特許第6116771号(P6116771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6116771タッチパネル用層間充填材料及びタッチパネル積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6116771
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】タッチパネル用層間充填材料及びタッチパネル積層体
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20170410BHJP
   C09J 129/14 20060101ALI20170410BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170410BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20170410BHJP
   C09J 4/06 20060101ALI20170410BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20170410BHJP
   C09J 183/06 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G06F3/041 400
   G06F3/041 495
   C09J129/14
   C09J11/06
   C09J4/02
   C09J4/06
   C09J163/00
   C09J183/06
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-563485(P2016-563485)
(86)(22)【出願日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】JP2016079808
【審査請求日】2017年2月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-199740(P2015-199740)
(32)【優先日】2015年10月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深谷 重一
(72)【発明者】
【氏名】上ノ町 清巳
(72)【発明者】
【氏名】岡林 賞純
(72)【発明者】
【氏名】海老名 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】和田 敦
【審査官】 加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014-191441(JP,A)
【文献】 特開2005-289038(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/132115(WO,A1)
【文献】 特開2010-129751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
C09J 4/02
C09J 4/06
C09J 11/06
C09J 129/14
C09J 163/00
C09J 183/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルと他の部材との層間又は前記タッチパネルを構成する複数の透明導電フィルムの層間、ガラス板と透明導電フィルムの層間、ガラス板とガラス板との層間、ガラス板と偏光フィルムとの層間、基板とガラス板との層間、基板と透明導電フィルムとの層間、基板と偏光フィルムとの層間を充填するために用いられるタッチパネル用層間充填材料であって、
ポリビニルアセタールと可塑剤を含有し、
25℃での2分後残留応力Kpa(25℃、2min)が300kPa以下である
ことを特徴とするタッチパネル用層間充填材料。
【請求項2】
25℃での2分後応力緩和率が75%以上であることを特徴とする請求項1記載のタッチパネル用層間充填材料。
【請求項3】
ポリビニルアセタールは、ポリビニルブチラールであることを特徴とする請求項1又は2記載のタッチパネル用層間充填材料。
【請求項4】
ポリビニルアセタールの平均重合度が2000以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のタッチパネル用層間充填材料。
【請求項5】
ポリビニルアセタール100重量部に対する可塑剤の含有量が10〜75重量部であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のタッチパネル用層間充填材料。
【請求項6】
更に、反応性希釈剤及び光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のタッチパネル用層間充填材料。
【請求項7】
反応性希釈剤は、(メタ)アクリル系反応性希釈剤、エポキシ系反応性希釈剤又はシリコーン系反応性希釈剤であることを特徴とする請求項6記載のタッチパネル用層間充填材料。
【請求項8】
ポリビニルアセタール100重量部に対する反応性希釈剤の含有量が0.1〜30重量部であることを特徴とする請求項6又は7記載のタッチパネル用層間充填材料。
【請求項9】
表面保護パネルとタッチパネルとの層間、タッチパネルと偏光フィルムとの層間、及び、タッチパネルを構成する複数の透明導電フィルムの層間、ガラス板と透明導電フィルムの層間、ガラス板とガラス板との層間、ガラス板と偏光フィルムとの層間、基板とガラス板との層間、基板と透明導電フィルムとの層間、基板と偏光フィルムとの層間からなる群から選択される少なくとも1種の層間が、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載のタッチパネル用層間充填材料で充填されていることを特徴とするタッチパネル積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯情報端末の製造等においてタッチパネルと他の部材との層間又はタッチパネルを構成する複数の透明導電フィルムの層間を充填するために用いられ、表面保護パネルやガラス基板に割れや破損が生じにくく、かつ、色むらのないタッチパネル積層体を得ることができるタッチパネル用層間充填材料、及び、該タッチパネル用層間充填材料を用いて製造されたタッチパネル積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは様々な分野で用いられており、例えば、スマートフォン、タブレット等の携帯情報端末においては、ガラス等からなる表面保護パネルの下にタッチパネルが配置されており、続いて、偏光フィルム、ディスプレイがこの順で設けられている。
