特許第6116852号(P6116852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116852
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】液状硬化性樹脂組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20170410BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20170410BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   C08G59/40
   H01L23/30 R
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-227198(P2012-227198)
(22)【出願日】2012年10月12日
(65)【公開番号】特開2014-80455(P2014-80455A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 卓央
(72)【発明者】
【氏名】鴻巣 修
(72)【発明者】
【氏名】藤林 輝久
(72)【発明者】
【氏名】岡田 篤
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 修輔
(72)【発明者】
【氏名】和田 高明
(72)【発明者】
【氏名】八尾 朋侑
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−344886(JP,A)
【文献】 特表2005−506422(JP,A)
【文献】 特開平09−059487(JP,A)
【文献】 特表2005−505432(JP,A)
【文献】 特開2013−224341(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/037500(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
H01L 23/28−23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアネートエステル樹脂とエポキシ樹脂とを含む液状の硬化性樹脂組成物であって、
該シアネートエステル樹脂は、2官能以上の多官能化合物であり、かつ重量平均分子量が300〜850であり、その形状は、25℃で液状であるか、又は、80℃以下の融点若しくは軟化点を有する固体状であり、
該エポキシ樹脂は、エポキシ基及び/又はグリシジル基を、1分子中に3個以上含む多官能化合物であることを特徴とする液状硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記シアネートエステル樹脂及びエポキシ樹脂の含有量は、これらの総量を100質量%とすると、シアネートエステル樹脂が50〜95質量%、エポキシ樹脂が5〜50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の液状硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記シアネートエステル樹脂の重量平均分子量は、400〜600であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液状硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液状硬化性樹脂組成物を用いてなることを特徴とする液状封止材。
【請求項5】
請求項に記載の液状封止材を用いてなることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状硬化性樹脂組成物及びその用途に関する。より詳しくは、実装用途、光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品用途、電気・電子部品用途、自動車部品用途、印刷インク用途等の種々様々な用途に用いられる液状硬化性樹脂組成物、並びに、それを用いた液状封止材及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室温で液状態にある硬化性樹脂組成物は、その流動性から、実装用途、光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品用途、電気・電子部品用途、自動車部品用途、印刷インク用途等の種々様々な用途に広く用いられている。このような液状硬化性樹脂組成物は、通常、有機溶剤や希釈剤等の揮発成分を含むことによって流動性が付与されているが、用途によっては有機溶剤を極力含まないことが望まれるため、揮発成分を含まなくても室温で液状で存在できる樹脂組成物の開発が要望されている。特に半導体装置等に使用される封止材用途では、信頼性及び密着性の観点から、封止対象の隅々まで充填することができる、無溶剤で液状の硬化性樹脂組成物が求められている。
【0003】
従来の硬化性樹脂組成物としては、例えば、特許文献1に、三官能又は四官能のエポキシ樹脂、1分子内に少なくとも2個のエポキシ基と反応する基を有する硬化剤、1分子内に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物及び無機充填剤を含有するエポキシ樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/037500号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように硬化性樹脂組成物が種々開発されており、主成分としてエポキシ樹脂が使用されることが多い。しかし、エポキシ樹脂を用いた従来の硬化物では、性能的な限界に差しかかっているため、本発明者は、ガラス転移温度(Tg)が高く、高強靱性を有し、かつ低線膨張性を有する硬化物を与えることができるという特性を有するシアネートエステル樹脂に着目した。だが、シアネートエステル樹脂による当該性能をより充分に発揮できるようにした液状の硬化性樹脂組成物は、未だ開発されていないのが現状である。なお、特許文献1のエポキシ樹脂組成物は、難燃性、耐半田クラック性、流動性に優れるものと記載されているが、特許文献1の実施例に、各成分を混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た旨が記載されているとおり、このエポキシ樹脂組成物は固形状である。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、耐熱性等の各種物性に優れるうえ、有機溶剤や希釈剤等の揮発成分を実質的に含まなくても室温で液状で存在でき、高流動性を有する液状硬化性樹脂組成物、それを用いた液状封止材及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、液状の硬化性樹脂組成物に好ましく適用できる材料について種々検討したところ、エポキシ樹脂とシアネートエステル樹脂とを含む硬化性樹脂組成物とすれば、ガラス転移温度(Tg)が高く、高強靱性を有し、かつ低線膨張性を有する硬化物を与えることができることに着目した。そして、シアネートエステル樹脂の官能数や重量平均分子量によっては、Tgが充分とはならなかったり、粘度が高すぎて液状の硬化性樹脂組成物とはならなかったりすることを見いだし、シアネートエステル樹脂として、特定官能数以上の多官能化合物であって、かつ重量平均分子量が所定範囲内のものを用い、これとエポキシ樹脂とを併用すると、流動性が付与され、揮発成分を含まなくても液状の硬化性樹脂組成物として存在できるうえ、Tgも高く、耐熱性等の各種物性にも優れるものとなることを見いだした。中でも特に、エポキシ樹脂についても3官能以上の多官能エポキシ樹脂を用いると、Tgがより向上され、耐熱性により一層優れたものとなることを見いだした。また、このような液状硬化性樹脂組成物を用いた液状封止材を使用すれば、信頼性や密着性の高い半導体装置等が得られることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、シアネートエステル樹脂とエポキシ樹脂とを含む液状の硬化性樹脂組成物であって、該シアネートエステル樹脂は、2官能以上の多官能化合物であり、かつ重量平均分子量が300〜850である液状硬化性樹脂組成物である。
