特許第6116520号(P6116520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6116520改善された透明性を有する長期耐用の歯科材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116520
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】改善された透明性を有する長期耐用の歯科材料
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/083 20060101AFI20170410BHJP
   A61K 6/08 20060101ALI20170410BHJP
   A61C 13/08 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   A61K6/083 500
   A61K6/08 H
   A61C13/08
【請求項の数】20
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-97024(P2014-97024)
(22)【出願日】2014年5月8日
(65)【公開番号】特開2014-218500(P2014-218500A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年4月6日
(31)【優先権主張番号】10 2013 007 894.6
(32)【優先日】2013年5月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】399011900
【氏名又は名称】ヘレーウス クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Kulzer GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ルパート
(72)【発明者】
【氏名】アルフレート ホーマン
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−512406(JP,A)
【文献】 特表2002−526621(JP,A)
【文献】 特許第5148696(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00−6/10
A61C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の硬化可能なモノマー成分及び/又はポリマー成分と、
(b)次の(b.1)及び(b.2)の混合物又は(b.1)、(b.2)及び(b.3)の混合物を包含することを特徴とする少なくとも1種の充填材成分、
(b.1)マトリックス及びドーピング成分を有する少なくとも凝集した酸化物粒子5〜30質量%、ここで、マトリックスは二酸化ケイ素を包含し、かつドーピング成分は二酸化ジルコニウムを包含し、
(b.2)歯科用ガラス30〜65質量%、
(b.3)別のレオロジー変性剤0〜5質量%
とを包含することを特徴とする歯科材料において、
(b)少なくとも1種の充填材成分が、マトリックス及びドーピング成分を有する凝集酸化物粒子を包含し、ここで、マトリックスは二酸化ケイ素を含み、かつドーピング成分は二酸化ジルコニウムを包含し、
前記凝集酸化物粒子が、二酸化ジルコニウムでドープされている二酸化ケイ素一次粒子の凝集体を包含し、ここで、凝集体は、0.1μm以上〜12μm以下の粒径を有し、かつ
前記凝集酸化物粒子が、その全組成物を基準として1〜25質量%の二酸化ジルコニウムを含み、かつ
前記凝集酸化物粒子が、二酸化ケイ素及び二酸化ジルコニウムを有する一次粒子の凝集体を含み、ここで、一次粒子は、少なくとも約3〜70nmの平均粒径を有し、かつ
二酸化ケイ素含有一次粒子が、4〜7nmの微結晶二酸化ジルコニウムを含むドメインを包含し、かつ
前記凝集酸化物粒子が、0.6〜0.7の結晶化度を有する、歯科材料。
【請求項2】
前記のマトリックス及びドーピング成分を包含する凝集酸化物粒子が、二酸化ケイ素及び二酸化ジルコニウムから選択された金属二酸化物の混合物を有することを特徴とする、請求項1記載の歯科材料。
【請求項3】
前記凝集酸化物粒子が、その全組成物を基準として75〜80質量%の二酸化ケイ素及び20〜25質量%の二酸化ジルコニウムを有することを特徴とする、請求項1又は2記載の歯科材料。
【請求項4】
前記凝集酸化物粒子の屈折率が1.49〜1.55であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の歯科材料。
【請求項5】
前記充填材成分が、二酸化ケイ素及び二酸化ジルコニウムを有する一次粒子の凝集体を包含する凝集酸化物粒子を包含し、ここで、凝集体は、0.5〜10μmの粒径d50を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の歯科材料。
【請求項6】
前記凝集酸化物粒子が、有機官能性シランを用いた表面コーティングによって、表面修飾を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の歯科材料。
【請求項7】
前記凝集酸化物粒子が、疎水性表面修飾を有することを特徴とする、請求項記載の歯科材料。
【請求項8】
前記凝集酸化物粒子が、メタクリルオキシアルキレントリアルコキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及び/又は3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシランの反応生成物で表面修飾されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の歯科材料。
【請求項9】
前記凝集酸化物粒子が、12μm以下の粒度分布d90及び約2.4〜3.0μmの平均粒径d50を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の歯科材料。
【請求項10】
前記充填材成分が、二酸化ケイ素及び二酸化ジルコニウムを有する一次粒子の凝集体を包含する凝集酸化物粒子を含み、ここで、一次粒子は、少なくとも約10〜50nm(ナノメートル)の平均粒径を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の歯科材料。
【請求項11】
(a)前記凝集酸化物粒子、(b)前記の凝集かつ集塊した酸化物粒子、及び/又は(c)前記の表面修飾された凝集酸化物粒子が、そのつど(a)、(b)又は(c)単独で、歯科材料の製造中に生じる高い剪断力によって前記一次粒子に分解されないことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の歯科材料。
【請求項12】
前記歯科材料が、充填用コンポジット、ベニアコンポジット、人工歯の圧粉体、ベニアの圧粉体、インレーの圧粉体、インプラントの圧粉体、薬理活性物質の局所的な放出のための担体材料の圧粉体、局所的な抗生物質治療のための担体材料の圧粉体、又はCAD/CAM技法により義歯を製造するための切削ブロックの圧粉体、又は前述の歯科材料の少なくとも一部であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の歯科材料。
【請求項13】
