(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の表皮材では、車輌の座席シート用表皮材としては、細幅織物の装飾部やパイピング部材の玉縁部の強度が不十分である上に、耐摩耗性が不十分であり、使用により毛羽立ちが多くなってくるという問題があったし、前記装飾部や玉縁部が表面耐久性に劣っていて、使用により糸の飛び出しや繊維の切断が目立ってくるという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、装飾部(玉縁部)が強度、表面耐久性および耐摩耗性に優れている、車輌の座席シート用表皮材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1]第1布帛と、第2布帛と、細幅織物とを備え、
前記細幅織物は、略矩形状の装飾部と、該装飾部の幅方向の一方の端縁に連接された略矩形状の第1縫い代部と、前記装飾部の幅方向の他方の端縁に連接された略矩形状の第2縫い代部と、を含み、
前記細幅織物の第1縫い代部に前記第1布帛の端部が重ね合わされて縫合され、
前記細幅織物の第2縫い代部に前記第2布帛の端部が重ね合わされて縫合され、
前記細幅織物の装飾部は、該装飾部の長さ方向に延ばされた中空の袋組織部と、該袋組織部の内部に配置された1ないし複数本の組紐と、前記袋組織部の内部に配置された1ないし複数本の挿入糸と、を含む玉縁部を1ないし複数条含み、
前記挿入糸は、前記組紐よりも細い糸であり、
前記袋組織部を構成する経糸の少なくとも一部が熱融着糸であることを特徴とする車輌の座席シート用表皮材。
【0011】
[2]第1布帛と、第2布帛と、細幅織物とを備え、
前記細幅織物は、略矩形状の装飾部と、該装飾部の幅方向の一方の端縁に連接された略矩形状の第1縫い代部と、前記装飾部の幅方向の他方の端縁に連接された略矩形状の第2縫い代部と、を含み、
前記細幅織物の第1縫い代部に前記第1布帛の端部が重ね合わされて縫合され、
前記細幅織物の第2縫い代部に前記第2布帛の端部が重ね合わされて縫合され、
前記細幅織物の装飾部は、該装飾部の長さ方向に延ばされた中空の袋組織部と、該袋組織部の内部に配置された1ないし複数本の組紐と、前記袋組織部の内部に配置された1ないし複数本の挿入糸と、を含む玉縁部を1ないし複数条含み、
前記挿入糸は、前記組紐よりも細い糸であり、
前記袋組織部を構成する緯糸の少なくとも一部が熱融着糸であることを特徴とする車輌の座席シート用表皮材。
【0012】
[3]第1布帛と、第2布帛と、細幅織物とを備え、
前記細幅織物は、略矩形状の装飾部と、該装飾部の幅方向の一方の端縁に連接された略矩形状の第1縫い代部と、前記装飾部の幅方向の他方の端縁に連接された略矩形状の第2縫い代部と、を含み、
前記細幅織物の第1縫い代部に前記第1布帛の端部が重ね合わされて縫合され、
前記細幅織物の第2縫い代部に前記第2布帛の端部が重ね合わされて縫合され、
前記細幅織物の装飾部は、該装飾部の長さ方向に延ばされた中空の袋組織部と、該袋組織部の内部に配置された1ないし複数本の組紐と、前記袋組織部の内部に配置された1ないし複数本の熱融着糸と、を含む玉縁部を1ないし複数条含むことを特徴とする車輌の座席シート用表皮材。
【0013】
[4]前記組紐は、丸打紐である前項1〜3のいずれか1項に記載の車輌の座席シート用表皮材。
【0014】
[5]前記袋組織部の内部に該袋組織部1個あたり1本〜60本の組紐が配置されている前項1〜4のいずれか1項に記載の車輌の座席シート用表皮材。
【0015】
[6]前記組紐の太さは、3000デシテックス〜14000デシテックスである前項1〜5のいずれか1項に記載の車輌の座席シート用表皮材。
【0016】
[7]前記挿入糸の太さは、33デシテックス〜1000デシテックスである前項1〜6のいずれか1項に記載の車輌の座席シート用表皮材。
【0017】
[8]前記熱融着糸は、熱融着ポリアミド糸である前項1〜7のいずれか1項に記載の車輌の座席シート用表皮材。
【0018】
[9]前記熱融着糸の太さは、33デシテックス〜330デシテックスである前項1〜8のいずれか1項に記載の車輌の座席シート用表皮材。
【0019】
[10]第1布帛と、第2布帛と、装飾用パイピング部材とを備え、
前記装飾用パイピング部材は、略矩形状の縫い代部と、該縫い代部の幅方向の端部に連接された筒状部と、該筒状部の内部に配置された1ないし複数本の組紐と、前記筒状部の内部に配置された1ないし複数本の挿入糸と、を含み、
前記挿入糸は、前記組紐よりも細い糸であり、
前記筒状部を構成する経糸の少なくとも一部が熱融着糸であり、
前記第1布帛の端部と前記第2布帛の端部との間に、前記装飾用パイピング部材の縫い代部が挟み込まれてこれらが重ね合わされた状態で縫合されていることを特徴とする車輌の座席シート用表皮材。
【0020】
[11]第1布帛と、第2布帛と、装飾用パイピング部材とを備え、
前記装飾用パイピング部材は、略矩形状の縫い代部と、該縫い代部の幅方向の端部に連接された筒状部と、該筒状部の内部に配置された1ないし複数本の組紐と、前記筒状部の内部に配置された1ないし複数本の挿入糸と、を含み、
前記挿入糸は、前記組紐よりも細い糸であり、
前記筒状部を構成する緯糸の少なくとも一部が熱融着糸であり、
前記第1布帛の端部と前記第2布帛の端部との間に、前記装飾用パイピング部材の縫い代部が挟み込まれてこれらが重ね合わされた状態で縫合されていることを特徴とする車輌の座席シート用表皮材。
【0021】
[12]第1布帛と、第2布帛と、装飾用パイピング部材とを備え、
前記装飾用パイピング部材は、略矩形状の縫い代部と、該縫い代部の幅方向の端部に連接された筒状部と、該筒状部の内部に配置された1ないし複数本の組紐と、前記筒状部の内部に配置された1ないし複数本の熱融着糸と、を含み、
前記第1布帛の端部と前記第2布帛の端部との間に、前記装飾用パイピング部材の縫い代部が挟み込まれてこれらが重ね合わされた状態で縫合されていることを特徴とする車輌の座席シート用表皮材。
【0022】
[13]前記組紐は、丸打紐である前項10〜12のいずれか1項に記載の車輌の座席シート用表皮材。
【0023】
[14]前記筒状部の内部に前記組紐が1本〜60本配置されている前項10〜13のいずれか1項に記載の車輌の座席シート用表皮材。
【0024】
[15]前記組紐の太さは、3000デシテックス〜14000デシテックスである前項10〜14のいずれか1項に記載の車輌の座席シート用表皮材。
【0025】
[16]前記挿入糸の太さは、33デシテックス〜1000デシテックスである前項10〜15のいずれか1項に記載の車輌の座席シート用表皮材。
【0026】
[17]前記熱融着糸は、熱融着ポリアミド糸である前項10〜16のいずれか1項に記載の車輌の座席シート用表皮材。
