(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116558
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20170410BHJP
G06F 3/046 20060101ALI20170410BHJP
H01F 27/36 20060101ALI20170410BHJP
H01F 1/20 20060101ALI20170410BHJP
H01F 1/36 20060101ALI20170410BHJP
H01F 1/34 20060101ALI20170410BHJP
G01C 17/28 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
G06F3/041 662
G06F3/046 A
H01F27/36 B
H01F1/20
H01F1/36
H01F1/34 140
G01C17/28
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-520120(P2014-520120)
(86)(22)【出願日】2012年7月10日
(65)【公表番号】特表2014-523588(P2014-523588A)
(43)【公表日】2014年9月11日
(86)【国際出願番号】KR2012005460
(87)【国際公開番号】WO2013009071
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年5月14日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0068641
(32)【優先日】2011年7月11日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2011-0105362
(32)【優先日】2011年10月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503447036
【氏名又は名称】サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ユ ソプ
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ジュ フン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、 ソン テ
【審査官】
原 秀人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−252660(JP,A)
【文献】
特開2010−266911(JP,A)
【文献】
特開2011−064592(JP,A)
【文献】
特開平02−051083(JP,A)
【文献】
システム&ソリューション,月刊新医療 6月号,日本,株式会社エム・イー振興協会,2001年 6月 1日,第28巻第6号,pp. 150-151
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/046
G01C 17/28
H01F 1/20
H01F 1/34
H01F 1/36
H01F 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ画面を出力するディスプレイ部と、
前記ディスプレイ部の下方に配置され、入力装置の外部の電磁気ペンから生成された磁場を感知する電磁気センシング部と、
前記電磁気センシング部の下面上に形成され、前記磁場の少なくとも一部を遮蔽し、磁性体物質を含む遮蔽層と、
前記遮蔽層の少なくとも一部の下方に配置され、前記遮蔽層を通過する地球磁場を感知する地磁気センサーと、
を含み、
前記遮蔽層は、地球磁場の一部を透過させる磁性体粉末が散布された磁性体粉末遮蔽層及び前記磁場を遮断させる非晶質金属薄膜を使用した遮蔽層により構成されることを特徴とする、入力装置。
【請求項2】
前記磁性体粉末遮蔽層は、
磁性体粉末と接着剤を混合して塗布することによって形成されることを特徴とする、請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記磁性体粉末遮蔽層は、
