(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる酸素濃縮装置の外観斜視図、
図2は、
図1の酸素濃縮装置の操作パネルの概略平面図である。
図1と
図2では、酸素濃縮装置10は、例えば上端に取手となるハンドル12を設けた縦長の本体ケース11を備えている。本体ケース11を除く酸素濃縮装置10の内部構造は、後述する
図3に示されている。
【0015】
図1に示すように、本体ケース11の上端付近には、操作パネル13がやや前傾して設けられている。この操作パネル13には、左から順に、ダイヤル式の電源スイッチ14と、酸素出口部15と、酸素流量設定スイッチ16と、例えば、LED(発光ダイオード)または液晶表示等にて、セグメント数字で表示を行う酸素流量表示部18が配置されている。
図1では、接続体としての例えば、カプラソケット400が酸素出口部15の上方位置に離して図示されている。このカプラソケット400は、酸素出口部15に形成された段差部15Dに対して装着されることで、カプラソケット400は酸素出口部15に対して気密状態でしかも着脱自在に接続できる。また、カプラソケット400は、酸素吸入用のカニューラ22の接続端部23Tに対して、着脱自在に接続できる。これにより、酸素出口部15は、このカプラソケット400を介して、カニューラ22の接続端部23Tに着脱自在に接続できる。
【0016】
図1に示す本体ケース11の底蓋26には、4つのゴム足27が四隅に固定されており、床面上に設置して使用するときに横滑りを防止している。外出時等の移動時に使用するキャリア25が、2本の固定ネジを穴10aにそれぞれ通してねじ込むことで、底蓋26に対して固定できる。このキャリア25には、上記の各ゴム足27を収容できる孔部10bが対応位置に穿設されるとともに、キャリア25の下面の四隅には、樹脂製の自在キャスタが配置されている。
【0017】
図2は、
図1に示す操作パネル13を拡大して示している。
図2に示す電源スイッチ14は、図示のオフ位置と約90度分時計周りに回転したオン位置との間で操作される。この電源スイッチ14のオン位置に相当する位置には緑と赤に点灯する例えば発光ダイオード等を内蔵した運転状態ランプ14Bが設けられている。また、この運転状態ランプ14Bの上にはバッテリ残量モニタ14Cが設けられている。
中央の酸素出口部15の上には、「点検」の文字またはこれに相当するキャラクター表示等を横に印刷した警報表示部15Bが配置され、この警報表示部15Bの下方には緑と赤と黄色とに点灯する例えば発光ダイオードを内蔵した酸素ランプ15Cが設けられている。
【0018】
図2に示す酸素流量設定スイッチ16は、上下矢印を印刷したフラットスイッチ16a,16bを有している。この酸素流量設定スイッチ16は、90%程度以上に濃縮された酸素を、最小で毎分当たり0.25L(リットル)から最大で5Lまでの間、0.25L段階または0.01L段階で押圧操作する度に酸素流量が設定できるように構成されている。上方の酸素流量表示部18がその時の流量設定を表示することにより、酸素生成能力を変えることが可能である。同調ランプ19は、濃縮酸素を呼吸同調により断続供給状態で運転中であることを、点灯または点滅表示により患者に知らせるために設けられている。
【0019】
図3は、酸素濃縮装置10の内部構成例を示すために背面側から見た立体分解図である。
図3の下方の位置には、上記のゴム足27を四隅に固定した樹脂製の底蓋26が、配置され、この底蓋26は
図1では二点鎖線で示している。
図3に戻ると、底蓋26は、樹脂製のベース体40の底面に対して複数の固定ネジを用いて固定されている。このベース体40は、四面から下方に向けて連続形成された壁面を一体成形した箱状に成形されており、裏面の壁面上には、各コネクタ131、130が固定されている。このベース体40の上には、箱型の二段式防音室34が配置されるようになっている。
【0020】
図3に示すように、ベース体40には、排気口40c、40cが、
図1のケース本体11に設けた図示しない裏面カバーの各排気口に対向するとともに内部の電源室に連通するように穿設されており、これらの排気口40cを介して最終的な外部排気が行われる。このベース体40の上面は、図示のように平らに形成されるとともに、二段式防音室34の左右面と裏面の三方側から固定ネジで固定するための孔部を穿設した起立部40fを3方から一体成形している。また、ベース体40の上面には、上記の電源室に連通した排気用開口部40bをさらに穿設している。
【0021】
図3に示す二段式防音室34は、図面の手前側の側方から出し入れ可能な上段部材36上に2個の送風ファン104を固定し、同じく側方から出し入れ可能な下段部材37上に設けた圧縮空気発生部としてのコンプレッサ105を防振状態で配設した密閉箱35を有している。二段式防音室34は、軽量金属板から構成されている。
この二段式防音室34は、
図3において手前側に示した防音室蓋39と、奥側に示した防音室蓋38を、密閉箱35に対して複数の固定ネジで固定するようにしている。このように固定ネジを用いて防音室蓋39と防音室蓋38を固定するために、二段式防音室34は、図示のように曲げ加工されるとともにインサートナットを植設した取付部が一体的に設けられている。この二段式防音室34の内部には防音材51が敷設される。また、二段式防音室34の外周面には制振部材であって、合成ゴムと特殊樹脂材料を混合した素材をシート状のものが敷設されており、アルミの薄板製である二段式防音室34自体が共鳴等で振動しないように防止している。
【0022】
図3に示すように、二段式防音室34の上段部材36の上方の左右の側壁面には、第1開口部35aが穿設されており、外気を内部に導入するように構成されている。この上段部材36には、
