特許第6116447号(P6116447)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116447
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】セラミックス粒子、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/622 20060101AFI20170410BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20170410BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   C04B35/622
   C08L101/00
   C08K3/00
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-176772(P2013-176772)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-44708(P2015-44708A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】隠岐 一雄
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−192339(JP,A)
【文献】 特開平07−089759(JP,A)
【文献】 特開2008−074679(JP,A)
【文献】 特開2001−114567(JP,A)
【文献】 特開2009−263153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
C08K 3/00−3/40
C08L 101/00−101/16
C01F 7/02−7/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.5μm以上4.5μm以下であり、10%径が前記平均粒子径に0.4を乗算した値以上であり、球形度が65以上80以下である、カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子。
【請求項2】
請求項1に記載のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を製造するカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法であって、下記工程1〜3を有するカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
工程1:原料セラミックス粒子、及び分散媒を含有するスラリーを調整する工程
工程2:ボール媒体式湿式粉砕機を用いて、前記工程1で得られたスラリー中の原料セラミックス粒子のカッティングエッジを摩砕する工程
工程3:前記工程2で発生する原料セラミックス粒子の微粉を湿式分級により除去する工程
【請求項3】
請求項1に記載のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を含む、樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を含む、樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス粒子、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスフィラーは樹脂に添加することにより、樹脂物性を変えることができ、強度や電気的特性、光学的特性をコントロールすることができる。樹脂改質のポイントとしては、機能性フィラーをいかに樹脂に高充填するかにかかっており、そのためには樹脂にフィラーを充填した際の粘度上昇を抑えることが必要である。そのため、フィラーの形状をカッティングエッジ(角)のある不定形から真球状に変える工夫がほどこされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、不定形のセラミックスを火炎中に導入して溶融球状化させる手法が提案されている。しかしながら、本手法は、セラミックスを溶融するのに高温が必要であることから製造コストがかかる問題がある。そこで、特許文献2のように乾式粉砕機を用いて、セラミックス粒子の角を丸めるような製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−206870号公報
【特許文献2】特開平4−31329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子部品が小型化する中でサブミクロンから数ミクロンの領域でカッティングエッジがないフィラーが求められている。また、小型化薄形化する部材に対して、表面の平滑性などの品質を維持する観点から、カッティングエッジを有しない、小粒子径のフィラーが求められている。しかしながら、従来の乾式粉砕による粉砕では数ミクロンからサブミクロン(例えば、5μm未満)の粒子への対応は困難である。
【0006】
本発明は、前記課題を解決しようとするものであり、サブミクロンから数ミクロンの領域でカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、平均粒子径が0.5μm以上4.5μm以下であり、10%径が前記平均粒子径に0.4を乗算した値以上であり、球形度が65以上80以下である、カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来の不定形のフィラーよりも基材樹脂に添加した場合の粘度の上昇を抑制でき、更に、従来の不定形のフィラーを含有する樹脂成形体よりも高い表面平滑性を有する樹脂成形体を得ることができるカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子のSEM写真
図2】カッティングエッジを有するシリカ粒子のSEM写真
図3】カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子に微粉が混じったシリカ粒子のSEM写真
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子〕
本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子は、平均粒子径が0.5μm以上4.5μm以下であり、10%径が前記平均粒子径に0.4を乗算した値以上であり、球形度が65以上80以下である、カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子であり、丸み状のセラミック粒子となるように摩砕されているのが好ましい。当該セラミックス粒子は、球形度が65以上80以下でありながら微粉量の含有量が少ないため、特に本実施形態で規定する平均粒子径が0.5μm以上4.5μm以下であり、10%径が前記平均粒子径に0.4を乗算した値以上となる微粉量の場合において、通常の乾式粉砕によって得られるカッティングエッジを有する不定形のフィラーの物理的性質を有しながら当該不定形のフィラーよりも基材樹脂に添加した場合の粘度の上昇を抑制でき、更に、当該不定形のフィラーを含有する樹脂成形体よりも高い表面平滑性を有する樹脂成形体を得ることができる。
