特許第6116656号(P6116656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6116656超短期滞留時間でのレーザアニーリングシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116656
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】超短期滞留時間でのレーザアニーリングシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20170410BHJP
   G02F 1/37 20060101ALI20170410BHJP
   G02B 26/12 20060101ALI20170410BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20170410BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   H01L21/268 J
   G02F1/37
   G02B26/12
   H01L21/265 602C
   H01L21/20
【請求項の数】25
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-246045(P2015-246045)
(22)【出願日】2015年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-119470(P2016-119470A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年2月10日
(31)【優先権主張番号】62/092,925
(32)【優先日】2014年12月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502400304
【氏名又は名称】ウルトラテック インク
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】ハウリーラック、エム、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】アニキチェフ、セルゲイ
【審査官】 柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−013890(JP,A)
【文献】 特開2013−048226(JP,A)
【文献】 特開2012−129500(JP,A)
【文献】 特開2010−109363(JP,A)
【文献】 特開2013−157600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
G02B 26/12
G02F 1/37
H01L 21/20
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン化表面を有する半導体ウエハを、ウエハ表面温度T又はウエハ表面直下温度T、及び表面溶融温度T又は表面直下溶融温度Tでアニーリングする方法であって、
予熱レーザ光線を用いて、前記パターン化表面の一部を(0.5)・T≦TPA≦(0.9)・Tの範囲の前記プレアニール温度TPAに加熱するように構成される、5mmから20mmの間の長さL1と、幅W1とを有する予熱線画像を前記パターン化表面に形成することと、
走査レーザ光線を用いて半導体ウエハの表面にアニーリング画像を形成し、前記アニーリング画像が前記予熱線画像の一部と重なるようにして走査重複領域を規定することと、
前記予熱線画像に対して前記アニーリング画像を走査し、前記走査重複領域が、10ns≦τ≦500nsの範囲の滞留時間τを有し、前記走査重複領域内において、前記ウエハ表面温度T又はウエハ表面直下温度Tを、前記プレアニール温度TPAから前記表面溶融温度T又は表面直下溶融温度Tに局所的に上昇させることと
を備え、
記アニーリング画像を形成する工程において、前記アニーリング画像は、100ミクロンから500ミクロンの間の範囲の長さL2と、10ミクロンから50ミクロンの間の範囲の幅W2とを有し、前記長さL2はL2≧2・W1であり、前記長さL1とL2とは直交方向に測定される、方法。
【請求項2】
前記滞留時間τは、25ns≦τ≦250nsの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光パルスを発する疑似連続波(QCW)レジームでアニールレーザを操作することによって前記走査レーザ光線を形成することをさらに備え、前記走査重複領域が通過する前記半導体ウエハの表面上の各点は、少なくとも5個の光パルスを受光する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記QCWレジームは、100MHz以上の反復率を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記走査レーザ光線は、アニールレーザから回転ポリゴンミラーへ初期レーザ光線を導くことによって形成される、請求項1から4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記予熱レーザ光線は、赤外線波長を有し、前記走査レーザ光線は、可視光波長を有する、請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記可視光波長は532nmであり、赤外線ファイバレーザを周波数倍増することによって形成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記走査重複領域内で前記半導体ウエハの表面温度を測定することと、前記半導体ウエハの測定された表面温度を用いて、前記予熱レーザ光線及びアニールレーザ光線の少なくとも一つの光学出力量を制御することとをさらに備える、請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記半導体ウエハの表面温度を測定することは、前記走査重複領域からの放射率を測定することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記半導体ウエハは、Si層の真下にあるSi及びGeの層を備える、請求項1から9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
a)走査光学システムを用いて、前記予熱線画像の近位端における開始位置から前記予熱線画像の遠位端における終了位置まで、アニーリング走査方向に前記アニーリング画像を走査することと、
b)前記アニーリング画像が前記終了位置に到達したときに、前記走査レーザ光線を消すことと、
c)前記半導体ウエハの表面上の新規な位置へ前記予熱線画像を動かすことと、
d)前記アニーリング画像を前記開始位置に方向付けることができるときに、前記走査レーザ光線を引き返させることと
