特許第6116380号(P6116380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116380
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】クリップ構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/20 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   F16B2/20 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-113803(P2013-113803)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-231891(P2014-231891A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100088100
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 千明
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 厚
(72)【発明者】
【氏名】浅村 健二
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−026621(JP,U)
【文献】 実開平05−054077(JP,U)
【文献】 実公昭36−011708(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/20−2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型で形成されるクリップが固定箇所を挟持する第一挟持部及び第二挟持部を備え、前記第一挟持部及び前記第二挟持部が、両挟持部を連設した奥側から先端側へ向かうに従って互いに近接するように設けられ、両挟持部の対向部位に山部と谷部とが形成されたクリップ構造であって
前記第一挟持部に前記第二挟持部側へ突出する複数の山部を前記先端側から前記奥側へ配列して山部と谷部とを交互に形成するとともに、前記第二挟持部に前記第一挟持部側へ突出する複数の山部を前記先端側から前記奥側へ配列して山部と谷部とを交互に形成し、
一方の挟持部の山部が対向する他方の挟持部の部位に谷部を設定したことを特徴とするクリップ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定箇所に固定するクリップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエアコンのルーバーに芳香剤を取り付ける際には、図3に示すようなクリップ801が用いられていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このクリップ801は、先端部が第一挟持部811と第二挟持部812とによって二股に形成されており、各挟持部811,812には、複数の爪によって山部815,・・・と谷部816,・・・とが形成されている。
【0004】
前記第一挟持部811に設けられた山部815,・・・は、第二挟持部812に設けられた山部815,・・・と対向するように配置されており、前記第一挟持部811に設けられた谷部816,・・・は、第二挟持部812に設けられた谷部816,・・・と対向するように配置されている。
【0005】
これにより、前記両挟持部811,812の山部815,・・・間にルーバーを配置した状態で、当該クリップ801をルーバーに固定できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】意匠登録第1191330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のクリップ構造にあっては、ルーバーへの当接箇所が山部815,・・・によって定まるように構成されている。
【0008】
このため、固定力を高めるために当接箇所を増加する場合、山部815,・・・を増やさなければならないが、当接箇所を増やすためには、各挟持部811,812に形成された爪の間隔を狭める必要があり、成型上の限界があった。
【0009】
すなわち、今日はルーバーの種類が多様化し、形状や厚み、長さが異なる多くの種類のルーバーに取付可能なクリップを必要としている。このため、厚みや長さの異なるあらゆる多くの種類のルーバーに安定して取り付けることができるクリップが求められている。
