特許第6116761号(P6116761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6116761代謝型グルタミン酸受容体アンタゴニストとしてのエチニル誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116761
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】代謝型グルタミン酸受容体アンタゴニストとしてのエチニル誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20170410BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20170410BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   C07D401/04CSP
   A61K31/4439
   A61K31/506
   A61P25/22
   A61P25/24
   A61P25/04
   A61P25/18
   A61P25/16
   A61P1/04
   A61P1/00
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-524753(P2016-524753)
(86)(22)【出願日】2014年7月4日
(65)【公表番号】特表2016-523939(P2016-523939A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】EP2014064272
(87)【国際公開番号】WO2015004007
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2016年3月3日
(31)【優先権主張番号】13175535.7
(32)【優先日】2013年7月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ヤーシュケ,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】リンデマン,ローター
(72)【発明者】
【氏名】マルティン,ライナー・エー
(72)【発明者】
【氏名】リッチ,アントーニオ
(72)【発明者】
【氏名】リュエル,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シュタードラー,ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】フィエイラ,エリック
【審査官】 榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−523854(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/146552(WO,A1)
【文献】 特表2001−509504(JP,A)
【文献】 特開昭57−024364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/04
A61K 31/4439
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
MARPAT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化32】

[式中、
Yは、N又はCHであり;
は、水素、フルオロ又はクロロであり;そして
は、水素又は低級アルキルである]
で表される化合物又はその薬学的に許容し得る酸付加塩。
【請求項2】
YがNである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項3】
以下:
2−[5−[2−(3−クロロフェニル)エチニル]−2−ピリミジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン
3,5,5−トリメチル−2−[5−(2−フェニルエチニル)−2−ピリミジル]イミダゾール−4−オン、又は
2−[5−[2−(3−フルオロフェニル)エチニル]−2−ピリミジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン
である、請求項1又は2のいずれか一項に記載の式Iの化合物。
【請求項4】
YがCHである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項5】
以下:
2−[5−[2−(3−フルオロフェニル)エチニル]−2−ピリジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン
3,5,5−トリメチル−2−[5−(2−フェニルエチニル)−2−ピリジル]イミダゾール−4−オン、又は
2−[5−[2−(3−クロロフェニル)エチニル]−2−ピリジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン
である、請求項1又は4のいずれか一項に記載の式Iの化合物。
【請求項6】
治療活性物質としての使用のための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の式Iの化合物の調製プロセスであって
)式:
【化33】

で表される化合物を、式:
【化34】

で表される化合物と反応させて、式:
【化35】

[式中、置換基Y、R及びRは、請求項1に記載したとおりである]
で表される化合物にすることを含むプロセス。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の式Iの化合物の調製プロセスであって、
b)式:
【化36】

で表される化合物を環化して、式:
【化37】

で表される化合物にすること、そして所望であれば、得られた化合物をアルキル化して、式:
【化38】

[式中、置換基Y及びRは、請求項1に記載したとおりである]
で表される化合物にすることを含むプロセス。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物と治療上活性な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項10】
不安症及び疼痛、鬱病、脆弱X症候群、自閉症スペクトラム障害、パーキンソン病、並びに胃食道逆流疾患(GERD)の処置のための、請求項に記載の医薬組成物
【請求項11】
不安症及び疼痛、鬱病、脆弱X症候群、自閉症スペクトラム障害、パーキンソン病、並びに胃食道逆流疾患(GERD)の処置のための医薬の製造のための、請求項1〜5のいずれか一項に記載化合物の使用。
【請求項12】
不安症及び疼痛、鬱病、脆弱X症候群、自閉症スペクトラム障害、パーキンソン病、並びに胃食道逆流疾患(GERD)の処置における使用のための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式I:
【化1】