を備え、
工程a)からd)を繰り返し、前記半導体ウエハの略全表面にわたって前記走査重複領域を走査する、請求項1から10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程c)は、前記予熱線画像を、前記アニーリング走査方向に直交する予熱走査方向に連続的に動かすことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記走査レーザ光線を消すことは、前記走査レーザ光線を音響光学変調器で遮断することを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記予熱線画像は、前記半導体ウエハの表面又は表面直下を、(0.6)・T≦TPA≦(0.8)・Tの範囲のプレアニール温度TPAに加熱する、請求項11から13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
パターン化された表面を有する半導体ウエハを、ウエハ表面温度T又はウエハ表面直下温度T、及び表面溶融温度T又は表面直下溶融温度Tでアニーリングするためのシステムであって、
予熱レーザシステムと、アニーリングレーザシステムとを備え、
前記予熱レーザシステムは、パターン化表面に予熱線画像を形成する予熱レーザ光線を形成し、前記予熱線画像は、前記パターン化表面の一部を、(0.5)・T≦TPA≦(0.9)・Tの範囲のプレアニール温度TPAに加熱するように構成され、前記予熱線画像は、5mmから20mmの間の長さL1を有する長手方向と、幅W1を有する幅狭方向とを有し、
前記アニーリングレーザシステムは、前記半導体ウエハの表面にアニーリング画像を形成する走査レーザ光線を形成し、これにより、前記アニーリング画像が前記予熱線画像の一部と重なって走査重複領域を規定し、
前記アニーリング画像は、100ミクロンから200ミクロンの範囲の長さL2で長手方向を有し、10ミクロンから25ミクロンの範囲の幅W2の幅狭方向を有し、ここで、前記長さL2は、L2≧2・W1であり、前記長さL1とL2とは直交方向に測定され、
前記アニーリングレーザシステムは、前記予熱線画像に対して前記アニーリング画像を走査する走査光学システムを含み、これにより、前記走査重複領域は、10ns≦τ≦500nsの範囲の滞留時間τを有し、前記走査重複領域内において、前記ウエハ表面温度T又はウエハ表面直下温度Tを、前記プレアニール温度TPAから前記表面溶融温度T又は表面直下溶融温度Tに局所的に上昇させる、システム。
【請求項16】
前記滞留時間τは、25ns≦τ≦250nsの範囲にある、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記アニーリングレーザシステムは、疑似連続波(QCW)レジームで動作するアニールレーザを含み、これにより、前記走査レーザ光線は、光パルスを含み、前記走査重複領域が通過する前記半導体ウエハの表面上の各点は、少なくとも5個の光パルスを受光する、請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
前記QCWレジームは、100MHz以上の反復率を有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記アニーリングレーザシステムは、初期レーザ光線を発するアニールレーザを含み、前記走査光学システムは、前記初期レーザ光線を受光し、前記走査レーザ光線を形成する回転ポリゴンミラーを含む、請求項15から18の何れか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記アニーリングレーザシステムは、変調器駆動部に動作可能に接続された変調器を含み、前記変調器は、前記初期レーザ光線に配列され、前記アニーリング画像がその走査を完了したときに前記初期レーザ光線を遮断し、前記アニーリング画像がの走査を開始したときに前記初期レーザ光線を送信する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記アニールレーザは、周波数倍増化結晶で赤外線励起されたファイバレーザを含み、前記走査レーザ光線は、532nmの波長を有する、請求項17から20の何れか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記予熱レーザ光線は赤外線波長を有する、請求項15から21の何れか1項に記載のシステム。
【請求項23】
前記走査重複領域からの熱放射を測定する熱放射検出システムをさらに含む、請求項15から22の何れか1項に記載のシステム。
【請求項24】
前記半導体ウエハは、可動ウエハ台によって順次支持されるチャックによって支持されており、前記アニーリング画像は、アニーリング方向に走査し、前記可動ウエハ台は、前記アニーリング方向に直交する予熱走査方向に前記予熱線画像を走査するように移動する、請求項15から23の何れか1項に記載のシステム。
【請求項25】
前記予熱線画像は、前記半導体ウエハの表面又は表面直下を、(0.6)・T≦TPA≦(0.8)・Tの範囲のプレアニール温度TPAに加熱する、請求項15から24の何れか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2014年12月17日に出願された米国仮特許出願第62/092,925号の優先権を主張する。当該米国仮特許出願は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、主として、集積回路及びメモリ装置を組み立てる半導体製造に使用されるアニーリングに関する。特に、本開示は、超短期間の滞留時間でのレーザアニーリングシステム及び方法に関する。
【0003】
米国特許第8,309,474号、米国特許第8,546,805号、米国特許第8,865,603号、及び米国特許出願番号第14/497,006号などの本明細書中で引用されるあらゆる参考文献は、参照によって本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
従来のナノ秒パルスレーザ溶融アニーリング(「従来の溶融レーザアニーリング」)は、進化した集積回路(IC)チップ製造に理想的な非常に低い熱収支、高いドーパント活性化、超階段接合を提示する。しかし、実際には、ICチップの光学特性及び熱特性の空間変動に起因する大幅な温度不均一性のために、パターン化された半導体ウエハ上にこの種のアニーリングを実行することは困難である。これらの弊害は、本技術分野において「パターン密度効果」と呼ばれる。
【0005】