【0011】
本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の材質は、樹脂用フィラーとして従来用いられているセラミックスであれば特に限定はないが、シリカ、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ムライト、フォルステライト、コージェライト、チタニアからなる群から選ばれる1種又はこれらの群から選ばれる2種以上の混合物からなるものが好ましく、フィラーとしての汎用性の観点からシリカ、アルミナからなる群より選ばれる1種以上であるものがより好ましく、シリカが更に好ましい。
【0012】
本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の平均粒子径は、基材樹脂に添加した場合の粘度上昇抑制の観点から、0.5μm以上であり、0.8μm以上が好ましい。当該セラミックス粒子の平均粒子径は、樹脂成形体の表面粗さを平滑にする観点から、4.5μm以下であり、3μm以下が好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径は、実施例に記載の方法により測定する。
【0013】
本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子は、基材樹脂に添加した場合の粘度上昇抑制の観点から、微粉が少ないことが好ましい。具体的には、10%径が平均粒子径に0.4を乗算した値以上になることが好ましく、平均粒子径に0.45を乗算した値以上になることがより好ましく、平均粒子径に0.5を乗算した値以上になることが更に好ましい。なお、本明細書において、10%径とは、粒子径の小さい粒子から順にその体積を積算していった場合に、積算体積が全粒子の体積の10%となるときの粒子径を意味する。本明細書において、10%径は、実施例に記載の方法により測定する。
【0014】
本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の球形度は、基材樹脂に添加した場合の粘度上昇抑制の観点から、65以上であり、68以上が好ましい。当該セラミックス粒子の球形度は、フィラーとして添加した場合に、従来のセラミック粒子を添加した樹脂成形体と同様の強度を発現させる観点から、80以下であり、76以下が好ましい。なお、本明細書において、球形度は、実施例に記載の方法により測定する。
【0015】
本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子のBET比表面積は、樹脂の改質効果を高める観点から、3m/g以上が好ましく、6m/g以上がより好ましい。当該セラミックス粒子のBET比表面積は、基材樹脂に添加した場合の粘度上昇抑制の観点から、20m/g以下が好ましく、10m/g以下がより好ましい。なお、本明細書において、BET比表面積は、実施例に記載の方法により測定する。
【0016】
本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の結晶化度は、フィラーの物性、特に光学的特性を維持する観点から、10以上が好ましく、50以上がより好ましく、70以上が更に好ましい。結晶化度が前記範囲に維持されることで、屈折率が低下することなく、光学的特性が安定的に維持される。なお、本明細書において、結晶化度は、実施例に記載の方法により測定する。
【0017】
本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子は、ガラス、プラスチックス、塗料、ゴム、接着剤、金属、繊維、紙等の添加剤として好適に用いられ、特に、プラスチックス用途に好適であり、光学材料や半導体などの封止材などに特に好適に用いられる。
【0018】
〔カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法〕
本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法は、前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法であって、下記工程1〜3を有する。
工程1:原料セラミックス粒子、及び分散媒を含有するスラリーを調整する工程
工程2:ボール媒体式湿式粉砕機を用いて、前記工程1で得られたスラリー中の原料セラミックス粒子のカッティングエッジを摩砕する工程
工程3:前記工程2で発生する原料セラミックス粒子の微粉を湿式分級により除去する工程
【0019】
本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法によれば、ボール媒体式湿式粉砕機によって、粒子を破壊する力(粉砕力)を抑えて原料セラミックス粒子のカッティングエッジを摩砕し、発生した微粉(削りカス)を湿式分級により除去するため、前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を製造することができる。
【0020】
[原料セラミックス粒子の調整]
本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法で用いられる原料セラミックス粒子は、樹脂添加用フィラーとして用いられているセラミックス粒子であれば特に限定はないが、シリカ、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ムライト、フォルステライト、コージェライト、チタニアからなる群から選ばれる1種からなるもの又はこれらの群から選ばれる2種以上の混合物からなるものが好ましく、特にフィラーとしての汎用性の面からシリカ、アルミナからなる群より選ばれる1種以上であるものがより好ましく、シリカが更に好ましい。また、原料セラミックス粒子が0.5μm以下の微結晶が凝集した構造を有する場合、当該凝集体は粉砕により崩壊しやすく、カッティングエッジを選択的に摩砕することが困難になる。そのため、原料セラミックス粒子は単結晶又は焼結体が好ましい。
【0021】
前記原料セラミックス粒子の平均粒子径は、カッティングエッジを摩砕しながら徐々に小さくしていき0.5μm以上4.5μm以下の前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を製造する観点から、0.5μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。前記原料セラミックス粒子の平均粒子径は、粉砕効率の観点から、50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましい。
【0022】
