(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中空の鋼管とこの鋼管の先端に脱着可能に取り付けられる蓋体とを備え前記鋼管の先端近傍の外周に螺旋状の羽根が設けられた鋼管ケーシングを用いて、通水用の孔を有し前記鋼管ケーシング内に挿入可能な有孔管を埋設して揚水井戸を設置する方法であって、
前記鋼管の先端から所定長延在する第一の部分の径を、前記鋼管の前記第一の部分を除く第二の部分の径よりも大きく設定する鋼管径調整工程と、
前記鋼管を前記蓋体に取り付けた状態で前記蓋体を下方に向け、前記鋼管に回転を与えて被処理層に前記鋼管ケーシングを捩じ込み、前記蓋体が所定の深さに到達した時点で前記蓋体を前記鋼管から取り外した後に前記鋼管内に砕石を投入し、その後前記鋼管を逆回転させ前記蓋体及び前記砕石を残して前記鋼管を軸方向に引き上げることにより砕石柱を築造し、複数本の前記砕石柱を所定の間隔をおいて相互に離隔させて築造することにより砕石集合柱を構成する集合柱構成工程と、
前記鋼管内に挿入した前記有孔管と前記鋼管とを前記蓋体に取り付けた状態で前記蓋体を下方に向け、前記鋼管に回転を与えて前記砕石集合柱に前記鋼管ケーシングを捩じ込み、前記蓋体が所定の深さに到達した時点で前記蓋体及び前記有孔管を前記鋼管から取り外し、前記鋼管を逆回転させ前記蓋体及び前記有孔管を残して前記鋼管を軸方向に引き上げることにより、前記砕石集合柱に前記有孔管を埋設する有孔管埋設工程と、
を含む、揚水井戸の設置方法。
中空の鋼管とこの鋼管の先端に脱着可能に取り付けられる蓋体とを備え前記鋼管の先端近傍の外周に螺旋状の羽根が設けられた鋼管ケーシングを用いて、通水用の孔を有し前記鋼管ケーシング内に挿入可能な有孔管を埋設して揚水井戸を設置する方法であって、
前記鋼管の先端から所定長延在する第一の部分の径を、前記鋼管の前記第一の部分を除く第二の部分の径よりも大きく設定する鋼管径調整工程と、
前記鋼管を前記蓋体に取り付けた状態で前記蓋体を下方に向け、前記鋼管に回転を与えて被処理層に前記鋼管ケーシングを捩じ込み、前記蓋体が所定の深さに到達した時点で前記蓋体を前記鋼管から取り外した後に前記鋼管内に砕石を投入し、その後前記鋼管を逆回転させ前記蓋体及び前記砕石を残して前記鋼管を軸方向に引き上げることにより砕石柱を築造し、複数本の前記砕石柱を所定の間隔をおいて相互に離隔させて築造することにより砕石集合柱を構成する集合柱構成工程と、
前記鋼管を前記蓋体に取り付けた状態で前記蓋体を下方に向け、前記鋼管に回転を与えて前記砕石集合柱に前記鋼管ケーシングを捩じ込み、前記蓋体が所定の深さに到達した時点で前記鋼管内に前記有孔管を挿入して前記蓋体に前記有孔管を到達させた後に前記蓋体を前記鋼管から取り外し、前記鋼管を逆回転させ前記蓋体及び前記有孔管を残して前記鋼管を軸方向に引き上げることにより、前記砕石集合柱に前記有孔管を埋設する有孔管埋設工程と、
を含む、揚水井戸の設置方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年においては、前記した特許文献1に記載されたような方法を採用して廃棄物層内に通水管を埋設することにより、通水管を介して廃棄物層内に浸み出した地下水を汲み上げる方法(揚水井戸の設置方法)が提案されている。
【0006】
ところが、例えば30mを超えるような深い深度での汲み上げを目的とする揚水井戸を設置するには、以下のような理由により、前記した特許文献1に記載された従来の方法では対応できないことが明らかとなっている。
【0007】
まず、深い深度から地下水を汲み上げるためには汲み上げ能力の高い大型のポンプを採用する必要があるが、比較的小径の塩化ビニル製通水管を採用する従来の方法においては、大型のポンプを通水管に挿入することができないという問題がある。また、汲み上げ能力の高い大型のポンプを挿入可能にするために大径の通水管を採用しようとしても、従来の方法で使用されていた鋼管ケーシングにおいては継手部分の内径が小さいため、大径の通水管を挿入することができないという問題がある。
【0008】