(a)少なくとも1種の硬化可能なモノマー成分及び/又はポリマー成分と、
(b)次の(b.1)又は(b.2)の混合物又は(b.1)、(b.2)及び(b.3)の混合物を包含する少なくとも1種の充填材成分、
(b.1)マトリックス及びドーピング成分を有する少なくとも凝集した酸化物粒子5〜30質量%、ここで、マトリックスは二酸化ケイ素を包含し、かつドーピング成分は二酸化ジルコニウムを包含する、
(b.2)歯科用ガラス30〜65質量%、
(b.3)別のレオロジー変性剤0〜5質量%、ここで、
(b)少なくとも1種の充填材成分が、マトリックス及びドーピング成分を有する凝集酸化物粒子を包含し、ここで、マトリックスは二酸化ケイ素を含み、かつドーピング成分は二酸化ジルコニウムを包含し、
前記凝集酸化物粒子が、二酸化ジルコニウムでドープされている二酸化ケイ素一次粒子の凝集体を包含し、ここで、凝集体は、0.1μm以上〜12μm以下の粒径を有し、かつ
前記凝集酸化物粒子が、その全組成物を基準として1〜25質量%の二酸化ジルコニウムを含み、かつ
前記凝集酸化物粒子が、二酸化ケイ素及び二酸化ジルコニウムを有する一次粒子の凝集体を含み、ここで、一次粒子は、少なくとも約3〜70nmの平均粒径を有し、かつ
二酸化ケイ素含有一次粒子が、4〜7nmの微結晶二酸化ジルコニウムを含むドメインを包含し、かつ
前記凝集酸化物粒子が、0.6〜0.7の結晶化度を有する
とを混合することを特徴とする、歯科材料の製造法。
【請求項14】
付加的に、充填材成分(b)として、(b.2)ガラス及び/又は前記充填材成分の少なくとも2種の混合物、及び任意に(c)開始剤を混合することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
(1)前記歯科材料を成形し、かつ(2)任意に重合することを特徴とする、請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
請求項1から12までのいずれか1項記載の歯科材料混合されており、任意に成形及び重合されている、硬化歯科材料。
【請求項17】
請求項16記載の、58を上回る透明度(照射:Palatray CUで両面を8分間、HiLite Powerで両面を180秒間)、歯ブラシ摩耗後の45以下の光沢度の差(研磨表面 1000/2500/4000グリットまでの研磨紙、ダイヤモンド懸濁液 黄/赤/白、歯ブラシ摩耗シミュレーション Willytec/SD−Mechatronik、歯ブラシ Hager & Werken、Odol−med−3、10000サイクル、鋸歯型、約3〜6ヶ月のブラッシング期間に相当)、ケシの実による摩耗後に深さ30μm未満の粗度、歯ブラシ摩耗後に測定して体積0.3500mm3以下の粗度及び/若しくは2.5%を上回る反射率を有する硬化歯科材料、又は前述のパラメータの少なくとも2つを有する硬化歯科材料。
【請求項18】
前記の凝集かつ任意に集塊した酸化物粒子が、前記歯科材料のポリマーマトリックス中で固定されており、かつ摩耗作用において前記歯科材料のポリマーマトリックスと一緒に層状に磨り減らされ、かつ個々の完全な粒子としてばらばらにはならないことを特徴とする、請求項16記載の硬化歯科材料。
【請求項19】
前記歯科材料が、人工歯、ベニア、インレー、インプラント、薬理活性物質の局所的な放出のための担体材料、局所的な抗生物質治療のための担体材料、又はCAD/CAM技法により義歯を製造するための切削ブロック、又は前述の歯科材料の少なくとも一部であることを特徴とする、請求項16記載の硬化歯科材料。
【請求項20】
充填用コンポジット、ベニアコンポジット、ベニア、人工歯、インレー、セメント、義歯を製造するための、局所的な抗生物質治療のための担体材料を製造するための、若しくは薬理活性物質の局所的な放出のための担体材料、CAD/CAM技法により義歯を製造するための切削ブロックとしての、請求項1から12までのいずれか1項記載の歯科材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(a)少なくとも1種の硬化可能なモノマー成分及び/又はポリマー成分と、(b)マトリックス及びドーピング成分を有する凝集酸化物粒子を包含する少なくとも1種の充填材成分とを包含し、ここで、マトリックスは二酸化ケイ素を含み、かつドーピング成分は二酸化ジルコニウムを包含し、ここで、凝集酸化物粒子は、歯科材料の硬化ポリマーマトリックス中で固定されており、かつ摩耗作用において歯科材料のポリマーマトリックスと一緒に層状にしか磨り減らされず、かつ個々の完全な粒子としてばらばらにはならない歯科材料を開示する。そのうえ、硬化された歯科材料は、高い透明度を有する。
【背景技術】
【0002】
高い美的要求を満たすために、充填用コンポジット又はベニアコンポジットといった歯科用コンポジットは、高い透明度を有していなければならない。この透明度は、一般に充填材及びポリマーマトリックスの屈折率を最適な形で調整することによって得られる。しかしながら、この場合、種々の物理的及び化学的な制約に基づき、充填材のみならずモノマーの選択に際しても、その範囲は非常に狭く限られたものである。
【0003】
ガラス充填材は、典型的には1.50〜1.54の屈折率を有する。歯科材料用に適した多くのモノマーも同様に、この範囲にある屈折率を有する。ガラスフィラーをもっぱら含むコンポジットは、しかし、取扱適性が良くない。この理由から、これらの調製物には、一般に、例えば熱分解法シリカ("アエロジル")といったレオロジー変性剤が加えられる。しかしながら、熱分解法シリカは、1.46の屈折率を有しており、そのため歯科材料用に最適な屈折率(>1.50)とはかけ離れている。それゆえ、このレオロジー変性剤の添加により、それにより製造された歯科材料の透明度は悪化する。
【0004】
EP1227781B1は、樹脂中に分散している二酸化ケイ素粒子及び少なくとも1種の重金属酸化物を有する硬化可能な樹脂の歯科材料を開示しており、ここで、二酸化ケイ素粒子は、200nm未満の平均直径を有し、かつ歯科材料の質量を基準にして40質量%を上回る量で存在している。重金属酸化物は、別個のゾルとして加えられている。EP1225867B1は、300nm未満の平均直径を有する非重金属酸化物粒子及び酸変性された重金属酸化物を硬化可能な樹脂中に有する歯科材料を開示している。EP1229886B1は、歯科材料用の更に別の充填物を開示している。この充填物は、非重金属酸化物及び非晶質重金属酸化物を100nm以下の直径を有する粒子の形で包含する0.1未満の結晶化度を有する非晶質クラスターである。EP0518454A2は、1μmより上の粒径を有する二酸化ジルコニウムを有する歯科材料が不十分な隠ぺい力を示すことを論じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP1227781B1
【特許文献2】EP1225867B1
【特許文献3】EP1229886B1