前記原料セラミックス粒子の球形度は、カッティングエッジを摩砕する際の加工性の観点から40以上が好ましく50以上がより好ましい。前記原料セラミックス粒子の球形度は、得られるカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子をフィラーとして添加した場合に、従来のセラミック粒子を添加した樹脂成形体と同様の強度を発現させる観点から、65以下が好ましく、60以下がより好ましい。
【0023】
[工程1]
工程1では、前記原料セラミックス粒子、及び分散媒を含有するスラリーを調整する。
【0024】
前記原料セラミックス粒子は、熱変性などによって結晶化度が変わるなど物性面の変化が起こりやすいことから、スラリーにして用いる。当該スラリーの分散媒としては、エタノールなどの有機溶剤や水が用いられるが、製造コストや取り扱いやすさの観点から、水が好ましい。スラリーの調整手法は、公知一般の方法を用いることができる。
【0025】
前記スラリーの濃度は、生産性の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。前記スラリーの濃度は、当該スラリーの粘度上昇に伴う粉砕効率の低下を抑制する観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
【0026】
[工程2]
工程2では、ボール媒体式湿式粉砕機を用いて、前記工程1で得られたスラリー中の原料セラミックス粒子のカッティングエッジを摩砕する。
【0027】
前記工程2では、ボール媒体式湿式粉砕機を用いる。当該ボール媒体式湿式粉砕機の一例としては、湿式ビーズミル、ボールミル、アトライター、振動ミルなどが挙げられる。これらの内、湿式ビーズミルが好ましく、ミル中の滞留時間を長くとることが可能であるバッチ式の湿式ビーズミルがより好ましい。バッチ式の湿式ビーズミルの例としては、五十嵐機械製造社製のビーズミル(TSG−6H)などが挙げられる。
【0028】
前記ボール媒体式湿式粉砕機は、前記スラリー中に粉砕メディアを入れ、メディアと前記スラリー中の原料セラミックス粒子を衝突させて粉砕するため、回転式のロッドが装備されている。本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を製造するには、このロッドの回転数を通常の粉砕条件(カッティングエッジを有する不定形の粒子が得られる条件)よりも回転を遅くして、原料セラミックス粒子をよりマイルドに粉砕する。このようなマイルドな粉砕処理を摩砕と呼ぶ。本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックスを製造する具体的な条件は使用する装置により異なるが、ロッドの回転数としては、通常の2/3〜1/2にしてマイルドな条件で粉砕することが好ましい。例えば、五十嵐機械製造社製のビーズミル(TSG−6H)では、通常、カッティングエッジがあるセラミックス粒子を得るためにロッドの回転数を1500rpm以上とするが、本実施形態の製造方法では、ロッドの回転数を800〜1000rpmとしてマイルドな条件で粉砕することが好ましい。
【0029】
前記粉砕メディアとしては、より多くの種類の原料セラミックス粒子に対応するために、強度の高いメディアが用いられる。当該メディアの例として、アルミナビーズ、ジルコニアビーズが好ましく用いられ、ジルコニアビーズがより好適に用いられる。また、当該メディアの平均粒子径としては、0.5μm以上4.5μm以下のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を製造する観点から、0.1〜5mmが好ましく、粉砕効率とメディアの分離性の観点から0.2〜1mmが好ましい。
【0030】
粉砕処理時間は、目的とする形状と平均粒子径で適宜調整することが好ましいが、前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を得るためには、前記原料セラミックス粒子スラリーを、通常の粉砕条件よりも長い時間、粉砕ポット内に滞留させることが好ましい。具体的には、粉砕処理時間は1時間以上が好ましい。また、粉砕処理時間は、生産性の観点から48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、12時間以下が更に好ましい。
【0031】
[工程3]
工程3では、前記工程2で発生する原料セラミックス粒子の微粉を湿式分級により除去する。
【0032】
前記工程2で、原料セラミックス粒子のカッティングエッジを摩砕すると、削りカスとして微粉が発生する。これを除去しなければ、樹脂に添加した場合の粘度上昇抑制の効果が得られないことから、工程3では、湿式粉砕した後に微粉を除去する分級を行なう。乾式分級ではサブミクロンサイズの微粉をカットすることが困難であることから、湿式分級が好ましい。
【0033】
分級によって微粉が除去されると、分級していない粒子より微粒子の頻度が減少する。その結果、10%径が大きくなる。分級によって得られるカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子は、基材樹脂に添加した場合の粘度上昇抑制の観点から、平均粒子径と10%径の関係において、10%径が平均粒子径に0.4を乗算した値以上になることが好ましく、平均粒子径に0.45を乗算した値以上になることがより好ましく、平均粒子径に0.5を乗算した値以上になることが更に好ましい。なお、本実施形態の10%径の粒子径分布を有する粒子は、公知一般の分級操作条件を適宜設定することによって得ることができる。
【0034】
湿式分級には重力式と遠心力式などがあるが、装置的な負荷が低い観点から重力式が好ましく、なかでも水簸による分級がより好ましい。
【0035】
水簸による分級を行う場合、重力の影響で粗大粒子が底部に沈降し、微粉が浮遊した状態になるまで時間をかけて分離させる。その際、細かい粒子ほど上方に浮遊することから、上方より液を抜き出せば微粉が分離できる。抜き出す液量は、分級効率を上げる観点から上方液面より1/2以上が好ましく、2/3以上がより好ましい。
【0036】
本実施形態の分級時間は、歩留まり向上の観点から5時間以上が好ましく、12時間以上がより好ましい。前記分級時間は、生産性の観点から48時間以下が好ましく、36時間以下がより好ましい。
【0037】
[その他の工程]
(乾燥工程)
本実施形態では、更に、乾燥工程を有しても良い。当該乾燥工程は、前記工程3の後、カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を乾燥させる工程である。当該乾燥工程での乾燥温度は、カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を効率的に乾燥させる観点から100℃以上が好ましい。前記乾燥温度は、カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子が凝集して所望の平均粒子径よりも大きくなるのを防ぐ観点から、200℃以下が好ましい。乾燥は含水率が10%以下になるまで行うことが好ましく、5%以下になるまで行うことがより好ましく、1%以下になるまで行うことが更に好ましい。
