特許第6116543号(P6116543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6116543マイクロ流体デバイス上の液体流れシーケンスの制御
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116543
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】マイクロ流体デバイス上の液体流れシーケンスの制御
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20170410BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20170410BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G01N35/00 D
   G01N35/08 A
   G01N37/00 101
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-500531(P2014-500531)
(86)(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公表番号】特表2014-508952(P2014-508952A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】IB2012051411
(87)【国際公開番号】WO2012131556
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2014年11月20日
(31)【優先権主張番号】105583
(32)【優先日】2011年3月24日
(33)【優先権主張国】PT
(73)【特許権者】
【識別番号】511102240
【氏名又は名称】バイオサーフィット、 ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ダ フォンセカ、ジョアオ
(72)【発明者】
【氏名】レイス、ヌノ
(72)【発明者】
【氏名】テンレイロ、タニア
(72)【発明者】
【氏名】ピント ボーデイラ、サンドロ ミゲル
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−514928(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/077159(WO,A1)
【文献】 特表平05−508709(JP,A)
【文献】 ROBERT GORKIN,CENTRIFUGAL MICROFLUIDICS FOR BIOMEDICAL APPLICATIONS,LAB ON A CHIP,英国,ROYAL SOCIETY OF CHEMISTRY,2010年 1月 1日,V10,P1758-1773
【文献】 JENS DUCREE,THE CENTRIFUGAL MICROFLUIDIC BIO-DISK PLATFORM,JOURNAL OF MICROMECHANICS & MICROENGINEERING,英国,INSTITUTE OF PHYSICS PUBLISHING,2007年 7月 1日,V17 N7,P S103 - S115
【文献】 Jonathan Siegrist,Serial siphon valving for centrifugal microfluidic platforms,Microfluid Nanofluid,2010年,Vol. 9,pp. 55-63
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
Science Direct
ACS PUBLICATIONS
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周りにデバイスが回転してデバイス内の液体流れを駆動する、液体をハンドリングするデバイスであって、
第1液体保持構造と、
第2液体保持構造と、
上流液体ハンドリング構造と、
前記上流液体ハンドリング構造を前記第1液体保持構造に接続する第1供給導管であって、前記上流液体ハンドリング構造は前記第1供給導管を通して前記第1液体保持構造に液体を供給するように構成されている、第1供給導管と、
前記上流液体ハンドリング構造を前記第2液体保持構造に接続する第2供給導管であって、前記上流液体ハンドリング構造は前記第2供給導管を通して前記第2液体保持構造に液体を供給するように構成されている、第2供給導管と、
前記第1液体保持構造から液体を受け取る下流液体ハンドリング構造と、
前記第2液体保持構造の出口ポートと前記第1液体保持構造の入口ポートとを接続する導管と、を備え、
前記導管は、前記出口ポートの半径方向内向きに頂点に向けて延びるとともに前記頂点から前記入口ポートに向けて半径方向外向きに延びる部分を有し、
駆動力に応答して前記第1および第2液体保持構造が液体で満たされると、前記導管の前記部分内で前記第1および第2液体保持構造からのそれぞれの液体の間にガスを閉じ込めるように、前記第1および第2液体保持構造並びに前記導管は構成され、閉じ込められたガスが前記第1液体保持構造を通して放出されるまで前記第2液体保持構造内に液体が保持され、その後、前記第2液体保持構造から前記第1液体保持構造を通して前記下流液体ハンドリング構造に液体が流れる
ことを特徴とする液体ハンドリングデバイス。
【請求項2】
前記第2液体保持構造と、該第2液体保持構造に隣接する前記導管の一部とを、該導管の半径方向最内点の面まで満たす体積以上の液体の量で、前記第2液体保持構造を満たすように構成されることを特徴とする請求項1に記載の液体ハンドリングデバイス。
【請求項3】
前記導管内の液体に作用する毛管力が、カットオフ周波数よりも低い回転数において前記導管の半径方向最内点を越えて液体を引き出すのに十分な力となるような、前記導管および前記第2液体保持構造の液面に対応する液体の量で前記第2液体保持構造を満たすように構成されることを特徴とする請求項1に記載の液体ハンドリングデバイス。
【請求項4】
前記カットオフ周波数が30Hzであることを特徴とする請求項3に記載の液体ハンドリングデバイス。
【請求項5】
前記第1および第2液体保持構造を接続して両者の圧力を釣り合わせるベント導管を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体ハンドリングデバイス。
【請求項6】