[式中、
Yは、N又はCHであり;
は、水素、フルオロ又はクロロであり;そして
は、水素又は低級アルキルである]
で表されるエチニル誘導体又はその薬学的に許容し得る酸付加塩に関する。
【0002】
今般、驚くべきことに、一般式Iの化合物が、代謝型グルタミン酸受容体アンタゴニスト(NAM=陰性アロステリックモデュレーター)であるということが見出された。類似の主要コアを有する化合物は、一般に、mGluR5受容体の陽性アロステリックモデュレーターとして記載されている。驚くべきことに、極めて強力なmGluR5アンタゴニストがmGluR5陽性アロステリックモデュレーターの代わりに得られ、これが陽性アロステリックモデュレーターと比較した場合に全く反対の薬理学を有することが見出された。
【0003】
mGluR5陽性アロステリックモデュレーター(PAM)は、一定濃度のグルタミン酸の存在下で、増加した受容体活性(Ca2+動員)を導くが、一方で、アロステリックアンタゴニスト(陰性アロステリックモデュレーター、NAM)は、受容体活性化の低下を導く。
【0004】
式Iの化合物は、有益な治療特性を有することによって識別される。これらは、mGluR5受容体媒介障害の治療又は予防において使用され得る。
【0005】
中枢神経系(CNS)において、刺激の伝達は、ニューロンより放出される神経伝達物質と神経性受容体の相互作用によって起こる。
【0006】
グルタミン酸は、脳における主要な興奮性神経伝達物質であり、種々の中枢神経系(CNS)機能においてユニークな役割を担っている。グルタミン酸依存性の刺激受容体は、2つの主要なグループに分類されている。第一の主要グループ(すなわち、イオンチャンネル型受容体)は、リガンド制御型イオンチャネルを形成する。代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)は、第二の主要なグループに属し、さらにGタンパク質共役型受容体のファミリーに属する。
【0007】
現在のところ、これらのmGluRの8つの異なるメンバーが知られており、このうち幾つかには、サブタイプさえある。それらの配列相同性、シグナル伝達機構及びアゴニスト選択性に従って、これら8つの受容体は、3つのサブグループに再分割され得る:
【0008】
mGluR1及びmGluR5は、グループIに属し、mGluR2及びmGluR3は、グループIIに属し、そしてmGluR4、mGluR6、mGluR7及びmGluR8は、グループIIIに属する。
【0009】
第一グループに属する代謝型グルタミン酸受容体の陰性アロステリックモデュレーターは、急性及び/又は慢性神経障害(例えば、パーキンソン病、脆弱X症候群、自閉症性障害、認知障害及び記憶障害)、並びに慢性及び急性痛及び胃食道逆流疾患(GERD)の治療又は予防のために使用され得る。
【0010】
これと関連したその他の処置可能な適応症は、バイパス術又は移植によって引き起こされた脳機能不全、脳への血液供給の不足、脊髄損傷、頭部損傷、妊娠によって引き起こされた低酸素、心停止及び低血糖である。さらなる処置可能な適応症は、虚血、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、エイズによって引き起こされた認知症、眼損傷、網膜症、特発性パーキンソニズム又は薬物によって引き起こされたパーキンソニズム、並びにグルタミン酸欠乏機能につながる病状、例えば、筋痙攣、痙攣、片頭痛、尿失禁、ニコチン中毒、アヘン中毒、不安症、嘔吐、ジスキネジア及び鬱病などである。
【0011】
完全又は部分的にmGluR5によって介在される障害は、例えば、神経系の急性、外傷性及び慢性変性過程(例えば、アルツハイマー病、老年認知症、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症及び多発性硬化症)、精神疾患(例えば、統合失調症及び不安症)、鬱病、疼痛及び薬物依存である(Expert Opin. Ther. Patents (2002), 12, (12))。
【0012】
選択的mGluR5アンタゴニストは、不安症及び疼痛、鬱病、脆弱X症候群、自閉症スペクトラム障害、パーキンソン病、並びに胃食道逆流疾患(GERD)などのmGluR5受容体活性化の低下が望まれる障害の処置に特に有用である。
【0013】
本発明の目的は、式Iの化合物及びそれらの薬学的に許容し得る塩、薬学的に活性な物質としての上記の化合物、並びにそれらの製造である。本発明のさらなる目的は、本発明に係る化合物に基づく医薬及びそれらの製造、並びにmGluR5受容体(NAM)媒介障害(不安症及び疼痛、鬱病、脆弱X症候群、自閉症スペクトラム障害、パーキンソン病、並びに胃食道逆流疾患(GERD)である)の制御又は予防における、及びそれぞれの対応する医薬の製造のための該化合物の使用である。
【0014】
本発明の1つの実施態様は、YがNでありかつR及びRが上に記載したとおりである式Iの化合物、例えば、以下の化合物である:
2−[5−[2−(3−クロロフェニル)エチニル]−2−ピリミジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン
3,5,5−トリメチル−2−[5−(2−フェニルエチニル)−2−ピリミジル]イミダゾール−4−オン、又は
2−[5−[2−(3−フルオロフェニル)エチニル]−2−ピリミジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン。
【0015】
本発明のさらなる1つの実施態様は、YがCHでありかつR及びRが上に記載したとおりである式Iの化合物、例えば、以下の化合物である:
2−[5−[2−(3−フルオロフェニル)エチニル]−2−ピリジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン
3,5,5−トリメチル−2−[5−(2−フェニルエチニル)−2−ピリジル]イミダゾール−4−オン、又は
2−[5−[2−(3−クロロフェニル)エチニル]−2−ピリジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン。
【0016】
式Iの化合物は、以下に示される方法によって、実施例に示される方法によって、又は同様の方法によって製造され得る。個別の反応工程における適切な反応条件は、当業者に公知である。反応シーケンスは、スキームに表示したものに限定されず、出発物質及びそれらのそれぞれの反応性に依存して、反応工程シーケンスは、自由に変えることができる。出発物質は、市販のものであるか、あるいは以下に示される方法と同様の方法によって、本記載若しくは実施例で引用された参考文献に記載されている方法によって、又は当技術分野において公知の方法によって調製され得るかのいずれかである。
【0017】
式Iの本化合物及びそれらの薬学的に許容し得る塩は、以下に記載されるプロセスによって調製され得、該プロセスは、以下を含む:
a)式:
【化2】