米国特許第8,309,474号には、第1の走査レーザ光線が使用され、ハイブリッド溶融/非溶融装置を用いた一定の方式で、基板を溶融寸前の状態にまで予熱する技術が開示されている。その後、光パルスを伴う光線を放射する第2のレーザが使用され、アニールされる領域を、溶融された領域が即座に再結晶化できる程度の短い期間の間、溶融温度にまで上昇させる。この方法の利点は、パターン化された基板と相互作用するパルスレーザによる温度不均一性が、大幅に緩和されることである。しかし、この方法は、パルス対パルス再現性条件、及びパルスレーザ画像不均一性の制約に悩まされる。また、この方法は、100マイクロ秒から20ミリ秒の範囲の比較的長い滞留時間を有する。このような比較的長い滞留時間は、上述の問題を深刻化させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
米国特許第8,865,603号には、アニーリングシステムが記載されている。このアニーリングシステムにおいて、走査連続波(CW)レーザ光線は、1マイクロ秒から100マイクロ秒の範囲の滞留時間で背面レーザ処理を実行するために使用される。この方法の利点は、光線安定性が1%よりも大幅に改善し、半導体ウエハにおける光線均一性がガウス分布によって規定できるという点である。このことは、十分に理解されている。しかし残念ながら、この方法の出力条件及び滞留時間条件は、溶融基板を高速で再結晶化させるにはあまりにも長過ぎる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
10nsから500nsの範囲、あるいは、25nsから250nsの範囲の超短期間の滞留時間で半導体ウエハをアニーリングするためのレーザアニーリングシステム及び方法が開示される。このレーザアニーリングシステムは、2つのレーザ光線、すなわち、予熱レーザ光線と走査レーザ光線を利用する。予熱レーザ光線と走査レーザ光線は、予熱線画像及び重複領域を規定するアニーリング画像をそれぞれ形成する。アニーリング画像の長手寸法L2は、予熱線画像の短手寸法W1の方向に延びる。長手寸法L2を短手寸法W1よりも実質的に大きくする(例えば、2倍(2×)から4倍(4×)大きくする)ことで、比較的容易に予熱線画像とアニーリング画像とを整列させることができる。予熱レーザ光線は、赤外領域で動作するCW光線である。また、走査レーザ光線は、CW光線か疑似CW(QCW)光線の何れかである。走査レーザ光線は、半導体ウエハの表面上を十分に高速で予熱線画像に対して走査し、これにより、滞留時間は上述の範囲となる。これらの超短期間の滞留時間は、装置構造のリフローを抑えることができるため、製品ウエハの溶融アニーリングの実行には有用である。一例では、走査レーザ光線のCW及びQCW特性が、パルス系レーザアニーリングシステムに関連したパルス対パルス均一性の問題を回避する。パルス系レーザアニーリングシステムは、一個又は数個の光パルスにだけ依存してアニーリングを実行する。さらに、QCWレーザ光線の実質的なビーム成形を必要としないため、好ましくないスペックル効果が、避けられる。
【0008】
本開示の一局面は、パターン化された表面を有する半導体ウエハを、ウエハ表面温度T又はウエハ表面直下温度T、及び表面溶融温度T又は表面直下溶融温度Tでアニーリングする方法である。この方法は、予熱レーザ光線を用いてパターン化表面に予熱線画像を形成することと、走査レーザ光線を用いて半導体ウエハの表面にアニーリング画像を形成し、前記アニーリング画像が走査重複領域を規定するために前記予熱線画像の一部と重なるようにすることと、前記予熱線画像に対して前記アニーリング画像を走査し、前記走査重複領域が、10ns≦τ≦500nsの範囲の滞留時間τを有し、前記走査重複領域内において、前記ウエハ表面温度T又はウエハ表面直下温度Tを、前記プレアニール温度TPAから前記表面溶融温度T又は表面直下溶融温度Tに局所的に上昇させることとを備える。前記予熱線画像を形成する工程において、前記予熱線画像は、前記パターン化表面の一部を、(0.5)・T≦TPA≦(0.9)・Tの範囲のプレアニール温度TPAに加熱するように構成される。ここで、前記予熱線画像は、5mmから20mmの間の長さL1と幅W1とを有する。前記アニーリング画像を形成する工程において、前記アニーリング画像は、100ミクロンから500ミクロンの間の範囲の長さL2と、10ミクロンから50ミクロンの間の範囲の幅W2とを有する。ここで、前記長さL2はL2≧2・W1であり、前記長さL1とL2とは直交方向に測定される。
【0009】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記滞留時間τは、25ns≦τ≦250nsの範囲にある。
【0010】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記方法は、光パルスを発する疑似連続波(QCW)レジーム(タイプ)でアニールレーザを操作することによって前記走査レーザ光線を形成することをさらに備え、ここで、前記走査重複領域が通過する前記半導体ウエハの表面上の各点は、少なくとも5個の光パルスを受光する。
【0011】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記QCWレジームは、100MHz以上の反復率を有する。
【0012】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記走査レーザ光線は、アニールレーザから回転ポリゴンミラーへ初期レーザ光線を導くことによって形成される。
【0013】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記予熱レーザ光線は、赤外線波長を有し、前記走査レーザ光線は、可視光波長を有する。
【0014】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記可視光波長は532nmであり、赤外線ファイバレーザを周波数倍増することによって形成される。
【0015】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記方法は、前記走査重複領域内で前記半導体ウエハの表面温度を測定することと、前記半導体ウエハの測定された表面温度を用いて、前記予熱レーザ光線及びアニールレーザ光線の少なくとも一つの光学出力量を制御することとをさらに備える。
【0016】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記半導体ウエハの表面温度を測定することは、前記走査重複領域からの放射率を測定することを含む。
【0017】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記半導体ウエハは、Si層の真下にあるSi及びGeの層を備える。
【0018】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記方法は、a)走査光学システムを用いて、前記予熱線画像の近位端における開始位置から前記予熱線画像の遠位端における終了位置まで、アニーリング走査方向に前記アニーリング画像を走査することと、b)前記アニーリング画像が前記終了位置に到達したときに前記走査レーザ光線を消すことと、c)前記半導体ウエハの表面上の新規な位置へ前記予熱線画像を動かすことと、d)前記アニーリング画像を前記開始位置に方向付けることができるときに、前記走査レーザ光線を引き返させることとを備え、工程a)からd)を繰り返し、前記半導体ウエハの略全表面にわたって前記走査重複領域を走査する。