【特許文献4】EP0518454A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が基礎とする課題は、コンポジットの製造に当たって、二酸化ケイ素を用いた場合に知られているような透明度の悪化を生まないレオロジー変性剤を考案することである。そのうえ、十分な隠ぺい力が必要とされることから、所望の透明度と、ある一定の隠ぺい力とのバランスをレオロジー変性剤として与える物質が提供されるべきである。更に別の課題は、付加的にさらに、製造した歯科用コンポジットの摩耗特性に好ましい影響を及ぼすレオロジー変性剤を考案することである。好ましいと見なされるのは、摩耗において可能な限り僅かな深さプロファイルが作り出され、すなわち、可能な限り僅かな体積が磨り減らされ、完全な硬化後の歯科材料の粗度が小さく、かつ摩耗によって可能な限り殆ど増大せず、かつ/又は反射能が可能な限り変わらず維持される場合である。小さい粗度は、プラークとの結合を最小限にする。反射能は、強い負荷を受けた後ですら、長期にわたって可能な限り変化しないか又はごく僅かにしか変化しないことが望ましい。光沢安定度、すなわち、硬化された歯科材料の摩耗実験前と実験後の光沢度の差も、はっきりと改善されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、課題は、ZrO2がドープされた特定のシリカをレオロジー変性剤として充填材成分中で使用することによって解決される。ここで、充填材成分中でのレオロジー変性剤の酸化物混合物におけるZrO2の含有量は、屈折率の調整のために、ZrO2約5〜25質量%の範囲に調節される。
【0008】
本発明の課題は、本願請求項1並びに本願請求項19及び22に係る発明によって解決される。有利な実施形態は、下位請求項及び発明の詳細な説明に詳しく記載される。
【0009】
前述の課題は、本発明によれば、約1〜10μmの凝集体の平均粒度を有する凝集一次粒子を包含する少なくとも1種の充填材成分の使用によって解決される。これらの充填材は、摩耗において、完全な粒子としてポリマーマトリックスから引き剥がされずに、層状に磨り減らされる。これによって、表面粗度が高まったり、光沢が減少したり、かつプラークとの結合が高まったりすることがなくなる。
【0010】
本発明によれば、課題は、例えば製品のZirkonSil 520及びZirkonSil 535の使用によって解決される。特に好ましいのは、二酸化ケイ素及び二酸化ジルコニウムを包含する凝集酸化物粒子が、重合によって導入可能な有機官能性シランで表面官能化される場合である。ここで、有機モノマー及び有機ポリマーに対して反応性の有機官能性シラン、好ましくはオレフィン系アルコキシシラン、例えばメタクリルオキシ官能化アルコキシシラン又はビニル官能性アルコキシシランが特に有利である。シラン化は、現場で歯科材料の製造中に行うか、又は事前に別個の工程で行ってもよい。二つ目の場合、本発明の凝集酸化物粒子(凝集体)は、別個の工程において有機官能性シランで表面修飾される。このようにして修飾された凝集酸化物粒子は、それから充填材成分中のレオロジー変性剤として歯科材料に加えてよい。
【0011】
本発明の対象は、(a)少なくとも1種の硬化可能なモノマー成分及び/又はポリマー成分と、(b)マトリックス及びドーピング成分を有する凝集酸化物粒子を包含する少なくとも1種の充填材成分とを包含し、ここで、マトリックスは二酸化ケイ素を含み、かつドーピング成分は二酸化ジルコニウムを包含する歯科材料である。凝集酸化物粒子(凝集体)は、充填材成分中のレオロジー変性剤として加えられる。
【0012】
本発明によれば、ドーピング成分の二酸化ジルコニウムが、酸化物粒子の少なくとも1つのドメイン中に、つまり、少なくとも1つの領域中に存在する場合、さらに有利である。さらに有利であり得るのは、ドーピング成分が、少なくとも部分的に結晶形で二酸化ケイ素マトリックス中に存在する場合である。そのうえまた、ドーピング成分は、少なくとも部分的に二酸化ケイ素のマトリックス中に埋め込まれている。好ましくは、ドーピング成分は、少なくとも1つの結晶ドメインを一次粒子中に形成する。
【0013】
凝集酸化物粒子は、殊に二酸化ケイ素から成るマトリックスを有する、実質的に凝集した一次粒子を包含する。酸化物粒子、殊に一次粒子は、二酸化ジルコニウムで、有利には微結晶二酸化ジルコニウムでドープされている。好ましくは、ドーピング成分は、少なくとも1つのドメインとして、殊に少なくとも1つの結晶ドメインとして存在する。そのうえ、有利なのは、凝集酸化物粒子が、二酸化ジルコニウムでドープされている二酸化ケイ素一次粒子の凝集体を包含している歯科材料であり、ここで、凝集体は、0.1μm以上〜12μm以下、殊に0.6〜12μmの粒径を有し、有利には、凝集体の平均粒径は、エアロゾル分散液中での体積分布(体積加重)により測定して2.6〜3.5μm、約2.6μm又は約3.5μmである。凝集体は、二酸化ジルコニウムでドープされている二酸化ケイ素の酸化物粒子から成る一次粒子を含む。
【0014】
本発明による歯科材料は、特に美的にすぐれており、かつ特に自然な外観を呈する。なぜなら、凝集酸化物粒子の屈折率が1.49〜1.55だからである。それゆえ、特に有利なのは、1.49〜1.55、殊に1.50〜1.53、特に有利には1.51〜1.53、好ましくは1.516〜1.524の屈折率を有する凝集酸化物粒子である。
【0015】
本発明の1つの実施形態によれば、二酸化ケイ素含有一次粒子の凝集酸化物粒子である歯科材料及び充填材成分が有利であり、ここで、一次粒子は、二酸化ジルコニウム−ドメインを含む。本発明の1つの実施形態によれば、二酸化ケイ素含有一次粒子の凝集酸化物粒子である歯科材料及び充填材成分が特に有利であり、ここで、一次粒子は、4〜7nmの微結晶ドメイン(ドメインと同義)を包含する。好ましくは、酸化物粒子は、微結晶二酸化ジルコニウム含有ドメインを有し、好ましくは、二酸化ジルコニウムから成るドメイン、特に有利には二酸化ジルコニウムから成る微結晶ドメインを有する。加えて、一次粒子の凝集酸化物粒子が5〜10m2/gの比表面積を有する場合に有利である。
【0016】
更に別の実施形態によれば、歯科材料又は充填材成分に含まれる、マトリックス及びドーピング成分を包含する凝集酸化物粒子が、二酸化ケイ素及び二酸化ジルコニウムから選択された金属二酸化物の混合物に相当する場合に有利である。
【0017】
そのうえ、これらの歯科材料又は充填材成分は、透明度の要件、僅かな摩耗並びに僅かな粗度といった本発明による課題を、凝集酸化物粒子が、その全組成物を基準として1〜25質量%の二酸化ジルコニウムを包含する場合(すなわち、酸化物粒子中でドーピング成分は、酸化物粒子の全組成物(100質量%)を基準として1〜25質量%であってよく、有利には、二酸化ジルコニウムの含有率は、10〜25質量%、好ましくは10〜15質量%である)、特に良好に解決することが判明した。
【0018】
特に有利な凝集酸化物粒子は、その全組成物を基準として85〜90質量%の二酸化ケイ素と10〜15質量%の二酸化ジルコニウムを包含し、ここで、さらに有利なのは、凝集酸化物粒子の一次粒子が4〜7nmの微結晶ドメインを包含し、かつ、好ましくは結晶化度が −Windisch他の方法により測定して(WO01/30306A)− 0.6〜0.7であり、かつ凝集酸化物粒子が、少なくとも1種のモノマー成分及び/又はポリマー成分に対して反応性の少なくとも1種の有機官能性シランで表面修飾されて存在している場合である。本発明により処理されたこれらの凝集酸化物粒子は、光沢度に関しての、摩耗測定における際立った特性、際立った透明度、並びに歯ブラシ試験後の反射率及び粗度の測定において非常に良好な値を有する。
【0019】