このような携帯情報端末においては、表面保護パネルとタッチパネルとの層間、及び、タッチパネルと偏光フィルムとの層間を、空気と比較してこれらの部材との屈折率差が小さい充填材料で埋めることにより、表示画面の透明性、輝度、コントラスト等を改善し、視認性を向上させることが行われている。
【0003】
タッチパネル用層間充填材料としては、透明性、粘着性、塗工性等の観点から、アクリル系粘着剤が多用されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、アクリル系粘着剤を層間充填材料として用いて製造したタッチパネル積層体は、表面保護パネルやガラス基板に割れや破損が生じやすいという問題があった。特に、近年の携帯情報端末の小型化、薄型化又は軽量化に伴って、表面保護パネルやガラス基板、充填材料の薄化が進んでいる。このような薄いタッチパネル積層体では、いっそう割れや破損が生じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−74308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、タッチパネルに衝撃が加わったときに、表面保護パネルやガラス基板に割れや破損が生じる原因について詳しく検討した。そもそもタッチパネルに採用される表面保護パネルやガラス基板は、極めて高強度であって、落下時の衝撃程度では割れや破損は生じにくい。本発明者らは、鋭意検討の結果、従来のアクリル粘着剤からなるタッチパネル用層間充填材料では、強靭性や曲げ剛性が低く、衝撃に対してタッチパネル用層間充填材料が変形することにより、表面保護パネルやガラス基板にたわみが発生し、該たわみにより表面保護パネルやガラス基板に割れや破損が生じることを見出した。本発明者らは、高架橋等により高弾性率を発揮できるアクリル系粘着剤を用いることも検討したが、弾性率を高めたアクリル系粘着剤は、ガラスに対する接着力が悪化したり、硬化時の硬化収縮が大きくなってしまったりするという問題があった。
【0006】
これに対して本発明者らは、従来多用されてきたアクリル系粘着剤に代わる材料として、ポリビニルアセタールをタッチパネル用層間充填材料に用いることを検討した。ポリビニルアセタールは、強靭性や曲げ剛性が高いことに加え、ガラス等に対する接着性も高いという優れた性質を有する。従って、ポリビニルアセタールを層間充填材料として用いれば、表面保護パネルやガラス基板に割れや破損が生じるのを防止することができる。また、万一落下等の衝撃により携帯情報端末が破損した場合でも、ガラス等の破片の飛散を抑制する効果も期待できる。しかしながら、ポリビニルアセタールを含有するタッチパネル用層間充填材料を用いたタッチパネル積層体では、画像の一部に色むら(黄変)が認められることがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、携帯情報端末の製造等においてタッチパネルと他の部材との層間又はタッチパネルを構成する複数の透明導電フィルムの層間を充填するために用いられ、表面保護パネルやガラス基板に割れや破損が生じにくく、かつ、色むらのないタッチパネル積層体を得ることができるタッチパネル用層間充填材料、及び、該タッチパネル用層間充填材料を用いて製造されたタッチパネル積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タッチパネルと他の部材との層間又は前記タッチパネルを構成する複数の透明導電フィルムの層間、ガラス板と透明導電フィルムの層間、ガラス板とガラス板との層間、ガラス板と偏光フィルムとの層間、基板とガラス板との層間、基板と透明導電フィルムとの層間、基板と偏光フィルムとの層間を充填するために用いられるタッチパネル用層間充填材料であって、ポリビニルアセタールと可塑剤を含有し、25℃での2分後残留応力Kpa(25℃、2min)が300kPa以下であるタッチパネル用層間充填材料である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、ポリビニルアセタールを含有するタッチパネル用層間充填材料として用いたタッチパネル積層体において、画像に色むら(黄変)が発生する原因について検討した。
ポリビニルアセタールを含有するタッチパネル用層間充填材料は、常温における強靭性や曲げ剛性が高いことから、表面保護パネルやガラス基板に割れや破損が発生するのを防止することができる。一方、このような硬いポリビニルアセタールを用いた場合には、タッチパネル積層体の製造時に加えられた応力がタッチパネル用層間充填材料に残留しやすくなる。通常のタッチパネル積層体の製造では、例えば、表面保護パネルとタッチパネルとの層間にタッチパネル用層間充填材料を挟持し、75℃で2秒間のプレラミネーション工程を行った後、真空下で25℃、2分間又は75℃、2分間ラミネーション工程を行い、更にその後75℃、30分間オートクレーブ工程を行う。これらの工程においては、タッチパネル用層間充填材料には応力がかかる。一方、貼り合わせられる基板等には、加飾印刷部段差や配線段差があることから、該段差部分において応力が不均一となる。本発明者らは、このような不均一な応力がタッチパネル用層間充填材料中に残留したときに、該応力によって液晶の一部に歪みが発生することが、色むら(黄変)の原因となっていることを見出した。なかでも、25℃において加えられた応力は、特に大きな歪みとなってタッチパネル用層間充填材料に残留すると思われる。
