特許第6116838号(P6116838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6116838車両用の電源装置とこの電源装置を備える電動車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116838
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】車両用の電源装置とこの電源装置を備える電動車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20060101AFI20170410BHJP
   B60K 6/44 20071001ALI20170410BHJP
   B60K 6/28 20071001ALI20170410BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170410BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20170410BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20170410BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20170410BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   B60L3/00 S
   B60K6/44
   B60K6/28
   H02J7/00 P
   H02J7/02 H
   H01M2/10 S
   H01M10/48 P
   H01M10/48 301
   H01M10/44 P
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-199936(P2012-199936)
(22)【出願日】2012年9月11日
(65)【公開番号】特開2014-57415(P2014-57415A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】國光 智徳
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−187629(JP,A)
【文献】 特開2006−053120(JP,A)
【文献】 特開2008−178183(JP,A)
【文献】 特開2012−138213(JP,A)
【文献】 特開2000−115908(JP,A)
【文献】 特開2000−115909(JP,A)
【文献】 特開2012−055099(JP,A)
【文献】 特開2009−268211(JP,A)
【文献】 特開平09−289797(JP,A)
【文献】 LEAF ZE0型車 新型車解説書,日本,日産自動車株式会社,2010年12月,EVB−12頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20−6/547
B60L 1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
B60W10/00
10/02
10/06
10/08
10/10
10/18
10/26
10/28
10/30−20/50
H01M 2/10
10/42−10/48
H02J 7/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行モータに電力を供給する走行用バッテリであって、前記走行用バッテリが直列に接続される複数の電池を含んでおり、かつ、前記走行用バッテリの一方の出力側に出力スイッチが設けられると共に、前記走行用バッテリの他方の出力側と車両のシャーシに接地される車両側のアースラインとが前記出力スイッチを介さずに接続されている、該走行用バッテリと、
前記複数の電池の各々の電圧を検出する電圧検出回路を備えるバッテリコントロールユニットであって、前記走行用バッテリと共通のアースラインに接続されるように、前記電圧検出回路が車両側のアースラインに接続されている、該バッテリコントロールユニットと、を備え
前記バッテリコントロールユニットは、さらに、前記走行用バッテリの電池状態を検出する電池状態検出回路と、この電池状態検出回路で検出される電池状態に基づいて検出される電池情報を車両側に伝送するインターフェース回路を備え、
前記電池状態検出回路は、前記電圧検出回路を含み、
前記インターフェース回路は、アースラインを車両側のアースラインに接続され、かつ、該インターフェース回路と車両側とのアースラインを絶縁する絶縁部を備えることなく、電池情報を車両側に伝送するように構成されていることを特徴とする車両用の電源装置。
【請求項2】
前記走行用バッテリの定格電圧が60V以下である請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項3】
前記電池状態検出回路が、前記電圧検出回路と、前記走行用バッテリの電池温度を検出する温度検出回路と、残容量を検出する残容量検出回路を備える請求項1又は2に記載される車両用の電源装置。
【請求項4】
前記走行用バッテリが車両の電装機器に電力を供給する請求項1からのいずれかに記載される車両用の電源装置。
【請求項5】
前記バッテリコントロールユニットが、走行用バッテリを構成する各電池の電圧を均等
化する均等化回路を備え、
この均等化回路のアースラインが、車両のアースラインに接続されて請求項1からのいずれかに記載される車両用の電源装置。
【請求項6】
前記バッテリコントロールユニットが、前記出力スイッチを介さずに前記走行用バッテリに接続される電源回路であって、前記走行用バッテリの出力電圧を変換して、前記電圧検出回路の電源ラインに電力を供給する電源回路を備え、
この電源回路のアースラインが車両のアースラインに接続されてなる請求項1からのいずれかに記載される車両用の電源装置。
【請求項7】
前記バッテリコントロールユニットが、前記電圧検出回路で検出される電池電圧で走行用バッテリの充放電を制御するバッテリコントロール回路を備え、