透磁率がDC帯域において100乃至200μ0の密度を有することを特徴とする、請求項1に記載の入力装置。
【請求項4】
前記磁性体粉末遮蔽層は、
厚さが50μm以上であり、前記の厚さは前記磁性体粉末遮蔽層の透磁率によって変わることを特徴とする、請求項1に記載の入力装置。
【請求項5】
前記磁性体物質は、磁性体粉末を含み、
フェライト(ferrite)、MPP(Molypermalloy powder)、Fe−Si−Al系列の材質、Ni−Fe系列の材質のうち、いずれか1つである磁性金属粉末であることを特徴とする、請求項1に記載の入力装置。
【請求項6】
前記遮蔽層は、
前記磁性金属粉末及び非晶質金属粉末が接着剤と共に混合されて形成されることを特徴とする、請求項5に記載の入力装置。
【請求項7】
前記磁性体粉末遮蔽層は、
前記電磁気センシング部の下部一面に塗布されて形成されることを特徴とする、請求項1に記載の入力装置。
【請求項8】
前記磁性体粉末遮蔽層の下方に配置され、前記地磁気センサーが配置される印刷回路基板部をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の入力装置。
【請求項9】
前記印刷回路基板部の一面または一側面に磁石部品が配置される場合、
前記磁性体粉末遮蔽層の下方で、かつ前記磁石部品と隣接した位置に非晶質金属薄膜を使用した遮蔽層をさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載の入力装置。
【請求項10】
前記磁性体粉末遮蔽層は前記電磁気センシング部の一面に塗布されて形成され、前記非晶質金属薄膜を使用した遮蔽層は前記磁性体粉末遮蔽層の一部分に配置されることを特徴とする、請求項9に記載の入力装置。
【請求項11】
前記磁石部品は、
スピーカー、カメラのうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項9に記載の入力装置。
【請求項12】
前記磁性体粉末遮蔽層及び前記非晶質金属薄膜を使用した遮蔽層の配置位置は、
前記地磁気センサーの位置によって変わることを特徴とする、請求項1に記載の入力装置。
【請求項13】
前記磁性体粉末遮蔽層は前記地磁気センサーの周囲に配置され、前記磁性体粉末遮蔽層が配置された領域以外には前記非晶質金属薄膜を使用した遮蔽層が配置されることを特徴とする、請求項1に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポインティング入力装置に係り、より詳しくは、地磁気センサーにより感知する地磁界(Earth’s Magnetic Field)は透過されるようにする磁場遮蔽層を有するポインティング入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、スマートフォンまたはタッチスクリーンと関連した市場が急速に成長するにつれて、これと関連した研究も活発に進められている。このような移動端末機の入力装置としてタッチスクリーンが多く使われている。タッチスクリーンは、通常透明電極からなり、最近ではタッチにより発生する静電容量の変化を測定する静電容量方式(Capacitive Type)のタッチスクリーンがよく使われる。ところが、静電容量方式のタッチスクリーンはユーザがタッチスクリーンに接触を遂行して所定の圧力または変位を提供しなければならないという不便性が存在し、ペンを用いた入力が可能でないという短所がある。
【0003】
このような短所を克服するために、最近、電磁波を用いる方式のタッチスクリーン技術が多く用いられる。この方式のポインティング入力装置はその種類が多様であるが、一例に電磁気共振(Electro Magnetic Resonance、EMR)方式のポインティング入力装置がある。
【0004】
しかしながら、上記移動端末機のような電子機器はポインティング入力装置を取り付ける機構物、バッテリー、各種の回路部などを含み、これらは磁場遮断、撹乱の原因になることもある。したがって、ポインティング入力装置の性能に悪影響を及ぼすので、これを防止するために磁場遮蔽層が使われる。
【0005】