で表される化合物を、式:
【化3】

で表される化合物と反応させて、式:
【化4】

[式中、置換基は、上に記載したとおりである]
で表される化合物にすること、又は
b)式:
【化5】

で表される化合物を環化して、式:
【化6】

で表される化合物にすること、そして所望であれば、得られた化合物をアルキル化して、式:
【化7】

[式中、置換基は、上に記載したとおりである]
で表される化合物にすること。
【0018】
式Iの化合物の調製は、さらに、スキーム1及び2並びに実施例1〜6においてより詳細に記載される。
【0019】
【化8】
【0020】
式Iの最終化合物(式中、R=CH)は、例えば、5−ブロモ−ピリジン−2−カルボン酸1と2−アミノ−2−メチルプロパンアミド塩酸塩2を、ヒューニッヒ塩基(ジイソプロピルエチルアミン)などの塩基及びTBTUなどのペプチドカップリング試薬の存在下、DMFなどの溶媒中で反応させることによって得られ得る。メタノールのような溶媒中、ナトリウムメトキシドなどの塩基を用いた3の環化は、所望のブロモピリジン化合物4を生成する。水素化ナトリウムの存在下、DMFなどの溶媒中、ヨードメタンなどのアルキル化剤を用いたブロモピリジン化合物4のアルキル化は、所望のアルキル化化合物5を生成する。5とアリールアセチレン誘導体6の薗頭カップリングは、所望の式Iの最終化合物(式中、R=CH)を生成する。
【0021】
【化9】
【0022】
式Iの化合物(式中、R=CH)はまた、例えば、5−ブロモ−ピリミジン−2−カルボン酸1と対応するアリールアセチレン誘導体6を薗頭カップリングさせて、所望のアセチレンカルボン酸8を生成することによっても得られ得る。8と2−アミノ−2−メチルプロパンアミド塩酸塩2を、ヒューニッヒ塩基などの塩基及びTBTUなどのペプチドカップリング試薬の存在下、DMFなどの溶媒中で反応させて、対応する化合物9を生成する。ナトリウムメトキシドなどの塩基の存在下、メタノールのような溶媒中での9の環化は、所望のアセチレン誘導体I(式中、R=H)を生成する。水素化ナトリウムの存在下、DMFなどの溶媒中、ヨードメタンなどのアルキル化剤を用いた化合物Iのアルキル化は、所望の式Iの最終化合物(式中、R=CH)を生成する。
【0023】
本発明はまた、上に概説したようなmGluR5受容体媒介障害の治療及び予防のための医薬の製造のための、本発明に係る化合物並びにその薬学的に許容し得る塩の使用に関する。
【0024】
式Iの化合物の薬学的に許容し得る塩は、それ自体公知の方法に従いかつ塩へと変換される化合物の性質を考慮して容易に製造され得る。例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸又はクエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの無機酸又は有機酸が、式Iの塩基性化合物の薬学的に許容し得る塩の形成に適する。アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを含有する化合物、塩基性アミン又は塩基性アミノ酸が、酸性化合物の薬学的に許容し得る塩の形成に適する。
【0025】
さらに、本発明はまた、不安症及び疼痛、鬱病、脆弱X症候群、自閉症スペクトラム障害、パーキンソン病、並びに胃食道逆流疾患(GERD)などのmGluR5受容体媒介障害の治療及び予防のための、1つ以上の本発明の化合物及び薬学的に許容し得る賦形剤を含有する医薬に関する。
【0026】
本化合物の薬理学的活性を以下の方法を使用して試験した:
【0027】
ラットmGlu5a受容体をコードするcDNAを、E.-J. Schlaeger and K. Christensen(Cytotechnology 1998, 15, 1-13)に記載されている手順を使用して、EBNA細胞に一過性にトランスフェクトした。mGlu5aをトランスフェクトしたEBNA細胞をFluo 3-AM(FLUKAによって得ることが可能、最終濃度0.5μM)と37℃で1時間インキュベーションし、続いて、アッセイバッファー(ハンクス塩及び20mM HEPESを補填したDMEM)で4回洗浄した後に、この細胞に対して[Ca2+]i測定を実施した。[Ca2+]i測定は、蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR, Molecular Devices Corporation, La Jolla, CA, USA)を使用して行った。化合物がアンタゴニストとして評価された場合、これらをアゴニストとしての10μMグルタミン酸に対して試験した。
【0028】
阻害(アンタゴニスト)曲線を、反復非線形曲線当て嵌めソフトウェアOrigin(Microcal Software Inc., Northampton, MA, USA)を使用して、IC50及びヒル係数を与える4パラメーターロジスティック方程式に当てはめた。
【0029】
試験化合物のKi値が与えられる。Ki値は、以下の式:
【数1】