【0038】
(解砕工程)
本実施形態では、更に、解砕工程を有しても良い。当該解砕工程は、前記乾燥工程で乾燥させたカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を乾式解砕する工程である。前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子は、当該解砕工程で粉末化される。当該解砕工程では、カッターミルなどの粗粉砕機やピンミルなどの中粉砕機が好ましく用いられる。
【0039】
(表面処理工程)
本実施形態では、更に、表面処理工程を有しても良い。当該表面処理工程は、前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子と基材樹脂との親和性を高める目的で、シランカップリング剤などの表面処理剤を前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の表面に処理する工程である。前記表面処理剤の量は、カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の物性に影響を及ぼさない範囲であることが好ましく、具体的にはカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、2質量部以下が更に好ましい。
【0040】
〔フィラーとしての使用〕
本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子は、基材樹脂に添加するフィラーとして使用することが好ましい。本実施形態のセラミックスは、当該セラミックス粒子と同等の平均粒子径であってカッティングエッジを有する不定形粒子よりも、フィラーとして基材樹脂に添加した場合の粘度を低くすることができる。
【0041】
また、本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子をフィラーとして用いた場合、当該セラミックス粒子と同等の粒子径であってエッジカットを有する不定形粒子よりも、樹脂成形体の表面粗さを平滑にすることができる。
【0042】
更に、本実施形態のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックスをフィラーとして用いた場合、樹脂成形体の強度を、当該セラミックス粒子と同等の平均粒子径であってエッジカットを有する不定形粒子を用いた場合と同等にすることができる。
【0043】
〔樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物は、基材樹脂及び前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を含有する。
【0044】
前記樹脂組成物は、得られる樹脂成形体の強度の観点から、前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を20質量%以上含有することが好ましく、25質量%以上含有することがより好ましく、30質量%以上含有することが更に好ましい。前記樹脂組成物は、得られる樹脂成形体の表面粗さを平滑にする観点から、前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を90質量%以下含有することが好ましく、85質量%以下含有することがより好ましく、80質量%以下含有することが更に好ましい。
【0045】
前記樹脂組成物は、得られる樹脂成形体の表面粗さを平滑にする観点から、基材樹脂を10質量%以上含有することが好ましく、15質量%以上含有することがより好ましく、20質量%以上含有することが更に好ましい。前記樹脂組成物は、得られる樹脂成形体の表面粗さを平滑にする観点から、基材樹脂を80質量%以下含有することが好ましく、75質量%以下含有することがより好ましく、70質量%以下含有することが更に好ましい。
【0046】
前記樹脂組成物の基材樹脂は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくとも1種であることが好ましい。
【0047】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、脂環式炭化水素系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられても良く、2種以上が併用されても良い。
【0048】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱硬化型ポリイミド系樹脂、ユリア系樹脂、アリル系樹脂、ケイ素系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビスマレイミドトリアジン系樹脂、アルキド系樹脂、フラン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アニリン系樹脂が挙げられる。前記熱硬化性樹脂は、単独で用いられても良く、2種以上が併用されても良い。
【0049】
前記基材樹脂のうち、電気特性や機械的特性に優れ、成形加工性も良いという点から、フェノール樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
【0050】
前記基材樹脂は、必要に応じて、硬化剤などの添加剤を適宜加えて基材樹脂としてもよい。前記基材樹脂がフェノール樹脂の場合、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを用いることが好ましい。当該硬化剤は、フェノール樹脂中、5〜50質量%となるように添加することが好ましい。
【0051】
前記基材樹脂がエポキシ樹脂の場合の硬化剤としては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール系硬化剤、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物等をあげることができる。当該硬化剤の使用量は、使用するエポキシ樹脂の種類や用いられる硬化剤の種類によって変わりうるが、例えば、エポキシ樹脂中に20〜60質量%添加することが好ましい。
【0052】
前記樹脂組成物には、前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子以外の充填材を添加することができる。例えば、補強効果の高い繊維状の充填材としてガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、スチール繊維、ステンレス繊維、パルプなどを添加しても良く、その他、木粉、粘土鉱物、炭酸カルシウム、タルクなど公知のフィラーを添加しても良い。前記樹脂組成物の充填材の含有量は、前記樹脂組成物中1〜40質量%が好ましい。これら充填材は単独で用いられても良く、2種以上が併用されても良い。