一方、移動端末機は使用の便利性やエンターテインメント的な面白みを増大させるためにさまざまな付加的な機能が採用されている。このような一例として、移動端末機の動きの程度によって画面が変わる機能がある。このような動きを感知するために移動端末機には地磁気センサーが取り付けられるようになる。しかしながら、このような地磁気センサーをポインティング入力装置に具備しようとする場合には、磁場遮蔽層が存在することによって地磁気センサーの動作が影響を受けるようになる。
【0006】
また、移動端末機には地磁気センサー以外に、スピーカー、カメラなど、強い磁石を有する部品も共に取り付けられる。このような磁石部品は強い低周波磁界を生成するので、磁場遮蔽層が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、磁場遮蔽層は渦電流が誘導されないようにして電磁気ペンの位置を正確に追跡することを可能にする。しかしながら、磁場遮蔽層の近くに地磁気センサーが配置されれば、地磁界(Earth’s Magnetic Field)のような低周波磁界は磁場遮蔽層により遮断または歪曲されるので、正確な地磁気センサーの動作が困難になる。
【0008】
したがって、磁場遮蔽層の下方に配置される機構物、バッテリー、各種の回路部により発生される磁場を遮断することによって、磁場減殺を防ぎながらも、地磁気センサーにより感知する地磁界は透過されるようにして地磁気センサーの作動に影響を及ぼさない磁場遮蔽層が要求される実状である。また、移動端末機をはじめとするポインティング入力装置が磁石部品を含む場合には、磁石部品により生成される強い低周波磁界信号は効果的に遮断すると共に、地磁気センサーの動作を保証する程度の低周波磁界は透過されるようにする磁場遮蔽層が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は地磁気センサーの動作に影響を及ぼさない磁場遮蔽層を有するポインティング入力装置を提供する。
【0010】
また、本発明は地磁気センサーにより地磁界が感知できるように印加される磁場を一部透過させる磁場遮蔽層を有するポインティング入力装置を提供する。
【0011】
また、本発明は地磁気センサーにより地磁界が感知できるようにすると共に、磁石部品による磁界信号は効果的に遮断する磁場遮蔽層を有するポインティング入力装置を提供する。
【0012】
上記したことを達成するための本発明は、磁場遮蔽層を有するポインティング入力装置において、ディスプレイ画面を出力するディスプレイ部と、上記ディスプレイ部の下方に配置され、上記ディスプレイ部の上面に近接または接触した電磁気ペンから生成された磁場を感知する電磁気センシング部と、上記電磁気センシング部の下方に配置され、印加される磁場を一部透過させる磁性体粉末が散布された部分的磁場遮蔽層と、上記ポインティング入力装置の内に配置され、上記部分的磁場遮蔽層を経由して印加される磁場を感知する地磁気センサーとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従う磁場遮蔽層は、ポインティング入力装置において磁場遮蔽層の下方に導電体があっても電磁気ペンにより発生される磁場が到達しないようにし、かつポインティング入力装置の内部に設置された地磁気センサーの動作に及ぼす影響を最小化できる。
【0014】
また、本発明に従う磁場遮蔽層に磁性体粉末を使用することによって、ポインティング入力装置に別途の接着層無しで直接的な磁場遮蔽層の形成が可能であるので、ポインティング入力装置の厚さの減少が可能である。
【0015】
また、本発明においては互いに異なる磁性体粉末の混合使用により地磁気センサーへの影響を最小化し、かつ感度を最大化できる。
【0016】
また、本発明においては粉末磁性材料のような低い磁場遮蔽特性を有する磁場遮蔽層と非晶質金属のような高い遮蔽特性を有する磁場遮蔽層を地磁気センサー、スピーカー、カメラの位置を考慮して配置することによって、地磁気センサーの性能及びポインティング入力装置の性能を全て保証できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態による磁場遮蔽層を有するポインティング入力装置を概略的に示す図である。
【
図2】渦電流による磁場相殺を説明するための図である。
【
図3】比較例によるポインティング入力装置の断面図である。
【
図4】(a)は、非晶質金属を使用しない場合の磁場センサーの特性を、(b)は、従来の非晶質金属を使用した場合の磁場センサーの特性を示すグラフである。
【
図5】非晶質金属周波数別透磁率特性を示すグラフである。
