(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
上記で例示したような自動車用排気系部品における排ガス熱交換器では、硫化物を含む高温(400℃以上)のEGRガスおよびその凝縮水に晒されるので、高い排気系耐食性が要求される。
【0004】
当該高い排気系耐食性に対応することのできるろう材として、例えば、特許文献1において、下記構成のNi基合金ろう材が提案されている。
「重量%で、Cr:10〜30%、P:2〜11%、Si:1〜10%でP+Si:10〜13%含み、残部はNiおよび不可避不純物よりなる、ぬれ性・耐食性に優れたNi基耐熱ろう材。」
【0005】
当該構成のNi基合金ロウ材は、Ni含有率が、58.5〜75.7%と、高い(特許文献1の表1;実施例10と実施例1)。
【0006】
しかし、Niは生産量が少なく、需給の変化により価格が大幅に変動し易い。このため、Ni含有率の低いNi基合金ろう材の出現が希求されている(特許文献2段落0003〜0004)。
【0007】
したがって、例えば、特許文献2において、下記構成のFe−Cr基合金ろう材が提案されている。
「質量比で、Fe:30〜60%、Cr:20〜30%、Ni:5〜30%、Mo:0.1〜5%、Si:4〜10%、P:4〜10%、残部不可避不純物からなる化学組成を有することを特徴とするFe−Cr合金ベースのろう材。」
【0008】
また、積極的にNiをFeに代替させることを目的とするNi基合金ろう材ではないが、Feを強度向上成分として20%以下含有させることが可能な、下記構成のNi基合金ろう材が特許文献3において提案されている。
「重量%で、Cr:25〜35%、P:4〜8%、Si:3〜6%、P+Si:9〜11.5%、Al、Ca、Y、ミッシュメタルの1種以上を0.01〜0.10%含み、残部はNiおよび不可避不純物よりなるNi基耐熱ろう材。」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記にかんがみて、高度の耐食性(特に排気系凝縮水に対する)を容易に得ることができ、更には、高度の耐食性を維持しながらNiの一部をFeに置換できるNi基合金ろう材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意開発に努力をした結果、下記構成のニッケル基合金ロウ材に想到した。
【0012】
本発明1(請求項1)は、Ni:
38.1〜56%の範囲にあり、融点降下元素としてPとSiを、P:
4.3〜7%、P+Si:8.5〜13%、耐食性付与元素としてCr:
18.8〜31%を含有するNi基合金ろう材において、Cu:
0.93〜3%(望ましくは
1.78〜3%)およびFe:6〜23%を含有し、残部は融点降下及び耐食性付与に影響を与えない不可避不純物とされ、Ti:0.5%以下およびMn:0.5%以下を不可避不純物元素として含有する、ことを特徴とするものである。
【0013】
特許文献1において、不純物元素としてCu:1%以下およびFe:5%以下の含有を示唆している。しかし、積極的に上記Cu:
0.93〜3%と、Fe:
6〜23%とした場合、従来例に比して格段に耐食性が向上することは、何ら開示若しくは示唆されていない。特に、Fe:6%以上と多量に配合しても23%までは確実に、排気系耐食性が従来例と同等レベルに維持され又は向上することは当業者にとって、予見可能性を有しないことである。
【0014】
上記構成において、さらに、Mo:
0.95〜3%を含有することが望ましい。Ni含有率を低下させてFeの含有率を高くしても、更に耐食性が向上して、本発明の効果が顕著となる(試料No.3)。
【0015】
本発明2(請求項5)は、Ni:
52.7〜56%の範囲にあり、融点降下元素としてPとSiを、P:
4.3〜7%、P+Si:8.5〜13%、耐食性付与元素としてCr:
24.2〜31%を含有するNi基合金ろう材において、Mo:
0.95〜3%(望ましくは1.5〜3%)とともに、Fe:6〜23%を含有し、残部は融点降下及び耐食性付与に影響を与えない不可避不純物とされ、Ti:0.5%以下およびMn:0.5%以下を不可避不純物元素として含有する、ことを特徴とするものである。
【0016】
特許文献1において、Mo:5%以下およびFe:5%以下の含有を示唆しているが、両者を併用した場合に、排気系耐食性が従来例に比して格段に向上する(試料No.8,17)ことは、何ら開示若しくは示唆されていない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に想到し得た経緯について、試験例(実施例を含む。)を挙げながら説明する。
【0019】
本発明者らは、特許文献1の実施例において、一番Ni含有率が小さい下記組成の実施例10(以下、「従来例」と称する。)に着眼した。
【0020】
Cr:30.0%、P:6.9%、Si:4.6%、Ni(残部):58.5%
それらの添加元素以外に、耐食性向上の可能性のあるMo、Cu、TiおよびMnに着目し、Ni含有率を減じてFeに代替させても、排気系耐食性が維持され又は向上する組成について、試験・検討した。
【0021】
ここでは、耐食性は、主として排気系凝縮水における孔食電位で評価した。以下の説明で「耐食性」は特に断らない限り、「排気系凝縮水における耐食性(排気系耐食性)」を意味する。
【0022】
この試験・検討に際して、いわゆる品質工学(Taguchi method)を適用し、各合金元素を制御因子とし出力値を孔食電位として、L18直交表をもとに調製した18種類の合金元素の孔食電位を測定し、その結果における静特性の望大特性を使用して、各合金元素の孔食に与える影響を求めた。
【0023】
例えば、制御因子がPの場合、水準1・2の試料数n=9であり、他の合金元素(成分元素)が制御因子の場合、水準1・2・3の試料数はn=6である(表2)。
【0024】
1)先ず、P、Ni、Cr、Si、Mo、Cu、Ti、Mnを合金構成元素(制御因子)とし、それらのうち、P、Ni、Cr、Pについては、従来例の含有率を基準(最大値)として、下記基準で3水準に振った(但しPは2水準)。なお、試料調製に際して、ピンポイントの組成にすることはできないため、各水準には許容幅を持たした。
【0025】
P:従来例の含有率を最大値として、約1%刻みで減じて設定した。
【0026】
Ni:従来例の含有率を最大値として、約20%刻みで減じて設定した。
【0027】
Cr:従来例の含有率を最大値として、約5%刻みで減じて設定した。
【0028】
その他の元素は、下記基準で3水準に振った。
【0029】
Si:従来例の含有率を最小値として、約0.5%刻みで増して設定した。
【0030】
Mo:高価であるとともに融点が上昇して濡れ性に悪影響を与えるおそれがあるため、望ましい範囲である2%(特許文献1の実施例13)を基準として、1%刻みで減じて設定した。水準1はMo無添加とした。
【0031】
Cu:高価であるため、不可避不純物と考える場合の1%以下(特許文献1の段落0011)の倍の約2%を最大値として、約1%刻みで減じて設定した。水準1の上限値は不可避不純物量であり実質無添加の範囲である。
【0032】
Ti:高価であるため、約1%を最大値として、約0.5%刻みで減じて設定した。
【0033】
Mn:不可避不純物と考える場合0.5%(特許文献
1、段落0011)の倍の約1%を最大値として、約1%刻みで減少して設定した。
【0034】
各合金元素(制御因子)の水準含有率を表1に示す。
【0035】
表1には、それらの水準によって、サポートされると考えられる可能な範囲を下段に一段(Mo、Cuについてはより確実な範囲の二段)で表示した。なお、冷却水系耐食性に効果があるTiについても、同様にサポートされると考えられる可能な範囲を下段に一段で表示した。
【0036】
表に示す如く、Moの水準1およびCuの水準1は、何れも、無添加乃至実質的な無添加を意味する。
【0038】
そして、品質工学に基づいて、制御因子における各水準の組み合わせを求めたところ、表2に示す18通りの組み合わせとなった。
