特許第6116741号(P6116741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6116741
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】光発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20170410BHJP
   H02S 40/22 20140101ALI20170410BHJP
   H01L 31/055 20140101ALI20170410BHJP
   H02S 40/00 20140101ALI20170410BHJP
【FI】
   H02J7/35 D
   H02S40/22
   H01L31/04 622
   H02S40/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-159051(P2016-159051)
(22)【出願日】2016年8月14日
【審査請求日】2016年8月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503148362
【氏名又は名称】平瀬 錬司
(74)【代理人】
【識別番号】100101982
【弁理士】
【氏名又は名称】久米川 正光
(72)【発明者】
【氏名】平瀬 錬司
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−089808(JP,A)
【文献】 特開2013−080928(JP,A)
【文献】 特開2006−269373(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/159940(WO,A1)
【文献】 特開2014−049752(JP,A)
【文献】 特開2006−210229(JP,A)
【文献】 特開2014−022471(JP,A)
【文献】 特開昭51−048985(JP,A)
【文献】 特開2004−012818(JP,A)
【文献】 特開2016−029881(JP,A)
【文献】 特開2012−028658(JP,A)
【文献】 特表2014−520406(JP,A)
【文献】 実開昭59−134811(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0244312(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0349698(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04−31/056
H02S 40/00−40/44
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光発電装置において、
外光を集光する集光機構と、
光起電力効果を利用して光エネルギーを電力に変換する第1の光発電モジュールと、
光起電力効果を利用して光エネルギーを電力に変換すると共に、光電変換特性が前記第1の光発電モジュールとは異なる第2の光発電モジュールと、
前記第1の光発電モジュールが設置された第1の設置面と、前記第2の光発電モジュールが設置された第2の設置面とを有する設置台と、前記設置台を変位させることによって、前記第1の設置面および前記第2の設置面のいずれかを外光の光路上に位置させる駆動機構とを有し、外光の入射先として、前記第1の光発電モジュールと前記第2の光発電モジュールとを切り替える切替機構とを有し、
前記設置台は、前記集光機構から出射された外光の光路上に配置されていると共に、回転軸を介して、前記駆動機構によって回転方向に変位し、
前記回転軸は、前記回転軸から前記第1の光発電モジュールまでの距離と、前記回転軸から前記第2の光発電モジュールまでの距離とが異なるように、前記設置台に偏心して取り付けられていることを特徴とする光発電装置。
【請求項2】
前記第2の光発電モジュールは、有機半導体系素子または色素増感系素子よりなることを特徴とする請求項に記載された光発電装置。
【請求項3】
前記第2の光発電モジュールに外光を導く光路中に設けられ、前記第2の光発電モジュールの利用波長域に適合した波長に外光を変換する波長変換フィルムをさらに有することを特徴とする請求項に記載された光発電装置。
【請求項4】
外光の照度、波長またはスペクトルを検出する外光センサをさらに有し、
前記切替機構は、前記外光センサによって検出された照度、波長またはスペクトルに応じて、前記第1の光発電モジュールと前記第2の光発電モジュールとを切り替えることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載された光発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光エネルギーを電力に変換する光発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の太陽光発電では、一日のうちの限られた時間帯(日中)しか稼働せず、また、天気や季節によっても発電効率が大きく変動する。そのため、現状、太陽光発電はベース電源、すなわち、年間を通して一定量の電力を供給する電源として適さない。また、従来の屋内光発電は、電力変換効率が低いため実用性が低いという課題がある。
