特許第6116503号(P6116503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6116503-炭素繊維用サイジング剤及びその用途 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116503
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】炭素繊維用サイジング剤及びその用途
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/53 20060101AFI20170410BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20170410BHJP
   D06M 15/285 20060101ALI20170410BHJP
   C08J 5/06 20060101ALI20170410BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20170410BHJP
   C08K 9/08 20060101ALI20170410BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20170410BHJP
【FI】
   D06M15/53
   D06M15/263
   D06M15/285
   C08J5/06CER
   C08J5/06CEZ
   C08L101/00
   C08K9/08
   D06M101:40
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-40428(P2014-40428)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-165055(P2015-165055A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2016年2月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菊田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】中山 武圭
(72)【発明者】
【氏名】中川 幹生
【審査官】 馳平 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−070625(JP,A)
【文献】 特開平10−266076(JP,A)
【文献】 特開平10−131052(JP,A)
【文献】 特開2002−173873(JP,A)
【文献】 特開2009−001954(JP,A)
【文献】 特表2010−538176(JP,A)
【文献】 特開2001−019496(JP,A)
【文献】 特開2004−315345(JP,A)
【文献】 特開2002−317384(JP,A)
【文献】 特開平02−006626(JP,A)
【文献】 特開昭64−085370(JP,A)
【文献】 特開昭63−069737(JP,A)
【文献】 特開昭59−066518(JP,A)
【文献】 特開2014−043509(JP,A)
【文献】 長野 浩一 他,ポバール,日本,株式会社高分子刊行会,1970年 6月10日,第98頁〜第99頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00〜15/715
B29B 11/16,15/08〜15/14
C08J 5/04〜5/10,5/24
C03C 25/00〜25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体及びエチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種であって、粘度平均分子量が50万〜1000万であり、かつ下記の粘度特性(2)を満足する水溶性高分子(A)を含有し、
熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、前記水溶性高分子(A)を除く樹脂成分(B)をさらに含有し、
前記樹脂成分(B)100重量部に対する前記水溶性高分子(A)の割合が0.01〜16重量部である、
炭素繊維用サイジング剤。
粘度特性(2):0.5重量%水溶液の粘度(25℃)が10〜2000mPa・s
【請求項2】
サイジング剤の不揮発分に占める前記水溶性子高分子(A)の重量割合が0.01〜20重量%である、請求項1に記載の炭素繊維用サイジング剤。
【請求項3】
サイジング剤の不揮発分に占める前記樹脂成分(B)の重量割合が50〜99.9重量%である、請求項1又は2に記載の炭素繊維用サイジング剤。
【請求項4】
原料炭素繊維ストランドに対して、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維用サイジング剤を付着させた、炭素繊維ストランド。
【請求項5】
原料炭素繊維ストランドに対して、
ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドとの共重合体及びエチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種であって、粘度平均分子量が50万〜1000万であり、かつ下記の粘度特性(2)を満足する水溶性高分子(A)と、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、前記水溶性高分子(A)を除く樹脂成分(B)とを、
前記樹脂成分(B)100重量部に対して前記水溶性高分子(A)を0.01〜16重量部の割合で付着させた、炭素繊維ストランド。
粘度特性(2):0.5重量%水溶液の粘度(25℃)が10〜2000mPa・s
【請求項6】
マトリックス樹脂と、請求項4又は5に記載の炭素繊維ストランドとを含む、繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維用サイジング剤及びその用途に関する。詳細には、マトリックス樹脂を補強するために用いられる強化繊維用サイジング剤、これを用いた強化繊維ストランド及び繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用途、航空・宇宙用途、スポーツ・レジャー用途、一般産業用途等に、プラスチック材料(マトリックス樹脂と称される)を各種合成繊維で補強した繊維強化複合材料が幅広く利用されている。これらの複合材料に使用される繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などの各種無機繊維、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維などの各種有機繊維が挙げられる。これら各種合成繊維は通常、フィラメント形状で製造され、その後ホットメルト法やドラムワインディング法等により一方向プリプレグと呼ばれるシート状の中間材料に加工されたり、フィラメントワインディング法によって加工されたり、場合によっては織物又はチョップドファイバー形状に加工されたりする等、各種高次加工工程を経て、強化繊維として使用されている。
【0003】
一方、近年においては、補強剤として用いる繊維の引張強度などの特性をより効果的に得るため、長繊維ペレットと呼ばれる形態や、繊維を一方向シートやテープ状、織物の状態でマトリックス樹脂を含浸させて成型するケースも増加している。このような場合には、マトリックス樹脂が速やかに繊維ストランド内部、具体的に繊維−繊維間に含浸することが、成型工程時間の短縮化、得られた複合材料の物性向上の面で重要である。
【0004】
しかしながら、繊維−繊維間にマトリックス樹脂を均一に含浸させることは極めて難しい。そこで、そのような問題の対策として採られている措置は、強化繊維ストランドを薄い一定の幅のシート状に拡幅して、マトリックス樹脂が繊維−繊維間の微小隙間に浸透し易くしようとするものである。
従来の強化繊維ストランドの拡幅は、給糸体から強化繊維ストランドを解舒し、これを捲取管に捲き取る工程中で施されている。例えば、特許文献1には、強化繊維ストランドの交差方向に気流を通過させて強化繊維ストランドを構成するストランドを幅方向に拡幅する方法が開示されている。しかし、当該方法は非常に高価な装置が必要になり、さらには工程数が増えることからコストアップに繋がる問題があり、より簡便に拡幅できる技術が切望されている。
【0005】
また、従来のサイジング剤においては、集束性に優れ良好な加工性を有する点で有利であるものの、上記特許文献1の方法では、造膜性が高い為、気流を通過させても著しく拡幅性に劣ることがあった。
【0006】