図4で説明する配管24をラバーブッシュにより固定するための複数の固定孔36hが穿設されており、配管24を支持するとともに振動防振機能をラバーブッシュと協働して行う。
図3の各送風ファン104は、例えば、インバータ制御のシロッコファンを用いることができる。各送風ファン104は、それぞれの送風口が下方に向くようにしてブラケットを用いて上段部材36に固定されている。この各送風ファン104の間には、
図4に示す三方向切換弁109a,109b等が配置されている。
図3に示すように、各送風ファン104には、ファン回転検出部126が設けられている。ファン回転検出部126は、例えばインタラプタ型フォトセンサ等の回転検出計等を利用することができる。
【0023】
図3に示す二段式防音室34の左側の側壁面には、筒状の吸着筒体108a、108bが、吸気用バッファタンク101と並べて配置されており、側壁面に固定された固定具49kにバンド49を通過後にバンド49を締め上げることで図示のように固定されている。吸着筒体108a、108bはベース体40の上面に載るが、全長の長いバッファタンク101の一部は開口部40d中に挿入されて固定される。
図3に示す製品タンク111は、ブロー成形されるポリエチレン樹脂製であって図示のように長手方向に横たえて上方に配置される。遮蔽板32も軽量化のために樹脂製であり、図示のようにスピーカ23と外部コネクタ133を設けており、二段式防音室34の上方の外壁面に対して固定ネジを用いて固定される補強を兼ねた取り付け部を一体成形している。
【0024】
図3の二段式防音室34の上方の壁面には、放熱部材52、53が固定ネジで固定されるとともに、各制御基板200C(
図4に示すCPU200を含む基板)と、制御基板201(
図4に示すモータ制御部201を含む基板)とその他の要素が、起立状態で固定されている。放熱部材52,53は、制御基板200C,201の放熱効果を高めている。遮蔽板32は、上記のように一部が外部に出るので黒色顔料を用いて黒色に着色されている。二段式防音室34の右側の側壁面には、酸素センサ114と、比例開度弁115と、圧力調整器112と、流量センサ116と、デマンド弁117と、回路基板202と、温度センサ125が固定されている。
【0025】
図4は、酸素濃縮装置10の本体ケース11内の系統図(配管図)である。
図4に示すように、系統図の各要素は本体ケース11に配置されている。
図4では、二重線は空気、酸素、窒素ガスの流路であり、概ね配管24a〜24g、24Rで示されている。また、細い実線は電源供給または電気信号の電気配線を示している。
以下の説明では、コンプレッサ105として圧縮手段(圧縮空気発生部)と減圧手段(負圧発生部)を一体化して構成したものを用いる場合について述べる。しかしながら、この構成に限定されず、圧縮空気発生部と負圧発生部を個別に構成しても良いことは言うまでもない。しかも、負圧発生部が無くても良い。また、吸気口を介して外気を内部に導入し、排気口を介して外部に排出する表面カバーと裏面カバー(本体ケース11の一部)は、密閉容器として
図4において破線で図示されている。
【0026】
次に、
図4を参照して導入空気の流れに沿って順次述べる。
図4において、空気(外気)が、フィルタ交換用蓋体に内蔵された外気導入用フィルタ20を通過して、酸素濃縮装置100の内部に矢印F方向に導入される。この空気は、一対の送風ファン104、104による送風により、破線で示す二段式防音室34内に入る。
図3を参照して説明したように、空気が、二段式防音室34(破線図示の)側面に穿設された開口部35aを介して、二段式防音室34内に入る。二段式防音室34では、上段部材上に送風ファン104、104を配設し、下段部材にコンプレッサ105を防振状態で配設している。
【0027】
この空気の一部を、コンプレッサ105の圧縮手段105aに対して原料空気として供給するために、配管24aの開口部が二段式防音室34内に開口して設けられており、配管24aの途中に二次濾過を行う吸気フィルタ101と、大容量の吸気マフラ102とが設けられている。このように構成することで、原料空気の吸気音が二段式防音室34内に留まるようにして吸気音を低減している。
【0028】
図4に示す二段式防音室34は、軽量化のために厚さ約0.5mm〜2.0mmの強化軽合金、アルミ合金、チタン合金板または他の好適な材料から構成される。このように薄板から構成するとネジ孔部の強度が確保されない。そこで、ネジ孔部としてインサートナットを適所に固定している。この二段式防音室34の内部には、原料空気を圧縮して圧縮空気を発生するコンプレッサ105が配置されている。このコンプレッサ105は、圧縮手段105aと減圧手段105bとを好ましくは一体構成したものであり、防振状態で固定されている。このコンプレッサ105に近接して、温度的環境がほぼ同一の箇所に温度センサ125が配置されている。
【0029】
次に、濾過された原料空気は、コンプレッサ105の圧縮手段105aで加圧されて圧縮空気となるが、この時に圧縮空気は温度上昇した状態で配管24cに送り出されるので、この配管24cを放熱効果に優れた軽量の金属パイプとし、送風ファン104からの送風で冷却すると良い。このように圧縮空気を冷却することで、高温では機能低下する吸着剤であるゼオライトが窒素の吸着により酸素を生成するための吸着剤として、十分に酸素を90%程度以上に濃縮できることとなる。
【0030】