【0040】
表2に示す組成にしたがって、各試料のNi基合金ろう材を、慣用のアトマイズ法により調製後、電気炉内、アルゴンガス雰囲気中で溶解鋳造し、インゴット(Φ約60mm×厚さ約12mm)を調製した。
なお、表2のFe含有率は、各試料の分析結果を示す。
【0041】
そして、各試料のNi合金ろう材を用いて、下記項目の排気系耐食性試験を実施した。
【0042】
(1)排気系耐食性試験
排気系模擬凝縮水として、出願人が品質管理用評価に使用しているもの(営業秘密)で試験を行った。
【0043】
前記各インゴットを試験片として、ステンレス鋼の孔食電位測定方法(JIS G 0577)に準拠して、孔食電位を測定した(
図1参照)。参照電極はAg/AgCl極とした。
【0044】
各試料(試料No.)における、孔食電位を表2に示すとともに、望大特性のSN比を求めて、その結果を
図2に示す。なお、表2における排気系耐食評価の欄における評価基準は下記の通りとした。
×:従来例より低下、○:従来例より向上、◎:従来例より格段に向上
【0045】
なお、SN比は、下記式で表され、孔食電位の高さと分散(バラツキ)の小ささを反映する。
分散σ
2=1/n(1/y
12)+1/y
22+・・・+1/yn
2)
SN比η=−10 logσ
2
【0046】
図2において、SN比の最低値との数値差が、「4」以上を耐食性効果有りとして黒点表示とし、且つ、SN比が平均値近傍以上の場合、耐食性向上に寄与できる範囲として○で囲んだ。それ以外は、耐食性向上効果なしとして、白点表示とした。
【0047】
その結果、
Ni・・・水準2:38.1〜39.2%、水準3:52.7〜55.6%;
Cr・・・水準2:24.2〜25.4%、水準3:27.6〜30.5、
Mo・・・水準2:0.95〜1.02、水準3:1.94〜2.14%、
Cu・・・水準2:0.93〜1.06、水準3:1.78〜2%、
の範囲で耐食性向上を示すことが伺える(表1薄墨部)。
【0048】
なお、特許文献1
は、「Cr:10〜30%」とするNi基合金において、「P:2〜11%、Si:1〜10%、P+Si:10〜13%
」を発明特定事項としている(
請求項1等参照)。発明特定事項とした理由を記載してある箇所を次に引用する。
「
[0007][作用]本発明において、各成分範囲を前記のごとく限定した理由を以下に述べる。以下の%表示については重量%を示すものである。Crは、Ni中に固溶してNi−Cr固溶体となり、合金の耐酸化性、耐熱性、耐食性を向上させ、特に本発明のろう材合金組成の場合、塩水に対する耐食性を向上させる元素として有効であるが10%未満ではその効果が少なく、30%を超えるとステンレス鋼とのぬれ性が劣化する。以上の理由からCrは10〜30%と限定した。
[0008]PとSiは、Ni−Cr固溶体との共晶反応により合金の融点に及ぼす影響が大きく、ひいてはろう付性に重要な影響を与えると同時に、耐食性にも影響する成分である。本発明のろう材合金組成の場合は、特にPとSi合計の添加量の限定が合金の融点決定に重要な作用をおよぼす。即ち、P+Siの合計が10%未満では亜共晶傾向が強くなり、液相線温度が上昇し、固相線との幅が拡がるため、ろう付性が劣化する。P+Siの合計が13%を超えると過共晶傾向が強くなり、液相線温度が上昇すると共に合金が脆くなる。PとSiは合金の融点及び耐食性に対し、相互に作用、反作用する傾向となる。
[0009]したがって、各々のバランスによりPとSiの個々の添加量が限定される。即ち、Pが2%未満の場合及びSiが10%を超えた場合、合金の融点が上昇し、目的の温度でろう付できなくなる。また,Siが1%未満の場合及びPが11%を超えた場合、合金の耐食性が劣化し、靱性が低下する。以上の理由からPは2〜11%、Siは1〜10%で、かつ、P+Siの合計が10〜13%と限定した。」
【0049】
したがって、
良好な「ろう付け性」及び「耐食性」乃至「靱性」を確実に得るために、本発明では、「P:4〜7%」とPの含有率を狭めるとともに、「P+Si:8.5〜13%(望ましくは、9.5〜12%)」と、P+Siの下限値を若干下げて設定した。