本発明はまた、上記液状硬化性樹脂組成物を用いてなる液状封止材でもある。
本発明は更に、上記液状封止材を用いてなる半導体装置でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も本発明の好ましい形態である。
【0009】
〔液状硬化性樹脂組成物〕
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、特定のシアネートエステル樹脂及びエポキシ樹脂を含むが、これら各成分は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。また、これらを必須とする限り、その他の成分を適宜含んでいてもよい。
【0010】
本発明において、「液状」であるとは、室温(25℃)で液状態にあることを意味する。具体的には、室温(25℃)下で、結晶が析出しておらず、かつ高粘度の流体ではない状態にあることを意味し、この状態は目視で確認すればよいが、粘度で判断することも可能である。例えば、上記液状硬化性樹脂組成物について、測定温度60℃での粘度が、100Pa・s以下であることが好適である。これにより、より流動性の高い液状の樹脂組成物となり、例えば封止材に用いた場合に、封止対象のより隅々まで該封止材を充填することが可能になる。より好ましくは50Pa・s以下、更に好ましくは40Pa・s以下、特に好ましくは30Pa・s以下である。また、粘度の下限は特に限定されず、無機充填材が沈降しない程度であればよい。例えば、60℃での粘度が0.01Pa・s以上であることが好適である。より好ましくは0.1Pa・s以上である。
本明細書中、液状硬化性樹脂組成物の粘度は、例えば、TAインスツルメント社製レオメーター(DISCOVERY HR−1)を使用し、測定温度60℃、空気雰囲気下で測定することができる。
【0011】
上記液状硬化性樹脂組成物はまた、ガラス転移温度(Tg)が210℃以上であることが好適である。これにより、より一層耐熱性に優れた硬化物を与えることが可能になる。より好ましくは220℃以上、更に好ましくは230℃以上、特に好ましくは240℃以上、最も好ましくは250℃以上である。
本明細書中、液状硬化性樹脂組成物のTgは、例えば、TAインスツルメント社製動的粘弾性測定装置(RSA−III)を使用し、昇温速度5℃/分、空気雰囲気下で測定することができる。
【0012】
<シアネートエステル樹脂>
上記液状硬化性樹脂組成物において、シアネートエステル樹脂は、2官能以上の多官能化合物、すなわち1分子中に平均で少なくとも2個のシアナト基(−OCN)を有するものである。この平均官能数は、架橋密度を高くし、Tgを向上させる観点から、2.5以上であることが好ましく、より好ましくは3以上である。
【0013】
上記シアネートエステル樹脂としては、例えば、下記一般式(a)で表される化合物が好適である。
【0014】
【化1】
【0015】
上記一般式(a)中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、又は、ハロゲン基(X)を表す。Rは、同一又は異なって、下記化学式で表される有機基を表す。Rは、同一又は異なって、下記化学式で表される有機基を表す。mは、0又は1である。nは、0〜10の整数を表す。
【0016】
【化2】
【0017】
上記一般式(a)で表される化合物としては特に限定されないが、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(4−シアナトフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、ジ(4−シアナトフェニル)エーテル、ジ(4−シアナトフェニル)チオエーテル、4,4−{1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)}ビスフェニルシアナト、4,4−ジシアナトフェニル、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1’−ビス−(p−シアナトフェニル)−エタン、2,2’−ビス(p−シアナトフェニル)プロパン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアナト)、2,2’−ビス(p−シアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、α,α′−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン等の二価フェノールのシアネートエステル樹脂;
トリス(4−シアネートフェニル)−1,1,1−エタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアネートフェニル)−4−シアネートフェニル−1,1,1−エタン等の三価フェノールのシアネートエステル樹脂;
フェノールノボラック型やクレゾールノボラック型等のノボラック型シアネートエステル樹脂;
ビスフェノール型シアネートエステル樹脂;等。
【0018】
これらの中でも、硬化物の誘電特性や硬化性等の観点から、ノボラック型シアネートエステル樹脂やビスフェノール型シアネートエステル樹脂が好適である。中でも、本発明の作用効果をより充分に発揮することができる観点から、より好ましくはノボラック型シアネートエステル樹脂であり、更に好ましくはフェノールノボラック型シアネートエステル樹脂である。
【0019】
上記シアネートエステル樹脂としてはまた、上記一般式(a)で表される化合物が有するシアナト基が環化してトリアジン環構造を形成してなる多量体(例えば、三量体、五量体)を使用することもできる。中でも、操作性や、他の硬化性樹脂への溶解性の観点から、三量体が好適である。多量体を得る手法は、通常の手法で行えばよい。
【0020】
上記シアネートエステル樹脂の形状は、室温(25℃)で液状であることが好適であるが、固体状(半固形状を含む)であってもよい。固体状である場合は、後述するような他の樹脂成分との溶融混練を考慮すると、高い相溶性を持つか、又は、100℃以下の融点若しくは軟化点を有するものであることが好適である。より好ましくは、80℃以下の融点又は軟化点を有するものである。
なお、融点とは、不活性雰囲気下で結晶が溶けて液状になる状態の温度(℃)を意味する。したがって、非晶質の化合物や、室温で既に液状のものは、融点を有しない。シアネートエステル樹脂の融点は、例えば、示差走査熱量測定法(DSC)にて測定することができる。また、軟化点(℃)は、JIS K7234(1986年)に準じて測定することができ、例えば、熱軟化温度測定装置(製品名「ASP−MG4」、メイテック社製)を用いて測定することができる。