【0019】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、工程c)は、前記予熱線画像を、前記アニーリング走査方向に直交する予熱走査方向に連続的に動かすことを含む。
【0020】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記走査レーザ光線を消すことは、前記走査レーザ光線を音響光学変調器で遮断することを含む。
【0021】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記予熱線画像は、前記半導体ウエハの表面又は表面直下を、(0.6)・T≦TPA≦(0.8)・Tの範囲のプレアニール温度TPAに加熱する。
【0022】
本開示の他の局面は、パターン化された表面を有する半導体ウエハを、ウエハ表面温度T又はウエハ表面直下温度T、及び表面溶融温度T又は表面直下溶融温度Tでアニーリングするためのシステムである。このシステムは、予熱レーザシステムと、アニーリングレーザシステムとを備える。前記予熱レーザシステムは、パターン化表面に予熱線画像を形成する予熱レーザ光線を形成する。予熱線画像は、前記パターン化表面の一部を、(0.5)・T≦TPA≦(0.9)・Tの範囲のプレアニール温度TPAに加熱するように構成される。ここで、前記予熱線画像は、5mmから20mmの間の長さL1を有する長手方向と幅W1を有する幅狭方向とを有する。前記アニーリングレーザシステムは、前記半導体ウエハの表面にアニーリング画像を形成する走査レーザ光線を形成し、これにより、前記アニーリング画像が前記予熱線画像の一部と重なって走査重複領域を規定する。前記アニーリング画像は、100ミクロンから200ミクロンの範囲の長さL2で長手方向を有し、10ミクロンから25ミクロンの範囲の幅W2の幅狭方向を有する。ここで、前記長さL2は、L2≧2・W1であり、前記長さL1とL2とは直交方向に測定される。このシステムにおいて、前記アニーリングレーザシステムは、前記予熱線画像に対して前記アニーリング画像を走査する走査光学システムを含む。これにより、前記走査重複領域は、10ns≦τ≦500nsの範囲の滞留時間τを有する。また、アニーリングレーザシステムは、前記走査重複領域内において、前記ウエハ表面温度T又はウエハ表面直下温度Tを、前記プレアニール温度TPAから前記表面溶融温度T又は表面直下溶融温度Tに局所的に上昇させる。
【0023】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記滞留時間τは、25ns≦τ≦250nsの範囲にある。
【0024】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記アニーリングレーザシステムは、疑似連続波(QCW)レジーム(タイプ)で動作するアニールレーザを含む。これにより、前記走査レーザ光線は、光パルスを含み、前記走査重複領域が通過する前記半導体ウエハの表面上の各点は、少なくとも5個の光パルスを受光する。
【0025】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記QCWレジームは、100MHz以上の反復率を有する。
【0026】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記アニーリングレーザシステムは、初期レーザ光線を発するアニールレーザを含み、前記走査光学システムは、前記初期レーザ光線を受光し、前記走査レーザ光線を形成する回転ポリゴンミラーを含む。
【0027】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記アニーリングレーザシステムは、変調器駆動部に動作可能に接続された変調器を含む。前記変調器は、前記初期レーザ光線に配列され、前記アニーリング画像がその走査を完了したときに前記初期レーザ光線を遮断し、前記アニーリング画像がの走査を開始したときに前記初期レーザ光線を送信する。
【0028】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記アニールレーザは、周波数倍増化結晶で赤外線励起された(infrared-pumped)ファイバレーザを含み、前記走査レーザ光線は、532nmの波長を有する。
【0029】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記予熱レーザ光線は赤外線波長を有する。
【0030】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記方法は、前記走査重複領域からの熱放射を測定する熱放射検出システムをさらに含む。
【0031】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記半導体ウエハは、可動ウエハ台によって順次支持されるチャックによって支持されている。ここで、前記アニーリング画像は、アニーリング方向に走査し、前記可動ウエハ台は、前記アニーリング方向に直交する予熱走査方向に前記予熱線画像を走査するように移動する。
【0032】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記予熱線画像は、前記半導体ウエハの表面又は表面直下を、(0.6)・T≦TPA≦(0.8)・Tの範囲のプレアニール温度TPAに加熱する。
【0033】
さらなる特徴点及び利点は、以下の詳細な説明に明記される。また、それらの一部は詳細な説明の記載内容から当業者にとって直ちに明白となるか、後述する詳細な説明、特許請求の範囲、添付図面などの本願中に記載された実施形態を実施することによって認識されるであろう。特許請求の範囲は、本願明細書の一部を構成し、したがって参照により詳細な説明中に組み込まれる。
【0034】
上記の概要及び下記の詳細な説明に関する記載は、単なる例示であって、特許請求の範囲に記載されている本発明の本質及び特徴を理解するための概略または枠組みを提供するものであることを理解すべきである。添付図面は、さらなる理解を提供するために含まれており、本明細書の一部を構成すると共に本明細書の一部に組み込まれる。図面は、様々な実施形態を示しており、詳細な説明と共に種々の実施形態の原理や動作を説明する役割を担う。下記の特許請求の範囲は、本明細書の一部を構成し、具体的には、下記の詳細な説明に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本開示による超高速レーザアニーリングシステムの一例の模式図である。