前記第1液体保持構造の別の入口ポートを第3液体保持構造の別の出口ポートに接続する別の導管を備え、
前記別の導管は、前記別の入口ポートおよび出口ポートよりも半径方向内側に延びる別の屈曲部を有し、
駆動力に応答して前記第1および第3液体保持構造が液体で満たされると、前記別の屈曲部内で前記第1および第3液体保持構造からのそれぞれの液体の間にガスを閉じ込めるように、前記第1および第3液体保持構造並びに前記別の導管は構成され、
前記別の入口ポートは前記入口ポートよりも半径方向外側にあり前記第3液体保持構造内に液体を保持する一方、前記第2液体保持構造から前記第1液体保持構造を通して液体が流れ、前記別の入口ポートよりも半径方向内側にある前記第1液体保持構造内の液面を維持する
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の液体ハンドリングデバイス。
【請求項7】
デバイスが一定速度で回転している間、前記第1および第2液体保持構造から前記下流液体ハンドリング構造に液体をシーケンシャルに移動させるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の液体ハンドリングデバイス。
【請求項8】
モータに結合された請求項1ないし7のいずれかに記載のデバイスと、前記モータに結合され前記デバイスの回転を制御して前記第1および第2液体保持構造からの液体をシーケンシャルに分配するコントローラと、を備える液体ハンドリングシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記第1および第2液体保持構造からの液体をシーケンシャルに分配するために、前記デバイスを実質的に一定の周波数で回転させるように動作することを特徴とする請求項8に記載の液体ハンドリングシステム。
【請求項10】
回転軸の周りにデバイスが回転してデバイス内の液体流れを駆動する、液体をハンドリングするデバイスであって、第1液体保持構造と、第2液体保持構造と、上流液体ハンドリング構造と、前記上流液体ハンドリング構造を前記第1液体保持構造に接続する第1供給導管であって、前記上流液体ハンドリング構造は前記第1供給導管を通して前記第1液体保持構造に液体を供給するように構成されている、第1供給導管と、前記上流液体ハンドリング構造を前記第2液体保持構造に接続する第2供給導管であって、前記上流液体ハンドリング構造は前記第2供給導管を通して前記第2液体保持構造に液体を供給するように構成されている、第2供給導管と、前記第1液体保持構造から液体を受け取る下流液体ハンドリング構造と、前記第2液体保持構造の出口ポートと前記第1液体保持構造の入口ポートとを接続する導管と、を備え、前記導管は、前記出口ポートの半径方向内向きに頂点に向けて延びるとともに前記頂点から前記入口ポートに向けて半径方向外向きに延びる部分を有する、デバイスを用いて前記第1および第2液体保持構造から前記下流液体ハンドリング構造に液体をシーケンシャルに移動させる方法であって、
前記デバイスを回転させ、
前記第1および第2液体保持構造を液体で満たして該第1および第2液体保持構造の間の前記導管内にガスを閉じ込め、
前記第1液体保持構造から前記下流液体ハンドリング構造に液体を移動させる一方、前記第2液体保持構造内に液体を保持させ、
前記導管から前記第1液体保持構造を通して閉じ込められているガスを放出した後で、前記第2液体保持構造から前記導管および前記第1液体保持構造を通して前記下流液体ハンドリング構造に液体を移動させる
ことを含む方法。
【請求項11】
前記デバイスは、前記第1液体保持構造の別の入口ポートを第3液体保持構造の別の出口ポートに接続する別の導管を備え、前記別の導管は、前記別の入口ポートおよび出口ポートよりも半径方向内側に延びる別の屈曲部を有し、前記別の入口ポートは前記入口ポートよりも半径方向外側にあり、
前記第3液体保持構造を液体で満たして前記第1および第3液体保持構造の間の前記別の導管内にガスを閉じ込め、
前記第1および第2液体保持構造から前記下流液体ハンドリング構造に液体を移動させる一方、前記第3液体保持構造内に液体を保持させ、
前記別の導管から前記第1液体保持構造を通して閉じ込められているガスを放出した後で、前記第3液体保持構造から前記別の導管および前記第1液体保持構造を通して前記下流液体ハンドリング構造に液体を移動させる
ことをさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
実質的に一定の駆動力を印加して液体を移動させることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体のハンドリングに関し、より詳細には、「ラボオンディスク」デバイスなどのマイクロ流体デバイスにおけるガスの閉じ込めによる液体のシーケンシング(sequencing)に関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
液体シーケンシングは、回転分析システムの重要な機能である。標準的なシステムは、所定の領域内への液体のシーケンシャルな(順次)流れを実行するためにバルブを開く能動素子を利用する。このような能動バルブの実装の一例が、WO2010084190に記載されている。しかしながら、回転分析システムの製造および使用を簡単にするためには、能動素子を使用しないことが望ましい。
【0003】
能動素子を用いずに液体シーケンシングを実行する方法の一つは、直列の毛管サイフォンの使用を含む。一つの例が、特許出願WO2008106782に記載されている。しかしながら、この手法は、回転シーケンスで追加すべき新たな液体が出てくるたびに、新たに一つの流体構造を追加するとともに、回転プロトコル内に一回の停止を加えることを意味するので、かなり複雑なものになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、能動素子を用いずに、かつ、シーケンシングする液体の数の増加時に構造および操作機能の数を増加させる必要なく、回転分析システムにおける簡単な液体シーケンシングを提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様は独立項に規定されている。さらなる選択的な特徴は従属項に規定されている。
【0006】