【0027】
[18]前記熱融着糸の太さは、33デシテックス〜330デシテックスである前項10〜17のいずれか1項に記載の車輌の座席シート用表皮材。
【発明の効果】
【0028】
[1]〜[3]の発明では、細幅織物は、幅方向の両端の縫い代部の間に、意匠等が付与された装飾部が配置されているので、細幅織物の装飾部が外観され得るものとなっており、座席シート用表皮材に意匠性(意匠のアクセント等)を付与できる。また、袋組織部の内部に1ないし複数本の組紐および1ないし複数本の挿入糸が配置されているから、袋組織部に適度なクッション性と強度を持たせることができる。
【0029】
[1]の発明では、袋組織部を構成する経糸の少なくとも一部が熱融着糸であるので、この熱融着糸が緯糸に融着しており、これにより袋組織部の強度、表面耐久性及び耐摩耗性を向上させることができる。
【0030】
[2]の発明では、袋組織部を構成する緯糸の少なくとも一部が熱融着糸であるので、この熱融着糸が経糸に融着しており、これにより袋組織部の強度、表面耐久性及び耐摩耗性を向上させることができる。
【0031】
[3]の発明では、袋組織部の内部に1ないし複数本の熱融着糸が配置されていて、該熱融着糸が袋組織部又は/及び組紐に融着しているので、袋組織部の強度、表面耐久性及び耐摩耗性を向上させることができる。[3]の発明において、熱融着糸は組紐よりも細い糸であるのが好ましい。
【0032】
[4]の発明では、組紐として丸打紐が用いられているから、袋組織部の断面形状を略半円形状や略楕円形状等にすることができて、より良好な着座感を得ることができる。
【0033】
[5]の発明では、袋組織部の内部に該袋組織部1個あたり1本〜60本の組紐が配置されているので、クッション性と適度な剛性を有するものとなり、強度をより向上させることができる。
【0034】
[6]の発明では、組紐の太さは、3000デシテックス〜14000デシテックスであり、3000デシテックス以上であることで袋組織部の強度を向上できると共に、14000デシテックス以下であることで袋組織部内部の隙間を密に埋めることができてクッション性の質感を向上できる。
【0035】
[7]の発明では、挿入糸の太さが、33デシテックス〜1000デシテックスの範囲であり、33デシテックス以上であることで座り心地性とクッション性を向上できると共に、1000デシテックス以下であることで袋組織部内部の隙間を密に埋めることができてクッション性の質感を向上できる。
【0036】
[8]の発明では、熱融着糸が熱融着ポリアミド糸であるから、熱融着糸の融着力(接合力)を高めることができて、表面耐久性及び耐摩耗性をさらに向上させることができる。
【0037】
[9]の発明では、熱融着糸の太さは、33デシテックス〜330デシテックスであるから、接合強度を向上させることができる。
【0038】
[10]〜[12]の発明では、第1布帛の端部と第2布帛の端部との間に装飾用パイピング部材の縫い代部が挟み込まれてこれらが重ね合わされた状態で縫合されているので、パイピング部材の筒状部(玉縁部)が外観され得るものとなっており、座席シート用表皮材に意匠性(意匠のアクセント等)を付与できる。また、筒状部の内部に1ないし複数本の組紐が配置されているから、袋組織部に適度なクッション性と強度を持たせることができる。
【0039】
[10]の発明では、筒状部を構成する経糸の少なくとも一部が熱融着糸であり、該熱融着糸が緯糸に融着しているので、筒状部(玉縁部)の強度、表面耐久性及び耐摩耗性を向上させることができる。
【0040】
[11]の発明では、筒状部を構成する緯糸の少なくとも一部が熱融着糸であり、該熱融着糸が経糸に融着しているので、筒状部(玉縁部)の強度、表面耐久性及び耐摩耗性を向上させることができる。
【0041】
[12]の発明では、筒状部の内部に1ないし複数本の熱融着糸が配置されていて、該熱融着糸が筒状部又は/及び組紐に融着しているので、筒状部(玉縁部)の強度、表面耐久性及び耐摩耗性を向上させることができる。[12]の発明において、熱融着糸は組紐よりも細い糸であるのが好ましい。
【0042】
[13]の発明では、組紐として丸打紐が用いられているから、筒状部(玉縁部)の断面形状を略半円形状や略楕円形状等にすることができて、より良好な着座感を得ることができる。
【0043】
[14]の発明では、筒状部の内部に1本〜60本の組紐が配置されているので、クッション性と適度な剛性を有するものとなり、強度をより向上させることができる。
【0044】
[15]の発明では、組紐の太さは、3000デシテックス〜14000デシテックスであり、3000デシテックス以上であることで筒状部の強度を向上できると共に、14000デシテックス以下であることで筒状部内部の隙間を密に埋めることができてクッション性の質感を向上できる。
【0045】
[16]の発明では、挿入糸の太さが、33デシテックス〜1000デシテックスの範囲であり、33デシテックス以上であることで座り心地性とクッション性を向上できると共に、1000デシテックス以下であることで筒状部内部の隙間を密に埋めることができてクッション性の質感を向上できる。
【0046】
[17]の発明では、熱融着糸が熱融着ポリアミド糸であるから、熱融着糸の融着力(接合力)を高めることができて、表面耐久性及び耐摩耗性をさらに向上させることができる。
【0047】
[18]の発明では、熱融着糸の太さは、33デシテックス〜330デシテックスであるから、接合強度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
第1発明の一実施形態(第1実施形態)に係る車輌の座席シート用表皮材1を車輌の座席シートに装着した状態を
図1に示す。また、この装着状態における一部断面図を
図3に示した。
【0050】
第1発明に係る車輌の座席シート用表皮材1は、第1布帛11と、第2布帛12と、細幅織物13とを少なくとも備えてなる(
図1、3参照)。
【0051】
前記細幅織物13は、略矩形状であり、
図2に示すように、略矩形状の装飾部2と、該装飾部2の幅方向の一方の端縁に連接された略矩形状の第1縫い代部3と、前記装飾部2の幅方向の他方の端縁に連接された略矩形状の第2縫い代部4と、を含む構成である。前記細幅織物(
図2に示す細幅織物)13は、1台の織機での製織によって、一体に製織されて形成されたものであり、無縫製、無裁断品である。
【0052】
前記細幅織物13の装飾部2は、該装飾部2の長さ方向に延ばされた中空の袋組織部(筒状部)6と、該袋組織部(筒状部)6の内部に配置された芯材部5と、を含む玉縁部7を1ないし複数条含む。本実施形態では、前記玉縁部7は、互いに平行状に配置された3条の玉縁部7B、7A、7Cからなる(