これらの問題を解決するために、大径の鋼管ケーシングを採用するという手段が考えられる。しかし、このような大径の鋼管ケーシングを採用すると、施工中の周面摩擦が著しく大きくなることから、深い深度(例えば40m程度)までの施工が不可能となってしまう。また、大径の鋼管ケーシングを採用すると、施工機械もそれに対応して大きくなり、廃棄物処理場への搬入も困難となるという問題が新たに発生する。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、深い深度までの施工を実現させることができる揚水井戸の設置方法と、かかる方法で使用される鋼管ケーシングと、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明に係る鋼管ケーシングは、中空の鋼管と、この鋼管の先端に脱着可能に取り付けられる蓋体と、を備えており、鋼管の先端近傍の外周に螺旋状の羽根が設けられ、鋼管の先端から所定長延在する第一の部分の径が、鋼管の第一の部分を除く第二の部分の径よりも大きく設定されてなるものである。
【0011】
かかる構成を採用すると、鋼管ケーシングの鋼管の先端から所定長延在する部分(第一の部分)を比較的大径に設定しているので、鋼管ケーシングを用いて砕石柱を構成する際に、より大きな外径の砕石柱を築造することができる。従って、複数の砕石柱を集合させて砕石集合柱や砕石壁を構成する際に、砕石柱の築造本数を低減させて、コストダウンを実現させることができる。また、鋼管ケーシングの鋼管の先端から所定長延在する部分を除く部分(第二の部分)を比較的小径に設定しているので、鋼管ケーシングを用いて砕石柱を構成したり砕石柱に井戸管を設置したりする際に、被処理層や砕石柱から鋼管ケーシングを引き上げる際の周面摩擦を低減させて、施工性を向上させることができる。
【0012】
本発明に係る鋼管ケーシングにおいて、スプライン継手を介して複数の鋼管部材を接続することにより鋼管を構成することができる。この際、スプライン継手の内周面と鋼管部材の内周面とを略同一面上に配置することが好ましい。
【0013】
かかる方法を採用すると、鋼管部材を接続するスプライン継手の内周面を、鋼管部材の内周面と略同一面上に配置しており、スプライン継手が鋼管部材の内部に突出しないので、鋼管の内部空間を広く確保することができる。従って、鋼管内に比較的大径の装置(例えば汲み上げ能力の高い大型のポンプ等)を挿入することが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る第一の方法は、中空の鋼管とこの鋼管の先端に脱着可能に取り付けられる蓋体とを備え鋼管の先端近傍の外周に螺旋状の羽根が設けられた鋼管ケーシングを用いて、通水用の孔を有し鋼管ケーシング内に挿入可能な有孔管を埋設して揚水井戸を設置する方法であって、鋼管の先端から所定長延在する第一の部分の径を、鋼管の第一の部分を除く第二の部分の径よりも大きく設定する鋼管径調整工程と、鋼管を蓋体に取り付けた状態で蓋体を下方に向け、鋼管に回転を与えて被処理層に鋼管ケーシングを捩じ込み、蓋体が所定の深さに到達した時点で蓋体を鋼管から取り外した後に鋼管内に砕石を投入し、その後鋼管を逆回転させ蓋体及び砕石を残して鋼管を軸方向に引き上げることにより砕石柱を築造し、複数本の砕石柱を所定の間隔をおいて相互に離隔させて築造することにより砕石集合柱を構成する集合柱構成工程と、鋼管内に挿入した有孔管と鋼管とを蓋体に取り付けた状態で蓋体を下方に向け、鋼管に回転を与えて砕石集合柱に鋼管ケーシングを捩じ込み、蓋体が所定の深さに到達した時点で蓋体及び有孔管を鋼管から取り外し、鋼管を逆回転させ蓋体及び有孔管を残して鋼管を軸方向に引き上げることにより、砕石集合柱に有孔管を埋設する有孔管埋設工程と、を含むものである。
【0015】
