合計7つの特徴点61が抽出され、×印で表現された様子が示されている。特徴点は、エッジ抽出処理の後、各部位に応じたエッジ画像によるテンプレートマッチングなどにより抽出することが可能であり、適宜周知な手法を採用すれば良いので、詳細な説明は省略する。さらに抽出された各特徴点は、診断履歴テーブル812の履歴顔画像8123に対応付けられて記憶される。
【0044】
顔色判定領域算出部804は、特徴点抽出部803にて抽出された特徴点を基準に、顔色判定領域を求める手段である。顔色判定領域は、顔画像上に設定され、最新の顔画像と、診断履歴テーブル812に格納された履歴顔画像8123との顔の色情報の差を求めるために用いられる小領域である。顔色判定領域の例を再び
図6を用いて説明する。
【0045】
図6には、特徴点抽出部803により抽出された7つの特徴点61が示されているが、同図(a)には、左目の目尻、鼻尖点、左の口角点において抽出された特徴点を頂点とする三角形が示されている。顔色判定領域算出部804は、この三角形を顔色判定領域62として決定する。
【0046】
図6(a)では、顔色判定領域の決定に用いる特徴点61を既定のものとし、その既定の特徴点をそのまま頂点とする三角形の領域を示している。これに対し、医師3が何らかの意図を持って異なる別の位置の領域を指定したい場合もある。例えば同図(b)に示すように頬の中央の矩形領域について顔の色情報を調べたい場合である。
【0047】
医師3は、表示部26を目視しつつ、指定入力手段27を操作し、表示部26に表示された現在顔画像上で領域を指定する。顔色判定領域算出部804は、現在顔画像上にて指定された顔色判定領域64について、特徴点61からの相対的な位置関係63を、履歴顔画像に対応づけられている特徴点からの相対的な位置関係に直し、履歴顔画像における対応する顔色判定領域を決定する。
【0048】
これは、同一の患者の顔画像であっても、撮影されたタイミングにより顔の向きや表情が多少異なるのが当然であるが、そのまま表示されている顔画像上での座標情報で対応する領域を定めても、顔の色情報の変化を医師3が把握するには不都合である。そこで、人物の顔は目や鼻など、顔を構成する特徴的な部位を有しており、部位ごとの特徴点からの相対的な位置関係で顔色判定領域を定めれば、実際の顔では同じ部分を特定することになるため好都合だからである。
【0049】
色差算出部805は、最新の顔画像と診断履歴テーブル812に記憶されている履歴顔画像8123について、顔色判定領域に含まれる画素の色情報の差を求める手段である。この差が、顔の色情報の差として、医師3が患者5の体調を判断するときの重要な情報となる。
一般的に色表現に用いられるRGB表色系は、カメラなどのデバイスに依存し、求めた色の差が同じであっても、色合いや明るさによって画面には同じ差として表現されないため、医師の目視判断による顔色診断には不都合である。そこで、求めた色の差と、画面に表示される色の差とがおおよそ一致することが知られているL*a*b*色空間に変換して、顔の色情報の差を求める。
この場合、顔色判定領域に含まれる画素の色をL*a*b*色空間内に射影して、各軸方向の座標値の平均値を、その顔画像の顔の色情報とする。そして、L*a*b*色空間内における、それぞれの顔画像の顔の色情報どうしのユークリッド距離が顔の色情報の差となる。顔色判定領域に含まれる画素の色の平均を求めてからL*a*b*色空間内に射影して、ユークリッド距離を求めてもよい。
【0050】
診断結果設定部806は、医師3が、顔の色情報の差や問診などにより形成した心証を、指定入力手段27を用いて、診断結果として入力した情報を診断履歴テーブル812の所見8124あるいはコメント8125に格納する手段である。
3次元顔画像合成部807は、医師3の指示により撮影された患者5の最新の顔画像、または診断履歴テーブル812に格納された履歴顔画像8123と、記憶部81に記憶された3次元顔形状813とを合成して、その患者5の3次元の顔画像を生成する手段である。生成された3次元の顔画像は、医師3の指示により、表示部26に表示するために用いられ、後述するように、患者5の実際の顔の大きさに拡大して表示して、様々な方向に向けさせて診断する際に有用なものとなる。
患者5の最新の顔画像および履歴顔画像8123は、特徴点抽出部803により、
図6に示すように特徴点が抽出済みであり、3次元顔形状813にも対応する特徴点が設定されている。3次元顔画像合成部807は、いずれかの顔画像の特徴点と3次元顔形状813の特徴点とを基準に位置合わせを行い、顔画像上の各画素値を3次元顔形状813上の各点にマッピングすることで、3次元顔画像を生成する。この処理は適宜周知の方法を採用すればよいので、詳細は省略する。