このバッテリコントロール回路のアースラインが車両側のアースラインに接続されてなる請求項1からのいずれかに記載される車両用の電源装置。
【請求項8】
前記走行用バッテリの出力側に接続してなる出力スイッチと、この出力スイッチと並列に接続してなる、プリチャージスイッチとプリチャージ抵抗との直列回路からなるプリチャージ回路とを備え、
前記出力スイッチと前記プリチャージ回路との並列回路は、前記走行用バッテリの正負の何れかの出力側に接続され、
前記プリチャージ回路で車両側負荷のコンデンサーをプリチャージする状態で、前記出力スイッチをオンに切り換えるようにしてなる請求項1からのいずれかに記載される車両用の電源装置。
【請求項9】
車両を走行させる走行モータと、この走行モータに電力を供給する走行用バッテリを備える電源装置と、この電源装置の走行用バッテリを充電する発電機と、この発電機を駆動するエンジンと、前記エンジンを制御するエンジンコントロールユニットと、を備える電動車両であって、
前記電源装置が、
車両の走行モータに電力を供給する走行用バッテリであって、前記走行用バッテリが直列に接続される複数の電池を含んでおり、かつ、前記走行用バッテリの一方の出力側に出力スイッチが設けられると共に、前記走行用バッテリの他方の出力側と車両のシャーシに接地される車両側のアースラインとが前記出力スイッチを介さずに接続されている、該走行用バッテリと、
前記複数の電池の各々の電圧を検出する電圧検出回路を備えるバッテリコントロールユニットであって、前記走行用バッテリと共通のアースラインに接続されるように、前記電圧検出回路が車両側のアースラインに接続されている、該バッテリコントロールユニットと、を備えており、
前記バッテリコントロールユニットは、さらに、前記走行用バッテリの電池状態を検出する電池状態検出回路と、この電池状態検出回路で検出される電池状態に基づいて検出される電池情報を前記エンジンコントロールユニットに伝送するインターフェース回路を備え、
前記電池状態検出回路は、前記電圧検出回路を含み、
前記インターフェース回路は、アースラインを車両側のアースラインに接続され、かつ、該インターフェース回路と車両側とのアースラインを絶縁する絶縁部を備えることなく、電池情報を前記エンジンコントロールユニットに伝送するように構成されていることを特徴とする電動車両。
【請求項10】
前記走行用バッテリの定格電圧60V以下である請求項に記載される電動車両。
【請求項11】
前記電池状態検出回路が、前記電圧検出回路と、前記走行用バッテリの電池温度を検出する温度検出回路を備える請求項9又は10に記載される電動車両。
【請求項12】
前記走行用バッテリが車両の電装機器に電力を供給する請求項9から11のいずれかに記載される電動車両。
【請求項13】
前記バッテリコントロールユニットが、前記走行用バッテリを構成する各電池の電圧を均等化する均等化回路を備え、
均等化回路のアースラインを、車両のアースラインに接続してなる請求項9から12のいずれかに記載される電動車両。
【請求項14】
前記バッテリコントロールユニットが、前記出力スイッチを介さずに前記走行用バッテリに接続される電源回路であって、前記走行用バッテリの出力電圧を変換して、前記電圧検出回路の電源ラインに電力を供給する電源回路を備え、
この電源回路のアースラインが車両のアースラインに接続されてなる請求項9から13のいずれかに記載される電動車両。
【請求項15】
前記バッテリコントロールユニットが、前記電圧検出回路で検出される電池電圧で走行用バッテリの充放電を制御するバッテリコントロール回路を備え、
このバッテリコントロール回路のアースラインが車両のアースラインに接続されてなる請求項9から14のいずれかに記載される電動車両。
【請求項16】
さらに、前記出力スイッチと並列に接続してなる、プリチャージスイッチとプリチャージ抵抗との直列回路からなるプリチャージ回路と、前記出力スイッチと前記プリチャージスイッチとを制御する切換回路とを備え、
前記出力スイッチと前記プリチャージ回路との並列回路が、前記走行用バッテリの正負の何れかの出力側に接続され、
前記切換回路のアースラインが車両のアースラインに接続され、
前記切換回路が前記プリチャージ回路で車両側負荷のコンデンサーをプリチャージする状態で、前記出力スイッチをオンに切り換えるようにしてなる請求項9から15のいずれかに記載される電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッドカーや電気自動車などの電動車両に搭載される電源装置と、この電源装置を備える電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッドカーや電気自動車等の電動車両に搭載される電源装置は、車両を走行させるモータへの出力電力を大きくするために、複数の電池を直列に接続して出力電圧を高くしている走行用バッテリを備える。走行用バッテリは、モータに電力を供給して、モータで車両を走行し、また加速する。
【0003】
ハイブリッドカーは、電源装置の走行用バッテリで駆動されるモータとエンジンの両方で走行し、電気自動車は、電源装置の走行用バッテリで駆動されるモータのみで走行する。また、ハイブリッドカーは、エンジンで発電機を駆動して走行用バッテリを充電し、ハイブリッドカーや電気自動車は、車両の回生制動によっても走行用バッテリを充電する。
【0004】
この電源装置は、各電池の過充電と過放電を防止するように充放電をコントロールして、電池の劣化を少なく、また寿命を長くできる。このことを実現するために、電源装置は、走行用バッテリの電池状態を検出して、充放電をコントロールするバッテリコントロールユニットを備えている。バッテリコントロールユニットは電圧検出回路や残容量検出回路等を備えている。電圧検出回路は、走行用バッテリを構成する各々の電池の電圧を検出して、各電池の過充電や過放電、あるいは過充電や過放電に近い状態を判定し、残容量検出回路は走行用バッテリの残容量を検出する。このバッテリコントロールユニットは、電圧検出回路で電池の電圧を検出し、残容量検出回路で走行用バッテリの残容量を検出して、走行用バッテリの充放電をコントロールする。たとえば、バッテリコントロールユニットは、走行用バッテリが放電されて、何れかの電池の電圧が最低電圧まで低下して、過放電や過放電に近い状態になると、放電を停止し、また、何れかの電池の電圧が最高電圧まで上昇して過充電やこれに近い状態になると、充電を停止又は充電電流を小さくして、電池の過放電と過充電を防止する。