【0010】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、固定箇所への当接箇所を増大することができるクリップ構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために本発明のクリップ構造にあっては、金型で形成されるクリップが固定箇所を挟持する第一挟持部及び第二挟持部を備え、前記第一挟持部及び前記第二挟持部が、両挟持部を連設した奥側から先端側へ向かうに従って互いに近接するように設けられ、両挟持部の対向部位に山部と谷部とが形成されたクリップ構造であって前記第一挟持部に前記第二挟持部側へ突出する複数の山部を前記先端側から前記奥側へ配列して山部と谷部とを交互に形成するとともに、前記第二挟持部に前記第一挟持部側へ突出する複数の山部を前記先端側から前記奥側へ配列して山部と谷部とを交互に形成し、一方の挟持部の山部が対向する他方の挟持部の部位に谷部を設定した。
【0012】
すなわち、このクリップを固定箇所に固定する際には、該固定箇所を両挟持部で挟持する。
【0013】
このとき、一方の挟持部の山部が対向する他方の挟持部の部位には、谷部が形成されている。このため、一方の挟持部の山部が設けられた部位では、当該一方の挟持部の山部が固定箇所に当接する。
【0014】
また、一方の挟持部の谷部が設けられた部位では、当該一方の挟持部は前記固定箇所に当接しない。しかし、一方の挟持部の谷部が対向する他方の挟持部の部位には、山部が形成されている。このため、当該他方の挟持部の山部が固定箇所に当接する。
【0015】
このように、一方の挟持部に設けられた山部と他方の挟持部に設けられた山部とが交互に固定箇所に当接する。このため、前記各挟持部に設けられた山部の間隔を狭めることなく、固定箇所への当接箇所を増大することができる。
【0016】
また、一方の挟持部の山部が対向する他方の挟持部の部位には、谷部が形成されている。このため、一方の挟持部の山部が対向する他方の挟持部の部位にも山部が形成されている場合と比較して、固定箇所への差し込み時において、山部が固定箇所を乗り越える際の乗り越え力が小さくなる。
【0017】
このため、取付容易性が高められるとともに、固定箇所の端部が厚肉に形成されている場合であっても、取付が容易となる。
【0018】
そして、このようなクリップを金型で形成する場合、一方の挟持部の山部が対向する他方の挟持部の部位には谷部が形成されているため、両挟持部を形成する金型の挿入代を前記谷部によって確保することができる。
【0019】
このため、一方の挟持部の山部が対向する他方の挟持部の部位にも山部が形成されており、両挟持部の山部間に両挟持部を形成する金型の挿入代を確保しなければならならず、両山部の頂点位置が離間してしまう場合と比較して、両挟持部の山部の頂点位置を近づけることができる。
【0020】
これにより、挟持力が高められる。
【0021】
また、前記両挟持部は、奥側から先端側へ向かうに従って互いに近接する。
【0022】
これにより、厚肉の固定箇所であっても、安定した挟持力が得られる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明のクリップ構造にあっては、各挟持部に設けられた山部の間隔を狭めることなく、固定箇所への当接箇所を増大することができる。
【0024】
したがって、固定箇所への当接箇所を増やすために、各挟持部に設けられた山部の間隔を狭める必要があった従来と比較して、成型上の困難性を招くことなく、固定箇所への当接箇所を増大することができる。これにより、固定力を増大することができる。
【0025】
ここで、今日はルーバーの種類が多様化し、形状や厚み、長さが異なる多くの種類のルーバーに取付可能なクリップを必要としている。そこで、本願発明にあっては、厚みや長さの異なるあらゆる多くの種類のルーバーに安定して取り付けることができるクリップを提供することができる。
【0026】
また、一方の挟持部の山部が対向する他方の挟持部の部位には、谷部が形成されている。このため、一方の挟持部の山部が対向する他方の挟持部の部位にも山部が形成されている場合と比較して、固定箇所への差し込み時において、山部が固定箇所を乗り越える際の乗り越え力を小さくすることができる。
【0027】
これにより、取付容易性を高めることができるとともに、固定箇所の端部が厚肉に形成されている場合であっても、容易な取付が可能となる。
【0028】
そして、このようなクリップを金型で形成する場合、一方の挟持部の山部が対向する他方の挟持部の部位には谷部が形成されているため、両挟持部を形成する金型の挿入代を前記谷部によって確保することができる。
【0029】
このため、一方の挟持部の山部が対向する他方の挟持部の部位にも山部が形成されており、両挟持部の山部間に両挟持部を形成する金型の挿入代を確保しなければならならず、両山部の頂点位置が金型分離間してしまう場合と比較して、両挟持部の山部の頂点位置を近づけることができる。