図2A図2Aは、一例のトランジスタ半導体構造を示すウエハの断面図である。この図において、ソース及びドレイン領域は、ドープされたSi又はドープされたSiGeであり、表面溶融プロセスでアニールされ得る。
図2B図2Bは、一例の半導体構造を示すウエハの断面図である。ここでアニーリングは、表面直下溶融プロセスを含む。
図3図3は、ウエハ表面に形成された予熱線画像及びアニーリング画像の上面拡大図である。この図は、2つの画像の相対寸法及び走査方向、並びに、溶融アニーリングプロセスの滞留時間を規定する走査重複領域を示す。
図4図4は、ポリゴン(多角形)走査ミラー及びF−シータ走査構造を有するアニーリングレーザシステムの一例を模式的に示す側面図である。
図5図5は、図3と同様の拡大図であり、予熱線画像に対するアニーリング画像及び走査重複領域の走査の動きを示す。
図6図6は、予熱線画像及びアニーリング画像によるウエハ表面の走査方法の一例を示すウエハの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以降、本開示の様々な実施形態、および、添付の図面に示される複数の例について詳述する。可能な限り、同一または類似の部分の図では、同一または類似の参照番号および参照符号が用いられる。図面には決まった縮尺がなく、当業者であれば、図面は本発明の主要な部分を説明するために簡略化されていることに気づくであろう。いくつかの図面において、参考のためにデカルト座標が描かれているが、これは、本明細書中に記載のシステム及び方法を特定の方向および配置位置に限定することを意図したものではない。下記の特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に組み込まれると共にその一部を構成する。
【0037】
以下の記述では、用語「ウエハ」は、例えば、集積回路デバイスの製造に使用される「半導体ウエハ」を短縮したものである。一例のウエハは、シリコンウエハである。
【0038】
本開示の局面は、溶融アニーリングを実行することに関する。ここで、ウエハ表面は局所的に溶融するか、あるいは、ウエハの表面直下(subsurface)は局所的に溶融する。ウエハ表面が、溶融温度のより低い材料層(例えば、ゲルマニウムまたはゲルマニウム−シリコン)を覆うシリコン薄層で構成されている例では、ウエハ表面は固体を維持し得るが、表面直下材料は溶融し得る。そのため、本明細書中に記載の溶融プロセスは、ウエハ表面が溶融するか、あるいは、ウエハ表面が固体を維持するがウエハ表面の下にある材料の小容量が溶融する場合に、適用できる。後者の溶融プロセスは、本明細書では、「表面直下」溶融プロセスと呼ばれる。この場合、溶融温度Tは、表面直下材料の溶融温度を意味する。ウエハ表面温度Tは、ウエハ表面直下温度(すなわち、ウエハ表面の真下の温度)に実質的に対応する。そのため、この温度は、表面直下溶融プロセスに関連してウエハ表面直下温度とも呼ばれる。
<QCWレーザアニーリングシステム>
【0039】
図1は、本開示にかかるQCWレーザアニーリングシステム(「システム」)100の一例の模式図である。システム100は、ウエハ台120を含む。ウエハ台120は、上面132を有するチャック130を動作可能に支持する。ウエハ台120は、台制御部124に動作可能に接続され、台制御部124の操作を介して、X−Y平面に移動するとともに、選択的にZ方向に移動するように構成されている。チャック130の上面132は、本体11、表面12、及び表面直下13を有するウエハ10を動作可能に支持するように構成されている。表面直下13は、表面12の直下、例えば、数十ミクロン程度の深さの直下に位置する(図2A及び図2B参照)。表面12は、半導体構造によって規定されたパターンを含む。半導体構造は、一般に、ICチップの様々な製造段階と関連付けられている。
【0040】
図2Aは、ウエハ10の断面図である。この断面図は、トランジスタ半導体構造14の一例を示す。トランジスタ半導体構造14は、ソース領域16S及びドレイン領域16D、ゲート酸化物薄層17、並びに高誘電率(high-K)金属ゲートスタック(堆積物)18を含む。高誘電率(high-K)金属ゲートスタック18の材料の一例は、HfOである。ソース領域16S及びドレイン領域16Dは、ドープされたSiまたはドープされたSiGeであり、本明細書に開示される表面溶融プロセスを用いてアニールされ得る。高誘電率(high-K)金属ゲートスタック18は、ソース領域16S及びドレイン領域16DのSiまたはSiGeの溶融温度よりも高い溶融温度を有する。
【0041】
図2Bは、一例の半導体構造14を示すウエハ10の一例の断面図である。ここで、アニーリングプロセスは、表面直下溶融プロセスを含む。半導体構造14は、発明の名称が「SOI/SiGe技術に関してSiGe及びSiGeC埋め込み層を形成する構造及びシステム」である米国特許第8,138,579号の図5に基づく。半導体構造14は、埋め込み酸化物(BOX)層22、Si薄膜層24、任意のバッファ層であるSi薄膜26、SiGe又はSiGeC薄膜層28、第1Siエピタキシャル層30、第2Siエピタキシャル層34、及び絶縁構造36を有する。
【0042】
ウエハ10は、溶融温度Tを有する。溶融温度Tは、ウエハ10に形成された種々の半導体構造14に基づいて、ウエハ10における位置とともに変化し得る。(純粋な)シリコンウエハ10に関して、溶融温度Tは1414℃である。ドープされたシリコンの溶融温度Tは、純粋なシリコンの溶融温度よりもわずかに低いかもしれない。図2Bに示すような他の例では、ウエハ10は、シリコン及びゲルマニウムの混合物で作られた半導体構造14を含む。ゲルマニウムは、T=938℃の溶融温度を有する。シリコンとゲルマニウムをともに含む半導体特性は、これら2つの材料の溶融温度の加重平均である溶融温度Tを有する。またウエハ10は、ウエハ表面温度(又はウエハ表面直下温度)Tを有する。ウエハ表面温度Tは、上述したように、表面直下溶融プロセスに関する表面直下温度のことも意味する。
【0043】
図2Bの半導体構造14の例では、SiGeまたはSiGeC薄膜層28は、ドープ層であり得る。ドープ層は、ドーパントを活性化させるためにアニールされる必要がある。SiGeまたはSiGeC薄膜層28は、より高い溶融温度を有する第1Siエピタキシャル層30の真下に位置するため、図2Bに示す半導体構造14に対するアニーリング処理は、表面直下溶融プロセスとなる。
【0044】
一例では、チャック130は加熱され、ウエハ10を予熱することができる。ウエハ台120は、台制御部124に動作可能に接続される。
【0045】
システム100は、予熱レーザ光線168を発するように構成された予熱レーザシステム150も含む。予熱レーザ光線168は、ウエハ表面温度(又はウエハ表面直下温度)Tを、溶融温度Tよりも低いプレアニール温度TPAに上昇させることによって、ウエハ10の表面12を予熱するために使用される。
【0046】