図2参照)。
【0053】
本実施形態では、前記装飾部2は、幅方向の中心部に配置された玉縁部7Aと、該玉縁部7Aを構成する筒状部6の幅方向の一方の側(左側)に連接された第1平布部8と、該第1平布部8の幅方向の外側(左側)に連接された玉縁部7Bと、前記玉縁部7Aを構成する筒状部6の幅方向の他方の側(右側)に連接された第2平布部9と、該第2平布部9の幅方向の外側(右側)に連接された玉縁部7Cと、を備えている。前記玉縁部7Bの更に幅方向の外側(左側)に前記第1縫い代部3が連接され、前記玉縁部7Cの更に幅方向の外側(右側)に前記第2縫い代部4が連接されている(
図2参照)。前記玉縁部7(筒状部6)の一部(上部)が、前記第1縫い代部3及び前記第2縫い代部4の表面位置よりも高くなっている(突出している)。
【0054】
本実施形態では、前記芯材部5は、前記袋組織部(筒状部)6の内部に配置された組紐5Bと、前記袋組織部(筒状部)6の内部に配置された挿入糸5Aと、を含む構成である(
図4参照)。前記挿入糸5Aは、前記組紐5Bよりも細い糸である。また、前記袋組織部(筒状部)6を構成する経糸15の少なくとも一部が熱融着糸16で構成されている(
図4参照)。この熱融着糸16が緯糸17に融着しているので、袋組織部6の上面の強度及び表面耐久性を向上させることができる。本実施形態では、前記袋組織部(筒状部)6の内部に複数本の組紐5Bおよび複数本の挿入糸5Aが配置されている。
【0055】
本実施形態では、前記装飾部2の意匠は、
図2に示すように、第1平布部8及び第2平布部9が、第1、2縫い代部3、4および筒状部6の色と異なる異色部になっている。このように、本実施形態では、前記装飾部2の意匠は、2条の異色部8、9が平行状に配列された構成を含むものであるが、これは一例を示したものに過ぎず、特にこのような構成に限定されるものではない。即ち、前記装飾部2の意匠は、
図2に示すものに特に限定されるものではなく、どのような意匠でも採用できる。例えば、前記装飾部2の意匠は、模様のない単なる単色地(例えば赤色地)であってもよいし、模様のある複色地であってもよい。また、前記装飾部2には、例えば、装飾部の長さ方向において意匠の存在しない領域が1ないし複数設けられていてもよい。
【0056】
しかして、前記第1布帛11の一端部が第1布帛11の裏面側に折り返された第1折り返し部11a(
図3参照)が、前記細幅織物13の第1縫い代部3の上面に重ね合わされ、この重ね合わされた状態で前記第1折り返し部11aと前記細幅織物13の第1縫い代部3とが第1縫合糸21で縫合され(
図3参照)、この縫合された第1折り返し部11aの上に第1布帛(第1折り返し部を除く)11が配置されている(
図3参照)。
【0057】
また、前記第2布帛12の一端部が第2布帛12の裏面側に折り返された第2折り返し部12a(
図3参照)が、前記細幅織物13の第2縫い代部4の上面に重ね合わされ、この重ね合わされた状態で前記第2折り返し部12aと前記細幅織物13の第2縫い代部4とが第2縫合糸22で縫合され(
図3参照)、この縫合された第2折り返し部12aの上に第2布帛(第2折り返し部を除く)12が配置されている(
図3参照)。
【0058】
上記構成に係る車輌の座席シート用表皮材1では、細幅織物13において、幅方向の両端の縫い代部3、4の間に、意匠等が付与された装飾部2が配置されているので、座席シート用表皮材1に意匠性(意匠のアクセント等)を付与できる。
【0059】
使用時には、前記座席シート用表皮材1が、例えば、座席クッション体20の表面を被覆する状態に装着される(配置される)(
図3参照)。こうして車輌の座席シートが構成される(
図1参照)。前記装着された自動車座席シート用表皮材1において、前記装飾部2の上面が外観されるものとなっている(
図1、3参照)。
【0060】
なお、上記実施形態では、第1布帛11に第1折り返し部11aが形成されて該第1折り返し部11aが、細幅織物13の第1縫い代部3に縫合された構成(
図3参照)が採用されているが、特にこのような形態に限定されるものではなく、例えば、第1布帛11の端部(折り返されていない状態の端部)が、細幅織物13の第1縫い代部3に重ね合わされて縫合された構成を採用してもよい。
【0061】
同様に、上記実施形態では、第2布帛12に第2折り返し部12aが形成されて該第2折り返し部12aが、細幅織物13の第2縫い代部4に縫合された構成(
図3参照)が採用されているが、特にこのような形態に限定されるものではなく、例えば、第2布帛12の端部(折り返されていない状態の端部)が、細幅織物13の第2縫い代部4に重ね合わされて縫合された構成を採用してもよい。
【0062】
上記実施形態では、前記第1布帛11は、表皮材1のうちの左側サイド材を構成する布帛であり、前記第2布帛12は、表皮材1のうちの右側サイド材を構成する布帛であるが、これはその一例を示したものに過ぎず、特にこのような構成に限定されるものではない。
【0063】
また、上記実施形態では、本発明の表皮材1が、座席シートにおける背当て部の上部および座部の前部(太ももが接触する部位)に使用されているが、使用箇所は、特にこのような部位に限定されるものではない。
【0064】
図5に、前記細幅織物13の玉縁部7の他の実施形態(第2実施形態)を模式的に示す。この第2実施形態は、細幅織物13は、略矩形状であり、略矩形状の装飾部2と、該装飾部2の幅方向の一方の端縁に連接された略矩形状の第1縫い代部3と、前記装飾部2の幅方向の他方の端縁に連接された略矩形状の第2縫い代部4と、を含む構成である点は、前記第1実施形態と同様である(
図2参照)。また、前記第1実施形態と同様に、前記芯材部5は、前記袋組織部(筒状部)6の内部に配置された組紐5Bと、前記袋組織部(筒状部)6の内部に配置された挿入糸5Aと、を含む構成である(
図5参照)。前記挿入糸5Aは、前記組紐5Bよりも細い糸である(
図5参照)。そして、この第2実施形態では、前記袋組織部(筒状部)6を構成する緯糸17の少なくとも一部が熱融着糸18で構成されている(
図5参照)。この熱融着糸18が経糸15に融着しているので、袋組織部(筒状部)6の強度及び表面耐久性を向上させることができる。この第2実施形態においても前記袋組織部(筒状部)6の内部に複数本の組紐5Bおよび複数本の挿入糸5Aが配置されている(
図5参照)。
【0065】
図6に、前記細幅織物13の玉縁部7のさらに他の実施形態(第3実施形態)を模式的に示す。この第3実施形態は、細幅織物13は、略矩形状であり、略矩形状の装飾部2と、該装飾部2の幅方向の一方の端縁に連接された略矩形状の第1縫い代部3と、前記装飾部2の幅方向の他方の端縁に連接された略矩形状の第2縫い代部4と、を含む構成である点は、前記第1実施形態と同様である(