【0053】
前記樹脂組成物は、更に、必要に応じて、硬化促進剤、触媒、加硫剤、滑剤・離型剤、安定剤、着色剤、難燃剤、カップリング剤等を配合することができる。その使用量は、樹脂組成物中0.1〜10質量%が好ましい。
【0054】
前記樹脂組成物は、上記した各成分の所定量をヘンシェルミキサー等により充分混合後、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、らいかい機、ホモミキサー、2軸押出機、1軸押出機等の公知の混練手段により混練して製造することができる。また、混練の際には、粘度調整等の目的で、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン等を添加しても良い。
【0055】
[樹脂成形体]
本実施形態の樹脂成形体は、前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を含んだ樹脂成形体で、前記樹脂組成物を押出成形、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等の手法により成形して得られる。本実施形態の樹脂成形体は、電気・電子材料や光学材料等に好適に用いられ、より具体的には半導体の封止材料や電気・電子基板、反射防止膜や、LED封止材料、光拡散板等に好適に用いられる。
【0056】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の組成物、製造方法、或いは用途を開示する。
【0057】
<1>平均粒子径が0.5μm以上4.5μm以下であり、10%径が前記平均粒子径に0.4を乗算した値以上であり、球形度が65以上80以下である、カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子。
【0058】
<2>前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子が、シリカ、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ムライト、フォルステライト、コージェライト、チタニアからなる群から選ばれる1種又はこれらの群から選ばれる2種以上の混合物からなるものが好ましく、シリカ、アルミナからなる群より選ばれる1種以上であるものがより好ましく、シリカが更に好ましい前記<1>のセラミックス粒子。
<3>前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の平均粒子径が、0.5μm以上が好ましく、0.8μm以上がより好ましく、4.5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい前記<1>又は<2>のセラミックス粒子。
<4>前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の10%径が、平均粒子径に0.4を乗算した値以上になることが好ましく、平均粒子径に0.45を乗算した値以上になることがより好ましく、平均粒子径に0.5を乗算した値以上になることが更に好ましい前記<1>〜<3>いずれかのセラミックス粒子。
<5>前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の球形度が、65以上が好ましく、68以上がより好ましく、80以下が好ましく、76以下がより好ましい前記<1>〜<4>いずれかのセラミックス粒子。
<6>前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子のBET比表面積が、3m/g以上が好ましく、6m/g以上がより好ましく、20m/g以下が好ましく、10m/g以下がより好ましい前記<1>〜<5>いずれかのセラミックス粒子。
<7>前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の結晶化度が、10以上が好ましく、50以上がより好ましく、70以上が更に好ましい前記<1>〜<6>いずれかのセラミックス粒子。
<8>前記<1>〜<7>いずれかに記載のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を製造するカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法であって、下記工程1〜3を有するカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
工程1:原料セラミックス粒子、及び分散媒を含有するスラリーを調整する工程
工程2:ボール媒体式湿式粉砕機を用いて、前記工程1で得られたスラリー中の原料セラミックス粒子のカッティングエッジを摩砕する工程
工程3:前記工程2で発生する原料セラミックス粒子の微粉を湿式分級により除去する工程
<9>前記原料セラミックス粒子が、シリカ、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ムライト、フォルステライト、コージェライト、チタニアからなる群から選ばれる1種又はこれらの群から選ばれる2種以上の混合物からなるものが好ましく、シリカ、アルミナからなる群より選ばれる1種以上であるものがより好ましく、シリカが更に好ましい前記<8>のセラミックス粒子の製造方法。
<10>原料セラミックス粒子が、単結晶及び/又は焼結体が好ましい前記<8>又は<9>のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
<11>前記原料セラミックス粒子の平均粒子径が、0.5μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましい前記<8>〜<10>いずれかのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
<12>前記原料セラミックス粒子の球形度が、40以上が好ましく、50以上がより好ましく、65以下が好ましく、60以下がより好ましい前記<8>〜<11>いずれかのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
<13>前記分散媒が、水が好ましい前記<8>〜<12>いずれかのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
<14>前記スラリーの濃度が、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい前記<8>〜<13>いずれかのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
<15>前記工程2において、前記工程1で得られたスラリー中の原料セラミックス粒子のカッティングエッジを摩砕するための粉砕メディアが、アルミナビーズ及び/又はジルコニアビーズが好ましく、ジルコニアビーズがより好ましい前記<8>〜<14>いずれかのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