【0030】
これにより、挟持力を高めることができる。
【0031】
また、前記両挟持部が奥側から先端側へ向かうに従って互いに近接するように設けられているので、厚肉の固定箇所であっても、安定した挟持力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
図2】同実施の形態のクリップを示す図である。
図3】従来のクリップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。
【0034】
図1は、本実施の形態にかかるクリップ構造を備えた消臭芳香装置1を示す図であり、該消臭芳香装置1は、自動車のエアコンのルーバーに取り付けられるものである。
【0035】
この消臭芳香装置1は、装置本体11を備えてなり、該装置本体11には、消臭芳香剤が収容された消臭芳香容器12が交換可能に取り付けられている。前記装置本体11には、プッシュボタン13が設けられており、該プッシュボタン13を操作することで、前記消臭芳香容器12内の消臭芳香剤を揮散できるように構成されている。
【0036】
前記装置本体11の背面には、クリップ21が取り付けられており、該クリップ21を、図2にも示すように、ルーバーの羽板22に固定することで、前記消臭芳香装置1を前記ルーバーに取り付けられるように構成されている。
【0037】
前記クリップ21は、前記装置本体11に取り付ける為の取付部31と、該取付部31に設けられたクリップ本体32とによって構成されており、前記取付部31は、円柱状の首部33と、該首部33の端部に設けられた大径の頭部34とによって構成されている。
【0038】
前記クリップ本体32は、前記取付部31が設けられた板状の基部41を備えており、該基部41の一端部からは、基端方向へ向けて第一基端延出片42が延出しているとともに、前記基部41の他端部からは、基端方向へ向けて第二基端延出片43が延出している。
【0039】
また、前記基部41の一端部からは、板状の第一挟持部51が先端方向へ向けて延出しており、前記基部41の他端部からは、板状の第二挟持部52が先端方向へ延出している。前記両挟持部51,52は、基端側である奥側から先端側へ向かうに従って互いに近接するように設けられており、当該クリップ本体32は、側面視三角形状に形成されている。
【0040】
前記第一挟持部51の先端部は、第二挟持部52から離反する方向へ向けて屈曲しており、前記第二挟持部52の先端部は、第一挟持部51から離反する方向へ向けて屈曲している。これにより、前記両挟持部51,52は、その先端部が口開きするように構成されており、前記両挟持部51,52の先端部内側面は、前記羽板22を案内するガイド面61,61を構成している。
【0041】
前記両挟持部51,52の対向部位には、対向部へ向けて突出した山部と、没入した谷部とが交互に形成されている。
【0042】
具体的に説明すると、前記第一挟持部51の先端側には、側面視山形状の第一先端山部101が突設されており、該第一先端山部101の基端側には、側面視谷形状の第一先端谷部102が凹設されている。該第一先端谷部102の基端側には、側面視山形状の第一中山部103が突設されており、該第一中山部103の基端側には、側面視谷形状の第一中谷部104が凹設されている。該第一中谷部104の基端側には、側面視山形状の第一基端山部105が突設されており、該一基端山部105の基端側には、側面視谷形状の第一基端谷部106が凹部されている。
【0043】
また、前記第二挟持部52の先端側には、第二先端谷部111が凹設されており、該第二先端谷部111の基端側には、側面視山形状の第二先端山部112が突設されている。該第二先端山部112の基端側には、側面視谷形状の第二中谷部113が凹設されており、該第二中谷部113の基端側には、側面視山形状の第二中山部114が突設されている。該第二中山部114の基端側には、側面視谷形状の第二基端谷部115が凹部されており、該第二基端谷部115の基端側には、側面視山形状の第二基端山部116が突設されている。
【0044】
前記第一挟持部51に設けられた前記第一先端山部101が対向する第二挟持部52の部位には、前記第二先端谷部111が配置されており、前記第二挟持部52に設けられた前記第二先端山部112が対向する第一挟持部51の部位には、第一先端谷部102が配置されている。
【0045】
前記第一挟持部51に設けられた前記第一中山部103が対向する第二挟持部52の部位には、前記第二中谷部113が配置されており、前記第二挟持部52に設けられた前記第二中山部114が対向する第一挟持部51の部位には、第一中谷部104が配置されている。
【0046】