一部の実施形態では、液体をハンドリングするデバイスが提供される。このデバイスは、回転軸の周りに回転してデバイス内の液体流れを駆動する。デバイスは、第1液体保持構造および第2液体保持構造と、第1および第2液体保持構造に液体を供給する上流液体ハンドリング構造と、第1液体保持構造から液体を受け取る下流液体ハンドリング構造と、を備える。第2チャンバの出口ポートと第1チャンバの入口ポートとを導管が接続する。導管は、出口ポートの半径方向内向きに頂点に向けて延びるとともに頂点から入口ポートに向けて半径方向外向きに延びる屈曲部を有する。これにより、屈曲部内で第1および第2液体保持構造からのそれぞれの液体の間にガスを閉じ込めることができる。その結果、閉じ込められたガスが第1液体保持構造を通して放出されるまで第2液体保持構造内に液体が保持され、その後、第2液体保持構造から第1液体保持構造を通して下流液体ハンドリング構造に液体が流れる。
【0007】
直観に反して、発明者らは、能動素子を用いずに、および複雑な構造や回転プロトコル特徴を用いずに、液体ハンドリング構造の一部にガスを閉じ込めることによって効率的な液体流れのシーケンシングが可能であることを認識した。シーケンシングされる液体ごとに適した形状の導管を持つ簡単な構造が設けられ、デバイスが一定回転数で回転している間に、液体をシーケンシングすることができる。後者は、回転速度が一定であると信号対雑音比を改善することができるので、下流液体ハンドリング構造が光学技術による光学検出構造(例えば、検出構造内で、サンプル内の抗原と固定化抗体との結合を検出する)を備えているシステムでは有利である。
【0008】
一部の実施形態では、第2液体保持構造と導管とを導管の半径方向最内点まで満たす体積以上の液体の閾値量で第2液体保持構造を満たすようにデバイスを構成してもよい。こうすると、閉じ込められているガスが第1液体保持構造を通して放出されたとき、第2液体保持構造に隣接する導管内で、少なくとも半径方向の最内点(限られたケースでは、第2液体保持構造内の液面と同一)まで遠心力が液体前面を押す傾向がある。その結果、毛管力からのわずかな追加の寄与分で、回転中にサイフォン作用が発生する。
【0009】
液体の量が上述の閾値を越えると、遠心力が第2液体保持構造内のあらゆる液頭を排除しようとし、第2液体保持構造から導管の半径方向最内点を越えて第2液体保持構造内の液面よりも半径方向外側へ、導管が液体を押す傾向がある。その結果、毛管力からの補助なしにサイフォン作用が発生する。
【0010】
他方、導管内の毛管力が導管の半径方向最内点を越えて液体を引き出すのに十分な力になるさらに低い面まで導管および第2液体保持構造を満たすような液体の量であってもよい。この結果、カットオフ周波数よりも低い回転数でデバイスが回転されたときに、サイフォン作用を起こすことができる。この場合、対応する液頭に関連する遠心力は、毛管力によって打ち破られる。一つの特定の実施例では、カットオフ周波数が毎秒30回転であってもよい。
【0011】
一部の実施形態では、デバイスは、第1および第2液体保持構造を接続して両者の圧力を釣り合わせるベント導管を備えていてもよい。これは、各液体保持構造にベント回路を接続する必要なく、二つの液体保持構造の間に簡単で直接的な圧力均衡接続を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、デバイスは、第1液体保持構造の別の入口ポートを第3液体保持構造の別の出口ポートに接続する別の導管を備える。別の導管は、別の入口ポートおよび出口ポートよりも半径方向内側に延びる別の屈曲部を有する。上述したように、これにより別の屈曲部内で第1および第3液体保持構造からのそれぞれの液体の間にガスを閉じ込めることができる。別の入口ポートは、第2液体保持構造から第1液体保持構造を通して一旦液体が流れると、第3液体保持構造内に液体が保持されるように、入口ポートの半径方向外側にある。この構成によると、第1液体保持構造へのそれぞれの入口ポートを適切に配置することによって、三つの(拡大すれば任意の数の)液体のシーケンシングが可能になる。同じく、液体保持構造のデイジーチェーンの間の導管内に閉じ込められた空気により液体が保持され、デイジーチェーン内の次の液体保持構造への入口ポートが開放されたときに、デイジーチェーン内の一つの液体保持構造によって液体が前進するようなシーケンシャル構造も可能である。
【0013】
一部の実施形態では、デバイスが一定周波数で回転している間、第1および第2液体保持構造から下流液体ハンドリング構造に液体をシーケンシャルに移動させるようにデバイスが構成されている。上述したように、液体シーケンシング中の一定周波数での回転は、制御を容易にするだけでなく、デバイスに統合された光学検出技術における信号対雑音比を高めることができる。さらに、液体の処理に必要となる加減速の回数が減少するので、デバイスに加わる機械的応力も減少する。
【0014】
一部の実施形態では、上述したデバイスを使用するとともに、上述した機能を実装する手段を備える液体ハンドリングシステムがさらに提供される。
【0015】
一部の実施形態では、第1および第2液体保持構造から下流液体ハンドリング構造に液体をシーケンシャルに移動させる方法が提供される。この方法は、第1および第2液体保持構造を液体で満たして第1および第2液体保持構造の間の導管内にガスを閉じ込めることを含む。この方法は、第2液体保持構造内に液体が保持されている間、第1液体保持構造から下流液体ハンドリング構造に液体を移動させ、導管から第1液体保持構造を通して閉じ込められているガスを放出した後で、第2液体保持構造から第1液体保持構造への導管を通して下流液体ハンドリング構造に液体を移動させることを含む。
【0016】
上述した内容に沿って、実施形態は、第3液体保持構造を液体で満たして第1および第3液体保持構造の間の別の導管にガスを閉じ込め、上述のように第3液体をシーケンシングする方法をさらに含む。さらに、方法ステップの間一定の大きさに維持される一定の駆動力に応答して、上述した方法ステップの全てで液体を移動することができる。例えば、駆動力が遠心力である場合、デバイスは一定の回転周波数で回転される。
【0017】
以下の実施形態がさらに説明され、これらは任意の他の記載される実施形態と組み合わせることができる。
【0018】
1.流体シーケンシングチャンバと、
少なくとも一つの追加流体チャンバまたは流路と、
前記シーケンシングチャンバに第1液体を注入して部分的にチャンバを満たし、少なくとも一つの追加流体チャンバまたは流路内にガスを閉じ込め、第1液体が前記シーケンシングチャンバから部分的に流れて少なくとも一つの追加流体チャンバまたは流路内に閉じ込められているガスを放出するまで、少なくとも一つの追加流体チャンバまたは流路内での少なくとも一つの第2追加液体の流れを防止する手段と、
前記第1液体が前記シーケンシングチャンバを空にした後、少なくとも一つの追加流体が順に流れるように、前記シーケンシングチャンバ内の液体の流れを制御する手段と、
