特許第6116695号(P6116695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本パーカライジング株式会社の特許一覧

特許6116695アルミニウム含有金属材料用親水化処理剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116695
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】アルミニウム含有金属材料用親水化処理剤
(51)【国際特許分類】
   C09D 129/04 20060101AFI20170410BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20170410BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170410BHJP
   F28F 13/18 20060101ALI20170410BHJP
   F28F 1/32 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   C09D129/04
   C09K3/00 R
   C09D7/12
   F28F13/18 B
   F28F1/32 H
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-534868(P2015-534868)
(86)(22)【出願日】2014年8月8日
(86)【国際出願番号】JP2014071103
(87)【国際公開番号】WO2016021071
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2016年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229597
【氏名又は名称】日本パーカライジング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】檀上 禎秀
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−170170(JP,A)
【文献】 特開平01−223188(JP,A)
【文献】 特開2001−172547(JP,A)
【文献】 特許第5497971(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 129/04
C09D 7/12
C09K 3/00
F28F 1/32
F28F 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A)から選ばれる1種以上と、水難溶性無機酸化物(B)から選ばれる1種以上と、オルガノアルコキシシラン(C)から選ばれる1種以上と、界面活性剤(D)とを、それぞれの固形分重量比で(C)/{(B)+(D)}が0.001から1.0、(A)/{(B)+(C)+(D)}が0.1から5.0となるよう配合して得られた有機無機複合粒子と、水と、を含有し、前記有機無機複合粒子が全固形分質量を基準として40から100質量%であり、
前記ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A)が、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコールの誘導体であり、且つ、けん化度が90mol%以上である成分(a)であり
前記界面活性剤(D)が、ノニオン系界面活性剤であ
ことを特徴とする、アルミニウム含有金属材料用親水化処理剤。
【請求項2】
前記ノニオン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びフッ素系ノニオン系界面活性剤から選ばれる、請求項1記載の親水化処理剤。
【請求項3】
前記界面活性剤(D)の表面張力が、15から65mN/m(25℃、0.1質量%水溶液、wilhelmy法)である、請求項1又は2記載の親水化処理剤。
【請求項4】
(D)/{(A)+(B)+(C)+(D)}の配合比が、それぞれの固形分重量比で0.0001から0.03である、請求項1〜のいずれか一項記載の親水化処理剤。
【請求項5】
(C)/{(B)+(D)}の配合比が、それぞれの固形分重量比で0.01から1.0である、請求項1〜のいずれか一項記載の親水化処理剤。
【請求項6】
前記ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A)の重量平均分子量が、5,000から50,000である、請求項1〜のいずれか一項記載の親水化処理剤。
【請求項7】
前記オルガノアルコキシシラン(C)が、グリシジル基を1つ以上有する成分を少なくとも含む、請求項1〜のいずれか一項記載の親水化処理剤。
【請求項8】
前記水難溶性無機酸化物(B)が、Siを有する無機酸化物である、請求項1〜のいずれか一項記載の親水化処理剤。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項記載の親水化処理剤をアルミニウム含有金属材料に接触させた後に乾燥させる工程、を含むことを特徴とするアルミニウム含有金属材料の親水化処理方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項記載の親水化処理剤をアルミニウム含有金属材料に接触させた後に乾燥させる工程、を含むことを特徴とする親水化アルミニウム含有金属材料の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の製造方法により得られた親水化アルミニウム含有金属材料。