【0005】
バッテリコントロールユニットは、走行用バッテリに接続されるが、出力電圧の高い走行用バッテリは、漏電や感電などの弊害を防止して安全性を向上させるために、アースラインを車両側のアースラインには接続せずに、車両側のアースラインから絶縁している。車両側のアースラインから絶縁されるバッテリコントロールユニットは、装備する電圧検出回路や残容量検出回路等、全てのアースラインが車両側のアースラインには接続されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−286292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電動車両は、バッテリコントロールユニットから伝送される走行用バッテリの電池情報で走行用バッテリの放電電流をコントロールしながら走行する。したがって、車両用の電源装置は、走行用バッテリを構成している各々の電池の電圧を検出して、この検出電圧から走行用バッテリの充放電の電流をコントロールして車両を走行させている。電動車両をこの状態で走行させるために、車両用の電源装置は、バッテリコントロールユニットに設けている電圧検出回路で検出される各電池電圧等を直接に車両側に伝送し、あるいは、電池電圧や温度などの電池情報をインターフェース回路を介して車両側に伝送している。電圧検出回路やインターフェース回路は、走行用バッテリに接続されるので、走行用バッテリを車両側のアースラインから絶縁するバッテリコントロールユニットは、これを実装する回路基板を車両側のアースラインから絶縁して配置する必要があり、また、電池電圧等の電池情報を、アースラインが接続されない絶縁回路を介して車両側に伝送する必要があって、部品コストが高くなる欠点がある。
【0008】
本発明は、さらに以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、走行用バッテリを好ましい状態で充放電しながら、全体の回路構成を簡単にできる車両用の電源装置とこれを搭載する電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明の車両用の電源装置は、複数の電池10を直列に接続しており、車両の走行モータ34に電力を供給する走行用バッテリ1と、この走行用バッテリ1を構成してなる各電池10の電圧を検出する電圧検出回路6を備えるバッテリコントロールユニット2とを備えている。電源装置は、バッテリコントロールユニット2のアースライン9が車両側のアースライン41に接続されて、バッテリコントロールユニット2が車両側のアースライン41から絶縁される絶縁部を装備しない。
【0010】
以上の電源装置は、走行用バッテリ1の充放電を好ましい状態としながら、全体の回路構成を簡単にできる特徴がある。それは、以上の電源装置が、走行用バッテリ1に接続しているバッテリコントロールユニット2のアースライン9を、車両のアースライン41に接続しているので、電源装置と車両側との間に、アースラインを接続しない絶縁回路を設けることなく、電源装置で走行用バッテリの各電池電圧を検出し、車両側では各電池の検出電圧に基づいて走行用バッテリの充放電をコントロールできるからである。
【0011】
本発明の車両用の電源装置は、走行用バッテリ1の定格電圧を60V以下とすることができる。
以上の車両用の電源装置は、走行用バッテリの定格電圧が低いので、電源装置のアースラインを車両のアースラインに接続しながら、漏電や感電の被害を少なくできる特徴がある。
【0012】
本発明の車両用の電源装置は、バッテリコントロールユニット2が、走行用バッテリ1の電池状態を検出する電池状態検出回路3と、この電池状態検出回路3で検出される電池状態に基づいて検出される電池情報を車両側に伝送するインターフェース回路5を備えて、電池状態検出回路3は電圧検出回路6を含み、インターフェース回路5はアースライン9を車両側のアースライン41に接続して、インターフェース回路5と車両側とのアースラインを絶縁する絶縁部を設けることなく電池情報を車両側に伝送することができる。
以上の車両用の電源装置は、電源装置と車両側との間に絶縁回路を設けることなく、インターフェース回路でもって走行用バッテリの電池情報を車両側に伝送できる。したがって、車両側では、走行用バッテリの電池情報に基づいて、走行用バッテリを理想的な状態で充放電して、電池の劣化を防止し、電池の寿命を長くできる。
【0013】
本発明の車両用の電源装置は、電池状態検出回路3が、電圧検出回路6と、走行用バッテリ1の電池温度を検出する温度検出回路7と、残容量を検出する残容量検出回路8を備えることができる。
以上の電源装置は、車両側に各電池の電圧のみでなく、電池の温度と残容量からも、走行用バッテリの充放電をコントロールして、より理想的な状態で走行用バッテリを充放電できる。このため、走行用バッテリの劣化をより少なくして、電池寿命をより長くできる。
【0014】
本発明の車両用の電源装置は、走行用バッテリ1が車両の電装機器38に電力を供給することができる。
以上の電源装置は、走行用バッテリから車両側の電装機器に電力を供給するので、車両側では電装用バッテリを搭載することなく、走行用バッテリで電装機器を動作できる。
【0015】
本発明の車両用の電源装置は、バッテリコントロールユニット2が、走行用バッテリ1を構成する各電池10の電圧を均等化する均等化回路17を備えて、この均等化回路17のアースライン9を、車両のアースライン41に接続することができる。
以上の電源装置は、走行用バッテリを構成する各電池を均等化しながら充放電するので、特定の電池が過充電や過放電されるのを防止しながら、走行用バッテリを充放電できる。このため、特定の電池が劣化する弊害を防止して、走行用バッテリの寿命を長くできる。また、均等化回路のアースラインを車両のアースラインに接続するので、均等化回路の回路構成、とくに均等化回路の電源回路を簡単にできる特徴がある。電源回路に、車両のアースラインから絶縁された絶縁型の電源回路を使用する必要がないからである。
【0016】