【
図6】非晶質金属及び磁性体粉末に対する周波数別透磁率特性を示すグラフである。
【
図7】本発明の一実施形態に従う磁場遮蔽層が配置された形態を説明するための断面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に従う磁場遮蔽層が配置された形態を説明するための配置図である。
【
図10】本発明の実施形態に従って磁性体粉末物質を使用した場合の地磁気センサーの特性を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施形態に従って非晶質金属と透磁率が150μ0である磁性体粉末を使用した場合の感度比較を示すグラフである。
【
図12】本発明の更に他の実施形態に従う磁場遮蔽層が配置された形態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態を、添付した図面を参照してより詳細に説明する。図面中、同一の構成要素はできる限り同一の符号により表していることに留意しなければならない。以下の説明及び添付図面において本発明の要旨を曖昧にする公知機能及び構成に対する詳細な説明は省略する。
【0019】
本発明は、電磁気ペンを使用するタッチスクリーン方式のポインティング入力装置において地磁気センサーの動作には影響を及ぼさない磁場遮蔽層を提供する。このための本発明に従う磁場遮蔽層は磁性体粉末(metal powder)物質により構成される。このような磁場遮蔽層は磁性体粉末と接着剤が混合されて塗布されることによって、別途の接着層無しでポインティング入力装置に直接形成できる。
【0020】
本発明を説明する前に、本発明において用いられる電磁気共振方式のポインティング入力装置の動作原理を簡略に説明する。このようなポインティング入力装置はタッチスクリーンを備える。
【0021】
このために、
図1を参照すると、電磁気共振方式は、電磁気センシング部115にループコイル110を配置し、ここに電流を導通させて磁場が発生するように制御し、発生した磁場が電磁気ペン102により吸収できるように制御する。ここで、電磁気ペン102はキャパシタ100及びコイル105を含むことができ、吸収した磁場をまた所定の周波数により放出する。
【0022】
電磁気ペン102により放出された磁場は、電磁気センシング部115のループコイル110によりまた吸収され、これによって、電磁気ペン102がポインティング入力装置のどの位置に近接しているかを判断できる。
【0023】
このように、電磁気センシング部115には電磁気ペン102と相互作用する多数のループコイル110が備えられ、このような多数のループコイル110は互いに重なって配置されている。もし、ユーザが複数個のループコイル110の特定の部分の近くに電磁気ペン102を近接させれば、複数個のループコイル110は電磁気ペン102から発生する磁場をセンシングする。ここで、複数個のループコイル110の各々はセンシングされた磁場により誘導された誘導電流を出力するようになる。電磁気センシング部115の複数個のループコイル110のうち、電磁気ペン102と近接したループであるほど振幅の大きい磁場をセンシングして、これに対応する誘導電流を放出する。これによって、複数個のループコイル110は、多様なサイズの誘導電流を出力するので、ループコイル110の出力を測定すれば電磁気ペン102の位置を追跡できる。
【0024】
一方、電磁気センシング部115の下方には磁場遮蔽層120が備えられる。このような磁場遮蔽層120の下方にはポインティング入力装置を堅く取付させる機構物、バッテリー、各種の回路部などが配置される印刷回路基板部130が備えられる。このような磁場遮蔽層120は、その下方に置かれる印刷回路基板部130の上面に配置される回路部等から発生する磁場により磁場減殺されないように磁場を遮断する役割をする。
【0025】
図2を参照して磁場遮蔽層の原理を簡略に説明すれば、次の通りである。
図2は、磁場遮蔽層無しで磁場が抵抗の低い導電物質である金属に加えられた場合を仮定したものである。電気的抵抗の低い物質に磁場が加えられれば、渦電流(eddy current)が生成される。渦電流は、加えられたコイル磁場の反対方向の磁場を発生させて渦電流磁場を生成し、結果的に渦電流磁場とコイル磁場とは互いに相殺されて減少するようになる。したがって、電磁気ペン102により放出される磁場の強度が減少し誤動作の可能性が増えるようになる。即ち、電磁気ペン102は電磁気センシング部115の最大距離内において感知され得る。