また、本発明に係る第二の方法は、中空の鋼管とこの鋼管の先端に脱着可能に取り付けられる蓋体とを備え鋼管の先端近傍の外周に螺旋状の羽根が設けられた鋼管ケーシングを用いて、通水用の孔を有し鋼管ケーシング内に挿入可能な有孔管を埋設して揚水井戸を設置する方法であって、鋼管の先端から所定長延在する第一の部分の径を、鋼管の第一の部分を除く第二の部分の径よりも大きく設定する鋼管径調整工程と、鋼管を蓋体に取り付けた状態で蓋体を下方に向け、鋼管に回転を与えて被処理層に鋼管ケーシングを捩じ込み、蓋体が所定の深さに到達した時点で蓋体を鋼管から取り外した後に鋼管内に砕石を投入し、その後鋼管を逆回転させ蓋体及び砕石を残して鋼管を軸方向に引き上げることにより砕石柱を築造し、複数本の砕石柱を所定の間隔をおいて相互に離隔させて築造することにより砕石集合柱を構成する集合柱構成工程と、鋼管を蓋体に取り付けた状態で蓋体を下方に向け、鋼管に回転を与えて砕石集合柱に鋼管ケーシングを捩じ込み、蓋体が所定の深さに到達した時点で鋼管内に有孔管を挿入し蓋体に有孔管を到達させた後に蓋体を鋼管から取り外し、鋼管を逆回転させ蓋体及び有孔管を残して鋼管を軸方向に引き上げることにより、砕石集合柱に有孔管を埋設する有孔管埋設工程と、を含むものである。
【0016】
かかる方法を採用すると、まず鋼管ケーシングを用いて複数本の砕石柱からなる砕石集合柱を被処理層に構成し、その後鋼管ケーシングを用いて砕石集合柱に有孔管を埋設して揚水井戸を設置することができる。ここで、鋼管ケーシングの鋼管の先端から所定長延在する部分(第一の部分)を比較的大径に設定しているため、より大きな外径の砕石柱を築造することができ、また、複数本の砕石柱を所定の間隔をおいて相互に離隔させて築造しているため、砕石集合柱を構成する際に砕石柱の築造本数を低減させて、コストダウンを実現させることができる。また、鋼管ケーシングの鋼管の先端から所定長延在する部分を除く部分(第二の部分)を比較的小径に設定しているので、被処理層や砕石集合柱から鋼管ケーシングを引き上げる際の周面摩擦を低減させて、施工性を向上させることができる。さらに、複数本の砕石柱を築造する際に砕石柱間に間隙を設けることにより、砕石柱築造の際に鋼管ケーシングに作用する周面摩擦や地盤抵抗を低減させることができる。この結果、より深い深度まで削孔を行うことができ、より高い機能を有する揚水井戸を設置することが可能となる。
【0017】
本発明に係る揚水井戸の設置方法において、複数の鋼管部材を接続して鋼管を構成する鋼管部材接続工程をさらに含むことができる。鋼管部材接続工程においては、接続される下部鋼管部材の上端に円筒状の雌(雄)スプライン継手を固着し、接続される上部鋼管部材の下端に円筒状の雄(雌)スプライン継手を固着し、各スプライン継手を上下方向に相互に嵌合し、両スプライン継手同士を継手固定手段により固定することが好ましい。
【0018】
かかる方法を採用すると、複数の鋼管部材を接続して長尺の鋼管を構成することができる。この際、予め上下の鋼管部材の接続端に固着された雌雄のスプライン継手を嵌合させ、ボルト等の継手固定手段により両スプライン継手を固定するだけで迅速に接続作業を完了することができ、捩じり荷重や引き抜き荷重に対して充分な強度を発揮させることができる。
【0019】
また、本発明に係る揚水井戸の設置方法において、雄スプライン継手の内周面と鋼管部材の内周面とを略同一面上に配置することが好ましい。
【0020】
かかる方法を採用すると、雄スプライン継手の内周面と鋼管部材の内周面とを略同一面上に配置しており、雄スプライン継手が鋼管部材の内部に突出しないので、鋼管の内部空間を広く確保することができ、鋼管内に比較的大径の装置(例えば汲み上げ能力の高い大型のポンプ等)を挿入することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、深い深度までの施工を実現させることができる揚水井戸の設置方法と、かかる方法で使用される鋼管ケーシングと、を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本実施形態においては、鋼管ケーシング1を用いて、鋼管ケーシング1内に挿入可能な有孔管20を埋設することにより、(例えば30mを超える)深い深度における地下水の汲み上げを行うことが可能な揚水井戸を設置する方法について説明する。
【0024】
まず、
図1〜
図10を用いて、本実施形態に係る設置方法で使用される鋼管ケーシング1の構成について説明する。
【0025】
鋼管ケーシング1は、
図1及び