[式中、IC50値は、化合物の効果の50%が拮抗される、試験化合物の濃度(μM)である。[L]は、その濃度であり、EC50値は、約50%の刺激をもたらす化合物の濃度(μM)である]
によって定義される。
【0030】
本発明の化合物は、mGluR5受容体アンタゴニストである。上に記載したアッセイで測定したような及び以下の表に示すような式Iの化合物の活性は、K<300nMの範囲にある。
【0031】
【表1】
【0032】
式Iの化合物及びその薬学的に許容し得る塩は、医薬として、例えば、医薬製剤の形態で使用され得る。医薬製剤は、例えば錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤又は懸濁剤の剤形で、経口投与され得る。しかし、投与はまた、例えば坐剤の剤形で直腸内にも、又は例えば注射用液剤の剤形で非経口的にも実施され得る。
【0033】
式Iの化合物及びその薬学的に許容し得る塩は、医薬製剤の製造ため、薬学的に不活性な無機又は有機の担体と共に加工され得る。乳糖、トウモロコシデンプン又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩などを、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠及び硬ゼラチンカプセル剤のためのそのような担体として使用することができる。軟ゼラチンカプセル剤のための好適な担体は、例えば、植物油、ロウ、脂肪、半固体及び液体ポリオール類などである;しかし、活性物質の性質に応じて、軟ゼラチンカプセル剤の場合は、通常担体を必要としない。液剤及びシロップ剤の製造に好適な担体は、例えば、水、ポリオール、ショ糖、転化糖、グルコースなどである。アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油などの佐剤は、式Iの化合物の水溶性塩の水性注射用液剤に使用され得るが、原則として必要ではない。坐剤のための好適な担体は、例えば、天然又は硬化油、ロウ、脂肪、半液体又は液体ポリオールなどである。
【0034】
加えて、医薬製剤は、保存剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香料、浸透圧を変動させるための塩、緩衝剤、マスキング剤又は酸化防止剤を含有することができる。これらはまた、さらに他の治療有用物質を含有することができる。
【0035】
前述のように、式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩と治療上不活性な賦形剤とを含有する医薬も本発明の目的であり、1つ以上の式Iの化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、所望により、1つ以上のその他の治療有用物質とを、1つ以上の治療上不活性な担体と共にガレヌス製剤の投与形態にすることを含む、そのような医薬の製造プロセスも、本発明の目的である。
【0036】
用量は、広い範囲内で変更され得、当然ながら、各々の特定の症例における個別の要件に適合されるだろう。一般に、経口又は非経口投与のための有効用量は、0.01〜20mg/kg/日の間であり、記載した全ての適応症に対して0.1〜10mg/kg/日の用量が好ましい。従って、体重70kgの成人のための1日投与量は、1日当たり0.7〜1400mgの間、好ましくは1日当たり7〜700mgの間である。
【0037】
本発明の化合物を含む医薬組成物の調製:
以下の組成の錠剤を常法により製造する:
mg/錠剤
有効成分 100
粉末乳糖 95
白色トウモロコシデンプン 35
ポリビニルピロリドン 8
カルボキシメチルデンプンNa 10
ステアリン酸マグネシウム 2
錠剤重量 250
【0038】
以下の実施例は、本発明をさらに明確にするために提供される:
【0039】
実施例1
2−[5−[2−(3−フルオロフェニル)エチニル]−2−ピリジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン
【化10】
【0040】
工程1:N−(2−アミノ−1,1−ジメチル−2−オキソ−エチル)−5−ブロモ−ピリジン−2−カルボキサミド
【化11】