【0026】
これを防止するために磁場遮蔽層120が使われる。このような場合、コイル磁場はその磁場遮蔽層120の下方には到達しなくなるので、下方に導電体があっても渦電流が生成されないので磁場減殺がなくなる。これによって、磁場減殺無しで磁場遮蔽層120に接している電磁気センシング部115までコイル磁場が到達するので、電磁気ペン102により誘導される磁場をセンシングできる。
【0027】
一般に、このようなポインティング入力装置用磁場遮蔽層には鉄(Fe)を基盤に珪素(Si)を配合した合金薄膜が使われる。最近では、鉄(Fe)、珪素(Si)、硼素(B)を混合し、結晶構造を無くした非晶質(amorphous)金属が使われている。上記のような金属の割合は使われるポインティング入力装置のタイプによって調節できる。このような非晶質金属は、ポインティング入力装置のために一般的に使われる数百KHz帯域と低周波数帯域における磁場に対する透磁率が極めて高く、導電率が高くて、高い磁場遮蔽性能を有する物質である。特に、非晶質金属はDC(Direct Current)における透磁率が他の物質に比べて極めて高い。
【0028】
しかしながら、このような非晶質金属からなる磁場遮蔽層120は、
図3に示すように、地磁気センサー125が近くに位置する場合には地磁気センサー125が感知する地磁界が磁場遮蔽層120により遮断または歪曲されることがある。言い換えると、DCにおける透磁率の高い非晶質金属120によりDC磁場である地磁界を感知することが困難になる。
【0029】
このような非晶質金属を使用した場合、地磁気センサーの特性を評価した結果は、
図4(b)に図示した通りである。
図4(a)及び
図4(b)に示すグラフは、各々非晶質金属がない場合とある場合にDC磁界を地磁気センサーの周囲に回転させながら加えた時の地磁気センサーの出力を描いたものである。加えられる磁界の方向は地磁気センサー出力の各方向成分の割合、即ちグラフのx、y方向出力の割合により定まる。したがって、地磁気センサーでは正確な磁場の方向を知るためには、2軸方向とも磁場の方向に対して同一な感度を有さなければならない。例えば、45度方向に磁場が加えられれば、各軸において測定された磁場の強さは同一でなければならない。
【0030】
したがって、地磁気センサーが正常に動作する間、一定のサイズの磁場が全ての方向に対して加えられれば、
図4(a)に示すように、2方向の磁場の強さは1つが増えれば1つが減り、2つの強さのベクトル(vector)の合計は一定の、即ち円の形態を有する。
【0031】
これとは異なり、地磁気センサーの近くに磁性体がある場合、
図4(a)に示す円は
図4(b)に示すように、中心が移動するか、または円でない楕円の形態を有するようになる。
図4(b)に示すグラフは地磁気センサーが非晶質金属の地磁界遮断、撹乱により誤動作することを意味する。その上、非晶質金属は残留磁場が大きくて、大きい磁場が加えられた時に磁化が維持されて、永久磁石のような役割をする。これによって、地磁気センサーに及ぼす影響が持続的に維持される。
【0032】
このような非晶質金属の特性を周波数別透磁率特性を示す
図5を参照して説明すると、
図5においては周波数100kHz以下の帯域における透磁率が1000μ0以上のものを示している。μ0は真空における透磁率である。
図5に示すように地磁気センサーに対して非晶質金属が及ぼす影響が極めて大きいことがわかる。
【0033】
したがって、地磁気センサーのような磁場をセンシングする機能が備えられたポインティング入力装置においては、このような地磁気センサーに影響を及ぼさずに磁場遮蔽機能も同時にすることができる磁場遮蔽層が要求される。
【0034】
このことを考慮して、本発明においては磁性体粉末物質により構成された磁場遮蔽層を提案する。このような磁性体粉末物質の特性を
図6を参照して説明すると、非晶質金属は500kHz帯域においては透磁率が170μ0以上であり、500kHz以下においては
図5のように10000μ0以上の透磁率を有する。このような場合、地磁気センサーにより感知する地磁界は非晶質金属により遮断または歪曲され、地磁気センサーによる動作が不可能になる。
【0035】