を備える流体流れシーケンシングシステム。
【0019】
2.前記第1液体を注入する手段は、液体に作用する遠心力を生成する手段を含むことを特徴とする項目1に記載のシステム。
【0020】
3.液体をシーケンシングする二つの表面の間に前記チャンバが画成され、該表面は1mm未満、好ましくは0.5mm未満離れていることを特徴とする項目1または2に記載のシステム。
【0021】
4.前記流路が前記シーケンシングチャンバと前記他のチャンバとを接続するか、シーケンシングされる流路がサイフォンの形態であることを特徴とする項目1ないし3のいずれかに記載のシステム。
【0022】
5.前記シーケンシングチャンバに第1遠心力を与えて、液体のシーケンシングを可能にするガスを閉じ込め、
続いて、上流回路内の液体の遠心分離部品に、好ましくは第1遠心力と同一である第2遠心力を与え、
続いて、第1および第2遠心力とは異なる第3遠心力を与えて、液体を前記下流回路に流すことを含む、項目1ないし4のいずれかに記載のシステム。
【0023】
6.多数の液体が単一のまたは多数の下流回路内にシーケンシングされることを特徴とする項目1ないし5のいずれかに記載のシステム。
【0024】
7.前記シーケンシングチャンバがリザーバの形態であることを特徴とする項目1ないし6のいずれかに記載のシステム。
【0025】
8.前記シーケンシングチャンバが、他の流路への追加の分岐接続部を持つ流路の形態であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のシステム。
【0026】
上流回路と、下流回路と、接続流路によって少なくとも二つの上流チャンバに接続される少なくとも一つのチャンバを収容するシーケンシング構造と、を有する流体ネットワークを備える回転流体デバイスがさらに説明される。回転により、上流回路からシーケンシング構造への液体流れが、接続流路のうちの少なくとも一つの中にガスを閉じ込める。この結果、シーケンシング構造から下流回路へと第1液体が流れるまで、上流チャンバのうちの少なくとも一つのシーケンシング構造への液体流れが、ガスの閉じ込めにより防止される。
【0027】
「液面(level)」という語は、チャンバまたは他の液体収容構造に関連して使用されるが、重力下において液体で満たされるチャンバ内で観察されるような直線の液面を必ずしも指すものではないことが理解されるだろう。むしろ、この語は、液体収容構造内の明確に定義された量の液体に対応する限り、液体に作用する遠心力に起因してまたは表面張力効果に起因して曲がる曲線の液面を含む。「液面」は液体保持チャンバに限られず、例えば回転中心に対する幾何学的な位置をむしろ定義している。
【0028】
誤解を避けるために、「マイクロ流体」という語は、少なくとも一つの寸法が1mm未満である容器または流路などの流体素子を有するデバイスを意味するものとして本明細書で使用される。デバイスはディスク形状である必要はない。実際、回転軸はデバイス自体の中に設けられている必要はなく、デバイス自体の中にはない回転軸の周りでデバイスを回転するためのロータの中にデバイスが配置されるように構成してもよい。
【0029】
図面を参照して、特定の実施形態について限定でなく例示を目的として以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1A図1Iは、液体シーケンシング機構の実行を模式的に説明する図である。
図2】ディスク形状のカートリッジ上に統合された液体シーケンシング機構の実行を説明する図である。
図3】対応する駆動システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1Aを参照して、液体をハンドリングする回転デバイスは、上流液体ハンドリング構造21を備える。上流液体ハンドリング構造21は、デバイスが軸10の周りに回転するとき、遠心圧に応答して導管51、52を通して第1チャンバ31および第2チャンバ32に液体をそれぞれ供給する。第1チャンバ31と第2チャンバ32は、頂点に向けて径方向内側に延び、頂点から径方向外側に延びる屈曲部を有する導管41によって接続されている。導管41は、第2チャンバ32の出口ポートを、第1チャンバ31の入口ポートに接続する。導管41の屈曲部により、第1チャンバ31および第2チャンバ32が満たされたときに屈曲部内にガスを閉じ込めることが可能になる。その結果、第1チャンバ31を通してガスが放出されるまで第2チャンバ32内に液体が保持されるが、これについては以下で詳細に説明する。チャンバ31は、導管53によって下流の液体ハンドリング構造22に接続される。実際には、チャンバ31、32はそれぞれ、導管41の各部との連通管として機能する。その結果は、連通管の各セットの間に閉じ込められるガスの媒介により相互作用する連通管のシステムである。
【0032】
チャンバ31、32における液体のシーケンシャルな流れの原理について、図1B図1Iを参照して以下で説明する。図1Bは、上流液体ハンドリング構造21が液体61を封じ込めている初期構成を示す。
【0033】
図1Cを参照して、軸10の周りでのデバイスの回転時に、上流液体ハンドリング構造21から流れる液体61で第1チャンバ31と第2チャンバ32が満たされ、チャンバ31、32内に液体体積62、63を提供する。この段階で、液体に作用する遠心圧のために、下流液体ハンドリング構造22内へと液体62が流れ始めることができる。
【0034】
第1チャンバ31および第2チャンバ32が満たされると、第1チャンバ31と第2チャンバ32を接続する導管41の屈曲部内に気体71が閉じ込められるように、デバイスが構成されている。この目的のために、それぞれの流速が適宜調整される。
【0035】
第1チャンバ31および第2チャンバ32に入る流速は、遠心力で生じる圧力と流体力学的な流れ抵抗とによって決まる。遠心力で生じる圧力は、デバイスの回転速度と、液体密度と、液体61の液柱の質量中心の半径方向距離と、によって決まる。出口流路の流体力学的な流れ抵抗は、流路51、52の形状および表面特性と、液体61の粘度とによって決まる。チャンバ31、32から出る流速は、これらのチャンバ内の液面と、流路41、53の形状および表面特性とに同様に依存している。これらの因子を調節することによって、液体62、63が両側から導管41に流れ込むときに導管41内にガス71を閉じ込めるように、第1チャンバ31および第2チャンバ32を満たすよう流速を制御することができる。
【0036】