そして本発明者らは、更に鋭意検討の結果、ポリビニルアセタールと可塑剤を含有するタッチパネル用層間充填材料において、25℃での2分後残留応力Kpa(25℃、2min)を一定以下とすることにより、得られるタッチパネル積層体に色むら(黄変)が発生するのを防止できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明のタッチパネル用層間充填材料は、タッチパネルと他の部材との層間又はタッチパネルを構成する複数の透明導電フィルムの層間を充填するために用いられるものである。上記他の部材は特に限定されないが、表面保護パネル(例えば、ガラス板、ポリカーボネート板、アクリル板)、偏光フィルムが好ましい。即ち、本発明のタッチパネル用層間充填材料は、表面保護パネルとタッチパネルとの層間、及び/又は、タッチパネルと偏光フィルムとの層間を充填するために用いられることが好ましい。
【0011】
本発明のタッチパネル用層間充填材料は、25℃での2分後残留応力Kpa(25℃、2min)が300kPa以下である。25℃での2分後残留応力Kpaをこのような範囲に制御することにより、得られるタッチパネル積層体に色むら(黄変)が発生するのを防止できることができる。上記25℃での2分後残留応力Kpa(25℃、2min)は240kPa以下であることが好ましく、200kPa以下であることがより好ましい。
【0012】
本発明のタッチパネル用層間充填材料は、25℃での2分後応力緩和率が75%以上であることが好ましい。これにより、得られるタッチパネル積層体に色むら(黄変)が発生するのをより防止できることができる。上記25℃での2分後応力緩和率は80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0013】
上記25℃での2分後残留応力Kpa(25℃、2min)はJIS K 6263:2004に準拠して測定することができる。
具体的には例えば、短冊状(初期寸法:10mm幅×約100mm長×厚さ約0.2mm(厚さは試料毎に計測))の測定試料を準備し、該測定試料を初期チャック間隔50mmでチャック間に固定して、25℃の恒温層に投入し、温度が安定した後、テンシロンRTC(オリエンテック社製)等を用いて500mm/minの速度で5mm引っ張った後クロスヘッドが停止するように設定し、引張開始から0.5秒毎に応力を収集し、最大応力、引張開始後2分後のデータを読み取る。25℃での2分後応力緩和率は、2分後応力を最大応力で除した値を1から引いて、100分率で表したものである。
【0014】
本発明のタッチパネル用層間充填材料は、ポリビニルアセタールと可塑剤を含有する。ポリビニルアセタールの種類と可塑剤の含有量を調整することにより、上記25℃での2分後残留応力Kpa(25℃、2min)を所期の範囲に調整することができる。
【0015】
上記ポリビニルアセタールは、例えば、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られたポリビニルアルコールを、触媒存在下でアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールの鹸化度は特に限定されないが、一般に70〜99.9モル%の範囲内にあり、鹸化度70〜99.8モル%が好ましく、80〜99.8モル%がより好ましい。
上記ポリビニルアルコールを触媒存在下でアルデヒドによりアセタール化する際には、上記ポリビニルアルコールを含む溶液を用いてもよい。上記ポリビニルアルコールを含む溶液に用いられる溶媒として、例えば、水等が挙げられる。
【0016】
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般的には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。
上記炭素数が1〜10のアルデヒドは特に限定されず、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
即ち、上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルブチラール(上記アルデヒドがn−ブチルアルデヒドである場合、上記ポリビニルアセタールをポリビニルブチラールという)を含有することが好ましい。上記ポリビニルブチラールを用いることにより、タッチパネル用層間充填材料のガラスに対する接着力が適切に発現し、耐光性、耐候性等が向上する。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタールを併用してもよい。
【0017】
上記ポリビニルアセタールの平均重合度は、残留応力を低くする観点から、2000以下であることが好ましい。上記ポリビニルアセタールの平均重合度が2000以下であると、可塑剤の含有量の調整や、後述する反応性希釈剤との併用等により、得られるタッチパネル用層間充填材料の残留応力を所期の範囲に制御することができる。上記ポリビニルアセタールの平均重合度のより好ましい上限は1800、更に好ましい上限は1500、特に好ましい上限は900である。上記ポリビニルアセタールの平均重合度の下限については特に限定されないが、充分な強靭性や曲げ剛性を確保して、表面保護パネルやガラス基板に割れや破損が生じにくくする観点から、200以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましい。
本明細書においてポリビニルアセタールの平均重合度は、JIS K6728:1977年に記載の方法に基づいて測定した粘度平均重合度をいう。ポリビニルアセタール樹脂が2種以上のポリビニルアセタール樹脂の混合物である場合は、混合後のポリビニルアセタール樹脂全体の見掛け上の粘度平均重合度を意味する。
また、ポリビニルアセタールの平均重合度は、ポリビニルアセタールの製造に用いられるポリビニルアルコールの平均重合度に等しい。つまり、ポリビニルアルコール樹脂と、そのポリビニルアルコール樹脂をアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂とは、重合度が等しい。
本明細書においてポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726:1994年に基づき求められる粘度平均重合度を意味する。ポリビニルアルコール樹脂として2種以上のポリビニルアルコール樹脂を混合して用いる場合は、混合後のポリビニルアルコール樹脂全体の見掛け上の粘度平均重合度をいう。
【0018】