よって、繊維強化複合材料の分野において、強化繊維ストランドをより簡便に拡幅させること(以下、拡幅性ということがある)で、繊維−繊維間にマトリックス樹脂を一様に均一に含浸させることができるサイジング剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】再公表特許WO97/41285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かかる従来の技術背景に鑑み、本発明の目的は、マトリックス樹脂を補強するために用いられる強化繊維ストランドに付着させることにより、強化繊維ストランドを簡便に拡幅させることができる強化繊維用サイジング剤、それを用いた強化繊維ストランド及び繊維強化複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の水溶性高分子(A)を含有するサイジング剤を用いることにより、強化繊維ストランドの拡幅性を飛躍的に向上させることができることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明の強化繊維用サイジング剤は、粘度平均分子量が5万〜1000万である水溶性高分子(A)を含有するものである。
【0011】
前記水溶性高分子(A)が、下記の粘度特性(1)と粘度特性(2)のうちの少なくとも一方を満足するものであることが好ましい。
粘度特性(1):5重量%水溶液の粘度(25℃)が50〜10000mPa・s
粘度特性(2):0.5重量%水溶液の粘度(25℃)が10〜2000mPa・s
【0012】
サイジング剤の不揮発分に占める前記水溶性子高分子(A)の重量割合は、0.01〜20重量%であることが好ましい。
前記水溶性高分子(A)は、前記粘度特性(2)を満足するものであること、つまり前記水溶性高分子(A)の0.5重量%水溶液の粘度(25℃)が10〜2000mPa・sであることが好ましい。
【0013】
本発明のサイジング剤は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、前記水溶性高分子(A)を除く樹脂成分(B)をさらに含有することが好ましい。
サイジング剤の不揮発分に占める前記樹脂成分(B)の重量割合は、50〜99.9重量%であることが好ましい。
【0014】
本発明の強化繊維ストランドは、原料強化繊維ストランドに対して、上記の強化繊維用サイジング剤を付着させたものである。
また、本発明の強化繊維ストランドは、原料強化繊維ストランドに対して、粘度平均分子量が5万〜1000万である水溶性高分子(A)を付着させたものである。
【0015】
本発明の繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂と、上記の強化繊維ストランドとを含むものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の強化繊維用サイジング剤を強化繊維ストランドに付着させることにより、強化繊維ストランドを簡便に拡幅させることができる。本発明の強化繊維ストランドは、簡便に拡幅できる。
本発明の強化繊維ストランドを用いることにより、マトリックス樹脂をストランド内部に効率良く含浸させることができ、優れた物性を有する繊維強化複合材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】拡幅性を比較説明する写真。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、強化繊維ストランドを簡便に拡幅させることができる強化繊維用サイジング剤であって、特定の水溶性高分子(A)を必須に含有するものである。以下、詳細に説明する。
【0019】
[水溶性高分子(A)]
本発明のサイジング剤の必須成分である水溶性高分子(A)は、その粘度平均分子量が5万〜1000万である。このような特定の水溶性高分子(A)を用いることにより、強化繊維ストランドの拡幅性を飛躍的に向上させることができる。ここで、水溶性とは、水媒体に対し0.5質量%以上溶解することをいう。
【0020】
水溶性高分子(A)の粘度平均分子量は、50万〜800万がより好ましく、100万〜500万がさらに好ましく、200万〜400万が特に好ましい。該粘度平均分子量が5万未満の場合、強化繊維ストランドを簡便に拡幅させることができない。該粘度平均分子量が1000万超の場合、強化繊維ストランドを簡便に拡幅させることはできても、高い造膜性のため強化繊維ストランドの風合いが硬くなり過ぎ、ボビン状に固く巻いて製品パッケージにし難くなる。その結果、製品パッケージの輸送時にパッケージの強化繊維ストランドが巻き崩れる等の問題が起きやすくなる。ここで、簡便に拡幅できるとは、サイジング剤未処理強化繊維ストランドを調製したサイジング剤にDip Nip法等により浸漬・含浸させることのみで、強化繊維ストランドが繊維方向から直角方向に均一に拡がることをいう。なお、本発明でいう粘度平均分子量は、ASTM D2857、D4020に準拠して測定した値をいう。
【0021】
水溶性高分子(A)は、優れた拡幅性を強化繊維ストランドに付与できることから、上記の粘度特性(1)と粘度特性(2)のうちの少なくとも一方を満足することが好ましい。粘度特性(1)とは、水溶性高分子(A)を水に溶解させて5重量%水溶液としたときの25℃における粘度をいう。粘度特性(2)とは、水溶性高分子(A)を水に溶解させて0.5重量%水溶液としたときの25℃における粘度をいう。なお、本発明でいう粘度は、回転式粘度計(ブルックフィールド社製)により、LV−1〜4スピンドルを用いて、25℃で回転数12rpm、測定時間1分の条件で測定したものをいう。
【0022】
粘度特性(1)の粘度は、50〜10000mPa・sが好ましく、200〜10000mPa・sがより好ましく、2000〜10000mPa・sがさらに好ましい。さらに優れた拡幅性を強化繊維ストランドに付与できることから、水溶性高分子(A)は、粘度特性(2)を満足することが好ましい。粘度特性(2)の粘度は、10〜2000mPa・sが好ましく、100〜1000mPa・sがより好ましく、100〜800mPa・sがさらに好ましい。
【0023】
水溶性高分子(A)としては、例えば、粘度平均分子量が5万〜1000万である水溶性の合成高分子、半合成高分子、天然高分子等を挙げることができる。水溶性の合成高分子としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体等を挙げることができる。水溶性の半合成高分子としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、アルギン酸プロピレングリコールエステル等を挙げることができる。水溶性の天然高分子としては、例えば、ゼラチン、カラギーナン、グアーガム、クインスシード、キサンタンガム、プルラン、コラーゲン、アラビアガム、マンナン、デンプン、デキストラン、カゼイン、アルブミン、ヒアルロン酸等を挙げることができる。
【0024】
これらの中でも、さらに優れた拡幅性を強化繊維ストランドに付与できることから、水溶性高分子(A)としては、粘度平均分子量が5万〜1000万である水溶性の合成高分子が好ましく、粘度平均分子量が5万〜1000万であって、ポリエチレンオキサイド、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びエチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体から選ばれる少なくともと1種であることがより好ましく、粘度平均分子量が5万〜1000万であって、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリルアミド及びエチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体から選ばれる少なくともと1種であることがさらに好ましく、粘度平均分子量が5万〜1000万であって、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド及びエチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体であることが特に好ましく、粘度平均分子量が5万〜1000万であって、ポリエチレンオキサイド及びポリアクリル酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種であることが最も好ましい。
【0025】
[樹脂成分(B)]
前述の水溶性高分子(A)は、主に強化繊維ストランドに対して拡幅性を付与する成分である。本発明のサイジング剤は、強化繊維ストランドに対して、集束性を付与できる樹脂成分(B)をさらに含有することが好ましい。樹脂成分(B)は、集束性を付与できる成分であれば特に限定はなく、強化繊維用サイジング剤において、従来から使用されている樹脂成分を適宜選択して使用することができる。樹脂成分(B)としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、前記水溶性高分子(A)を除くものを挙げることができる。
