(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の封止材は、前記生体液の搬送具を受けて、前記第1のチャネルからの前記試薬又は前記生体液の漏れ無しで前記搬送具を保つように構成される、請求項1に記載のカートリッジ。
前記使い捨てカートリッジは、第3の試薬コンパートメントと、前記第3の試薬コンパートメント内に前もって収容され、封止された第3の試薬と、をさらに含む、請求項8に記載の使い捨てカートリッジ。
前記少なくとも1つの封止材は、複数の封止材を含み、前記カートリッジは前記血液分析器に当該複数の封止材のうちの各々を異なるタイミングで破れさせる、請求項8に記載の使い捨てカートリッジ。
前記第1の試薬コンパートメント及び前記第2の試薬コンパートメントのうちの少なくとも1つは、出力された流体の分析をするために、分析コンパートメントに接続可能である、請求項8に記載の使い捨てカートリッジ。
前記少なくとも1つの封止材は、前記封止材に損傷がないときには、前記第1の試薬又は前記第2の試薬が前記入口を介して流れることを防ぐように構成される封止材を含む、請求項8に記載の使い捨てカートリッジ。
前記少なくとも1つの封止材は、前記封止材に損傷がないときには、前記第1の試薬又は前記第2の試薬が前記チャネルを介して流れることを防ぐように構成される封止材を含む、請求項8に記載の使い捨てカートリッジ。
前記第1の試薬コンパートメント及び前記第2の試薬コンパートメントのうちの少なくとも1つは、開口を介して分析コンパートメントに出力された流体を運ぶように構成される、請求項8に記載の使い捨てカートリッジ。
前記少なくとも1つの封止材は、前記封止材に損傷がないときには、前記第1の試薬又は前記第2の試薬が前記開口を介して流れることを防ぐように構成される封止材を含む、請求項16に記載の使い捨てカートリッジ。
【背景技術】
【0002】
ポイントオブケア検査(POCT)は、患者治療の現場又はその近辺での(例えば、診察室での)医療検査として定義される。ポイントオブケア検査システムを用いると、検査(例えば、血液検査)をただちに行うことが可能になり、試料を分析室に送ることが不要になる。検査結果がすぐに得られる為、臨床管理の意思決定を直ちに行うことが可能になる。
【0003】
そのようなPOCTシステムは、使い方が簡単、且つ、必要な保守が最小限であることが望ましい。これを実現する為に、システムによっては、完全自己完結型の使い捨てのカートリッジ又はストリップを使用する。完全に自動化されたシステムでは、事前の試料調製が不要であり、カートリッジは汚染のおそれがない。
【0004】
米国特許第7,347,617号明細書(プジア(Pugia)ら、発明の名称「マイクロ流体装置での混合(Mixing in Microfluidic Devices)」、2008年公開)は、マイクロ流体装置内で液体を混合することを開示しており、これは、液体を第1のチャンバに定量吐出して複合液体を生成することにより行われる。これらの液体は、その後、少なくとも1つの毛細管を介して、第1のチャンバから第2のチャンバに吐出されて完全に混合される。
【0005】
米国特許第4,030,888号(ヤマモト(Yamamoto)ら、発明の名称「自動血液分析装置(Automatic Blood Analyzer)」、1977年公開)は、7つの血液パラメータを測定する完全自動システムを開示している。試料を投入してからの、希釈液及び血液の溶液の、計数部、測定手段、及び排水口への流れは、2つの回転式定量栓及びそれらの上流又は下流に位置するチャンバへの真空圧力又は空気圧力の供給によって制御される。
【0006】
米国特許第4,826,775号明細書(バーン(Burns)ら、発明の名称「希釈装置及び方法(Dilution Apparatus and Method)」、1989年公開)は、自動希釈装置及び方法を開示しており、この装置及び方法は、自動試料液体分析システムとの組み合わせで、試料液体を自動的に希釈し、これを自動試料液体分析装置に供給するように動作可能である。
【0007】
米国特許第4,908,187号明細書(キプケ(Kipke)ら、発明の名称「マルチチャンバ型ポンプ−バルブ装置(Multi−Chambered Pump−Valve Device)」、1990年公開)は、希釈混合装置を開示しており、この装置は、第1の溶液を希釈して第2の溶液を生成し、これを未希釈の第3の溶液と混合することにより、溶液の組み合わせの固有系列を再現性よく生成することが可能である。上記系列の溶液の組み合わせにおける各溶液は、単一の(選択された)反応物質の濃度のみが異なってよく、典型的には、連続する各溶液は、選択された反応物質の濃度が徐々に高くなる。手順に変更を加えることにより、上記系列における連続する各溶液の選択された反応物質の濃度が徐々に低くなるようにすることも可能である。この発明は更に、上記溶液系列を迅速且つ再現性よく生成するように、ステッピングモータに接続された装置を含む自動システムにも関連しており、この装置は更に、上記溶液系列に関する化学的、生化学的、又は物理化学的なデータを取得する分析器手段に接続される。
【0008】
米国特許第5,350,693号明細書(マイモン(Maimon)ら、発明の名称「細胞融合用マルチチャンバシリンジ装置(Multichamber Syringe Device for Fusing Cells)」、1994年公開)は、マルチチャンバシリンジを含む細胞融合装置を開示しており、このマルチチャンバシリンジは、細胞の懸濁液を収容する第1のチャンバと、細胞の懸濁液を収容する第2のチャンバと、体積比で少なくとも40%のポリエチレングリコール(PEG)を収容する第3のチャンバと、を有する。各チャンバの出口通路は、それらの下流端が斜めに切られて同じ高さで互いに向かい合うように網組されている。各チャンバの相対断面は、所望の比率の懸濁液及び溶液により、体積比15%〜25%のPEGの混合物が中空に形成されるような直径になっている。この装置は又、シリンジと流体連通してシリンジから上記混合物を受け取る非線形管と、非線形管を通る上記混合物の往復流路を形成する装置とを含む。
【0009】
米国特許第5,380,491号明細書(カーバージュニア(Carver Jr)ら、発明の名称「(Apparatus for Pumping and Directing Fluids for Hematology Testing)」、1995年公開)は、血液検査装置を開示しており、この装置は、血液試料の分析の為に血液試料を流す計数オリフィスを定義している検知装置と、3つのシリンジを有するポンプ装置とを有する。第1のシリンジは、計数オリフィスの入口側にある検知装置と流体連通結合されて、血液試料の流れを計数オリフィスに注入する。第2のシリンジは、計数オリフィスの入口側にある検知チャンバと流体連通結合されて、計数オリフィスの入口側で試料の流れを取り囲む流体シースを同時に注入する。第3のシリンジは、計数オリフィスの出口側にある検知チャンバと結合されて、計数オリフィスの出口側で試料の流れを取り囲む流体シースを検知チャンバから吸引する。
【0010】
米国特許第5,840,254号明細書(カーバージュニア(Carver Jr)ら、発明の名称「分析用流体混合装置(Apparatus for Mixing Fluids for Analysis)」、1998年公開)は、流体分析(血液分析など)用の装置を開示しており、複数の試薬混合成分のそれぞれが、それぞれのポンプからバルブマトリックスを経由して流動注入装置に注入される。流動注入装置は、複数の隆起又は突起を含む混合チャンバを定義しており、これらの隆起又は突起は、混合チャンバの中心に向かって内側に突出しており、軸方向及び半径方向の両方において互いに間隔をおいている。各試薬混合成分が混合チャンバに注入されると、突起がこの流体の流れを激しく揺さぶって乱流を引き起こし、これによって、各試薬混合成分が拡散し、互いに混合されて、試薬混合物が生成される。各試薬混合成分が流動注入装置内で組み合わされる際の試薬混合比を選択し、その選択された試薬混合物が生成されるように、各成分の流量が調節される。試薬混合物は、流動注入装置を通過した後、検知装置に注入されて、混合物の粒子分布の分析が行われる。
【0011】
米国特許第6,241,379号明細書(ラーセン(Larsen)ら、発明の名称「層流を用いて2つの液体を混合する混合チャンバを有するマイクロミキサ(Micromixer Having a Mixing Chamber for Mixing two Liquids Through the Use of Laminar Flow)」、2001年公開)は、2つの流体を混合する混合チャンバを有するマイクロミキサを開示している。混合チャンバは、第1の流体を供給する為の第1の入口構成と、第2の流体を供給する為の第2の入口構成と、を有する。混合チャンバに含まれる壁に沿って第1の流体が流れ、第2の入口構成は、その壁に少なくとも1つの開口を有する。その壁には、開口に隣接して突起があり、この突起が混合チャンバ内に延びることにより、第1の流体が突起の周囲を流れて、第2の流体との境界層を形成する。混合は、境界層を通る拡散によって行われる。
【0012】
米国特許第6,537,813号明細書(チェン(Chen)ら、発明の名称「遺伝子治療ベクタを調製する同時流動混合方法及び装置並びにこれによって調製される遺伝子治療組成物(Concurrent Flow Mixing Methods and Apparatuses for the Preparation of Gene Therapy Vectors and Compositions Prepared Thereby)」、2003年公開)は、混合物及び凝縮組成物を生成することに適合された方法を開示している。これは、各種実施形態においては、遺伝子治療ベクタ及び遺伝子治療ベクタビヒクルの管理された均一な混合を提供することにより、再現性、拡張性、安定性、及び薬剤有効性を向上させる。
【0013】
米国特許第6,820,506号明細書(キプケ(Kipke)ら、発明の名称「マルチチャンバ型ポンプ−バルブ装置(Multi−Chambered Pump−Valve Device)」、2004年公開)は、そこに記載されている化学的処理、検出、又は分析を行う為のマルチチャンバ型ポンプ−バルブ装置を開示している。この装置は、1つ以上の流路を介して互いに流体連通している、体積可変の複数のチャンバを含む。2つ以上のチャンバの体積を変化させるだけで、装置に液体を通すことが可能である。
【0014】
米国特許第6,877,892号明細書(カープ(Karp)ら、発明の名称「多流微小流体アパーチャ混合器(Multi−Stream Microfluidic Aperture Mixers)」、2005年公開)は、複数の流体流を、可動部品を使用せず受動的に混合する、ロバストな微小流体混合装置を開示している。一実施形態では、これらの装置は、3次元構造の各種層に形成された微小流体チャネルを収容する。混合は、流体流路の様々なマニピュレーション及び/又は流体流間接触により実施可能である。
【0015】
米国特許第6,915,713号明細書(キプケ(Kipke)ら、発明の名称「マルチチャンバ型ポンプ−バルブ装置(Multi−Chambered Pump−Valve Device)」、2005年公開)は、化学的処理、検出、又は分析を行う為のマルチチャンバ型ポンプ−バルブ装置を開示している。この装置は、1つ以上の流路を介して互いに流体連通している、体積可変の複数のチャンバを含む。2つ以上のチャンバの体積を変化させるだけで、装置に液体を通すことが可能である。
【0016】
米国特許第6,979,569号明細書(カーバージュニア(Carver Jr)ら、発明の名称「分析用流体混合装置及び方法(Apparatus and Method for Mixing Fluids for Analysis)」、2005年公開)は、流体分析用の装置を開示しており、複数の試薬混合成分のそれぞれが、それぞれのポンプからバルブマトリックスを経由して流動注入装置に注入される。流動注入装置は、複数のを含む混合チャンバを定義している。各試薬混合成分が混合チャンバに注入されると、突起がこの流体の流れを激しく揺さぶり、これによって、各試薬混合成分が拡散し、互いに混合されて、試薬混合物が生成される。各試薬混合成分が流動注入装置内で組み合わされる際の試薬混合比を選択し、その選択された試薬混合物が生成されるように、各成分の流量が調節される。試薬混合物は、流動注入装置を通過した後、検知装置に注入されて、混合物の粒子分布の分析が行われる。