本発明の車両用の電源装置は、バッテリコントロールユニット2が、走行用バッテリ1の出力電圧を変換して、電圧検出回路6の電源ラインに電力を供給する電源回路16を備えて、この電源回路16のアースライン9を車両のアースライン41に接続することができる。
以上の電源装置は、走行用バッテリから電圧検出回路に動作電力を供給するので、電圧検出回路に、電装用バッテリなどから動作電力を供給する必要がなく、電源回路を簡単にできる。
【0017】
本発明の車両用の電源装置は、バッテリコントロールユニット2が、電圧検出回路6で検出される電池電圧で走行用バッテリ1の充放電を制御するバッテリコントロール回路4を備えて、このバッテリコントロール回路4のアースライン9を車両のアースライン41に接続することができる。
以上の電源装置は、バッテリコントロール回路でもって、各電池電圧から走行用バッテリの充放電電流を最適値にコントロールできる。この回路構成の電源装置は、電圧検出回路で各電池電圧を検出し、バッテリコントロール回路でもって、電圧検出回路で検出する電池電圧から走行用バッテリを充放電する電流を演算して、演算される電流で走行用バッテリをコントロールして、走行用バッテリの劣化を防止して寿命を長くできる。
【0018】
本発明の車両用の電源装置は、走行用バッテリ1の出力側に接続してなる出力スイッチ11と、この出力スイッチ11と並列に接続してなる、プリチャージスイッチ13とプリチャージ抵抗14との直列回路からなるプリチャージ回路12と、出力スイッチ11とプリチャージスイッチ13とを制御する切換回路15とを備えて、出力スイッチ11とプリチャージ回路12との並列回路を、走行用バッテリ1の正負の何れかの出力側に接続し、さらに、切換回路15のアースライン9を車両側のアースライン41に接続することができる。この電源装置は、切換回路15がプリチャージ回路12で車両側負荷30のコンデンサー31をプリチャージする状態で、出力スイッチ11をオンに切り換えることができる。
以上の電源装置は、出力スイッチとプリチャージ回路とを、走行用バッテリの正負の片側の出力側に接続するので、出力スイッチとこれを接続する切換回路の回路構成を簡単にできる。
【0019】
本発明の電動車両は、車両を走行させる走行モータ34と、この走行モータ34に電力を供給する走行用バッテリ1を備える電源装置100と、この電源装置100の走行用バッテリ1を充電する発電機35と、この発電機35を駆動するエンジン36とを備える。電源装置は、複数の電池10を直列に接続して、車両の走行モータ34に電力を供給する走行用バッテリ1と、この走行用バッテリ1を構成してなる各電池10の電圧を検出する電圧検出回路6を備えるバッテリコントロールユニット2とを備えて、走行用バッテリ1のアースライン9と、電圧検出回路6のアースライン9を車両のアースライン41に接続している。
【0020】
以上の電動車両は、走行用バッテリの充放電を好ましい状態にコントロールしながら、全体の回路構成を簡単にできる特徴がある。それは、以上の電動車両が、走行用バッテリのアースラインと、電圧検出回路のアースラインの両方を、車両のアースラインに接続しているので、電源装置と車両側との間に、アースラインを接続しない絶縁回路を設けることなく、電源装置で走行用バッテリの各電池電圧を検出し、車両側では各電池の検出電圧に基づいて走行用バッテリの充放電をコントロールできるからである。
【0021】
本発明の電動車両は、走行用バッテリ1の定格電圧を60V以下とすることができる。
以上の電動車両は、走行用バッテリの定格電圧を低くしているので、電源装置のアースラインを車両のアースラインに接続しながら、漏電や感電の被害を少なくできる特徴がある。
【0022】
本発明の電動車両は、エンジン36で車両を走行させることができる。
以上の電動車両は、モータとエンジンの両方で車両を走行できる。
【0023】
本発明の電動車両は、エンジン36を制御するエンジンコントロールユニット32を備えて、バッテリコントロールユニット2が、走行用バッテリ1の電池状態を検出する電池状態検出回路3と、電池状態検出回路3で検出される走行用バッテリ1の電池情報をエンジンコントロールユニット32に伝送するインターフェース回路5を備えて、電池状態検出回路3は前記電圧検出回路6を含み、インターフェース回路5はアースライン9を車両側のアースライン41に接続すると共に、アースラインを絶縁してなる絶縁回路を介することなく、電池情報をエンジンコントロールユニット32に伝送することができる。
以上の電動車両は、電源装置と車両側との間に絶縁回路を設けることなく、インターフェース回路でもって走行用バッテリの電池情報を車両側に伝送できる。したがって、車両側では、走行用バッテリの電池情報に基づいて、走行用バッテリを理想的な状態で充放電して、電池の劣化を防止して、電池の寿命を長くできる。
【0024】
本発明の電動車両は、電池状態検出回路3が、電圧検出回路6と、走行用バッテリ1の電池温度を検出する温度検出回路7を備えることができる。
以上の電動車両は、電源装置から車両側に各電池の電圧のみでなく、電池の温度も電池情報として伝送するので、車両側では電池の電圧と温度の両方から理想的な状態で走行用バッテリを充放電できる。このため、走行用バッテリの劣化をより少なくして、電池寿命をより長くできる。
【0025】
本発明の電動車両は、走行モータ34を発電機35に兼用することができる。
以上の電動車両は、走行モータを発電機に兼用するので、専用の発電機を設けることなく、走行用バッテリを充電できる。
【0026】
本発明の電動車両は、車両の電装機器38に電力を供給する、定格電圧を12Vとする電装用バッテリ40を備えることができる。
以上の電動車両は、電源電圧を12Vとする従来の電装機器を使用しながら、走行用バッテリから車両を走行させるモータに電力を供給できる。
【0027】
本発明の電動車両は、走行用バッテリ1が車両の電装機器38に電力を供給することができる。
以上の電動車両は、走行用バッテリから車両側の電装機器に電力を供給するので、電装用バッテリを搭載することなく、走行用バッテリで電装機器に動作電力を供給できる。
【0028】
本発明の電動車両は、バッテリコントロールユニット2が、走行用バッテリ1を構成する各電池10の電圧を均等化する均等化回路17を備えて、均等化回路17のアースライン9を、車両のアースライン41に接続することができる。