同様に、凝集酸化物粒子を包含する少なくとも1種の充填材成分又は数種の充填材成分を包含する歯科材料が有利であり、ここで、凝集酸化物粒子は、歯科材料の全組成物を基準として80質量%まで、殊に5〜80質量%、好ましくは50質量%まで、20質量%まで、好ましくは10〜30質量%存在する。選択的に有利なのは5〜35質量%、さらに有利には5〜30質量%、特に有利には5〜20質量%、好ましくは10〜25質量%、15〜25質量%、20〜80質量%、特に有利には20〜30質量%、好ましくは15〜25質量%、選択的に±2.5質量%の変動範囲を伴って約20質量%である。したがって、本発明の対象は、ZrO2でドープされたシリカの凝集酸化物粒子を、殊に歯科材料中で、80質量%まで、殊に50質量%まで、好ましくは20質量%までの濃度で包含する歯科材料及び/又は充填材成分である。際立った結果は、歯科材料中で10〜25質量%の凝集酸化物粒子の含有率により得られる。コーティング又は二酸化ジルコニウムとの単なる混合物と比べたドーピングの明らかな利点は、歯ブラシ試験後ですら、高い透明度及び良好な反射能並びに僅かな粗度となって再び表れる。二酸化ジルコニウムでコーティングされているシリカ、例えば製品のJE340は、歯ブラシ試験の後に、透明度、反射率及び粗度に関してずっと悪化した結果を示す。
【0020】
さらに、二酸化ケイ素と二酸化ジルコニウムとを1:9のモル比で、殊に1:8〜1:6のモル比で有する凝集酸化物粒子を有する充填材成分を包含する歯科材料又は充填材成分が有利である。
【0021】
同様に、二酸化ケイ素及び二酸化ジルコニウムを有する一次粒子の凝集体を包含する凝集酸化物粒子を包含する充填材成分を有する歯科材料又は充填材成分が有利であり、ここで、凝集体は、0.5〜12μm、本発明によれば0.5〜10μm、殊に1以上〜約9μmの粒径d50を有し、殊にd50は、1.5〜5μmの範囲にあり、有利にはd50は、2〜4μmの範囲にあり、特に有利にはd50は、2.6〜3.5μmの範囲にある。そのうえ、充填材成分の凝集酸化物粒子が、12以下の粒度分布d90及び約2.4〜3.0μmの平均粒径d50を有する場合に有利である。
【0022】
さらに、凝集酸化物粒子、殊に凝集体、さらに有利には凝集一次粒子が、有機官能性シランで表面修飾されており、ひいては少なくとも部分的に、好ましくは本質的に全ての一次粒子が、硬化された歯科材料中に重合によって導入されて、殊に周囲ポリマーと多重共有結合して存在する場合に有利である。製造法に応じて、凝集酸化物粒子は、凝集体としても存在する。本発明により使用される酸化物粒子の1つの利点は、これらが、例えば製造プロセス中の高い剪断力によって一次粒子に分解されないことである。殊に、そのつど単独で(a)凝集酸化物粒子、(b)凝集かつ集塊した酸化物粒子も、及び/又は(c)表面修飾された凝集酸化物粒子、殊に有機官能性シランの反応生成物で修飾された一次粒子も、歯科材料の製造中に生じる高い剪断力によって一次粒子に分解されない。
【0023】
この高い剪断力は、殊に3本ロールミル、遠心ミキサー、遊星形ミキサー又はディゾルバー等において生じ、これは歯科材料、例えばコンポジットの製造中に通例用いられる。したがって、本発明の凝集酸化物粒子は、好ましくは集塊酸化物粒子としても存在し、ここで、一次粒子の凝集は、酸化物結合によって酸化物粒子の製造時に直接及び/又はシラン化によって調整されることができる。
【0024】
本発明の対象はまた、表面修飾、殊に疎水性表面修飾を、好ましくは有機官能性シランを用いた表面コーティングによって有する凝集酸化物粒子を包含する歯科材料又は充填材成分である。有利なシランは、モノマー成分及び/又はポリマー成分並びに酸化物粒子に対して反応性の有機官能性シラン、例えばオレフィン官能化アルコキシシラン、例えば線状、分岐状及び/又は環状のアルケニル官能化アルコキシシラン、(メタ)アクリレート官能化アルコキシシラン、若しくはウレタン官能化アルコキシシラン又はそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物である。アルコキシシランの有機官能基は、好ましくは2〜20個の炭素原子、殊に2〜10個の炭素原子を包含し、これらはヘテロ原子で中断又は置換されていてよい。
【0025】
凝集酸化物粒子、好ましくは一次粒子を表面修飾している有利な有機官能化アルコキシシラン又はそれらの反応生成物、殊にそれらの加水分解生成物及び/又は縮合生成物は、メタクリルオキシアルキレントリアルコキシシランを包含し、ここで、二官能性アルキレン基は1〜8個の炭素原子を有し、3−メタクリルオキシトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、α−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを包含する。
【0026】
本発明の対象は、(a)少なくとも1種の硬化可能なモノマー成分及び/又はポリマー成分、(b)次の(b.1)〜(b.3)を包含する充填材成分、(b.1)マトリックス及びドーピング成分を有する、殊にレオロジー変性剤としての、少なくとも凝集した酸化物粒子、ここで、マトリックスは二酸化ケイ素を包含し、かつドーピング成分は二酸化ジルコニウムを包含し、殊に(b.1)は80質量%までである、(b.2)30〜65質量%、好ましくは30〜60質量%のガラス、殊に歯科用ガラス、及び任意に(b.3)充填材としても、かつ逆の場合で列挙されることもよくある更に別のレオロジー変性剤、例えばシリカ、二酸化ケイ素、熱分解法シリカ、殊に0〜5質量%、好ましくは0〜1質量%、及び/又は前述の充填材成分の少なくとも2種の混合物、並びに任意に(c)少なくとも1種の開始剤、殊に1質量%まで、好ましくは0.0001〜1質量%、並びに(d)任意に少なくとも1種の顔料、殊に1質量%まで、好ましくは0.0001〜0.1質量%を、全組成物を基準として含む歯科材料である。
【0027】
好ましくは、充填材成分は、成分b.1、b.2、b.3を、歯科材料の全組成物を基準として80質量%まで、特に好ましくは50〜80質量%、好ましくは55〜80質量%、有利には60〜80質量%、さらに有利には65〜80質量%、特に有利には70〜80質量%包含し、ここで、充填材成分の歯科用ガラスは、全組成物を基準として30〜60質量%、有利には40〜55質量%となる。歯科材料の全組成物は100質量%である。
【0028】
本発明によれば、有利には、充填材とも呼ばれることの多い通常のレオロジー変性剤、例えば、非変性のシリカ、二酸化ケイ素及び/又は熱分解法シリカは用いない。本発明によれば、好ましくは、充填材成分として、二酸化ケイ素マトリックス及びドーピング成分としての二酸化ジルコニウムを有する凝集酸化物粒子を歯科材料中でレオロジー変性剤として用いる。非変性のシリカ、二酸化ケイ素及び/又は熱分解法シリカを包含する通常のレオロジー変性剤は、場合によっては、0〜2.8質量%、好ましくは0.001〜1.75質量%の非常に少ない量で用いられる。相応して、好ましくは、(b.1)及び(b.2)の混合物又は任意に(b.1)、(b.2)及び(b.3)の混合物を歯科材料中で、殊に歯科組成物を基準として80質量%までの含有率で用いてよく、ここで、成分(b.1)、(b.2)及び/又は(b.3)は、想定される全ての組成物中に存在してよい。好ましくは、成分(b.1)、(b.2)及び/又は(b.3)は、それぞれ互いに無関係にシラン化されて存在する。
【0029】