【0021】
上記シアネートエステル樹脂はまた、重量平均分子量が300〜850であるものである。すなわち硬化反応に供する前の当該シアネートエステル樹脂の重量平均分子量が300〜850である。この範囲内にあると、液状硬化性樹脂組成物の液状態を安定的に維持することができる。より好ましくは350以上、更に好ましくは400以上であり、また、より好ましくは800以下、更に好ましくは750以下、より更に好ましくは700以下、特に好ましくは650以下、最も好ましくは600以下である。
上記シアネートエステル樹脂の分子量(数平均分子量及び重量平均分子量)は、例えば、下記の測定条件の下、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
【0022】
<分子量のGPC測定条件>
計測機器:東ソー社製「HLC−8220GPC」
カラム:東ソー社製「TSK−GEL SUPER HZM−N 6.0*150」×4本
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/分
温度:40℃
検量線:ポリスチレン標準サンプル(東ソー社製)を用いて作成。
【0023】
上記液状硬化性樹脂組成物におけるシアネートエステル樹脂の含有割合としては、シアネートエステル樹脂とエポキシ樹脂との総量を100質量%とすると、50〜95質量%であることが好適である。より好ましくは60〜93質量%、更に好ましくは70〜90質量%、特に好ましくは75〜85質量%である。
【0024】
<エポキシ樹脂>
上記液状硬化性樹脂組成物はまた、エポキシ樹脂を1種又は2種以上含む。これにより、耐熱性や強靱性等に優れた硬化物を得ることが可能になる。
上記エポキシ樹脂とは、エポキシ基及びグリシジル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を分子内に1個以上含む化合物であり、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
【0025】
ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;該エポキシ樹脂を、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)と更に付加反応させることにより得られる高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール類(フェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、スフェノールS等)と、ホルムアルデヒド、アセトアルテヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、ジシクロペンタジエン、テルペン、クマリン、パラキシリレングリコールジメチルエーテル、ジクロロパラキシリレン、ビスヒドロキシメチルビフェニル等とを縮合反応させて得られる多価フェノール類を、更にエピハロヒドリンと縮合反応することにより得られるノボラック・アラルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる芳香族結晶性エポキシ樹脂;該芳香族結晶性エポキシ樹脂に、更に、上記ビスフェノール類や、テトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等を付加反応させることにより得られる芳香族結晶性エポキシ樹脂の高分子量体;トリスフェノール型エポキシ樹脂;上記ビスフェノール類、芳香族骨格を水素化した脂環式グリコール類(テトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等)、又は、単/多糖類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、PEG600、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、PPG、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等)と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られる脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂;該脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂を、上記ビスフェノール類と更に付加反応させることにより得られる高分子量脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂;(3,4−エポキシシクロヘキサン)メチル3′,4′−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等のエポキシシクロへキサン骨格を有するエポキシ樹脂;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、安息香酸等と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ヒダントインや、シアヌール酸、メラミン、ベンゾグアナミン等と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られる室温で固形の3級アミン含有グリシジルエーテル型エポキシ樹脂;等。これらのエポキシ樹脂の中でも、芳香族部位を持つグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好適である。
【0026】
上記エポキシ樹脂はまた、より硬化性を高めるため、エポキシ基及び/又はグリシジル基を、1分子内に2個以上含む多官能化合物(多官能エポキシ化合物とも称す)を用いることが好適である。より好ましくは、エポキシ基及び/又はグリシジル基を1分子内に3個以上含む多官能化合物、すなわち3官能以上の多官能エポキシ化合物であり、これにより、液状硬化性樹脂組成物のTgをより一層向上することができるため、耐熱性がより一層向上された硬化物を与えることが可能となる。このように上記エポキシ樹脂が3官能以上の多官能化合物である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。また、官能数の上限は特に限定されないが、例えば、10以下であることが好適である。
【0027】
上記液状硬化性樹脂組成物におけるエポキシ当量は、80〜400g/molであることが好適である。より好ましくは90〜300g/mol、更に好ましくは100〜200g/molである。
【0028】
上記エポキシ樹脂の形状は、室温(25℃)で液状であることが好適であるが、固体状(半固形状を含む)であってもよい。固体状である場合は、上記シアネートエステル樹脂との溶融混練を考慮すると、高い相溶性を持つか、又は、100℃以下の融点若しくは軟化点を有するものであることが好適である。より好ましくは、80℃以下の融点又は軟化点を有するものである。
【0029】
上記エポキシ樹脂はまた、重量平均分子量が150〜20000であるものが好適である。すなわち硬化反応に供する前のエポキシ樹脂の重量平均分子量が150〜20000であることが好適である。この範囲内にあると、揮発のおそれがより抑制されるとともに、粘度をより適切なものとすることが可能になる。より好ましくは180〜15000、更に好ましくは200〜10000である。