一方、本発明において用いられる磁性体粉末物質は、透磁率は500kHz帯域においては透磁率が100μ0であり、この透磁率は広い周波数領域に亘って維持される。その上、DC帯域における透磁率もこれと類似している。したがって、非晶質金属のDC透磁率が10000μ0以上のものと比較して見ると、磁性体粉末物質の透磁率は1/100であるので、非晶質金属に比べて地磁気センサーに及ぼす影響を最小化できることを表している。
【0036】
ここで、500kHzという使用帯域における透磁率が例えば、100μ0の場合を例示しているが、磁性体粉末物質を使用して透磁率が150μ0であるように磁場遮蔽層を構成することができる。このような場合、ポインティング入力装置の性能には大きい影響を及ぼさないながらも主に使用する帯域においては非晶質金属を使用した場合と類似な透磁率を有するので、電磁気ペンにより誘導される磁場を遮断することが可能である。その上、磁性体粉末物質の透磁率は広い周波数領域に亘って比較的低い透磁率が維持されるので、地磁気センサーにより感知する地磁界は透過可能である。
【0037】
以下、本発明の一実施形態により上記したような磁性体粉末物質により構成される磁場遮蔽層が配置された形態を説明するために
図7を参照する。
【0038】
図7は
図1のポインティング入力装置の断面図を例示し、ポインティング入力装置は、ディスプレイ部700、電磁気センシング部115、磁場遮蔽層120、地磁気センサー125、及び印刷回路基板部130を含む。
【0039】
まず、ディスプレイ部700はユーザが認識する視覚情報をディスプレイする領域である。ディスプレイ部700は、外部から制御信号またはグラフィック信号の入力を受けて、制御信号またはグラフィック信号に対応するディスプレイ画面を出力する。ディスプレイ部700は、好ましくはLCD(liquid crystal display)モジュールであるが、ディスプレイ部700の種類に制限がないことは当業者が容易に理解できる。
【0040】
電磁気センシング部115は、ディスプレイ部700の下面に隣接するように配置できる。このような電磁気センシング部115の細部的な構成は、
図1と関連して説明したことと同一である。このような電磁気センシング部115は、ディスプレイ部700の上面に近接または接触した電磁気ペンから入射される電磁気を感知して、ユーザがどの地点を指定したかを判断する。
【0041】
地磁気センサー125はこのようなポインティング入力装置の内に配列され、磁場遮蔽層120を経由して印加される地球磁場の一部を感知する。このような地磁気センサー125は電磁気ペンからの磁場に影響を受けない磁場遮蔽層120の下方に位置することができ、このような配置の他の例として、地磁気センサー125は印刷回路基板部130の上面に配置できる。
【0042】
印刷回路基板部130には、ポインティング入力装置を電気的に作動及び制御させる各種の電子部品などが備えられる。このような印刷回路基板部130の各種の電子部品から発生する電磁波をはじめとする磁場は、磁性体粉末物質からなる磁場遮蔽層120により遮断される。
【0043】
本発明の磁場遮蔽層120は磁性体粉末物質により構成され、電磁気センシング部115の下方に配置される。このような磁場遮蔽層120は、印加される磁場を一部透過できる部分的遮蔽層であって、磁性体粉末が散布(scattering)されることにより形成される層である。このような磁性体粉末には、フェライト(ferrite)、MPP(Molypermalloy powder)、Fe−Si−Al系列の材質(Sandust)、Ni−Fe系列の材質(Highflux)などと呼ばれる磁性金属粉末が使用できる。このような磁性体粉末は金属を使用する場合とは異なり、粉末形態を有するので、ポリマー(例えば、PP(Polypropylene)、PE(Polyethylene))のような接着剤と混合して塗布(spread)できる。また、このような粉末以外に非晶質金属粉末も共に使うことができ、上記磁性金属粉末及び非晶質金属粉末が接着剤と共に混合されて磁場遮蔽層120を形成することができる。磁性金属粉末及び非晶質金属粉末の混合割合は金属薄膜を使用した時と類似な透磁率を得ることができるように混合割合が決定される。
【0044】