【0050】
そして、本発明者らは、各試料No.における孔食電位の測定結果から、従来の排気系耐食性向上成分(Ni、Cr)に加えてCuを微量のFe(0.5%)とともに添加した場合(試料No.9,18)、従来例より格段に高い耐食性が得られることを知見した(表2および
図3・4参照)。
【0051】
また、
図3・4に示す如く、Feの含有率を増大させていくと、耐食性は低下する傾向にある(但し、組み合わせる耐食性向上成分により異なる)。そして、Fe含有率が37%以下の範囲なら、従来例と同等以上の耐食性が得られることが分かった(試料No.3〜5、7,9および14〜18)。その際、Moを添加すると効果的であり(試料No.3,9,15,16等)、Moのみでも、Niが耐食性向上範囲(水準3)およびCrが耐食性向上範囲(水準2)であれば、効果を有することが分かった(試料No.8,17)。
【0052】
なお、試料No.6は、Mo、Cuとも無添加であり、当然、Feの添加により、耐食性は従来例より低下している。
【0053】
また、試料No.13では、Moが添加されているが、Cuが無添加であり、Cuを併用すれば、Feを25%以上添加しても(例えば、28%)、耐食性は向上すると推定される(試料No.4,5参照)。なお、下記におけるFeの範囲は、表2のFe含有率から帰納したものである(以下同じ。)。
【0054】
以上の考察から、下記
発明1(請求項1)(1)、発明2(請求項5)(2)が帰納される。
【0055】
(1)「Ni:
38.1〜56%の範囲にあり、融点降下元素としてPとSiを、P:
4.3〜7%、P+Si:8.5〜13%、耐食性付与元素としてCr:
18.8〜31%を含有するNi基合金ロウ材において、Cu:
0.93〜3%(望ましくは
1.78〜3%)とともに、Fe:
6〜23%を含有
し、残部は融点降下及び耐食性付与に影響を与えない不可避不純物とされ、Ti:0.5%以下およびMn:0.5%以下を不可避不純物元素として含有する、ことを特徴とするNi基合金ろう材。」(表1−1参照)。
【0057】
上記発明において、更に、Mo:
0.95〜3
%(望ましくは
1.94〜3%)含有するものとすることにより、耐食性がさらに向上する。
【0058】
(2)「Ni:
52.7〜56%の範囲にあり、融点降下元素としてPとSiを、P:
4.3〜7%、P+Si:8.5〜13%、耐食性付与元素としてCr:
24.2〜31%を含有するNi基合金ロウ材において、Mo:
0.95〜3%(望ましくは
1.94〜3%)とともに、Fe:
6〜23%を含有
し、残部は融点降下及び耐食性付与に影響を与えない不可避不純物とされ、Ti:0.5%以下およびMn:0.5%以下を不可避不純物元素として含有する、ことを特徴とする。」(表1−2参照)。
【0060】
なお、表2を、別の観点(Pの含有率を水準1・2に分けて)から考察すると次の如く、各発明が帰納される。
【0061】
(A)Pが水準1(4.3〜4.8%)の場合:
Crの水準2(24.2〜25.4%)・水準3(27.6〜30.5)、Moの水準3(1.94〜2.14)とCuの水準3(1.78〜2)を組み合わせたとき、又は、Niの水準3(52.7〜55.6%)のとき、孔食電位が高く、Feの0.3〜1%の少量含有の場合(試料No.9)は勿論、Feが1%超〜
23%の範囲(試料
No.5,7,8)
、さらには、23%を越えても耐食性が得られる可能性を有する(試料No.3,4)。
【0064】
即ち、Cr、Mo、Cuの全てを耐食性寄与範囲(水準3)に限定することにより、Ni含有率を耐食性寄与不明範囲(水準1)であっても耐食性が格段に向上する(試料No.3)。したがって、Feを37%まで含有させることが可能となり、Niの大幅な減量が可能となる。なお、Feが37%超となると、Cu、Crを耐食性寄与範囲(ともに水準2)としても、耐食性向上結果を得られない(試料No.2)。
【0066】