上記ポリビニルアセタールの水酸基の含有率(水酸基量)の好ましい下限は16モル%、好ましい上限は45モル%である。上記水酸基量が16モル%以上であれば、タッチパネル用層間充填材料のガラスに対する接着力が向上する。上記水酸基量が45モル%以下であれば、耐湿性や耐候性が向上する。上記水酸基量のより好ましい下限は18モル%、更に好ましい下限は20モル%、特に好ましい下限は22モル%であり、より好ましい上限は40モル%、更に好ましい上限は38モル%、更により好ましい上限は36モル%、特に好ましい上限は35モル%である。
なお、ポリビニルアセタールの水酸基量は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により求めることができる。
【0019】
上記ポリビニルアセタールのアセチル化度(アセチル基量)の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は30モル%である。上記アセチル基量が0.1モル%以上であれば、上記反応性希釈剤との相溶性が高くなる。上記アセチル基量が30モル%以下であれば、上記ポリビニルアセタールの耐湿性が向上する。また、上記アセチル基量が30モル%を超えると、上記ポリビニルアセタールを製造する際の反応効率が低下することがある。上記アセチル基量のより好ましい下限は0.2モル%、更に好ましい下限は0.3モル%であり、より好ましい上限は24モル%、更に好ましい上限は20モル%、更により好ましい上限は19.5モル%、特に好ましい上限は15モル%である。
なお、ポリビニルアセタールのアセチル基量は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0020】
上記ポリビニルアセタールのアセチル基量を上記範囲に調整する方法として、例えば、上記ポリビニルアルコールの鹸化度を調整する方法が挙げられる。即ち、上記ポリビニルアセタールのアセチル基量は、上記ポリビニルアルコールの鹸化度に依存するものであり、鹸化度が低いポリビニルアルコールを用いれば上記ポリビニルアセタールのアセチル基量は大きくなり、鹸化度が高いポリビニルアルコールを用いれば上記ポリビニルアセタールのアセチル基量は小さくなる。
【0021】
上記ポリビニルアセタールのアセタール化度の好ましい下限は50モル%、好ましい上限は85モル%である。上記アセタール化度が50モル%以上であれば、上記反応性希釈剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が85モル%以下であれば、上記ポリビニルアセタールを製造するために必要な反応時間を短縮できる。上記アセタール化度のより好ましい下限は54モル%、更に好ましい下限は58モル%、特に好ましい下限は60モル%である。上記アセタール化度のより好ましい上限は82モル%、更に好ましい上限は79モル%、特に好ましい上限は77モル%である。
なお、ポリビニルアセタールのアセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、アセチル基量とビニルアルコール量(水酸基の含有率)とを測定し、得られた測定結果からモル分率を算出し、次いで、100モル%からアセチル基量とビニルアルコール量とを差し引くことにより算出されうる。
【0022】
上記ポリビニルアセタールのアセタール化度を調整する方法として、例えば、上記アルデヒドの添加量を調整する方法が挙げられる。上記アルデヒドの添加量を少なくすれば上記ポリビニルアセタールのアセタール化度は低くなり、上記アルデヒドの添加量を多くすれば上記ポリビニルアセタールのアセタール化度は高くなる。
【0023】
上記可塑剤は特に限定されず、ポリビニルアセタールに用いられる従来公知の可塑剤を用いることができる。上記可塑剤として、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機酸エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機酸エステル可塑剤が好ましい。これらの可塑剤は単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。上記可塑剤は、液状可塑剤であることが好ましい。
【0024】
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されず、例えば、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸と、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールとの反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。
上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されず、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとの反応によって得られたエステル化合物等が挙げられる。
【0025】
上記有機酸エステル可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。上記ジエステル可塑剤を用いることにより、タッチパネル用層間充填材料の成形性が向上する。
−CO−(−R−O−)−CO−R (1)
式(1)中、R及びRはそれぞれ炭素数5〜10(好ましくは炭素数6〜10)の有機基を表し、Rはエチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは3〜10の整数を表す。
【0026】
上記有機酸エステル可塑剤は、具体的には例えば、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物、炭素数4〜9のアルキルアルコール及び炭素数4〜9の環状アルコールから作製された混合型アジピン酸エステル等が挙げられる。
【0027】
上記有機リン酸可塑剤は特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0028】