このように、磁性体粉末により作られた磁場遮蔽層120は、磁性体粉末の密度に従って透磁率も変わる。磁性体粉末の密度を高める場合には磁場遮蔽層120の透磁率は増加するようになる。これによって、金属薄膜を使用した場合と類似な透磁率を得ることができるように磁場遮蔽層120の磁性体粉末の密度を作ることができ、金属薄膜とは異なり、地磁界は透過できるので、地磁気センサー125の動作に影響を及ぼさない。
【0045】
この際、磁場遮蔽層120を形成するようにポリマーと混合される磁性体粉末を混ぜる割合、即ち磁性体粉末の密度に従って磁場遮蔽層120の透磁率が変わる。本発明の実施形態に従う磁場遮蔽層120の透磁率はDC帯域において100乃至200μ0になるように密度が定まることが好ましい。これによって、
図10のような地磁気センサーの出力特性が得られるが、これは非晶質金属がない場合の地磁気センサーの出力特性を示す
図4(a)と類似している。即ち、磁性体粉末物質を使用した場合には地磁気センサー125が正常に動作する特性を表す。磁場遮蔽層120は磁性体粉末及び接着体の混合である。または、磁場遮蔽層120は接着剤と共に磁性体粉末及び非晶質金属粉末の混合になることができる。
【0046】
その上、このような磁性体粉末は接着剤と混合されるものであるので、電磁気センシング部115に塗布される形態により接着される。これによって、接着剤を塗布した後、金属薄膜を接着させる既存の磁場遮蔽層に比べて接着層が省略できるので、厚さの減少が可能になる。言い換えると、磁性体粉末物質は接着剤と混合される場合、液状形態を有するので、電磁気センシング部115の上面に均等に塗布できる。このように、既存の金属薄膜を使用した場合とは異なり、均等に塗布可能であるので、遮蔽性能において磁場遮蔽層120の全体面に均等な品質を示す。その上、磁場遮蔽層120は別途の接着層無しでポインティング入力装置に直接接着できるので、工程が単純化され、既存の接着層の厚さに該当する厚さが減る。
【0047】
上記したように、磁性体粉末物質はポインティング入力装置の内に、例えば電磁気センシング部115の一面にコーティングされることができ、あるいは、接着力を有する接着フィルムにコーティングされた後、そのポインティング入力装置の内の一面に接着されることもできる。
【0048】
また、磁性体粉末物質は非晶質金属薄膜とは異なり、残留磁場が大きくないので大きい磁場が加えられても地磁気センサー動作に影響を与えない。但し、このような磁性体粉末物質を使用した磁場遮蔽層120を有するポインティング入力装置は、導体のような磁場撹乱体の上面に置かれる場合、渦電流の影響、磁場の生成、吸収特性の低下により感度(sensitivity)が低下することがある。しかしながら、このような感度の低下は非晶質金属薄膜に比べて相対的なものであり、
図11に示すように、ポインティング入力装置のためには適合した水準の感度を有する。
【0049】
図11は磁性体粉末物質と非晶質金属薄膜との感度の比較を示すグラフであって、本発明の実施形態に従って透磁率が150μ0で、かつ厚さが50μmである磁性体粉末物質と厚さが25μmである非晶質金属薄膜を使用したタッチスクリーンの信号強さを測定した結果を例示している。
図11のように、磁性体粉末物質は非晶質金属薄膜に比べて感度が低いことがあるが、所望の感度を得るために状況によって弾力的に厚さ調節による感度調節が可能である。本発明の実施形態に従う磁場遮蔽層120の厚さは50μm以上が好ましい。このような厚さは磁場遮蔽層の透磁率によって変わるので、透磁率が定まることによって厚さも定めることができる。
【0050】
一方、本発明の他の実施形態により磁場遮蔽層は
図8に図示したように構成できる。
図8においては地磁気センサー800の周囲に磁性体粉末を使用した磁場遮蔽層805が位置するように構成し、それ以外には非晶質金属薄膜を使用した磁場遮蔽層810が位置する場合を例示している。例えば、地磁気センサー800が中央に位置する場合には、その地磁気センサー800を中心にした周辺は磁性体粉末物質を用いた磁場遮蔽層805を配置することによって、地磁気センサー800の動作を保証し、残りの領域には非晶質金属磁場遮蔽層810を配置することによって、感度を向上させるようになる。
【0051】
上記以外に、
図9に図示したような配置も可能である。