図3等に示すように、中空の鋼管2と、鋼管2の先端に脱着可能に取り付けられる蓋体10と、を備えており、鋼管2の先端近傍の外周には、螺旋状の羽根32が設けられている。鋼管2は、複数の鋼管部材(第一の鋼管部材30及び第二の鋼管部材40)を接続して構成したものであり、先端に蓋体10を取り付けて廃棄物層内にねじ込んだ後、廃棄物層内で蓋体10を取り外し、蓋体10を削孔の先端に残したまま、引き上げて回収される部材である。
【0026】
本実施形態においては、
図1に示すように、鋼管2の先端から所定長延在する第一の部分(第一の鋼管部材30から構成される部分)の外径D
1を、鋼管2の第一の部分を除く第二の部分(第二の鋼管部材40から構成される部分)の外径D
2よりも大きく設定することとしている。このように鋼管2の先端から所定長延在する部分(第一の部分)を比較的大径に設定しているので、より大きな外径の砕石柱を築造することができ、砕石集合柱を構成する際に砕石柱の築造本数を低減させて、コストダウンを実現させることができる。D
1及びD
2の値は、設置する揚水井戸の規模(直径や深さ)に応じて適宜設定することができる。例えば、第一の部分の外径D
1を300〜320mmの範囲内で設定し、第二の部分の外径D
2を250〜270mmの範囲内で設定する(D
1とD
2の差を30〜70mmの範囲内で設定する)ことができる。
【0027】
鋼管2の第一の部分を構成する第一の鋼管部材30は、
図2及び
図3に示すように、蓋体取付側端部(下端部)近傍の外周に螺旋状の羽根32が設けられた本体部31を有している。このように、螺旋状の羽根32が鋼管部材30の外周に取り付けられていることにより、羽根32の螺旋の先端部32aが廃棄物層内に進入するように装置を回転させれば、羽根32の上面に乗るようにして廃棄物や土砂が相対的に上方に容易に移動するため、鋼管ケーシング1自体を廃棄物層内に容易に捩じ込むことができる。
【0028】
第一の鋼管部材30の本体部31の大部分は、比較的大きな外径D
1を有している。一方、本体部31は、蓋体取付側端部と反対側の端部(上端部)31aに近付くに従って外径が漸次小さくなるように形成されており、上端部31aの外径は第二の鋼管部材40と同一の外径D
2に設定されている。第一の鋼管部材30の本体部31の上端部31aには、第二の鋼管部材40の端部との接続のための接続構造を構成する雌スプライン継手50(後述)が取り付けられている。
【0029】
本実施形態においては、
図4及び
図5に示すように、第一の鋼管部材30の本体部31を平面上に展開した場合に、水平方向に対して羽根32の取り付けラインのなす角度が10〜20°の範囲となるように羽根32が本体部31に取り付けられている。10°未満では羽根32を取り付けた効果が低く、また、20°を超えると鋼管ケーシング1の回転に対する鉛直方向の進入距離が長くなり、鋼管ケーシング1を捩じ込むための重機の負担が大きくなってしまうので好ましくない。好ましくは10°〜15°である。
【0030】
羽根32の外径は、羽根32が取り付けられた本体部31の外径の1.5〜3倍が好ましい。羽根32の外径が本体部31の外径の1.5倍未満では羽根32を取り付けた効果が低く、また、3倍を超えても効果に差が無く、鋼管ケーシング1を捩じ込むための重機の負担が大きくなってしまうので好ましくない。なお、本実施形態においては、羽根32の螺旋の先端部32aから後端部32bまでの螺旋の中心角は360°となっているが、かかる構成に限定されるものではなく、225〜720°の範囲であればよい。225°未満の場合には、羽根32による廃棄物や土砂の上方への移動効果が低減するため好ましくなく、また施工の容易性から鑑みて720°以下が好ましい。
【0031】
本実施形態においては、
図3に示すように、第一の鋼管部材30の本体部31の下端部近傍の外周に、全周にわたる突出部33が形成されている。突出部33は、第一の鋼管部材30に蓋体10を取り付けた際に、蓋体10の本体部11(後述)と第一の鋼管部材30との間隙を全周にわたって覆う。これにより、鋼管ケーシング1を廃棄物層内に捩じ込む際に、間隙に廃棄物や土砂が侵入するのを防ぐことができ、蓋体10の第一の鋼管部材30からの取り外しが困難になる恐れがない。