上記可塑剤のなかでも、ジヘキシルアジペート(DHA)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(4GH)、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(4G7)及びトリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(3G7)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(3G7)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)がより好ましく、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートが更に好ましい。
【0029】
上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール100重量部に対する好ましい下限は10重量部、好ましい上限は75重量部である。上記可塑剤の含有量をこの範囲とすることにより、得られるタッチパネル用層間充填材料の残留応力を所期の範囲に調整することができる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は15重量部、より好ましい上限は40重量部である。
【0030】
本発明のタッチパネル用層間充填材料は、更に、反応性希釈剤と光重合開始剤を含有することが好ましい。反応性希釈剤と光重合開始剤を含有するタッチパネル用層間充填材料に光を照射すると、反応性希釈剤が反応して架橋、硬化し、タッチパネル用層間充填材料の貯蔵弾性率G’が上昇する。この反応を利用することにより、更に容易にタッチパネル用層間充填材料の残留応力を所期の範囲に調整することができる。即ち、反応性希釈剤と光重合開始剤を含有するタッチパネル用層間充填材料を、光を照射しない状態で70℃程度に加熱しながら圧着することより、加飾印刷部段差や配線段差にも充分に追従して、段差部分に不均一な応力が残存するのを防止することができる。次いで、光を照射して反応性希釈剤を反応させて架橋、硬化させることにより、タッチパネル用層間充填材料全体の強靭性や曲げ剛性を向上させて、表面保護パネルやガラス基板に割れや破損が生じるのを防止することができる。更に、光照射により反応した反応性希釈剤は、残留したり、ブリードアウトしたりすることもない。
【0031】
本明細書において反応性希釈剤とは、上記ポリビニルアセタールと相溶することができ、光を照射することにより反応性希釈剤間で反応して架橋、硬化させることができる剤を意味する。
上記反応性希釈剤としては、例えば、(メタ)アクリルモノマーや(メタ)アクリルオリゴマー等の(メタ)アクリル系反応性希釈剤や、エポキシモノマー、エポキシオリゴマー等のエポキシ系反応性希釈剤や、アルコキシシランモノマー、アルコキシシランオリゴマー等のシリコーン系反応性希釈剤等が挙げられる。これらの反応性希釈剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、上記ポリビニルアセタールとの相溶が高く、かつ、光重合開始剤と組み合わせることにより容易に架橋、硬化させることができることから、(メタ)アクリル系反応性希釈剤が好適である。
【0032】
上記(メタ)アクリルモノマーとしては、単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリルモノマーを用いることができる。
上記単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−メタクロイルオキシエチル−2−ヒドロキシルプロピルフタレート等が挙げられる。
【0033】
上記2官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
上記3官能以上の(メタ)アクリルモノマーとしては、例えは、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリ(2−アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体等が挙げられる。
【0035】
上記(メタ)アクリルモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、上記ポリビニルアセタールとの相溶性に特に優れることから単官能(メタ)アクリルモノマーが好適である。より具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸2ヒドロキシエチル等が好適である。
【0036】
上記(メタ)アクリルオリゴマーとしては、上記(メタ)アクリルモノマーが複数個結合したものが挙げられる。なかでも、上記ポリビニルアセタールとの相溶性に特に優れることから、上記アクリルモノマーからなる(メタ)アクリルオリゴマーが好適である。
【0037】
上記エポキシモノマーとしては、例えば、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ビスフェノールAD系、ブロム含有ビスフェノールA系、フェノールノボラック系、クレゾールノボラック系、ポリフェノール系、直鎖脂肪族系、ブタジエン系、ウレタン等のグリシジルエステル型エポキシモノマーや、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー型グリシジルエステル、芳香族系、環状脂肪族系等の脂肪族グリシジルエステル型のエポキシモノマーや、ビスフェノール系、エステル系、高分子量エーテルエステル系、エーテルエステル系、ブロム系ノボラック系等のメチル置換型エポキシモノマーや、複素環型のエポキシモノマーや、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン型のエポキシモノマーや、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ大豆油等の線状脂肪族型エポキシモノマーや、環状脂肪族型エポキシモノマー、ナフタレン系ノボラック型エポキシモノマーや、ジグリシジルオキシナフタレン型エポキシモノマー等が挙げられる。
上記エポキシオリゴマーとしては、上記エポシキモノマーが複数個結合したものが挙げられる。なかでも、上記エポキシモノマーからなるエポキシオリゴマーが好適である。