その後、チャンバ31、32と導管41は、連結された連通管のセットとして機能するので、導管41内の屈曲部の両側の力が釣り合う必要がある。毛管力/毛管圧、遠心力/遠心圧および導管41内のガス71の圧力が、液体62、63に作用する力に関係する。
【0037】
毛管力は、導管41および導管41に合流するチャンバ31、32の寸法、形状および表面特性によって決まり、液体を導管41に追い立てる傾向がある。液体が導管41内に追い出されると、導管41内部のガス体積71が対応して減少することによる圧力の増加で、導管41を出る反対方向に液体が追い立てられる。屈曲部の両側の液体にかかる遠心圧は、屈曲部の両側における液頭(それぞれのチャンバ31、32内の液柱の半径方向高さと対応する導管41の脚の高さの差)によって決まる。遠心圧は液頭を減少させる傾向があるので、それぞれの液面に応じて液体を導管41内にまたは導管41から外に導くことができる。
【0038】
図1Cに示す構成では、チャンバ31、32と導管41のあらゆる部分において液面が同一になる時点まで、チャンバ31、32が満たされ続けている。これは、毛管力に起因する圧力とガス71のガス圧とが釣り合う結果、導管41の屈曲部の両側で遠心力がそれぞれの液頭をゼロにする特定の瞬間に対応している。これは充填過程のスナップショットであり、実際には、流速およびチャンバ形状に応じて、二つのチャンバが同一速度で満たされなくてもよいし、同一液面にならなくてもよいことが理解されるだろう。
【0039】
図1Dを参照して、第1チャンバ31および第2チャンバ32がさらに満たされると、導管41の屈曲部の両側で導管41内の液面62、63が、第1チャンバ31および第2チャンバ32内の液面62、63を下まわる。この構成では、閉じ込められたガス71の圧力が屈曲部の両側の液頭と釣り合い、その結果、屈曲部の両側で液頭(チャンバ31、32内の絶対液面ではなく、各チャンバ31、32内の液面と導管41の屈曲部の対応する側における液面との差)が同一になる。カートリッジの回転速度が変化したりカートリッジが停止したりした場合でも、流路41内に閉じ込められたガス71によって、液体63をチャンバ32内に保持することができる。
【0040】
図1Eを参照して、第1チャンバ31内の液体62が、流路53を介して下流液体ハンドリング構造22へと流れると、第1チャンバ31内の液体62の液面が低下し、(第1チャンバ31と導管41の間の)液体62の液頭が下がる。導管41の一方の側での液頭の減少により、導管41の反対側の液体63の液頭も減少する。この理由は、屈曲部の両側の液頭は、閉じ込められたガス71の圧力と釣り合わなければならず、したがって同一でなければならないからである。第2チャンバ32と関連する液頭を減少させるために、第2チャンバ32から液体63が導管41内に流れ、導管の屈曲部へと向かう。これが生じると、液体63の液頭が液体62の液頭と再び釣り合うまで、第2チャンバ32内の液体63の液面が低下する。
【0041】
図1Fを参照して、液体62が流れて第1チャンバ31が空になると、ガス71がチャンバ31を通して放出され、液体63に関連する液頭と釣り合う圧力が存在しなくなる。図1Fは、液体63の体積が、導管41の半径方向の最内点に対応する液面まで導管41とチャンバ32を満たす特定の構成を示している。しかしながら、毛管力は液体63を導管41内に引き込む傾向がある。さらに、チャンバ31に隣接する側で導管41内に残る液体が、導管41から流れ出るときにガス71に負圧を与え、液体63を導管41内にさらに引き込む。流路41内で、チャンバ32内の液面よりも半径方向外側の位置まで液体63が前進するや否や、遠心力が作用してチャンバ31内に液体63を吸い上げる。これについてはさらに詳細に後述する。
【0042】
上述した理想的な条件下では、液体63の体積が、導管41の半径方向最内点に対応する液面までチャンバ32および導管41を満たすものである場合、毛管作用および液体62による残留負圧に起因して、任意の回転数で、チャンバ32からチャンバ31に液体を移すサイフォン作用が起きる。実際には、この閾値を越えて液体63の量を増やすことによって、正確な体積の測定に頼ることなく、任意の回転数で確実に汲み出しを行うことができる。その理由は、液体63の液頭が、導管41の半径方向最内点を越えて液体63を「押して」、サイフォン作用を生じさせるからである。
【0043】
たとえ体積がこの閾値体積をいくらか下まわっていても、液体63の体積が閾値体積を下まわる場合にチャンバ31内の液体63の液面を越える導管41内の液頭と関連する遠心力に打ち勝つように設計された寸法、形状および表面特性を導管41が有していれば、依然としてサイフォン状態を達成可能である。しかしながら、回転数が比較的低いときでさえ、任意の適切な液頭に作用する遠心力と比較すると毛管力は一般に小さいので、液体63を空にするようなサイフォンは、閾値回転数を上限に達成することができるに過ぎない。
【0044】
他方、液体63の体積が、充填後の初期液頭が液体62の液頭と釣り合うことができる体積よりも大きい場合、上述したシーケンシング動作を無効にする所望の時点の前に、導管41を越えて液体63が押される。具体的には、チャンバ32と導管41の対応する脚とが閾値体積よりも大きな体積で満たされるので、液体63が導管41の半径方向最内点まで前進した時点で残留液頭が残る。液体63のチャンバ31内への流れが阻止される場合、残留液頭がガス71の圧力、ひいては液体62の液頭と釣り合う必要がある。これは、液体62の液頭がゼロになる前に、すなわち完全に空になる前に、このような条件下で液体63がチャンバ31に流れ込むことを意味する。シーケンシングを成功とみなすために、液体63内でどの程度の残留液頭(ひいては液体62内の残留液頭)が許容できるかは、複数の要因によって決まる。この要因には、回転速度とともに液体63のチャンバ31に向かう流速を決定する導管の形状および表面特性、閉じ込められたガスの量(および、液体63がチャンバ31に向けて流れ始めるときの、導管41内での液体62と液体63の間の差)、液体62、63の混和性の程度、および、所与の用途に対して許容可能である、下流液体ハンドリング構造22への液体62の流れの終端における液体62と液体63の重なりすなわち混合の量を含む。
【0045】
デバイスが上述のように液体をシーケンシングするように機能する、チャンバ31および導管41内の液体63の体積の範囲が存在することが分かる。閾値体積の前後で、反対する液頭に打ち勝つのに十分な毛管力、または適切なサイズの液頭のいずれかによって、導管41を越えて液体63が押し出され、サイフォン作用が実現される。しかしながら、閾値体積をはるかに下まわる体積では、反対する液体63の液頭に毛管力が打ち勝つことができないか、または、出口で液頭が大きすぎて吸い出しが早くなりすぎる場合がある。閾値体積および体積変動への感度は、当業者にはすぐに分かるように、初期体積と、デバイスの様々な部分の構成(寸法、形状および表面特性)とによって決まる。