本発明の更に別の対象は、二酸化ケイ素及び二酸化ジルコニウムを含む一次粒子の凝集体−ここで、一次粒子は、少なくとも約3〜70nm、殊に10〜50nm(ナノメートル)の平均粒径を有する−を包含する、殊にマトリックス及びドーピング成分−ここで、マトリックスは二酸化ケイ素を包含し、かつドーピング成分は二酸化ジルコニウムを包含する−を有する凝集酸化物粒子及び凝集酸化物粒子自体を包含する充填材成分を有する歯科材料である。本発明によれば、ドーピング成分は、少なくとも1つのドメインの形で二酸化ケイ素マトリックス中に存在する。二酸化ケイ素と二酸化ジルコニウムとの純粋な混合物又は二酸化ジルコニウムによる外側のコーティングを有する二酸化ケイ素は、例を手がかりにして証明したように、本発明により得られる特性を有していない。有利には、ZrO2でドープされた充填材成分は、主として約10〜50nm(ナノメートル)の粒径を有する凝集一次粒子から成る。そのうえ、本発明による凝集酸化物粒子は、Windisch他、WO01/30306、US7,030,049、EP1229886B1により測定される0.6〜0.7の結晶化度を有する。
【0030】
本発明による歯科材料は、充填用コンポジット、ベニアコンポジット、人工歯の圧粉体、ベニアの圧粉体、インレーの圧粉体、インプラントの圧粉体、薬理活性物質の局所的な放出のための担体材料の圧粉体、局所的な抗生物質治療のための担体材料の圧粉体、若しくはCAD/CAMにより義歯を製造するための切削ブロックの圧粉体、又は前述の歯科材料の少なくとも一部であってよい。圧粉体(Gruenling)とは、この文脈においては、予め成形された、硬化されていないか又は完全には硬化されていない歯科材料を意味する。この歯科材料から予め成形されたベニアの圧粉体は、必要に応じて機械的にさらに加工することができるように、引き続き硬化によって完全に硬化してよい。
【0031】
本発明の更に別の実施形態によれば、同様に本発明の対象は、マトリックス及びドーピング成分−ここで、マトリックスは二酸化ケイ素を含み、かつドーピング成分は二酸化ジルコニウムを包含する−を有する凝集酸化物粒子−ここで、凝集酸化物粒子は、有機官能性シラン、殊にシランの反応生成物で表面修飾されている−を包含する充填材成分である。有機官能性シランとは、上述のシラン並びに酸化物粒子の表面上のそれらの反応生成物も意味する。有利には、凝集酸化物粒子は、オレフィン系アルコキシシラン、殊に3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及び/又は3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシランの反応生成物で表面修飾されている。
【0032】
歯科材料は、本発明によれば、(b)充填材成分について、総じて(b.1)10〜35質量%、殊に10〜30質量%、好ましくは10〜25質量%、特に有利には15〜25質量%、殊に10〜15質量%、15〜20質量%若しくは選択的に20〜25質量%の凝集酸化物粒子、及び殊に二酸化ケイ素マトリックス及びドーピング成分として二酸化ジルコニウムを有し、0.6〜0.7の結晶化度を有するシラン化された酸化物粒子、並びに/又は(b.2)0〜75質量%、殊に10〜65質量%、特に有利には40〜60質量%の、例えば45〜50質量%若しくは50〜65質量%の少なくとも1種の歯科用ガラス、ここで、好ましくは、50〜90%の粗粒の歯科用ガラスと10〜50%の微粒の歯科用ガラスとから成る歯科用ガラス混合物が用いられ、これは、平均粒径(d50値)を基準として、1:4〜1:30の微粒分と粗粒分との大きさの比を有する、並びに任意に(b.3)0.5〜10質量%の1〜50nmの粒径を有する非凝集ナノフィラーを包含する、20〜98質量%、殊に70〜95質量%の全充填材含有率を有してよい。
【0033】
(a)硬化可能なモノマー成分及び/又はポリマー成分として、有利には歯科材料のために、次のモノマー混合物(i)、(ii)及び(iii):
(i)全組成物を基準として、殊に5〜20質量%、殊に9〜20質量%、好ましくは10〜20質量%、有利には10〜17質量%の、ビスグリシジルアクリレート、アルコキシル化されたペンタエリスリトールテトラアクリレート、TCD−di−HEMA又はTCD−di−HEAの群の少なくとも1種のモノマー、及び
(ii)全組成物を基準として、殊に10〜15質量%の、少なくとも5〜20%が多官能性の架橋剤UDMA(ジウレタンジメタクリレート)、及び
(iii)全組成物を基準として、殊に0〜5質量%、好ましくは0.001〜3質量%以下の、任意に残分のTEDMA(トリメチレングリコールジメタクリレート)及び/又は更に別の多官能性架橋剤
からの1種以上のモノマー、ここで、(i)、(ii)及び(iii)は、総じて5〜35質量%で歯科材料中に存在し、好ましくは15〜35質量%、特に有利には20〜35質量%、さらに有利には20〜25質量%で存在する、
(c)1%までの開始剤並びに
(b.2)任意に、充填材成分中で、粗粒及び微粒の歯科用ガラスとは異なる粒径を有する少なくとも1種の更に別の歯科用ガラスが選択され、ここで、全組成物中の(i)モノマーの割合は、9質量%若しくは10〜17質量%である。
【0034】
非凝集ナノフィラーは自体公知であり、かつ、例えばWO0130305A1又はSiO2の例でDE19617931A1に記載されている。これらは、好ましくは、SiO2、ZrO2、TiO2、Al23の群から並びにこれらの物質の少なくとも2種から成る混合物から選択されることができる。これらは−例えばDE19617931A1に記載されているように−有機溶剤中に分散されていてよいが、或いはまた、水若しくは水を含有する溶剤混合物中に添加してもよい。
【0035】
歯科用ガラスとして適しているのは、特にバリウムガラス粉末、好ましくはバリウムガラス−アルミニウム−ホウケイ酸ガラス、及び/又はストロンチウムガラス粉末である。粗粒の歯科用ガラスの平均粒径は、好ましくは5〜10μm、殊に約7μmであり、微粒の平均粒径は、0.5〜2μm、殊に1μmである。任意に存在する更に別の歯科用ガラスは、例えば2〜5μm又は10〜50μmの平均粒度を有する。
【0036】
それに従って、充填材成分は、総じて3つ以上の粒子画分(Kornfraktionen)を有する歯科用ガラスを有してよい。これらは、歯科領域で通常用いられる更に別の従来の充填材、例えば石英セラミック、ガラスセラミック又はそれらの混合物を有してよい。そのうえまた、コンポジットは、高められたX線不透過性を叶えるための充填材を含んでよい。X線不透過性充填材の平均粒径は、好ましくは100〜300nm、殊に180〜300nmの範囲にある。X線不透過性充填材として適しているのは、例えばDE3502594A1に記載された希土類金属のフッ化物、すなわち、原子番号57〜71の元素の三フッ化物である。特に有利には使用される充填材は、殊に約300nmの平均粒径を有するフッ化イッテルビウム、殊に三フッ化イッテルビウムである。X線不透過性充填材の量は、歯科材料中での全充填材含有率(b)を基準として、好ましくは10〜50質量%、特に有利には20〜30質量%である。本発明によれば、二酸化ケイ素マトリックス及びドーピング成分としての二酸化ジルコニウムを有する凝集酸化物粒子の他に、好ましくは通常の充填材、殊に疎水化されたシラン化されたシリカが、5質量%未満、好ましくは2.5質量%未満、有利には1.5質量%未満の非常に少ない含有率でのみ添加される。
【0037】
歯科材料は、好ましくは、硬化可能なモノマー成分及び/又はポリマー成分として、下記に挙げたモノマー又はポリマーを包含する:
【0038】