圧縮空気は、配管24cを介して、吸着部としての第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108bに対して交互に供給される。このため切換弁(三方向切換弁)109a、109bが図示のように接続されている。これらの切換弁109a、109bと、第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108bの不要ガスを脱離させるため(パージ(浄化)を行うため)に、減圧手段105bに連通する配管24fには、負圧破壊第1弁120と負圧破壊第2弁(圧調整弁)121が直列に複数(少なくとも2つ)配置されている。これらの負圧破壊第1弁120と負圧破壊第2弁(圧調整弁)121を開くことで、配管24f内の圧力を均圧工程時には大気圧付近まで、所定流量以下では圧力コントロールすることでコンプレッサの振動抑制と低電量化を図っている。
【0031】
図4に示す第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108b内に夫々貯蔵されている触媒吸着剤の一例としては、ゼオライトが用いられている。
第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108bの上方の出口側には、逆止弁と、絞り弁と、開閉弁とからなる均等圧弁107が分岐して接続されている。また、均等圧弁107の下流側は合流するように配管24dが成されており、分離生成された90%程度以上の濃度の酸素を貯蔵するための容器となる製品タンク111が配管24dに接続されている。また、各吸着筒体内の圧力を検出する圧力センサ208が配管されている。
【0032】
図4の製品タンク111の下流側には、出口側の酸素の圧力を一定に自動調整する圧力調整器112が配管されている。この圧力調整器112の下流側の配管24eには、ジルコニア式あるいは超音波式の酸素(濃度)センサ114が接続されており、酸素濃度の検出を間欠(10〜30分毎)または連続で行うようにしている。
酸素(濃度)センサ114の下流側には、酸素流量設定スイッチ16に連動して開閉する比例開度弁115が接続されており、比例開度弁115の下流側には酸素流量センサ116が接続されている。この酸素流量センサ116の下流側の配管24Rには、呼吸同調制御のための負圧回路基板を介してデマンド弁117が接続されており、配管24Rは、滅菌フィルタ119を経て、酸素濃縮装置10の酸素出口部15に対して接続されている。
以上の構成により、患者は、酸素出口部15と、カプラソケット400と、カニューラ22を経て、最大流量5L/分で約90%程度以上に濃縮された酸素の吸入が可能である。
【0033】
次に、
図4に示す電源系統は、AC(商用交流)電源のコネクタ130と、装置本体に内蔵される内蔵バッテリ228と、コネクタ131を介して着脱自在可能に設けられる外部バッテリ227と、電源制御回路226から構成されている。コネクタ130は、所定直流電圧に整流するスイッチングレギュレータ式のACアダプタ19に接続される。
内蔵バッテリ228および外部バッテリ227は繰り返し充電可能な2次電池であり、内蔵バッテリ228は電源制御回路226からの電力供給を受けて充電される。なお、内蔵バッテリ228は、少なくとも500回(数100回程度)程度の繰り返し充放電が可能で、バッテリ残量、使用充放電サイクル数、劣化程度、出力電圧等のマネジメント機能を有するものが使用され、バッテリ残量、残充電容量、充放電回数を外部の携帯端末などで確認可能なマネジメント機能を有するものが好ましい。
【0034】
図4の外部バッテリ227については、コネクタ131を介する接続状態において、電源制御回路226からの電力供給を受けて充電することもできるが、通常は別途準備されるバッテリチャージャーを用いて繰り返し充電される。または、専用設計されたバッテリチャージャーを一体化した外部バッテリ227として準備しても良い。
以上の電源系統の構成において、酸素濃縮装置はACアダプタ19からの電力供給を受けて作動する第1電力供給状態と、内蔵バッテリ228からの電力供給を受けて作動する第2電力供給状態と、外部バッテリ227からの電力供給を受けて作動する第3電力供給状態との3系統の電力供給状態の内の一つに自動切換えされて使用される。
【0035】
この電源自動切換えのための優先順位は、上記の第1電力供給状態、第3電力供給状態、第2電力供給状態の順序で自動決定するように中央制御部200により電源制御回路226が制御される。また、電源制御回路226と、内蔵バッテリ228については、酸素濃縮装置100の低重心化を図るために後述するように底面に配設される。外部バッテリ227は、キャリア25の収容部に内蔵されることにより外出時等で使用可能になる。この外部バッテリ227には、上記の充電残量表示部他が設けられているので残り使用時間を音声ガイドとともに知ることができる。
【0036】
図4のACアダプタ19は、周波数の違いの影響および電圧の変動を受けずに所定直流電圧を発生することが可能であり、かつまた小型軽量に構成できるスイッチングレギュレータ式が良いが、通常のトランス式でも良い。また、内蔵バッテリ228および外部バッテリ227は充電時のメモリ効果が少なく再充電時にも満杯充電できるリチウムイオン、リチウム水素イオン2次電池が良いが、従来からのニッケルカドミウム電池でも良い。さらに、緊急時に備えて、どこでも入手可能な単2乾電池のボックスとして外部バッテリを構成しても良い。
【0037】
酸素濃縮装置100の中央制御部200は、生成する酸素量に応じた、最適な動作モードに切り替える機能を備えており、自動的にコンプレッサ105、送風ファン104を、多くの酸素生成をする場合は高速に、少ない酸素生成時において低速に回転駆動する制御を行うことで特に、内蔵バッテリ228を温存させるようにしている。この結果、外部バッテリ227を充電し忘れた場合であっても突然の外出時や停電時等の対応が可能になるように配慮されている。
【0038】
図4の中央制御部200には、コンプレッサ105の回転体である直流モータおよび送風ファン104のモータの駆動制御を夫々行うモータ制御部201および上記のスピーカ23Sに接続されることで音声内容を発生する音声制御部203、酸素流量表示部18が接続されている。