以上の電動車両は、走行用バッテリを構成する各電池を均等化しながら充放電するので、特定の電池が過充電や過放電になるのを防止しながら、走行用バッテリを充放電できる。このため、特定の電池が劣化する弊害を防止して、走行用バッテリの寿命を長くできる。また、均等化回路のアースラインを車両のアースラインに接続するので、均等化回路の回路構成、とくに均等化回路の電源回路を簡単にできる特徴がある。電源回路に、車両のアースラインから絶縁された絶縁型の電源回路を使用する必要がないからである。
【0029】
本発明の電動車両は、バッテリコントロールユニット2が、走行用バッテリ1の出力電圧を変換して、電圧検出回路6の電源ラインに電力を供給する電源回路16を備えて、この電源回路16のアースライン9を車両のアースライン41に接続することができる。
以上の電動車両は、走行用バッテリから電圧検出回路に動作電力を供給するので、電圧検出回路に、電装用バッテリなどから動作電力を供給する必要がなく、電源回路を簡単にできる。
【0030】
本発明の電動車両は、バッテリコントロールユニット2が、電圧検出回路6で検出される電池電圧で走行用バッテリ1の充放電を制御するバッテリコントロール回路4を備えて、このバッテリコントロール回路4のアースライン9を車両のアースライン41に接続することができる。
以上の電動車両は、バッテリコントロール回路でもって、各電池電圧から走行用バッテリの充放電電流を最適値にコントロールできる。この回路構成の電源装置は、電圧検出回路で各電池電圧を検出し、バッテリコントロール回路でもって、電圧検出回路で検出する電池電圧から走行用バッテリを充放電する電流を演算して、演算される電流で走行用バッテリをコントロールして、走行用バッテリの劣化を防止して電池寿命を長くできる。
【0031】
本発明の電動車両は、走行用バッテリ1の出力側に接続してなる出力スイッチ11と、この出力スイッチ11と並列に接続してなる、プリチャージスイッチ13とプリチャージ抵抗14との直列回路からなるプリチャージ回路12と、出力スイッチ11とプリチャージスイッチ13とを制御する切換回路15とを備えて、出力スイッチ11とプリチャージ回路12との並列回路を、走行用バッテリ1の正負の何れかの出力側に接続し、切換回路15のアースライン9を車両のアースライン41に接続することができる。この電動車両は、切換回路15がプリチャージ回路12で車両側負荷30のコンデンサー31をプリチャージする状態で、出力スイッチ11をオンに切り換えることができる。
以上の電動車両は、出力スイッチとプリチャージ回路とを、走行用バッテリの正負の片側に出力側に接続するので、出力スイッチとこれを接続する切換回路の回路構成を簡単にできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施の形態にかかる電源装置を備える電動車両のブロック図である。
図2】本発明の他の実施の形態にかかる電源装置を備える電動車両のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための車両用の電源装置とこれを搭載する電動車両を例示するものであって、本発明は電源装置と電動車両を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。
【0034】
(電動車両)
図1は、電動車両であるハイブリッドカーのブロック図である。この電動車両は、電源装置を車両側の負荷30に接続している。電源装置は、走行用バッテリ1と、走行用バッテリ1の充放電を制御するバッテリコントロールユニット2とを備える。車両側の負荷30は、電源装置の出力側に接続しているコンデンサー31と、バッテリコントロールユニット2から伝送される電池情報で走行用バッテリ1の電流をコントロールするエンジンコントロールユニット(ECU)32と、走行用バッテリ1の出力をモータ34に供給するDC/ACインバータ33と、DC/ACインバータ33に接続しているモータ34とを備える。この図の電動車両は、モータ34を発電機35に兼用している。モータ34は車両の車輪37を回転して車両を走行し、モータ34に兼用される発電機35は、走行用バッテリ1を充電する。モータ34に兼用される発電機35は、エンジン36に回転されて走行用バッテリ1を充電し、また回生制動で車輪37に回転されて走行用バッテリ1を充電する。
【0035】
図1の電動車両は、モータ34を発電機35に兼用するが、図2に示すように、モータ34と発電機35を別に設けることもできる。この電動車両は、走行用バッテリ1でモータ34を駆動し、発電機35をエンジン36と車輪37の回生制動で駆動して、走行用バッテリ1を充電する。
【0036】
図1の電動車両は、電装機器38の電源に電源装置の走行用バッテリ1を使用する。したがって、走行用バッテリ1が電装機器38に動作電力を供給する。電装機器38は、走行用バッテリ1の出力電圧で動作する。さらに、図1の電動車両は、ECU32にも走行用バッテリ1から動作電力を供給する。この電動車両は、定格電圧を12Vとする電装用バッテリを搭載することなく、走行用バッテリ1から電装機器38とECU32に動作電力を供給する。
【0037】
ただ、電動車両は、図2のブロック図に示すように、電装用バッテリ40を搭載して、この電装用バッテリ40から電装機器38とECU32に動作電力を供給することもできる。この図の電動車両は、電装用バッテリ40のマイナス側、すなわち車両側のアースライン41を車両側のシャーシーアース42に接続して、電装機器38とECU32のアースライン41を車両のシャーシーアース42に接続している。電装用バッテリ40には定格電圧を12Vとする鉛バッテリを使用する。
【0038】
(車両側の負荷30)
車両側の負荷30は、電源装置の出力側に大容量のコンデンサー31を並列に接続している。このコンデンサー31は、走行用バッテリ1の放電状態において、負荷30に瞬間的に大電力を供給する。したがって、走行用バッテリ1と並列にコンデンサー31を接続して、車両側の負荷30に供給できる瞬間電力を大きくできる。コンデンサー31から負荷30に瞬間的に供給できる電力は、静電容量を大きくして大きくできるので、このコンデンサー31には、たとえば1000〜6000μFと極めて大きい静電容量のものが使用される。
【0039】