上記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えば、上述した測定条件の下でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
【0030】
上記液状硬化性樹脂組成物におけるエポキシ樹脂の含有割合としては、シアネートエステル樹脂とエポキシ樹脂との総量を100質量%とすると、5〜50質量%であることが好適である。より好ましくは7〜40質量%、更に好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは15〜25質量%である。
【0031】
<他の樹脂成分>
上記液状硬化性樹脂組成物はまた、上述したシアネートエステル樹脂及びエポキシ樹脂に加えて、他の樹脂成分を含んでいてもよい。このような他の樹脂成分としては、上述したシアネートエステル樹脂及び/又はエポキシ樹脂と相溶し得るものを、適宜、1種又は2種以上を使用することができる。例えば、上述した特定のシアネートエステル樹脂以外のシアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等の他、ビスマレイミド樹脂やベンゾオキサジン樹脂等の高耐熱性硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、耐熱性や反応性等の観点から、ビスマレイミド樹脂を用いることが好適である。このように上記液状硬化性樹脂組成物が更にビスマレイミド樹脂を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記他の樹脂成分の形状もまた、上述したエポキシ樹脂において述べた形状と同様であることが好適である。
【0032】
ここで、上述した高耐熱性硬化性樹脂を用いた場合には、シリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)等のワイドギャップ半導体材料を含み、高温の動作上限温度を有する半導体装置の封止材等に特に好適な硬化物を得ることができる。例えば、ビスマレイミド樹脂を用いた場合には、硬化物の耐久性、耐熱性等の特性がより一層向上される。
【0033】
上記ビスマレイミド樹脂としては、分子内に2個以上のマレイミド基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ビスマレイミドとアルデヒド化合物との共縮合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
上記ビスマレイミドとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、N,N’−p,p’−ジフェニルジメチルシリルビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−メチレンビス(3−クロロ−p−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジシクロヘキシルメタンビスマレイミド、N,N’−ジメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、N,N’−m−キシレンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルシクロヘキサンビスマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
上記アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアルデヒド等が挙げられる。
【0034】
上記ビスマレイミド樹脂はまた、下記一般式(1)で表される化合物であってもよい。
【0035】
【化3】
【0036】
式中、Rは、下記式:
【0037】
【化4】
【0038】
で表される2価の基を表す。Qは、2つの芳香環に直結する基であり、炭素数1〜10の2価の炭化水素基、6フッ素化されたイソプロピリデン基、カルボニル基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基及びオキシド基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表す。
【0039】
上記一般式(1)で表されるビスマレイミド樹脂として具体的には、例えば、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、下記一般式(2):
【0040】
【化5】
【0041】
(式中、Qは、置換基があってもよい芳香環からなる2価の基を表す。nは、繰り返し数を表し、平均で0〜10の数である。)で表される化合物等が好適である。
上記Qとして具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の2価の基(フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチリデン基等)が好ましい。
【0042】
上記他の樹脂成分はまた、重量平均分子量が150〜20000であるものが好適である。すなわち硬化反応に供する前の当該樹脂成分の重量平均分子量が150〜20000であることが好適である。この範囲内にあると、揮発のおそれがより抑制されるとともに、粘度をより適切なものとすることが可能になる。より好ましくは180〜15000、更に好ましくは200〜10000である。
上記樹脂成分の重量平均分子量は、例えば、上述した測定条件の下でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
【0043】
上記硬化性樹脂組成物における他の樹脂成分(好ましくはビスマレイミド樹脂)の含有割合としては、シアネートエステル樹脂、エポキシ樹脂及び他の樹脂成分の総量(すなわち全樹脂成分の総量)を100質量%とすると、0〜30質量%であることが好適である。より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0044】
なお、本発明の液状硬化性樹脂組成物の必須成分であるエポキシ樹脂に代えて、ビスマレイミド樹脂を用いても、本発明と同様の効果を発現することができる。すなわちシアネートエステル樹脂とビスマレイミド樹脂とを含む液状の硬化性樹脂組成物であって、該シアネートエステル樹脂は、2官能以上の多官能化合物であり、かつ重量平均分子量が300〜850である液状の硬化性樹脂組成物もまた、本発明者による発明の1つである。このような形態では、ビスマレイミド樹脂の含有割合は、上述したエポキシ樹脂の含有割合と同様であることが好ましく、また、更にエポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0045】
<その他の成分>
本発明の液状硬化性樹脂組成物はまた、必要に応じて、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。例えば、無機充填材;硬化促進剤;難燃剤;有機溶剤や希釈剤等の揮発成分;硬化剤;強化材;カップリング剤;応力緩和剤;離型剤;安定剤;着色剤;可塑剤;可とう化剤;各種ゴム状物;光感光剤;顔料;等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも特に、無機充填材、難燃剤及び/又は硬化促進剤を更に含むことが好ましい。また、後述する塩基性化合物を更に含むことも好適である。