図2参照)。そして、この第3実施形態では、前記芯材部5は、前記袋組織部(筒状部)6の内部に配置された組紐5Bと、前記袋組織部6の内部に配置された熱融着糸5Cと、を含む構成である(
図6参照)。前記熱融着糸5Cは、前記組紐5Bよりも細い糸であるのが好ましい(
図6参照)。この第3実施形態では、前記熱融着糸5Cが、袋組織部6又は/及び組紐5Bに融着しているので、袋組織部(筒状部)6の強度及び表面耐久性を向上させることができる。この第3実施形態において、前記袋組織部6の内部に複数本の組紐5Bおよび複数本の熱融着糸5Cが配置されている(
図6参照)。
【0066】
前記第1発明において、前記細幅織物13の幅Wは、15mm〜100mmに設定されるのが好ましい(
図2参照)。15mm以上であることで、十分な縫合強度を確保できると共に十分な意匠性を確保できる。また、100mm以下であることで良好な生産効率を維持できる。中でも、前記細幅織物13の幅Wは、20mm〜50mmに設定されるのがより好ましく、33mm〜35mmに設定されるのが特に好ましい。
【0067】
前記第1発明において、前記組紐5Bとしては、特に限定されるものではないが、例えば、丸打紐、角打紐、平打紐などが挙げられる。中でも、前記組紐5Bとしては丸打紐を用いるのが好ましい。前記組紐5Bの太さは、3000デシテックス〜14000デシテックスであるのが好ましい。3000デシテックス以上であることで袋組織部の強度を向上できると共に、14000デシテックス以下であることで袋組織部内部の隙間を密に埋めることができてクッション性の質感を向上できる。中でも、前記組紐5Bの太さは、5000デシテックス〜8000デシテックスであるのが特に好ましい。
【0068】
前記袋組織部6の内部に該袋組織部1個あたり1本〜60本の組紐5Bが配置されているのが好ましい。1本以上とすることで袋組織部6の強度と剛性を向上できるし、60本以下とすることで袋組織部6の断面形状を略半円形や略楕円形にすることが容易にできて着座感をより向上できる。中でも、前記袋組織部6の内部に該袋組織部1個あたり3本〜6本の組紐が配置された構成を採用するのが特に好ましい。
【0069】
前記挿入糸5Aの太さは、33デシテックス〜1000デシテックスであるのが好ましい。33デシテックス以上であることで座り心地性とクッション性を向上できると共に、1000デシテックス以下であることで袋組織部内部の隙間を密に埋めることができてクッション性の質感を向上できる。
【0070】
前記熱融着糸5C、16、18としては、特に限定されるものではないが、例えば、芯糸の周囲に熱融着糸が捲回されてなる捲回複合糸等が挙げられる。前記芯糸としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル糸等が挙げられる。また、前記熱融着糸としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド糸、ポリエステル糸等が挙げられる。前記熱融着糸の融点は、80℃〜150℃であるのが好ましい。前記熱融着糸を融着させるための融着処理方法としては、例えば、室熱式、直接式等が挙げられる。前記室熱式は、ボックス乾燥機と呼ばれる加工機内で加熱処理する方法であり、加熱処理温度は通常は80℃〜240℃の範囲に設定される。前記直接式は、ドラム乾燥機と呼ばれる加工機で加熱処理する方法であり、加熱処理温度は通常は80℃〜150℃の範囲に設定される。
【0071】
前記熱融着糸5C、16、18の太さは、33デシテックス〜330デシテックスであるのが好ましい。33デシテックス以上であることで接合強度及び耐摩耗性を向上できると共に、330デシテックス以下であることで硬くなり過ぎることなく適度な剛性を確保できる。
【0072】
前記第1発明において、前記袋組織部(筒状部)6の組織形態としては、特に限定されるものでないが、例えば、袋織(経糸を表裏で上下分散させ袋状に織った組織)等が挙げられる。
【0073】
前記縫い代部3、4の組織形態としては、特に限定されるものでないが、例えば、平織、綾織、朱子織等が挙げられる。中でも、前記縫い代部3、4の組織形態は、綾織であるのが好ましい。
【0074】
また、前記平布部8、9を設けた構成を採用する場合において、平布部8、9の組織形態としては、特に限定されるものでないが、例えば、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。
【0075】
前記第1布帛11および前記第2布帛12としては、特に限定されるものでないが、例えば、ドビー織物(ポリエステル繊維製ドビー織物等)、ジャカード織物(ポリエステル繊維製ジャカード織物等)、トリコット(ポリエステル繊維製トリコット等)、丸編地(ポリエステル繊維製丸編地等)、ラッセル生地(ポリエステル繊維製ラッセル生地等)などが挙げられる。
【0076】
前記縫合に用いる縫合糸21、22としては、特に限定されるものでないが、例えば、ポリエステル紡績糸等が挙げられる。前記縫合糸21、22の太さは、4番〜12番であるのが好ましい。
【0077】
次に、第2発明に係る車輌の座席シート用表皮材について説明する。第2発明の一実施形態(第1実施形態)に係る車輌の座席シート用表皮材31を車輌の座席シートに装着した状態を
図7に示す。この装着状態における一部断面図を
図10に示す。
【0078】
第2発明に係る車輌の座席シート用表皮材31は、第1布帛41と、第2布帛42と、装飾用パイピング部材43とを少なくとも備えてなる(
図7〜10)。
【0079】
前記装飾用パイピング部材43は、
図8に示すように、略矩形状の縫い代部33と、前記縫い代部33の幅方向の端部に連接された筒状部34と、該筒状部34の内部空間に配置された芯材部35とを含む構成である。前記芯材部35及び前記筒状部34で玉縁部37が形成されている(
図8参照)。なお、前記筒状部34の意匠としては、特に限定されるものではなく、どのような意匠でも採用できる。
【0080】
前記装飾用パイピング部材13は、1台の織機での製織によって、一体に製織されて形成されたものであり、無縫製、無裁断品である。前記筒状部34も織組織で形成されている。
【0081】
本実施形態では、前記芯材部35は、前記筒状部34の内部に配置された組紐35Bと、前記筒状部34の内部に配置された挿入糸35Aと、を含む構成である(
図11参照)。前記挿入糸35Aは、前記組紐35Bよりも細い糸である。また、前記筒状部34を構成する経糸45の少なくとも一部が熱融着糸46で構成されている(
図11参照)。この熱融着糸46が緯糸47に融着しているので、筒状部34の強度及び表面耐久性を向上させることができる。本第1実施形態では、前記筒状部34の内部に複数本の組紐35Bおよび複数本の挿入糸35Aが配置されている(