【0003】
特許文献1には、低照度域から高照度域までの広い範囲にわたって、太陽光エネルギーを有効に利用し得る充電装置が開示されている。この充電装置は、太陽電池の発電エネルギーを変換して出力する電力変換機能と、太陽電池の発電エネルギーを無変換で出力するスイッチ機能とを有し、太陽電池の受ける照度に応じて、これらの機能を切り替える。すなわち、低照度時には、スイッチ機能に切り替えて電力変換機能を停止させる。これにより、電力変換に伴う損失や電力消費が殆ど生じないので、電力消費を節約した状態で蓄電素子を充電できる。一方、高照度時は、電力変換機能に切り替える。これにより、太陽電池の出力電力が最大になるように、効率よく充電を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−46457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、光発電装置の稼働率を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、本発明は、第1の光発電モジュールと、第2の光発電モジュールと、切替機構とを有する光発電装置を提供する。第1の光発電モジュールは、光起電力効果を利用して光エネルギーを電力に変換する。第2の光発電モジュールは、光起電力効果を利用して光エネルギーを電力に変換すると共に、光電変換特性が第1の光発電モジュールとは異なる。切替機構は、外光の入射先として、第1の光発電モジュールと第2の光発電モジュールとを切り替える。
【0007】
ここで、本発明において、上記第1の光発電モジュールは、太陽光発電モジュールであって、上記第2の光発電モジュールは、日中屋外よりも照度が低い低照度時に、太陽光発電モジュールよりも高い光電変換効率を有するモジュールであることが好ましく、より好ましくは、上記第2の光発電モジュールは、有機半導体系素子または色素増感系素子よりなる。また、本発明において、第2の光発電モジュールに外光を導く光路中に設けられ、第2の光発電モジュールの利用波長域に適合した波長に外光を変換する波長変換フィルムをさらに有することが好ましい。
【0008】
本発明において、上記切替機構は、設置台と、駆動機構とを有していてもよい。設置台は、第1の光発電モジュールが設置された第1の設置面と、第2の光発電モジュールが設置された第2の設置面とを有する。駆動機構は、設置台を変位させることによって、第1の設置面および第2の設置面のいずれかを外光の光路上に位置させる。また、本発明において、外光を集光する集光機構をさらに設けてもよい。この場合、上記設置台は、集光機構から出射された外光の光路上に配置されていると共に、回転軸を介して、駆動機構によって回転方向に変位する。この回転軸は、回転軸から第1の光発電モジュールまでの距離と、回転軸から第2の光発電モジュールまでの距離とが異なるように、設置台に偏心して取り付けられている。
【0009】
本発明において、上記切替機構は、第1の光発電モジュールに外光を導く第1の光路と、第2の光発電モジュールに外光を導く第2の光路とを切り替える光学部材と、光学部材を変位させる駆動機構とを有していてもよい。
【0010】
本発明において、外光の照度、波長またはスペクトルを検出する外光センサをさらに設けてもよい。この場合、上記切替機構は、外光センサによって検出された照度、波長またはスペクトルに応じて、第1の光発電モジュールと第2の光発電モジュールとを切り替える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光電変換特性が異なる第1および第2の光発電モジュールを設け、外光の入射先としてこれらのモジュールを切り替える。外光の状況に適した光発電モジュールを選択することで、光発電装置全体としての稼働率を高めることができる。特に、回転軸を設置台に偏心して取り付けた場合、第1および第2の光発電モジュールの特性に適した集光率で外光を入射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る光発電装置の外観斜視図
図2】光発電装置のブロック図
図3】高照度時における光発電の説明図
図4】低照度時における光発電の説明図
図5】第2の実施形態に係る設置台を示す図
図6】第3の実施形態に係る光発電装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る光発電装置の外観斜視図である。この光発電装置1は、筐体2と、集光機構3と、複数の光発電モジュール4,5と、切替機構6とを主体に構成されている。筐体2は、アルリル等の透明部材で形成された円筒状の部材であって、その内周面には、斜め上方からの外光の入射にも対応すべく、電磁波反射率の高い反射部材、例えばフィルム状のミラーまたはハーフミラーが全周に亘って貼り付けられている。筐体2の上開口には、上方から入射した外光を集光して下方に導く集光機構3が取り付けられている。集光機構3は、コスト削減を図りつつ、照度が低い状況下でも一定の電力出力を確保するために設けられており、典型的には平凸レンズを用いることができる。