【0046】
−無機充填材−
上記液状硬化性樹脂組成物が無機充填材を含むことで、実装基板の封止材等により好適なものとなる。このように更に無機充填材を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0047】
上記無機充填材としては特に限定されず、通常の実装基板の封止材用途等で使用されるものを1種又は2種以上用いればよい。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、微粉シリカ等のシリカや、アルミナ、窒化ケイ素、マグネシア等の金属酸化物を用いることが好適である。中でも、シリカが好ましい。
【0048】
上記無機充填材を含む場合、その含有割合は、液状硬化性樹脂組成物の総量100質量%に対し、50〜90質量%とすることが好適である。このように多量の無機充填材を用いることで、例えば、実装基板の封止材等を得るために用いた場合に、硬化後の基板の反り発生等を充分に防ぐことが可能になる。より好ましくは60〜85質量%、更に好ましくは70〜85質量%である。
【0049】
−硬化促進剤−
上記液状硬化性樹脂組成物が硬化促進剤を含むことで、硬化がより促進され、かつ機械的強度がより高い硬化物を得ることが可能になる。このように更に硬化促進剤を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0050】
上記硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7等の第3級アミン化合物;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロマイド、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン等の有機リン化合物;アルミニウムやジルコニウム等の有機金属化合物;等の他、異環型アミン化合物、ホウ素錯化合物、ホスホニウム塩、有機アンモニウム塩、有機スルホニウム塩、有機過酸化物、これらの反応物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、ホスホニウム塩が好適である。これにより、硬化がより促進され、かつ機械的強度がより高い硬化物を得ることが可能になる。このように更にホスホニウム塩を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0051】
上記ホスホニウム塩として具体的には、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン等の有機リン化合物と、ハロゲン化水素又はハロゲン化アルキル等との反応によって得られる化合物の他、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムヒドロキサイド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチル・トリフェニルホスホニウムブロマイド、エチル・トリフェニルホスホニウムブロマイド、n−プロピル・トリフェニルホスホニウムブロマイド、i−プロピル・トリフェニルホスホニウムヨードイド、n−ブチル・トリフェニルホスホニウムブロマイド、メトキシメチル・トリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジル・トリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ−p−トリルボレート、トリ−tert−ブチルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等が好ましく例示できる。この中でも、樹脂との相溶性の観点から、テトラフェニルホスホニウム・テトラ−p−トリルボレートが最も好ましい。
【0052】
上記硬化促進剤(好ましくはホスホニウム塩)を含む場合、その含有割合は、例えば、全樹脂成分の総量100重量部に対し、0.001〜10重量部とすることが好適である。より好ましくは0.005〜5重量部、更に好ましくは0.008〜3重量部、最も好ましくは0.01〜1重量部である。
なお、「全樹脂成分」とは、本発明の液状硬化性樹脂組成物に含まれる全ての樹脂成分、すなわち、シアネートエステル樹脂と、エポキシ樹脂と、必要に応じて更に含まれる他の樹脂成分とを合わせた樹脂成分を意味する。
【0053】
−難燃剤−
上記液状硬化性樹脂組成物が難燃剤を含むことで、より難燃性に優れた硬化物を得ることができ、半導体封止材用途により好適なものとなる。このように更に難燃剤を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0054】
上記難燃剤としては特に限定されず、通常使用されるものを1種又は2種以上使用すればよいが、ノンハロゲン化合物やノンアンチモン化合物が好適である。例えば、リン酸エステル、酸化トリフェニルホスフィン、赤リン等のリン含有化合物;メラミン、メラミン誘導体、メラミン変性フェノール樹脂、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体、トリアジン環含有化合物等の窒素含有化合物;ホスファゼン類、シクロホスファゼン類等のリン及び窒素含有化合物;酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、モリブデン亜鉛、スズ酸亜鉛等の亜鉛化合物;酸化鉄、酸化モリブデン等の金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;ジシクロペンタジエニル鉄等の金属錯体化合物;等が挙げられる。中でも、リン及び窒素含有化合物が好ましく、より好ましくはホスファゼン類である。これにより、難燃性により一層優れた硬化物を得ることが可能になる。このように更にホスファゼン類を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0055】
上記難燃剤(好ましくはホスファゼン類)の含有割合は、例えば、全樹脂成分の総量100重量部に対し、2〜30重量部とすることが好適である。より好ましくは5〜20重量部である。
【0056】
−揮発成分−
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、上述したように、揮発成分を含まずとも室温で液状で存在することができ、揮発成分を含まないことが望まれる用途にも好適に用いられるものである。したがって、上記液状硬化性樹脂組成物100質量%中の揮発成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは実質的に揮発成分を含まないことである。実質的に揮発成分を含まないとは、揮発成分の含有量が、組成物を溶解させることができる量未満であることを意味し、例えば、上記液状硬化性樹脂組成物100質量%中に1質量%以下であることが好適である。このように、上記液状硬化性樹脂組成物が実質的に揮発成分を含まない形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。なお、印刷インク用途等、揮発成分を含んでもよい用途に用いる場合にあっては、上記液状硬化性樹脂組成物は揮発成分を含んでいてもよく、このような形態も本発明の好適な実施形態の1つである。