【0032】
蓋体10は、第一の鋼管部材30の先端に取り付けて第一の鋼管部材30の先端を閉塞し、第一の鋼管部材30内に廃棄物層内の廃棄物や土砂が入り込むのを防止する部材である。また、蓋体10には有孔管20の先端も取り付けられ、鋼管ケーシング1の廃棄物層内への捩じ込みと同時に有孔管20が埋設される。
【0033】
蓋体10は、
図3及び
図4に示すように、先端側が閉塞した筒状の本体部11を有し、本体部11の内側に所定の間隙を介して鋼管固定筒15が同心円状に配置されている。そして、第一の鋼管部材30の先端が、蓋体10の本体部11の内周と鋼管固定筒15の外周との間の間隙内に挿入され、第一の鋼管部材30と蓋体10とが係止されるようになっている。
【0034】
本実施形態においては、第一の鋼管部材30と鋼管固定筒15との係止手段として、第一の鋼管部材30の本体部31の内周の先端近傍に、内側に突出する係止片34が取り付けられており、鋼管固定筒15に略L字型に切れ込む切欠部16が形成されている。
【0035】
第一の鋼管部材30に蓋体10を取り付ける際には、鋼管固定筒15の切欠部16内に第一の鋼管部材30の係止片34が進入するように位置を確認しながら、第一の鋼管部材30の先端を蓋体10の本体部11と鋼管固定筒14との間に差し込み、次いで第一の鋼管部材30を回転させることで係止片34が係止部16aの下方に入り込み、蓋体10と第一の鋼管部材30とが係止して一体化する。切欠部16及び係止片34は好ましくは二対、第一の鋼管部材30の中心軸を中心に対称な位置に設けることが好ましい。
【0036】
蓋体10を第一の鋼管部材30から取り外す際には、第一の鋼管部材30を捩じ込む方向とは逆方向に回転させて引き上げればよい。このようにすると、係止片34が係止部16aから外れて容易に脱離することとなる。
【0037】
なお、本実施形態においては、製造コストを考慮して切欠部16を鋼管固定筒15に、係止片34を第一の鋼管部材30に設けた例を示したが、逆に鋼管固定筒15に係止片34を、第一の鋼管部材30に切欠部16を設けてもよい。
【0038】
本実施形態における蓋体10の鋼管固定筒15の内側にはさらに、所定の間隙を介して有孔管20の先端を取り付けるための有孔管固定筒14が本体部11及び鋼管固定筒15と同心円状に配置している。有孔管固定筒14の内周が有孔管20の外周よりも大きすぎる場合には、有孔管20を有孔管固定筒14に取り付ける作業が繁雑になるため、有孔管固定筒14の内周は、用いる有孔管20の外周よりも若干大きくなる程度に調整することが好ましい。
【0039】
また、本実施形態においては、捩じ込みをより容易にするため、蓋体10の本体部11の先端に掘削刃12、さらには、側面にL字型の掘削爪13を2個取り付けているが、これらはなくてもかまわない。また、本実施形態とは異なる形状、個数の掘削刃や掘削爪を設けてもよい。
図5及び
図6において、第一の鋼管部材30を蓋体10に取り付けた状態で、羽根32の先端32aが掘削爪13の水平位置よりも若干突き出た位置に配置しているが、本発明では特にこのような位置関係に限定されるものではない。
【0040】
本実施形態においては、蓋体10の本体部11と鋼管固定筒15との間の間隙に第一の鋼管部材30の先端を挿入して蓋体10と第一の鋼管部材30とを係止する。よって、第一の鋼管部材30の先端部の外径D
1は、蓋体10の本体部11の内径よりも小さく形成され、第一の鋼管部材30の先端部の内径は、鋼管固定筒15の外径よりも大きく形成されている。
【0041】
本実施形態においては、
図5及び
図6に示すように、第一の鋼管部材30と蓋体10との係止領域が蓋体10の本体部11で覆われ、かつ、本体部11によって先端側は全て塞がれている。このため、鋼管ケーシング1を廃棄物層内に捩じ込む際に、係止領域が廃棄物層に直接接することがなく、係止領域に廃棄物がからんだり、廃棄物や土砂が付着するなどにより、鋼管ケーシング1の捩じ込みを妨げたり、蓋体10の第一の鋼管部材30からの取り外しを妨げたりすることがない。
【0042】
鋼管2の第二の部分を構成する第二の鋼管部材40は、
図1に示すように、第一の鋼管部材30の外径D