【請求項12】
請求項11記載の親水化アルミニウム含有金属材料が用いられている熱交換器。
【請求項13】
請求項1〜のいずれか一項記載の親水化処理剤を熱交換器に接触させた後に乾燥させる工程、を含むことを特徴とする熱交換器の親水化処理方法。
【請求項14】
請求項1〜のいずれか一項記載の親水化処理剤を熱交換器に接触させた後に乾燥させる工程、を含むことを特徴とする親水化熱交換器の製造方法
【請求項15】
請求項14記載の製造方法により得られた親水化熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム含有金属材料用親水化処理剤、アルミニウム含有金属材料の親水化処理方法、親水化処理されたアルミニウム含有金属材料の製造方法等に関する。更に詳しくは、本発明は、熱交換器等に用いられるアルミニウム含有金属材料に優れた親水性を付与、持続できる皮膜を形成するための親水化処理剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調機や自動車用エアコン等に用いられる熱交換器は、加工性・熱伝導性等の優位性からアルミニウム含有金属材料で形成されることが多く、熱交換効率を高めるため通風する部位のアルミニウム含有金属材料(一般にフィンと呼ばれる)間の間隔を非常に狭く設計している。熱交換器ではエアコンを稼動(冷却)した際に大気中の水分がフィン上で凝縮し結露が起こるが、この結露水はフィン表面の疎水性が高いほど嵩高い水滴になり、フィン間で目詰まりを発生し易くなる。目詰まりが発生すると、通風抵抗が増大し熱交換効率が低下し、熱交換器本来の性能が得られなくなる。また、目詰まりによって送風時の騒音が増大することもある。これらの問題を解消するために、アルミニウム含有金属材料や熱交換器部材表面に親水性を付与する方法が提案、実施されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0003】
親水性を付与する方法としては、無機物を主成分とした親水化処理剤(以下、無機系親水化処理剤とする)(特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照。)や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの樹脂や有機物を主成分とした親水化処理剤(以下、有機系親水化処理剤とする)などが提案、実施されている(特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8を参照)。
【0004】
ここで、無機系親水化処理剤を用いて親水性を付与したアルミニウム含有金属材料や熱交換器は、高い親水性を長期間持続でき耐久性に優れている反面、無機物に特有の皮膜臭気(埃っぽい臭気。以下、埃臭とする)が発生するなど臭気性に問題がある。一方、有機系親水化処理剤を用いた場合、埃臭の問題は軽減される反面、親水性成分である有機物が流去しやすく、長期間にわたり高い親水性を持続することが難しく耐久性に問題がある。これらを改善すべく、無機物であるシリカ粒子をポリビニルアルコールで分散させることでシリカ特有の埃臭を改善する親水化処理薬剤が提案されている(特許文献9、特許文献10を参照)。しかしながら、シリカ粒子を単にポリビニルアルコールで分散させた親水化処理剤から得られる皮膜は長期間の使用によりポリビニルアルコールが流去し、シリカ粒子が露出した結果、埃臭がするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−328038号公報
【特許文献2】WO2001−053428
【特許文献3】特開平6−300482号公報
【特許文献4】特開平6−221786号公報
【特許文献5】特開2012−87213号公報
【特許文献6】特願2013−547425号公報
【特許文献7】特開2010−185024号公報
【特許文献8】特開2000−26857号公報
【特許文献9】特許第4447115号公報
【特許文献10】特開2011−153343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術の有する問題点を解決したものであって、その目的は、熱交換器等に用いられるアルミニウム含有金属材料に優れた親水性及び親水性持続性並びに臭気性を付与できる皮膜を形成するための、アルミニウム含有金属材料用親水化処理剤を提供することにある。また、本発明の他の目的は、アルミニウム含有金属材料の親水化処理方法、親水化処理されたアルミニウム含有金属材料の製造方法、及び親水化アルミニウム含有金属材料や当該材料が用いられている熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(1)は、ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A)から選ばれる1種以上と、水難溶性無機酸化物(B)から選ばれる1種以上と、オルガノアルコキシシラン(C)から選ばれる1種以上と、界面活性剤(D)とを、それぞれの固形分重量比で(C)/{(B)+(D)}が0.001から1.0、(A)/{(B)+(C)+(D)}が0.1から5.0となるよう配合して得られた有機無機複合粒子と、水と、を含有し、前記有機無機複合粒子が全固形分質量を基準として40から100質量%であることを特徴とする、アルミニウム含有金属材料用親水化処理剤である。当該親水化処理剤を、アルミニウム含有金属材料に接触、乾燥して形成した皮膜は、埃臭などの臭気性の問題が改善されたものであると共に、優れた親水性を持続できる。この皮膜を例えば、熱交換器等を構成するアルミニウム含有金属材料や熱交換器に適用すれば、結露水の目詰まりによる熱交換効率の低下や騒音等の問題を解決することができる。