【0051】
サーバ通信部82は、ネットワーク9を介して患者端末4または医師端末2と通信するためのI/Fであり、患者端末4のカメラ6から患者5の顔画像を受信したり、診断履歴テーブル812に格納されている各種情報を送信したり、患者5を特定するための患者IDなどを医師端末2から受信する際のインターフェースの役割を果たす。
【0052】
次に、医師3による顔色の診断行為中に表示部26に表示される内容について、
図7を用いて説明する。
図7(a)には、表示部26に表示される画面表示が模式的に表示されている。診断行為が開始されると、符号20に示される内容が表示部26に表示される。
患者氏名表示欄201は、現在診断中の患者の氏名が、患者リスト811の患者氏名8112から読み出され表示される。これにより医師3は、現在診断中の患者を認識できる。
患者ID表示欄202には、現在診断中の患者に付与された患者IDが表示される。患者ID表示欄202は入力も可能であり、指定入力手段27から患者IDが入力されると、それに応じた患者氏名8112が患者リスト811から読み出され、表示部26に表示される。
【0053】
現在顔画像204は、患者の今現在取得された顔画像を表示する。医師3が、指定入力手段27を操作して撮影ボタン207を押下することで、その瞬間に患者端末4のカメラ6が撮影した静止画が取得され、表示される。診断開始の初期状態では、患者端末4のカメラ6から受信した動画をそのまま表示しておいてもよい。
【0054】
過去顔画像203は、現在顔画像204に表示されている患者について、診断履歴テーブル812に格納されている履歴顔画像8123を表示する。以下、混同を生じないように、過去に撮影された顔画像について、表示部26に表示される顔画像は過去顔画像203、診断履歴テーブル812に格納されている履歴顔画像8123と表現するが、これは説明の都合上異ならせているだけであり、画像そのものとしては同じものである。
診断行為の最初は、最新の履歴顔画像8123を表示するものとするが、後述するように、表示される履歴顔画像8123は更新表示される。
また現在顔画像204と過去顔画像203にはそれぞれ、顔色判定領域が符号205と符号206に示すように重畳表示され、医師3は目視確認できる。
【0055】
顔色差表示欄211は、色差算出部805が算出した、現在顔画像204の顔色判定領域206に含まれる画素の色情報と、過去顔画像203の顔色判定領域205に含まれる画素の色情報の差、即ち顔の色情報の差を表示する。表示される値は、過去顔画像203の更新表示に伴い、更新される。
所見入力ボタン211は、顔の色情報や問診などにより形成した心証としての診断結果を入力するためのテキスト入力用のダイアログ(不図示)を表示させるためのボタンである。当該ダイアログに、指定入力手段27を用いて入力した所見やコメントが診断履歴テーブル812の所見8124やコメント8125格納される。
【0056】
顔色履歴表示ボタン213は、グラフ形式で表示される顔色履歴グラフを顔色履歴表示欄210に表示させるためのボタンである。
図7(b)には、顔色履歴表示欄210が拡大されて示されている。
顔色履歴表示欄210には、時間を横軸、顔の色情報の差を縦軸にしたグラフ領域215に、顔色履歴グラフ216が折れ線グラフ形式で表示されている。
顔色履歴グラフ216は、顔色差表示欄211に表示される値、即ち顔の色情報の差を、過去顔画像203が撮影された日時、即ち診断履歴テーブル812の診断日時8122に応じて時系列にプロットしたものである。単純に過去顔画像203の並び順に等間隔にプロットしてもよい。
【0057】
顔色履歴表示欄210には、一部がその他と識別可能に色づけされた異常所見期間217が表示されている。これは、診断履歴検索部802が、診断履歴テーブル812の所見8124の欄を参照し、何らかの異常所見が付与されていると、その診断日時8122に応じて色づけされるものである。
即ち、
図5に示した診断履歴テーブル812の例では、診断日時8122が“2013-05-14 11:05:17”と“2013-05-21
09:55:51”のときの診察履歴には、所見8124として“要観察”が付与されている。表示制御手段252は、この2回の診断時に対応した、顔色履歴グラフ216の期間について、異常所見期間217として色づけをする。
【0058】
一方で、顔色履歴グラフ216は、現在顔画像204との顔の色情報の差をプロットしたものであるので、医師3は、過去の顔の色情報との比較をする際に、異常所見が付与されたときの顔画像からの差なのか、正常所見が付与されたときの顔画像からの差なのかが視覚で把握できる。