ECU32は、アースライン41を車両のシャーシーアースに接続している。図1のECU32は、走行用バッテリ1から動作電力を供給している。したがって、このECU32は、走行用バッテリ1の電圧を変換すると共に、電圧を安定化して出力する電源回路(図示せず)を備える。
【0040】
ECU32は、モータ34とエンジン36の出力をコントロールして車両を所定の速度で走行させる。ECU32は、電源装置から伝送される走行用バッテリ1の電池情報と、ドライバーのアクセル操作量に基づいて、モータ34とエンジン36の出力をコントロールして、車両を所定の速度で走行させる。電源装置は、走行用バッテリ1を構成している各電池10の電圧、残容量、温度等を電池情報としてECU32に伝送する。この電池情報を検出するECU32は、各電池10の過充電や過放電を防止し、かつ電池10の劣化が少なくなる電流で走行用バッテリ1からモータ34に電力を供給し、また、走行用バッテリ1を充電する。電源装置は、走行用バッテリ1を充放電する最大電流を電池情報としてECU32に伝送することもできる。この電源装置は、走行用バッテリ1の電池10の電圧、温度、残容量から最大電流を演算してECU32に伝送する。
【0041】
DC/ACインバータ33は、走行用バッテリ1の直流を交流に変換して、モータ34に供給する。DC/ACインバータ33は、走行用バッテリ1の電圧を昇圧してモータ34に供給することもできる。モータ34は、主として三相交流モータが使用されるので、DC/ACインバータ33は、直流を三相交流に変換してモータ34に供給する。DC/ACインバータ33は、ECU32にコントロールされて、モータ34の供給電力をコントロールする。DC/ACインバータ33は、走行用バッテリ1の電圧を昇圧してモータ34に供給する。この電動車両は、走行用バッテリ1の電圧を低くして、モータ34の供給電圧を高くして、モータ34の出力を大きくできる。ただ、DC/ACインバータは、走行用バッテリの電圧を昇圧することなくモータに供給することもできる。
【0042】
さらに、DC/ACインバータ33は、走行用バッテリ1を充電する状態にあっては、モータ34に兼用される発電機35の交流出力を直流に変換して、走行用バッテリ1を充電する。ECU32は、走行用バッテリ1の残容量が設定範囲、たとえば、50%±20%となるように、DC/ACインバータ33をコントロールして、走行用バッテリ1の放電と充電をコントロールする。走行用バッテリ1の残容量が少なくなると、エンジン36でモータ34の発電機35を駆動して、走行用バッテリ1を充電する。走行用バッテリ1の残容量が設定範囲になると、走行用バッテリ1の充電を停止する。ECU32は、走行用バッテリ1の残容量が設定範囲よりも小さくなると、走行用バッテリ1の放電を停止させる。走行用バッテリ1の残容量は、電源装置のバッテリコントロールユニット2から電池情報として、ECU32に伝送される。
【0043】
モータ34は、DC/ACインバータ33を介して走行用バッテリ1から電力を供給して車輪37を駆動して車両を走行させる。エンジン36は、ECU32に制御されて車輪37を駆動し、またモータ34の発電機35を回転して走行用バッテリ1を充電する。モータ34とエンジン36は、ECU32にコントロールされて、走行用バッテリ1の残容量を設定範囲としながら、車両を所定の速度で走行させる。
【0044】
電装機器38は、オーディオ機器、エアコン、照明などで、車両に搭載されて電気で駆動される全ての機器である。従来の電動車両は、定格電圧を12Vとする鉛バッテリの電装用バッテリで電装機器に電力を供給している。図1の電動車両は、電源装置に内蔵する走行用バッテリ1からこれ等の電装機器38に動作電圧を供給する。この電動車両は、電源装置又は車両側に、走行用バッテリ1の出力電圧を直流12Vに変換するDC/DCコンバータ(図示せず)を設けて、12Vで動作する電装機器38に電力を供給できる。ただ、走行用バッテリの電圧で動作する電装機器を使用して、DC/DCコンバータを介することなく、走行用バッテリから電装機器に電力を供給できる。
【0045】
(電源装置)
電源装置は、モータ34に電力を供給する走行用バッテリ1と、走行用バッテリ1の充放電をコントロールするバッテリコントロールユニット2と、走行用バッテリ1の出力側に接続している出力スイッチ11と、この出力スイッチ11と並列に接続しているプリチャージ回路12とを備える。バッテリコントロールユニット2は回路基板に電子部品を実装して実現される。この回路基板に実装される全ての電子回路は、アースライン9を車両側のアースライン41に接続している。図1図2の走行用バッテリ1は、マイナス側をアースライン9として、車両のアースライン41に接続している。ただ、走行用バッテリは、必ずしもマイナス側をアースラインとして車両のアースラインに接続する必要はなく、たとえば、直列に接続している電池の接続点を車両のアースラインに接続し、あるいはプラス側を車両のアースラインに接続することもできる。
【0046】
図1図2の電源装置は、走行用バッテリ1のプラス側にのみ出力スイッチ11を接続している。出力スイッチは、走行用バッテリのマイナス側にのみ接続することもできる。出力スイッチをマイナス側に接続する電源装置は、走行用バッテリのプラス側を車両のアースラインに接続する。出力スイッチ11は、励磁コイルの通電を制御して接点をオンオフに切り換えるコンタクタである。ただ、出力スイッチ11には、IGBT等の大電流をオンオフに制御できる半導体スイッチング素子も使用できる。出力スイッチ11は、切換回路15でオンオフに制御される。
【0047】
プリチャージ回路12は、プリチャージスイッチ13とプリチャージ抵抗14の直列回路を出力スイッチ11と並列に接続している。プリチャージスイッチ13は、出力スイッチ11と同じように、励磁コイルの通電を制御して接点をオンオフに切り換えるコンタクタである。ただ、プリチャージスイッチ13も、IGBT、パワーMOSFET、パワートランジスタなどの大電流を制御できる半導体スイッチング素子を使用できる。プリチャージ回路12は、出力スイッチ11をオンに切り換える前に、車両側のコンデンサー31をプリチャージする。プリチャージ回路12は、プリチャージ抵抗14でもって、コンデンサー31の突入電流を制限してコンデンサー31をプリチャージする。切換回路15は、プリチャージ回路12でコンデンサー31をプリチャージした後、出力スイッチ11をオンに切り換えて、突入電流による出力スイッチ11の損傷を防止する。
