(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116572
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】眼内注射デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20170410BHJP
A61F 9/007 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
A61M5/32
A61F9/007 130D
A61F9/007 130E
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-533890(P2014-533890)
(86)(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公表番号】特表2014-528301(P2014-528301A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2012069608
(87)【国際公開番号】WO2013050462
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】11184410.6
(32)【優先日】2011年10月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アンドレーア・ミーカ
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド・ハイトン
【審査官】
和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−515838(JP,A)
【文献】
特開平08−150215(JP,A)
【文献】
特開2010−131123(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/138719(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達デバイス(1)であって:
針(7);及び
針(7)の少なくとも一部に連結された組成物の層(9)、ここで、組成物は、その稠度、及び、使用前の針(7)への粘着性を維持し、そして層(9)が、眼(2)の表面に達したときに、層(9)の表面張力が破られ、層(9)の完全性が損なわれ、針(7)によって穿刺された場所を囲む眼(2)の表面上への組成物の流れを引き起こし、スポット(11)を形成するような粘度及び表面張力を有する、
を含んでなる、上記薬剤送達デバイス。
【請求項2】
さらに:
薬剤を含むバレル(3);及び
バレル(3)内部で軸方向に可動なプランジャー(5)、
を含んでなる、請求項1に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項3】
層(9)が針(7)の遠位先端を覆っていない、請求項1又は2に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項4】
層(9)が針(7)の全露出面を覆う、請求項1又は2に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項5】
組成物が、消毒剤、治癒を促進するための溶液、鎮痛剤、抗生物質、薬剤、マーカー、及び、抗菌剤の少なくとも1つを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項6】
層(9)が、注射部位と接触すると変形する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内注射用器具などの薬剤送達デバイス、及び同上のための針に関わる。
【背景技術】
【0002】
いくつかの、視力を脅かす眼の障害又は疾患は、薬剤送達デバイスを使用して、眼内送達(より具体的には、硝子体内送達)によって、眼の後眼部への薬剤(医薬品、生物学的製剤など)、及び/又は、埋め込み型デバイスを送達することを必要とする。眼内送達のための1つのかかる技術が、硝子体内部への眼内注射によって達成される。
【0003】
薬剤送達デバイス(例えば、シリンジ)が、眼の障害又は疾患を有する哺乳類の眼などの眼に、治療物質を投与するために使用され得る。デバイスは、薬剤送達のため眼に貫入する、遠位端での針の配置を含み得る。
【0004】
ある種の眼の疾患及び障害を患う患者に提供される治療プログラムは、しばしば、長期間(多分、何カ月間又は実に一生でさえも)にわたって、一定間隔で眼の内部への薬剤の送達を含む。それゆえ、自動的に作動する薬剤送達デバイスの提供が望まれる。かかるデバイスは、時間、コスト、用量精度、患者の安全、及び、関係するヘルスケア提供者のための事前に必要な技能レベルの観点から、利益をもたらすであろう。
【0005】
眼に侵襲的治療法を実行する、例えば、硝子体に薬剤を投与するとき、周囲を洗い、適切に清浄にし、及び、消毒することは必須である。現行方法は、生理食塩水で洗浄し、次にヨード液で消毒することである。これは、多数のステップを要し、人為的エラーを起こしやすい。従って、改善の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
少なくとも、穿刺する部位を自動的に清浄し、消毒し、及び/又は、殺菌することが出来る、薬剤送達デバイス、又は、針を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例示的な実施態様において、本発明に記載の薬剤送達デバイスは、針、及び、少なくとも針の一部に連結された組成物の層を含む。組成物は、低い粘度と低い表面張力を有する。送達デバイスはさらに、薬剤を含むバレル;及びバレル内部で軸方向に可動なプランジャーを含む。