予熱レーザシステム150は、予熱レーザ160及び線形成光学システム166を含む。予熱レーザ160は、ダイオードレーザ、ファイバレーザ、又は、連続波(CW)p偏光10.6ミクロンCOレーザなどのCOレーザを含み得る。一例では、線形成光学システム166は、予熱レーザ光線168が、垂直入射角近傍であるいは大きな傾斜入射角で、ウエハ10の表面12に入射するように構成される。一例の実施形態では、予熱レーザ光線168の入射角は、ウエハ10の表面12に対する偏光角(ブルースター角)と実質的に等しい。これにより、不均一な光吸収による不都合なパターン密度効果は、減少するか、最小化される。
【0047】
線形成光学システム166は、予熱レーザ160から初期レーザ光線162を受光し、図3に示すように、ウエハ10の表面12に初期レーザ光線162からの予熱線画像170を形成するように構成されている。予熱線画像170は、近位端部172、遠位端部174、及び対向端部173を有している。予熱線画像170は、長手方向(長さ寸法)を有している。長手方向は、近位端172から遠位端174に延び、長さL1を有する。また、予熱線画像170は、2つの対向端部173間で測定され、幅W1を有する幅狭方向(短手寸法)を有している。一例では、長さL1は、5mmから20mmの範囲にあり、好ましくは、長さL1は、7mmから12mmの範囲にある。また一例では、幅W1は、50μmから200μmの範囲にあり、好ましくは、幅W1は、150μmである。
【0048】
予熱線画像170は、矢印AR1によって示されるように、ウエハ10の表面12に対してy方向に移動する。この方向は、予熱走査方向と呼ばれる。ウエハ10の表面12における予熱線画像170に関連した部分は、ウエハ10の表面12の局所的な予熱部を表している。ここで、ウエハ表面温度Tは、プレアニール温度TPAにまで上昇する。
【0049】
一実施形態では、予熱レーザ光線168は、走査方向(すなわち、y方向)においてガウス強度プロファイルを有し、長手(交差走査)方向(すなわち、x方向)に相対的に平坦な頂点プロファイルを有する。予熱レーザ光線168の幅W1は、ガウスプロファイルの1/e強度値又はガウスプロファイルの半値全幅(FWHM)で規定される。
【0050】
再び図1を参照すると、システム100は、走査レーザ光線268を生成するように構成されたアニーリングレーザシステム250も含む。走査レーザ光線268は、図3に示すように、ウエハ10の表面12上にアニーリング画像270を形成する。アニーリングレーザシステム250は、アニールレーザ260、変調器263、及び走査光学システム266を含む。アニールレーザ260は、初期レーザ光線262を放射する。変調器263は、変調器駆動部264に動作可能に接続されている。走査光学システム266は、初期レーザ光線262を受光し、走査レーザ光線268を生成する。一例では、変調器263は、音響光学変調器(AOM)である。音響光学変調器(AOM)は、初期レーザ光線262を、選択的及び交互に遮断したり通過させたりするために使用され、アニーリング画像270の走査を制御する。
【0051】
線形成光学システム166及び走査光学システム266はそれぞれ、レンズ、ミラー、開口部、フィルタ、活性光学要素(例えば、可変減衰器など)、及びこれらの組合せを含む。一例では、線形成光学システム166及び走査光学システム266の一方又は両方は、例えば、各初期レーザ光線162及び262の均一化、及び/又は、初期レーザ光線162及び262を選択断面形状にするなどの光線調整を実行するように構成され得る。このような光線調整を実行するのに適した例示的な光学システム166及び262は、米国特許第7,514,305号明細書、米国特許第7,494,942号明細書、米国特許第7,399,945号明細書、米国特許第6,366,308号明細書に開示されている。一例では、アニールレーザ260からの初期レーザ光線262は、高品質を有し(例えば、実質的にガウス分布であり)、実質的に光線調整をせずに(ある場合には、まったく光線調整をせずに)使用される。
【0052】
図4は、走査光学システム266の一例の模式図である。走査光学システム266は、コリメーティング261、ポリゴンミラー267、及び焦点レンズ269を含む。ポリゴンミラー267は、ミラー駆動部272に動作可能に接続され、ミラー駆動部272によって回転駆動される。一例では、ポリゴンミラー267は、47個の面を有し、毎分約17,000回転(RPM)の速度で回転する。これにより、予熱線画像170に対するアニーリング画像270の走査は高速となり、後述するように、非常に短い滞留時間となる。一例では、走査光学システム266は、F−θ構造を有する。
【0053】
一例では、アニールレーザ260は、赤外線ダイオード励起されたIRレーザである。このIRレーザは、周波数変換要素(例えば、周波数倍増結晶)を利用している。周波数変換要素は、赤外線波長を、例えば1.064μmから532nmの可視光波長に変換する。一例では、アニールレーザ260からの初期レーザ光線262は、QCW光線である。これは、厳密にはレーザが光パルスを放射することを意味するが、各光パルスは互いに近接しているため、出力されるレーザ光線は、CW光線とよく似た挙動をする。
【0054】
一例では、アニールレーザ260は、単純に高周波数でアニールレーザ260を点灯したり消灯したりすることによって、この周波数(例えば、100MHz以上、又は150MHz以上)で、QCWレジームとして動作する。QCWレジームは、CWレジームと比較してより高いピーク出力を有する。ピーク出力が高いことにより、共振空洞を必要とするCWレジームでの動作とは対照的に、アニールレーザ260について単一パス配置を用いた単純な方法で第2高周波を順次生成することができる。一例では、初期レーザ光線262は、約1.2のM値を有する正確なガウス分布に非常に近い。アニールレーザ260の出力は、約500Wである。走査光学システム266に関連した光学損失は比較的小さいため、一例では、走査レーザ光線268は、約500Wの光学出力を有する。走査レーザ光線268の高い出力により、本明細書に開示されるアニーリング方法で用いられる滞留時間を非常に短くすることが可能となる。
【0055】
走査レーザ光線268及びこれに関連するアニーリング画像270は、予熱線画像170(及び、任意に加熱されたチャック130)によって規定されたウエハ10の表面12の予熱された部分を加熱するために用いられる。そのため、ウエハ表面温度Tは、プレアニール温度TPAから溶融温度Tにまで局所的に上昇する。これによって、ウエハ10の表面12または表面直下13を局所的に溶融させる。
【0056】
アニーリング画像270は、予熱線画像170の一部と重なっている。この重複領域は、本明細書では、「走査重複領域」SORと呼ばれる。アニーリング画像270は、長さL2を有する長手方向と、幅W2を有する幅狭方向とを有する。アニーリング画像270は、x方向及びy方向に実質上のガウス強度分布を有する。アニーリング画像270の長手方向は、予熱線画像170の短手寸法の方向に方向づけられている。一例では、長さL2は、100μmから500μmの範囲であり、幅W2は、10μmから50μmの範囲である。好ましくは、幅は、15μmから20μmの範囲、もしくは、16μmから18μmの範囲である。アニーリング画像270の走査方向AR2は、アニーリング画像270の長手方向に垂直である(直交している)。走査方向AR2は、「アニーリング走査方向」と呼ばれ、「予熱走査方向」AR1に直交している。アニーリング画像270の幅W2は、走査方向AR2において、走査重複領域SORの幅を規定する。