【0017】
米国特許第7,314,060号明細書(チェン(Chen)ら、発明の名称「流体流伝導モジュール(Fluid Flow Conducting Module)」、2008年公開)は、2つ以上の入口と、1つ以上の出口と、第1及び第2のブロックを内蔵するチャンバと、を含む流体流伝導モジュールを開示している。更に、このチャンバは、徐々に広くなる区画が中間にあり、且つ、2つの収束端がある。一方の収束端は、入口と接続されており、他方の収束端は、出口と接続されている。流体は、入口を通ってチャンバに注入され、チャンバを通って流れ、更なる収集及び分析の為に、1つ以上の出口に向かって伝導される。
【0018】
国際公開第2009/053928号パンフレット(シャニー(Shany)ら、発明の名称「生物試料用カートリッジ(Cartridge for a Biological Sample)」、2009年公開)は、分析装置への挿入及び生物試料の収容に適合された密封型着脱可能カートリッジを開示しており、このカートリッジは、上記カートリッジ内での上記生物試料の2つ以上の分析を容易にすることに適合された2つ以上の分析場所と、上記生物試料を上記分析場所のうちの少なくとも1つに移送する為の、上記分析装置のアクチュエータとのインタフェースに適合されたアクチュエータインタフェースと、を含む。
【0019】
米国特許第5,096,669号明細書(ロークス(Lauks)ら、発明の名称「リアルタイム流体分析用使い捨て検知装置(Disposable sensing device for real time fluid analysis)」、1992年公開)は、使い捨て装置及びハンドヘルド読み取り器を含み、血液又は他の流体についての様々な電気化学測定を行うことが可能なシステムを開示している。動作時には、毛細管作用により、オリフィスから使い捨て装置に流体試料を引き込む。オリフィスは閉鎖され、使い捨て装置は読み取り器に挿入される。検査シーケンス及び流体流を制御する読み取り器は、装置内部にある較正物パウチに穴を開けて、較正物流体を放出して複数のセンサアレイにまたがって流すことにより、較正を実施する。次に、装置内にあるうきぶくろをへこませて、試料を複数のセンサにわたって拡散させ、各センサで測定を実施し、読み取り器で読み取りを行い、較正を実施する。測定が実施されたら、装置を読み取り器から引き抜いて廃棄してよい。
【0020】
国際公開第2003/044488号パンフレット(バーンドソン(Berndtsson)、発明の名称「血液検査用使い捨て装置(Disposable apparatus for use in blood testing)」、2003年公開)は、血液試料を異なる2つの希釈比で同時に希釈することに適合された、血液検査用使い捨て装置を開示している。ブロック形のハウジングが、第1及び第2のレセプタクルと、第1及び第2のシリンダと、バルブとを有し、第1及び第2のシリンダは、それぞれが、内部において可動であるピストンを有し、且つ、規定量の希釈液を収容し、バルブは、バルブを貫通して延び、3つの別々の位置に位置することが可能な3つのバルブ本体チャネルを有するバルブ本体を含む。1つの位置では、それらのレセプタクルは、チャネルのペアを介して、それらのシリンダの1つずつと同時連通状態におかれる。血液試料を受け取る第1の手段としての、レセプタクルの1つが、血液試料採取用毛細管を受けるように適合されている。
【0021】
国際公開第2003/104772号パンフレット(ラーセン(Larsen)ら、発明の名称「液体内の懸濁粒子を特性化する為の使い捨てカートリッジ(A disposable cartridge for characterizing particles suspended in a liquid)」、2003年公開)は、液体内の懸濁粒子を特性化する為の使い捨てカートリッジを開示しており、特に、1回限りの分析(例えば、少量の全血の1回限りの分析)の為の自己完結型使い捨てカートリッジを開示している。この自己完結型使い捨てカートリッジは、ほとんどの人が特別な教育を受けなくても実施できる直接的な検査手順を促進する。更に、このカートリッジに対する検査の実施に用いる装置は、シンプルであり、保守不要であり、持ち運び可能である。
【0022】
国際公開第2006/084472号パンフレット(ラーセン(Larsen)ら、発明の名称「液体内の粒子を特性化する為のデュアル試料カートリッジ及び方法(Dual sample cartridge and method for characterizing particle in liquid)」、2006年公開)は、液体内の懸濁粒子を特性化する為の装置を開示しており、特に、1回限りの分析(例えば、少量の全血の1回限りの分析)の為の自己完結型使い捨てカートリッジを開示している。更に、この発明は、液体内の粒子を特性化する方法、及び少量且つ正確な量の液体を試料採取する装置に関する。この装置は、開口を含む壁によって隔てられた混合チャンバ及び収集チャンバを有するハウジングと、液体試料を入れる為の、ハウジングの外側表面にある第1のボアと、第1の液体試料を受け取り、保持する為の第1のキャビティと、第2の液体試料を受け取り、保持する為の第2のキャビティと、を含む。
【0023】
米国特許第6,016,712号明細書(ウォーデン、カプラン(Warden and Kaplan)、発明の名称「試料を受け取り、処理する装置(Device for receiving and processing a sample)」、2000年公開)は、試料を受け取り、処理する装置を開示している。この装置は、試料容器との流体連通を確立して試料容器から試料を直接受け取ることに適合された試料受け取りエレメントを含む。この試料受け取りエレメントは又、装置への試料の投入も可能にしている。第1のチャンバが、試料受け取りエレメントと流体連通している。1つ以上の第2のチャンバが、第1のチャンバと流体連通している。この装置は又、第1及び第2のポートを含む。第1のポートは、装置の排気口になる。第2のポートは、装置と、試料受け取りエレメントから第1のチャンバまで試料を移動させ、且つ、第1のチャンバから1つ以上の第2のチャンバまで試料を移動させる手段との間の通信を確立する為のポートである。更に、この装置の一部として、第2のチャンバのそれぞれに投入される試料の正確な量を管理する手段が含まれる。第1のチャンバ及び/又は1つ以上の第2のチャンバは、試料を処理することに適合される。更に、上記装置、並びに、その装置を使用して試料を処理する方法を含む一式が開示されている。
【0024】
米国特許出願第2006/0257993号明細書(マクデビット(Mcdevitt)ら、発明の名称「流体及び試薬の、センサ素子を収容する自己完結型カートリッジへの統合(Integration of fluids and reagents into self−contained cartridges containing sensor elements)」、2006年公開)は、ポイントオブケア分析に好適な可搬型器具に関連付けられた検体検出装置及び方法を開示している。実施形態によっては、可搬型器具として、使い捨てカートリッジ、光学式検出器、試料収集装置及び/又は試料リザーバ、試薬送達システム、流体送達システム、1つ以上のチャネル、及び/又は廃棄リザーバなどがあってよい。可搬型器具を使用することにより、操作者が分析対象の試料に接触することを減らして、操作者に対する危険要因を減らすことが可能である。この装置は、細胞及び/又は粒子ベースの分析により診断情報を取得することが可能であり、メンブレン及び/又は粒子ベースの分析カートリッジとの組み合わせで使用可能である。このメンブレン及び/又は粒子ベースの分析システムを用いて、検体(蛋白質や細胞及び/又は微生物を含む)を検出することが可能である。
【0025】
米国特許出願第2009/0215072号明細書(マクデビット(Mcdevitt)ら、発明の名称「白血球数の測定及び使用に関連付けられた方法及び組成物(Methods and compositions related to determination and use of white blood cell counts)」、2009年公開)は、ポイントオブケア分析に好適な可搬型器具に関連付けられた検体検出装置及び方法を開示している。実施形態によっては、可搬型器具として、使い捨てカートリッジ、光学式検出器、試料収集装置及び/又は試料リザーバ、試薬送達システム、流体送達システム、1つ以上のチャネル、及び/又は廃棄リザーバなどがあってよい。可搬型器具を使用することにより、操作者が分析対象の試料に接触することを減らして、操作者に対する危険要因を減らすことが可能である。この装置は、細胞及び/又は粒子ベースの分析により診断情報を取得することが可能であり、メンブレン及び/又は粒子ベースの分析カートリッジとの組み合わせで使用可能である。このメンブレン及び/又は粒子ベースの分析システムを用いて、検体(蛋白質や細胞及び/又は微生物を含む)を検出することが可能である。
【0026】
国際公開第2008/149365号パンフレット(ルシャンスキー(Leshansky)ら、発明の名称「粒子にフォーカスするシステム及び方法(Systems and Methods for Focusing Particles)」、2008年公開)は、粒子にフォーカスする方法を開示している。この方法は、懸濁媒体中に粒子の懸濁を与えるステップと、この懸濁液をチャネルに沿って流して、この流れた懸濁液の流れが、少なくとも1つの断面寸法が100μmより小さい一定体積を占めるようにするステップと、を含む。懸濁媒体は、懸濁液をチャネルに流すことにより、粒子の少なくとも一部が、上記一定体積で封鎖されたフォーカス領域に向かうような粘弾性を有する。
【0027】
国際公開第2010/013238号パンフレット(ブランスキー(Bransky)ら、発明の名称「微小流体システム及び微小流体システムの製造方法(Microfluidic System and Method for Manufacturing the Same)」、2010年公開)は、微小流体システムを開示している。この微小流体システムは、第1の流体を受ける流体入口と流体連通しているマイクロチャネルを含む。この微小流体システムは更に、マイクロチャネルの壁に外部圧力を選択的にかけることにより、マイクロチャネル内の第1の流体の流れを制御する圧電アクチュエータを含んでよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の1つの目的は、分析対象の細胞を含む試料流体を調製する為の使い捨てカートリッジを提供することであり、このカートリッジは、
1つ以上の並列な調製部を含み、各調製部は、
壊れやすい封止材に挟まれて密封され、直列接続された1つ以上のチャンバを含み、各チャンバは、入力流体を受け取り、前記流体に作用する手順を実施して出力流体を発生させ、前記出力流体を放出するように構成されており、
前記1つ以上のチャンバのうちの第1のチャンバが、第1の開口と結合された圧迫可能なチャンバであり、
前記1つ以上のチャンバのうちの最後のチャンバが、第2の開口と結合されており、
前記第1のチャンバの入力流体は、前記試料流体であり、
これら1つ以上の調製部は、第2の開口を介して搬送可能な各出力流体の分析を実施するコンパートメントと結合可能である。
【0030】
一実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、前記1つ以上の並列な調製部のうちの少なくとも1つに含まれる前記1つ以上の圧迫可能チャンバは、前記1つ以上の並列な調製部にある第1のチャンバ及び最後のチャンバである単一チャンバを含む。