この中央制御部200には、所定動作プログラムを記憶したROM(読み出し専用メモリ)が内蔵されるとともに、記憶装置210と不揮発メモリ205と一時記憶装置206とリアルタイムクロック207とがさらに接続されている。中央制御部200は、外部コネクタ133を介して通信回線などと接続することで記憶内容へのアクセスが可能となるように構成されている。
【0039】
上記の三方向切換弁109a、109bと均等圧弁107と、第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108b内の不要ガスを脱離させるための負圧発生部105bと配管24f内の圧力を制御するための負圧破壊第1弁120と負圧破壊第2弁121と酸素濃度センサ114と比例開度弁115と、流量センサ116とデマンド弁117を駆動制御する弁及び流量制御部202が、中央制御部200に電気的に接続されている。ただし、
図4の図示の簡単化のために配線の図示は省略している。
ところで、総重量が約1kgのコンプレッサ105は、モータ制御部201に内蔵される可変速度制御器であって正弦波駆動波形によりモータの駆動制御が行われることで運転音を低くしている。このコンプレッサ105は、各速度で運転可能であって、必要な真空(負圧)/正圧の圧力レベルと流量を発生でき、僅かな騒音と振動しか出さず、僅かな熱しか発生せず、小型軽量であって僅かな電力消費で運転できることが好ましい。
【0040】
可変速度制御手段である可変速度制御器をモータ制御部201に備えることにより、患者の活動レベル、環境条件に基づいてコンプレッサ105の速度を自在に変化させることができる。この結果、患者が座ったり寝たりしている等、患者が安静な状態にあって患者の酸素要求が比較的低いことが、デマンド弁117によって呼吸同調により判断されると、コンプレッサ105の駆動回転速度を自動的に落とすことができる。また、患者が立ったり、活動的であったり、酸素濃度の低い高地にいるときなど、患者の酸素要求が比較的高く、酸素要求量が高まったと判断されると速度を自動的に高めることができる。
以上のモータ制御によって酸素濃縮装置10全体の消費電力が低減され、充電式バッテリでの駆動時の寿命を延ばすことが可能になるとともに、充電式バッテリの重量と大きさを軽減し、コンプレッサ105の摩耗度を低めて寿命を延ばすことで信頼性を向上できる。
【0041】
このコンプレッサ105は、上記のように圧縮空気発生と負圧発生の両方の機能を備えるものであり、取り出される酸素流量に応じて回転数が自動制御される。具体的には、回転速度が500rpmから3000rpmの間で制御され、通常の速度である1700rpm程度で回転するときの操作寿命を15000時間と長くできるようにしている。また、このコンプレッサ105は、空気を100kPa、好ましくは75kPa程度に圧縮する性能を備えている。また、上記の操作寿命が経過すると音声ガイドにて知らせる機能を備えている。ここで、冷却ファンである送風ファン104を駆動するファンモータは、DCブラシレスファンが用いられており、PWM制御又は電圧制御により回転数制御を容易に行うことができるようにされている。
【0042】
次に、
図4に示す火災検知装置600について、
図4と
図5を参照して説明する。
図4に示すように、本体ケース11には、火災検知装置600が配置されている。この火災検知装置600は、カニューラ22のチューブ23が着火した場合に、その着火による火災検知するための装置である。火災検知装置600は、酸素供給経路の適宜な位置、すなわち配管の適切な位置、例えば好ましくは酸素出口部15に近い位置にある配管24Rの分岐部分24Tにおける音を検知することで、カニューラ22のチューブ23が着火した場合に、その着火による火災検知する。
【0043】
この酸素出口部15に近い位置にある配管24Rは、濃縮された酸素を酸素出口部15へ導くための酸素経路である。この配管24Rは、機械的に押し潰すことで濃縮された酸素の供給を遮断することができるように、カニューラ22のチューブ23と同様に柔軟性を有する、例えば塩化ビニル、ポリエチレン、シリコーンゴムにより作られている。配管24Rとカニューラ22のチューブ23は、通常の大気酸素濃度では燃えない、自己消化性の塩化ビニルが好ましい。もちろん、配管24Rとカニューラ22のチューブ23は、難燃性のフッ素樹脂でもよい。
【0044】
この酸素出口部15に近い位置にある配管24Rは、濃縮された酸素を酸素出口部15へ導くための酸素経路である。この配管24Rは、機械的に押し潰すことで濃縮された酸素の供給を遮断することができるように、カニューラ22のチューブ23と同様に柔軟性を有する、例えば塩化ビニル、ポリエチレン、シリコーンゴムにより作られている。配管24Rとカニューラ22のチューブ23は、通常の大気酸素濃度では燃えない、自己消化性の塩化ビニルが好ましい。もちろん、配管24Rとカニューラ22のチューブ23は、難燃性のフッ素樹脂でもよい。
【0045】
図4に示す火災検知装置600の好ましい構成例は、
図5に示している。
図5の火災検知装置600は、音検出部としてのマイクロフォン601と、制御部602と、警報ランプ603と、警報ブザー604と、バッテリ605を有している。バッテリ605は、制御部602と酸素遮断部330に電源供給するために配置され、例えばボタン電池のような小さな電池を採用している。本体制御部からの電源供給をでもかまわない。制御部602は、警報ランプ603、警報ブザー604と、酸素遮断部330のそれぞれの動作を制御する。酸素遮断部330は、配管24Rの途中部分を機械的に押し潰すことで配管24Rの経路を閉鎖して、濃縮された酸素が酸素出口部15側に供給できないようする。経路の閉鎖はデマンド弁117の閉鎖でも可能である。