【0048】
走行用バッテリ1は、出力電圧を30V以上で60V以下、好ましくは40V以上であって60V以下としている。走行用バッテリ1は、複数の電池10を直列に接続して出力電圧を高くしている。また、複数の電池を並列に接続して容量を大きくすることもできる。走行用バッテリ1の電池10は、リチウムイオン電池やリチウムポリマー電池などの非水系電解液電池である。電池10を非水系電解液電池とする走行用バッテリ1は、容積と重量に対する充電容量を大きくできる。走行用バッテリ1は、13個のリチウムイオン電池又はリチウムポリマー電池を直列に接続して、定格電圧を約48Vにできる。ただ、走行用バッテリは、電池をニッケル水素電池などの充電できる全ての電池とすることもできる。
【0049】
(バッテリコントロールユニット2)
図1図2のバッテリコントロールユニット2は、走行用バッテリ1の電池状態を検出する電池状態検出回路3と、電池状態検出回路3で検出する電池状態を演算して、走行用バッテリ1の充放電をコントロールするのに必要な電池情報を検出するバッテリコントロール回路4と、バッテリコントロール回路4で演算される電池情報を車両側のECU32に伝送するインターフェース回路5と、出力スイッチ11及びプリチャージ回路12を制御する切換回路15と、走行用バッテリ1の電圧をバッテリコントロールユニット2の、電圧検出回路6などの電源ラインに動作電圧に変換して供給する電源回路16を備え、これ等の全ての電子回路は回路基板に電子部品を実装して実現している。さらに、図1のバッテリコントロールユニット2は、走行用バッテリ1を構成する電池10の電圧を均等化する均等化回路17も同じ回路基板に実装しており、この均等化回路17もアースライン9を車両のアースライン41に接続している。
【0050】
均等化回路17は、各電池10と並列に接続している複数の放電回路18を備える。放電回路18は、放電スイッチ20と放電抵抗21との直列回路からなり、放電スイッチ20は均等化制御回路19でオンオフに制御される。均等化制御回路19は、電圧検出回路6で検出される各電池10の電圧を比較し、電圧の最も高い電池10に接続している放電回路18の放電スイッチ20をオンに切り換えて放電して、電圧を低下して均等化する。
【0051】
(電池状態検出回路3)
電池状態検出回路3は、走行用バッテリ1を構成する各電池10の電圧を検出する電圧検出回路6と、走行用バッテリ1の電池温度を検出する温度検出回路7と、走行用バッテリ1の残容量を検出する残容量検出回路8とを備えている。電圧検出回路6と、温度検出回路7と、残容量検出回路8は、アースライン9を車両のアースライン41に接続している。バッテリコントロールユニット2に含まれる全ての電子回路は、アースライン9を車両のアースライン41に接続している。
【0052】
電圧検出回路6は、各電池10の電圧を検出して、バッテリコントロール回路4に出力し、温度検出回路7は、電池10の温度を検出してバッテリコントロール回路4に出力し、さらに、残容量検出回路8は、電池10の残容量を検出して残容量をバッテリコントロール回路4に出力する。残容量検出回路8は、走行用バッテリ1の充放電電流を積算して残容量を演算する。残容量検出回路8は、充電電流の積算値を加算し、放電電流の積算値を減算して残容量を演算する。残容量検出回路8は、電池10の電圧が最高電圧に上昇し、また最低電圧に低下する状態で、残容量を補正してより正確に残容量を演算する。
【0053】
(バッテリコントロール回路4)
バッテリコントロール回路4は、アースライン9を車両のアースライン41に接続している。さらに、バッテリコントロール回路4は、電源回路16から動作電力を供給して動作する。すなわち、バッテリコントロール回路4は、電源回路16を介して走行用バッテリ1から動作電力が供給されている。バッテリコントロール回路4は、電圧検出回路6、温度検出回路7、残容量検出回路8で検出される電池10の電圧や温度や残容量で走行用バッテリ1の充放電を制御する。このバッテリコントロール回路4は、電圧検出回路6と温度検出回路7と残容量検出回路8から入力される信号から、走行用バッテリ1を放電できる最大電流や充電できる最大電流等を電池情報として検出する。検出する電池情報は、電池情報としてインターフェース回路5を介して車両側のECU32に伝送され、ECU32とバッテリコントロール回路4とで走行用バッテリ1の充放電電流をコントロールする。
【0054】
(インターフェース回路5)
インターフェース回路5も、アースライン9を車両のアースライン41に接続している。また、インターフェース回路5も、電源回路16から動作電力を供給して動作する。すなわち、インターフェース回路5も、電源回路16を介して走行用バッテリ1から動作電力が供給されている。インターフェース回路5は、バッテリコントロール回路4から入力される電池情報を、車両側のECU32に伝送し、また、ECU32から入力される信号をバッテリコントロール回路4に伝送する。ECU32からの信号をバッテリコントロール回路4に伝送する電源装置は、バッテリコントロール回路4でもって、電池情報とECU32から入力される信号の両方で走行用バッテリ1の充放電電流を特定して、走行用バッテリ1を充放電させる。
【0055】
(切換回路15)
切換回路15も、アースライン9を車両のアースライン41に接続している。また、切換回路15も、電源回路16から動作電力を供給して動作する。すなわち、切換回路15も、電源回路16を介して走行用バッテリ1から動作電力が供給されている。切換回路15は、車両のメインスイッチ39であるイグニッションスイッチのオン信号を検出して、車両側のコンデンサー31をプリチャージ回路12でプリチャージした後、出力スイッチ11をオンに切り換えて走行用バッテリ1を車両側の負荷30に接続する。切換回路15は、車両のメインスイッチ39のオン信号を検出すると、出力スイッチ11をオフ状態に保持して、プリチャージスイッチ13をオンに切り換えて、コンデンサー31をプリチャージする。コンデンサー31がプリチャージされた後、出力スイッチ11をオンに切り換えて、走行用バッテリ1を車両側の負荷30に接続する。メインスイッチ39のオフ状態になると、出力スイッチ11をオフに切り換えて、走行用バッテリ1を車両側の負荷30から切り離す。