【0031】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、前記1つ以上の並列な調製部にある前記1つ以上の圧迫可能チャンバは、それぞれがそれぞれの物質を含む。
【0032】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、前記1つ以上の調製部のうちの少なくとも1つにおけるチャンバのうちの1つ以上が、相互接続されたコンパートメントを含む。
【0033】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、圧迫可能チャンバを密封する壊れやすい封止材は、壊れやすい先行封止材及び壊れやすい後続封止材を含む。
【0034】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、前記1つ以上の並列な調製部のそれぞれにおいて、第1のチャンバの壊れやすい先行封止材は、前記第1の開口を通る、前記第1のチャンバからの流れを阻止する。
【0035】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、前記1つ以上の並列な調製部のそれぞれにおいて、最後のチャンバの壊れやすい後続封止材は、前記第2の開口を通る、各調製部からの流れを阻止する。
【0036】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、前記1つ以上の並列な調製部のそれぞれにおいて、第1のチャンバは、第1のチャネルを介して、第1の開口と結合されている。
【0037】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、前記第1のチャンバの先行封止材は、前記第1のチャネルの内面と、試料流体を前記第1のチャンバに投入することに使用可能な搬送具との間に発生しうる空間を通って流体が流れるのを防ぐように構成されている。
【0038】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、前記第1のチャンバの先行封止材は、
搬送具により試料流体を前記第1のチャンバに投入する前に、前記第1の開口を通る、前記第1のチャンバからの流れを阻止するように構成されている第1の壊れやすい封止材と、
試料流体の投入後に流体がその空間を通って流れるのを防ぐように構成されている第2の封止材と、を含む。
【0039】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、前記1つ以上の並列な調製部のそれぞれにおいて、前記第1の圧迫可能チャンバの壊れやすい先行封止材は、試料流体を前記第1のチャンバに投入することに使用可能な搬送具によって壊れるように構成されている。
【0040】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、前記1つ以上の並列な調製部のそれぞれにおいて、前記第1の圧迫可能チャンバの壊れやすい先行封止材は、搬送具によって壊れるように構成されている。
【0041】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、第1の壊れやすい封止材は、搬送具によって壊れるように構成されている。
【0042】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、壊れやすい後続封止材は、圧力によって壊れるように構成されている。
【0043】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、前記1つ以上の並列な調製部のそれぞれにおいて、最後のチャンバは、第2のチャネルを介して、第2の開口と結合されており、第2のチャネルは封止可能である、
【0044】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、前記1つ以上の並列な調製部のうちの少なくとも1つが、1つ以上の接続チャネルを介して直列接続されている2つ以上の圧迫可能チャンバを含み、前記1つ以上の接続チャネルのうちの少なくとも1つは封止可能である。
【0045】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、前記1つ以上の並列な調製部のそれぞれが、試料流体を前記第1のチャンバの空間に直接投入することに使用可能な搬送具を投入するように構成されている。
【0046】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、反応を実施することは、前記入力流体と物質とを混合することである。
【0047】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、圧迫可能チャンバは、前記圧迫可能チャンバの1つ以上の圧迫可能部分にかけることのできる圧力により引き起こされる噴流によって混合を行うように構成されている。
【0048】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、前記1つ以上の調製部のうちの少なくとも1つにおけるチャンバのうちの1つ以上が、相互接続されたコンパートメントを含み、前記相互接続されたコンパートメントのうちの少なくとも1つが圧迫可能部分を含む。
【0049】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、各コンパートメントは圧迫可能部分を含む。
【0050】
本発明の更なる目的は、試料流体の派生物を取得することと、前記流体のパラメータを取得することを目的とする分析が可能となるように前記派生物を提示することと、を行う分析コンパートメントを提供することであり、この分析コンパートメントは、
少なくとも1つの分析部を含み、各分析部は、
前記派生物のうちの1つ以上を取得することと、前記派生物を、分析が可能となるように提示することと、を行うように構成された中空部材を含む。
【0051】
一実施形態によれば、本発明は分析コンパートメントを提供し、前記少なくとも1つの分析部のうちの1つ以上における中空部材は、前記派生物のうちの第1の派生物を提示用として取得してから、前記派生物のうちの第2の派生物を提示用として取得するように構成されている。
【0052】
別の実施形態によれば、本発明は分析コンパートメントを提供し、この少なくとも1つの分析部は、少なくとも2つの分析部を含み、前記少なくとも2つの分析部は、並列に結合され、2種類の分析を並行して実施することが可能となるように、前記試料流体の派生物を提示するように構成されている。
【0053】
別の実施形態によれば、本発明は分析コンパートメントを提供し、前記少なくとも1つの分析部のうちの1つ以上の分析部における中空部材はチャンバであり、前記少なくとも1つの分析部のうちの1つ以上の分析部は更に、
前記チャンバと結合された、断面積の小さいチャネルを備え、この断面積の小さいチャネルは、チャンバ内の前記試料流体の派生物の流れを減速させるように構成されている。
【0054】
別の実施形態によれば、本発明は分析コンパートメントを提供し、前記少なくとも1つの分析部のうちの1つ以上の分析部におけるチャンバの内面が、薬剤によるコーティングが可能な突起群を有し、この突起群は、前記薬剤と試料流体の前記派生物との間の接触面積を大きくするように構成されている。
【0055】
本発明の更に別の目的は、細胞を含む試料流体を取得することと、この試料流体を分析の為に調製することと、を行う使い捨てカートリッジを提供することであり、このカートリッジは、
少なくとも2つの接続されたチャンバの系列を含み、前記少なくとも2つのチャンバは第1のチャンバ及び最後のチャンバを含み、前記系列内の各チャンバは、壊れやすい封止材に挟まれて密封されており、入力が前記試料流体の第1の派生物であり、出力が前記試料流体の第2の派生物である手順を実施するように構成されており、
前記系列内の各チャンバは、連続する手順を実施するように構成されており、
第1のチャンバによって取得可能な第1の派生物は、試料流体であり、前記第1のチャンバ以外の全てのチャンバのそれぞれによって取得可能な第1の派生物は、系列内の各先行チャンバのそれぞれの第2の派生物である。
【0056】
一実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、封止材は、
第1の派生物を取得する前にそれぞれのチャンバを封止するように構成された先行封止材と、
それぞれのチャンバから第2の派生物を放出する為に破れるように構成された後続封止材と、を含む。
【0057】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、先行封止材は、壊れやすい封止材である。
【0058】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、先行封止材は、再封止可能な封止材である。
【0059】
別の実施形態によれば、本発明は使い捨てカートリッジを提供し、後続封止材は、壊れやすい封止材である。
【0060】
本発明が理解されるように、且つ、実際にはどのように実施可能であるかがわかるように、以下では、非限定的な例のみを用い、添付図面を参照して、実施形態を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下の記述では、2つ以上の図面に共通である構成要素については、同じ参照符号で参照している。
【0063】
更に、特に断らない限り、本明細書で記載又は参照している実施形態は、本明細書で記載又は参照している他のいずれの実施形態に対しても追加的及び/又は代替的であってよい。
【0064】
本発明の目的は、分析対象の細胞を含む試料流体の調製に用いるカートリッジを提供することである。試料流体は、体液、例えば、血液、脳脊髄液(CSF)、囲心腔液、肋膜液、又は他の任意の、細胞を含みうる流体であってよい。細胞は、任意のタイプの原核細胞(例えば、バクテリア)、真核細胞(例えば、赤血球)、白血球、上皮細胞、循環腫瘍細胞、細胞断片(例えば、血小板)などであってよい。
【0065】
本発明を説明する為に、且つ、わかりやすさを考慮して、本発明の記述の全体を通して、全血球算定(CBC)を取得する為の光学的分析の対象となる血液試料の調製に用いるカートリッジを参照する。しかしながら、当然のこととして、本発明は、CBCに限定されるものではない。本発明による使い捨てカートリッジは、細胞の分析を必要とする複数の応用分野で使用されてよく、例えば、HIV監視(CD4/CD8比の使用など)、F−ヘモグロビン、マラリア抗原又は他の血液寄生虫の検出、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、腸の筋内膜抗体(EmA)によるセリアック病の診断、アルツハイマー病、又は他の任意の、細胞ベース診断が適している応用分野に使用されてよい。
【0066】
図1は、本発明の特定実施形態による、カートリッジ102を用いて試料流体の分析を行うシステム101を概略的に示している。例えば、システム101は、診察室において検査結果がすぐに得られるようにするポイントオブケア検査(POCT)システムとして使用可能であってよい。システム101は、カートリッジ保持部103と、ポンプ104と、データ処理部106を含む分析モジュール105とを含む。分析モジュール105は、分析(例えば、光学的分析及び/又は電気インピーダンス分析など)を行うように構成されてよい。従って、このモジュールは、分析に用いるパラメータの検出及び測定を行うように構成された適切なセンシング素子107を含んでよい。例えば、光学式分析を行うように構成された分析モジュールにおいては、光センサ(CCD、CMOS、又は光電子増倍管など)を用いることが可能である。このモジュールは又、刺激部材108(例えば、必要なタイプの試料流体分析に好適な所定の波長の光を発する光源)を含んでよい。刺激部材108は、(例えば、刺激部材108及びセンサ107の動作が同期するように)センサ107と結合される場合もある。更に、センサ107には、データ処理部106が結合され、データ処理部106は、分析モジュールによって取得されたデータの処理及び蓄積を行うように動作する。ポンプ104は、カートリッジ内部の試料流体の流れを駆動する圧力勾配(例えば、真空)を発生させるように動作する。