【0008】
例示的な実施態様において、層は針の遠位先端を覆わない。
【0009】
例示的な実施態様において、層は針の全露出面を覆う。
【0010】
例示的な実施態様において、組成物は、消毒剤、治癒を促進するための溶液、鎮痛剤、薬剤、マーカー及び抗菌剤の少なくとも1つを含む。
【0011】
例示的な実施態様において、層は、注射部位と接触すると変形する。
【0012】
上述の利点、並びに、本発明の種々の態様の他の利点は、添付図面を適切に参照しつつ、以下の詳細説明を読むことにより、当業者には明白になるであろう。
【0013】
本発明の例示的な実施態様が、次の概略図面を参照して、本明細書に記述される:
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】眼を穿刺するより前の、本発明に記載の薬剤送達デバイスの例示的な実施態様の断面の透視図を図示する。
【
図2】本発明に記載の薬剤送達デバイスの例示的な実施態様の拡大断面図を示す。
【
図3】
図3は、眼を穿刺した後の、断面透視図において、本発明に記載の薬剤送達デバイスの例示的な実施態様を描く。
【
図4】本発明に記載の薬剤送達デバイスの例示的な実施態様の透視図を示す。
【
図5】本発明に記載の薬剤送達デバイスの例示的な実施態様の拡大透視図を描く。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜5は、薬剤送達デバイス1の例示的な実施態様を示す。例示的な実施態様において、送達デバイス1は、単独で、又は、自動注射デバイスと共に使用し得るシリンジであってよい。送達デバイス1は、略円筒状のバレル3を有して示される。バレル3は、治療又は診断されようとする身体部分、例えば、眼2の内部に、投与されようとする薬剤等を含む。かかる薬剤の例は、黄斑変性の治療に使用されるステロイド、又は、モノクローナル抗体である。当業者は、送達デバイス1を使用して、種々の薬剤、及び/又は、治療物質、及び/又は、埋め込み型デバイスを投与可能し得ることを理解するであろう。
【0016】
プランジャー5が、バレル3内に配設され(disposed)、針7が、バレル3の遠位端に連結される。遠位に向いた圧力がプランジャー5にかけられる時、プランジャー5は、バレル3内で、軸方向(遠位方向)に動き、針7を通って薬剤を排出する。
【0017】
例示的な実施態様において、送達デバイス1は、器具を作動させる時、シリンジの内容物の全てを送達する自動注射器であってよい。別の例示的な実施態様において、器具は、注射ごとにバレル3の内容物の一部のみを投与するための、再使用可能な、固定用量送達デバイスであってよい。当業者は、別の例示的な実施態様において、送達デバイス1は、針を有する、又は、取り外し可能なニードルアセンブリと係合するためのインタフェースを有する、薬剤カートリッジによって交換し得ることを理解するであろう。
【0018】
例示的な実施態様において、半固体の組成物の層9が、針7の外表面の少なくとも一部上に形成される。例示的な実施態様において、組成物は、注射部位を洗浄、消毒、又は、殺菌する目的のためであってよい。例えば、組成物は、消毒剤、抗菌剤、治癒を促進するための溶液などであってよい。例えば、組成物は、注射より前に、眼11上の注射部位をすすぎ、洗浄するための、洗浄剤、又は、殺菌剤であってよい。さらに、又は、代わりに、組成物は、色素又は顆粒性色素沈着(granular pigmentation)を含むマーカー液であってよい。さらになお、組成物は、眼の上の流体13の存在及び位置を見つけることが出来るように、着色されてよい。
【0019】
例示的な実施態様において、層9を形成する組成物は低い表面張力を有する、低粘度ゲルであるが、その稠度(consistency)、及び、使用前の針7への粘着性を維持する。例示的な実施態様において、送達デバイス1は、層9の完全性(integrity)を維持するため、使用前に冷蔵でしまっておかれてよい。
【0020】
例示的な実施態様において、層9は、中空円筒の形状を有し、そして針7の側部表面の少なくとも一部を覆う。当業者は、他の層形状も可能である(例えば、軸方向縞模様、環、らせん、円錐、数珠など)ことを理解する。その上、種々の厚さの層9が可能である。
【0021】
図1及び2に描かれた例示的な実施態様において、層9は、針7の全長を覆はない。例えば、針7の遠位先端は、層9で覆われなくてもよい。それ故に、この例示的な実施態様において、層9は、針7が身体部分を穿刺した後、治療された身体部分、例えば、眼2と接触するようになる。
【0022】
別の例示的な実施態様において、層9は、針7の遠位先端を越えて伸びてよく、針7の挿入より前に、例えば、眼2に導入されてよい。
【0023】
図3〜5は、所定の位置、例えば、眼2の縁部位で、針7が眼2を穿刺した状況を示す。
【0024】
ここで、針7は眼2に貫入し、そしてそれが眼内で予め規定された深さに達するまで、眼2の内部に進む。例示的な実施態様において、層9が、眼2の表面に達したときに、層9の表面張力が破られ、層9の完全性が損なわれ(compromised)、針7によって穿刺された場所を囲む眼2の表面上への組成物の流れを引き起こし、スポット(spot)11を形成する。これによって、組成物は注射部位に向けられ(targeted)そして直接塗布され、組成物は、眼2の表面を清浄、殺菌及び/又は消毒することが出来る。その上、組成物は、さらなる治療効果のため、眼2の中に吸収されてよい。
【0025】
別の例示的な実施態様において、針7を、ペン型注射器と一緒に使用されるような、安全なニードルアセンブリと一緒に使用し得る。
【0026】
当業者は、本明細書に記述された器具、方法及び/又はシステム及び実施態様の種々の部材の変更(追加及び/又は除去)は、本発明の全範囲と精神を逸脱することなしに行ってよい、それはそのような変更とそれらのいかなる、そして全ての等価物を包含する、ことを理解するであろう。