火災検知装置600の音検出部としてのマイクロフォンは、酸素供給経路の適所に設けられている。すなわち、「適所」とは、火炎検知にマイクロフォンを利用する上で、マイコロフォン601の設置個所として好ましい箇所を意味しており、たとえば、図示のように、火炎検知装置600自体に内蔵する場合と、火炎検知装置600とは離れた個所、たとえば、チューブ22の適宜箇所に設けることができる。この場合、チューブ22で、カニューラ22に近い箇所に設けた場合には、コンプレッサ105等の酸素濃縮装置から生じる機械的作動音の影響を受けにくい。また、カニューラ22自体に設けると、呼吸音と区別しにくいので、やや離れたほうが好ましい。使用者の存在箇所に近くであれば、使用者がタバコを吸って、その日がチューブ23内の酸素に着火した場合を想定すると、タバコの火が存在することが想定される箇所の近傍に設けるのが好ましい。
例えば、延長チューブとカニューラを接続する中継カプラの部分などである。また、実際に使用されるチューブ22の長さは最長のもので15m程度であるが、マイクロフォン601は20m以内であれば、充分に燃焼音を検知できる。マイクロフォン601は20mを超える範囲でも燃焼音を検知できるが、実際に使用するチューブの長さが20mを超える場合、圧力損失が大きくなるため、通常、酸素濃縮装置本体から20m以上離れて使用されることは稀である。よって、マイクロフォン601の設置個所として酸素濃縮装置100から20m以内の範囲であれば、どこであっても良い、と言える。
【0046】
図5の制御部602が、マイクロフォン601からの音信号CSを受けて、その音信号CSからカニューラ22のチューブ23が着火したことを判断することができる。すなわち、制御部602は、音信号CSの変化から、通常の酸素供給音から、火災発生時の燃焼音に変化したことを判断する。このため、通常の酸素供給音から火災発生時の燃焼音に変化した場合には、制御部602は酸素遮断部330に指令することにより、酸素遮断部330は、配管24Rの途中を潰して即座に閉塞する。このため、酸素遮断部330が配管24Rの途中を閉塞することにより、濃縮された酸素が酸素出口部15側へ供給されるのを直ちに遮断することができる。もちろん、経路の閉鎖はデマンド弁117の閉鎖でも可能である。
制御部310は、この酸素を遮断する動作とともに、報知手段である警報ランプ603を点灯させ、警報ブザー604により警報音を発生させて、患者や酸素濃縮装置10の管理者に対して通知する。
図5のマイクロフォン601としては、例えばコンデンサマイクロフォンや、圧電マクロフォンを用いることができる。
【0047】
ここで、酸素遮断部330の具体的な構造の一例を、
図6を参照して説明する。
図6は、酸素遮断部330の構造の一例を示している。
図6に示す酸素遮断部330は、制御部602からの電気信号により濃縮酸素の供給を遮断する動作を行う構造を有しており、駆動部331と、押圧部の一例としての押圧部材332を有している。
図6(A)と
図6(B)に示すように、押圧部材332は、配管24Rを直接機械的に固定部335側に押し付けて、配管24Rを弾性変形させることで、配管24Rの酸素流路333を閉塞する。駆動部331は、例えばロッド334を有する直動型の電磁アクチュエータであり、押圧部材332はロッド334の先端に固定されている。
【0048】
図6(A)では、配管24Rの酸素流路333は確保されている。しかし、
図6(B)では、制御部602は、マイクロフォン601からの音信号CSを受けて、その音信号CSからカニューラ22のチューブ23が着火したと判断した場合には、制御部310が駆動部331を制御してロッド334を直線移動する。このロッド334の移動により、押圧部材332は弾性変形可能な部分である配管24Rを、押し当て部335に対して押し潰して、酸素流路333を閉塞できる。これにより、濃縮された酸素が、配管24Rから酸素出口部15へ供給できないので、カニューラ22側への濃縮酸素の供給を即座に遮断できる。
なお、
図6に示す酸素遮断部330の構造を採用することにより、チューブ303を押して閉塞するだけで済むので、高価な電磁弁を用いるのに比べて安価にできる。
【0049】
次に、
図5に示す火災検知装置600を用いる場合に、必要に応じて追加的に、
図5に示す過熱検知部700を併用することができる例を説明する。
この過熱検知部700は、制御部310と、バッテリ311と、温度センサ320と、送信部321と、受信部322を有している。過熱検知部700は、カニューラ22のチューブ23の適宜な位置に取り付けられている。温度センサ320は、チューブ23の適宜な位置に取り付けられてチューブ23の温度を検出する。温度センサ320がチューブ23の温度を検出した時の温度信号TSは、制御部310に送られる。受信部322は、本体ケース11内に配置されている。送信部321と受信部322としては、例えば小型で低消費電力の通信手段であるBluetooth4.0(登録商標)(短距離無線通信の規格)やZigBee(家電向けに策定された無線通信規格)等を採用することができる。
【0050】
図5に示す制御部310は、温度センサ320からの温度信号TSにより、チューブ23の温度が一定温度以上、例えば40℃以上になったと判断すると、送信部321から信号SSを受信部322へ送る。そして、受信部322が信号SSを受けて制御部602に送ると、制御部602は、酸素遮断部330を作動して配管24Rの途中を機械的に潰して閉塞する。これにより、濃縮された酸素の供給を遮断することができる。制御部602は、この酸素の遮断とともに、報知手段である警報ランプ603を点灯させ、警報ブザー604により警報音を発生することができる。