【0067】
本発明の特定実施形態では、本システムは、全血球算定を行うように構成されている。これらの実施形態では、センサ107は、カートリッジ内部を流れる細胞の画像を取得するカメラであってよい(これについては、後で、後続の図面を参照して説明する)。次に、適切なソフトウェア及び/又はハードウェアを用いるデータ処理部において取得画像を処理することにより、分析対象の血液試料中に存在する各血球タイプ(例えば、好中球、リンパ球、赤血球など)に対応する血球数を算定する。
【0068】
図2は、本発明の特定実施形態によるカートリッジ201を概略的に示している。試料流体をカートリッジに投入するように動作する試料採取器202が、一方の側からカートリッジ201に挿入される。分析コンパートメント203が、他方の側からカートリッジ201と結合される。分析対象の試料流体の調製がカートリッジによって行われる一方で、システム101による分析が可能となるように調製済み試料流体を提供することが、分析コンパートメントによって行われる。
【0069】
記載の一実施形態では、カートリッジと分析コンパートメントは結合されている。カートリッジと分析コンパートメントは、一緒に製造されて製造時又は製造直後に結合されてよく、或いは、別々に製造されて、カートリッジがそのエンドユーザに販売される前に結合されてもよく、或いは又、カートリッジの使用直前に、場合によっては、検査実施担当者によって、又はシステム101内部で自動的に、結合されてもよい。
【0070】
図2では、カートリッジと分析コンパートメントは、別個の2つのコンパートメントが結合されたものとして示されているが、これは限定ではなく、他の実施形態では、分析コンパートメントは、カートリッジの一統合的部分を含んでよい。更に、本実施形態では、分析コンパートメント203は、カートリッジと結合されるように示されているが(即ち、カートリッジの一部ではないが)、特定実施形態では、分析コンパートメント203は、カートリッジの一部と見なしてよく、一方、201は「調製コンパートメント」に関連付けられる。即ち、そのような実施形態によるカートリッジ204が、調製コンパートメント201及び分析コンパートメント203から成るものであってよい。カートリッジ204は又、特定実施形態によれば、調製コンパートメント201を含んでよく、且つ、分析コンパートメントと結合可能であってもよい。以下では、わかりやすさを考慮して、カートリッジ201を参照して説明を行う。しかしながら、特に明記されていなくても、変更すべきところを変更すれば、カートリッジ204も同様に参照されることを考慮されたい。
【0071】
図2に示された実施形態では、試料採取器202と分析コンパートメント203がカートリッジの両側にあるように示されているが、これも限定ではない。他の実施形態によれば、試料採取器と分析コンパートメントは、状況に対して適用可能であれば、カートリッジ201に対して、いかなる形で位置してもよい。例えば、分析コンパートメント203は、カートリッジ201の上方又は下方に位置してよく、或いはカートリッジ201の側面に位置してよく、或いは、試料採取器202が位置している側面に位置してよく、更には、カートリッジ内部のギャップ(又は窓)内に位置してもよい。
【0072】
試料採取器202に関しては、後で
図14を参照して説明する。しかしながら、試料採取器がカートリッジ201(又は204)の直接的な一部分ではないことはここで述べておかねばならない。試料採取器は、試料流体を保持する搬送具を有する別個の部材であり、この搬送具は、例えば、毛細管であってよい。特定実施形態によれば、システム101は、試料流体をカートリッジ201又は204に投入する為に、試料採取器201を自動的にカートリッジ201又は204と結合する。
【0073】
特定実施形態によれば、試料採取器は、(例えば、結合ストリップなどの任意の利用可能な手段を用いて試料採取器をカートリッジに結合することにより)カートリッジの一部と見なしてよい。そのような結合された試料採取器は、破損を防ぐ為に、搬送具(毛細管)から取り外してよい。或いは、試料採取器を、カートリッジに搬送具を挿入した後のカートリッジの一部分と見なすことも可能である。
【0074】
図3は、本発明の特定実施形態による、カートリッジの詳細を示している。カートリッジ201では、カートリッジ201の1つの側面にある第1の開口301が、試料流体を保持する搬送具を受けるように構成されている。第1の開口301及びチャンバ303に、第1のチャネル302が結合されている。チャンバ303は、試料流体を受けるように構成されており、且つ、試料流体に作用する手順を実施して出力流体を形成するように構成されている。そして、チャンバは、出力流体を放出して第2のチャネル304に入れ、第2のチャネル304から第2の開口305を介してカートリッジの外へ出すように構成されている。先行封止材306が、チャンバから第1の開口を通る流れを阻止するように構成されて、第1のチャネル302と結合されており、後続封止材307が、チャンバから第2の開口を通る流れを阻止するように構成されて、第2のチャネル304と結合されている。
【0075】
既に説明したように、「出力流体」という用語は、試料流体に作用する手順の結果である流体を指す為に用いられており、この出力流体は、その後、チャンバから搬送される。そこで、これと同様に、上記手順の作用を受ける前の、チャンバに入ってくる流体を、「入力流体」と称する。すると、チャンバの入力流体が、チャンバに投入される試料流体であることが観察される。
【0076】
図3では、第1及び第2の開口は、一方が他方と向かい合って位置している状態で示されている。当然のことながら、これは限定ではなく、2つの開口は、例えば、互いに垂直に位置してもよい。この開口の、他の任意の位置関係も、必要な修正を施すことによって可能であり、例えば、これら2つの開口をカートリッジの同じ側に配置することも可能である。
【0077】
チャンバ(例えば、チャンバ303)の内部で実施される、試料流体に作用する手順は、試料流体又は試料流体に含まれる細胞の物理的又は化学的状態の変化をもたらす任意の手順であってよい。可能な手順の例として、加熱、混合、希釈、染色、易透化、溶解などがある。これらの手順の幾つかについては、後で、後続の図面を参照して説明する。
【0078】
本発明の特定実施形態では、チャンバ303に物質が事前装填される。事前装填される物質は、液体物質、固体物質、又はこれらの組み合わせであってよい。この物質は、単一試薬、又は幾つかの異なる試薬で構成されてよい。幾つかの試薬で構成される液体物質の例として、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)があり、一方、固体物質の例として、凍結乾燥抗体、(例えば、水又はエタノールに)溶ける様々な種類の粉末染料、被覆ビーズなどがある。物質は、チャンバの底に自由な状態で横たわる場合や、チャンバの内面に付着する場合がある。或いは、チャンバの空間を埋める充填材(スポンジやマイクロファイバなど)に物質が付着して、試料流体にさらされる表面積が大きくなる場合がある。
【0079】
更に、幾つかの可能な手順(加熱など)は、チャンバに物質を事前装填しなくてよい。従って、特定実施形態では、チャンバは、物質の事前装填が行われないが、代わりに(あるいは、物質の事前装填に加えて)、何らかの機構(例えば、加熱機構又はその一部分)を保持することが可能である。更に、カートリッジの製造時に、又は試料流体を投入する前の任意のタイミングで、物質を事前装填してよいことを踏まえれば、代替実施形態に従って、試料流体の投入と同時に、又は試料流体の投入後に物質をチャンバに投入してよいのは当然のことであろう。物質が、複数の成分の組み合わせで構成される場合や、物質が、2つ以上の成分の間の化学反応の成果物である場合には、少なくとも1つの成分を事前装填し、少なくとも1つの他の成分を、試料流体の投入と同時、又は試料流体の投入後に投入することが可能である。
【0080】
チャンバ303に物質を装填する場合、事前装填か、試料流体の投入と同時の装填か、試料流体の投入後の装填かに関わらず、試料流体に作用する手順は、試料流体と物質とを混合することであってよい。通常、そのような手順に関しては、試料流体と物質を十分に混合しなければならない。均質性が不十分であると、その後の分析に悪影響がある。本発明の特定実施形態によれば、混合を有効にする為に、チャンバの表面の少なくとも一部分が、弾性ポリマー(例えば、ポリウレタン又はシリコーン)又は別の弾性材料から作られた圧迫可能部分を含む。圧迫可能部分の圧迫及び/又は解放による作用の結果としてのチャンバの変形(例えば、締め付け)により、チャンバ内に収容されている液体は、チャンバ内部で噴流(混合を強化する流れの一形式)を形成する。従って、本発明の実施形態によれば、チャンバの圧迫可能部分を交互に圧迫及び解放することにより、混合を達成することが可能である。圧迫可能部分が圧迫されると、流体が遠くに向かって流れ、圧迫可能部分が解放されると、流体が戻る流れになる。即ち、流体の流れは、行きつ戻りつする。
【0081】
本発明の特定実施形態では、圧迫可能部分が、チャンバの表面の一部分(例えば、チャンバの上部表面、又はその表面のうちの特定割合の部分)を構成し、本発明の別の実施形態では、チャンバ全体が圧迫可能である。即ち、チャンバ表面の100%が、チャンバの表面の一部分とも見なされる。
【0082】
混合とは別に、又は混合に加えて、チャンバ内で実施される、試料流体に作用する手順は、物質と試料流体との間で行われうる反応であってよい。この反応は、化学反応(例えば、酸化/還元)であってよく、或いは、生化学反応(例えば、抗体と配位子との結合)であってよい。この手順は、試料流体又は試料流体に含まれる細胞の物理的且つ/又は化学的状態の変化につながる可能性がある。例えば、試料流体の粘弾性又はpHの変化に影響する可能性があり、試料流体に含まれる細胞の濃度が希釈によって減る可能性があり、細胞メンブレンが透湿性になって、物質に含まれる着色剤又は抗体と細胞成分(例えば、細胞質顆粒)との結合が可能になる可能性があり、様々な細胞成分の酸化又は還元が起こる可能性があり(例えば、赤血球に含まれるヘモグロビンが酸化してメトヘモグロビンになる可能性があり)、その他のことが起こる可能性もある。
【0083】
手順の完了後、結果として得られる出力流体がチャンバから放出される。この放出は、(例えば、チャンバを圧迫することにより、流体がチャンバから押し出される場合には)流体をチャンバから「押し」出す正圧によって作用されてよい。或いは、この放出は、(例えば、重力などの、外に「引き」出す物理的力により、或いは、真空などの外力がかかることにより、流体がチャンバから押し出される場合には)負圧によって作用されてよい。例えば、本発明の特定実施形態では、チャンバから第2の開口を通って分析コンパートメントに入る出力流体の流れは、分析コンパートメントと結合された真空ポンプ104によって発生する吸引力により駆動される。これについては、後で
図10を参照して詳述する。
【0084】
前述したとおり、チャンバは、2つの封止材に挟まれて密封されており、先行封止材306は、流体が第1の開口301を通ってチャンバから流れ出すのを防ぎ、後続封止材307は、流体が第2の開口を通ってチャンバから流れ出すのを防ぐ。当然のことながら、2つの封止材306及び307は、試料流体の投入前には、チャンバからの物質の放出を防がなければならず、手順実行中には、物質及び/又は試料流体の放出を防がなければならず、出力流体の意図された放出の前にも、出力流体の意図しない放出を防がなければならない。
【0085】