図11参照)。
【0082】
しかして、前記第1布帛41の端部と、前記第2布帛42の端部との間に、装飾用パイピング部材43の縫い代部33が挟み込まれて、第1布帛の端部、縫い代部33、第2布帛の端部の順に重ね合わされた状態で縫合される(
図9参照)。
図9において、49は、縫合予定部であり、本実施形態では、相互に離間して平行状に配置された2本の縫合予定部(縫合予定線)49が存在する(
図9参照)。
【0083】
前記2本の縫合予定部(縫合予定線)49において縫合が行われることによって縫合部50が形成されて(
図10参照)、車輌の座席シート用表皮材31が得られる。この表皮材31が、座席クッション体40の表面を被覆する状態に装着される(配置される)(
図7参照)。こうして車輌の座席シートが構成される。
【0084】
前記自動車座席シート用表皮材31において、前記装飾用パイピング部材43の筒状部34(玉縁部37)の一部が外観されるものとなっている(
図7、10参照)。前記装飾用パイピング部材43における筒状部34(玉縁部37)は、
図7に示すように線状(ライン状)に外観されるので、例えば筒状部34を前記第1、2布帛41、42と異なる色に設計しておくことにより、この外観される筒状部34(玉縁部37)が意匠のアクセントになって優れた意匠性を付与することができる。本実施形態では、前記第1布帛41は、表皮材31のうちのサイド材を構成する布帛であり、前記第2布帛42は、表皮材31のうちのメイン材(座部又は背部)を構成する布帛であるが、これはその一例を示したものに過ぎず、特にこのような構成に限定されるものではない。また、本実施形態では、
図9、10に示すように、前記玉縁部37(筒状部34)の一部(上部)が、前記第1、2布帛41、42の表面位置よりも高くなっている(突出している)。
【0085】
図12に、前記装飾用パイピング部材43の他の実施形態(第2実施形態)を模式的に示す。この第2実施形態は、装飾用パイピング部材13は、略矩形状の縫い代部33と、前記縫い代部33の幅方向の端部に連接された筒状部34と、該筒状部34の内部空間に配置された芯材部35とを含む構成である点は、前記第1実施形態と同様である(
図8参照)。前記芯材部35及び前記筒状部34で玉縁部37が形成されている(
図8、9参照)。また、前記第1実施形態と同様に、前記芯材部35は、前記筒状部34の内部に配置された組紐35Bと、前記筒状部34の内部に配置された挿入糸35Aと、を含む構成である(
図12参照)。前記挿入糸35Aは、前記組紐35Bよりも細い糸である(
図12参照)。そして、この第2実施形態では、前記筒状部34を構成する緯糸47の少なくとも一部が熱融着糸48で構成されている(
図12参照)。この熱融着糸48が経糸45に融着しているので、筒状部34の強度及び表面耐久性を向上させることができる。この第2実施形態においても前記筒状部34の内部に複数本の組紐35Bおよび複数本の挿入糸35Aが配置されている(
図12参照)。
【0086】
図13に、前記装飾用パイピング部材43のさらに他の実施形態(第3実施形態)を模式的に示す。この第3実施形態は、装飾用パイピング部材13は、略矩形状の縫い代部33と、前記縫い代部33の幅方向の端部に連接された筒状部34と、該筒状部34の内部空間に配置された芯材部35とを含む構成である点は、前記第1実施形態と同様である(
図8参照)。前記芯材部35及び前記筒状部34で玉縁部37が形成されている(
図8、9参照)。そして、この第3実施形態では、前記芯材部35は、前記筒状部34の内部に配置された組紐35Bと、前記筒状部34の内部に配置された熱融着糸35Cと、を含む構成である(
図13参照)。前記熱融着糸35Cは、前記組紐35Bよりも細い糸であるのが好ましい(
図13参照)。この第3実施形態では、前記熱融着糸35が筒状部34又は/及び組紐35Bに融着しているので、筒状部34の強度及び表面耐久性を向上させることができる。この第3実施形態において、前記筒状部34の内部に複数本の組紐35Bおよび複数本の熱融着糸35Cが配置されている(
図13参照)。
【0087】
前記第2発明において、前記組紐35Bとしては、特に限定されるものではないが、例えば、丸打紐、角打紐、平打紐などが挙げられる。中でも、前記組紐35Bとしては丸打紐を用いるのが好ましい。前記組紐35Bの太さは、3000デシテックス〜14000デシテックスであるのが好ましい。3000デシテックス以上であることで筒状部34の強度を向上できると共に、14000デシテックス以下であることで筒状部34の内部の隙間を密に埋めることができてクッション性の質感を向上できる。中でも、前記組紐35Bの太さは、5000デシテックス〜8000デシテックスであるのが特に好ましい。
【0088】
前記筒状部34の内部に前記組紐35Bが1本〜60本配置された構成が好ましい。1本以上とすることで筒状部34の強度と剛性を向上できるし、60本以下とすることで筒状部34の断面形状を略半円形や略楕円形にすることが容易にできて着座感をより向上できる。中でも、前記筒状部34の内部に前記組紐35Bが3本〜6本配置されているのが特に好ましい。
【0089】
前記挿入糸35Aの太さは、33デシテックス〜1000デシテックスであるのが好ましい。33デシテックス以上であることで座り心地性とクッション性を向上できると共に、1000デシテックス以下であることで筒状部34の内部の隙間を密に埋めることができてクッション性の質感を向上できる。
【0090】
前記第2発明において、熱融着糸35C、46、48としては、特に限定されるものではないが、例えば、芯糸の周囲に熱融着糸が捲回されてなる捲回複合糸等が挙げられる。前記芯糸としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル糸等が挙げられる。また、前記熱融着糸としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド糸、ポリエステル糸等が挙げられる。前記熱融着糸の融点は、80℃〜150℃であるのが好ましい。前記熱融着糸を融着させるための融着処理方法としては、例えば、室熱式、直接式等が挙げられる。前記室熱式は、ボックス乾燥機と呼ばれる加工機内で加熱処理する方法であり、加熱処理温度は通常は80℃〜240℃の範囲に設定される。前記直接式は、ドラム乾燥機と呼ばれる加工機で加熱処理する方法であり、加熱処理温度は通常は80℃〜150℃の範囲に設定される。
【0091】
前記熱融着糸35C、46、48の太さは、33デシテックス〜330デシテックスであるのが好ましい。33デシテックス以上であることで接合強度、耐摩耗性を向上できると共に、330デシテックス以下であることで硬くなり過ぎることなく適度な剛性を確保できる。