【0046】
同様に、上述の図面は、主要な相互作用の模式的な表現であり、チャンバ31を空にする間に閉じ込め液頭が減少して圧力が低下するときの、チャンバ31、32が完全に満たされていた圧縮状態からのガス71の膨張などの、二次的な効果を無視していることが理解されるだろう。この膨張のために、ガス圧と液頭とが新たな均衡状態に到達するまで、チャンバ31が完全に空になる前にガスの泡が導管41から漏れることがあるが、上述したシーケンシング動作に影響を与えることはない。
【0047】
図1Gを参照して、液体63が導管内でチャンバ32内の液面を越えて半径方向に前進した後で、サイフォン作用が液体をチャンバ31内に引き出し、液体63がチャンバ31を充填し始める。チャンバ31が液体63で満たされると、液体63が導管53を通して液体62の後に続き始め、下流液体ハンドリング構造22に連続的に分配する。
【0048】
図1Hを参照すると、媒体のガス体積を用いずに同一の液体63でチャンバ31、32が満たされており、したがって、遠心力によりチャンバ31、32内の液面を均等化する連通管として機能する。液体63が導管53を通して流れ続けると、図1Iに示すように、チャンバ31、32(チャンバ31へのポートが導管41の半径方向最外点にある場合、導管41を含む)が完全に空になるまで、チャンバ31、32の両方の液面が低下する。
【0049】
上述の説明は、模式的に図解された一つの特定の実施形態のものであり、多くの変形例が可能であることを認めるであろう。例えば、上流液体ハンドリング構造21が単一の液体61で満たされる必要はないし、様々なチャンバ、容器または流路で上流液体ハンドリング構造21を構成することができる。一例は、性質の異なる特定の液体(例えば、緩衝液と希釈された血漿、または任意の他の液体)をそれぞれ有する二つの上流チャンバを持つ上流液体ハンドリング構造であり、各チャンバは、流路51、52によってシーケンシング構造にそれぞれ個別に接続される。この構成により、二つの異なる液体のシーケンシャルな流れパターンが生じる(上述の例では、最初に緩衝液が流れ、続いて希釈された血漿または任意の他の液体が流れる)。
【0050】
一部の実施形態は、チャンバ31、32のうち一つを省略する。具体的には、一実施形態では、チャンバ32と流路52とを必要とせず、流路41がチャンバ31を上流回路21に直接接続する。この場合、上述のようにガス71の体積を導管41内に閉じ込めるために、チャンバ31に入る液体62の流速が、上流回路21から流路41へと到来する液体61の流速よりも十分に大きいことが主な要件である。後者の場合、そのタイプの流速を用いて、閉じ込められたガス71によって流路41の一部が満たされる。したがって、チャンバ31を満たした液体62と、上流回路21からの液体61との液体シーケンシングが可能になる。
【0051】
流路断面は流体抵抗に逆相関するので、流路が異なる断面積を有するように設計することによって、上述した流速の制御を容易に実現することができる。代替的に、半径方向位置に応じた流速に基づき異なる半径に流路を配置することによって、流速を制御してもよい。
【0052】
一部の実施形態では、上述のチャンバが対応する流路で置き換えられ、上述した効果を引き出すために規定の位置に流路を配置する。
【0053】
液体62、63を導管41内に配置することによって閉じ込められたガス71が圧縮されるので、閉じ込められたガス71の圧力はチャンバ31、32内の圧力(例えば大気圧)よりも高くなる。
【0054】
一部の実施形態では、三つ以上の液体がシーケンシングされる。複数のシーケンシャルフローの一例は、並列に(流路またはチャンバのいずれかである一つの同一の流体構造につながる)または直列に(特定の流体構造に流路が接続され、次に流体構造が別の流路に接続される)配置された、流路41と同様の性質を持つ複数の流路を使用することを含む。より多数のシーケンシャルフローを実現するために、直列配置と並列配置の組み合わせも想定される。
【0055】
上流液体ハンドリング構造21と下流液体ハンドリング構造22は、任意のタイプの液体ハンドリング構成を含んでもよい。すなわち、アリコーティングユニット、混合ユニット、微粒子分離ユニット、検出構造、または任意のタイプの流体機能構造を含んでもよい。
【0056】
特に、デバイスの回転速度を変更することなくシーケンシャルフローを実行するように、上述の実施形態を使用することができる。これは、機械的安定性や信号取得の安定性が極めて重要である多くの検出用途で有利になる。
【0057】
図2を参照して、四つの液体の流れをシーケンシング可能である一つの特定の実施形態について説明する。ディスク形態のカートリッジ100は、回転軸110と、内側輪郭120と、外側輪郭130とを有する。カートリッジは、特定の回転プロトコルで適切に動作するときに分析機能を実行するように設計された様々な液体ハンドリング構造を収容している。
【0058】
カートリッジ100は、図2には示されていない上流液体ハンドリング構造を備える。上流液体ハンドリング構造は、導管310、340、330によってそれぞれチャンバ210、230、220に接続されている。さらに、導管320が上流液体ハンドリング構造(単数または複数)をチャンバ210に接続する。液体ハンドリング構造には、(例えば、導管310、320、330、340に特定の液体を運ぶ)アリコーティング構造、混合構造、血漿分離構造、計量構造などが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で述べる流体シーケンシング機能の前に、一連の異なる流体機能を実行することができる。
【0059】
所定の回転プロトコルの特定時点において、以下で説明するように、流路310、320、330、340内を上流液体ハンドリング構造からチャンバ210、220、230内に液体が流れ始める。
【0060】
第1液体用の第1流れ経路は、下流液体ハンドリング構造につながる出口導管510を有するチャンバ210に供給する導管310を含む。図2に示す特定の実施形態では、下流液体ハンドリング構造は、出口導管510から供給されるとともに導管520によって廃棄チャンバ240に接続される検出チャンバ250を含む。しかしながら、本明細書に記載の実施形態は、下流液体ハンドリング構造のこの特定の構成に限定されない。むしろ、記載したシーケンシング機構は、シーケンシングされた液体で供給される下流液体ハンドリング構造とは無関係に適用可能であり、用途に応じて他の下流液体ハンドリング構造を容易に採用することができる。