わかりやすさを考慮して、まず、後続封止材307に注目する。当然のことながら、後続封止材を壊すと(即ち、破ると)、出力流体がチャンバから第2の開口に向かって流れ出すことになる。特定実施形態によれば、破った後の封止材はもはや不要なので、開いたままにしてよい。従って、第2の封止材307は、「壊れやすい封止材」を構成する。この封止材は、例えば、特定閾値を超える圧力をかけると壊れるように構成された粘着物で形成することが可能である。チャンバの圧迫可能部分に過大な圧力をかけると、結果として、閾値を超える圧力が封止材の場所にかかり、後続封止材が破れる。そして、出力流体は、放出されて、第2のチャネルから第2の開口を通って分析コンパートメントに流れ込む。つまり、出力流は、第2のチャネル及び第2の開口を通って分析コンパートメントに搬送される。
【0086】
なお、チャンバの圧迫可能部分を断続的に圧迫して試料流体と物質とを混合する場合は、封止材の場所における圧力が閾値を超えない為、封止材はそのまま残る。代替又は追加として、チャンバと封止材との間のチャネルに対して圧力をかけて、チャンバ内で発生した圧力が封止材に達するのを防ぐ物理的障害を発生させることにより、閾値を超えた圧力の作用を受けないように封止材を保護することが可能である。別の代替によれば、封止材に更に圧力をかけることが可能である。この実施形態によれば、閾値を超える圧力が封止材に達して封止材が破れても、チャネルに対して作用する物理的障害が、その障害が取り除かれるまで、流体の流れを阻止する。これら2つの代替実施形態を参照して更に明らかになることとして、これらのケースでは、チャネルに対してかけられる圧力は永続しない。
【0087】
後続封止材の破れがいかにして起こりうるかを理解したところで、次に、先行封止材306に注目する。この封止材には、異なる2つの役割がある。第1の役割は、試料流体の投入前に物質がチャンバから放出されるのを防ぐことである。一方、試料流体の投入時には、そのような投入を可能とする為に、先行封止材は壊れなければならない。しかしながら、前述のように、チャンバの圧迫可能部分に作用する圧力を用いた混合を可能とする為には、チャンバが両側から密封されていなければならない。従って、先行封止材は、第2の役割を有する。即ち、混合を可能とする為に、且つ、チャンバから出力流体が意図せず放出されるのを防ぐ為に、先行封止材は、後続封止材と異なり、試料流体の投入後に再封止しなければならない。
【0088】
前述のように、試料流体は、搬送具を用いて第1の開口から投入してよい。再封止に関する前述の説明を考慮すると、当然のことながら、試料流体の投入後に搬送具がカートリッジ内に残る実施形態において、再封止では、搬送具と第1のチャネルの内面との間に存在するギャップを通る流体流路を封止しなければならない。
【0089】
図4A及び4Bは、本発明の特定実施形態による先行封止材306を示している。これらの図に示された実施形態は、送達後、即ち、試料流体の投入後に第1のチャネルの内部に残る搬送具に適合されている。
【0090】
図示された実施形態によれば、描かれた先行封止材306は、離れている2つの封止材、即ち、第1の封止材401及び第2の封止材402から成る。
図4Aは、搬送具403による試料流体の投入の前の先行封止材を示しており、
図4Bは、搬送具が挿入されて貫通された先行封止材306を示している。
【0091】
第1の封止材401は、試料流体の投入前の、第1の開口を通るチャンバからの流れを阻止するように構成されている(前述の第1の役割)。従って、第1の封止材401は、後続封止材と同様に、粘着物又はプラグから形成された壊れやすい封止材であってよい。搬送具403が第1の開口からチャンバ内に挿入される際には、搬送具403は、
図4Bに示されるように、封止材401を壊す。
【0092】
第2の封止材402は、搬送具の挿入後に、チャンバを再封止する役割を担っている(前述の第2の役割)。この第2の封止材は、搬送具(より正確には搬送具の外面)とチャネルの内面との間の界面を通る漏れを防ぐように構成されている。特定実施形態によれば、この封止材は、チャネル内部に取り付けられた可撓性リング(Oリング)から成る。このリングの内径は、搬送具の直径より小さい為、このリングは、搬送具の貫通を可能にする一方で、周囲を緊密に封鎖して漏れを防ぐ。代替実施形態によれば、第1の封止材401及び第2の封止材402は、入れ替えてもよい。即ち、第1の封止材401より先に封止材402があってもよい。
【0093】
追加且つ/又は代替の実施形態について述べる前に、搬送具は内部が中空であってよいことに注目されたい。従って、搬送具の挿入後に、チャンバからの流れ(即ち、漏れ)が、搬送具の内部空間を通って発生する可能性もある。(例えば、後で
図14を参照して例示及び説明される)特定実施形態によれば、この漏れは、搬送具の内部に配置された疎水性メンブレンによって防がれる。
【0094】
図5A及び5Bは、本発明の特定実施形態による、
図4A及び4Bに示された封止材の代替となる先行封止材を示している。
図4A及び4Bの実施形態は、封止材306が2つの封止材(即ち、第1の封止材401及び第2の封止材402)で構成されていたが、
図5A及び5Bの封止材は、これとは異なり、単一部材で構成されており、この単一部材の機能性は、封止材401及び402を組み合わせた場合の機能性とほぼ同等である。
図5Aでは、第1のチャネル302の内部に、センタリングショルダを有するストッパ501が成形されている。ストッパ501は、試料流体の投入前の、第1の開口301を通るチャンバからの流れを阻止する。
図5Bに示されるように、搬送具403が挿入されると、ストッパ501の中心部が破れ、一方、ストッパのショルダ部は、搬送具の外面とチャネルの内面との間の界面をブロックして、試料流体の投入後の漏れを防ぐ。特定実施形態によれば、ストッパ501は、先行封止材306を形成しており、軟粘着性エラストマから作られてよい。
【0095】
図6A及び6Bは、本発明の特定実施形態による、別の代替先行封止材を示している。
図5A及び5Bの封止材501と同様に、本実施形態の封止材601も、
図4A及び4Bに示された第1及び第2の封止材(404及び402)の機能性を組み合わせた単一封止材を示している。搬送具によって破れるように構成された(
図5の)ストッパ501と異なり、本実施形態によれば、先行封止材は、一体型プラグ602を有する挿入アイレット601であり、プラグ602は、搬送具によって押されて外れるように構成されている。アイレット601及びプラグ602は、別々の部品で構成されてもよく、同一部品に属してもよい。即ち、これらは、結合されていても、されていなくてもよい。
図6Aに示されるように、プラグは、アイレットと結合されており、従って、これらは同じ部品を形成する。しかしながら、このことは必須条件ではない。プラグは、例えば、チャンバ又はチャネルと結合されていてよく、或いは、該当する場合には結合機構を有していなくてよい。
【0096】
図6Aによれば、試料流体の投入前にはプラグは閉じられており、従って、プラグは、第1の開口を通るチャンバからの流れを阻止する。
図6Bは、搬送具(毛細管など)によって試料流体がチャンバに投入される様子を示している。搬送具が挿入されると、プラグが内側に押されてチャネルが開くが、アイレット601は、搬送具の外面とチャネルの内面との間の界面を封止して、漏れを防ぐ。
【0097】
先行封止材を適用する幾つかの実施形態を紹介したが、当然のことながら、試料流体をチャンバ内に投入(即ち、送達)した後に、搬送具を第1の開口から引き抜く、他の実施形態があってよい。そのような搬送具の一例が、試料流体を第1のチャンバ内に送達することに使用可能なシリンジに接続される針である。そのような場合、先行封止材は、搬送具が引き抜かれた後に放置される開口を再封止しなければならない。そのような封止材の一例が、それ自体が周知である、隔壁である。
【0098】
本発明を詳述する前に、本発明の特定実施形態による、分析対象の試料流体の調製プロセスの概要を示す。試料流体の搬送具403を、第1の開口301から第1のチャネル302に挿入する。搬送具は、第1のチャネルと結合された先行封止材306を破って、試料流体をチャンバ303内に送達する。チャンバ内では、試料流体に対して、ある手順が実施される。例えば、送達された試料流体を、チャンバに事前装填されていた物質と混合して、出力流体を得る。混合は、チャンバの圧迫可能部分に断続的に圧力をかけることにより、有効となる。この手順の完了後、後続封止材307の場所において閾値を超える圧力が発生するようにチャンバを圧迫して後続封止材307を壊し、得られた出力流体がチャンバから放出されるようにする。放出された出力流体は、第2のチャネル304及び第2の開口305を通って分析コンパートメント203に流れ込み、そこで分析にかけられる。
【0099】
図7は、本発明の特定実施形態による、2つのコンパートメントを収容するチャンバを含むカートリッジを示している。2つのコンパートメント701は、物質が事前装填されていてよく、狭窄702により相互接続されている。第1のコンパートメントは、第1のチャネル302を介して第1の開口301と結合されており、第2のコンパートメントは、第2のチャネル304を介して第2の開口305と結合されている。これらのコンパートメントの少なくとも一方、場合によっては両方が、圧迫可能部分を含む。
【0100】
両方のコンパートメントが圧迫可能部分を有する場合は、それら2つの圧迫可能部分に交互に(一度に片方のコンパートメントずつ)圧力をかけることにより、混合を達成することが可能である。コンパートメント701間の狭窄702は、噴流を引き起こして混合を強化する。後続封止材308を壊すことは、例えば、両方のコンパートメントを同時に圧迫することにより、且つ/又は、混合時にかける圧力よりも強い圧力をかけることにより、可能である。
【0101】
圧迫可能部分が1つしかない場合(一方のコンパートメントにしかない場合)は、この部分を断続的に圧迫することにより、混合を達成することが可能である。後続封止材308を壊すことは、その圧迫可能部分に過度の圧力をかけることにより、可能である。
【0102】
後者の実施形態の説明において、物質は2つのコンパートメントに事前装填されていると述べた。追加及び代替の実施形態の説明の前に、該当する場合には、物質は、一方のコンパートメントにのみ装填してよいことに注意されたい。
【0103】
更に、
図7に示された形式を有する2つのコンパートメントを有する代わりに、他の形式を有する代替実施形態を有することが可能である。例えば、チャンバは、外部からは、
図3に示されたチャンバのようであって、内部に仕切り部材を有するものであってよい。この仕切り部材における開口が、或いは弁であっても、
図7における狭窄として機能することが可能である。
【0104】
ここまで記載してきた実施形態では、カートリッジは、1つのチャンバで構成されていた。しかしながら、本発明はこれに限定されず、別の実施形態では、カートリッジは、直列接続された2つ以上のチャンバを含んでよい。以下では、壊れやすい封止材に挟まれて密封され、直列接続されている1つ以上のチャンバが、「調製部」を構成しているものとする。従って、例えば、
図3を参照して説明されたカートリッジは、単一チャンバを収容する1つの調製部を含むカートリッジとして定義できる。同様に、
図7のカートリッジも、単一チャンバを収容する1つの調製部を含むカートリッジである。
【0105】
図8は、本発明の特定実施形態による、2つのチャンバから成る調製部を含むカートリッジを示している。第1のチャンバ801は、第1の開口301と結合された、圧迫可能なチャンバであり、最後のチャンバ802は、第2の開口305と結合された、圧迫可能であってもなくてもよいチャンバである。これら2つのチャンバは、封止材804で封止された接続チャネル803で接続されている。これら2つのチャンバは、それぞれが封止材に挟まれて密封されており、第1のチャンバ801は、その前に先行封止材306があり、最後のチャンバ802は、その後に後続封止材307がある。封止材804は、チャンバ801から見ると後続封止材であり、チャンバ802から見ると先行封止材である。
【0106】
図示された事例では、調製部の第1及び第2の開口が、それぞれ、カートリッジの第1及び第2の開口を構成している。しかしながら、このことは限定ではなく、別の実施形態(例えば、次の
図9で示される実施形態)では、調製部の第1及び第2の開口は、カートリッジの第1及び第2の開口とは別個のものであってよい。