ここで、前記ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A)が、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコールの誘導体であり、且つ、けん化度が90mol%以上である成分(a)であってもよい。
また、前記界面活性剤(D)の表面張力が、15から65mN/m(25℃、0.1質量%水溶液、wilhelmy法)であってもよい。
また、前記界面活性剤(D)が、ノニオン系界面活性剤であってもよい。
また、(D)/{(A)+(B)+(C)+(D)}の配合比が、それぞれの固形分重量比で0.0001から0.03であってもよい。
また、(C)/{(B)+(D)}の配合比が、それぞれの固形分重量比で0.01から1.0であってもよい。
また、前記ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A)の重量平均分子量が、5,000から50,000であってもよい。
また、前記オルガノアルコキシシラン(C)が、グリシジル基を1つ以上有する成分を少なくとも含んでいてもよい。
また、前記水難溶性無機酸化物(B)が、Siを有する無機酸化物であってもよい。
本発明(2)は、前記親水化処理剤をアルミニウム含有金属材料に接触させた後に乾燥させる工程、を含むことを特徴とするアルミニウム含有金属材料の親水化処理方法である。より具体的には、本親水化処理方法は、アルミニウム含有金属材料を無処理、或いは清浄化処理及び/又は防錆処理した後、前記アルミニウム含有金属材料の一部又は全面に、前記本発明に係るアルミニウム含有金属材料用親水化処理剤を接触させた後、乾燥して皮膜を形成する工程を含む。
本発明(3)は、前記親水化処理剤をアルミニウム含有金属材料に接触させた後に乾燥させる工程、を含むことを特徴とする親水化アルミニウム含有金属材料の製造方法である。
本発明(4)は、前記製造方法により得られた親水化アルミニウム含有金属材料である。より具体的には、本アルミニウム含有金属材料は、前記本発明に係るアルミニウム含有金属材料用親水化処理剤から得られる親水性皮膜が、その一部又は全面に形成されていることを特徴とする。
本発明(5)は、前記親水化アルミニウム含有金属材料が用いられている熱交換器である。より具体的には、本熱交換器は、前記本発明に係るアルミニウム含有金属材料用親水化処理剤から得られる親水性皮膜が、その一部又は全面に形成されていることを特徴とする。
本発明(6)は、前記親水化処理剤を熱交換器に接触させた後に乾燥させる工程、を含むことを特徴とする熱交換器の親水化処理方法である(即ち、完成した熱交換器を浸漬処理する方法)。
本発明(7)は、前記親水化処理剤を熱交換器に接触させた後に乾燥させる工程、を含むことを特徴とする親水化熱交換器の製造方法である(即ち、完成した熱交換器を浸漬処理して親水化熱交換器を製造する方法)。
本発明(8)は、前記製造方法により得られた親水化熱交換器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアルミニウム含有金属材料用親水化処理剤を、アルミニウム含有金属材料に接触、乾燥して形成した皮膜は、優れた親水性及び臭気性を有する。したがって、例えば熱交換器等を構成するアルミニウム含有金属材料や熱交換器にこの親水化処理を適用すれば、結露水の目詰まりによる熱交換効率の低下、騒音の問題を解決する優れた親水性を持たせることができる。更に、本発明の親水化処理方法で形成した親水性皮膜は、長期の使用時においても優れた親水性と臭気性を持続することができる。
【0009】
本発明のアルミニウム含有金属材料は、結露水の目詰まりによる熱交換効率の低下や騒音等の問題を解決する優れた親水性を有する親水性皮膜が形成されているので、熱交換器に適用した場合の実用的価値が極めて高く、更に熱交換器への適応性が高いだけでなくその他の広い用途にも適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のアルミニウム含有金属材料用親水化処理剤、親水化処理方法及び親水化処理されたアルミニウム含有金属材料や熱交換器について、実施の形態を挙げて更に詳しく説明する。尚、本明細書及び本特許請求の範囲にて数値範囲を示す「から」は、特記しない限り、上限値及び下限値も包含する。例えば、範囲「XからY」は、特記しない限り、X以上Y以下であることを意味する。
【0011】
≪アルミニウム含有金属材料用親水化処理剤≫