5−ブロモピコリン酸(1g、4.95mmol)をDMF(10ml)に溶解し、ヒューニッヒ塩基(2.59ml、14.9mmol、3当量)、TBTU(1.75g、5.45mmol、1.1当量)及び2−アミノ−2−メチルプロパンアミド塩酸塩(755mg、5.45mmol、1.1当量)を室温で加えた。混合物を室温で5時間撹拌した。反応混合物を飽和NaHCO溶液及び酢酸エチル(2回)で抽出した。有機層を水で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固した。粗生成物を、0:100〜100:0 酢酸エチル:ヘプタン勾配で溶離する、50gシリカゲルカラムのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。所望のN−(2−アミノ−1,1−ジメチル−2−オキソ−エチル)−5−ブロモ−ピリジン−2−カルボキサミド(1.1g、収率78%)を白色の固体として得た。MS: m/e = 286.3/288.3 (M+H)。
【0041】
工程2:2−(5−ブロモ−2−ピリジル)−4,4−ジメチル−1H−イミダゾール−5−オン
【化12】

N−(2−アミノ−1,1−ジメチル−2−オキソ−エチル)−5−ブロモ−ピリジン−2−カルボキサミド(実施例1、工程1)(1g、3.49mmol)をメタノール(20ml)に溶解し、メタノール中の5.4Mナトリウムメトキシド溶液(6.47ml、34.9mmol、10当量)を室温で加えた。混合物を、密閉管中、65℃で16時間撹拌した。反応混合物を飽和NaHCO溶液及び酢酸エチル(2回)で抽出した。有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固した。粗生成物を、0:100〜100:0 酢酸エチル:ヘプタン勾配で溶離する、50gシリカゲルカラムのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。所望の2−(5−ブロモ−2−ピリジル)−4,4−ジメチル−1H−イミダゾール−5−オン(785mg、収率84%)を白色の固体として得た。MS: m/e = 268.3/270.3 (M+H)。
【0042】
工程3:2−(5−ブロモ−2−ピリジル)−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン
【化13】

2−(5−ブロモ−2−ピリジル)−4,4−ジメチル−1H−イミダゾール−5−オン(実施例1、工程2)(785mg、2.93mmol)をDMF(5ml)に溶解し、0〜5℃に冷却した。ヨードメタン(275μl、4.39mmol、1.5当量)及びNaH(55%)(211mg、4.39mmol、1.5当量)を加え、混合物を室温まで放温し、2時間撹拌した。反応混合物を飽和NaHCO溶液で処理し、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を水で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固した。所望の2−(5−ブロモ−2−ピリジル)−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン(710mg、収率86%)を明黄色の固体として得た。MS: m/e = 282.3/284.3 (M+H)。
【0043】
工程4:2−[5−[2−(3−フルオロフェニル)エチニル]−2−ピリジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン
【化14】