【0026】
樹脂成分(B)の重量平均分子量は、20000以下が好ましく、100〜15000がより好ましく、200〜10000がさらに好ましい。該重量平均分子量が20000超の場合、強化繊維ストランドに対して集束性を付与できても、重量平均分子量が大きい為強化繊維ストランドの風合いが硬くなり過ぎ、ボビン状に固く巻いて製品パッケージにし難くなる。その結果、製品パッケージの輸送時にパッケージの強化繊維ストランドが巻き崩れる等の問題が起きやすくなるおそれがある。
なお、本発明でいう重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定方法により、下記の測定条件で測定してポリスチレン換算した値をいう。
(GPC測定条件)
装置:装置名「HPLC LC−6A SYSTEM」(SHIMAZU社製)
カラム:「KF−800P(10mm×4.6mmφ)」、「KF−804(300mm×8mmφ)」、「KF−802.5(300mm×8mmφ)」、「KF−801(300mm×8mmφ)」(以上、SHODEX社製)
移動相:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
サンプル量:100μl(100倍希釈)
カラム温度:50℃
検量線作成標準物質:ポリスチレン(PSt)
【0027】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等を挙げることができる。
【0028】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
ここで、ビスフェノール型エポキシ樹脂とは、ビスフェノール化合物の2つのフェノール性水酸基がグリシジル化されたものであり、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、もしくはこれらビスフェノールのハロゲン、アルキル置換体、水添品等を挙げることができる。また、単量体に限らず、複数の繰り返し単位を有する高分子量体も好適に使用することができる。
アミン型エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシリレンジアミンや、これらのハロゲン、アルキノール置換体、水添品等を挙げることができる。
【0029】
不飽和ポリエステル樹脂としては、α,β−不飽和ジカルボン酸を含む酸成分とアルコールとを反応させて得られる不飽和ポリエステルを挙げることができる。α,β−不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等及びこれらの酸無水物等の誘導体等を挙げることができ、これらは2種以上を併用してもよい。また、必要に応じてα,β−不飽和ジカルボン酸以外の酸成分としてフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の飽和ジカルボン酸及びこれらの酸無水物等の誘導体をα,β−不飽和ジカルボン酸と併用してもよい。アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族グリコール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド(1〜100モル)付加物、キシレングリコール等の芳香族ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等を挙げることができ、これらの2種以上を併用してもよい。
不飽和ポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、フマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下、EOと略す)付加物との縮合物、フマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、POと略す。)付加物との縮合物、フマル酸又はマレイン酸とビスフェノールAのEO及びPO付加物(EO及びPOの付加は、ランダムでもブロックでもよい)との縮合物等を挙げることができる。
【0030】
ビニルエステル樹脂としては、例えば、前記エポキシ樹脂とα,β−不飽和モノカルボン酸とをエステル化させることで得られるエポキシ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。α,β−不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸及び桂皮酸等を挙げることができ、これらの2種以上を併用してもよい。ビニルエステル樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(メタ)アクリレート変性物(ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ基と(メタ)アクリル酸のカルボキシル基とが反応して得られる末端(メタ)アクリレート変性樹脂等)等を挙げることができる。
【0031】
ベンゾオキサジン樹脂としては、例えば、o−クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、m−クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、p−クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−メチルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−シクロヘキシルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−m−トルイジン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−3,5−ジメチルアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA−アミン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールS−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジフェニルスルホン−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジフェニルエーテル−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾフェノン型ベンゾオキサジン樹脂、ビフェニル型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールAF−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA−メチルアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−ジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、トリフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂等を挙げることができる。
【0032】
フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、カシュー油、リグニン、レゾルシン、カテコール等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類との縮合により得られる樹脂を挙げることができ、ノボラック樹脂やレゾール樹脂等を挙げることができる。ノボラック樹脂は、シュウ酸等の酸触媒存在下で、フェノールとホルムアルデヒドとを同量又はフェノール過剰の条件で反応させることで得られる。レゾール樹脂は、水酸化ナトリウム、アンモニア又は有機アミン等の塩基触媒の存在下で、フェノールとホルムアルデヒドとを同量又はホルムアルデヒド過剰の条件で反応させることにより得られる。
【0033】
尿素樹脂としては、例えば、尿素とホルムアルデヒドとの縮合によって得られる樹脂等を挙げることができる。
メラミン樹脂としては、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合により得られる樹脂等を挙げることができる。
【0034】
熱硬化性ポリイミド樹脂としては、例えば、少なくとも主構造にイミド環を含み、かつ末端又は主鎖内に、フェニルエチニル基、ナジイミド基、マレイミド基及びアセチレン基から選ばれる少なくとも一つを含む樹脂等を挙げることができる。