本発明のアルミニウム含有金属材料用親水化処理剤(以下、「親水化処理剤」と略す。)は、ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A)から選ばれる1種以上と、水難溶性無機酸化物(B)から選ばれる1種以上と、オルガノアルコキシシラン(C)から選ばれる1種以上と、界面活性剤(D)とを、それぞれの固形分重量比で(C)/{(B)+(D)}が0.001から1.0、及び(A)/{(B)+(C)+(D)}が0.1から5.0となるよう配合して得られた有機無機複合粒子と、水とを少なくとも含有し、全固形分質量を基準として前記有機無機複合粒子を40から100質量%含有する。以下、当該親水化処理剤の各成分について詳述する。
【0012】
[成分:有機無機複合粒子]
まず、有機無機複合粒子について説明する。親水化処理剤に含まれる有機無機複合粒子は、少なくとも、ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A)から選ばれる1種以上と、水難溶性無機酸化物(B)から選ばれる1種以上と、オルガノアルコキシシラン(C)から選ばれる1種以上と、界面活性剤(D)とを、それぞれの固形分重量比で(C)/{(B)+(D)}が0.001から1.0、且つ(A)/{(B)+(C)+(D)}が0.1から5.0となるよう配合して得られた成分である。以下、必須原料である(A)〜(D)についてまず説明し、次いで必須原料の配合比、当該有機無機複合粒子の製造方法について説明する。
【0013】
(必須原料/ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A))
ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A)は、オルガノアルコキシシランと脱水縮合する点で、ヒドロキシル基を有していれば特に限定されるものではなく用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコールの誘導体、ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールの誘導体、セルロース及びセルロース誘導体、キトサン及びキトサン誘導体などが挙げられる。中でも親水性と臭気性を長期にわたり持続する点で、ヒドロキシル基密度が高い水溶性樹脂であることが好ましく、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコールの誘導体から選ばれる1種以上で、且つケン化度が90mol%以上であることが好ましい。尚、「水溶性」とは、室温20℃で水に対して0.1質量%以上の溶解性を有する高分子物質を表し、該溶解性は0.5質量%以上が好ましく、特に1質量%以上がより好ましい。
【0014】
ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A)の重量平均分子量は、水難溶性無機酸化物の表面を被覆できれば特に限定されるものではないが、十分に被覆する点で重量平均分子量が5,000から100,000であることが好ましく、5,000から50.000であることがより好ましい。特に、重量平均分子量が30,000以下であることが更に好適である(下限値は特に限定されないが、例えば5,000)。とりわけ、ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A)がポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコールの誘導体から選ばれる1種以上で且つケン化度が90mol%以上であるものである場合、重量平均分子量が30,000以下であることが特に好適である(下限値は特に限定されないが、例えば5,000)。ここでいう重量平均分子量とは、GPC法、粘度法などの測定方法により得られる重量平均分子量を指す。本発明における水溶性樹脂の重量平均分子量はGPC−LALLS法により測定した。測定は以下の条件で行った。
1)GPC
装置:Waters製244型ゲル浸透クロマトグラフィー
カラム:東ソー製TSK(内径8mm、長さ30cm、2本)
溶媒:0.1M―トリス緩衝液(pH7.9)
流速:0.5ml/min
温度:23℃
試料濃度:0.04%
ろ過:東ソー製0.45μmマイショリディスクW−25−5
注入量:0.2ml
2)LALLS
装置:Chromatrix製KMX−6型低角度レーザー光散乱光度計
温度:23℃
波長:633nm
第2ビリアル係数×濃度:0mol/g
屈折率濃度変化(dn/dc):0.159/g
フィルター:MILLIPORE製0.45μmフィルターHAWPO1300
ゲイン:800mV
【0015】
(必須原料/水難溶性無機酸化物(B))
次に、水難溶性無機酸化物(B)について説明する。水難溶性無機酸化物は、水に難溶な無機酸化物であれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化亜鉛、酸化セリウム(IV)、酸化チタン(IV)、酸化スズ(II)、酸化ジルコニウム(IV)、酸化ケイ素(IV)、酸化アルミニウム(III)、酸化コバルト(II)、酸化ニッケル(II)、酸化ルテニウム(IV)、酸化パラジウム(II)、酸化バナジウム(V)、酸化リチウム、酸化ニオブ(V)、酸化亜鉛(II)、酸化ケイ素(IV)酸化アルミニウム(III)複合酸化物、酸化チタン(IV)酸化アルミニウム(III)複合酸化物、酸化鉄(III)、酸化マグネシウム(II)などを用いることができる。中でも、オルガノアルコキシシランと、ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂が水難溶性無機酸化物の表面に複合化し、有機無機複合粒子が水溶媒中で安定に分散する点で、Ce、Ti、Sn、Zr、Si、Al、Znから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する無機酸化物から選ばれる1種以上であることが好ましく、Siを有する無機酸化物から選ばれる1種以上であることがより好ましい。尚、「水難溶性」とは、20℃での水への溶解度が1質量%以下のものをいう。