【0092】
前記筒状部34の組織形態としては、特に限定されるものでないが、例えば、袋織(経糸を表裏で上下分散させ袋状に織った組織)等が挙げられる。
【0093】
前記縫い代部33の組織形態としては、特に限定されるものでないが、例えば、平織、綾織、朱子織等が挙げられる。中でも、前記縫い代部33の組織形態は、平織であるのが好ましい。前記縫い代部33の幅Vは、5mm〜100mmに設定されるのが好ましい(
図8参照)。中でも、前記縫い代部33の幅Vは、7mm〜50mmに設定されるのが特に好ましい。
【0094】
前記第1布帛41および前記第2布帛42としては、特に限定されるものでないが、例えば、ドビー織物(ポリエステル繊維製ドビー織物等)、ジャカード織物(ポリエステル繊維製ジャカード織物等)、トリコット(ポリエステル繊維製トリコット等)、丸編地(ポリエステル繊維製丸編地等)、ラッセル生地(ポリエステル繊維製ラッセル生地等)が挙げられる。
【0095】
前記縫合に用いる縫合糸50としては、特に限定されるものでないが、例えば、ポリエステル紡績糸等が挙げられる。前記縫合糸50の太さは、4番〜12番であるのが好ましい。
【実施例】
【0096】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0097】
<実施例1>
下記設計、条件で製織を行った後、130℃で3分間加熱を行うことによって、玉縁部7が
図4に示す模式的断面構造を備えた
図2に示す細幅織物13を得た。
【0098】
織機:細巾ニードル織機
経密度:269本/2.54cm
緯密度:138本/2.54cm
経糸(袋組織部;筒状部):167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸の周囲に78デシテックスのポリアミド糸(熱融着糸;融点120℃)が捲回(撚糸;撚り回数200回/m)されてなる捲回複合糸192本
経糸(第1、2平布部):167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸96本および110デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸(撚糸;撚り回数300回/m)96本
経糸(第1、2縫い代部):167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸(撚糸;撚り回数300回/m)148本
緯糸:110デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸
組紐糸:6930デシテックスの組紐(210デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸33本)5本
挿入糸:110デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸60本
第1、2縫い代部の組織:朱子織
第1、2平布部の組織:綾織
袋組織部(筒状部)の組織:朱子組織
細幅織物の幅W:56mm。
【0099】
次に、
図3に示すように、ポリエステル繊維製ドビー織物からなる第1布帛11の端部の第1折り返し部11aを、細幅織物13の第1縫い代部3の上面に重ね合わせると共に、ポリエステル繊維製ドビー織物からなる第2布帛12の端部の第2折り返し部12aを、細幅織物13の第2縫い代部4の上面に重ね合わせ、この状態で第1折り返し部11aと細幅織物の第1縫い代部3とをポリエステル紡績糸(第1縫合糸)で縫合すると共に、第2折り返し部12aと細幅織物の第2縫い代部4とをポリエステル紡績糸(第2縫合糸)で縫合することによって、自動車座席シート用表皮材を得た。得られた自動車座席シート用表皮材を座席に装着した状態において細幅織物の装飾部2が外観されるものとなっている(
図1、3参照)。
【0100】
<
参考例
1>
下記設計、条件で製織を行った後、140℃で3.5分間加熱を行うことによって、玉縁部7が
図5に示す模式的断面構造を備えた
図2に示す細幅織物13を得た。
【0101】
織機:細巾ニードル織機
経密度:213本/2.54cm
緯密度:153本/2.54cm
経糸(袋組織部;筒状部):167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸(撚糸;撚り回数200回/m)61本
経糸(第1、2平布部):110デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸(撚糸;撚り回数300回)110本
経糸(第1、2縫い代部):110デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸(撚糸;撚り回数300回/m)82本
緯糸:167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸の周囲に78デシテックスのポリアミド糸(熱融着糸;融点120℃)が捲回(撚糸;撚り回数200回/m)されてなる捲回複合糸192本
組紐糸:6930デシテックスの組紐(210デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸33本)5本
挿入糸:110デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸60本
第1、2縫い代部の組織:朱子織
第1、2平布部の組織:綾織
袋組織部(筒状部)の組織:朱子組織
細幅織物の幅W:46mm。
【0102】
次に、
図3に示すように、ポリエステル繊維製ドビー織物からなる第1布帛11の端部の第1折り返し部11aを、細幅織物13の第1縫い代部3の上面に重ね合わせると共に、ポリエステル繊維製ドビー織物からなる第2布帛12の端部の第2折り返し部12aを、細幅織物13の第2縫い代部4の上面に重ね合わせ、この状態で第1折り返し部11aと細幅織物の第1縫い代部3とをポリエステル紡績糸(第1縫合糸)で縫合すると共に、第2折り返し部12aと細幅織物の第2縫い代部4とをポリエステル紡績糸(第2縫合糸)で縫合することによって、自動車座席シート用表皮材を得た。得られた自動車座席シート用表皮材を座席に装着した状態において細幅織物の装飾部2が外観されるものとなっている(
図1、3参照)。
【0103】
<参考例
2>
下記設計、条件で製織を行った後、140℃で4分間加熱を行うことによって、玉縁部7が
図6に示す模式的断面構造を備えた
図2に示す細幅織物13を得た。
【0104】
織機:細巾ニードル織機
経密度:210本/2.54cm