【0035】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ハロゲン含有樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0036】
ポリウレタン系樹脂は、ジイソシアネート類とポリオール類と必要により鎖伸長剤との反応により得ることができる。ジイソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート類等を挙げることができる。ジイソシアネート類としては、アルキル基(例えば、メチル基)が主鎖又は環に置換した化合物を使用してもよい。
ジオール類としては、例えば、ポリエステルジオール(アジピン酸等のC4−12脂肪族ジカルボン酸成分、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等のC2−12脂肪族ジオール成分、ε−カプロラクトン等のC4−12ラクトン成分等から得られるポリエステルジオール等)、ポリエーテルジオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体等)、ポリエステルエーテルジオール(ジオール成分の一部として上記ポリエーテルジオールを用いたポリエステルジオール)等を挙げることができる。
さらに、鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのC2−10アルキレンジオールの他、ジアミン類等を挙げることができる。ジアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタンなどの炭素数2〜10程度の直鎖又は分岐鎖状アルキレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミンなどの直鎖又は分岐鎖状ポリアルキレンポリアミン等の脂肪族ジアミン類;イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジアミン類;フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン類;等を挙げることができる。
【0037】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(メチルペンテン−1)などのオレフィンの単独又は共重合体、オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)等を挙げることができる。これらのポリオレフィン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ポリオレフィン系樹脂には、プロピレン含量が50重量%以上(特に75〜100重量%)のポリプロピレン系樹脂、例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体等が含まれる。
【0038】
ポリアミド系樹脂としては、例えば、カルボキシル基とアミノ基との重縮合によるアミド結合を有する、脂肪族ポリアミド系樹脂、脂環族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂等を挙げることができる。通常、脂肪族ポリアミド系樹脂が使用される。
脂肪族ポリアミド系樹脂としては、例えば、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4−10アルキレンジアミン)と脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4−20アルキレンジカルボン酸など)との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1212 など)、ラクタムの開環重合を用いた、ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのC4−20ラクタムなど)又はアミノカルボン酸(ω−アミノウンデカン酸などの炭素数C4−20アミノカルボン酸など)の単独又は共重合体( 例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12など)、これらのポリアミド成分が共重合したコポリアミド(例えば、ポリアミド6/11,ポリアミド6/12,ポリアミド66/11,ポリアミド66/12など)等を挙ることができる。
脂環族ポリアミド系樹脂としては、例えば、前記脂肪族ジアミン成分及び/又は脂肪族ジカルボン酸成分のうち少なくとも一部を、脂環族ジアミン及び/又は脂環族ジカルボン酸に置き換えたポリアミド等を挙げることができる。脂環族ポリアミドには、例えば、前記脂肪族ジカルボン酸成分と脂環族ジアミン成分(シクロへキシルジアミンなどのC5−8シクロアルキルジアミン;ビス(アミノシクロへキシル)メタン、2,2−ビス(アミノシクロへキシル)プロパンなどのビス(アミノシクロへキシル)アルカン類など)との縮合体等を挙げることができる。
芳香族ポリアミド系樹脂としては、例えば、前記脂肪族ジアミン成分及び脂肪族ジカルボン酸成分のうち少なくとも一方の成分が芳香族成分を有するポリアミド等を挙げることができる。芳香族ポリアミドとしては、例えば、ジアミン成分が芳香族成分を有するポリアミド(芳香族ジアミン(メタキシリレンジアミンなど)と脂肪族ジカルボン酸との縮合体等)、ジカルボン酸成分が芳香族成分を有するポリアミド(脂肪族ジアミン(トリメチルヘキサメチレンジアミン等)と芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)との縮合体など)、ジアミン成分及びジカルボン酸成分が共に芳香族成分を有するポリアミド(ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)などの全芳香族ポリアミド(アラミド)等)等を挙げることができる。
ポリアミド系樹脂には、さらに、ダイマー酸をジカルボン酸成分とするポリアミド、少量の多官能性ポリアミン及び/又はポリカルボン酸成分を用い、分岐鎖構造を導入したポリアミド、変性ポリアミド(N−アルコキシメチルポリアミドなど)、変性ポリオレフィンを混合あるいはグラフト重合させた高耐衝撃性ポリアミド、ポリエーテルをソフトセグメントとするポリアミドエラストマー等も含まれる。
【0039】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂等を挙げることができる。通常は、芳香族ポリエステル系樹脂、例えば、ポリアルキレンアリレート系樹脂又は飽和芳香族ポリエステル系樹脂が使用される。
芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリC2−4アルキレンテレフタレート;このポリアルキレンテレフタレートに対応するポリC2−4アルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレートなど);1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート(PCT))等を挙げることができる。芳香族ポリエステル系樹脂は、アルキレンアリレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステルであってもよく、共重合成分には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのC2−6アルキレングリコール、ポリオキシC2−4アルキレングリコール、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸等を挙げることができる。さらに、少量のポリオール及び/又はポリカルボン酸を用い、線状ポリエステルに分岐鎖構造を導入してもよい。さらに、変性化合物で変性した変性ポリエステル系樹脂(例えば、アミノ基及びオキシアルキレン基から選択された少なくとも一種を有する芳香族ポリエステル系樹脂)を用いてもよい。変性化合物としては、ポリアミン類(エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタンなどの炭素数2〜10程度の直鎖又は分岐鎖状アルキレンジアミン等の脂肪族ジアミン類;イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジアミン類;例えば、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン類;等)、ポリオール類(例えば、(ポリ)オキシエチレングリコール、(ポリ)オキシトリメチレングリコール、(ポリ)オキシプロピレングリコール、(ポリ)オキシテトラメチレングリコール等の(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール類等)等を挙げることができる。変性は、例えば、ポリエステル樹脂と変性化合物とを加熱混合し、アミド化、エステル化又はエステル交換反応を利用して行うことができる。