【0014】
筐体2の下開口には、集光機構3によって集光された外光の光エネルギーを光起電力効果を利用して電力に変換する複数の光発電モジュール4,5が配置されている。これらの光発電モジュール4,5は、例えば、一方を太陽光発電モジュール、他方を日中屋外の照度よりも低い低照度時に太陽光発電モジュールよりも高い光電変換効率を有するモジュールといった如く、照度に対する光電変換特性が異なっている。切替機構6は、集光機構3を経た外光の入射先として、光発電モジュール4,5の切り替えを行う。十分な太陽光が得られる日中の高照度時には光発電モジュール4、雨天や夜間といった低照度時には光発電モジュール5といったように、外光の照度状況に適した光発電モジュール4,5を選択することで、光発電装置1全体としての稼働率を高め、天候や稼働時間に関する制約を有効に緩和できる。筐体2には、後述するセンサ類や駆動系なども内蔵されている。
【0015】
図2は、光発電装置1のブロック図である。本実施形態において、光発電モジュール4,5の切り替えを行う切替機構6は、設置台6aと、駆動機構6bとを主体に構成されている。設置台6aは、筐体2の内周よりも小径な円盤形状を有し、集光機構3から出射された外光の光路上に配置されている。この設置台6aが備える上下の面(設置面)には、光発電モジュール4,5がそれぞれ設置されている。光発電モジュール5の直上には、この光発電モジュール5の利用波長域に適合した波長に外光を変換すべく、波長変換フィルム7が設けられている。なお、本実施形態では、特に、低照度時における発電効率の向上を図るべく、一方の光発電モジュール5の光路上にのみ波長変換フィルム7を設けているが、他方の発電モジュール4の光路上に波長変換フィルム7を設けてもよい。
【0016】
また、設置台6aは、回転軸6cを介して筐体2に取り付けられ、回転方向に変位自在になっている。駆動機構6bは、光発電モジュール4側の設置面および光発電モジュール5側の設置面のいずれかが集光機構3と対向するように、換言すれば、集光機構3によって集光された外光の光路上に位置するように、設置台6aを回転方向に変位させる。駆動機構6bとしては、電磁的作用を用いたソレノイドや力学的作用を用いたサーボモータといった周知のアクチュエータを広く用いることができる。また、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いて、光発電モジュール4,5や切替機構6などを1つのユニットとして集積化してもよい。
【0017】
回転軸6cは、設置台6aにおいて偏心して取り付けられている。これにより、回転軸6cから光発電モジュール4までの距離D1と、回転軸6cから光発電モジュール5までの距離D2とが異なることになる。このように偏心させる理由は、光発電モジュール4,5毎にレンズ焦点からの距離を変えて、光発電モジュール4,5の特性に適した集光率で外光を入射させるためである。本実施形態では、光発電モジュール4の距離D1は、光発電モジュール5の距離D2よりも大きく設定されている。
【0018】
外光センサ8は、光発電装置1に入射する外光の照度を検出する。光発電モジュール4,5の切り替えは、外光センサ8によって検出された外光の照度に応じて行われる。例えば、検出された照度が所定のしきい値(例えば5000ルクス)よりも高い場合(高照度時)、光発電モジュール4が選択され、この照度がしきい値以下の場合(低照度時)、光発電モジュール5が選択される。また、この切り替えは、光発電装置1に内蔵された時計に基づいて行ってもよい。例えば、日の出から日の入りまでの時間帯は光発電モジュール4を選択し、夜間の時間帯は光発電モジュール5を選択する。また、光発電装置1にインターネットの接続環境を備えることで、光発電モジュール4,5の切り替えを天気予報サイト等の情報に基づいて行ってもよい。なお、光発電モジュール4,5の切り替えは、スイッチの操作を通じて、ユーザ自身が行ってもよい。
【0019】
光発電モジュール4,5によって得られた電力は、外部のバッテリー9にて回収される。また、特に夏場の日中では、集光機構3による集光によって大量の熱が発生する。そこで、設置台6aにて生じた熱を熱拡散係数の高い素材で吸収し、これを熱源として外部のボイラー10による発電を行う。これにより得られた電力も、バッテリー9にて回収される。
【0020】
図3は、高照度時における光発電の説明図である。高照度時の外光は、典型的には、300〜3000nmの波長域を有する太陽光であり、その想定照度は1万〜10万ルクス程度(日中屋外の照度)である。高照度時には、光発電モジュール4が集光機構3と対向し、集光機構3によって集光された外光は光発電モジュール4によって受光される。また、回転軸からの距離D1が大きい分だけ、集光機構3の焦点Fから離れた位置に光発電モジュール4が位置する。これにより、比較的低い集光率で光発電モジュール4に外光が入射するため、集光による過度な発熱が抑制される。
【0021】
光発電モジュール4としては、高照度時に光電変換効率が高い素子、例えば、化合物半導体系素子(多接合素子など)にて構成されたモジュールを用いることができる。その利用波長域は300〜1200nm程度であり、想定照度は5千〜10万ルクス程度である。
【0022】