このように、火災検知装置600に対して、さらに必要に応じて追加的に、過熱検知部700をチューブ23に直接配置することにより、濃縮酸素の経路である配管24Rの音変化の監視による火災検知動作に加えて、チューブ23の温度上昇の直接監視による火災検知動作を同時に行うことができる。このため、カニューラ22の着火による火災の発生の検知をより確実に行って、濃縮酸素の供給を即座に遮断できるメリットがある。
【0051】
次に、上述した酸素濃縮装置10における火災検知の動作について説明する。
患者が
図1に示す酸素濃縮装置10を用いて酸素の吸入を行う場合には、カニューラ22の接続端部23Tを、酸素濃縮装置10の酸素出口部15に対して、カプラソケット400を用いて接続する。これにより、濃縮酸素は、酸素出口部15からカプラソケット400を通じてカニューラ22へ供給することができる。この場合に、酸素は、例えば最大流量5L/分の流量で送ることができ、患者はカニューラ22を用いて約90%程度以上に濃縮された酸素の吸入が可能である。
【0052】
ところで、患者が
図1に示すカニューラ22を用いて濃縮酸素を吸入している際に、火災や異常な高温環境にさらされた時に、カニューラ22が直接加熱して高温状態になるおそれがある。そこで、カニューラ22に火炎が発生してしまった場合には、患者の安全性を確保するために、酸素濃縮装置10において濃縮酸素の供給を即座に遮断する必要がある。そこで、この濃縮酸素の供給遮断動作について、以下に説明する。
患者が例えば喫煙していて、たばこの火が
図1に示すカニューラ22のチューブ23に万一引火した場合には、火炎はカニューラ22のチューブ23を経て酸素出口部15に炎達して、空気中の酸素により燃焼または過熱するおそれがある。
【0053】
そこで、
図4と
図5に示す火災検知装置600は、酸素経路の適宜な位置、すなわち配管の適切な位置、例えば酸素出口部15に近い位置にある配管24Rの分岐部分24Tの音の変化を検知することで、カニューラ22のチューブ23が着火した場合に、その着火による火災検知を行う。
図5の制御部602がマイクロフォン601からの音信号CSを受ける。この制御部602は、その音信号CSが着火前と着火後で変化したことを認識する。すなわち、制御部602は、その音信号CSが、通常の酸素供給音から、火災発生時の燃焼音に変化したことを判別すると、制御部602はカニューラ22のチューブ23が着火したと判断して、制御部602は酸素遮断部330に指令する。
また、マイクロフォン601には、
図4で説明した酸素濃縮装置10の発生するコンプレッサ110の動作音や冷却ファン104、電磁弁107,109等の機械雑音が混入する場合がある。そのため、本体の機械雑音を測定するマイクロフォン901を設けている。マイクロフォン601と901の差分をとる装置を追加することで、カニューラから伝導する音のみを弁別することが可能となる。
【0054】
これにより、酸素遮断部330は、
図6に示すように配管24Rの途中を機械的に潰して閉塞する。このように酸素遮断部330が配管24Rの途中を閉塞することにより、濃縮された酸素が酸素出口部15側へ供給されるのを即座に遮断することができる。
すなわち、
図6(A)に示す配管24Rの酸素流路333が開いた状態から、
図6(B)に示すように制御部310が駆動部331を制御してロッド334を直線移動する。このロッド334の移動により、押圧部材332は弾性変形可能な部分である配管24Rを、押し当て部335に対して機械的に押し潰して、酸素流路333を閉塞できる。これにより、濃縮された酸素が、配管24Rから酸素出口部15へ供給できないので、カニューラ22側への濃縮酸素の供給を即座に遮断できる。
【0055】
しかも、制御部310は、この酸素の遮断動作とともに、報知手段である警報ランプ603を点灯させ、警報ブザー604により警報音を発生させて、患者や管理者に通知するので、患者や管理者は、酸素の遮断動作が行われたことを確実に認識して対処することができる。
なお、
図6に示す酸素遮断部330の構造を採用することにより、本体ケース11内の配管24Rを押して閉塞するだけで済むので、高価な電磁弁を用いるのに比べて安価にできる。 酸素遮断部330の構造は、
図6(A)に示すような構造だけではなく、例えばモータが回転カムを回転させることで配管24Rを押して閉塞する構造を採用することもできる。
【0056】
ここで、
図5の制御部602がマイクロフォン601からの音信号CSを受けて、この制御部602は、その音信号CSに基づいて、通常の酸素供給音なのか、火災発生時の燃焼音であるかを比較して、火災が発生したことを判別するための具体的な例を、
図7と
図8を参照して説明する。
図7は、火災が発生していない非燃焼時である通常の酸素供給音の波形W1を示し、
図8は、火災が発生している燃焼時の音の波形W2を示している。
図7と
図8では、縦軸が音圧であり、横軸が周波数である。
【0057】
図7に示す波形W1と
図8に示す波形W2を比較すると、
図5に示す制御部602が、火災発生(燃焼)しているかどうかを判定する燃焼判定基準の例としては、予め定めた周波数以上の領域、好ましくは7.5kHz以上の周波数の領域において、
図8に示す波形W2の音圧が
図7に示す波形W1の音圧と比較して、20dB以上上昇した場合である。この場合には、制御部602は、火災発生(着火)の判定をする。
例えば、
図8において燃焼時の場合の波形W2の7.5kHzでのポイントP2は、
図7における通常の酸素供給音のみの波形W1の7.5kHzでのポイントP1と比較すると、7.5kHz以上の周波数の領域では20dB以上、図示例では例えば−120dBから−80dBまで、40dBの音圧が上昇している。この場合には、制御部602は、カニューラのチューブ23に着火したとの判定をする。
【0058】