【0040】
ポリエーテル系樹脂としては、例えば、ポリオキシアルキレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂(ポリチオエーテル系樹脂)等を挙げることができる。ポリオキシアルキレン系樹脂としては、例えば、ポリオキシメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリオキシC1−4アルキレングリコール等を挙げることができる。
【0041】
ポリアセタール系樹脂は、アセタール結合の規則的な繰り返しにより構成されているホモポリマー(ホルムアルデヒドの単独重合体)であってもよく、開環重合などにより得られるコポリマー(トリオキサンと、エチレンオキサイド及び/又は1,3−ジオキソランとの共重合体など)であってもよい。また、ポリアセタール系樹脂の末端は封鎖され安定化されていてもよい。
【0042】
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、2,6−ジメチルフェニレンオキサイドを主成分とする種々の樹脂、例えば、2,6−ジメチルフェニレンオキサイドとフェノール類との共重合体、スチレン系樹脂をブレンド又はグラフトした変性ポリフェニレンエーテル系樹脂等を挙げることができる。その他の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド系、ポリフェニレンエーテル/飽和ポリエステル系、ポリフェニレンエーテル/ポリフェニレンスルフィド系、ポリフェニレンエーテル/ポリオレフィン系等を挙げることができる。
【0043】
ポリスルフィド系樹脂は、ポリマー鎖中にチオ基(−S−)を有する樹脂であれば特に限定されない。このような樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリジスルフィド樹脂、ポリビフェニレンスルフィド樹脂、ポリケトンスルフィド樹脂、ポリチオエーテルスルホン樹脂等を挙げることができる。また、ポリスルフィド系樹脂は、ポリ(アミノフェニレンスルフィド)のようにアミノ基などの置換基を有していてもよい。
【0044】
ポリエーテルケトン系樹脂としては、例えば、ジハロゲノベンゾフェノン(ジクロロベンゾフェノンなど)とジヒドロベンゾフェノンとの重縮合により得られるポリエーテルケトン樹脂、ジハロゲノベンゾフェノンとヒドロキノンとの重縮合により得られるポリエーテルケトン樹脂等を挙げることができる。
【0045】
ポリカーボネート樹脂としては、脂肪族ポリカーボネート系樹脂であってもよいが、通常、芳香族ポリカーボネート系樹脂、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのビスフェノール化合物など)と、ホスゲン又は炭酸ジエステル(ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、ジメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートなど)との反応により得られる芳香族ポリカーボネート等を挙げることができる。
【0046】
ポリイミド系樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリイミド系樹脂、例えば、芳香族テトラカルボン酸又はその無水物(ベンゾフェノンテトラカルボン酸など)と、芳香族ジアミン(ジアミノジフェニルメタンなど)との反応で得られるポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂等を挙げることができる。
【0047】
ポリスルホン系樹脂としては、例えば、ジハロゲノジフェニルスルホン(ジクロロジフェニルスルホンなど)とビスフェノール類(ビスフェノールA又はその金属塩など)との重縮合により得られるポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂等を挙げることができる。
【0048】
ハロゲン含有樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体などの塩素含有ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンと共重合性単量体との共重合体などのフッ素含有ビニル系樹脂等を挙げることができる。好ましいハロゲン含有樹脂は、フッ素含有ビニル系樹脂(例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなど)である。
【0049】
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン系単量体の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−α−メチルスチレン共重合体など)、スチレン系単量体と共重合性単量体との共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等のスチレン共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル−酢酸ビニル−スチレン共重合体(AXS樹脂)等のスチレン系グラフト共重合体等)等を挙げることができる。
【0050】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体等を挙げることができる。(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステル;メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸C5−10シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸C6−10アリールエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシC2−10アルキルエステル;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリル酸グリシジル;等を挙げることができる。共重合性単量体としては、酢酸ビニル、塩化ビニルなどのビニル系単量体、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体等を挙げることができる。
【0051】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリアミド系エラストマー(ポリアミドを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルを軟質相とする共重合体)、ポリエステル系エラストマー(ポリアルキレンアリレートを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルを軟質相とする共重合体)、ポリウレタン系エラストマー(短鎖グリコールのポリウレタンを硬質相とし、脂肪族ポリエーテルや脂肪族ポリエステルを軟質相とする共重合体、例えば、ポリエステルウレタンエラストマー、ポリエーテルウレタンエラストマー等)、ポリスチレン系エラストマー(ポリスチレンブロックを硬質相とし、ジエン重合体ブロック又はその水素添加ブロックを軟質相とするブロック共重合体)、ポリオレフィン系エラストマー(ポリスチレン又はポリプロピレンを硬質相とし、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴムを軟質相とするエラストマー、結晶化度の異なる硬質相と軟質相とで構成されたオレフィン系エラストマー等)、ポリ塩化ビニル系エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリエステル系樹脂およびポリウレタン系樹脂の項で述べた(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール類(特にポリオキシエチレングリコール)などが使用でき、脂肪族ポリエステルとしては、ポリウレタン系樹脂の項で述べたポリエステルジオールなどが使用できる。これらの熱可塑性エラストマーは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0052】
樹脂成分(B)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、水分散性を向上させるなどの目的で、その一部又は全部が変性したものであっても差し支えない。
【0053】
[強化繊維用サイジング剤]