1よりも小さい外径D
2を有する本体部を有している。このように鋼管2の先端から所定長延在する部分を除く部分(第二の部分)を比較的小径に設定しているので、被処理層や砕石集合柱から鋼管ケーシング1を引き上げる際の周面摩擦を低減させて、施工性を向上させることができる。
【0043】
ここで、第一の鋼管部材30と第二の鋼管部材40とを接続するための接続構造について、
図8〜
図10を用いて説明する。なお、本接続構造は、第二の鋼管部材40同士の接続にも採用されるものである。
【0044】
本接続構造は、接続される第一の鋼管部材30(下部鋼管部材)の上端に固着される円筒状の雌スプライン継手50と、接続される第二の鋼管部材40(上部鋼管部材)の下端に固着される円筒状の雄スプライン継手60と、両スプライン継手50・60同士を固定するボルト(継手固定手段)70と、を有している。
【0045】
雌スプライン継手50の下端部内径面の係合段部51には、
図9及び
図10に示すように、接続対象である第一の鋼管部材30の上端部31aの外径面が嵌合され、その嵌合部分において、雌スプライン継手50と第一の鋼管部材30とが溶接52により固定されている。一方、雄スプライン継手60の上端部には、もう一つの接続対象である第二の鋼管部材40の下端部が溶接61により固定されている。
【0046】
雌スプライン継手50には、
図8〜
図10に示すように、その内周面の上端から下方に一定長さの雌スプライン53が周方向に一定ピッチで設けられ、各雌スプライン53下端は閉じられている。また、雌スプライン継手50の外周面には、雌スプライン53の部分を避けて上下一対の座繰り凹所54が周方向に適宜数設けられ、各座繰り凹所54の底に貫通穴55が設けられている。
【0047】
雄スプライン継手60には、
図8〜
図10に示すように、その外周面の下端から上方に一定長さの雄スプライン62が雌スプライン53と嵌合しうるように、周方向に一定ピッチで設けられている。また、雄スプライン62間の部分に上下一対のねじ穴63が雌スプライン継手50の貫通穴55と合致する位置に設けられる。座繰り凹所54から貫通穴55を通して継手固定手段としてのボルト70がねじ穴63に螺入される。
【0048】
本実施形態においては、比較的大径の雌雄スプライン継手50・60が採用されており、
図9に示すように、第一の鋼管部材30の径方向外側に雌スプライン継手50が取り付けられている。また、雌スプライン継手50の内周に配置される雄スプライン継手60の内周面が、上下の鋼管部材30・40の内周面とほぼ同一面上にあり鋼管2の内部に突出しないので、鋼管2の内部空間を広く確保することができる。この結果、鋼管2内に比較的大径の装置(例えば汲み上げ能力の高い大型のポンプ等)を挿入することが可能となる。また、圧入時の捩じり荷重は、雌雄のスプライン53・62の噛み合い部分で支持され、引き抜き方向の荷重は、各ボルト70により支持されることとなる。
【0049】
次に、本実施形態に係る設置方法で使用される有孔管20について説明する。
【0050】
本実施形態においては、有孔管20として、通気性及び通水性を有する比較的大径のSUS管を採用している。本実施形態における有孔管20は、予めその先端が蓋体10に取り付けられる。具体的には、
図6(A)に示すように、有孔管20の孔21と有孔管固定筒14の貫通孔14aに寸切り棒41を通して固定すればよい。
【0051】
なお、有孔管20の先端を蓋体10に取り付ける手段としては寸切り棒41に限定されるものではなく、ワイヤー等を利用しても良いが、寸切り棒であれば、蓋体10の貫通孔14aから飛び出した先端部にナットで締めて固定することが可能であり好ましい。寸切り棒41の直径は6〜15mm程度である。
【0052】
続いて、
図11及び
図12を用いて、本実施形態に係る揚水井戸の設置方法について説明する。
【0053】
なお、本実施形態において使用される鋼管ケーシング1においては、鋼管2の先端から所定長延在する第一の部分の外径D
1を、鋼管2の第一の部分を除く第二の部分の外径D