このように、7.5kHz以上の周波数の領域において20dB以上音圧が上昇するのは、
図1に示すカニューラ22のチューブ23が燃えると、チューブ23が溶けてチューブ23の酸素流路が狭くなることで、例えば「フュー」のような雑音が発生するためである。
なお、
図5に示す制御部602が、火災発生(燃焼)しているかどうかを判定する他の燃焼判定基準の例としては、特に好ましくは、周波数が8kHzから20kHzの周波数成分のパワースペクトラム平均値が、30dB以上音圧が上昇した場合であり、この場合には、制御部602は火災発生(着火)の判定をすることができる。
【0059】
次に、
図9を参照する。
図9は、患者が呼吸しているかどうかを、マイクロフォン601を用いて検出する様子を示している。
図9(A)は、通常の酸素供給の際に、
図5のマイクロフォン601が検出する酸素供給音のみの波形W3を示す。
図9(B)は、通常の酸素供給の際に患者が呼吸した場合に、
図5のマイクロフォン601が検出する変動波形W4を示す。
図7と
図8では、縦軸が音圧であり、横軸が時間である。
図9(A)に示す通常の酸素供給の場合の酸素供給音のみの波形W3は、波高WH1がほぼ一定である。これに対して、
図9(B)に示す患者が呼吸した場合の変動波形W4では、波高WH1の波形において音圧変動波形WR1、WR2が生じている。この波高WH2、WH3の波高WH2、WH3は、
図9(A)に示す波形W3の波高WH1に比べて大きく、患者の呼吸動作に対応している。
【0060】
このように、
図5の制御部602は、
図9(A)に示す通常の酸素供給の際に発生する酸素供給音のみの波形W3と、
図9(B)に示す通常の酸素供給の際に患者が呼吸した場合の変動波形W4を比較することにより、制御部602は、患者が呼吸状態であるかどうかを判断することができる。すなわち、
図5の制御部602は、
図9(B)に示す通常の酸素供給の際に患者が呼吸した場合の変動波形W4を検出している時は、
図9(A)に示す酸素供給音のみの波形W3と比較して、音圧変動波形WR1、WR2等を検出できることから、
図5の制御部602は、変動波形W4と波形W3を比較して音圧の変化をチェックすることで、患者が呼吸状態であると判断できる。
【0061】
このように、
図5に示すマイクロフォン601を用いることで、患者がカニューラ22を用いて濃縮酸素を呼吸していることを、
図9(A)と
図9(B)を参照してすでに説明したように、音圧の変化を検出することで判別できる。従って、酸素濃縮装置10では、マイクロフォン601により患者がカニューラ22を用いて濃縮酸素を呼吸していることを検出できることを利用して、いわゆる呼吸同調制御を行うことができる。
この呼吸同調制御とは、例えば
図4に示す内蔵バッテリ228および外部バッテリ227により、酸素濃縮装置10の全体が駆動されている場合に、濃縮酸素をより効率的に患者が使用するために、濃縮酸素の供給を呼吸動作に同調した制御を行うことをいう。すなわち、患者が通常の呼吸を行っている間、患者は、吸息/呼息サイクル時間の約1/3を吸息に、残りの2/3を呼息に当てている。
【0062】
この呼息の間に生成される濃縮酸素は、患者にとっては不要のもので、その結果この余剰の濃縮酸素の流れを効率的に提供する追加のバッテリ電力は無駄になる。そこで、
図4に示す中央制御部200が指令により、患者の呼息の間に生成された濃縮酸素を吸息時に供給することにより、仮に、吸息/呼息サイクルが1(吸息):2(呼息)であるならば、吸息時に3倍の流量まで供給することが可能となる。
酸素濃縮装置10では、呼吸同調制御を行うことにより、酸素濃縮装置10の小型化と低消費電力化が可能となる。呼吸同調制御は、全期間に亘って行われる(コンプレッサ105も全期間に亘って動作する)。酸素濃縮装置10の呼吸同調制御運転の結果は、
図4の記憶装置210に患者のログとして記録することで、患者個人の酸素供給の管理に用いることができる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、
図10と
図11を参照して、本発明の酸素濃縮装置の第2実施形態を説明する。
図10は、本発明の酸素濃縮装置10Aの第2実施形態の系統図であり、
図11は、
図10の酸素濃縮装置の火災検知装置の好ましい構成例を示している。
図10に示す酸素濃縮装置10Aが、
図4に示す酸素濃縮装置10と異なるのは、火災検知装置800の構成である。すでに説明した
図4の酸素濃縮装置10の火災検知装置600は、本体ケース11内に収納されている。これに対して、
図10の酸素濃縮装置10Aの火災検知装置800は、本体ケース11内とカニューラ22のチューブ23に分けて配置されている。
図10の酸素濃縮装置10Aの他の構成要素の構造と効果は、
図4に示す酸素濃縮装置10の対応する他の構成要素の構造と効果と実質的に同じであるので、その説明を用いることにする。
【0064】
図11に示すように、火災検知装置800は、音検出部としてのマイクロフォン801と、制御部802と、警報ランプ803と、警報ブザー804と、バッテリ805を有している。バッテリ805は、制御部802と酸素遮断部330に電源供給する。制御部802は、警報ランプ803、警報ブザー804と、酸素遮断部330のそれぞれの動作を制御する。
図11に示すマイクロフォン801は、本体ケース11内に配置されているのではなく、取り付け具850に設けられている。この取り付け具850は、カニューラ22のチューブ23の適宜な位置に対して、好ましくは着脱可能に取り付けることができる。ただし、マイクロフォン801がチューブ23に対して取り付けられる位置としては、あまりカニューラ22の鼻に接続される先端部分に近い位置であると、鼻からの雑音が入るおそれがあるので好ましくはない。
【0065】