【0057】
一例では、長さL2は、幅W1よりも実質的に大きくなるように(例えば、2倍から4倍大きくなるように)形成される。そのため、アニーリング画像270の端部は、図3に示すように、予熱線画像170の対向端部173を越えて拡張している。これにより、予熱線画像170とアニーリング画像270とを比較的容易に位置合わせし、走査重複領域SORを規定することができる。この構成は、アニーリング画像270の中央の高強度部分を利用して、予熱線画像170によって得られたウエハ10の表面12の局在化された予熱部に熱を加え、ウエハ表面温度Tを溶融温度Tにまで上昇させる。
【0058】
予熱レーザ光線168及び走査レーザ光線268は、波長λ及びλをそれぞれ有している。一例では、波長λ及びλは、選択条件下でウエハ10をともに加熱することができる。一例では、波長λは、10.64ミクロンであり、波長λは、532nmである。
【0059】
システム100は、熱放射検出システム180も含む。熱放射検出システム180は、後述するように、ウエハ10の表面12からの熱放射線182の量を測定し、電熱放射信号SEを生成するように配置構成されている。一例では、熱放射検出システム180は、ウエハ10の表面12からの放射率εを測定し、電熱放射信号SEは、測定された放射率εを表す。一例では、熱放射検出システム180は、走査光学システム266の少なくとも一部を利用している。これにより、走査光学システム266で規定されたアニーリング画像270及び走査重複領域SORを追跡することができる。
【0060】
一実施形態では、熱放射検出システム180及び走査光学システム266は、重なり合う光学経路部分OP及びOPをそれぞれ有する。この構成により、熱放射検出システム180は、アニーリング画像270がウエハ10の表面12上を走査する間であっても、走査重複領域SORの位置からの熱放射線182を収集することができる。
【0061】
他の実施形態では、システム100は、パイロメータ280を含む。パイロメータ280は、走査重複領域SORでウエハ10の表面12の局所的なウエハ表面温度Tを測定し、それに応じて温度信号STを生成する。
【0062】
他の例では、システム100は、反射光268Rを受光するように配置された検出部290を含む。反射光268Rは、ウエハ10の表面12から反射する走査レーザ光線268の一部である。一例では、反射光268Rの量は、ウエハ10の表面12が走査重複領域SOR(図3参照)において溶融したときに増加する。検出部290は、検出した反射光268Rの量を表す反射光信号SRを生成する。
【0063】
一実施形態では、システム100は、制御部300をさらに含む。一実施形態では、制御部300は、パーソナルコンピュータ又はワークステーションなどのコンピュータであるか、あるいは、このようなコンピュータを含む。制御部300は、多くの市販のマイクロプロセッサの何れか、マイクロプロセッサをハードディスクドライブなどの記憶装置に接続する適切なバスアーキテクチャ、及び適切な入出力装置(例えば、キーボード及び表示装置それぞれ)を含むことが好ましい。制御部300は、非一時的なコンピュータ読取可能な媒体(例えば、メモリ、プロセッサ、またはその両方)で具現化される指令(ソフトウエア)を介してプログラム化され得る。当該指令は、制御部300に対して、システム100の種々の機能を実行させ、ウエハ10のアニーリングを達成する。
【0064】
制御部300は、予熱レーザシステム150及びアニーリングレーザシステム250に操作可能に接続され、これらのレーザシステム150及び250の動作を制御する。制御部300は、変調器263に電気的に接続され、制御信号SMによって変調器263の動作を制御する。一例では、制御部300は、デジタル信号プロセッサ(DPS)(図示せず)を含み、予熱レーザシステム150及びアニーリングレーザシステム250において走査機能を制御する。制御部300は、熱放射検出システム180及び走査光学システム266にも操作可能に接続されており、電熱放射信号SEを受信して処理するように構成されている。制御部300は、パイロメータ280にも操作可能に接続されており、後述するように、温度信号STを受信して処理するように構成されている。制御部300は、検出部290も操作可能に接続されており、反射光信号SRを受信して処理するように構成されている。
【0065】
システム100の動作の一例においては、制御部300は、第1の制御信号S1を予熱レーザ160に送信する。予熱レーザ160は、第1の制御信号S1に応じて初期レーザ光線162を生成する。この初期レーザ光線162は、線形成光学システム166によって受光される。線形成光学システム166は、初期レーザ光線162から予熱レーザ光線168を形成する。予熱レーザ光線168は、第1の光軸A1に概ね沿って進み、ウエハ10の表面12に予熱線画像170を形成する。
【0066】
制御部300は、第2の制御信号S2をアニールレーザ260に送信する。アニールレーザ260は、第2の制御信号S2に応じて初期レーザ光線262を生成する。この初期レーザ光線262は、走査光学システム266によって受光される。走査光学システム266は、制御信号SSによって制御され、走査レーザ光線268を形成する。走査レーザ光線268は、ウエハ10の表面12にアニーリング画像270を順次形成する。
【0067】
制御部300は、第3の制御信号S3を台制御部124に送信し、予熱線画像170及びアニーリング画像270に対してウエハ10を移動(走査)させるように、ウエハ台120を制御する。チャック130がウエハ予熱を供給する例では、制御部300が、チャック制御部134に別の制御信号(図示せず)を送信し、ウエハ予熱プロセスを開始させてもよい。一般的なチャック予熱範囲は、室温(25℃)から400℃である。
【0068】
一例では、制御部300は、パイロメータ280から温度信号STも受信し、この温度信号STを使用して、予熱レーザ光線168及び走査レーザ光線268の一方又は両方の強度を制御する。
【0069】
図5は、図3と同様の拡大図であり、予熱線画像170に対するアニーリング画像270及び走査重複領域SORの走査の動きを示している。アニーリング画像270は、走査プロセス中の異なる時間に対応する種々の位置において図示されている。走査光学システム266は、予熱線画像170上のx方向において、予熱線画像170の近位端部172における開始位置PSから予熱線画像170の遠位端部174における終了位置PFに、アニーリング画像270を走査又は一掃するように構成されている。アニーリング画像270の走査速度は、予熱線画像170の動きと比較して十分に速い。そのため、予熱線画像170は、アニーリング画像270の走査中、本質的に固定されている。