図9においては、このような磁性体粉末を使用した磁場遮蔽層805及び電磁気センシング部115を含む非晶質金属薄膜を使用した磁場遮蔽層810の配置断面を例示している。磁場遮蔽層は印加される磁場を一部透過させる磁性体粉末が散布された磁性体粉末遮蔽層805及び上記印加される磁場のうち、残りを遮断させる非晶質金属薄膜を使用した遮蔽層810により構成される。地磁気センサー800の位置によって磁性体粉末を使用した磁場遮蔽層805及び非晶質金属薄膜を使用した磁場遮蔽層810の配置位置は変わる。
【0052】
前述した
図8及び
図9のような本発明の他の実施形態においては、全体磁場遮蔽層のうち、地磁気センサー800の位置に対応して一部だけを磁性体粉末を使用した磁場遮蔽層805により構成した場合を例示したものである。このような磁性体粉末を使用することによって、地磁気センサー800により感知する地磁界のような低周波の磁界はよく透過しながらもポインティングに使われる周波数の磁場の透過は制限できる。しかしながら、ポインティング入力装置を取り付ける機構物、バッテリー、各種の回路部などの配置によって発生する磁場は遮蔽できるように残りの部分は非晶質金属磁場遮蔽層810により構成する。
【0053】
しかしながら、このような非晶質金属磁場遮蔽層810は、
図8及び
図9のように磁性体粉末磁場遮蔽層805の領域以外において構成されるので、非晶質金属磁場遮蔽層810により地磁界が一部遮断されて
図7における磁場遮蔽層の構造に比べて相対的に地磁気センサー800の性能が多少低下することがある。例えば、本発明の一実施形態による
図7においては、地磁気センサー125の位置に関わらず、全体磁場遮蔽層が磁性体粉末磁場遮蔽層120により構成されるので、磁性体粉末磁場遮蔽層120は地磁界を遮断しないので地磁気センサー125の性能に影響を及ぼさない。
【0054】
したがって、本発明の更に他の実施形態においては
図12のような磁場遮蔽層構造を提案する。特に、
図12に図示された本発明の更に他の実施形態においては、地磁気センサー以外に強い低周波磁場を生成する磁石部品が取り付けられた場合を考慮した磁場遮蔽層構造を提案する。
【0055】
図12においては、このような磁石部品の例に、スピーカー、カメラなどが印刷回路基板部130の一側面に取り付けられた場合を例示しているが、このような磁石部品1230は、印刷回路基板部130の上面にも位置できる。このような磁石部品1230により生成される磁場は、磁性体粉末磁場遮蔽層は透過してポインティング入力装置の性能に影響を及ぼす。例えば、電磁気方式の場合、磁石部品1230により生成される磁場は電磁気ペンにより生成される信号の周波数及び強さを変化させて動作を妨害することがある。しかしながら、このような磁石部品1230により生成される磁場を遮断するために、非晶質金属のような遮蔽特性の良い磁場遮蔽層により
図7における磁性体粉末磁場遮蔽層120に代えれば、このような非晶質金属磁場遮蔽層は地磁気センサー125の性能に影響を及ぼすようになる。
【0056】
したがって、本発明の更に他の実施形態においては、このような点を考慮して磁石部品により生成される磁場は効率的に遮断しながらも地磁気センサー800の性能には影響を及ぼさないようにする構造を提案するものである。
【0057】
このような
図12の磁場遮蔽層の構造は、
図7の磁場遮蔽層の構造と比較して見ると、高い透過特性を有する磁性体粉末磁場遮蔽層1210の下方で、かつ強い低周波磁界を生成する磁石部品1230、例えば、スピーカー、カメラの近くに非晶質金属磁場遮蔽層1220を配置するという点に差がある。このような非晶質金属磁場遮蔽層1220は、電磁気センシング部115の一面全体に構成された磁性体粉末磁場遮蔽層1210の下方に位置し、磁性体粉末磁場遮蔽層1210と密着してスピーカー、カメラと近接した位置に配置される。この際、非晶質金属磁場遮蔽層1220は磁性体粉末磁場遮蔽層1210の全体面でない一部面に密着配置され、そのサイズ及び配置位置は磁石部品1230による磁場を遮断できるサイズ及び位置でなければならないので、磁石部品1230のサイズ及び配置位置によって変わる。
【符号の説明】
【0058】
102 電磁気ペン
110 ループコイル
115 電磁気センシング部
120 磁場遮蔽層
125、800 地磁気センサー
130 印刷回路基板部
700、815、1200 ディスプレイ部
805、1210 磁性体粉末を使用した磁場遮蔽層
810、1220 非晶質金属薄膜を使用した磁場遮蔽層
1230 磁石部品