【0016】
また、前記水難溶性無機酸化物の態様は、特に限定されるものではなく、固体粉末状態、溶媒に分散されたゾル状態など何れの状態であっても用いることができる。
【0017】
前記水難溶性無機酸化物の粒子径は、水難溶性無機酸化物の表面にオルガノアルコキシシランと、ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂が複合化されれば特に限定されるものではないが、得られる有機無機複合粒子が水溶媒中で安定に分散し、より優れる親水性を得る点で、1nmから200nmであることが好ましく、1nmから100nmであることがより好ましい。前記水難溶性無機酸化物の粒子径が大きいほど、長期の保管において沈殿が発生することがある。
【0018】
尚、本発明における「粒子径」とは、一次粒子、二次粒子は問わず、動的光散乱法により測定した際の累積平均系(Median径)を指す。動的光散乱法による測定機器としては、例えば日機装株式会社製UPA−EX150等が挙げられる。動的散乱法とは、溶液中の粒子の大きさによって動きの速度(ブラウン運動)が異なることを利用し、溶液にレーザー光を照射しその散乱光を光子検出器で観測し、周波数解析することで、粒度分布を得ることができる。本発明における粒子径の測定は以下の条件で行った。
(粒子径測定条件)
測定装置:日機装株式会社製UPA−EX150
光源:半導体レーザー780nm、3mW
光源プローブ:内部プローブ方式
測定サンプルの調整:水難溶性無機酸化物(B)の固形分濃度が0.01%程度になるよう脱イオン水で希釈した後、良く攪拌分散させた。
測定時間:180秒
循環:なし
子透過性:透過
形状:非球形
屈折利率:1.81(装置のデフォルト設定)
溶媒:水
溶媒屈折率:1.333
【0019】
(必須原料/オルガノアルコキシシラン(C))
次にオルガノアルコキシシラン(C)について説明する。オルガノアルコキシシランは、水難溶性無機酸化物、及びヒドロキシル基を有する水溶性樹脂と脱水縮合すれば特に限定されるものではなく、例えばシランカップリング剤を用いることができる。但し、水難溶性無機酸化物とヒドロキシル基を有する水溶性樹脂との複合化に優れる点で、グリシジル基を1つ以上有するアルコキシシランから選ばれる1種以上であることが好ましく、例えば2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0020】
(必須原料/界面活性剤(D))
次に界面活性剤(D)について説明する。前記界面活性剤(D)は、前記水難溶性無機酸化物、及びオルガノアルコキシシラン及びヒドロキシル基を有する水溶性樹脂を混合して複合化する際の凝集を抑制し、得られた粒子の安定性を阻害しなければ特に限定されるものではなく、例えばノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。
【0021】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、フッ素系等が挙げられる。
【0022】
アニオン系界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル類、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、フッ素系、シリコーン系等が挙げられる。
【0023】
カチオン系界面活性剤としては、ステアリルアミンアセテート、ステアリルアミン塩酸塩等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のアルキルベタイン、アミンオキサイド、フッ素系、シリコーン系等が挙げられる。
【0024】
両性界面活性剤としては、イミダゾリン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤、アミンオキシド型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0025】
また、前記界面活性剤(D)の表面張力(25℃、0.1質量%水溶液、wilhelmy法)は、前記水難溶性無機酸化物、及びオルガノアルコキシシラン及びヒドロキシル基を有する水溶性樹脂を混合して複合化する際の凝集を抑制し、得られた粒子の安定性を阻害しなければ特に限定されるものではないが、複合化する際の凝集を抑制し、得られる皮膜が長期に渡り親水性と臭気性を持続できる点では、前記界面活性剤(D)の表面張力が15から65mN/mであることが好ましく、15から55mN/mであることがより好ましく、15から45mN/mであることが更に好ましい。表面張力が15mN/mよりも低いと、得られる皮膜における複合粒子の保持性が低下することがあり、耐久試験後に親水性が低下することがある。また、表面張力が65mN/mよりも高いと、複合化する際の凝集抑制が不十分となることがあり、得られる皮膜の臭気性が低下することがある。
【0026】