【0070】
一例では、走査重複領域SORの滞留時間τは、10ns≦τ≦500nsの範囲にある。また、他の例では、走査重複領域SORの滞留時間τは、25ns≦τ≦250nsの範囲にある。幅W2が15μmであり、滞留時間τが25nsの場合、アニーリング画像270、及びそれに伴う走査重複領域SORの走査速度は、v=W2/τ=600m/sである。滞留時間τが250nsの場合、走査速度は、v=60m/sである。滞留時間τが500nsの場合、走査速度は、v=30m/sである。滞留時間τが10nsの場合、走査速度は、v=1500m/sである。これらの走査速度は、図3などに示すように、走査光学システム266によって達成可能である。
【0071】
アニーリング画像270が予熱線画像170の遠位端部174に到達すると、走査レーザ光線268及び対応するアニーリング画像270は、変調器263を起動することによって消される。これにより、初期レーザ光線262の伝達を遮断することができる。走査レーザ光線268が「消灯」されている間、予熱線画像170は、y方向に動くことが可能となる。これにより、ウエハ10の表面12の次の部分を走査することができる。一例では、予熱線画像170の動きは、例えば、ウエハ台120を連続的に移動させることによって、連続的であってもよい。予熱線画像170が所定の位置に移動すると、走査光学システム266が、走査レーザ光線268及び対応するアニーリング画像270を、新たに位置する予熱線画像170の開始位置PSに方向づけることができたときに、走査レーザ光線268は、変調器263を伝達モードに置くことによって、向きを反対に変える。その後、この新たに位置する予熱線画像170上でのアニーリング画像270の走査が実行される。図6は、ウエハ10の上面図であり、上述の走査方法を繰り返すことによって、ウエハ10の略全表面12(例えば、少なくともパターン化された部分)を走査重複領域SORによって走査する方法の一例を示す。
【0072】
上述したように、一例では、アニールレーザ260は、QCWレジームで操作される。アニールレーザ260用の動作周波数の一例は、f=100MHz又は100MHzよりも高く、またあるいは、f=150MHz又は150MHzよりも高い。周波数f=150MHzは、結果的に、1秒あたり150×10の光パルス(光パルス/秒)を発するアニールレーザ260となる。走査レーザ光線268の走査速度vがv=150m/sの場合、この走査速度は、アニーリング画像270が進む毎ミクロンの距離について、R=f/v=1パルス(p)のパルス数/距離(距離に対するパルス数)となる。すなわち、1p/μmのパルス数/距離となる。滞留時間τは、アニーリング画像270及び走査重複領域SORの幅W2が、ウエハ10上の所定の点を通過するのにかかる時間量となる。したがって、15μmの幅W2を有し、ウエハ10の表面12上の所定の点をv=150m/sの速度で移動するアニーリング画像270の場合、この所定の点は、N=R・W2=(1p/μm)・(15μm)=15パルスのパルス数Nを受ける(experience)ことになるであろう。600m/sの走査速度及びW2=20μmの幅の場合、パルス数/距離(距離に対するパルス数)Rは、R=f/v=0.5p/μmとなる。そのため、パルス数Nは、N=R・W2=(0.5p/μm)・(20μm)=10パルスとなる。
【0073】
一例では、走査重複領域SORが走査されるウエハ10の表面12上の各点は、滞留時間τの期間中、走査レーザ光線268から少なくとも5個(5回)の光パルスを受ける。好ましくは、上述の各点は、滞留時間τの期間中、走査レーザ光線268から少なくとも8個(8回)の光パルスを受ける。より好ましくは、上述の各点は、滞留時間τの期間中、走査レーザ光線268から少なくとも10個(10回)の光パルスを受ける。パルス周波数が十分に高速である(例えば、100nsよりも速い)ため、パルスによる所定点の照射中に、ウエハ10の表面12(又は、表面直下13)に関連した所定点において、結晶化は起こらない。
【0074】
一例では、溶融アニールプロセスは、システム100によって実行される。そのため、プレアニール温度TPAは、(0.5)・T≦TPA≦(0.9)・Tの範囲となる。他の例では、プレアニール温度TPAは、(0.6)・T≦TPA≦(0.8)・Tの範囲となる。さらに他の例では、プレアニール温度TPAは、(0.6)・T≦TPA≦(0.7)・Tの範囲となる。上述したように、溶融温度Tは、適用方法に応じて、表面溶融温度または表面直下溶融温度の何れかを意味し得る。
【0075】
走査プロセス中、熱放射検出システム180は、走査重複領域SORからの熱放射線182を観察するために使用することができる。熱放射検出システム180は、検出された熱放射を表す電熱放射信号SEを生成し、この電熱放射信号SEを制御部300へ送信する。制御部300は、電熱放射信号SEを受信し、この電熱放射信号SEを使用してフィードバックループを作成する。これによって、予熱レーザシステム150及びアニーリングレーザシステム250の少なくとも一方によって生成された出力量を制御し、予熱レーザ光線168及び走査レーザ光線268の少なくとも一方のレーザ出力を制御する。これにより、ウエハ表面温度Tは、実質的に一定となる。熱放射線182の検出は、高速の光検出器を使用して実行される。これにより、対応する電熱放射信号SEは、実質的に即座に閉ループ制御に利用可能となる。
【0076】
ウエハ10の表面12のウエハ表面温度Tを正確に制御するためには、アニーリング方法が実行されているときに、ウエハ表面温度Tを正確に測定できる必要がある。放射率εを測定することによってウエハ表面温度Tを測定するための本開示に適用できるシステム及び方法は、米国特許公開公報第2012/0100640号に記載されている。走査重複領域SORがウエハ10の表面12上を走査するときの放射率εは、ポイント(点)単位で算出され得る。算出された放射率εは、その後、ウエハ表面温度Tの局所的な測定値を得るために用いられる。ウエハ表面温度Tは、ウエハ10の表面12に存在するあらゆるパターンに起因した放射率変動に無反応である。この結果として、走査レーザ光線268の出力量の閉ループ制御が可能となる。反射光268Rの測定値は、システム100へフィードバックを与える方法に対しても機能し、予熱レーザ光線168及び走査レーザ光線268の一方又は両方において光学出力量を制御する。
【0077】
当業者には明白であるが、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、本開示に対して様々な変更を加えることができる。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその均等範囲内で行われる本開示の修正及び変更を包含する。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6