本発明の強化繊維用サイジング剤は、水溶性高分子(A)を必須に含有するものである。サイジング剤の不揮発分に占める水溶性高分子(A)の重量割合は、0.01〜20重量%が好ましく、0.02〜15重量%がより好ましく、0.1〜5重量%がさらに好ましく、0.2〜2重量%が特に好ましい。該重量割合が0.01重量%未満では、優れた拡幅性を付与することができないことがある。また、20重量%超では、強化繊維ストランドを簡便に拡幅させることはできても、高い造膜性のため強化繊維ストランドの風合いが硬くなり過ぎ、ボビン状に固く巻いて製品パッケージにし難くなる。その結果、製品パッケージの輸送時にパッケージの強化繊維ストランドが巻き崩れる等の問題が起きやすくなることがある。なお、本発明における不揮発分とは、サイジング剤を105℃で熱処理して溶媒等を除去し、恒量に達した時の絶乾成分をいう。
【0054】
サイジング剤の不揮発分に占める樹脂成分(B)の重量割合は50〜99.9重量%であることが好ましく、60〜99.9重量%がより好ましく、70〜99.9重量%がさらに好ましく、75〜99.9重量%が特に好ましい。該重量割合が50重量%未満では、強化繊維ストランドに対して、集束性を十分に付与できないことがある。
【0055】
強化繊維ストランドに対して、優れた拡幅性及び集束性を付与する点から、樹脂成分(B)100重量部に対する水溶性高分子(A)の割合は、0.01〜16重量部が好ましく、0.01〜13重量部がより好ましく、0.01〜5重量部がさらに好ましい。該割合が0.01重量部未満の場合、優れた拡幅性を付与することができないことがある。一方、該割合が16重量部超の場合、強化繊維ストランドを簡便に拡幅させることはできても、高い造膜性のため強化繊維ストランドの風合いが硬くなり過ぎ、ボビン状に固く巻いて製品パッケージにし難くなる。その結果、製品パッケージの輸送時にパッケージの強化繊維ストランドが巻き崩れる等の問題が起きやすくなることがある。
【0056】
本発明のサイジング剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記で説明した水溶性高分子(A)及び上記樹脂成分(B)以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、各種界面活性剤、各種平滑剤、酸化防止剤、難燃剤、抗菌剤、結晶核剤、消泡剤等を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
界面活性剤は、樹脂成分(B)やその他サイジング剤中に水不溶性又は難溶性である樹脂を含有する場合、乳化剤として使用することによって、水系乳化を効率よく実施することができる。
界面活性剤としては、特に限定されず、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両性界面活性剤から、公知のものを適宜選択して使用することができる。界面活性剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0058】
非イオン系界面活性剤としては、たとえば、アルキレンオキサイド付加非イオン系界面活性剤(高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルフェノール、スチレン化フェノール、ベンジルフェノール、ソルビタン、ソルビタンエステル、ヒマシ油、硬化ヒマシ油等にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド(2種以上の併用可)を付加させたもの)、ポリアルキレングリコールに高級脂肪酸等を付加させたもの、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体等を挙げることができる。
アニオン系界面活性剤としては、たとえば、カルボン酸(塩)、高級アルコール・高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、スルホン酸塩、高級アルコール・高級アルコールエーテルの燐酸エステル塩等を挙げることができる。
【0059】
カチオン系界面活性剤としては、たとえば、第4級アンモニウム塩型カチオン系界面活性剤(ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルメチルエチルアンモニウムエトサルフェート等)、アミン塩型カチオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルアミン乳酸塩等)等を挙げることができる。
両性界面活性剤としては、たとえば、アミノ酸型両性界面活性剤(ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等)、ベタイン型両性界面活性剤(ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等)等を挙げることができる。
【0060】
本発明のサイジング剤は、界面活性剤の使用を制限した上で、優れた皮膜柔軟性及び均一付着性を発現させることができる。界面活性剤を多量に含むと、サイジング剤の耐熱性の低下を引き起こし、好ましくない。このような観点から、サイジング剤の不揮発分に占める界面活性剤の割合は20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましく、1重量%以下が特に好ましい。
【0061】
本発明のサイジング剤は、取扱い時の人体への安全性や、火災等の災害防止、自然環境の汚染防止等の観点から、水を含有してもよい。本発明の効果を損なわない範囲で、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン等の有機溶剤を用いてもよい。
【0062】
本発明のサイジング剤は、不揮発分の濃度が大きいものから、強化繊維ストランドに付着させる処理液のように、不揮発分の濃度が小さいものまでを含むものである。本発明のサイジング剤の不揮発分の濃度については、特に限定はなく、水分散体としての安定性や、製品として取り扱いやすい粘度等を考慮して適宜選択されるものである。サイジング剤全体に占める不揮発分の重量割合は、1〜100重量%が好ましく、2〜100重量%がさらに好ましく、5〜100重量%が特に好ましい。
また、サイジング剤全体に占める水と不揮発分の合計の重量割合は、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、99重量%以上がさらに好ましく、100重量%が特に好ましい。90重量%未満の場合、すなわち、熱処理時に不揮発分として残存しない前述の有機溶剤やその他低沸点化合物を10重量%以上含有する場合、取扱い時の人体への安全性や、自然環境の汚染防止の観点で好ましくないことがある。
【0063】
なお、上記水分散体や水溶液には、前述の人体安全性や環境汚染防止の観点に加え、水分散体や水溶液の経時増粘・固化防止の観点から、有機溶剤等の水以外の溶媒を含有しないか、含有する場合であってもサイジング剤全体に対して10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。
【0064】
本発明のサイジング剤を製造する方法については、特に限定はなく、公知の手法が採用できる。サイジング剤を構成する各成分を攪拌下の水中に投入して水溶液とする方法、サイジング剤を構成する各成分を製造する際に水分散体とする方法、サイジング剤を構成する各成分を攪拌下の温水中に投入して乳化分散する方法、サイジング剤を構成する各成分を予め乳化分散した乳化分散液を混合する方法、サイジング剤を構成する各成分を混合し、得られた混合物を軟化点以上に加温後、ホモジナイザー、ホモミキサー、ボールミル等を用いて機械せん断力を加えつつ、水を徐々に投入して転相乳化する方法、サイジング剤を付与する給油浴において、水溶性高分子(A)の水溶液と樹脂成分(B)を予め乳化分散した乳化分散液とを混合する方法等が挙げられる。
【0065】
〔強化繊維ストランド及びその製造方法〕
本発明の強化繊維ストランドは、マトリックス樹脂を補強するための強化繊維であり、原料強化繊維ストランドに対して、上記の強化繊維用サイジング剤を付着させたものである。
また、本発明の強化繊維ストランドは、前述の水溶性高分子(A)を付着させたものと表現することができる。さらに、前述の樹脂成分(B)を付着させたものが好適である。
本発明の強化繊維ストランドは、拡幅性に優れるため、繊維−繊維間にマトリックス樹脂を一様に均一に含浸させることができる。
【0066】
原料強化繊維ストランドへのサイジング剤の不揮発分の付着量は適宜選択でき、強化繊維ストランドが所望の機能を有するための必要量とすればよいが、その付着量は原料強化繊維ストランドに対して0.1〜20重量%であることが好ましい。長繊維形態の強化繊維ストランドにおいては、その付着量は原料合成繊維ストランドに対して0.1〜10重量%であることがより好ましく、0.3〜5重量%がさらに好ましい。また、チョップドファイバー形態(所定の長さに切断された状態)のストランドにおいては0.3〜20重量%であることがより好ましく、0.5〜10重量%がさらに好ましい。