【0061】
第2液体用の第2液体流れ経路は、チャンバ230に流れ込む導管340を含む。チャンバ230は導管430によってチャンバ210に接続される。チャンバ210からは、第2流れ経路は上述の第1流れ経路と同一である。導管430は、上述した導管41と類似の半径方向内向きの屈曲部で構成され、上述したようにチャンバ230からチャンバ210に液体をシーケンシングする。
【0062】
第3液体用の第3液体流れ経路は、チャンバ220に流れ込む導管330を含む。チャンバ220は導管420によってチャンバ210に接続される。導管420は上述の導管41と同様に構成され、チャンバ220からチャンバ210への流れをシーケンシングする。チャンバ210からは、第3流れ経路は第1および第2流れ経路と同一であり、導管510を通り下流に向かう。
【0063】
第4液体用の第4液体流れ経路は、チャンバ210に流れ込む導管320を含む。ここからは、第4液体流れ経路は第3、第2および第1流れ経路と同一であり、導管510を通り下流に向かう。導管320には、上流液体ハンドリング構造から直接流れ込む。導管320は上述の導管41と類似の半径方向内向きの屈曲部で構成され、上流液体ハンドリング構造の関連部分からチャンバ210に液体をシーケンシングする。
【0064】
関係する導管の形状、寸法および/または表面特性の適切な設計によって、(導管310、320、420および430から)チャンバ210への流入速度が、チャンバ210から導管510を通る流出速度よりも大きくなるように、カートリッジ100が構成される。その結果、導管310、320、420または430のうちの一つからチャンバ210へと液体が流れる限り、チャンバ210内の液面が上昇し、チャンバ210への液体の流入がなくなり、導管510を通した液体の流出のみが存在する場合にのみ、チャンバ210内の液面が低下する。
【0065】
導管310、320、420および430からチャンバ210へのポートは、導管420のポートが導管430のポートよりも半径方向外側に配置され、導管320のポートが導管420のポートよりも半径方向外側に配置されるように構成される。以下で詳細に説明するように、半径方向ポート位置のこの構成が、液体流のシーケンスを決定する。加えて、図2に示す特定の実施形態では、導管310からチャンバ210へのポートが、上述した他のポートよりも半径方向内側に配置されるが、これは液体のシーケンシングを制約するものではない。また、以下で説明するシーケンスから逸脱することなく、導管310の他のポート配置も等しく実施可能である。
【0066】
最初に、導管310、340、330がそれそれチャンバ210、230、220を満たす。導管41について説明したように、各導管の屈曲部で導管420、430内にガスが閉じ込められるように、それぞれの流速が調整される。同時に、導管320の半径方向内向きの屈曲部内で、上流液体ハンドリング構造から前進する液体と、毛管力によりチャンバ210から流路320へ進む液体と、の間にガスが閉じ込められるような速度で、上流液体ハンドリング構造から流路320へ液体が流れる。この段階で、導管310からの液体でチャンバ210が満たされ、導管340からの液体でチャンバ230が満たされ、導管330からの液体でチャンバ220が満たされる一方、液体が導管320内に保持される。同時に、チャンバ210内に流れる液体の速度よりも低速で、チャンバ210から導管510を通して液体が流れ始めることができる。または、チャンバ210からの流出を一時的にブロックするための手段を導管510に設けてもよい。
【0067】
一時的なブロックの例は、逆向きの遠心力で初期回転時に導管510内の液体流れをブロックする、導管510内に配置される毛管サイフォン構造であってもよい。毛管サイフォン構造は、毛管サイフォンのプライミングの後に液体を流すことができ(回転数が十分に低下すると、毛管力によりサイフォンの頂上を越えて液体が前進する)、その後で、サイフォン効果により液体が導管510内を自由に流れることができる。これは当業者には周知である。
【0068】
チャンバ210からの液体の流出が最初に中断されたか否かにかかわらず、導管310からチャンバ210へと液体が流れる限り、チャンバ210内の液面は上昇する(または少なくとも一定に留まる)。導管310からチャンバ210への流入が停止すると、カートリッジ100が回転し続ける間、導管510を通る流出が継続し、チャンバ210内の液面が低下し始める。
【0069】
チャンバ210を導管430に接続するポートよりもチャンバ210の液面が低下すると、導管430内に閉じ込められていたガスが放出され、チャンバ230からチャンバ210への液体の流れが始まる一方、チャンバ220と導管320内に液体が保持される。導管430を通る流入速度は、チャンバ210から導管510を通る流出速度と少なくとも等しいかそれ以上になるように構成される。したがって、チャンバ230から導管430を通りチャンバ210に向かう液体が停止するまで、チャンバ210内の液面が安定するか、または再び上昇する。
【0070】
この段階では、チャンバ210内の液面が導管420のポートまでまたはその直下まで低下して導管420内に閉じ込められていたガスを放出するまで、チャンバ210内の液面が再び低下し始め、チャンバ220から導管420を通りチャンバ210に入る液体流れが開始する一方、液体が導管320内に保持される。その結果、チャンバ230からの流れについて説明したように、チャンバ210内の液面が再び安定するかまたは上昇する。
【0071】
チャンバ220からチャンバ210への液体の流れが止まると、導管320からのポートに到達するまでチャンバ210内の液面が再び低下する。この段階で、導管320内に閉じ込められたガスが放出され、導管320からチャンバ210へと液体が流れ始め、導管510を通って下流に向かう。
【0072】
上述したように、図2の実施形態により、第1、第2、第3および第4の液体を共通のシーケンシングチャンバ(チャンバ210)内に順に流すことが可能になり、このチャンバから、液体を順に下流に向けて(導管510を通り、任意の適切な下流液体ハンドリング構造を通して)流すことができる。こうして、図2の実施形態は、共通のシーケンシングチャンバにつながる各ポート適切な配置と、図1を参照して説明した原理に沿ったチャンバに流れ込む導管の構成とによって、共通のシーケンシングチャンバを通した四つの液体のシーケンシングを提供する。
【0073】