更に、前記界面活性剤(D)は、前記水難溶性無機酸化物と、オルガノアルコキシシランと、ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂とを混合して複合化する際の凝集を抑制し、臭気性をより高める点でノニオン系界面活性剤から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0027】
本発明における表面張力とは、界面活性剤の有する特性の一つであり、wilhelmy法により測定した値を指す。wilhelmy法による測定機器としては、例えば協和界面科学株式会社製CBVP式表面張力計A3型が挙げられる。wilhelmy法とは、測定子(以下、プレートとする)が液体の表面に触れると液体が測定子に対してぬれ上がり、プレートの周囲に沿って表面張力がはたらき、プレートを液中に引き込もうとする。この引き込む力を読み取ることで表面張力を測定することができる。本発明における表面張力の測定は以下の条件で行った。
(表面張力測定条件)
測定装置:協和界面科溶解学株式会社製CBVP式表面張力計A3型
測定子(プレート):白金製プレート
測定サンプルの調整:界面活性剤(D)の固形分濃度が0.1質量%になるよう脱イオン水で希釈した後、良く攪拌して水溶液とした。
測定温度:25℃
【0028】
(配合比)
(C)/{(B)+(D)}は、0.001から1.0とし、0.01から1.0とすることが好ましく、0.01から0.5とすることがより好ましい。(C)/{(B)+(D)}の固形分重量比が0.001より少ないと、水難溶性無機酸化物(B)の表面に対してオルガノアルコキシシラン(C)とヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A)の複合化が不十分な有機無機複合粒子となり、得られる皮膜は長期の使用においてヒドロキシル基を有する水溶性樹脂が流去してしまい埃臭気が発生する。(C)/{(B)+(D)}の固形分重量比が1.0より多いと水難溶性無機酸化物の表面に対して、オルガノアルコキシシランとヒドロキシル基を有する水溶性樹脂の複合化は十分に進むが、水難溶性無機酸化物と水溶性樹脂との結合点が多すぎるため、得られる皮膜の親水性が不十分となる。
【0029】
また、(A)/{(B)+(C)+(D)}は、0.1から5.0とし、0.1から2.5とすることが好ましく、0.1から1.0とすることがより好ましい。前記(A)/{(B)+(C)+(D)}の固形分重量比が0.1未満であると、ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A)が少なすぎるため、水難溶性無機酸化物(B)の表面に対するヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A)の複合化が不十分となり、得られる皮膜は埃臭気が発生する。5.0より多いと、有機無機複合粒子の複合化は十分であるが、有機無機複合粒子の形成に関与しないヒドロキシル基を有する水溶性樹脂が多く、水により流去するため耐久性が劣る。
【0030】
また、(D)/{(A)+(B)+(C)+(D)}は、前記水難溶性無機酸化物、及びオルガノアルコキシシラン及びヒドロキシル基を有する水溶性樹脂を混合して複合化する際の凝集を抑制し、得られた粒子の安定性を阻害しなければ特に限定されるものではないが、0.0001から0.03であることが好ましく、0.001から0.03とすることがより好ましく、0.001から0.01とすることが更に好ましい。(D)/{(A)+(B)+(C)+(D)}の固形分重量比が0.0001より少ないと、界面活性剤(D)の凝集抑制が不十分となり臭気性及び耐久性が低下することがある。また、(D)/{(A)+(B)+(C)+(D)}の固形分重量比が0.03より多いと、水に溶解する界面活性剤(D)が過剰であるため、得られる皮膜において有機無機複合粒子の保持が不十分となり、耐久性が不十分となることがある。
【0031】
(有機無機複合粒子の製造方法)
前記有機無機複合粒子は、水難溶性無機酸化物の表面にオルガノアルコキシシラン及びヒドロキシル基を有する水溶性樹脂が複合化されてなる。更に述べるならば、水難溶性無機酸化物の表面水酸基とオルガノアルコキシシランの脱水縮合、オルガノアルコキシシランとヒドロキシル基を有する水溶性樹脂の脱水縮合を介して複合化されてなる。複合化の方法としては、脱水縮合反応が起これば特に限定されるものではなく、配合して攪拌しておけばよいが、効率良く有機無機複合粒子を得る点では、pH調整、加熱、触媒添加等を行い攪拌する方法が好ましい。中でも、有機無機複合粒子と共に皮膜成分として酸やアルカリ、触媒などが共存しない点では加熱法がより好ましい。加熱温度としては、50℃から90℃が好ましい。
【0032】
上記触媒としては、脱水縮合が促進する水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸、硝酸、燐酸などの無機化合物やアルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、メチルアルミニウムビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシド)などの金属錯体などが挙げられる。
【0033】
[成分:添加剤(E)]
本発明のアルミニウム含有金属材料用親水化処理剤は、本発明の趣旨や皮膜性能を損なわない範囲で、水溶性又は水分散性樹脂、金属化合物などの防錆剤、架橋剤、抗菌・抗黴剤、界面活性剤、着色剤等を添加してもよい。
【0034】