したがって、過去の顔画像との顔の色情報の差が無い場合、異常所見のときの顔画像からの差がない場合には、変わらず体調がすぐれないことがわかり、正常所見のときの顔画像からの差がない場合には変わらず健康状態であることがわかる。
さらには、同様にして、患者の体調が快復に向かっているのか、悪化に向かっているのかが把握できることになる。
【0059】
また、
図7(b)に示すように、グラフ領域215には、表示指定線218が表示され、指定入力手段27のひとつであるマウスのポインタ219が表示されている。医師3は、マウスを操作して表示指定線218を左右に移動させることができる。そして、その移動に応じて、診断履歴テーブル812に格納された履歴顔画像8123が読み出され、表示部26に表示される過去顔画像203と顔色差表示欄211に表示される値が更新される。
この表示指定線218の移動と、それに伴う過去顔画像203と顔の色情報の差、および異常所見期間217との関係により、医師3は、現在顔画像204を目視しつつ患者の体調を適切に診断することができる。
【0060】
診断終了ボタン214は、その患者の診察を終了するときに押下するためのボタンであり、押下に伴い、最新の患者の顔画像が履歴顔画像8123として記憶されるとともに、診断履歴テーブル812の1段分の内容が確定される。
尚、原寸大表示ボタン208、209を押下したときの動作については
図9を用いて後述する。
【0061】
次に、診断支援システム1の主となる動作を
図8に示すシーケンスチャートを用いて説明する。
ここで、
図8のシーケンスチャートは、医師3による診断行為が始まってからの動作を示している。それに先立ち、患者端末4や医師端末2などは起動されており、患者5はID入力あるいは顔画像認証などにより、何れの人物が患者端末4の前にいるかなどの特定はされているものとする。また、患者5の特定がされることと前後して、診断開始要請信号が医師端末2に送信されて、医師端末2が注意喚起のメッセージ表示やアラーム音を鳴動することで、医師3が診察の開始を認識できるものとする。
さらには、以下の説明では、情報の送受信にあたってはネットワーク9を介することは明らかであるので、その旨の記載は適宜省略する。
【0062】
まずステップS100にて、医師3により表示部26に表示された撮影ボタン207が押下されたとする。
それに応じて、端末制御部251は、端末通信部253を介して撮影信号を患者端末4に送信し、カメラ6は今現在の患者5の顔画像を撮影する(ステップS110)。
患者端末4は、撮影された顔画像を現在顔画像としてサーバマシン8に送信し、サーバ通信部82を介して現在顔画像を取得した特徴点抽出部803は、顔の特徴点を抽出する(ステップS120)。
診断結果設定部806は、現在顔画像、特徴点情報、患者ID、診察日時などを対応付けさせ診断履歴テーブル812の新たな診断履歴に格納する(ステップS130)。新たな診断履歴は初期状態として各フィールドは空白となっている。
診断履歴検索部802は、患者IDを手がかりに診断履歴テーブル812を検索し、同一の患者の最新の診断履歴を特定する(ステップS140)。
診断処理制御部801は、現在顔画像および、当該ステップにて特定された診断履歴に含まれる履歴顔画像8123を表示部26に表示される過去顔画像203の初期データとして、サーバ通信部82を介して医師端末2に送信する。
【0063】
医師端末2の表示制御手段252は、端末通信部253を介して受信した現在顔画像と履歴顔画像を
図7に示すように、現在顔画像204と過去顔画像203として並べて表示する(ステップS150)。
医師3が、指定入力手段27を操作し、現在顔画像204上にて顔色判定領域の設定をすると、表示制御手段252は、現在顔画像204上における座標情報を求め、端末制御部251は端末通信部253を介してサーバマシン8に送信する(ステップS160)。
顔色判定領域算出部804は、送信されてきた座標情報、およびステップS120にて求めた現在顔画像上の特徴点位置、抽出済みの履歴顔画像8123上の特徴点位置から、各顔画像における、対応する顔色判定領域を算出する(ステップS170)。
【0064】
診断処理制御部801は、算出した顔色判定領域の座標情報を医師端末2に送信し、
図7に示すように、現在顔画像204では符号206、過去顔画像203では符号205の顔色判定領域が重ねて表示される(ステップS180)。
色差算出部805は、現在顔画像204における顔色判定領域、過去顔画像203における顔色判定領域のそれぞれに含まれる画素の色情報から顔の色情報の差を算出する(ステップS190)。