2よりも大きく設定している。また、複数の鋼管部材30・40を接続することにより鋼管2を構成している。すなわち、本実施形態においては、本発明における「鋼管径調整工程」及び「鋼管部材接続工程」に相当する工程を経て鋼管ケーシング1を調製している。
【0054】
最初に、鋼管ケーシング1の鋼管2を構成する第一の鋼管部材30の先端に蓋体10に取り付けた状態で蓋体10を下方に向け、重機により鋼管2に回転を与えて、
図12に示す被処理層80に鋼管ケーシング1を捩じ込む。そして、蓋体10が所定の深さに到達した時点で蓋体10を鋼管2から取り外した後に鋼管2内に砕石Sを投入し、その後鋼管2を逆回転させ蓋体10及び砕石Sを残して鋼管2を軸方向に引き上げることにより砕石柱C
Sを築造する。同様の手順でこのような砕石柱C
Sを複数本、所定の間隔Gをおいて相互に離隔させて築造することにより、砕石集合柱C
Aを構成する(集合柱構成工程)。本実施形態においては、
図11に示すように、7本の砕石柱C
Sからなる平面視略六角形状の砕石集合柱C
Aを構成することとしている。また、本実施形態においては、砕石柱C
S間に設けられる間隙の間隔Gを、鋼管ケーシング1を構成する第一の鋼管部材30の本体部31の外周面から羽根32が外方に突出する寸法の2倍程度に設定している。
【0055】
次いで、鋼管2内に挿入した有孔管20と、鋼管2を構成する第一の鋼管部材30と、を蓋体10に取り付けた状態で蓋体10を下方に向け、重機により鋼管2に回転を与えて、
図11及び
図12に示す砕石集合柱C
Aの中央部に鋼管ケーシング1を捩じ込む。そして、蓋体10が所定の深さに到達した時点で蓋体10及び有孔管20を鋼管2から取り外し、その後鋼管2を逆回転させ蓋体10及び有孔管20を残して鋼管2を軸方向に引き上げることにより、砕石集合柱C
Aに有孔管20を埋設する(有孔管埋設工程)。これらの工程群を経ることにより、(例えば30mを超える)深い深度における地下水の汲み上げを行うことが可能な揚水井戸が設置されることとなる。
【0056】
以上説明した実施形態に係る鋼管ケーシング1においては、鋼管2の先端から所定長延在する部分(第一の部分)を比較的大径D
1に設定しているので、鋼管ケーシング1を用いて砕石柱C
Sを構成する際に、より大きな外径の砕石柱C
Sを築造することができる。従って、複数の砕石柱C
Sを集合させて砕石集合柱C
Aを構成する際に、砕石柱C
Sの築造本数を低減させて、コストダウンを実現させることができる。また、鋼管ケーシング1の鋼管2の先端から所定長延在する部分を除く部分(第二の部分)を比較的小径D
2に設定しているので、鋼管ケーシング1を用いて砕石柱C
Sを構成したり砕石柱C
Sに有孔管20を設置したりする際に、被処理層80や砕石柱C
Sから鋼管ケーシング1を引き上げる際の周面摩擦を低減させて、施工性を向上させることができる。
【0057】
また、以上説明した実施形態に係る鋼管ケーシング1においては、鋼管部材30・40を接続する雄スプライン継手60の内周面を、鋼管部材30・40の内周面と略同一面上に配置しており、雄スプライン継手60が鋼管部材30・40の内部に突出しないので、鋼管2の内部空間を広く確保することができる。従って、鋼管2内に比較的大径の装置(例えば汲み上げ能力の高い大型のポンプ等)を挿入することが可能となる。
【0058】
また、以上説明した実施形態に係る揚水井戸の設置方法においては、まず鋼管ケーシング1を用いて複数本の砕石柱C
Sからなる砕石集合柱C
Aを被処理層80に構成し、その後鋼管ケーシング1を用いて砕石集合柱C
Aに有孔管20を埋設して揚水井戸を設置することができる。ここで、鋼管ケーシング1の鋼管2の先端から所定長延在する部分(第一の部分)を比較的大径D
1に設定しているので、より大きな外径の砕石柱C
Sを築造することができ、また、複数本の砕石柱C
Sを所定の間隔Gをおいて相互に離隔させて築造しているため、砕石集合柱C
Aを構成する際に砕石柱C
Sの築造本数を低減させて、コストダウンを実現させることができる。また、鋼管ケーシング1の鋼管2の先端から所定長延在する部分を除く部分(第二の部分)を比較的小径D
2に設定しているので、被処理層80や砕石集合柱C
Aから鋼管ケーシング1を引き上げる際の周面摩擦を低減させて、施工性を向上させることができる。さらに、複数本の砕石柱C