【0056】
(電源回路16)
電源回路16も、アースライン9を車両のアースライン41に接続している。電源回路16は、走行用バッテリ1の出力電圧を変換して、バッテリコントロールユニット2が装備する電池状態検出回路3、バッテリコントロール回路4、インターフェース回路5、切換回路15など、全ての電子回路に動作電力を供給する。電池状態検出回路3は、電圧検出回路6、温度検出回路7、残容量検出回路8などの電子回路を備えるので、電源回路16は、これ等の全ての電子回路に動作電力を供給する。電源回路16は、走行用バッテリ1の電圧を、電池状態検出回路3の電圧検出回路6などの電源電圧に変換し、かつ出力電圧を安定化して出力するDC/DCコンバータである。走行用バッテリ1の電圧を48Vとする電源装置は、電源回路16でもって出力電圧を12V又は5Vに変換して、バッテリコントロールユニット2の電子回路の電源ラインに供給する。以上の電源回路16は、走行用バッテリ1の電圧を全ての電源回路16の動作電圧に変換して出力する。この電源装置は、バッテリコントロールユニット2の各々の電子回路に、走行用バッテリ1の電圧を動作電圧に変換する電源回路16を設ける必要がなく、電源回路16を簡単にできる。ただ、図示しないが、バッテリコントロールユニットの各々の電子回路である電圧検出回路、温度検出回路、残容量検出回路、バッテリコントロール回路、インターフェース回路、切換回路などの各々に、走行用バッテリの電圧を動作電圧に変換するDC/DCコンバータなどの電源回路を設けることもできる。
【0057】
以上のように、電源装置の全ての電子回路に走行用バッテリ1から動作電力を供給する回路構成は、走行用バッテリ1の出力側とインターフェース回路5のみを車両側に接続して、車両側から動作電力を供給することなく、電源装置の全ての電子回路を動作状態にできる。したがって、車両側から電源装置に動作電力を供給する配線を接続する必要がなく、電源装置と車両側との接続を簡単にできる。
【0058】
ただ、電源装置は、電圧検出回路を含む電池状態検出回路や均等化回路のように、車両のメインスイッチであるイグニッションスイッチのオフ状態においても、動作状態とする必要のある電子回路には、走行用バッテリから動作電力を供給し、他の電子回路であって、車両の停止状態、すなわち車両のメインスイッチであるイグニッションスイッチのオフ状態において、動作状態としない、バッテリコントロール回路、インターフェース回路、切換回路等の電子回路には、車両側の電装用バッテリから動作電力を供給する回路構成とすることもできる。また、電動車両は、電源装置の全ての電子回路の動作電力を車両側の電装用バッテリから供給する回路構成とすることもできる。とくに、以上の電動車両は、電源装置側のアースラインを車両側の車両のアースラインに接続しているので、アースラインを共通としない絶縁タイプの電源回路を使用することなく、簡単な回路構成として、車両側から電源装置側に動作電力を供給することもできる。
【0059】
図1図2は、電動車両をハイブリッドカーとするので、車両を走行させるエンジン36を備える。エンジン36は、発電機35を駆動して走行用バッテリ1を充電する。ハイブリッドカーは、モータ34とエンジン36の両方で走行する。ハイブリッドカーは、エンジン36で走行することなく、エンジン36で走行用バッテリ1を充電して、モータ34のみで走行させることもできる。ハイブリッドカーはエンジン36を備えるので、このエンジン36を走行用バッテリ1で始動する。走行用バッテリ1は、電装用バッテリ40よりも定格電圧が高いので、エンジン36を速やかに始動できる。このハイブリッドカーは、走行用のモータ34でエンジン36を始動することができる。このハイブリッドカーは、車両を走行させることなくモータ34でエンジン36を回転できる動力伝達機構(図示せず)を備える。このハイブリッドカーは、モータ34が車両を走行させることなく、エンジン36を回転して始動する。ただ、走行用バッテリで回転されるスターターモータを設け、このスターターモータを走行用バッテリで回転して、エンジンを始動することもできる。
【0060】
本発明は、電動車両をハイブリッドカーには特定しない。電動車両は電気自動車とすることもできる。電気自動車は車両をモータのみで走行させるので、走行用バッテリからモータに供給する電力をコントロールして車両を走行させる。電気自動車は、エンジンを搭載しない以外は、前述したハイブリッドカーと同じようにして、走行用バッテリからモータに電力を供給して車両を走行させる。ハイブリッドカーは、エンジン36で発電機35を回転して走行用バッテリ1を充電するが、電気自動車は、外部から供給される電力で走行用バッテリを充電する。また、電気自動車は、ハイブリッドカーと同じように、車両を制動するときの回生制動で走行用バッテリを充電する。さらに、電気自動車は、走行用バッテリを充電するために、充電専用のエンジンと発電機を搭載して、走行用バッテリを充電しながらモータで走行することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、走行用バッテリ1でモータ34を駆動して車両を走行させる電源装置と、この電源装置を搭載するハイブリッドカーや電気自動車に有効に使用され、走行用バッテリ1の劣化を防止し、寿命を長くしながら電気自動車を走行させる。
【符号の説明】
【0062】
1…走行用バッテリ
2…バッテリコントロールユニット
3…電池状態検出回路
4…バッテリコントロール回路
5…インターフェース回路
6…電圧検出回路
7…温度検出回路
8…残容量検出回路
9…アースライン(電源装置側)
10…電池
11…出力スイッチ
12…プリチャージ回路
13…プリチャージスイッチ
14…プリチャージ抵抗
15…切換回路
16…電源回路
17…均等化回路
18…放電回路
19…均等化制御回路
20…放電スイッチ
21…放電抵抗
30…負荷
31…コンデンサー
32…エンジンコントロールユニット
33…DC/ACインバータ
34…モータ
35…発電機
36…エンジン
37…車輪
38…電装機器
39…メインスイッチ
40…電装用バッテリ
41…アースライン(車両側)
42…シャーシーアース(車両)
図1
図2