<16>前記粉砕メディアの平均粒子径が、0.1〜5mmが好ましく、0.2〜1mmが好ましい前記<8>〜<15>いずれかのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
<17>前記工程2の粉砕処理時間が、1時間以上が好ましく、48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、12時間以下が更に好ましく前記<8>〜<16>いずれかのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
<18>前記工程3で得られるカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子が、平均粒子径と10%径の関係において、10%径が平均粒子径に0.4を乗算した値以上になることが好ましく、平均粒子径に0.45を乗算した値以上になることがより好ましく、平均粒子径に0.5を乗算した値以上になることが更に好ましい前記<8>〜<17>いずれかのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
<19>前記湿式分級が、重力式が好ましく、水簸による分級がより好ましい前記<8>〜<18>いずれかのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
<20>更に、乾燥工程を有することが好ましい前記<8>〜<19>いずれかのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
<21>前記乾燥工程での乾燥温度が、100℃以上が好ましく、200℃以下が好ましい前記<20>のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
<22>更に、解砕工程を有することが好ましい前記<8>〜<21>いずれかのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
<23>更に、表面処理工程を有することが好ましい前記<8>〜<22>いずれかのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
<24>前記表面処理剤の量が、カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、2質量部以下が更に好ましい前記<23>のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の製造方法。
<25>前記<1>〜<24>いずれかに記載のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を含む、樹脂組成物。
<26>前記樹脂組成物が、前記カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を20質量%以上含有することが好ましく、25質量%以上含有することがより好ましく、30質量%以上含有することが更に好ましく、90質量%以下含有することが好ましく、85質量%以下含有することがより好ましく、80質量%以下含有することが更に好ましい前記<25>の樹脂組成物。
<27>前記樹脂組成物が、基材樹脂を10質量%以上含有することが好ましく、15質量%以上含有することがより好ましく、20質量%以上含有することが更に好ましく、80質量%以下含有することが好ましく、75質量%以下含有することがより好ましく、70質量%以下含有することが更に好ましい前記<25>又は<26>の樹脂組成物。
<28>前記基材樹脂は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の少なくとも1種であることが好ましい前記<25>〜<27>いずれかの樹脂組成物。
<29>前記<1>〜<24>いずれかに記載のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子を含む、樹脂成形体。
<30>前記<25>〜<28>いずれかに記載の樹脂組成物を成形して得られる、樹脂成形体。
<31>前記<1>〜<24>いずれかに記載のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子の、樹脂に添加するフィラーとしての使用。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を具体的に示す実施例等について説明する。
【0060】
〔評価方法〕
[平均粒子径、及び10%径]
平均粒子径は、D50(体積基準の50%の中位粒子径)を意味し、堀場製作所社製LA−920によるレーザー回折/散乱法で測定した。10%径とは、粒子径の小さい粒子から順にその体積を積算していった場合に、積算体積が全粒子の体積の10%となるときの粒子径を意味し、堀場製作所社製LA−920によるレーザー回折/散乱法で測定した。
【0061】
[球形度]
球形度は、走査型電子顕微鏡で得られた像の粒子投影断面の面積及び該断面の周囲長を求め、次いで、〔粒子投影断面の面積と同じ面積の真円の円周長〕÷〔粒子投影断面の周囲長〕×100を計算し、任意の50個の粒子につき、それぞれ得られた値の平均値を球形度とした。
【0062】
[結晶化度]
X線回折装置(リガク社製:RINT2500VPC)を用いて、出力120kV、40mA、スキャン速度10°/min、サンプリング0.01°でサンプルを測定した際の(バックグランドを含むピーク面積―バックグランドの面積)/バックグランドを含むピークの面積×100を結晶化度とした。
【0063】
[BET比表面積]
比表面積測定装置(島津製作所社製フローソーブIII2305)を用いてBET比表面積を測定した。
【0064】
[粘度]
セラミックス粒子40質量部とビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製:JER828)60質量部を混合したのち、自転・公転ミキサー(シンキー社製:あわとり練太郎 ARE−250)を用いて、2000rpmで5分攪拌後、2000rpmで3分脱泡し、樹脂混合物を得た。得られた混合物をB型粘度計を用いて25℃で粘度測定を行った。42.2Pa・S以下であれば樹脂を成型するのに良好な流動性を示す粘度が得られ○と表示した。
【0065】
[表面粗さ]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製:JER828)100質量部と硬化剤である酸無水物(三菱化学社製:YH306)120質量部、硬化助剤として2−エチル−4(5)メチルイミダゾール(三菱化学社製:EMI−24)1質量部を混合して、エポキシ樹脂混合物を調製した。このエポキシ樹脂混合物60質量部に、セラミックス粒子を40質量部混合し、自転・公転ミキサー(シンキー社製:あわとり練太郎 ARE−250)を用いて、2000rpmで5分攪拌後、2000rpmで3分脱泡し、セラミックス粒子とエポキシ樹脂の混合物を得た。この混合物を、バーコーターを用いてPETシート上に15μmの厚みで塗布し、80℃で1時間加熱した後、150℃で3時間硬化させた。得られた硬化膜の表面を表面粗さ計(東京精密社製:SURFCOM 1500DX)を用いて算術平均粗さ(Ra)を測定し、表面粗さとした。0.34μm以下であれば良好な表面平滑性が得られ○と表示した。