Sを築造する際に砕石柱C
S間に間隙を設けることにより、砕石柱C
S築造の際に鋼管ケーシング1に作用する周面摩擦や地盤抵抗を低減させることができる。この結果、より深い深度まで削孔を行うことができ、より高い機能を有する揚水井戸を設置することが可能となる。なお、複数本の砕石柱C
Sを築造する際に砕石柱C
S間に間隙が設けられていても、鋼管ケーシング1の外周には螺旋状の羽根32が設けられているため、その間隙における廃棄物等を充分に乱すことができ、透水性を確保することができる。
【0059】
また、以上説明した実施形態に係る方法においては、複数の鋼管部材30・40を接続して長尺の鋼管2を構成することができる。この際、予め上下の鋼管部材30・40の接続端に固着された雌雄スプライン継手50・60を嵌合させ、ボルト70により両スプライン継手50・60を固定するだけで迅速に接続作業を完了することができ、捩じり荷重や引き抜き荷重に対して充分な強度を発揮させることができる。
【0060】
また、以上説明した実施形態に係る方法においては、雄スプライン継手60の内周面と鋼管部材30・40の内周面とを略同一面上に配置しており、雄スプライン継手60が鋼管部材30・40の内部に突出しないので、鋼管2の内部空間を広く確保することができる。この結果、鋼管2内に比較的大径の装置(例えば汲み上げ能力の高い大型のポンプ等)を挿入することが可能となる。
【0061】
なお、本実施形態においては、有孔管埋設工程において有孔管20を鋼管2や蓋体10とともに捩じ込んだ例を示したが、鋼管2と蓋体10を捩じ込んだ後に有孔管20を鋼管2内に挿入して砕石集合柱C
Aに有孔管20を埋設することもできる。すなわち、鋼管2を構成する第一の鋼管部材30のみを蓋体10に取り付けた状態で蓋体10を下方に向け、鋼管2に回転を与えて砕石集合柱C
Aに鋼管ケーシング1を捩じ込み、蓋体10が所定の深さに到達した時点で鋼管2内に有孔管20を挿入して蓋体10に有孔管20を到達させた後に蓋体10を鋼管2から取り外し、その後、鋼管2を逆回転させ蓋体10及び有孔管20を残して鋼管2を軸方向に引き上げることにより、砕石集合柱C
Aに有孔管を埋設することができる。
【0062】
また、本実施形態においては、7本の砕石柱C
Sからなる平面視略六角形状の砕石集合柱C
Aを構成した例を示したが、砕石集合柱を構成する砕石柱の本数や砕石集合柱の平面形状はこれに限られるものではない。例えば、4本の砕石柱からなる平面視略三角形状の砕石集合柱や、5本の砕石柱からなる平面視略四角形状の砕石集合柱等を構成してもよい。
【0063】
また、本実施形態においては、鋼管2を構成する第一の鋼管部材30(下部鋼管部材)に雌スプライン継手50を固着し、第二の鋼管部材40(上部鋼管部材)に雄スプライン継手60を固着した例を示したが、雌雄のスプライン継手を入れ替えてもよい。すなわち、鋼管2を構成する第一の鋼管部材30(下部鋼管部材)に雄スプライン継手60を固着し、第二の鋼管部材40(上部鋼管部材)に雌スプライン継手50を固着することもできる。
【0064】
また、本実施形態においては、鋼管ケーシング1を用いて複数の砕石柱C
Sからなる平面視略六角形状の砕石集合柱C
Aを構成した例を示したが、
図13に示すように、鋼管ケーシング1を用いて複数の砕石柱C
Sを一定方向に並べて築造することにより、平面視略直線状に延在する所定幅の砕石壁C
Wを構成することもできる。このような砕石壁C
Wを構成した場合には、砕石壁C
Wを構成する少なくとも何れか一つ(例えば中央)の砕石柱C
Sに、鋼管ケーシング1を用いて有孔管20を埋設し、この有孔管20を介して地下水を汲み上げることができる。
【0065】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、この実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる(例えば、雌雄のスプライン継手を上下入れ替えることができる)。また、前記実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。