前記第一挟持部51に設けられた前記第一基端山部105が対向する第二挟持部52の部位には、前記第二基端谷部115が配置されており、前記第二挟持部52に設けられた前記第二基端山部116が対向する第一挟持部51の部位には、第一基端谷部106が配置されている。
【0047】
以上の構成にかかる本実施において、このクリップ21を固定箇所であるルーバーの羽板22に固定する際には、前記クリップ21の両挟持部51,52で前記羽板22を挟持する。
【0048】
このとき、前記第一挟持部51の各山部101,103,105が対向する第二挟持部52の部位には、各谷部111,113,115が形成されている。このため、前記第一挟持部51の山部101,103,105が設けられた部位では、当該第一挟持部51の山部103,105が前記羽板22の上面に当接する。
【0049】
また、前記第一挟持部51の各谷部102,104,106が設けられた部位では、当該第一挟持部51は前記羽板22の上面には当接しない。しかし、当該第一挟持部51の各谷部102,104,106が対向する前記第二挟持部52の部位には、前記各山部112,114,116が形成されている。このため、当該第二挟持部52の各山部114,116は、前記第一挟持部51の各山部103,105の当接箇所と異なる位置にて前記羽板22の下面に当接する。
【0050】
このように、前記第一挟持部51に設けられた前記各山部103,105と前記第二挟持部52に設けられた前記各山部114,116とが交互に前記羽板22に当接する。このため、前記各挟持部51,52に設けられた各山部101,103,105,112,114,116の間隔を狭めることなく、前記羽板22への当接箇所を増大することができる。
【0051】
したがって、前記羽板22への当接箇所を増やすために、各挟持部51,52に設けられた山部の間隔を狭める必要があった従来と比較して、成型上の困難性を招くことなく、前記羽板22への当接箇所を増大することができる。これにより、固定力の増大を図ることができる。
【0052】
ここで、今日はルーバーの種類が多様化し、形状や厚み、長さが異なる多くの種類のルーバーに取付可能なクリップを必要としている。そこで、本実施の形態にあっては、厚みや長さの異なるあらゆる多くの種類のルーバーに安定して取り付けることができるクリップを提供することができる。
【0053】
すなわち、奥行きの深いルーバーの羽板22の場合、前記第一挟持部51の山部101,103,105を前記羽板22の上面に当接するとともに、前記第二挟持部52の各山部112,114,116を、前記第一挟持部51の各山部101,103,105の当接箇所と異なる位置にて前記羽板22の下面に当接することができる。このように、異なる形状の羽板22にも対応することができる。
【0054】
また、前記第一挟持部51の各山部101,103,105が対向する前記第二挟持部52の部位には、前記各谷部111,113,115が形成されている。このため、前記第一挟持部51の前記各山部が対向する前記第二挟持部52の部位にも山部が形成されている場合と比較して、前記羽板22への差し込み時において、山部が羽板22を乗り越える際の乗り越え力を小さくすることができる。
【0055】
これにより、取付容易性を高めることができるとともに、前記羽板22の先端部に厚肉の厚肉部121が形成されている場合であっても、容易な取付が可能となる。
【0056】
そして、このようなクリップ21を金型で形成する場合、前記第一挟持部51の前記各山部101,103,105が対向する前記第二挟持部52の部位には前記各谷部111,113,115が形成されているため、両挟持部51,52を形成する金型の挿入代を前記谷部111,113,115によって確保することができる。
【0057】
このため、前記第一挟持部51の前記各山部が対向する前記第二挟持部52の部位にも山部が形成されており、両挟持部51,52の山部間に両挟持部51,52を形成する金型の挿入代を確保しなければならならず、両山部の頂点位置が金型分離間してしまう場合と比較して、両挟持部51,52の山部の頂点位置を中心線131に近づけることができる。
【0058】
これにより、挟持力を高めることができる。
【0059】
また、本実施の形態では、前記両挟持部51,52が奥側から先端側へ向かうに従って互いに近接するように形成されている。このため、厚肉の羽板22であっても、安定した挟持力を得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
21 クリップ
22 羽板
51 第一挟持部
52 第二挟持部
101 第一先端山部
102 第一先端谷部
103 第一中山部
104 第一中谷部
105 第一基端山部
106 第一基端谷部
111 第二先端谷部
112 第二先端山部
113 第二中谷部
114 第二中山部
115 第二基端谷部
116 第二基端山部
図1
図2
図3