【0066】
[屈接率]
粉末0.015gをスライドガラスにのせ、そこに屈折率既知の液体(例:島津製作所社製接触液)を0.025g添加し、混合した。スライドガラスをのせて、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製:HR−100)で平行光線透過率(Tp)と散乱光透過率(Td)を測定し、Tp+Tdにより全透過率を算出し、〔Td/(Tp+Td)〕×100を算出してヘイズ値(光散乱強度)を求めた。接触液の屈折率を横軸にとヘイズ値を縦軸にプロットしたときに、ヘイズ値が最低になる屈折率をセラミックス粒子の屈折率とした。
【0067】
(実施例1)
平均粒子径3μmの不定形シリカ原料(山森土本鉱業所社製:T−200)40質量部を水60質量部混合して、40質量%のスラリーを調製した。ついで1mmのジルコニアビーズ500質量部を、内径80mmのポットに入れて、そこに先ほど調製したシリカ粒子のスラリー100質量部添加して直径70mm×厚さ5mmの円盤型ローターを15mm間隔で3段積み重ねたロッドをセットした。それをビーズミル(五十嵐機械製造社製:TSG−6H)を用いて1000rpmで3時間粉砕し、平均粒子径が0.4μmのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子に微粉が混じったシリカ粒子のスラリーを得た。得られたスラリーを100メッシュのフィルターを通しジルコニアビーズを分離し、2Lのビーカーに移しかえた。そこに濃度が5質量%になるまで水を加えて、5分間攪拌した後、攪拌を停止した。24時間静置した後、液面上部より全容量の3分の2の上澄み液を抜きとって微粉を分離し、カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子と微粉の混合物を分級した。残ったスラリーを乾燥して、平均粒子径が0.7μmのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子の物性を表1に示す。
【0068】
(実施例2)
ジルコニアビーズの径を0.2mmに変え、ビーズミルの処理条件を800rpmで3時間にする以外は実施例1と同様の処理をして、平均粒子径1.4μmのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子に微粉が混じったシリカ粒子のスラリーを得た。このスラリーを実施例1と同様の処理をして、平均粒子径が2μmのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子の物性を表1に示す。
【0069】
(実施例3)
不定形シリカ原料を、平均粒子径5.9μmのもの(山森土本鉱業所社製:S6−5)に変え、ビーズミルの処理時間を12時間にした以外は、実施例1と同様の手法で、平均粒子径が3.6μmのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子に微粉が混じったシリカ粒子のスラリーを得た。このスラリーを実施例1と同様の処理をして、平均粒子径が4.0μmのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子の物性を表1に示す。
【0070】
(実施例4)
原料セラミックス粒子を平均粒子径13μmの不定形アルミナ(昭和電工社製:ホワイトモランダムWA#1200)に変え、ビーズミルの回転数を800rpm、処理時間を2.5時間にした以外は、実施例1と同様の手法で、平均粒子径が2.5μmのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたアルミナ粒子に微粉が混じったアルミナのスラリーを得た。このスラリーを実施例1と同様の処理をして、平均粒子径が3.0μmのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたアルミナ粒子を得た。得られたアルミナ粒子の物性を表1に示す。
【0071】
(比較例1)
平均粒子径3μmの不定形シリカ原料(山森土本鉱業所社製:T−200)40質量部を水60質量部混合して、40質量%のスラリーを調製した。ついで1mmのジルコニアビーズ500質量部を、内径80mmのポットに入れて、そこに先ほど調製したシリカ粒子のスラリー100質量部添加して直径70mm×厚さ5mmの円盤型ローターを15mm間隔で3段積み重ねたロッドをセットした。それをビーズミル(五十嵐機械製造社製:TSG−6H)を用いて1500rpmで45分粉砕し、平均粒子径が0.7μmのカッティングエッジを有するシリカ粒子のスラリーが得られた。得られたスラリーを乾燥したものの物性を表1に示す。
【0072】
(比較例2)
ジルコニアビーズの径を0.2mmに変え、ビーズミルの処理条件を1500rpmで15分間にする以外は比較例1と同様の処理をして、平均粒子径2μmのカッティングエッジを有するシリカ粒子のスラリーが得られた。得られたスラリーを乾燥したものの物性を表1に示す。
【0073】
(比較例3)
不定形シリカ原料を、平均粒子径5.9μmのもの(山森土本鉱業所社製:S6−5)に変え、ビーズミルの処理条件を1500rpm、時間を15分にした以外は、比較例1と同様の手法で、平均粒子径4μmのカッティングエッジを有するシリカ粒子のスラリーが得られた。得られたスラリーを乾燥したものの物性を表1に示す。
【0074】
(比較例4)
原料セラミックス粒子を平均粒子径13μmの不定形アルミナ(昭和電工社製:ホワイトモランダムWA#1200)に変え、ビーズミルの回転数を1500rpm、処理時間を45分間にした以外は、比較例1と同様の手法で、平均粒子径3μmのカッティングエッジを有するアルミナのスラリーが得られた。得られたスラリーを乾燥したものの物性を表1に示す。
【0075】
(比較例5)
平均粒子径3μmの不定形シリカ原料(山森土本鉱業所社製:T−200)40質量部を水60質量部混合して、40質量%のスラリーを調製した。ついで1mmのジルコニアビーズ500質量部を、内径80mmのポットに入れて、そこに先ほど調製したシリカ粒子のスラリー100質量部添加して直径70mm×厚さ5mmの円盤型ローターを15mm間隔で3段積み重ねたロッドをセットした。それをビーズミル(五十嵐機械製造社製:TSG−6H)を用いて1000rpmで1時間粉砕し、平均粒子径が0.7μmのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子に微粉が混じったシリカ粒子のスラリーを得た。得られたスラリーを乾燥したものの物性を表1に示す。
【0076】
(比較例6)