[成分:液体媒体]
本発明のアルミニウム含有金属材料用親水化処理剤の液体媒体は、基本的には水である(好適には、全液体媒体の質量を基準として90質量%以上)。但し、アルコール等の水混和性液体媒体を含有していてもよい。
【0035】
[アルミニウム含有金属材料用親水化処理剤における各成分の配合量]
(有機無機複合粒子)
本発明のアルミニウム含有金属材料用親水化処理剤における有機無機複合粒子の含有量は、全固形分質量を基準として40から100質量%であり、好適には50から100質量%であり、より好適には60から100質量%である。
【0036】
(添加剤)
本発明のアルミニウム含有金属材料用親水化処理剤における添加剤の含有量は、全固形分質量を基準として0から60質量%である。
【0037】
[アルミニウム含有金属材料用親水化処理剤の用途]
次に、本発明のアルミニウム含有金属材料用親水化処理剤の用途を説明する。本発明の処理剤は、アルミニウム含有金属材料の表面の一部又は全部を親水化させるために有用である。以下、当該用途(換言すれば、アルミニウム含有金属材料の親水化処理方法、親水化アルミニウム含有金属材料の製造方法)を説明する。
【0038】
(アルミニウム含有金属材料)
本発明での親水化対象となるアルミニウム含有金属材料は、アルミニウムを含有している限りその種類に格別の制限はなく、アルミニウム材料、例えば純アルミニウム系の1000番系材料、アルミニウム、又はアルミニウム合金によりメッキされた金属材料、及びアルミニウム含有合金材料、例えばアルミニウム−銅系合金(例えばAl−Cu系の2018)、アルミニウム−マンガン系合金(例えばAl−Mn系の3003)、アルミニウム−マグネシウム系合金(例えばAl−Mg系の5052)、アルミニウム−マグネシウム−シリコン系合金(例えばAl−Mg−Si系の6063)などを包含する。
【0039】
(プロセス)
本発明のアルミニウム含有金属材料用親水化処理剤の使用方法(換言すれば、アルミニウム含有金属材料の親水化処理方法、親水化アルミニウム含有金属材料の製造方法)は、親水化処理剤をアルミニウム含有金属材料に接触させる工程、当該接触後に乾燥させる工程と、を含む。以下、各工程を詳述する。
【0040】
・接触工程
無処理、又は清浄化処理、防錆処理を適宜施したアルミニウム含有金属材料や熱交換器の表面の一部又は全部に、必要な皮膜量が得られるよう親水化処理剤で処理する。親水化処理剤での処理方法は特に限定されず適当な手段で本発明の本親水処理薬剤と被処理物が接触できれば良く、例えば、ロールコート、スプレー、及び浸漬法等が挙げられる。
【0041】
・乾燥工程
親水化処理剤を接触させた後の乾燥は、親水化処理剤が含有する水が揮散すれば特に限定されるものではなく、加熱乾燥等により乾燥させる。加熱乾燥の温度は特に限定されるものではないが、80℃から250℃の範囲で5秒から120分間乾燥することが好ましく、100℃から200℃がより好ましい。
【0042】
・他の工程
尚、アルミニウム含有金属材料や熱交換器は、予めアルカリ性又は酸性の洗浄剤によって、表面の汚れを取り除き清浄化することが好ましいが、清浄化を必要としない場合には清浄化を省略してもよい。また、必要に応じて、無処理の状態で、又は清浄化した後、本発明に係る親水化処理剤で処理する前に、防錆処理を施してもよい。防錆処理としては、特に限定されるものではなく、公知のクロメート、りん酸亜鉛、チタン系、ジルコニウム系化成処理、有機皮膜等の耐食皮膜(化成処理皮膜又は耐食プライマー皮膜)が挙げられる。
【0043】
[親水化アルミニウム含有金属材料]
本発明の親水化アルミニウム含有金属材料は、その表面の一部又は全部に親水性皮膜を有する。ここで、前記親水化処理薬剤により得られた皮膜重量は、本発明の目的である親水性と臭気性が得られれば特に限定されるものではないが、0.1から3.0g/mの範囲が好ましく、0.1から2.0g/mの範囲がより好ましい。皮膜量が0.1g/m以上であれば、金属材の被覆が十分となり、本発明の目的である親水性や臭気性が得られる。また、皮膜量が3.0g/m以下であれば経済的である。
【0044】
[親水化アルミニウム含有金属材料が組み込まれた製品]
親水化アルミニウム含有金属材料が組み込まれた製品の好適例は熱交換器である。本発明に係る親水性皮膜は、優れた親水性及び臭気性を有する。したがって、熱交換器を構成するアルミニウム含有金属材料に適用すれば、結露水の目詰まりによる熱交換効率の低下、騒音等の問題を解決できる。更に、本発明に係る親水性皮膜は、長期の使用時においても優れた親水性と臭気性を持続することができる。
【実施例】
【0045】
本発明を、実施例と比較例とを挙げて具体的に説明する。尚、これらの実施例は、それぞれ単なる一例に過ぎず、本発明の範囲をこれらに限定するものではない。
【0046】
<親水化処理剤>
表1〜表5に実施例、比較例の親水化処理剤に用いた原料を示す。ここで、表1は、実施例及び比較例に用いた水溶性樹脂(A)の一覧である。また、表2は、実施例及び比較例に用いた水難溶性無機酸化物(B)の一覧である。また、表3は、実施例及び比較例に用いたオルガノアルコキシシラン(C)の一覧である。また、表4は、実施例及び比較例に用いた界面活性剤(D)の一覧である。また、表5は、実施例及び比較例に用いた添加剤(E)の一覧である。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