【0107】
各チャンバには、それぞれの入力流体と、それぞれの出力流体とがあるが、第1の開口を通って第1のチャンバに投入される、第1のチャンバの入力流体は、試料流体である。第1のチャンバの内部では、この流体に作用する手順が実施される。この手順を「第1の手順」と称する。この手順は、混合を含む場合には、
図3を参照して説明されたように実施される。封止材804に適切な圧力をかけることにより、封止材804が破れて(
図3及び
図3に関連する説明を参照)、第1のチャンバから出力流体が放出され、これが最後のチャンバに搬送されることが可能である。第1のチャンバの出力流体は、従って、最後のチャンバの入力流体になる。
【0108】
この段階で考慮すべきこととして、封止材804が壊れやすい封止材である場合、封止材804が破れた後は、チャンバ801とチャンバ802の間の流路が開いたままになり、両方向の(即ち、801から802と、802から801との)流れが可能になる。従って、これら2つのチャンバは、実質的に、単一チャンバの2つのコンパートメントを形成する。従って、接続チャネル803において壊れやすい封止材を有する実施形態では、この封止材が破れた後、第1のチャンバ801の出力流体が、最後のチャンバの手順の作用を受けている間に、この2つのチャンバの間で行きつ戻りつする可能性がある。即ち、これら2つのチャンバは、最後のチャンバの2つのコンパートメントを形成する。
図7を参照して行われた説明は、この、2つのコンパートメント(801、802)から成る最後のチャンバにも当てはまりうる。
【0109】
これを理解した上で、注目されることとして、802及び801が実質的に単一チャンバを形成している為、この単一チャンバを第2の開口に接続しているチャネル、即ち、第2のチャネルは、「コンパートメント」801を、「コンパートメント」802ではなく第2の開口と結合することが可能である。
【0110】
しかしながら、封止材804が再封止可能であれば、チャンバ801の出力流体をチャンバ802に搬送した後にチャンバ802を再封止することが可能なので、
図3のチャンバ303を参照して説明したことがチャンバ802にも当てはまりうる。再封止可能な封止材の一例が、バルブである。更に、封止可能な封止材を使用する代わりに、特定実施形態では、再封止可能な接続チャネル803を有してよく、再封止は、例えば、接続チャネル803に圧力をかけて、流体がこの流路を流れないようにする物理的障害を設けることにより、実施可能である。
【0111】
最後のチャンバの内部では、「第2の手順」と称される手順を実施する。後続封止材307に対して適切な圧力をかけることにより、後続封止材307を破って、最後のチャンバから第2の開口305に向かって出力流体を放出させることが可能である。従って、最後のチャンバの出力流体は、調製部の出力流体となる。調製部の出力流体は、第2の開口305を通って分析コンパートメント203に流れ込み、そこで分析にかけられる。
【0112】
図3及び
図7を参照して
図8の実施形態を説明したが、当然のことながら、これらの実施形態は限定ではなく、調製部は、1つ、2つ、又は3つ以上のチャンバで構成されてよい。一般に、調製部は、それぞれが壊れやすい封止材に挟まれて密封され、直列接続されている1つ以上のチャンバで構成されてよい。各チャンバは、入力流体を受け、この流体に作用する手順を実施して出力流体を発生させ、この出力流体を放出するように構成されている。この1つ以上のチャンバのうちの第1のチャンバが第1の開口と結合されており、最後のチャンバが第2の開口と結合されている。第1のチャンバは圧迫可能チャンバであるが、調製部は、追加の圧迫可能チャンバを含んでよい。第1のチャンバの入力流体は、試料流体であり、その他のチャンバのそれぞれの入力流体は、それぞれの先行するチャンバの出力流体である。最後のチャンバの出力流体は、調製部の出力流体となり、分析にかけられる。
【0113】
なお、特定実施形態によれば、(例えば、2つのチャンバを含む)調製部においては、第1のチャンバに対して圧力をかけて、チャンバ間の封止材を破ることが可能である。或いは、第2のチャンバに対して圧力をかけて、この封止材を破ることも可能である。
【0114】
図8の調製がどのように動作するかについて説明したが、当然のことながら、他の実施形態では、調製部が、それぞれが封止材(即ち、先行封止材及び後続封止材)で挟まれて密封された3つ以上のチャンバを有してよい。先行封止材及び/又は後続封止材は、壊れやすいか、再封止可能であってよい。即ち、本発明の特定実施形態によれば、2つ以上のチャンバから成る系列が存在してよい。このひと続きに並べられたチャンバの中には、少なくとも、第1のチャンバと最後のチャンバとがあり、第1のチャンバは、第1のチャネルを介して第1の開口と結合されており(第1の開口から第1のチャンバに試料流体が投入され)、最後のチャンバは、第2のチャネルを介して第2の開口と結合されている。
【0115】
この系列における各チャンバが、ある手順を実施するように構成されている。従って、第1のチャンバが試料流体を取得した場合は、第1のチャンバに対する手順がこの試料流体に作用して、この試料流体の派生物を発生させることを理解されるであろう。この派生物は、試料流体又は試料流体に含まれる細胞において発生した変化を表している。発生する変化は、化学的変化、生化学的変化、又は物理的変化であってよい。化学的変化の例として、pHの変化、細胞成分の酸化/還元、又は化学物質(染料など)の、細胞成分との結合がある。生化学的変化の例として、抗体の、配位子との結合がある。一方、物理的変化の例として、粘弾性、温度、又は希釈液濃度の変化がある。別の見方をすれば、試料流体は、それ自体の派生物、即ち、試料流体の派生物と見なしてよい。従って、この手順は、入力として試料流体の派生物を取得し、その派生物の派生物である出力を発生させる。これを明確にする為に、これらの派生物に「名称」を与える。即ち、このチャンバは、試料流体の第1の派生物を取得し、この手順の結果(従って、チャンバの出力でもある)が、試料流体の第2の派生物である。
【0116】
第1のチャンバがどのように動作するかを踏まえると、当然のことながら、これは、この系列における他の全てのチャンバにも当てはまる。即ち、各チャンバは、試料流体の第1の派生物である入力流体を取得し、第1の派生物は、そのチャンバに対して作用する手順の入力となる。そして、この手順の結果は、試料流体の第2の派生物であり、この第2の派生物がチャンバの出力でもある。
【0117】
これらのチャンバは連続している為、各手順も連続している。即ち、この系列における特定の細胞の手順により発生した、試料流体の第2の派生物が、チャンバの出力となる。後続のチャンバが、先行するチャンバの出力である第2の派生物を取得し、ここでは(後続チャンバにおいては)、その第2の派生物は、後続チャンバの手順に対する入力である第1の派生物と見なされる。後続チャンバの手順の結果は、後続チャンバにおける、試料流体の第2の派生物となる。この第2の派生物は更に次のチャンバに搬送され、最後のチャンバまで続くチェーンが、試料流体の、それぞれのチャンバでの第2の派生物を第2の開口の方向に搬送する。
【0118】
連続する手順の一例が、細胞の免疫ラベリングである。第1のチャンバでは、一次抗体のラベリングが行われ、その後に、二次抗体の後続のラベリングが最後のチャンバにおいて行われる。別の例として、別々に貯蔵する必要がある2つの染色試薬を用いた、血液試料の白血球の分染がある。第1の試薬による染色の手順が第1のチャンバで実施され、その後、第2の試薬による染色が、後続の、おそらくは最後のチャンバで実施される。
【0119】
当然のことながら、本発明の実施形態によれば、この手順は、各チャンバの内部で実施され、各チャンバが、出力流体の調製における各段階を追加していき、全てが一緒になって、蓄積された連続的なプロセスになる。これは、手順が専用チャンバにおいて実施される場合と異なる。従って、流体と試薬との効率的且つ完全な混合が行われる。
【0120】
図9A及び9Bは、本発明の特定実施形態による、2つの調製部を含むカートリッジの2つの構成を示している。これらの調製部の一方は、相互接続された2つのコンパートメント701を収容する単一チャンバを含む。この調製部については、既に
図7を参照して説明した。他方の調製部は、2つのチャンバ801及び802を含み、これらのチャンバは、チャネル803によって接続されており、封止材804によって封止されている。この調製部については、既に
図8を参照して説明した。各調製部は、それぞれの第1の開口301と、それぞれの第2の開口305とを有する。両調製部の第1の開口は、カートリッジの第1の開口を構成する。
【0121】
図9A及び9Bに示された、2つのカートリッジ構成は、それらの構成に存在する、第2のカートリッジ開口の数が異なる。
図9Aに示されたカートリッジは、単一の第2のカートリッジ開口901を有し、カートリッジ開口901は、各調製部の第2の開口305とは別個である。
図9Bに示されたカートリッジは、調製部の第2の開口305が2つあって、これらが、この場合には、第2のカートリッジ開口にもなっている。
【0122】
記載の実施形態では、カートリッジの各調製部は、それぞれの搬送具により試料流体を投入するように構成されている。しかしながら、これは限定ではなく、特定実施形態では、カートリッジの各調製部は、単一搬送具から試料流体を投入するように構成されてよい。試料流体は、各調製部に同時に投入されてよく、或いは、逐次的に投入されてもよい。これについては、後で
図14を参照して詳述する。
【0123】
各調製部の出力流体は、別々のタイミングで分析コンパートメントに流れ込んでよく、且つ、別々の分析にかけられてよい。これについては、後で
図13B及び13Bを参照して詳述する。
【0124】
2つの調製部が並列に存在することにより、試料流体に作用する2つの独立した手順を別々に実施することが可能である。例えば、本発明の特定実施形態では、カートリッジは、全血球算定を行うように構成されている。カートリッジは、2つの調製部を並列に含み、一方の調製部は、分析対象の赤血球の調製を行うように構成されており、他方の調製部は、分析対象の白血球の調製を行うように構成されている(上述の手順については、後で
図13A及び13Bを参照して詳述する)。
【0125】
図9A及び9Bに示されたカートリッジは2つの調製部を含んでいるが、これは限定ではない。カートリッジを構成する調製部の数、並びに、各調製部を構成するチャンバの数、及び2つ以上のコンパートメントを収容するチャンバの数は、様々であってよい。これは、カートリッジの構成が、実施する所望の手順、及び/又は、特定の分析手順に応じた試料流体を調製する目的に合わせて行われる為である。
【0126】
図10は、本発明の特定実施形態による分析コンパートメントを概略的に示している。分析コンパートメントは分析導管1002を含み、分析導管1002は、1つ以上の調製部によって搬送された出力流体を受け取ることと、これを分析可能な形で第3のチャネル1004から提示することと、を行うように構成されており、第3のチャネル1004は、分析導管と結合されて、分析導管にある使い捨て出力流体を空にするように構成されている。分析導管及び第3のチャネルは、一緒になって分析部を構成する。廃棄される出力流体を保管するように構成された廃棄物容器1005が、第3のチャネル1004を介して分析部と結合されている。廃棄物容器1005は、第4のチャネル1006を介して真空ポンプ104とも結合されている。
【0127】
出力流体が、調製部から、第3の開口1001を介して、分析部に流れ込む。分析導管1002の内部では、出力流体が分析システム101に対して提示される。出力流体は、分析にかけられた後、第3のチャネル1004を介して廃棄物容器1005に廃棄され、そこで保管される。
【0128】
分析部内の出力流体の流れは、分析システム101の一部分であってよい真空ポンプ104から発生する吸引力によって駆動される。真空ポンプは、分析コンパートメントの第4の開口を介して分析部と結合可能であり、第4の開口は、第4のチャネル1006を介して、廃棄物容器1005の第5の開口1008と接続されている。廃棄物容器には吸引力がかかるが、保管されている出力流体は、廃棄物容器から流れ出さない。これは、廃棄部容器が、それ自体、既知の何らかの形の液体トラップとして設計されていなければならない為である。