光発電モジュール4の発電効率は、主に2つの要素に依存している。第1に、光吸収波長域の広さである。太陽光や都市部の人工光の波長域は、概ね300〜3000nmであるが、一般的に光発電素子が吸収できる(発電に利用できる)のは広いもので350〜1300nm程度、狭いもので400〜800nm程度である。また、単に吸収可能波長域が広くても、後述するように、各波長での量子効率に波があるものは一般的に発電効率が低い。第2に、各波長での量子効率である。各発電素子の原理により、光発電素子の種類毎に、得意な(量子効率が高い)波長域と、不得意な(量子効率が低い)波長域とが存在する。各波長での量子効率の波が、太陽光や都市部の人工光のスペクトル分布にできるだけ沿うものが、発電効率がよい。
【0023】
また、光発電モジュール4としては、高出力に耐え得る設計の発電素子を用いることが好ましい。そのためには、以下の2つの要素が重要になる。第1に、発電素子の構造上、単位時間あたりの「光電現象→電流の取り出し」の過程にどこまで耐えられるかという点である。色素増感系素子や有機半導体系素子のように、電解液の還元反応によって電流取り出しのサイクルを行う構造のものは、還元反応(イオンの拡散速度)が追いつかず、高出力には耐え難いと考えられる。第2に、集光による光発電の宿命として、大量の熱が狭い範囲に凝縮されることがある。よって、耐熱に弱点がある構造のものは、高出力には耐えにくいと考えられる。また、シリコン系など、温度上昇に伴って光電変換効率が著しく低下するものは好ましくない。
【0024】
以上のことから、光発電モジュール4に適するのは、現時点では、化合物半導体系「III−V族」の多接合素子である。ただし、このタイプの素子に限らず、あくまでも発電効率が高く、高出力に耐え得る構造のものであれば、光発電モジュール4として利用可能であることはいうまでもない。
【0025】
図4は、低照度時における光発電の説明図である。低照度時の外光は、典型的には、300〜3000nm程度の波長域を有する都市部の人工光であり、その想定照度は10〜1万ルクス(日没後屋外の照度)である。低照度時には、光発電モジュール5が集光機構3と対向し、集光機構3によって集光された外光は、その光路上に位置する波長変換フィルム7を介して、光発電モジュール5によって受光される。また、回転軸からの距離D2が小さい分だけ、集光機構3の焦点Fから近い位置に光発電モジュール5が位置する。これにより、比較的高い集光率で光発電モジュール5に外光が入射するため、低照度時でも一定の発電効率が得られる。
【0026】
光発電モジュール5は、低照度時でも一定の光電変換効率を保つ素子、例えば、有機半導体系素子や色素増感系素子等にて構成されたモジュールが用いられる。その利用波長域は300〜1500nm程度であり、想定照度は10〜5千ルクス程度である。さらに、波長変換フィルム7は、入射した外光のうち、1200nm以上の波長域と、350nm以下の波長域とを350〜1200nmの波長域に変換する。
【0027】
光発電モジュール5としては、低照度(または、入射する光エネルギー密度が低いとき)でも一定の発電効率を保つものを用いることが好ましい。低照度時の発電効率は、主に2つの要素に依存している。第1に、光発電モジュール4と同様、光吸収波長域の広さと各波長での量子効率である。第2に、光エネルギー密度が低い時でも発電効率が低下しにくいことである。現在主流のシリコン系発電素子は、その特性上、入射する光エネルギー密度が低い時は、その発電効率が著しく低下する。一方、色素増感系素子や有機半導体系素子などは、その特性上、光エネルギー密度と発電効率の間の相関が少ない。これは、光エネルギー密度が低くても発電効率は低下し難いことを意味する。
【0028】
以上のことから、光発電モジュール5に適するのは、現時点では、色素増感系や有機半導体系の発電素子である。ただし、これらのタイプの素子に限らず、あくまでも、光エネルギー密度が低いときでも有効に発電し得る程度の光電変換効率を保つものであれば、光発電モジュール5として利用可能であることはいうまでもない。
【0029】
このように、本実施形態によれば、照度に対する光電変換特性が異なる複数種の光発電モジュール4,5を設け、外光の入射先としてこれらのモジュール4,5を切り替える。外光の照度状況に適した光発電モジュール4,5を選択することで、光発電装置1全体としての稼働率を高めることができ、天候や稼働時間に関する制約を有効に緩和できる。特に、日中の高照度時には太陽光発電モジュールを選択し、太陽光発電モジュールによる発電が困難な夜間の低照度時には、一定の光電変換効率を有する異種のモジュールを選択することで、太陽光発電を効果的に補完できる。これにより、光発電装置1をベース電源として利用する可能性を高めることができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、設置台6aを回転方向に変位させることによって、光発電モジュール4,5の切り替えを行うことで、同一平面上に光発電モジュール4,5を並べた場合と比較して、光発電装置1の小型化を図ることができる。ただし、この点を考慮する必要がなければ、設置台6aの同一平面上に光発電モジュール4,5を配置し、駆動機構6bによって設置台6aを水平方向にスライドさせることによって、光発電モジュール4,5の切り替えを行ってもよい。