顔の色情報の差は、医師端末2に送信される(ステップS210)。医師端末2に送信された顔の色情報の差は、顔色差表示欄211にその値が初期値として表示される。
【0065】
診断履歴検索部802は、診断履歴テーブル812の所見8124を参照し、「要観察」などの異常所見が付与された診断履歴を検索する(ステップS220)。
診断処理制御部801は、異常所見が付与された診断履歴の診断日時8122を、医師端末2に送信し、表示制御手段252は、異常所見が付与された期間について、グラフ領域215に異常所見期間217として色づけする(ステップS230)。
色差算出部805は、現在顔画像と、診断履歴テーブル812に格納されている各履歴顔画像8123における顔色判定領域の色の差を算出する(ステップS240)。
各顔画像に付いての色の差の値は、医師端末2に送信され、表示制御手段252は、グラフ領域215に、顔色履歴グラフ216として表示する(ステップS250)。
【0066】
医師3が、指定入力手段27を操作し、グラフ領域215にて表示指定線218の位置を変更すると(ステップS260)、表示制御手段252は、その変更後の位置情報を取得して、その位置情報が表す日時を特定する。その日時情報はサーバマシン8に送信され、診断履歴検索部802は、送信されてきた日時情報に応じた日時の診断履歴を検索する(ステップS270)。
なお、
図8には図示しないが、ステップS260の表示指定線218の位置の変更がないまま、医師3が所見やコメントの入力を開始した場合にはステップS320に移るものとする。
【0067】
検索された診断履歴の履歴顔画像8123は医師端末2に送信され、過去顔画像203に更新表示される(ステップS280)。
同時に、色差算出部805は、送信された履歴顔画像8123の顔色判定領域に含まれる画素の色情報を用いて、ステップS190と同様に顔の色情報の差を算出する(ステップS290)。
算出された顔の色情報の差は医師端末に送信され、顔色差表示欄211に更新表示される(S300)。また表示指定線218の表示位置も更新される。
【0068】
医師3の入力操作により、グラフ領域215において、表示指定線218の位置が更に変化した場合にはステップS260に移るものし、同様の処理を繰り返す(ステップS310)。表示指定線218の位置が変化せず、医師が所見入力ボタン212を押下して、所見やコメントの入力を開始した場合(ステップS320)、入力された所見やコメントはサーバマシン8に送信され、診断結果設定部806は診断履歴テーブル812に格納する。
図8では省略したが、医師3が診断終了ボタン214を押下すると、診断が終了する。
【0069】
次に、原寸大表示ボタン208、209について、
図9を用いて説明する。
図4の患者リスト811に示したように、各患者について、顔サイズデータ8114が記憶されている。また、現在顔画像204と履歴顔画像8123には顔の特徴点が抽出されているので、記憶部81に記憶されている3次元顔形状813と特徴点を基準に位置合わせを行い、合成をすると3次元顔画像を求めることができる。
以下では、これらのデータを用い、顔画像を3次元にて原寸大表示するときの処理を述べる。なお、過去顔画像203を対象にしているが、現在顔画像204を対象にしても同様である。
【0070】
3次元顔画像合成部807は、医師3が原寸大表示ボタン208を押下すると、表示されている過去顔画像203に対応した、診断履歴テーブル812に記憶されている履歴顔画像8123と、3次元顔形状813とを合成して3次元顔画像を求める。3次元顔画像を求める方法は、3次元顔画像合成部807の説明の箇所で述べたとおりであり、過去顔画像203から抽出されてある特徴点と3次元顔形状813に設定された特徴点とを位置合わせを行い、マッピングすれば良く、周知の方法を用いればよいので、詳細は省略する。
診断処理制御部801は、求めた3次元顔画像とその患者の顔サイズデータ8114を医師端末2に送信する。
医師端末2の表示制御手段252は、表示部26の解像度や1画素の表示上の大きさ等を考慮し、表示部26に患者の顔の原寸大となるように表示する。
そのために、表示制御手段252は、顔サイズデータ8114に示されている、患者5の実際の顔の大きさを、表示部26の1画素分の大きさで除することで、3次元顔画像を正面に向けたときの原寸大表示に必要な画素数を求めて、3次元顔画像を拡大縮小する。
【0071】
例えば、