実施例、比較例に用いた親水化処理剤は、ヒドロキシル基を有する水溶性樹脂(A)と、水難溶性無機酸化物(B)と、オルガノアルコキシシラン(C)と、界面活性剤(D)、添加剤(E)とを、それぞれの原料の固形分重量(g)が表6〜表9の組成となるよう電子天秤を用いて測りとり、更に水を配合し全液重量を100gとした後、攪拌して調製した。
【0053】
【表6】
【0054】
【表7】
【0055】
【表8】
【0056】
【表9】
【0057】
<試験材>
アルミニウム製テストピース(株式会社パルテック製A1050、寸法:70mm×150mm、板厚:0.8mm)を用いた。
【0058】
<試験材の洗浄方法>
前記の試験材を、アルカリ系脱脂剤「ファインクリーナー315」(日本パーカライジング株式会社製)を薬剤濃度20g/L、浴温度60℃に調整した処理浴に3分間浸漬処理し、表面に付着しているゴミや油を除去した後、表面に残存しているアルカリ分を水道水により洗浄した。
【0059】
<親水化処理方法>
前記洗浄された試験材を、表6〜表9に示す親水化処理剤中にそれぞれ浸漬した後、任意の温度に調整した送風乾燥機内で吊るして6分間加熱乾燥したものを以下の評価試験に用いる評価サンプルとした。
【0060】
<親水性評価方法>
評価サンプル上に2μlの脱イオン水を滴下し、形成された水滴の接触角を接触角計(協和界面科学株式会社製:DM−501)により測定した。親水性処理後に室温まで冷却した評価サンプルの接触角を初期親水性、評価サンプルを脱イオン水に600時間浸漬した後、50℃に調整した送風乾燥機内で1時間乾燥させ室温まで冷却した後の接触角を耐久後親水性とした。得られた接触角は以下に示す基準でレーティングを行い、レーティングで3点以上を本発明の目的である親水性として合格とした。
【0061】
<親水性のレーティング基準>
5点:10°未満
4点:10°以上、20°未満
3点:20°以上、30°未満
2点:30°以上、40°未満
1点::40°以上
【0062】
<臭気性評価方法>
試験材を親水性処理した後、室温まで冷却して直ぐの評価サンプルの臭気を初期臭気、評価サンプルを脱イオン水に600時間浸漬した後、50℃に調整した送風乾燥機内で1時間乾燥させ室温まで冷却した後の臭気を耐久後臭気とした。得られた臭気は以下に示す基準でレーティングを行い、レーティングで3点以上を本発明の目的である臭気性として合格とした。
【0063】
<臭気性のレーティング基準>
5点:ほとんど臭いを感じない
4点:かすかに臭いを感じる
3点:はっきりと臭いを感じる
2点:強いにおいを感じる
1点:非常に強いにおいを感じる
【0064】
<耐久性評価方法>
評価サンプルを脱イオン水に600時間浸漬した後、50℃に調整した送風乾燥機内で1時間乾燥させ室温まで冷却した評価サンプルの重量を測定し、式1より各例の皮膜残存率を求め、以下に示すレーティングを行った。
[式1]
皮膜残存率(%)=[耐久性試験後評価サンプル重量(g)−親水化処理前試験材重量(g)]÷[親水化処理後試験材重量(g)−親水化処理前試験材重量(g)]×100
得られた皮膜残存率を以下に示す基準でレーティングを行い、レーティングで3以上を本発明の目的である耐久性として合格とした。
【0065】
<耐久性のレーティング基準>
5点:90%以上
4点:80%以上、90%未満
3点:70%以上、80%未満
2点:50%以上、70%未満
1点:50%未満
【0066】
<耐着霜性評価>
評価サンプルは脱イオン水に100時間浸漬させた後、50℃に調整した送風乾燥機内で1時間乾燥させ室温まで冷却して評価に用いた。前記評価サンプルを雰囲気2℃、相対湿度80%の恒温恒湿層内に鉛直方向に設置した冷却板に貼り付け、−10℃で30分間冷却し、冷却を止めて10分間放置する。その後、再び前記条件にて15分間冷却を行い、15分後の霜の発生面積を目視にて観察した。評価サンプルの表面積に対して、発生した霜の割合(発生面積率)を以下に示す基準でレーティングし、本発明の目的である耐着霜性としてレーティングで3以上を合格とした。
【0067】
<耐着霜性のレーティング基準>
5点:霜発生面積率 20%未満
4点:霜発生面積率 20〜40%未満
3点:霜発生面積率 40%以上、60%未満
2点:霜発生面積率 60%以上、80%未満
1点:霜発生面積率 80%以上
【0068】
<分散安定性評価方法>
親水化処理剤を40℃の恒温槽に1週間保管し、保管後の液外観を目視にて確認し以下に示すレーティングを行った。尚、分散安定性は沈殿発生が有っても、良く攪拌、分散した後に用いて他の性能評価結果が合格であれば合格とした。
【0069】
<分散安定性のレーティング基準>
5点:沈殿なし
3点:容器底部に微量な沈殿発生
1点:容器底部に多量に沈殿発生
【0070】
<総合評価>
上記評価に基づき、実施例、比較例に示した親水化処理剤の総合評価を行った。総合評価に関しては、「総合評価の点数={親水性(初期)の点数}+{親水性(耐久後)の点数}×2+{臭気性(初期)の点数}+{臭気性(耐久後)の点数}×2+(耐久性の点数)+(耐着霜性の点数)×2+(分散安定性の点数)」として得点化を行った。
【0071】
表10及び表11に実施例、比較例に示した親水化処理剤の評価結果を示す。
【0072】
【表10】
【0073】
【表11】
【0074】
このように、本発明のアルミニウム含有金属材料用親水化処理剤により処理を施したアルミニウム含有金属材料やそれらの材料が組みつけられた熱交換器、更には本発明の親水化処理剤で処理した熱交換器が優れた親水性と臭気性とそれらの耐久性を有することは明らかである。