このマイクロフォン801は、制御部802に対して例えば有線890で接続されており、マイクロフォン801からの音信号CSは制御部802に対して有線890で送られる。しかし、マイクロフォン801からの音信号CSは、制御部802に対して有線に代えて無線で送るようにしても良い。酸素遮断部330は、配管24Rの途中部分を押し潰すことで配管24Rの経路を機械的に閉鎖して、濃縮された酸素が酸素出口部15側に供給できないようする。
【0066】
図11の制御部802は、マイクロフォン801からの音信号CSを受けて、その音信号CSからカニューラ22のチューブ23が着火したと判断することができる。すなわち、すでに説明した本発明の第1実施形態と同じように、制御部802は、音信号CSの変化から、通常の酸素供給音から、火災発生時の燃焼音に変化したことを判別することができる。このため、火災発生時の燃焼音に変化した場合には、制御部802は酸素遮断部330に指令することにより、酸素遮断部330は、配管24Rの途中を機械的に潰して即座に閉塞する。
酸素遮断部330が配管24Rの途中を閉塞することにより、濃縮された酸素が酸素出口部15側へ供給されるのを直ちに遮断することができる。制御部310は、この酸素の遮断動作とともに、報知手段である警報ランプ803を点灯させ、警報ブザー804により警報音を発生させて、患者や管理者に対して通知する。
【0067】
ところで、上述した本発明の第1実施形態と第2実施形態では、制御部は、音検出部からの音信号を受けて、濃縮酸素を供給する際に生じる通常の酸素供給音と、火災時に生じる火災発生時の音とを比較して、予め定めた周波数以上の領域で音圧の変化を検出することで火災発生を検出することができる。
図5に例示するように、制御部が火災発生(燃焼)しているかどうかを判定する燃焼判定基準の例としては、好ましくは7.5kHz以上の周波数成分が、20dB以上音圧が上昇した場合であり、この場合には制御部は火災発生(着火)の判定をする。
また、別の燃焼判定基準の例としては、特に好ましくは、8kHzから20kHzの周波数成分のパワースペクトラム平均値が、30dB以上音圧が上昇した場合であり、この場合には、制御部は火災発生(着火)の判定をすることができる。
【0068】
本発明の実施形態の酸素濃縮装置10,10Aは、カニューラ22を通じて患者に濃縮酸素を供給する際に、濃縮酸素を供給する酸素供給経路である配管24Rには、音検出部601(801)が設けられている。このため、音検出部601(801)は、濃縮酸素が酸素供給経路を通過する際の通常の酸素供給音とカニューラに着火して火災が発生した時の火災発生音を検出するために設けられているので、通常の酸素供給音とは区別してカニューラの着火を検知することができる。これにより、患者が鼻カニューラ等のカニューラを用いて酸素を吸入している際に火災や異常な過熱環境にさらされた場合に、確実に過熱環境を検知して使用上の安全性を確保することができる。
【0069】
本発明の実施形態の酸素濃縮装置10,10Aでは、音検出部601(801)からの信号を受けて、濃縮酸素が酸素供給経路を通過する際の通常の酸素供給音と、カニューラに着火して火災が発生した時の火災発生音とを比較して、予め定めた周波数域以上での音圧の変化を検出することで火災発生を判別する制御部602(802)を備える。このため、制御部602(802)は、通常の酸素供給音と、火災発生音とを比較して、予め定めた周波数域以上での音圧の変化を検出することで、火災発生を確実に判別することができるので、使用上の安全性を確保することができる。この場合に、音圧の変化は、周波数が7.5kHz以上で判別するので、7.5kHz以上の周波数において音圧が変化すれば、火災発生を確実に判別することができるので、使用上の安全性を確保することができる。
【0070】
音検出部601(801)からの信号を受けて、濃縮酸素が酸素供給経路を通過する際の通常の酸素供給音と、呼吸時の酸素供給音とを比較して、音圧の変化があれば患者の呼吸があると判別する制御部602(802)を備える。このため、制御部602(802)は、患者の呼吸を判別できるので、濃縮された酸素をより効率的に患者が使用するために、呼吸に同調した制御を行うことができる。
【0071】
音検出部601(801)は、酸素濃縮装置の本体内に配置されて濃縮酸素を供給するための配管に配置されているので、音検出部は、配管に配置するだけで、火災発生を確実に判別することができる。
音検出部601(801)は、酸素濃縮装置の本体の酸素出口部に対して着脱可能に接続されるカニューラに配置されているので、音検出部は、カニューラに配置するだけで、火災発生を確実に判別することができる。
制御部601(801)が火災発生を検出すると、配管24Rの酸素流路333を閉じて濃縮酸素の供給を遮断する酸素遮断部330を有するので、酸素遮断部330は、濃縮酸素の供給を即座に遮断でき、使用上の安全性を確保することができる。
【0072】
本発明の各実施形態は、任意に組み合わせることができる。
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形例を採用することができる。例えば、警報ランプと警報ブザーの両方が配置されているが、いずれか1つを配置しても良い。
図5に示す過熱検知部700では、温度センサ320に代えて、炎センサを用いても良い。この炎センサとは、例えば火炎の紫外線を検出するセンサ、赤外線を検出するセンサ、あるいは火炎電流を検出センサである。
上述の本発明の実施形態では、酸素濃縮装置の大きさや容量によりコンプレッサの回転数や送風ファンの回転数は適宜定めることができる。上記本発明の実施形態に記載された事項は、その一部を省略してもよいし、上記で説明しない他の構成と組み合わせることによっても本発明の範囲を逸脱するものではない。