このように本発明の液状硬化性樹脂組成物は、揮発成分を含んでいても、実質的に含んでいなくても、室温で液状に存在できるという極めて特異な性質を有するものであり、この点に重要な技術的意義を有する。
揮発成分含有量は、例えば、空気雰囲気下、オーブン中にて170℃で1時間加熱し、減少した重量分を揮発成分として求めることができる。
【0057】
上記液状硬化性樹脂組成物が揮発成分を含む場合、当該揮発成分としては、特に限定されず、通常使用されるものを使用すればよい。例えば、エーテル結合、エステル結合及び窒素原子からなる群より選ばれた少なくとも一つ以上の構造を有する化合物を含有してなる溶媒等が挙げられる。
【0058】
上記エーテル結合を有する化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ペラトロール、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、ジオキサン、トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、シオネール、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、グリセリンエーテル、クラウンエーテル、メチラール、アセタール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、2−フェノキシエタノール、2−(ベンジルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等が好適である。
【0059】
上記エステル結合を有する化合物としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノブチリン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、酪酸エステル類、イソ酪酸エステル類、イソ吉草酸エステル類、ステアリン酸エステル類、安息香酸エステル類、ケイ皮酸エチル類、アビエチン酸エステル類、アジピン酸エステル類、γ−ブチロラクトン類、シュウ酸エステル類、マロン酸エステル類、マレイン酸エステル類、酒石酸エステル類、クエン酸エステル類、セバシン酸エステル類、フタル酸エステル類、二酢酸エチレン類等が好適である。
【0060】
上記窒素原子を含有してなる化合物としては、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、α−トルニトリル、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ε−カプロラクタム等が好適である。
【0061】
上記エーテル結合、エステル結合及び窒素原子からなる群より選ばれた構造を複数有する化合物としては、例えば、N−エチルモルホリン、N−フェニルモルホリン、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、フェノキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好適である。これらの化合物のうち、1種又は2種以上を使用することができる。
【0062】
−硬化剤−
上記硬化剤としては特に限定されず、通常使用されているものを1種又は2種以上使用すればよい。例えば、酸無水物類、多価フェノール類、アミン類等が挙げられる。中でも、酸無水物類、多価フェノール類及び/又はアミン類を用いることが好ましい。これにより、液状硬化性樹脂組成物がより充分に硬化され、耐熱性等の各種物性により一層優れる硬化物を与えることが可能になる。
【0063】
上記酸無水物類としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、オクテニル無水コハク酸、ドデシル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、2,4−ジエチル無水グルタル酸、無水ハイミック酸(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物)、無水メチルハイミック酸、メチルナジック酸無水物(メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物)、無水クロレンディック酸、ジフェン酸無水物、3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロぺニル)−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2、3−ジカルボン酸無水物等の一官能性酸無水物;ピロメリット酸二無水物、マレイン化アロオシメン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラビスベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、(3、4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビシクロ〔2.2.2〕オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の二官能性酸無水物;β,γ−無水アコニット酸、無水グリコール酸、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物等の遊離酸を有する酸無水物;等が挙げられる。
【0064】
上記多価フェノール類としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリフェノールメタン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェニレン骨格、ビフェニレン骨格又はナフチレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂、ビスフェノール化合物等が挙げられる。また、硬化性の観点から、多価フェノール類の水酸基当量は、例えば、90〜250g/eqであることが好適である。
【0065】
上記多価フェノール類として好ましくは、構造中に、フェニレン骨格、ビフェニレン骨格又はナフチレン骨格を含むアラルキル基を有する化合物である。このような化合物を用いて得た硬化物は、高温環境下で低弾性率化され、かつフェノール性水酸基が少ないために低吸水化を実現することもでき、したがって、耐半田リフロー性をより向上することが可能になる。また、ナフチレン骨格を含有する化合物は、ガラス転移温度を高く、かつ線膨張係数を低くすることができるため、例えば当該硬化物を半導体装置に適用した場合に、低反り性をより充分に発揮することが可能になる。
上記多価フェノール類としてより好ましくは、下記一般式(3):
【0066】
【化6】
【0067】
(式中、Rは、フェニレン基、ビフェニレン基又はナフチレン基を表す。−R(OH)−は、ヒドロキシフェニレン基、1−ヒドロキシナフチレン基又は2−ヒドロキシナフチレン基を表す。R及びRは、各々、R及びRに導入される基であり、同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。pの平均値は、1〜10の数であり、qは、0〜5の整数であり、rは、0〜5の整数である。)で表される化合物を含むものである。このような化合物は、多価フェノール類の総量100質量%に対して10質量%以上であることが好ましく、これによって、耐半田リフロー性及び低反り性をより一層発揮することができる。より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。