図10では、第5の開口1008は、保管される出力流体の高さより上にあることにより、そのような液体トラップを概略的に表している。
【0129】
図10に示された、本発明の特定実施形態では、分析コンパートメントの分析導管が、出力流体に含まれる細胞を単一平面の形に並べるように構成されたマイクロチャネル1003であり、これによって、流れる細胞の画像をカメラ107で撮影すること、又は、血球計算器において行われるように、フォーカスされた光ビーム/レーザビームによりプロービングすることが可能になる。細胞を並べることは、粘弾性フォーカシングと呼ばれている方法で実施してよい。粘弾性フォーカシングについては、国際公開第2008/149365号パンフレット(発明の名称「粒子にフォーカスするシステム及び方法(Systems and Methods for Focusing Particles)」)に記載があり、粘弾性フォーカシング用に構成されたマイクロチャネルについては、国際公開第2010/013238号パンフレット(発明の名称「微小流体システム及びその製造方法(Microfluidic System and Method for Manufacturing the Same)」)に詳細な記載がある。そして、マイクロチャネルの透明又は半透明の面を通して、並べられた細胞に対する光学的分析が行われてよい。
【0130】
図11は、本発明の特定実施形態による、血中ヘモグロビン濃度を算定するように構成された代替分析コンパートメントを概略的に示している。このコンパートメントは、分析部も含んでおり、分析部は分析導管1002を含み、分析導管1002は、長く、断面が小さい第3のチャネル1103と結合された分析チャンバ1101で構成される。
【0131】
分析チャンバ1101は、粉末酸化剤及び/又は溶解剤を収容してよい。これらの薬剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、TritonX、又は別の、この事例に適した酸化剤/溶解剤であってよい。このチャンバが出力流体(この事例では、血液試料の派生物)で満たされている場合、酸化剤は溶解する。溶解した酸化剤は、血液試料の派生物のうちの赤血球を溶解してヘモグロビンを放出させる。放出されたヘモグロビンは、酸化剤によって酸化されてメトヘモグロビンになる(これは、結合酸素を放出することができない形式のヘモグロビンである)。次に、分光器を使用してメトヘモグロビンの濃度を測定する。これは、1つ以上の波長の吸収を測定することにより、行う。即ち、システム101の分析モジュール105(
図1を参照)は、この事例では、分光器を含む必要がある。
【0132】
特定実施形態によれば、粉末薬剤は、チャンバ1101の内部に自由に存在することが可能である。或いは、粉末薬剤で、チャンバ1101の内部表面をコーティングすることが可能である。薬剤と血液試料の派生物との間の接触面積を大きくする為に、特定実施形態によれば、チャンバの内部表面に、薬剤でコーティングされた突起群(柱状物群など)を設けてよい。或いは、同じ目的で、チャンバに充填する搬送具(スポンジなど)に粉末酸化剤を付着させてもよい。
【0133】
これを理解した上で、注意すべき点として、コーティングされた突起群を含むチャンバは、粉末酸化剤及び/又は溶解剤及び/又は血液試料に限定されない。粉末薬剤、或いは、他の形式の薬剤(ゲルなど)でコーティングされた突起群を有するチャンバを、分析コンパートメントの分析導管の内部の接触面積を大きくすることが有益であり得る、他の場合及び状況において使用してもよい。
【0134】
当業者であれば理解されるように、細胞の溶解、ヘモグロビンの酸化、及び吸収の測定の各プロセスは、それぞれの間に、ある最小限の時間間隔が必要である。従って、血液試料の派生物は、分析チャンバの内部で保持されなければならない。本発明の実施形態によれば、流れに対して大きな抵抗を与えて流れを減速させることにより、保持を達成することが可能である。そのような大きな抵抗を与える1つの方法は、断面が小さい、長い第3のチャネル1003を、分析チャンバ1101と結合させることである。チャネルが空の場合は、流れに対する抵抗が存在せず、従って、血液試料の派生物は、第3の開口を介して、自由に分析導管及び分析チャンバに流れ込む。しかしながら、第3のチャネルを血液試料の派生物で満たすと、抵抗が上昇し、流れがほぼ完全に停止することにつながる。
【0135】
図12は、本発明の特定実施形態による、2つの分析部を含む分析コンパートメントを概略的に示している。これらの分析部の一方は、
図10において示され、
図10を参照して説明された分析部のようなマイクロチャネル1003を含む。他方の分析部は、
図11において示され、
図11を参照して説明された分析部のような分析チャンバ1101を含む。そのような実施形態によれば、これら2つの分析部は、出力流体を取得する目的で、一方の側で第3の開口1001と結合されてよい。他方の側で、これらは、使い捨て流体を廃棄することが可能な廃棄物容器1005と結合されてよい。即ち、これら2つの分析部は、並列に結合されている。
【0136】
なお、分析コンパートメント内で分析部をこのように並列結合すると、出力流体に対する異なる2タイプの分析を並行して実施することが可能になる。例えば、
図12に示された分析コンパートメントを用いて、血液試料の派生物の細胞の計数とヘモグロビン濃度の測定とを実施してよい。注目に値するのは、これら2タイプの分析が、システム101(
図1を参照)の別々の分析モジュール105(例えば、カメラと分光器)を用いて実施されることである。
【0137】
図13A及び13Bは、本発明の特定実施形態による、調製コンパートメントと分析コンパートメントとから成るカートリッジを概略的に示している。
【0138】
図2を参照して既に述べてきたように、実施形態によっては、カートリッジ201と結合された分析コンパートメント203は、カートリッジ201の一部分ではなく、他の実施態様によっては、分析コンパートメント203は、カートリッジの一部分と見なされてよい。そのような実施形態によれば、201は「調製コンパートメント」に関連し、カートリッジ204は、調製コンパートメント201及び分析コンパートメント203から成るものであってよい。その為に、且つ、わかりやすさを考慮して、
図13A及び13Bを、カートリッジ204が調製コンパートメント201及び分析コンパートメント203を有するものとして提示し、説明する。しかしながら、これは限定ではなく、この説明は、201がカートリッジである他の構成にも当てはまる。
【0139】
図13A及び13Bは、カートリッジ204の、異なる2つの実施形態を示している。最初に、両構成に共通の特徴を説明し、次に、両構成間の相違点を説明する。
【0140】
カートリッジ204の調製コンパートメント201については、既に
図9A及び9Bを参照して詳述した。
図13A及び13Bに示された例では、調製コンパートメントは、2つの調製部(第1の調製部及び第2の調製部)を含む。第1の調製部は、相互接続された2つのコンパートメント701を収容する単一チャンバを含む。これについては、既に
図7を参照して詳述した。第2の調製部は、2つのチャンバ801及び802を含む。これについては、既に
図8を参照して詳述した。
【0141】
カートリッジ204の分析コンパートメント203については、既に
図12を参照して詳述した。この分析コンパートメントは、2つの分析部を収容する。これらの分析部の一方は、マイクロチャネル1003を含み、出力流体に含まれる細胞を単一平面の形に並べるように構成されており、これによって、流れる細胞の画像をカメラで撮影すること、又は、血球計算器において行われるように、フォーカスされた光ビーム/レーザビームによりプロービングすることが可能になる。この分析部については、既に
図10を参照して詳述した。他方の分析部は、長く、断面が小さい第3のチャネル1004と結合された分析チャンバ1101を含み、(例えば、分光器を用いて)ヘモグロビン濃度を測定するように構成されている。この分析部については、既に
図11を参照して詳述した。
【0142】
分析の為に調製された出力流体を調製コンパートメントから分析コンパートメントへ流すことを可能にする為に、これら2つのコンパートメントは、分析コンパートメントの第3の開口と調製コンパートメントの第2の開口とが結合されることによって相互接続されている。
図9A及び9Bに示された、カートリッジの2つの構成は、調製コンパートメントの第2の開口の数及び位置がそれぞれ異なり、且つ、これに対応して、第2の開口と結合される、分析コンパートメントの第3の開口の数及び位置がそれぞれ異なる。従って、
図13Aに示されたカートリッジでは、調製コンパートメント201の単一の第2の開口901が、両調製部の第2の開口305と接続されている。調製部の単一の第2の開口901は、分析コンパートメントの単一の第3の開口1001と結合されている。これに対し、
図13Bに示されたカートリッジでは、両調製部の第2の開口305が、調製部の第2の開口をも形成しており、これらは、分析コンパートメントの2つの第3の開口1001にそれぞれ直結されている。
【0143】
本発明の特定実施形態によれば、カートリッジ204は、血球計数の実施を可能にするように構成されており、このカートリッジに投入される試料流体は、血液試料である。カートリッジによって実施される血球計数は、試料中に存在する赤血球、白血球(総数計数)、及び血小板の数の算定、並びに、白血球の類型ごとの数の算定(差分計数)を含んでよい。白血球の類型は、好中球、リンパ球、好酸球、単核細胞又はその一部などであってよい。当業者であれば理解されるように、白血球は、他にも類型及び亜類型がある為、本発明は、言及した類型に限定されない。更に、本発明は、言及した血球に限定されず、血液内を循環する(例えば、循環腫瘍細胞、血小板凝集物などを含む)あらゆる類型の細胞に当てはまりうる。
【0144】
次に、分析対象の血液試料を調製するプロセスを詳細に説明する。ここでの分析は、血球計数である。
【0145】
本発明の記載の実施形態では、細胞の計数は、流れる細胞の画像をカメラで撮影すること、又は、血球計算器において行われるように、フォーカスされた光ビーム/レーザビームによりプロービングすることによって実施可能である。確実な計数を可能にする為には、細胞を、光学系の合焦場所に投入しなければならない。従って、細胞を、(例えば、粘弾性フォーカシングによって)単一平面の形に並べなければならない。この方法は、特定の粘弾性を有するフォーカシング媒体の中で細胞を懸濁させ、この媒体中の懸濁細胞を特定形状のマイクロチャネルに流して、それらを単一平面の形に並べることに基づく。従って、カートリッジ204の調製コンパートメント201で実施される、計数対象の試料流体の調製は、フォーカシング媒体を試料流体に加えて、試料流体の派生物を生成することを含む。しかしながら、これは限定ではなく、別の実施形態では、他の方法を用いて細胞を並べてよく、カートリッジの調製部で実施される、計数対象の試料流体の調製は、様々な手順を含んでよい。
【0146】
第1の調製部は、血液試料中に存在する赤血球、白血球(総数計数)、及び血小板の数を算定する、その血液試料を調製するように構成されている。チャンバ701に収容される物質は、フォーカシング媒体に界面活性剤を加えたものから成る。フォーカシング媒体は、可溶性の高分子量ポリマーを含有する緩衝剤から成る。この緩衝剤は、生体細胞の管理に好適な任意のアイソトニック緩衝剤であってよく、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)であってよい。血液試料に粘弾性を与えることに適した可溶性ポリマーの例として、ポリアクリルアミド(PAA)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコールなどがある。フォーカシング媒体に加える界面活性剤は、球状化剤として働く。即ち、これらの界面活性剤は、赤血球の形状を、両凹形円板から球体に変化させて、細胞のよりよい画像が得られるようにする。界面活性剤の例として、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)やDDAPS(ドデシルジメチルアンモニオプロパンスルホン酸)がある。フォーカシング媒体の組成は、例えば、国際公開第2008/149365号パンフレット(発明の名称「粒子にフォーカスするシステム及び方法(Systems and Methods for Focusing Particles)」)に開示されている。