【0038】
上記アルコキシシランモノマーとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキキシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等が挙げられる。
上記アルコキシシランオリゴマーとしては、上記アルコキシシランモノマーが複数個結合したものが挙げられる。なかでも、上記アルコキシシランモノマーからなるアルコキシシランオリゴマーが好適である。
【0039】
本発明のタッチパネル用層間充填材料における上記反応性希釈剤の含有量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール100重量部に対する好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は30重量部である。上記反応性希釈剤の含有量がこの範囲内であると、上記反応性希釈剤を反応させる前のタッチパネル用層間充填材料の残留応力を所期の範囲に調整することが容易となる。上記反応性希釈剤の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は20重量部であり、更に好ましい下限は2重量部、更に好ましい上限は15重量部であり、特に好ましい下限は3重量部、特に好ましい上限は10重量部である。
【0040】
上記光重合開始剤としては、上記反応性希釈剤の種類にあわせて適宜選択すればよい。例えば、上記反応性希釈剤として(メタ)アクリル系反応性希釈剤を用いる場合には、過硫酸塩、有機過酸化物、アゾ化合物等を用いることができる。こられの光重合開始剤は単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明のタッチパネル用層間充填材料における上記光重合開始剤の配合量は特に限定されないが、上記反応性希釈剤100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が5重量部である。上記光重合開始剤の配合量をこの範囲内にすると、上記反応性希釈剤を確実かつ短時間で反応させることができ、残留する光重合開始剤のブリードアウト等の問題が生じることもない。上記光重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は2重量部である。
【0042】
反応性希釈剤と光重合開始剤を含有するタッチパネル用層間充填材料に光を照射する方法としては特に限定されず、例えば、超高圧水銀灯等の紫外線照射装置を用いて、光を照射する方法が挙げられる。
上記光照射時の光の波長や照度は、上記反応性希釈剤及び光重合開始剤の種類等により適宜設定すればよい。例えば、上記反応性希釈剤として(メタ)アクリル系反応性希釈剤を用い、上記光重合開始剤として反応性希釈剤100重量部に対し、ベンゾフェノンを0.5〜2重量部用いた場合には、365nmの波長の光を2000〜6000mJ/cm照射することが好ましい。
【0043】
本発明のタッチパネル用層間充填材料は、必要に応じて、透明性を損なわない範囲内で、接着力調整剤、粘着付与樹脂、可塑剤、乳化剤、軟化剤、微粒子、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、酸化防止剤、界面活性剤、ワックス等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0044】
本発明のタッチパネル用層間充填材料の製造方法は特に限定されず、例えば、上記ポリビニルアセタール、反応性希釈剤、光重合開始剤と、必要に応じて添加する添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
【0045】
本発明のタッチパネル用層間充填材料の用途は特に限定されないが、接着(粘着)シートとして種々の用途に用いることができる。具体的には例えば、携帯情報端末(例えば、スマートフォン、タブレット)、LCD、EL、PDP等の画像表示パネルを用いた平面型又はフレキシブル画像表示装置(例えば、電子ペーパー、PDA、TV、ゲーム機)等において、表面保護パネルとタッチパネルとの層間、タッチパネルと偏光フィルムとの層間、及び、タッチパネルを構成する複数の透明導電フィルムの層間、ガラス板と透明導電フィルムの層間、ガラス板とガラス板との層間、ガラス板と偏光フィルムとの層間、基板とガラス板との層間、基板と透明導電フィルムとの層間、基板と偏光フィルムとの層間からなる群から選択される少なくとも1種の層間に用いられることが好ましい。本発明のタッチパネル用層間充填材料により、被着体同士を直接接着固定することができる。
【0046】
図1は、本発明のタッチパネル用層間充填材料の使用方法の一例を模式的に示す断面図である。図1においては、表面保護パネル3とタッチパネル2との層間、及び、タッチパネル2と偏光フィルム4との層間が、本発明のタッチパネル用層間充填材料1で充填されている。
図1においては、表面保護パネル3の裏側にはマスキング等を目的として周縁部に加飾印刷部5が形成されているが、本発明のタッチパネル用層間充填材料1は、このような加飾印刷部5により形成された段差にも、タッチパネル2に形成されている配線の段差(図示しない)にも充分に追従することができる。
【0047】
表面保護パネルとタッチパネルとの層間、タッチパネルと偏光フィルムとの層間、及び、タッチパネルを構成する複数の透明導電フィルムの層間、ガラス板と透明導電フィルムの層間、ガラス板とガラス板との層間、ガラス板と偏光フィルムとの層間、基板とガラス板との層間、基板と透明導電フィルムとの層間、基板と偏光フィルムとの層間からなる群から選択される少なくとも1種の層間が、本発明のタッチパネル用層間充填材料で充填されているタッチパネル積層体もまた、本発明の1つである。
上記表面保護パネルは特に限定されず、例えば、ガラス板、ポリカーボネート板、アクリル板等の、携帯情報端末、平面型又はフレキシブル画像表示装置等に通常使用されるものを用いることができる。
上記タッチパネルは特に限定されず、例えば、ITO膜等の複数の層を有するタッチパネル等の、携帯情報端末、平面型又はフレキシブル画像表示装置等に通常使用されるものを用いることができる。上記タッチパネルの構成は特に限定されず、例えば、アウトセル型、インセル型、オンセル型、カバーガラス一体型、カバーシート一体型等が挙げられる。