なお、−R(OH)−がヒドロキシナフチレン基である場合には、上述したように、ガラス転移温度の上昇や線膨張係数の低下により、低反り性を向上させる効果が得られ、更に芳香族炭素を多く有するため、耐燃性の向上も実現することができる。
【0068】
上記アミン類としては、第1級アミン又は第2級アミンを分子中に1又は2個以上有するものが好ましく、例えば、ジエチレントリアミン、トリエラレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン等の脂肪族アミン;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等の脂環式アミン;N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン等のピペラジン型アミン;m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノフェニルメタン、2,4−ジアミノトルエン、ジアミノベンゼン、メチレンジアニリン、ビス(クロロアニリノ)メタン、オキシジアニリン、ビス(ヒドロキシアニリノ)メタン、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ビフェニル、ジメチルジアミノビフェニル等の芳香族アミン;等が挙げられる。これらのアミン類の中でも、硬化物の強度やガラス転移温度を高める観点から、芳香族アミンが好適である。
【0069】
上記硬化剤の含有割合は、硬化剤や硬化性樹脂組成物の種類等によって適宜設定すればよいが、例えば、全樹脂成分の総量100重量部に対し、2〜65重量部とすることが好適である。より好ましくは5〜60重量部、更に好ましくは10〜50重量部である。
【0070】
−強化材−
上記強化材としては特に限定されず、通常使用されるものを1種又は2種以上使用すればよい。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアラミド繊維等が挙げられ、これらの織布や不織布等を好適に用いることができる。
【0071】
−カップリング剤−
上記カップリング剤としては特に限定されず、通常使用されるものを1種又は2種以上使用すればよい。例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。
【0072】
−塩基性化合物−
上記液状硬化性樹脂組成物が塩基性化合物を含むことで、流動性がより一層向上し、封止対象の隅々までより充分に充填できる液状硬化性樹脂組成物となる。このように更に塩基性化合物を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0073】
上記塩基性化合物とは、塩基性を示す化合物である。具体的にはアミン化合物やホスフィン化合物等が好適であり、1種又は2種以上を使用することができる。中でもアミン化合物が好ましい。
上記塩基性化合物としてはまた、室温(25℃)で液状のものが特に好適である。
【0074】
上記アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルピペリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の含窒素環構造を有しない化合物や、N−メチルモルホリンピリジン、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、N−アルキルピロール、N−アルキルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデカ−7−エン(DBUとも称す)、1,5−ジアザビンクロ〔4,3,0〕ノン−5−エン(DBNとも称す)、1,4−ジアザビンクロ〔2,2,2〕オクタン(DABCO(R)とも称す)等の含窒素環構造を有する化合物(含窒素環状化合物とも称す)が挙げられる。中でも、含窒素環状化合物が好ましく、より好ましくはピリジン、DBU、DBN、DABCO(R)であり、更に好ましくはピリジン、DBUである。また、臭気や、減圧下での混練中の揮発等を考慮すると、DBUが最も好適である。なお、上記アミン化合物は、塩の形態のものであってもよい。
【0075】
上記ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、フェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0076】
上記塩基性化合物としてはまた、当該化合物の共役酸のpKa(酸解離定数)が3〜13であるものが好ましい。これにより、液状硬化性樹脂組成物の増粘及びチクソ性を充分に抑制して流動性を高めるという効果がより一層発現される。上記pKaとしてより好ましくは4〜13である。
なお、上記塩基性化合物のうち、例えば、DBUの共役酸のpKaは12.5、DBNの共役酸のpKaは12.7、ピリジンの共役酸のpKaは5.25である。
【0077】
上記塩基性化合物を用いる場合、その含有割合は、硬化性樹脂組成物の総量100質量%に対し、0.005〜5質量%とすることが好適である。この範囲内にあると、上記硬化性樹脂組成物の増粘がより抑制され、流動性がより発現できるようになる。より好ましくは0.01〜1質量%、更に好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0078】
〔液状硬化性樹脂組成物の製造方法〕
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、特定のシアネートエステル樹脂及びエポキシ樹脂を含むように調製すればよいが、例えば、次のように調製することが好適である。すなわち、反応容器に、シアネートエステル樹脂、エポキシ樹脂及び必要に応じて配合される他の樹脂成分を、例えば40〜200℃にて溶融混練した後、必要に応じて、無機充填材等のその他の成分を同時又は順次添加し、適宜、ミキサー、ニーダー、ロール、1軸押出混練機、2軸押出混練機等を用いて混練することによって得ることが好ましい。また、樹脂成分の混合時に、適宜、有機溶剤を用いて加熱混合した後、必要に応じて脱溶剤工程を行って得ることとしてもよい。
【0079】
〔硬化物〕
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、例えば、熱硬化することにより、硬化物とすることができる。硬化温度は、例えば、70〜300℃が好適であり、より好ましくは100〜250℃である。また、硬化時間は1〜15時間が好適であり、より好ましくは2〜10時間である。なお、熱硬化反応は2段階以上で行ってもよい。
【0080】
上記硬化物の形状は、例えば、異形品等の成形体、フィルム、シート、ペレット等が挙げられる。このような本発明の液状硬化性樹脂組成物の硬化物(本発明の液状硬化性樹脂組成物から形成される硬化物)もまた、本発明の好ましい形態の1つである。
【0081】