上記の液体流れのシーケンスが一定の回転数(ゆえに一定の遠心駆動力)で達成可能であり、特定の回転プロトコルが不要である点が重要である。上述のように、これは光学検出プロセスにとって有益であり、シーケンシングの実現のために一定回転数が要求されないので、カートリッジ100に実装される液体ハンドリング機能に応じて回転プロトコルを設計することが可能になる。
【0074】
上記の実施形態が任意の特定の液体に限定されないことは明らかであり、液体は全て同一であっても、異なっていても、その組み合わせであってもよい。しかしながら、説明を目的として、四つの液体のこのようなシーケンスが応用される例として、光学検出技術を用いたサンプル内の抗体の検出がある。この例では、第1液体は、検出構造250を初期洗浄し基線読み取りをするための参考液体である。第2液体は、検出構造250内で固定化された抗体を結合することによって特定される物質(抗原)を含むサンプルである。蛍光顕微鏡検査法または表面プラズモン共鳴などの光学技術によって、この結合を検出することができる。第3液体は、検出構造内での抗体と抗原の結合に関連する信号を増幅して結合イベントの定量分析を容易にする増幅物質である。第4液体は、最初に求められた基線と比較する信号の後続の検出のために、あらゆる未結合の抗体と増幅物を洗い流す洗浄液体である。最後の洗浄と最初の洗浄/基線のために用いられる液体は、同一の液体であることが多い。当然ながら、これは四つの液体シーケンスの特定の用途例に過ぎず、説明した実施形態は、四つの液体またはそれ以上やそれ以下の液体がシーケンシングされようと、液体シーケンシングの任意の用途に適用可能であることが理解されるだろう。
【0075】
説明した実施形態により、能動素子の必要なしに、また複雑な表面張力条件や特定の回転数プロトコルを設ける必要なしに、上流液体ハンドリング構造から下流液体ハンドリング構造へのシーケンシャルな液体(例えば、図2の実施形態における四つの液体)の流れが可能になる。例えば液体流れのシーケンシングのために直列の毛管サイフォンが採用される場合、加減速を繰り返すことなくカートリッジを一定の回転数で回転させつつ、上述の液体流れのシーケンスの全てを発生させられることが強調される。(当然ながら、液体シーケンスの最中に回転数を変化させることは可能であるが、これは上述した液体流れの所望のシーケンスを達成するために必要ではない。)多くの用途において、特に光学検出が使用されるカートリッジにおいて、液体のシーケンシャルな流れの間カートリッジ100を常に同一の回転数で回転させることは、大きな優位点となりうる。光学検出システムでは、一定の回転数は、信号対雑音比の増加に寄与することがある。
【0076】
上述した実施形態は、液体流れをシーケンシングし制御するために、導管内でのガスの閉じ込めを利用する。しかしながら、望ましくない圧力差がカートリッジ100の周りでの液体流れを妨げないようにするため、液体ハンドリングシステムの他の領域では均圧化が確保される必要がある。この目的のために、半径方向内向きのかたちの追加の導管620によってチャンバ210と220が接続され、二つのチャンバ管の圧力が常に釣り合うようにするベント導管を提供する。同じく、同様のベント回路610によってチャンバ210がチャンバ230に接続される。さらなるベント導管(図示せず)が、チャンバ210、220または230のうちの一つを大気圧または閉鎖されたベント回路(上流から下流に流れる液体によって置き換えられるとき、下流領域からカートリッジの周囲にガスを移動させることができる回路)に接続し、上流流体構造から流路310、320、330および340を通る効率な流れを確保する。同様に、廃棄チャンバ240が大気圧またはベント導管630によるベント回路に接続され、廃棄チャンバ240だけでなく導管510、520を開放し、また、チャンバ210から導管510へと下流に液体が流れるとき、検出構造250を開放する。上述した実施形態は、カートリッジ100の周りを均圧化する任意の特定の方法に限定されず、カートリッジのあらゆる場所の液体の流れを妨げないように適切な圧力条件を維持する多くの方法が当業者には明らかであることが認められよう。
【0077】
図3を参照して、カートリッジ100(または説明した実施形態に係る他のデバイス)を駆動する駆動システム700は、カートリッジ100または他のデバイスにおける液体流れを駆動する駆動力の付加を制御するコントローラ710を備える。遠心力を用いて液体流れを駆動するために回転するよう構成されたカートリッジの特定の例では、システム700は、コントローラ710の制御下にあるモータ720を備える。一つの特定の実施形態では、モータ720は、カートリッジ100の内側輪郭120と係合するスピンドルに結合される。コントローラ710は、所定のスケジュールにしたがって駆動力を制御するように構成される。例えば、カートリッジ100の周りに液体を配分するために初期回転し、続いて、短時間の減速によって導管510内の毛管サイフォンにプライミングし、続いて、再加速と一定回転数での回転により、上述のようにカートリッジ100内で液体をシーケンシングする。
【0078】
上記の説明は、表面張力パターンを用いようと用いまいと、平坦なチャンバまたは流路に限定されるわけではなく、曲線の構造または表面で使用することもできる。一部の実施形態では、さらに別の導管およびチャンバを使用して、上述したものよりも多い数の液体の流れをシーケンシングする。
【0079】
遠心力マイクロ流体デバイスの観点から上記の説明を行ったが、上述した原理とともに、回転するデバイス内で遠心力以外の駆動力も等しく利用可能であることが理解されるだろう。上記の例を用いて、遠心力などの体積力、重力、または帯電した液体の電気力や電場も利用される。圧力差または他の手段などの他の駆動力とともに、他のシーケンシング構造を使用してもよい。さらに、上述した実施形態は、液体流れを現実的にブロックする目的でガスを閉じ込める半径方向内向きの屈曲部を持つ導管を利用するが、本発明はそのような構造に限定されるわけではなく、液体流れを開放可能にブロックするためにガスを閉じ込める任意の他の手段および導管形状も等しく利用することができる。
【0080】
実施形態はマイクロ流体的スケールに限定されず、例えば巨視的スケールなどの他のスケールへの応用も等しく想定される。誤解を避けるために、本明細書における「マイクロ流体」という用語は、1mm未満の寸法を少なくとも一つ有する容器または流路などの流体素子を有するデバイスを意味するために用いられる。
【0081】
本発明は、説明した特定の実施形態および実施例に限定されず、請求項によって規定されるよう意図されている。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図2
図3