【0031】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る設置台を示す図である。この設置台6dは、多角形状の断面を有し、それぞれの面に光発電モジュール4,5,11が設置されている。回転軸6cは、設置台6dにおいて偏心して取り付けられており、回転軸6cから光発電モジュール4までの距離D1と、回転軸6cから光発電モジュール5までの距離D2と、回転軸6cから光発電モジュール11までの距離D3とが異なっている。なお、第1の実施形態で述べた部材と同一の部材については同一の符号を付して、ここでの説明を省略する。
【0032】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する他、特に、3つ以上の光発電モジュール4,5,11についても、光発電装置1を大型化させることなく、外光の照度状況に適した切り替えを行うことができる。
【0033】
(第3の実施形態)
本実施形態は、光発電モジュール4,5等の切り替えを、設置台6a,6dの機械的な変位ではなく、外光の光路を変更することによって行うものである。図6は、第3の実施形態に係る光発電装置のブロック図である。なお、第1の実施形態で述べた部材と同一の部材については同一の符号を付して、ここでの説明を省略する。
【0034】
設置台6eは、上述した各実施形態とは異なり固定されており、異なる設置面に光発電モジュール4,5が設置されている。集光機構3によって集光された外光の経路は、光学部材である可動ミラー12の角度に応じて、第1の光路と第2の光路とに切り替えられる。すなわち、可動ミラー12が第1の角度に位置している場合、外光は、可動ミラー12と第1の固定ミラー13aとを含む第1の光路を経て、光発電モジュール4に導かれる。また、可動ミラー12が第2の角度に位置している場合、外光は、可動ミラー12と第2の固定ミラー13bとを含む第2の光路を経て、光発電モジュール5に導かれる。駆動機構6fは、可動ミラー12を回転方向に変位させ、第1の角度または第2の角度に設定する。駆動機構6fとしては、上述した駆動機構6bと同様、電磁的作用や力学的作用を用いた周知の駆動機構を広く用いることができる。
【0035】
本実施形態によれば、可動ミラー12を変位させて、光発電モジュール4,5の切り替えを行うことで、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0036】
なお、上述した各実施形態では、光(可視光)から電力を生成する光発電モジュールを用いた例について説明したが、最近では、赤外光や紫外光から電力を生成する光発電モジュールも提案・開発されており、本発明は、これらの光発電モジュールを用いることも可能である。例えば、国際先端技術総合研究所株式会社によって開発された太陽電池は、色素増感型の素子を用い、目に見えない赤外光を水晶が吸収して色素に伝えて発電する。また、田中貴金属と東京大学とが共同開発した色素増感型太陽電池は、紫外線領域から赤外線領域にわたる幅広い波長域で発電する。本明細書において、発電の入力となる「光」とは、可視光、赤外光、紫外光などを含めて、光起電力効果を利用して電力を生成可能な電磁波を広く包含するものとして定義される。
【0037】
また、上述した各実施形態において、光発電モジュール4,5等の切り替えを外光の照度の代わりに外光の波長に応じて行ってもよい。この場合、外光センサ8で外光の波長を検出し、検出された波長が所定のしきい値よりも大きい場合(長波長時)、光発電モジュール4,5の一方が選択され、この波長がしきい値以下の場合(短波長時)、光発電モジュール4,5の他方が選択される。光発電モジュール4,5は、波長に対する光電変換特性が異なっている。これにより、外光の波長帯が変化する状況において、光発電装置1全体としての稼働率を高めることができる。さらに、外光センサ8で外光のスペクトルを検出し、これに応じて、光発電モジュール4,5等の切り替えを行ってもよい。光発電モジュール4,5は、スペクトルに対する光電変換特性が異なっている。これにより、外光のスペクトルが変化する状況において、光発電装置1全体としての稼働率を高めることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 光発電装置
2 筐体
3 集光機構
4、5,11 光発電モジュール
6 切替機構
6a,6d,6e 設置台
6b,6f 駆動機構
6c 回転軸
7 波長変換フィルム
8 外光センサ
9 バッテリー
10 ボイラー
12 可動ミラー
13a,13b 固定ミラー
【要約】
【課題】光発電装置の稼働率を高める。
【解決手段】光発電モジュール4は、光起電力効果を利用して光エネルギーを電力に変換する。光発電モジュール5は、光起電力効果を利用して光エネルギーを電力に変換すると共に、光電変換特性が光発電モジュール4とは異なる。切替機構6は、外光の入射先として、光発電モジュール4,5を切り替える。十分な太陽光が得られる日中の高照度時には光発電モジュール4、雨天や夜間といった低照度時には光発電モジュール5といったように、外光の照度状況に適した光発電モジュール4,5が選択される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6