緯密度:143本/2.54cm
経糸(袋組織部;筒状部):167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸(撚糸;撚り回数300回/m)42本
経糸(第1、2平布部):167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸12本および110デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸(撚糸;撚り回数300回)128本
経糸(第1、2縫い代部):167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸(撚糸;撚り回数300回/m)88本
緯糸:167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸
組紐糸:6930デシテックスの組紐(210デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸33本)5本
挿入糸:167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸の周囲に156デシテックスのポリアミド糸(熱融着糸;融点120℃)が捲回(撚糸;撚り回数200回/m)されてなる捲回複合糸65本
第1、2縫い代部の組織:朱子織
第1、2平布部の組織:綾織
袋組織部(筒状部)の組織:朱子組織
細幅織物の幅W:48mm。
【0105】
次に、
図3に示すように、ポリエステル繊維製ドビー織物からなる第1布帛11の端部の第1折り返し部11aを、細幅織物13の第1縫い代部3の上面に重ね合わせると共に、ポリエステル繊維製ドビー織物からなる第2布帛12の端部の第2折り返し部12aを、細幅織物13の第2縫い代部4の上面に重ね合わせ、この状態で第1折り返し部11aと細幅織物の第1縫い代部3とをポリエステル紡績糸(第1縫合糸)で縫合すると共に、第2折り返し部12aと細幅織物の第2縫い代部4とをポリエステル紡績糸(第2縫合糸)で縫合することによって、自動車座席シート用表皮材を得た。得られた自動車座席シート用表皮材を座席に装着した状態において細幅織物の装飾部2が外観されるものとなっている(
図1、3参照)。
【0106】
<比較例1>
袋組織部(筒状部)を構成する経糸として、167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸(撚糸;撚り回数200回/m)96本を用いた(熱融着糸を使用しないものとした)以外は、実施例1と同様にして、自動車座席シート用表皮材を得た。
【0107】
<比較例2>
袋組織部(筒状部)の内部に配置する糸として、組紐糸(6930デシテックスの組紐)5本と挿入糸(110デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸)60本との組み合わせに代えて、挿入糸(110デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸)330本を使用した(組紐糸を使用しない構成とした)以外は、実施例1と同様にして、自動車座席シート用表皮材を得た。
【0108】
<
参考例3>
下記設計、条件で製織を行った後、130℃で3分間加熱を行うことによって、玉縁部37が
図11に示す模式的断面構造を備えた
図8に示す装飾用パイピング部材43を得た。
【0109】
織機:細巾ニードル織機
経密度:360本/2.54cm
緯密度:195本/2.54cm
経糸(筒状部):167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸の周囲に56デシテックスのポリアミド糸(熱融着糸;融点120℃)が捲回(撚糸;撚り回数200回/m)されてなる捲回複合糸71本
経糸(縫い代部):167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸(撚糸;撚り回数300回/m)120本
緯糸:167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸
組紐糸:5040デシテックスの組紐(210デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸24本)5本
挿入糸:167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸33本
縫い代部の組織:朱子織
筒状部の組織:朱子織
縫い代部の幅V:16mm。
【0110】
次に、
図9に示すように、ポリエステル繊維製ドビー織物からなる第1布帛41の端部と、ポリエステル繊維製ドビー織物からなる第2布帛42の端部との間に、前記装飾用パイピング部材43の縫い代部33を挟み込んでこれらを重ね合わせた状態でポリエステル紡績糸で縫合する(
図10に示すように縫合線50は2本)ことによって、
図7、10に示す自動車座席シート用表皮材31を得た。得られた自動車座席シート用表皮材31において、装飾用パイピング部材43の筒状部34(玉縁部37)の一部(上部)が外観されるものとなっている(
図7、10参照)。
【0111】
<
参考例4>
下記設計、条件で製織を行った後、140℃で3.5分間加熱を行うことによって、玉縁部37が
図12に示す模式的断面構造を備えた
図8に示す装飾用パイピング部材43を得た。
【0112】
織機:細巾ニードル織機
経密度:340本/2.54cm
緯密度:198本/2.54cm
経糸(筒状部):167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸(撚糸;撚り回数300回/m)69本
経糸(縫い代部):167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸(撚糸;撚り回数300回/m)95本
緯糸:1110デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸の周囲に78デシテックスのポリアミド糸(熱融着糸;融点120℃)が捲回(撚糸;撚り回数200回/m)されてなる捲回複合糸
組紐糸:6930デシテックスの組紐(210デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸33本)4本
挿入糸:110デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸42本
縫い代部の組織:朱子織
筒状部の組織:朱子織
縫い代部の幅V:15mm。
【0113】
次に、