モノマーとして、歯科領域で通常用いられるモノマーが考慮に入れられる:例は、ラジカル重合可能な単官能性モノマー、例えばモノ(メタ)アクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート又はフェニル(メタ)アクリレート、多官能性モノマー、例えば多官能性アクリレート若しくはメタクリレート、例えばビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、Bis−GMA(メタクリル酸とビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルとからの付加生成物)、UDMA(ウレタンジメタクリレート)、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレートと2,2,4−ヘキサメチレンジイソシアネートとからの付加生成物)、ジ−、トリ−若しくはテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキシルデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート並びにブタンジオールジ(メタ)アクリレートである。特に有利なのは、Bis−GMA、TEDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)、UDMA(ウレタンジメタクリレート)、TCD−di−HEMA(ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ−[5.2.1.02,6]デカン)及びTCD−di−HEA(ビス−(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ−[5.2.1.02,6]デカン)である。
【0039】
有利な架橋剤モノマーとして、以下のもの及びそれらの混合物から選択された少なくとも1種のモノマーを用いてよい:2,2−ビス−4−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−フェニルプロパン)(Bis−GMA)、すなわち、グリシジルメタクリレートとビスフェノール−A(OH基含有)との反応生成物、及び7,7,9−トリメチル−4,13−ジオキソ−3,14−ジオキサ−5,12−ジアザヘキサデカン−1,16−ジイルジメタクリレート(UDMA)、すなわち、2モルの2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と1モルの2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(ウレタン基含有)とからのウレタンジメタクリレート。そのうえまた、グリシジルメタクリレートと他のビスフェノール、例えばビスフェノール−B(2,2’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ブタン)、ビスフェノール−F(2,2’−メチレンジフェノール)又は4,4’−ジヒドロキシジフェニルとの反応生成物、並びに2モルのHEMA又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと、殊に1モルの、公知のジイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート又はトルイレンジイソシアネートとの反応生成物が架橋剤モノマーとして適している。
【0040】
多官能性架橋剤として、TEDMA及びUDMAの他に考慮に入れられるのは、ジエチレングリコール−ジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート並びにブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートである。
【0041】
歯科材料は、好ましくは、硬化可能なモノマー成分及び/又はポリマー成分として、下記に挙げたモノマー及び/又はポリマーも包含してよい:酸官能性を有するか又は有さない1種以上のエチレン性不飽和化合物。例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性アクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性メタクリル酸エステル及びそれらの組合せ物。並びにモノ−、ジ−若しくはポリ−(メタ)アクリレート、すなわち、アクリレート及びメタクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセリントリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオール−トリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビス[1−(2−アクリルオキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシル化ビスフェノールA−ジ(メタ)アクリレート及びトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート−イソシアヌレートトリメタクリレート、(メタ)アクリルアミド(すなわち、アクリルアミド及びメタクリルアミド)、例えば(メタ)アクリルアミド、メチレン−ビス−(メタ)アクリルアミド及びジアセトン(メタ)アクリルアミド;ウレタン(メタ)アクリレート;(好ましくは200〜500の分子量を有する)ポリエチレングリコールのビス(メタ)アクリレート、アクリレート化モノマーの共重合可能な混合物、並びにビニル化合物、例えばスチレン、ジアリルフタレート、ジビニルスクシネート、ジビニルアジペート及びジビニルフタレートである。他の適したラジカル重合可能な化合物は、シロキサン官能性(メタ)アクリレート及びフルオロポリマー官能性(メタ)アクリレート又は2種以上のラジカル重合可能な化合物の混合物を包含し、これらは必要に応じて使用してよい。
【0042】
重合可能な成分は、ヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基を単一分子中に有していてもよい。このような物質の例は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;グリセリンモノ−若しくはグリセリンジ−(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンモノ若しくはジ−(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールモノ−若しくはジ−及びトリ−(メタ)アクリレート;ソルビトールモノ−、ジ−、テトラ−若しくはペンタ−(メタ)アクリレート及び2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(Bis−GMA)又はエチレン性不飽和化合物の混合物を包含する。硬化可能な又は重合可能な成分は、PEGDMA(約400の分子量を有するポリエチレングリコールジメタクリレート)、GDMA(グリセリンジメタクリレート)、TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)及び/又はNPGDMA(ネオペンチルグリコール−ジメタクリレート)並びにこれらを含む混合物を包含してよい。
【0043】
重合を開始するために、コンポジットは、重合開始剤、例えばラジカル重合のための開始剤を含む。使用される開始剤の種類に応じて、混合物は低温で、照射によって架橋、すなわちUV架橋されることができ、又は熱の供給によって重合可能であり得る。
【0044】