また、Ni含有率を耐食性寄与範囲(水準2)とした場合、Cuを耐食性寄与範囲(水準2・3)に限定するとともに、Moを耐食性寄与範囲(水準2・3)で添加することにより格段に耐食性が向上する(試料No.4,5)。この場合も、Feを20%以上とすることができ、Niの減量が可能となる。
【0068】
さらに、Ni含有率を耐食性寄与範囲(水準3)とした場合において、Crを耐食性寄与範囲(水準2)で添加するか又はCuを耐食性寄与範囲(水準2・3)で添加した場合は、耐食性が格段に向上し(試料No.7,8)、さらに、Moを耐食性寄与範囲で添加した場合は、耐食性がより向上する(試料No.9)。
【0069】
(B)Pが水準2(5.5〜6.2%)の場合:
Niの水準2(38.1〜39.2%)、水準3(52.7〜55.6%)、Crの水準2(24.2〜25.4%)・水準3(27.6〜30.5)において、Cuの水準2(0.93〜1.06)、水準3(1.78〜2)を組み合わせ(試験No.14,15,16,18)、又は、当該組み合わせにおいてCuに代替してMoの水準3(1.94〜2.146%)の場合(試験No.17)、孔食電位が高く、Feが0.3〜1%と少量の範囲の場合(試料No.18)は勿論、Feが3〜23%の範囲(試験No.14〜17)で耐食性に優れていることが分かる。
【0071】
即ち、Ni含有率を耐食性寄与範囲(水準2・3)とした場合において、Crを耐食性寄与範囲(水準2・3)で添加するとともに、Cuを耐食性寄与範囲(水準2・3)で添加するか、又はCuに代替してMoを耐食性寄与範囲(水準3)で添加した場合、孔食電位が高い。即ち、Feの0.3〜1%の少量含有の場合は勿論(試料No.18)、Feが3〜23%の範囲で耐食性に優れていることが分かる(試料No.14〜17)。なお、試料No.13は、耐食性が従来例より低下しているが、Crが耐食性寄与不明範囲(水準1)の含有率でも、試験No.16では、耐食性が格段に向上していることを考慮すると、Feの含有率が過剰(23%超)であることが原因と考えられる。
【0072】
さらに、Feの含有率が過剰の場合、耐食性に影響を与えることは、Pの各水準1・2におけるFeの含有率と耐食性の関係を示す
図3・4からも伺える。
【0073】
また、本発明者らは、各試料について本願出願人が使用している冷却水系模擬試験水(営業秘密)を用いて冷却水系耐食性の試験を行った。それらの結果を表3に示す。表3において、評価基準は下記のとおりとした。
×:従来例より低下、△:従来例と同等、○:従来例より向上、◎:従来例より格段に向上
【0075】
表3に示す結果から、Mo及び/又はCuを添加した系において、Niが水準2(38.1〜39.2)以上であれば、Tiの少量の水準1(0.16〜0.26)又は水準2(0.38〜0.77)であっても、冷却水系耐食性が向上することが分かった(試料No.4〜9、14〜18)。Moの水準3(1.94〜2.14)とTiの水準3(0.88〜1.44)を組み合わせると冷却水系耐食性は殆ど向上しない(試料No.13)。
【0076】
そして、Mo及びCuを添加しない系においても、Niが水準2(38.1〜39.2)でCrが水準3(27.6〜30.5)で、Ti(0.38〜0.77)を水準2(0.38〜0.77)とすれば、冷却水系耐食性が向上する(試料No.6)。
【0077】
上記結果から下記構成
のNi基合金ろう材が帰納できる。
「Ni:30〜56%の範囲にあり、融点降下元素としてPとSiを、P:4〜7%、P+Si:8.5〜13%、耐食性付与元素としてCr:18〜31%を含有するNi基合金ロウ材において、Mo:0.5〜3.0%及び/又はCu:0.5〜3%とともにTi:0.01〜2%(但し:Mo:1.5〜3%且つTi:0.8〜2%の組み合わせを除く。)を含有し、さらに、Fe:0.5〜23%を含有することを特徴とするNi基合金ろう材。」
【0078】
上記構成において、
Ti:0.01〜0.9%、さらには0.01〜0.5%を含有することが好ましい。高価なTiの節減につながるためである。