図9に示すように、ポリエステル繊維製ドビー織物からなる第1布帛41の端部と、ポリエステル繊維製ドビー織物からなる第2布帛42の端部との間に、前記装飾用パイピング部材43の縫い代部33を挟み込んでこれらを重ね合わせた状態でポリエステル紡績糸で縫合する(
図10に示すように縫合線50は2本)ことによって、
図7、10に示す自動車座席シート用表皮材31を得た。得られた自動車座席シート用表皮材31において、装飾用パイピング部材43の筒状部34(玉縁部37)の一部(上部)が外観されるものとなっている(
図7、10参照)。
【0114】
<
参考例5>
下記設計、条件で製織を行った後、140℃で4分間加熱を行うことによって、玉縁部37が
図13に示す模式的断面構造を備えた
図8に示す装飾用パイピング部材43を得た。
【0115】
織機:細巾ニードル織機
経密度:340本/2.54cm
緯密度:198本/2.54cm
経糸(筒状部):167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸(撚糸;撚り回数300回/m)69本
経糸(縫い代部):167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸(撚糸;撚り回数300回/m)95本
緯糸:67デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸
組紐糸:7770デシテックスの組紐(210デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸37本)4本
挿入糸:110デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸の周囲に156デシテックスのポリアミド糸(熱融着糸;融点120℃)が捲回(撚糸;撚り回数200回/m)されてなる捲回複合糸56本
縫い代部の組織:朱子織
筒状部の組織:朱子織
縫い代部の幅V:15mm。
【0116】
次に、
図9に示すように、ポリエステル繊維製ドビー織物からなる第1布帛41の端部と、ポリエステル繊維製ドビー織物からなる第2布帛42の端部との間に、前記装飾用パイピング部材43の縫い代部33を挟み込んでこれらを重ね合わせた状態でポリエステル紡績糸で縫合する(
図10に示すように縫合線50は2本)ことによって、
図7、10に示す自動車座席シート用表皮材31を得た。得られた自動車座席シート用表皮材31において、装飾用パイピング部材43の筒状部34(玉縁部37)の一部(上部)が外観されるものとなっている(
図7、10参照)。
【0117】
<比較例3>
筒状部を構成する経糸として、167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸(撚糸;撚り回数200回)72本を用いた(熱融着糸を使用しないものとした)以外は、
参考例3と同様にして、自動車座席シート用表皮材を得た。
【0118】
<比較例4>
筒状部の内部に配置する糸として、組紐糸(6930デシテックスの組紐)5本と挿入糸(167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸)33本との組み合わせに代えて、挿入糸(167デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸)330本を使用した(組紐糸を使用しない構成とした)以外は、
参考例3と同様にして、自動車座席シート用表皮材を得た。
【0119】
上記のようにして得られた各自動車座席シート用表皮材について下記評価法に基づいて評価を行った。これらの結果を表1、2に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
<表皮材の表面耐久性評価法>
[テーバー式スクラッチ試験]
得られた自動車座席シート用表皮材から裁断により、
図14に示す形状、大きさの第1試験片61を得た。更に、円形状の裁断ライン(二点鎖線ライン)52で裁断して円形状にした。次に、テーバー式スクラッチ試験機に針を取り付け、この針の針先(針の先端)を第1試験片61の表面に接触させて針に200gの荷重を与えた状態で、1rpmの回転数で2回転させた。
図14における円形実線51が針先の接触軌道である。試験後に、第1試験片の表面の性状を目視で観察し、下記判定基準に基づいて評価した。3級、4級、5級を合格とした。なお、
図14は、第1発明の表皮材を例にして記載したものであるが、第2発明の表皮材についても同様にしてテーバー式スクラッチ試験を行った。
(判定基準)
「5級」…損傷が全く認められない。
「4級」…引っ掻きによる損傷はあるが、糸の飛び出しは無い。
「3級」…糸の飛び出しはあるが目立ちにくい。繊維が切れているが目立ちにくい。
「2級」…糸の飛び出しがあり、目立つ。繊維が切れており、目立つ。
「1級」…糸の飛び出しが著しく目立つ。繊維が切れて破れている。
【0123】
<表皮材の耐摩耗性評価法>
JIS L1096−2010の8.19.3のC法(テーバー形法)に準拠して、摩耗輪CS−10、荷重500g、1000回転の条件で耐摩耗性試験を行った後、表皮材の表面状態を目視で観察し、下記判定基準に基づいて評価した。3級、4級、5級を合格とした。
(判定基準)
「5級」…毛羽立ちがない。
「4級」…僅かに毛羽立ちが認められるが、実用上問題のないレベルである。
「3級」…多少の毛羽立ちが認められるが、実用上問題のないレベルである。
「2級」…毛羽立ちが多く、糸が細くなっている。
「1級」…糸切れが生じている。
【0124】
表1から明らかなように、本発明に係る実施例1
、参考例
1〜5の自動車座席シート用表皮材は、引っ掻き等に対する耐久性を有していて表面耐久性に優れると共に、耐摩耗性にも優れていた。
【0125】
これに対し、比較例1、3では、テーバー式スクラッチ試験が2級の評価であり、表面耐久性に劣っていた。また、比較例2、4では、耐摩耗性評価が2級であり、耐摩耗性に劣っていた。
本発明の車輌の座席シート用表皮材は、第1布帛と、第2布帛と、細幅織物とを備え、細幅織物13は、略矩形状の装飾部2と、該装飾部の幅方向の一方の端縁に連接された略矩形状の第1縫い代部3と、前記装飾部の幅方向の他方の端縁に連接された略矩形状の第2縫い代部4と、を含み、細幅織物の第1縫い代部に第1布帛の端部が縫合され、細幅織物の第2縫い代部に第2布帛の端部が縫合され、細幅織物13の装飾部2は、該装飾部の長さ方向に延ばされた中空の袋組織部6と、袋組織部6の内部に配置された挿入糸5Aと、袋組織部6の内部に配置された組紐5Bと、を含む玉縁部7を1ないし複数条含み、袋組織部6を構成する経糸の少なくとも一部が熱融着糸である構成とする。