2−(5−ブロモ−2−ピリジル)−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン(実施例1、工程3)(250mg、0.87mmol)をDMF(3ml)に溶解した。3−フルオロフェニルアセチレン(213mg、1.77mmol、2当量)、トリエチルアミン(1.24ml、8.86mmol、10当量)、ビス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(II)ジクロリド(19mg、28μmol、0.03当量)、トリフェニルホスフィン(14mg、56μmol、0.06当量)及びヨウ化銅(I)(3mg、18μmol、0.02当量)を窒素雰囲気下で加え、混合物を80℃で3時間撹拌した。混合物をIsolute(登録商標)吸着剤の存在下で蒸発乾固した。吸着した粗物質を、ヘプタン:酢酸エチル 100:0→30:70で溶離する、50gシリカゲルカラムを用いたフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。所望の2−[5−[2−(3−フルオロフェニル)エチニル]−2−ピリジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン(210mg、収率74%)を明黄色の固体として得た。MS: m/e = 322.4 (M+H)。
【0044】
実施例2
3,5,5−トリメチル−2−[5−(2−フェニルエチニル)−2−ピリジル]イミダゾール−4−オン
【化15】

実施例1、工程4に記載したものと類似の化学を使用して、2−(5−ブロモ−2−ピリジル)−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン(実施例1、工程3)及びフェニルアセチレンから標記化合物を白色の固体として得た。MS: m/e = 304.4 (M+H)。
【0045】
実施例3
2−[5−[2−(3−クロロフェニル)エチニル]−2−ピリジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン
【化16】

実施例1、工程4に記載したものと類似の化学を使用して、2−(5−ブロモ−2−ピリジル)−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン(実施例1、工程3)及び3−クロロフェニルアセチレンから標記化合物を白色の固体として得た。MS: m/e = 338.4/340.4 (M+H)。
【0046】
実施例4
2−[5−[2−(3−クロロフェニル)エチニル]−2−ピリミジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン
【化17】
【0047】
工程1:5−(3−クロロ−フェニルエチニル)−ピリミジン−2−カルボン酸
【化18】

ビス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(II)ジクロリド(86mg、123μmol、0.01当量)をDMF12mlに溶解した。5−ブロモ−ピリミジン−2−カルボン酸(2.5g、12.3mmol)及び3−クロロフェニルアセチレン(2.02g、14.8mmol、1.2当量)を室温で加えた。トリエチルアミン(11ml、78.8mmol、6.4当量)、トリフェニルホスフィン(65mg、246μmol、0.02当量)及びヨウ化銅(I)(24mg、123μmol、0.01当量)を加え、混合物を80℃で2時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷まし、酢酸エチル5ml及び水20mlで希釈した。2N HClの2N溶液(20ml)を滴下し、混合物を室温で20分間撹拌した。固体を濾過し、TBME10mlで洗浄し、真空下で濃縮した。所望の5−(3−クロロ−フェニルエチニル)−ピリミジン−2−カルボン酸(2.8g、収率88%)を白色の固体として得た。MS: m/e = 259.4/261.4 (M+H)。
【0048】
工程2:N−(2−アミノ−1,1−ジメチル−2−オキソ−エチル)−5−[2−(3−クロロフェニル)エチニル]ピリミジン−2−カルボキサミド
【化19】

実施例1、工程1に記載したものと類似の化学を使用して、5−(3−クロロ−フェニルエチニル)−ピリミジン−2−カルボン酸(実施例4、工程1)及び2−アミノ−2−メチルプロパンアミド塩酸塩から標記化合物を黄色の固体として得た。MS: m/e = 341.3/343.4 (M+H)。
【0049】
工程3:2−[5−[2−(3−クロロフェニル)エチニル]ピリミジン−2−イル]−4,4−ジメチル−1H−イミダゾール−5−オン
【化20】

実施例1、工程2に記載したものと類似の化学を使用して、N−(2−アミノ−1,1−ジメチル−2−オキソ−エチル)−5−[2−(3−クロロフェニル)エチニル]ピリミジン−2−カルボキサミド(実施例4、工程2)から標記化合物を白色の固体として得た。MS: m/e = 325.4/327.4 (M+H)。
【0050】
工程4:2−[5−[2−(3−クロロフェニル)エチニル]−2−ピリミジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン
【化21】