【0147】
チャンバ701で実施される手順は、送達された血液試料とフォーカシング媒体とを混合することである。混合が完了すると、後続封止材305が圧力によって破れ、生成された出力流体が分析コンパートメントに流れ込むことが可能になる。
【0148】
第2の調製部は、白血球の各類型の差分計数の対象となる血液試料を調製するように構成されている。本発明の特定実施形態では、この調製は、細胞の化学染色を含み、連続する2つの染色手順を調製部のチャンバ801及び802で実施する。
【0149】
チャンバ801に収容される物質は、フォーカシング媒体に溶かした細胞染色試薬を含んでよい。細胞染色試薬の例として、Phloxine B、Biebrich Scarlet、及びBasic Orange 21がある。場合により、細胞の固定が必要になる可能性がある為、固定試薬(例えば、ホルムアルデヒドやホルマリン)も含有されてよい。血液試料とそれらの物質とを混合することに続いて、染色を可能にする為に、インキュベーションを実施してよい。所定のインキュベーション時間が終了すると、チャンバ801とチャンバ802とを隔てていた封止材804が圧力によって破れ、生成された出力流体がチャンバ802に向かって放出される。
【0150】
チャンバ802に収容される物質は、フォーカシング媒体に溶かした別の細胞染色試薬を含んでよい。細胞染色試薬の例として、Methyl Green、Methylene Blue、及びBorrel’s Blueがある。(チャンバ801の出力流体を構成する)入力流体と物質との混合に続いて、第2の染色プロセスが可能になるように、第2のインキュベーションを実施してよい。第2の所定のインキュベーション時間が終了すると、第2の調製部の後続封止材307が圧力で破れ、生成された出力流体が分析コンパートメントに流れ込むことが可能になる。
【0151】
本発明の他の実施形態では、分析対象の細胞の調製は、細胞の、免疫ベースの染色を含む。これらの実施形態では、調製部の一方又は両方のチャンバが免疫染色に適した試薬を収容しているが、この試薬とフォーカシング媒体とは、単一チャンバに収容されても、別々のチャンバに収容されてもよい。免疫染色に適した試薬の例として、様々な色の、抗体コーティングされたマイクロビーズ(CD14/CD15や染料の組み合わせなど)がある。
【0152】
次に、調製部の出力流体を分析の為に提示するプロセスを詳細に説明する。ここでの分析は、血球計数である。
【0153】
両調製部の第2の開口305から流れ出す出力流体は、両分析部の分析導管と結合された単一チャネルに搬送される。この出力流体の分析は、順次的に実施される。この順次的な分析は、2つの出力流体を時間的に分離することによって可能になり、分離は調製コンパートメント内で制御される。上述したように、第1の調製部で実施される調製プロセスは、単一チャンバ内での、インキュベーションなしの混合を含み、一方、第2の調製部で実施される調製プロセスは、別々の2つのチャンバ内での混合に加えて、インキュベーション時間を必要とする可能性がある2つの染色手順を含む。従って、第1の調製部の出力流体が分析コンパートメントに流れ込むのが可能になるのは、第2の調製部の出力流体が分析コンパートメントに流れ込むのが可能になるより先である。
【0154】
第1の調製部の出力流体は、分析コンパートメント203に流れ込むと、図示された2つの分析部に分けられる。流体の一部はマイクロチャネル1003に入り、そこでは、出力流体中の細胞が、
図10を参照して説明されたように単一平面の形に並べられる。そして、マイクロチャネルの透明又は半透明の面を通して、並べられた細胞に対する光学的分析が行われてよい。その後、出力流体は、廃棄物容器1003に流れ込み、そこで保管される。
【0155】
出力流体の残り分は、分析チャンバ1101に入り、そこでは、出力流体中の細胞が溶解し、それらのヘモグロビン含有量が、
図11を参照して説明されたように定量化される。
【0156】
分析を妨げる出力流体の混合を阻止する為には、第2の調製部の後続封止材307が破れる前に、第1の調製部の出力流体が分析コンパートメントに流れ込むのを中止させなければならない。これが可能なのは、第1の調製部の第2のチャネル304が再封止可能である為である。このチャネルの再封止は、例えば、後続封止材、又は第2のチャネルの別の場所にかけられた圧力によって実施されてよい。
【0157】
チャンバ1101と結合された、長く、断面が小さい第3のチャネル1103は、チャンバでの流れに対する抵抗を大きくする。従って、第2の調製部の後続封止材307が破れると、ほぼ全ての出力流体が分析コンパートメントに流れ込んで、マイクロチャネル1003に搬送されることになり、2つの分析部に分割されない。マイクロチャネル1003の内部では、第2の調製部の出力流体中の細胞が、単一平面の形に並べられて、光学的分析が可能になる。その後、出力流体は、廃棄物容器に流れ込み、そこで保管される。
【0158】
更に、
図10〜13Bでは、廃棄物容器1005は、分析コンパートメント203内にあるように示されている。しかしながら、このことは必須条件ではない。既に
図2を参照して説明したように、分析コンパートメント203は、カートリッジ内部のギャップ(又は窓)内に位置してよい。そのような実施形態では、カートリッジは、廃棄物容器を含んでよく、そのような実施形態では、第3のチャネル1004内の開口が、分析モジュール内の第3のチャネルと、カートリッジ内の廃棄物容器(又は廃棄物容器につながるチャネル)とのインタフェースとして使用される。
【0159】
本発明の特定実施形態によるカートリッジの構造及び機能性が理解されたところで、次に、試料採取器について説明する。
図14A、14B、及び14Cは、本発明の特定実施形態による試料採取器を概略的に示している。試料採取器1400が、流体試料の採取、及び採取した試料の、カートリッジ204への投入を行うように構成されている。
図14Aに示された試料採取器は、ハンドル1402に取り付けられた搬送具1401を含む。ここに記載された非限定的な実施形態では、搬送具は毛細管である。この毛細管の内部には、毛細管出口から所定の距離をおいて、疎水性メンブレン1404が取り付けられる。毛細管1401は、内部に疎水性メンブレンが取り付けられていて、本事例に適した任意のタイプの毛細管であってよく、例えば、DRUMMOND製の毛細管であるAqua−Cap(商標)Microdispenserであってよい。
【0160】
しかしながら、疎水性メンブレン1404は本発明を限定するものではなく、毛細管内の試料流体の量の精度を確保する為に他の機構を用いてもよい。例えば、体積が正確な所望の体積である、より短い毛細管を使用することが可能である。或いは、メンブレンの代わりに、オリフィスなどの、別の締め付けエレメントを使用することが可能である。
【0161】
流体の試料採取は、毛細管1401の出口を流体に浸すことによって行われる。当業者であれば理解されるように、流体は、毛細管力によって毛細管内まで駆動される。毛細管1401の内部に取り付けられた疎水性メンブレン1404は、本プロセスには干渉しない。これは、内部に入ってきた流体によって押しのけられた空気が、疎水性メンブレン1404によって流れ出ることが可能になる為である。この流体は、疎水性メンブレンに達するまで毛細管に充填される。当然のことながら、メンブレン1404の疎水性により、流体は、メンブレン1404とは接触しない。従って、メンブレンには試料流体は吸収されない。言い換えると、メンブレンがあることにより、流体の量は減らない。従って、試料採取された流体の最終的な量は、毛細管出口から疎水性メンブレン1404までの距離と、毛細管の直径とによって決定される。
【0162】
試料採取された流体は、毛細管1401をカートリッジ204の第1の開口301に挿入することにより、カートリッジ204に送達され、投入される。この段階では、毛細管からチャンバ303内に漏れる試料流体は、ほんの限られた量であり、これは、流体が内部において毛細管力によって保持されている為である。次に、プランジャ1405を用いて、試料採取された血液を毛細管からチャンバ303内に押し出す。プランジャ1405は、
図14Bに示されており、保持部材1407に取り付けられたプランジ部材1406を含む。プランジ部材1406は、ハンドル1402内にある毛細管入口1403から毛細管1401に挿入されるように構成されている。プランジャは、疎水性メンブレン1404を、毛細管出口に達するまで押す。これにより、任意選択で、全ての試料流体がチャンバ303内に送達されることになる。しかしながら、プランジ部材1406が、毛細管出口に達するほど長くはない場合には、ある分量の流体が毛細管内に残る。従って、チャンバ内に送達される試料流体の量は、プランジャ1405のプランジ部材1406の長さによって決定される。毛細管の直径はあらかじめ知られており、毛細管の長さ、並びにプランジャの長さもあらかじめ知られている。従って、試料採取器によって移送可能な流体の量は、あらかじめ決めておくことが可能である。
【0163】
当然のことながら、上述の試料採取及びプランジの機構は、固定量の試料流体をチャンバに送達することを可能にする。固定量の流体を送達できることは、非常に重要である。これは、送達される量に偏りがあると、逐次分析の信頼性に悪影響を及ぼす可能性がある為である。更に、搬送具(本事例では毛細管)から血液を洗い流すことは不要である。これは、他の応用にも当てはまることであるが、疎水性メンブレンが全ての血液を完全に第1のチャンバに投入する為である。
【0164】
特定実施形態を参照すると、プランジャ1405は、分析システム101の一部分であり、分析システム101のカートリッジ保持部103の内側にカートリッジ204を置いたときに、プランジャがカートリッジ204に挿入される。しかしながら、別の実施形態では、プランジャは、別個の装置を構成していてよく、カートリッジがカートリッジ保持部103内に置かれる前に、プランジャがカートリッジに挿入されてよい。
【0165】
図14Cに示された別の実施形態では、試料採取器は、2つの搬送具1401から成り、これらの搬送具による流体の試料採取が順次的に行われる。しかしながら、これは限定ではなく、搬送具による流体の試料採取が同時に行われる実施形態も存在してよい。
【0166】
血液を試料採取して、血球計数の実施を可能にするように構成されたカートリッジ(例えば、
図13を参照して上述されたカートリッジ)に送達する場合には、2つの搬送具を含む試料採取器(例えば、
図14Cに示された試料採取器)を使用してよい。場合によっては、試料採取器の2つの搬送具は、疎水性メンブレンを有し、抗凝血剤がコーティングされた毛細管を含んでよい。毛細管にコーティングされる抗凝血剤は、試料採取された血液が凝固するのを防ぐように働く。抗凝血剤の一例として、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)がある。
【0167】
当然のことながら、試料採取器1400の各搬送具1401で試料採取されてカートリッジ204内に送達される流体の量は、20μlほどの少量であってよく、場合によっては、更に少量でもよい。従って、試料採取器1400、カートリッジ204、及び分析システム101を用いて血球計数を行う場合には、1滴程度の少量の血液を個体から取得することが必要である。そのような少量の血液の取得は、例えば、家庭用血糖監視装置によって行われるように指先又は前腕に針を刺すことにより可能な為、患者(特に子供)にとってあまり都合がよくない、静脈からの採血をなしですますことが可能になる。