図4の患者リスト811の患者ID8111が“756”の患者の場合、目尻間の距離は“100mm”であり、表示部26の1画素の幅が0.25mmの場合、合成した3次元顔画像を正面に向けた状態において、目尻どうしを結ぶ直線に400画素を割り当てることになる。同様に口角点を結ぶ直線には240画素、鼻根点と口点を結ぶ直線には288画素を割り当てる。
表示制御手段252は、これらの画素数を満たすように、3次元顔画像を拡大縮小して、2次元画像にすることで表示部26に実寸法で表示できる。
顔画像を原寸大表示するのは、表示部26に同じ色で表示しても、大きさによっては目視により受ける印象が異なる可能性があり、実際の顔の大きさに即して診断する方が正確さを望めるからである。
なお、表示部26の1画素の幅と高さは、予めサーバマシン8の記憶部81にシステムの設計パラメータとして記憶しておくものとするが、表示部26のハードウェア情報を内部的に自動取得できるならば、その情報に基づいて決定して用いても良い。
【0072】
図9は、患者5の顔画像を、原寸大で表示した様子を模式的に示している。
医師3は、原寸大顔画像280上を、指定入力手段27を用い、例えばマウスのドラッグ操作により顔の向きを上下左右に任意に向けることが可能となる。この任意の方向に向ける処理は、公知のCG技術を用いればよいので、説明を省略する。
医師3が、閉じるボタン281を押下すると、原寸大顔画像280は消去され、
図7に示す画面表示に戻る。
【0073】
以上、本発明にかかる診断支援システムにより、当該装置を操作する医師は、患者の顔の色情報について、過去の診断結果を踏まえて比較することで顔の色情報の経時的な変化を適切に把握できる。さらには、患者の顔を原寸大表示することにより、画面のレイアウトの関係で小さく表示される場合と比較して、更に正確に顔の色情報の変化を適切に把握でき、診断の正確さが確保できる。
【0074】
本発明にかかる診断支援システムの実施の形態はこれまでに述べてきたものに限られない。例えば、顔画像から顔の特徴点を抽出する処理を行う特徴点抽出部と、顔画像から顔色判定領域を決定する処理を行う顔色判定領域算出部と、顔画像から顔色の差を算出する処理を行う色差算出部と、2次元の顔画像と3次元顔形状とを合成する処理を行う3次元顔画像合成部をサーバマシンが有するものとして説明したが、医師端末2の処理性能が確保できる場合には、医師端末2に持たせるシステム構成としても同様の効果を得ることができる。
この場合、サーバマシンは、大量に記憶されることになる顔画像や診断履歴の管理に特化した装置として動作する。
【0075】
また、今現在の患者の顔画像を、それが取得されると直ちに診断履歴テーブルに格納される代わりに、医師端末の表示部に現在顔画像を保存するための顔画像保存ボタンを設けて、複数取得された現在顔画像のうち、医師が保存に必要性を感じたものについて、顔画像保存ボタンの押下により保存することとしてもよい。
これにより、医師が診断に有用な情報が含まれていると判断した顔画像が、診断歴テーブルの履歴顔画像に格納されるので、顔の色情報の差に基づく診断の精度を確保することができる。
【0076】
また、顔色判定領域は、顔の特徴点のうちから既定のものを頂点とする多角形、または医師がその都度任意の位置と形状で決定する代わりに、数種類の大きさの矩形や円形の領域形状を用意しておき、医師が診断の都度その用意された領域形状を選択して、顔画像の中で指定することとしてもよい。
これにより、現在顔画像を目視確認した医師が、特に着目したい領域を、簡単な処理で決定できる。
【0077】
また、医師が、医師端末の表示部に表示する過去顔画像を選択するにあたり、顔色履歴グラフ上を指定する代わりに、診断履歴テーブルに格納された診断日付を手がかりに検索することとしてもよい。この場合、表示部には診断日付をプルダウン式のメニューで表示して、医師が選択できるようにしておくことにより、明示的に日付を手がかりに過去の過去顔画像との比較ができる。
【0078】
また、患者端末と医師端末にはマイクとスピーカー、医師端末にもカメラが備わり、音声と動画を双方で送受信できる機能が備わってもよい。この場合、患者と医師が、本発明にかかる診断支援システムとは別の電話回線によらず、テレビ電話のようにお互いの動画を見ながら会話や問診ができる。その場合、意志疎通が高まり、問診内容が充実し、診断の精度が高まる効果がある。
【0079】
また、表示部の大きさが十分大きい場合は、顔画像をその患者の顔の原寸大で表示するためにボタン押下をせず、常に原寸大表示をすることとしてもよい。さらには現在顔画像と履歴顔画像を同時に原寸大表示してもよい。
これにより、医師はその都度ボタンを押下すること無しに、患者の顔の原寸大に即して顔の色を詳細に観察することが可能となる。