上記硬化物は、本発明の液状硬化性樹脂組成物から得られることに起因して、ガラス転移温度が高く、線膨張係数が小さく、かつ機械的強度に優れ、高温高圧、多湿等の過酷な環境下に晒された後においても各種物性の経時変化が充分に小さく各種物性を安定して発現できることから、例えば、実装用途、光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品用途、電気・電子部品用途、自動車部品用途、印刷インク用途等の種々様々な用途に有用なものである。具体的には、封止材等のエレクトロニクス実装材料、ポッティング材、アンダーフィル材、導電性ペースト、絶縁ペースト、ダイポンド材、印刷インク等に好ましく使用される。中でも、上記液状硬化性樹脂組成物は、有機溶剤等の揮発成分を含まずとも室温で液状で存在できる組成物であるため、揮発成分を含まないことが求められる、エレクトロニクス実装材料等の用途に特に好適に用いられることになる。すなわちエレクトロニクス実装材料に用いることがより好ましい。特に上記液状硬化性樹脂組成物は、液状封止材に極めて好適に用いることができる。このように上記液状硬化性樹脂組成物を用いてなる液状封止材もまた、本発明の1つである。液状封止材として特に好ましくは、半導体封止材である。また、上記硬化物を用いて形成された半導体装置又はプリント配線板もまた、本発明の好ましい形態に含まれる。上記液状封止材を用いてなる半導体装置は、本発明の1つでもある。
【0082】
上記液状封止材は、例えば、半導体部品(素子)を封止する際に使用される部材であるが、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じ、例えば、硬化促進剤、安定剤、離型剤、カップリング剤、着色剤、可塑剤、可とう化剤、各種ゴム状物、光感光剤、充填材、難燃剤、顔料等を含むことができる。また、上記液状封止材は、揮発成分を多量に含むと不具合を生じるおそれがあるため、揮発成分を含まないことが望まれており、例えば、上記液状封止材100質量%中の揮発成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは実質的に揮発成分を含まないことである。
【0083】
上記液状封止材を用いてなる半導体装置として具体的には、例えば、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子;コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子;等の素子を搭載し、必要な箇所を本発明の液状封止材で封止した形態が挙げられる。上記液状封止材により素子を封止する方法としては、例えば、低圧トランスファー成形法や、インジェクション成形法、圧縮成形法等の通常の手法を用いればよい。
【0084】
また上記硬化物を用いて構成されたプリント配線板としては、例えば、コンポジットタイプ積層板(片面、両面、多層等)、ガラスエポキシタイプ積層板、アラミドエポキシタイプ積層板、金属ベース配線基板、ビルドアップタイプ配線基板等が挙げられる。これらは、例えば、本発明の液状封止材を強化材に含浸又は基材に塗布し、適宜乾燥させた後、硬化させることにより得ることができる。この場合の液状硬化性樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤(硬化触媒)や難燃剤、充填剤等を更に含むことが好適である。
【発明の効果】
【0085】
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、上述のような構成であるので、耐熱性等の各種物性に優れるうえ、有機溶剤や希釈剤等の揮発成分を実質的に含まなくても室温で液状で存在でき、高流動性を有するものである。したがって、封止材等の各種用途に有用なものであり、特にこれを用いた液状封止材は、封止対象の隅々まで該封止材を充填することができるため、半導体装置等の封止対象物の信頼性や密着性の観点から、極めて有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0086】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、下記の例で用いたシアネートエステル樹脂について、上述した測定条件の下、GPCにて重量平均分子量(Mw)を測定した結果は、以下のとおりである。
ノボラック型シアネートエステル(PT−15、Lonza社製):489
ノボラック型シアネートエステル(PT−30、Lonza社製):860
ビスフェノールE型シアネートエステル(LECy、Lonza社製):264
【0087】
実施例1
ノボラック型シアネートエステル(PT−15、Lonza社製)11.5g、トリスフェノールメタン型エポキシ(EPPN−501H、日本化薬社製)46.4g、及び、ホスファゼン(難燃剤;SPE−100、大塚化学社製)6.5gをセパラブルフラスコに加え、マックスブレンド型攪拌羽を用い、250rpm、80℃で溶融混練した後に、硬化促進剤(テトラフェニルホスホニウム・テトラ−p−トリルボレート;TPP−MK、北港化学社製)0.6gを添加し、80℃で5分撹拌し、溶融させた。
次に、プラネタリーミキサーに、上記で得られた樹脂混合物57.9g、無機充填材(シリカ;マイクロン社製)210g、無機水酸化物(Z−10、タテホ化学社製)24g、シランカップリング剤(KBM403、信越化学社製)0.6g、カーボンブラック(ET−NSB−001(A)、大日精化工業社製)0.6g、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデカ−7−エン(DBU)0.3gを加え、1kPaで1時間撹拌し、液状組成物1を得た。
得られた液状組成物1について、上述した測定方法にて、粘度及びガラス転移温度(Tg)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0088】
参考例
トリスフェノールメタン型エポキシ(EPPN−501H、日本化薬社製)の代わりに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(YDF−8170C、東都化成社製)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で液状組成物2を得た。得られた液状組成物2について、上述した測定方法にて粘度及びTgの測定を行った。結果を表1に示す。
【0089】
実施例3
トリスフェノールメタン型エポキシ(EPPN−501H、日本化薬社製)の代わりに、芳香族アミノエポキシ樹脂(JER630、ジャパンエポキシレジン社製)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で液状組成物3を得た。得られた液状組成物3について、上述した測定方法にて粘度及びTgの測定を行った。結果を表1に示す。
【0090】
比較例1
ノボラック型シアネートエステル(PT−15、Lonza社製)の代わりに、ビスフェノールE型シアネートエステル(LECy、Lonza社製)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で比較用組成物1を得た。得られた比較用組成物1について、上述した測定方法にて粘度及びTgの測定を行った。結果を表1に示す。
【0091】
比較例2
ノボラック型シアネートエステル(PT−15、Lonza社製)の代わりに、ノボラック型シアネートエステル(PT−30、Lonza社製)を用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で溶融混練したが、室温(25℃)で流動性に乏しい粘凋液体となり、プラネタリーミキサーでの他成分(無機充填材等)との混練はできなかった。
【0092】
表1に、液状組成物1〜3及び比較用組成物1の物性結果を示す。なお、上述した測定方法にて、液状組成物1〜3の100質量%中の揮発成分量を測定したところ、いずれも0.3質量%であった。
【0093】
【表1】