実施例1、工程3に記載したものと類似の化学を使用して、2−[5−[2−(3−クロロフェニル)エチニル]ピリミジン−2−イル]−4,4−ジメチル−1H−イミダゾール−5−オン(実施例4、工程3)及びヨードメタンから標記化合物を白色の固体として得た。MS: m/e = 339.4/341.3 (M+H)。
【0051】
実施例5
3,5,5−トリメチル−2−[5−(2−フェニルエチニル)−2−ピリミジル]イミダゾール−4−オン
【化22】
【0052】
工程1:5−(2−フェニルエチニル)ピリミジン−2−カルボン酸
【化23】

実施例4、工程1に記載したものと類似の化学を使用して、5−ブロモ−ピリミジン−2−カルボン酸及びフェニルアセチレンから標記化合物を暗褐色の固体として得た。MS: m/e = 222.9 (M−H)。
【0053】
工程2:N−(2−アミノ−1,1−ジメチル−2−オキソ−エチル)−5−(2−フェニルエチニル)ピリミジン−2−カルボキサミド
【化24】

実施例1、工程1に記載したものと類似の化学を使用して、5−(2−フェニルエチニル)ピリミジン−2−カルボン酸(実施例5、工程1)及び2−アミノ−2−メチルプロパンアミド塩酸塩から標記化合物を黄色の油状物として得た。MS: m/e = 309.4 (M+H)。
【0054】
工程3:4,4−ジメチル−2−[5−(2−フェニルエチニル)ピリミジン−2−イル]−1H−イミダゾール−5−オン
【化25】

実施例1、工程2に記載したものと類似の化学を使用して、N−(2−アミノ−1,1−ジメチル−2−オキソ−エチル)−5−(2−フェニルエチニル)ピリミジン−2−カルボキサミド(実施例5、工程2)から標記化合物を黄色の固体として得た。MS: m/e = 291.4 (M+H)。
【0055】
工程4:3,5,5−トリメチル−2−[5−(2−フェニルエチニル)ピリミジン−2−イル]イミダゾール−4−オン
【化26】

実施例1、工程3に記載したものと類似の化学を使用して、4,4−ジメチル−2−[5−(2−フェニルエチニル)ピリミジン−2−イル]−1H−イミダゾール−5−オン(実施例5、工程3)及びヨードメタンから標記化合物を黄色の固体として得た。MS: m/e = 305.4 (M+H)。
【0056】
実施例6
2−[5−[2−(3−フルオロフェニル)エチニル]−2−ピリミジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン
【化27】
【0057】
工程1:5−(3−フルオロ−フェニルエチニル)−ピリミジン−2−カルボン酸
【化28】

実施例4、工程1に記載したものと類似の化学を使用して、5−ブロモ−ピリミジン−2−カルボン酸及び3−フルオロフェニルアセチレンから標記化合物を得た。
【0058】
工程2:N−(2−アミノ−1,1−ジメチル−2−オキソ−エチル)−5−[2−(3−フルオロフェニル)エチニル]ピリミジン−2−カルボキサミド
【化29】

実施例1、工程1に記載したものと類似の化学を使用して、5−(3−フルオロ−フェニルエチニル)−ピリミジン−2−カルボン酸(実施例6、工程1)及び2−アミノ−2−メチルプロパンアミド塩酸塩から標記化合物を黄色の固体として得た。MS: m/e = 327.4 (M+H)。
【0059】
工程3:2−[5−[2−(3−フルオロフェニル)エチニル]ピリミジン−2−イル]−4,4−ジメチル−1H−イミダゾール−5−オン
【化30】

実施例1、工程2に記載したものと類似の化学を使用して、N−(2−アミノ−1,1−ジメチル−2−オキソ−エチル)−5−[2−(3−フルオロフェニル)エチニル]ピリミジン−2−カルボキサミド(実施例6、工程2)から標記化合物を黄色の固体として得た。MS: m/e = 309.3 (M+H)。
【0060】
工程4:2−[5−[2−(3−フルオロフェニル)エチニル]−2−ピリミジル]−3,5,5−トリメチル−イミダゾール−4−オン
【化31】

実施例1、工程3に記載したものと類似の化学を使用して、2−[5−[2−(3−フルオロフェニル)エチニル]ピリミジン−2−イル]−4,4−ジメチル−1H−イミダゾール−5−オン(実施例6、工程3)及びヨードメタンから標記化合物を橙色の固体として得た。MS: m/e = 323.4 (M+H)。