上記タッチパネルの方式も特に限定されず、例えば、抵抗膜式、静電容量式、光学式、超音波式等が挙げられる。
上記偏光フィルムとしても特に限定されず、携帯情報端末、平面型又はフレキシブル画像表示装置等に通常使用されるものを用いることができる。
【0048】
本発明のタッチパネル用層間充填材料を用いて、表面保護パネルとタッチパネルとの層間、タッチパネルと偏光フィルムとの層間、及び、タッチパネルを構成する複数の透明導電フィルムの層間からなる群から選択される少なくとも1種の層間を充填して積層体を製造する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、携帯情報端末の製造等においてタッチパネルと他の部材との層間又はタッチパネルを構成する複数の透明導電フィルムの層間を充填するために用いられ、表面保護パネルやガラス基板に割れや破損が生じにくく、かつ、色むらのないタッチパネル積層体を得ることができるタッチパネル用層間充填材料、及び、該タッチパネル用層間充填材料を用いて製造されたタッチパネル積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明のタッチパネル用層間充填材料の使用方法の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0052】
<ポリビニルブチラールの調製>
攪拌装置を備えた反応機に、イオン交換水2700mL、平均重合度1800、鹸化度99.3モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35重量%塩酸を、塩酸濃度が0.2重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド(n−BA)21gを添加した。その後、n−ブチルアルデヒド(n−BA)145gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。析出してから15分後に、35重量%塩酸を、塩酸濃度が1.8重量%になるように添加し、50℃に加熱し、50℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール1(PVB1)を得た。
得られたPVB1は、平均重合度1700、水酸基量31.3モル%、アセチル基量0.7モル%、ブチラール化度(Bu化度)68.0モル%であった。
【0053】
更に、原料となるポリビニルアルコールを選択し、ブチラール化の条件を整えて、ポリビニルブチラール2(PVB2)〜ポリビニルブチラール5(PVB5)を調製した。
得られた各ポリビニルブチラールについて、表1に示した。
【0054】
【表1】
【0055】
(実施例1)
PVB2の100.0重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)25重量部を添加し、充分に混練してタッチパネル用層間充填材料を得た。
【0056】
2枚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの間に配置された型枠(縦2cm×横12cm×厚み0.2mm)内に、得られたタッチパネル用層間充填材料2gを置き、温度150℃、プレス圧0kg/cmで10分間予熱した後、80kg/cmで15分間、プレスした。次いで、予め20℃に設定したハンドプレス機に移し、10MPaで10分間プレスすることにより冷却した。冷却後、一方のPETフィルムを剥離し、恒温恒湿室(湿度30%(±3%)、温度23℃)で24時間保管した。得られたシートを切り抜いて、初期寸法が10mm幅×約100mm長×厚さ約0.2mmの短冊状の測定試料を得た。
【0057】
得られた測定用試料について、JIS K 6263:2004に準拠する方法により、25℃での2分後残留応力Kpa(25℃、2min)と、25℃での2分後応力緩和率を測定した。即ち、測定試料を初期チャック間隔50mmでチャック間に固定して、25℃の恒温層に投入し、温度が安定した後、テンシロンRTC(オリエンテック社製)を用いて500mm/minの速度で5mm引っ張った後クロスヘッドが停止するように設定し、引張開始から0.5秒毎に応力を収集し、最大応力、引張開始後2分後のデータを読み取り、25℃での2分後残留応力Kpa(25℃、2min)と、25℃での2分後応力緩和率を求めた。
【0058】
(実施例2〜6、比較例1)
ポリビニルブチラールの種類及び可塑剤の含有量を表2のようにした以外は、実施例1と同様にしてタッチパネル用層間充填材料を調製し、残留応力及び応力緩和率を測定した。
【0059】
(実施例7)
PVB1の100重量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)35重量部、反応性希釈剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPA)30重量部を添加し、充分に攪拌・混合して混合組成物を得た。この混合組成物に、反応性希釈剤100重量部に対して、光重合開始剤としてベンゾフェノン(BP)1重量部を充分に混合してタッチパネル用層間充填材料を得た。
得られたタッチパネル用層間充填材料について、実施例1と同様の方法により残留応力及び応力緩和率を測定した。なお、残留応力及び応力緩和率を測定は、タッチパネル用層間充填材料に光を照射することなく行った。
【0060】
(実施例8〜14、比較例2)
組成を表3のようにした以外は、実施例7と同様にしてタッチパネル用層間充填材料を調製し、残留応力及び応力緩和率を測定した。
なお、表3において3EGAは、トリエチレングリコールジアクリレートを、TMPMAは、トリメチロールプロパントリメタクリレートを表す。
【0061】
(比較例3)
(1)アクリル共重合体の調製
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート65.0重量部、メチルメタクリレート26.0重量部、エチルアクリレート4.0重量部、ヒドロキシエチルアクリレート1.0重量部、アクリル酸4.0重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2重量部とを酢酸エチル100重量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合してアクリル共重合体を得た。