サイジング剤の付着量が少ないと、拡幅性、樹脂含浸性に関する本発明の効果が得られにくくなることがある。また、サイジング剤の付着量が多過ぎると、強化繊維ストランドが剛直になり過ぎて、かえって取扱い性が悪くなったり、コンポジット成型の際に樹脂含浸性が悪くなったりすることがあり好ましくない。
【0067】
前述の水溶性高分子(A)の付着量は、原料強化繊維ストランドに対して0.001〜2重量%であることが好ましく、0.003〜1重量%がより好ましく、0.03〜0.25重量%がさらに好ましい。該付着量が0.001重量%未満の場合、優れた拡幅性を付与することができないことがある。一方該付着量が2重量%超の場合、強化繊維ストランドを簡便に拡幅させることはできても、高い造膜性のため強化繊維ストランドの風合いが硬くなり過ぎ、ボビン状に固く巻いて製品パッケージにし難くなる。その結果、製品パッケージの輸送時にパッケージの強化繊維ストランドが巻き崩れる等の問題が起きやすくなることがある。
【0068】
樹脂成分(B)を付着させた場合の付着量は、原料強化繊維ストランドに対して0.05〜9.99重量%であることが好ましく、0.15〜4.99重量%がより好ましく、0.20〜4.99重量%がさらに好ましい。該付着量が0.05重量%未満の場合、強化繊維ストランドに対して、集束性を十分に付与できないことがある。一方該付着量が9.99重量%超の場合、付着量過多のため強化繊維ストランドの風合いが硬くなり過ぎ、ボビン状に固く巻いて製品パッケージにし難くなる。その結果、製品パッケージの輸送時にパッケージの強化繊維ストランドが巻き崩れる等の問題が起きやすくなることがある。また、強化繊維ストランドにおける水溶性高分子(A)と樹脂成分(B)との付着割合は、樹脂成分(B)100重量%としたときに、水溶性高分子(A)が0.01〜16重量%であることが好ましく、0.01〜13重量%がより好ましく、0.01〜5重量%がさらに好ましい。該割合が0.01重量%未満の場合、優れた拡幅性を付与することができないことがある。一方、該割合が16重量%超の場合、強化繊維ストランドを簡便に拡幅させることはできても、高い造膜性のため強化繊維ストランドの風合いが硬くなり過ぎ、ボビン状に固く巻いて製品パッケージにし難くなる。その結果、製品パッケージの輸送時にパッケージの強化繊維ストランドが巻き崩れる等の問題が起きやすくなることがある。
【0069】
本発明の強化繊維ストランドの製造方法は、水溶性高分子(A)や樹脂成分(B)といった前述のサイジング剤の構成成分を含み、不揮発分の重量割合が0.1〜10重量%であり、水と不揮発分の合計の重量割合が90重量%以上である処理液を調製する調製工程と、原料強化繊維ストランドに対して不揮発分の付着量が0.1〜20重量%となるよう、強化繊維ストランドに該処理液を付着させる付着工程とを含むものである。
調製工程において、処理液に占める不揮発分の重量割合は、0.1〜10重量%がより好ましく、0.3〜5重量%がさらに好ましい。水と不揮発分の合計の重量割合は、95重量%以上であることがより好ましく、99重量%以上であることがさらに好ましく、100重量%が特に好ましい。
付着工程において、好ましい不揮発分の付着量については、前述の通りである。サイジング剤を原料強化繊維ストランドに付着させる方法については、特に限定はないが、サイジング剤をキスローラー法、ローラー浸漬法、スプレー法その他公知の方法で、原料強化繊維ストランドに付着させる方法であればよい。これらの方法のうちでも、ローラー浸漬法が、サイジング剤を原料強化繊維ストランドに均一付着できるので好ましい。
得られた付着物の乾燥方法については、特に限定はなく、例えば、加熱ローラー、熱風、熱板等で加熱乾燥することができる。
【0070】
なお、本発明のサイジング剤の原料強化繊維ストランドへの付着にあたっては、サイジング剤の構成成分全てを混合後に付着させてもよく、水溶性高分子(A)や樹脂成分(B)等の構成成分毎に上記調製工程及び付着工程を設けて、二段階以上に分けて付着させてもよい。
【0071】
本発明の強化繊維ストランドは、各種マトリックス樹脂とする複合材料の強化繊維として使用され、使用させる形態としては、長繊維形態でも、チョップドファイバー形態でもよい。
【0072】
本発明のサイジング剤を適用し得る(原料)強化繊維ストランドとしては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などの各種無機繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアリレート繊維、ポリアセタール繊維、PBO繊維、ポリフェニレンサルフィド繊維、ポリケトン繊維などの各種有機繊維等のストランドが挙げられる。得られる繊維強化複合材料としての物性の観点から、(原料)強化繊維ストランドとしては、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアリレート繊維、ポリアセタール繊維、PBO繊維、ポリフェニレンサルフィド繊維及びポリケトン繊維から選ばれる少なくとも1種のストランドが好ましく、炭素繊維ストランドがさらに好ましい。
【0073】
〔繊維強化複合材料〕
本発明の繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂と前述の強化繊維としての強化繊維ストランドを含むものである。強化繊維ストランドは、本発明のサイジング剤により処理されているため拡幅性に優れる。その結果、繊維−繊維間にマトリックス樹脂を一様に均一に含浸させることができ、優れた物性を有する繊維強化複合材料を得ることができる。
マトリックス樹脂としては、特に限定はなく、公知のマトリックス樹脂を適宜選択して使用することができる。マトリックス樹脂としては、熱硬化性マトリックス樹脂や熱可塑性マトリックス樹脂が挙げられる。
【0074】
熱硬化性マトリックス樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等を挙げることができる。
熱可塑性マトリックス樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ハロゲン含有樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
これらマトリックス樹脂は、強化繊維ストランドとの接着性をさらに向上させるなどの目的で、その一部又は全部が変性したものであっても差し支えない。
【0075】
繊維強化複合材料の製造方法としては、特に限定はなく、チョップドファイバー、長繊維ペレットなどによるコンパウンド射出成型、UDシート、織物シートなどによるプレス成型、その他フィラメントワインディング成型など公知の方法を採用できる。
熱可塑性マトリックス樹脂と強化繊維を混練する際には、熱可塑性マトリックス樹脂が汎用エンジニアプラスチックやスーパーエンジニアプラスチックの様な高融点の場合、融点以上の温度200℃〜400℃で強化繊維と混練し、繊維強化複合材料を製造する。
繊維強化複合材料中の強化繊維ストランドの含有量についても特に限定はなく、繊維の種類、形態、マトリックス樹脂の種類などにより適宜選択すればよいが、得られる繊維強化複合材料に対して、5〜70重量%が好ましく、20〜60重量%がより好ましい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、ここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示されるパーセント(%)、部は特に限定しない限り、「重量%」、「重量部」を示す。なお、実施例1〜6は参考例1〜6とする。
【0077】
(製造例A1)
水950部に撹拌下、ポリエチレンオキサイド(粘度平均分子量150000〜400000)50部を序々に添加し、不揮発分5重量%のポリエチレンオキサイドA1の水溶液を得た。得られた水溶液を、回転式粘度計(ブルックフィールド社製)により、LV−1スピンドルを用いて、25℃で回転数12rpm、測定時間1分の条件で測定すると、120mPa・sであった。
【0078】
(製造例A2)
水950部に撹拌下、ポリエチレンオキサイド(粘度平均分子量1100000〜1500000)50部を序々に添加し、不揮発分5重量%のポリエチレンオキサイドA2の水溶液を得た。得られた水溶液を、回転式粘度計(ブルックフィールド社製)により、LV−3スピンドルを用いて、25℃で回転数12rpm、測定時間1分の条件で測定すると、5000mPa・sであった。
【0079】
(製造例A3)
水995部に撹拌下、ポリエチレンオキサイド(粘度平均分子量3300000〜3800000)5部を序々に添加し、不揮発分0.5重量%のポリエチレンオキサイドA3の水溶液を得た。得られた水溶液を、回転式粘度計(ブルックフィールド社製)により、LV−1スピンドルを用いて、25℃で回転数12rpm、測定時間1分の条件で測定すると、170mPa・sであった。