温度誘導重合のための開始剤として、公知の過酸化物、例えばジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート又はt−ブチルペルベンゾエート、或いはまた、α,α’−アゾ−ビス(イソブチロエチルエステル)、ベンズピナコール及び2,2’−ジメチルベンズピナコールを用いることができる。
【0045】
光開始剤として、例えばベンゾインアルキルエーテル又はベンゾインアルキルエステル、ベンジルモノケタール、アシルホスフィンオキシド又は脂肪族若しくは芳香族の1,2−ジケト化合物、例えば2,2−ジエトキシアセトフェノン、9,10−フェナントレンキノン、ジアセチル、フリル、アニシル、4,4’−ジクロロベンジル及び4,4’−ジアルコキシベンジル又はカンファーキノンが考慮に入れられる。光開始剤は、好ましくは、還元剤と一緒に使用される。還元剤の例は、アミン、例えば脂肪族若しくは芳香族の第三級アミン、例えばN,N−ジメチル−p−トルイジン又はトリエタノールアミン、シアンエチルメチルアニリン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルジフェニルアミン、N,N−ジメチル−sym−キシリジン、N,N−3,5−テトラメチルアニリン及び4−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル又は有機ホスファイトである。一般に用いられている光開始剤系は、例えばカンファーキノン+エチル−4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(エチルヘキシル)−4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエート又はN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートである。
【0046】
UV光によって開始される重合のための開始剤として適しているのは、特に2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。UV光開始剤は、単独で、可視光のための開始剤、低温硬化のための開始剤及び/又は温度誘導硬化のための開始剤と組み合わせて用いてよい。
【0047】
低温重合のための開始剤として、ラジカルを形成する系、例えばベンゾイルペルオキシド若しくはラウロイルペルオキシドが、N,N−ジメチル−sym−キシリジン又はN,N−ジメチル−p−トルイジンといったアミンと一緒に使用される。デュアル硬化系、例えばアミンとペルオキシドとを組み合わせた光開始剤も用いてよい。開始剤は、好ましくは、混合物の全質量を基準として0.01〜0.1質量%の量で使用される。
低温重合においては、コンポジット材料が、硬化のために混合が予定されている2つの成分に分けられて存在している場合、都合が良い。VIS光及び/又はUV光によってのみならず、2つの成分の混合によっても硬化され得る材料を提供することも可能である。
【0048】
同じく本発明の対象は、(a)少なくとも1種の硬化可能なモノマー成分及び/又はポリマー成分と、(b)(b.1)80質量%までの、マトリックス及びドーピング成分を有する少なくとも凝集した酸化物粒子−ここで、マトリックスは二酸化ケイ素を包含し、かつドーピング成分は二酸化ジルコニウムを包含する−を包含する充填材成分と、任意に(b.2)ガラス、(b.3)レオロジー変性剤及び/又は前述の充填材成分の少なくとも2種の混合物と、任意に(c)開始剤と、任意に(d)少なくとも1種の顔料とを混合することによって、本発明による歯科材料を製造する方法、並びにこの方法によって得られる歯科材料である。
【0049】
続けて、好ましくは、歯科材料を、まず第一の工程(1)で成形し、任意に更なる工程(2)で重合し、任意に更なる工程(3)で表面仕上げ及び/又は機械加工してよい。
【0050】
本発明により硬化された、殊に重合によって得られる歯科材料は、55%を上回る、好ましくは、そのつど58%、58.5%、59.5%を上回る、有利には60%を上回る、特に有利には62%を上回る透明度を有する(照射:Palatray CUで両面を8分間、HiLite Powerで両面を180秒間)、歯ブラシ摩耗後の80以下、殊に60以下、有利には55以下、特に有利には50以下、本発明によれば45以下、40以下までの光沢度の差(研磨表面 1000/2500/4000グリットまでの研磨紙、ダイヤモンド懸濁液 黄/赤/白、歯ブラシ摩耗シミュレーション Willytec/SD−Mechatronik、歯ブラシ Hager & Werken、Odol−med−3、10,000サイクル、鋸歯型、約3〜6ヶ月のブラッシング期間に相当)を有する。そのうえ、本発明による硬化された歯科材料は、それぞれ別個に、上述のパラメータの1つ、複数又は全てを有する。本発明により硬化された、殊に重合によって得られる歯科材料は、後で実施例に従って突き止められるように、好ましくは、ケシの実による摩耗後に深さ35μm以下、殊に深さ30μm以下、特に有利には深さ25μm以下の粗度を有する。付加的に又は選択的に、硬化された歯科材料は、ケシの実による摩耗試験後に測定して、表面組織における体積に関して、体積0.400mm3以下、殊に体積0.3500mm3以下、有利には体積0.3000mm3以下、特に有利には体積0.2500mm3以下の粗度を有する。
【0051】
本発明により硬化された、重合により得られる歯科材料は、殊に歯ブラシ摩耗後に測定して、好ましくは、1.5%以上、殊に2.0%以上、有利には2.5%以上、特に有利には3%以上、特に好ましくは4%以上、さらに有利には4.5%以上の反射率を有する。本発明に従って有利な、硬化された歯科材料は、前述のパラメータの少なくとも2つ〜全てのパラメータを有する。
【0052】
本発明による充填材成分は、好ましくは現場で、マトリックス及びドーピング成分−ここで、マトリックスは二酸化ケイ素を包含し、かつドーピング成分は二酸化ジルコニウムを包含する−を有する凝集酸化物粒子を包含する充填材成分を、有機官能性シラン、例えばエチレン性不飽和有機官能性シランで表面修飾することによって製造される。有利な充填材成分は、オレフィン系アルコキシシランの反応生成物、殊に3−メタクリルオキシトリメトキシシラン及び/又は3−メタクリルオキシトリエトキシシランで表面修飾された凝集酸化物粒子を包含する。
【0053】
本発明の更に別の対象によれば、前述の歯科材料の重合によって得られる硬化歯科材料、又は前述の歯科材料の混合、任意に成形及び重合によって得られる硬化歯科材料が開示される。
【0054】
そのうえ、本発明の対象は、任意の混合及び成形によって、並びに重合によって得られる歯科材料であり、ここで、凝集酸化物粒子、殊に凝集かつ集塊した酸化物粒子は、得られた歯科材料のポリマーマトリックス中で固定されており、かつ摩耗作用において歯科材料のポリマーマトリックスと一緒に層状に磨り減らされ、かつ個々の完全な粒子としてばらばらにはならない。
【0055】
さらに、本発明の対象は、重合によって得られる歯科材料であり、ここで、凝集かつ/又は集塊した酸化物粒子、好ましくは集塊酸化物粒子は、歯科材料のポリマーマトリックス中に共有結合的に重合によって導入されて存在し、好ましくは、酸化物粒子は、集塊かつ/又は共有結合してポリマーマトリックス中に固定されて存在し、かつ摩耗作用において歯科材料のポリマーマトリックスと一緒に層状に磨り減らされ、かつ個々の完全な粒子としてばらばらにはならない。重合によって得られ、ここで、凝集酸化物粒子は、集塊して歯科材料のポリマーマトリックス中に存在し、かつ好ましくはポリマーマトリックス中に共有結合的に固定されている歯科材料、重合によって得られ、ここで、凝集酸化物粒子は、任意に集塊して歯科材料のポリマーマトリックス中に存在し、かつ好ましくはポリマーマトリックス中に共有結合的に固定されている歯科材料が、本発明の対象である。