得られたアクリル共重合体をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過し、測定サンプルを調製した。この測定サンプルをゲルパーミエーションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、アクリル共重合体のポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量(Mw)を求めた。得られたアクリル共重合体の重量平均分子量は65万であった。
カラムとしてはGPC LF−804(昭和電工社製)を用い、検出器としては示差屈折計を用いた。
【0062】
(2)タッチパネル用層間充填材料の調製
得られたアクリル共重合体100重量部を酢酸エチルで希釈し樹脂固形分45%の粘着剤溶液を得た。上記粘着剤溶液100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製コロネートL−45、固形分45%)を1重量部添加し15分攪拌後、厚み50μmの離型PETフィルムの離型処理面に乾燥後の厚さが200μmになるように塗工して、80℃で15分間乾燥した。更に得られた粘着剤層の上に、離型処理面が粘着剤層に接するようにして新たに用意した離型PETフィルムを重ね合わせて積層体を得た。その後シートを23℃で5日間養生し、離型PETフィルムが両面に貼り付けられたタッチパネル用層間充填材料(厚み200μm)を得た。
得られたタッチパネル用層間充填材料について、実施例1と同様にして残留応力及び応力緩和率を測定した。
【0063】
(評価)
実施例及び比較例で得られたタッチパネル用層間充填材料について、以下の方法により評価を行った。結果を表2及び表3に示した。
なお、表において、光重合開始剤の部数は反応性希釈剤100重量部に対する値である。
【0064】
(1)耐衝撃性の評価
10cm×7.0cm、厚み0.7mmの強化ガラス上に、タッチパネル用層間充填材料を貼付し、さらにタッチパネル用層間充填材料のもう一方の面を、表面にコロナ処理を施した10cm×7.0cm、厚み3mmのポリカーボネート板に貼付し、強化ガラス/タッチパネル用層間充填材料/ポリカーボネート構成体を作製した。この積層体を75℃、0.5MPaのオートクレーブで30分処理した。
なお、実施例7〜11、比較例2については、この構成体に、超高圧水銀灯を用いて、365nmの波長の光を4000mJ/cm照射した。
【0065】
得られた積層体を、ステンレス製の枠状体(内径60cm×90cm)に固定し、23℃の環境下で、その中央部に対して133gの鉄球を155cmの高さから落下させた。落下後の積層体について、割れがなかった場合を「○」、割れがあった場合を「×」と評価した。
【0066】
(2)色むらの評価
76mm×52mm、厚み1.1mmの白板ガラス(松浪硝子社製S9112)に、外枠76mm×52mm、内枠56mm×32mmの額縁状の片面粘着剤を貼付し、厚み25μmの段差を形成した。
タッチパネル用層間充填材料を76mm×52mmにカットし、白板ガラスの段差面に貼付し、この構成体を75℃で2秒間保持するプレラミネーションを行った。その後、液晶モジュール(マイクロソフト社製NEXUS7用液晶モジュール)の偏光板面に、75℃、100Paの条件下で真空ラミネーターを用いて貼付した。更にその後オートクレーブ中で75℃、0.5MPaの条件で30分間加熱圧着し、評価サンプルを得た。
得られた評価サンプルにおいて、液晶画面全体が均一な輝度と色度となるように白色点灯させ、得られた積層体を目視にて観察し、段差部分の周辺に色むら(黄変)が認められなかった場合を「○」と、段差部分の周辺に色むら(黄変)が認められた場合を「×」と評価した。更に、段差の高さを35μm、40μmと変化させて同様の評価を行った。
【0067】
(3)接着力の評価
タッチパネル用層間充填材料を25mm×100mmにカットし、ガラスに貼合した。プラズマ処理を施したPETフィルム(25mm×100mm)を貼合し、25℃で真空ラミネートした後、オートクレーブ中で75℃、0.5MPa条件で30分間加熱圧着し、評価サンプルを得た。得られた評価サンプルを用いて、JIS K 6854:1994年 に準拠して300mm/分で180°ピール試験を行い、剥離強度を測定した。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、携帯情報端末の製造等においてタッチパネルと他の部材との層間又はタッチパネルを構成する複数の透明導電フィルムの層間を充填するために用いられ、表面保護パネルやガラス基板に割れや破損が生じにくく、かつ、色むらのないタッチパネル積層体を得ることができるタッチパネル用層間充填材料、及び、該タッチパネル用層間充填材料を用いて製造されたタッチパネル積層体を提供することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 本発明のタッチパネル用層間充填材料
2 タッチパネル
3 表面保護パネル
4 偏光フィルム
5 加飾印刷部

【要約】
本発明は、携帯情報端末の製造等においてタッチパネルと他の部材との層間又はタッチパネルを構成する複数の透明導電フィルムの層間を充填するために用いられ、表面保護パネルやガラス基板に割れや破損が生じにくく、かつ、色むらのないタッチパネル積層体を得ることができるタッチパネル用層間充填材料、及び、該タッチパネル用層間充填材料を用いて製造されたタッチパネル積層体を提供することを目的とする。
本発明は、タッチパネルと他の部材との層間又は前記タッチパネルを構成する複数の透明導電フィルムの層間、ガラス板と透明導電フィルムの層間、ガラス板とガラス板との層間、ガラス板と偏光フィルムとの層間、基板とガラス板との層間、基板と透明導電フィルムとの層間、基板と偏光フィルムとの層間を充填するために用いられるタッチパネル用層間充填材料であって、ポリビニルアセタールと可塑剤を含有し、25℃での2分後残留応力Kpa(25℃、2min)が300kPa以下であるタッチパネル用層間充填材料である。
図1