【0080】
(製造例A4)
水995部に撹拌下、ポリエチレンオキサイド(粘度平均分子量8000000〜10000000)5部を序々に添加し、不揮発分0.5重量%のポリエチレンオキサイドA4の水溶液を得た。得られた水溶液を、回転式粘度計(ブルックフィールド社製)により、LV−2スピンドルを用いて、25℃で回転数12rpm、測定時間1分の条件で測定すると、850mPa・sであった。
【0081】
(製造例A5)
水995部に撹拌下、ユニフロッカーUF−106(ユニチカ株式会社製、アクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体)5部を序々に添加し、不揮発分0.5重量%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体A5の水溶液を得た。得られた水溶液を、回転式粘度計(ブルックフィールド社製)により、LV−2スピンドルを用いて、25℃で回転数12rpm、測定時間1分の条件で測定すると、1400mPa・sであった。
【0082】
(製造例EP)
JER1001(ジャパンエポキシレジン株式会社製、固状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量450〜500)/JER828(ジャパンエポキシレジン株式会社製、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:184〜194)/POE(150)硬化ヒマシ油エーテル=40/40/20(重量比)よりなる組成物を乳化装置に仕込み、撹拌下水を序々に加え転相乳化させ、不揮発分30重量%のエポキシ樹脂EPの水分散体を得た。
【0083】
(製造例UPET)
無水マレイン酸0.9モルとビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物1.0モルを140℃で5時間反応させて、酸価2.5の不飽和ポリエステルを得た。
次に、得られた不飽和ポリエステル/POE(150)硬化ヒマシ油エーテル/PO/EO(25/75)ポリエーテル(分子量16000)=80/10/10(重量比)よりなる組成物を乳化装置に仕込み、撹拌下水を序々に加え転相乳化させ、不揮発分30重量%の不飽和ポリエステルUPETの水分散体を得た。
【0084】
(製造例VE)
ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物/エチレンオキサイド150mol付加硬化ヒマシ油エーテル=80/20(重量比)よりなる組成物を乳化装置に仕込み、撹拌下水を序々に加え転相乳化させ、不揮発分40重量%の不飽和ポリエステルVEの水分散体を得た。
【0085】
(製造例PU)
反応器中に窒素ガスを封入下、テレフタル酸498部、イソフタル酸332部、エチレングリコール248部、ジエチレングリコール106部、テトラメチレングリコール45部およびジブチル錫オキサイド0.2部を仕込み、190〜240℃で10時間エステル化反応を行い、芳香族ポリエステルポリオールを得た。次に、得られた芳香族ポリエステルポリオール1000部を120℃で減圧により脱水し、80℃まで冷却後、メチルエチルケトン680部を仕込み撹拌溶解した。引き続きイソホロンジイソシアネート218部および鎖伸張化剤として2,2−ジメチロールプロピオン酸67部を仕込み、70℃で12時間ウレタン化反応を行った。反応終了後、40℃まで冷却し、13.6%アンモニア水97部を加えて中和反応後、水2950部を加え水エマルジョンとした。得られた水エマルジョンを65℃で減圧処理してメチルエチルケトンを留去し、水分調整を行い、不揮発分30重量%の芳香族ポリエステル系ウレタン樹脂PUの水分散体を得た。
【0086】
(製造例PET)
反応器中に窒素ガスを封入下、ジメチルイソフタレート950部、ジエチレングリコール1000部、酢酸亜鉛0.5部及び三酸化アンチモン0.5部を仕込み、140〜220℃で3時間エステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸30部を添加し、220〜260℃で1時間エステル化反応を行った後、240〜270℃で減圧下2時間重縮合反応を行った。得られた芳香族ポリエステル系樹脂のNMRによる組成分析結果は以下の通りであった。
イソフタル酸 49モル%
ジエチレングリコール 50モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 1モル%
続いて得られた芳香族ポリエステル系樹脂200部とエチレングリコールモノブチルエーテル100部を乳化器に仕込み、150〜170℃で撹拌し、均一化した。続いて撹拌下で水700を徐々に加え、不揮発分20重量%の芳香族ポリエステル系樹脂PETの水分散体を得た。
【0087】
(製造例PP)
撹拌装置を備えたオートクレーブ中に、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(プロピレン/無水マレイン酸グラフト共重合比率(重量%):95/5、重量平均分子量:30000)228部、ポリオキシエチレン8モル付加オレイルエーテル57部、及び水酸化ナトリウム15部を仕込み、窒素ガス還流、撹拌下で170〜180℃まで昇温した。ついで撹拌下水700部を徐々に投入、170〜180℃で2時間撹拌し、内容物を均一溶解した。その後常温まで冷却し、水分調整を行い、不揮発分30重量%のポリプロピレン樹脂PPの水分散体を得た。
【0088】
(製造例PAA)
冷却還流装置を備えた反応容器中にN−メトキシメチル化ポリアミド(DIC社製“ラッカマイド(登録商標)5003”、N−メトキシメチル化率:30%)200部、メタノール800部を仕込み、50〜60℃で撹拌溶解した。次いで、アクリル酸100部、アゾビスイソブチロニトリル2.4部を加え、窒素雰囲気下50〜60℃で4時間グラフト重合した。水860部、13.6%アンモニア水175部を加え、メタノールを留去(メタノール残留量は0.63%)し、不揮発分20重量%の親水性ポリアミド樹脂PAAの水分散体を得た。
【0089】
(製造例PVA)
水950部に撹拌下、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88)50部を序々に添加し、不揮発分5重量%のポリビニルアルコールPVAの水溶液を得た。得られた水溶液を、回転式粘度計(ブルックフィールド社製)により、LV−1スピンドルを用いて、25℃で回転数12rpm、測定時間1分の条件で測定すると、9mPa・sであった。
【0090】
(その他成分)
PEG:重量平均分子量400のポリエチレングリコール
【0091】
[実施例1〜22、比較例1〜11]
上記で製造した水溶液及び水分散体を用いて、表1〜3に示す不揮発分組成になるよう混合撹拌し、水で希釈して不揮発分濃度が5重量%のサイジング剤を調製した。なお、表1〜2の数値はサイジング剤の不揮発分に占める各成分(水分散体の場合は、その不揮発分)の重量割合を示す。例えば、表1〜3のA1〜A5、EP、UPET、VE、PU、PET、PP、PAA、PVA、PEGの数値は、サイジング剤の不揮発分に占めるA1〜A5、EP、UPET、VE、PU、PET、PP、PAA、PVA、PEGの不揮発分の重量割合を示す。
次いで、サイジング剤未処理炭素繊維ストランド(繊度800tex、フィラメント数12000本)を調製したサイジング剤にDip Nip法により浸漬・含浸させた後、105℃で15分間熱風乾燥させて、サイジング剤処理炭素繊維ストランドを得た。得られたサイジング剤処理炭素繊維ストランドを用いて、以下に示す方法により、付着量、拡幅性、集束性を評価した。
【0092】
<付着量>
サイジング剤処理炭素繊維ストランドWg(約3g)を450℃の電気炉で20分間処理して、付着サイジング剤を完全に熱分解・揮散させた。冷却後、炭素繊維ストランドの重量(Wg)を測定し、次式より付着量を算出した。
付着量(重量%)=( (W−W)/W)×100
【0093】
<拡幅性>
サイジング剤処理炭素繊維ストランドについて、図1に示すように、拡がり幅D(mm)を測定した。
【0094】
<集束性>
炭素繊維ストランドをステンレス製のハサミを用いて約5mmの短繊維に裁断した時の集束状態(ばらけ度合い)を下記基準で目視判定した。
○:短繊維が裁断前とほぼ同じ状態。
×:短繊維が大きくばらけたり、または割れが生じたりする。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
表1〜3にあるように、実施例のサイジング剤を処理したストランドは、拡幅性が優れている。一方、比較例のサイジング剤を処理したストランドは、拡幅性に劣るものばかりであることがわかる。
【符号の説明】
【0099】
D 拡がり幅(mm)
図1