ジルコニアビーズの径を0.2mmに変え、ビーズミルの処理条件を800rpmで1時間にする以外は比較例5と同様の処理をして、平均粒子径2μmのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子に微粉が混じったシリカ粒子のスラリーを得た。得られたスラリーを乾燥したものの物性を表1に示す。
【0077】
(比較例7)
不定形シリカ原料を、平均粒子径5.9μmのもの(山森土本鉱業所社製:S6−5)に変え、ビーズミルの処理時間を9時間にした以外は、比較例5と同様の手法で、平均粒子径が4μmのカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子に微粉が混じったシリカ粒子のスラリーが得られた。得られたスラリーを乾燥したものの物性を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
図1は、実施例2のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子のSEM写真、図2は、比較例2のカッティングエッジを有するシリカ粒子のSEM写真、図3は、比較例5のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子に微粉が混じったシリカ粒子のSEM写真である。図1〜3より、ビーズミルの回転数を落として、時間をかけて摩砕したものは、カッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子が得られることがわかる。
【0080】
図1〜3、及び表1の結果から、カッティングエッジを摩砕して出てきた削りかす(微粉)を除去しない場合は、同一平均粒子径の不定形粒子よりも、樹脂に添加した際の粘度が上昇することがわかる。一方、微粉を除去したものは、樹脂に添加した場合の粘度の上昇を抑制でき、より有用なフィラーとなることがわかる。特に微粉を除去したカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックスは、比表面積が同一平均粒子径のカッティングエッジがない不定形粒子よりも高いにもかかわらず、樹脂に添加した場合の粘度の上昇を抑制できる効果がある。また、表面粗さにおいても同一平均粒子径で比較するとカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたセラミックス粒子が最もRaが低く、表面平滑性が高いことがわかる。
【0081】
[曲げ強度の評価]
(実施例3)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製:JER828)100質量部と硬化剤である酸無水物(三菱化学社製:YH306)120質量部、硬化助剤として2−エチルー4(5)メチルイミダゾール(三菱化学社製:EMI-24)1質量部を混合して、エポキシ樹脂混合物を調製した。このエポキシ樹脂混合物60質量部に、実施例3で得られたカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子を40質量部混合し、自転・公転ミキサー(シンキー社製:あわとり練太郎 ARE−250)を用いて、2000rpm−5分攪拌後2000rpm−3分脱泡し、得られた混合物を型に流し込み、80℃で1時間加熱した後、150℃で3時間硬化させ、124mm×13mm×6mmの樹脂成形体を作成した。このものを、(オリエンテック社製:テンシロンRTC1210A)で曲げ強度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0082】
(実施例4)
実施例4のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたアルミナ粒子を用いた以外は実施例3と同様の手法で樹脂成形体の曲げ強度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0083】
(比較例3)
比較例3の不定形シリカ粒子を用いた以外は実施例3と同様の手法で樹脂成形体の曲げ強度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0084】
(比較例4)
比較例4の不定形アルミナ粒子を用いた以外は実施例3と同様の手法で樹脂成形体の曲げ強度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0085】
(比較例8)
比較例3の不定形シリカ粒子スラリーを濃度10質量%まで薄めた。このスラリーを、10kg/Hrの速度でプロパンガスを対空気比(容量比)1.4で燃焼させた火炎中にスプレーし、平均粒子径4μm、球形度0.98の球状シリカ粒子を得た。得られた球状シリカ粒子を用いて、実施例3と同様の手法で樹脂成形体の曲げ強度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0086】
(比較例9)
比較例4の不定形アルミナ粒子スラリーを濃度10質量%まで薄めた。このスラリーを、10kg/Hrの速度でプロパンガスを対酸素比(容量比)1.1で燃焼させた火炎中にスプレーし、平均粒子径4μm、球形度0.98の球状アルミナ粒子を得た。得られた球状アルミナ粒子を用いて、実施例3と同様の手法で樹脂成形体の曲げ強度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
比較例8の球状シリカ粒子及び比較例9の球状アルミナ粒子は、実施例3のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子及び実施例4のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたアルミナ粒子よりも、樹脂に添加した場合の粘度の上昇を抑制する効果はあるが、樹脂の機械的な強度が低下した。一方、実施例3のシリカ粒子及び実施例4のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたアルミナ粒子は、比較例3の不定形シリカ粒子及び比較例4の不定形アルミナ粒子と同等の強度を維持しつつ、樹脂に添加した場合の粘度の上昇を抑制できた。
【0089】
[結晶化度及び屈折率]
(実施例3)
実施例3で得られたカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子の結晶化度及び屈折率を測定した。結果を表3に示す。
【0090】
(比較例3)
比較例3で得られた不定形シリカ粒子の結晶化度及び屈折率を測定した。結果を表3に示す。
【0091】
(比較例8)
比較例8で得られた球状シリカ粒子の結晶化度及び屈折率を測定した。結果を表3に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
比較例8の球状シリカ粒子は、結晶化度及び屈折率が低下した。一方、実施例3のカッティングエッジが一部又は全部摩砕されたシリカ粒子は比較例3の不定形シリカ粒子と同等の結晶化度及び屈折率を維持できた。
図1
図2
図3