【0056】
有利には、硬化された歯科材料は、以下で挙げる歯科用品の1つであるか、又はそれらの製造のために使用され、次のものが包含される:人工歯、ベニア、インレー、薬理活性物質の局所的な放出のための担体材料、局所的な抗生物質治療のための担体材料、又は義歯、歯、総義歯、ブリッジ、殊に2〜9つの骨組みを有するブリッジ、又はCAD/CAM技法により義歯を製造するための切削ブロック、又は前述の歯科材料の少なくとも一部。
【0057】
歯科材料は、硬化によって歯科用品へと、例えば、歯の詰め物、歯科用ブランク材、歯冠及びブリッジ、歯科補綴物、歯列矯正装置等へと加工される。歯科材料には、例えば、接着剤(歯科用接着剤及び/又は歯列矯正接着剤)、セメント(例えばグラスアイオノマーセメント、レジン修飾グラスアイオノマーセメント、及び/又は歯列矯正セメント)、プライマー(例えば歯列矯正プライマー)、補修材、補強物(例えば修復充填物)、ライニング、封止材(例えば歯列矯正シーラント)及びコーティングも含まれる。
【0058】
それに、硬化可能なモノマー成分及び/又はポリマー成分を包含する歯科材料は、ペースト又は成形可能な材料の形で存在していてもよく、これは歯科用品を形成するために硬化される。歯科用品は、修復された一組の歯(Gebiss)又はその一部も包含する。これに関する例は、充填物、補填物、インレー、アンレー、ベニア、フルクラウン及びパーシャルクラウン、ブリッジ、インプラント、インプラント・アバットメント、コーピング、前歯部充填物、窩洞填塞材、ベースライナー、裏層材、封止材(歯のコーティング)、入れ歯、ブリッジ骨格及び他のブリッジ構造並びにそれらの一部、又は歯列矯正の器具及び装置及びプロテーゼ(例えば部分的若しくは完全な入れ歯)である。
【0059】
本発明を、下記の実施例によって詳細に説明するが、しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】1μmの解像度で、二酸化ケイ素マトリックス及びドーピング成分の二酸化ジルコニウムを有する凝集酸化物粒子を示す図
図2】10μmの解像度で、磨り減らされた表面としての架橋された歯科材料中に共有結合的に固定された凝集かつ好ましくは集塊した酸化物粒子を示す図
図3図2のより高い解像度を示す図
図4】200nmの解像度で、二酸化ケイ素マトリックス及び二酸化ジルコニウム−ドメインを含む一次粒子を包含する凝集酸化物粒子を示す図
【0061】
図2及び3は、メタクリレート−マトリックス中に組み込まれた、表面研削され、かつ減少する粒度の研磨紙で研磨された(4000グリットまで)ZrO2がドープされたシリカ充填材のREM写真を示す。;図3においては、充填材の内部構造及び摩耗/研磨による粒子の層状の磨り減りがはっきりと認められる。
【実施例】
【0062】
摩耗特性の測定
歯科材料の摩耗特性を、Willytec/SD−Mechatronik(製造元)の試験機を使って測定した。一般に、生体内での摩耗による自然の歯又は歯科材料の摩滅は、種々のメカニズムによって、例えば対抗歯(Antagonisten-Zahn)、糜粥中の研磨粒子による摩滅並びに/又は歯ブラシ及び/若しくは練り歯磨きによる洗浄によって起こり得る。これらの摩滅メカニズムは、実験室条件下で、様々なシミュレーション法によって調整することができる。
【0063】
糜粥によって引き起こされる摩耗をシミュレーションするための3−媒体摩耗(3-Medien Abrasion)(ACTA法):12個のチャンバーを有する回転ホイールに、試験されるべき材料を充填し、かつ鋼製の対抗ホイール(240min-1)とは逆向きに180min-1で運転する。両方のホイールを、水とケシの実から成る懸濁液中に(ケシの実による摩耗、MA)に留め置く(ケシの実 110g;水 200g)。対抗ホイールを、20Nの力で試験体ホイールに向かって押す。試験体ホイールと対抗ホイールとから形成されるギャップを通してケシ粒が移動し、これらがコンポジット表面上で表面損傷を招く。3−媒体摩耗の試験機/製造元:Willytec/SD−Mechatronik。
【0064】
摩耗試験:試験体ホイールの2×150,000回転後(これは、約3年の患者の口中での使用期間に相当する)、ケシ粒によって引き起こされたコンポジットの損傷を各チャンバー内で測定し、かつ深さ及び体積についてレーザースキャナーで突き止めて評価する。深さプロファイルの検出は、非接触で行われる:体積はmm3で測定し、かつ平均深さはμm(マイクロメートル)で測定する。
【0065】
歯ブラシ摩耗は、歯ブラシ及び練り歯磨きによる洗浄中の摩耗のシミュレーションに用いる:歯ブラシ(試験毎に計8個)を、2Nの力で試験体表面に押し、かつ鋸歯型において試験体表面全体に動かす。摩耗媒体として、練り歯磨きと水との混合物(Odol−med 3、2:1)を用いる。10,000サイクル(これは、約3〜6ヶ月の使用期間をシミュレートする)後、引き起こされたコンポジットの表面変化を測定し、かつ粗度(ドイツ語ではRauigkeit、現在ではRauheit、以前はRauhigkeit:Rauheit:表面高さの起伏を表す、表面物理学的に由来する用語)及び反射率を評価する。歯ブラシ摩耗の試験機/製造元:Willytec/SD−Mechtronik。
【0066】
咀嚼シミュレーション(CoCoM法、CoCoM法/コンピューター制御された咀嚼)は、対抗物による咀嚼動作中の摩耗をシミュレートする。この場合、試験体表面に、Al23製セラミックビーズが50Nの力で作用する。ビーズが試験体表面に接触すると、試験体は0.8mmだけ側方にずらされ、かつ試験体表面を磨り減らす。それ以外に、試験体は試験前に温度負荷変動に曝す(5℃(1分間)/55℃(1分間)を約5000サイクル)。材料毎に計16個の試験体を調べる。200,000サイクル(これは、約5年の使用期間をシミュレートする)後、引き起こされたコンポジットの損傷を測定し、かつ深さ及び体積について評価する。咀嚼シミュレーションの試験機/製造元:Willytec/SD−Mechtronik;体積はmm3で測定し、かつ深さはμm(マイクロメートル)で測定する。
【0067】
光沢度:Byk−Gardner社の光沢測定装置Tri−Gloss、測定角60°
以下では、本発明による好ましい特性を、比較例VG1、VG2、VG3、VG4と比べた本発明による例1〜4を手がかりにして示す。表にまとめた例は、それらが同じ成分又は化合物を含んでいる限りにおいては、そのつど本質的に同じ量の成分又は化合物を用いて実施した。組成物の成分は、常に100質量%(全組成物)を基準にしている。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
本発明による充填材の使用によって、歯ブラシ摩耗(ZB)、ケシの実による摩耗(MA)及び咀嚼摩耗(KM)において明らかな改善が生じる。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
光沢度:Byk−Gardner社の光沢測定装置Tri−Gloss、測定角60°
本発明による充填材の使用によって、着色されていないベース材料の透明度について明らかな改善が生じる。他の製造元の二酸化ケイ素及び二酸化ジルコニウムを含む(ZrO2−SiO2)生成物は、これらの好ましい効果を示さない。
図1
図2
図3
図4