【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構からの委託研究「次世代パワーエレクトロニクス技術開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体素子チップと、Cuを主原料としたCu基板との間に、Au系はんだ層を挟持したダイアタッチメント構造を有するAu系はんだダイアタッチメント半導体装置において、
前記Cu基板と前記Au系はんだ層との間に、微細なスリットが形成された金属膜を配設すると共に、
前記Cu基板から、前記スリットを通して前記Au系はんだ層に達するように、AuとCuを主元素とする微小亜鈴断面構造体を埋設したことを特徴とするAu系はんだダイアタッチメント半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置100の構成を示す断面図である。なお、以下に示す各断面図は、本発明の理解を促進するために、厚さ方向(図中、上下方向)の寸法を誇張して記載している。
【0013】
図1では、Cu基板2と半導体素子1(半導体素子チップ)をAu系はんだ層3により接合したダイアタッチ構造を有する半導体装置の例について示している。半導体素子1としてSiCパワー素子を使用し、Au系はんだ層3として共晶AuGeはんだを使用し、Cu基板2としてSiNセラミック基板の両面にCuを主原料とした金属Cu板を貼り付けた「Cu基板」を使用している。なお、これらは一例であり、半導体素子1としてはGaN素子、ダイヤモンド素子、ZnO素子等の他のワイドバンドギャップ半導体素子や高温用途を目的としたSi半導体素子(SOI素子やセンサ素子)でも等しく適用できる。
【0014】
また、Au系はんだ層3に用いるAu系はんだは、Auを主原料とするはんだであって、典型的には共晶AuGeはんだ、共晶AuSiはんだ、共晶AuSnはんだ等である。また、これらのはんだの混合物でも良く、また、これら共晶はんだにその他の元素を添加したものでも良い。更には、必ずしも共晶組成である必要はなく、液相線温度が概ね420℃以下である過共晶組成、亜共晶組成であっても良い。
【0015】
Cu基板2は、SiNセラミック基板に貼り付けたもの限らず、他の種類のセラミック基板に貼り付けたCu基板でも良いし、リードフレームのようなCuを主材料とする単純な金属板でも良い。
【0016】
半導体素子1は、炭化珪素(SiC)パワー半導体素子であり、裏面にはオーミックコンタクト11が形成され、該オーミックコンタクト11の表面には、はんだの濡れ性の改善、はんだの侵入の防止、付着力の向上などを目的として実装電極12が被覆されている。実装電極12は、例えば、Ti/Ni/Ag積層蒸着膜(Tiがオーミックコンタクト11に接触し、Agが最表面となる層構造)を挙げることができる。
【0017】
Cu基板2は、SiNセラミック基板21の少なくとも片面にCuを主原料とする金属Cu板22をロウ付け等で貼り付けた構造を成している。
【0018】
金属Cu板22の表面には、WやMo等の、周期律表第5周期以上の高融点金属を微量だけ(1mol%以下)含有したNi膜、またはCo膜、またはNiCo混合膜やNi/Co積層膜等の緻密金属膜23(
金属膜;NiまたはCoまたはNiとCoの双方を主材料とする金属膜)がめっき法で被覆されている。即ち、緻密金属膜23は、めっき法で形成されたNi、またはCo、またはNiとCoの双方を主材料とする金属めっき膜である。この緻密金属膜23は、はんだ付け濡れ性の確保、及び、Au系はんだ層3と金属Cu板22が全面的に接触することをを防ぐ役割を担っている。
【0019】
緻密金属膜23は、無電解めっきで形成するのが最も容易でコスト安ではあるが、スパッタリングや電子ビーム法など、他の成膜手法を用いて形成しても良い。緻密金属膜23が他の成膜手法により形成された場合には、微量に添加する高融点材料として、前述したW、Mo以外に、TaとNb、Re等を用いることができる。
【0020】
緻密金属膜23には、垂直に開口した微細スリット24が設けられている。この微細スリット24は、紙面垂直方向に線条に延びているものとする。微細スリット24の幅は、後述するAu系はんだ層3の厚みを最大値として最小値0.1μmまでの範囲に収めるのが望ましく、20μm〜1μmの範囲であることがより好ましい。
【0021】
また、本発明の半導体装置を半導体チップの側からCu基板に向かって透視したとき、半導体チップの接合面全体に占めるスリットの積算面積の割合(総正射影面積の割合)は0.1%以上、10%以下(0.1%〜10%の範囲)であり、5%以下であることがより好ましい。
【0022】
Au系はんだ層3は、Cuを有効成分として含有しており、例えば、共晶AuGeはんだにCuを含有した層である。このAu系はんだ層3に含有するCuは、Cu基板2の金属Cu板22に由来する。即ち、Au系はんだ層3は、Cu基板由来のCuを有効成分として含有している。Au系はんだ層3にCuが含まれていることと、このCuの起源が金属Cu板22にあることが本発明の構成上の際立った特徴の一つである。
【0023】
図1に示すCu基板2に設けられる符号4は、AuとCuを主元素とする微小亜鈴断面構造体であり、本発明構造のもう一つの際立った特徴である。ここで、微小亜鈴断面構造体4とは、
図1に点線で描いた亜鈴形状の断面を有する微小構造体を指している。微小亜鈴断面構造体4の亜鈴は、前述した微細スリット24を介して、緻密金属膜23上部のAu系はんだ層3の内部と金属Cu板22の内部に埋設されている。また、該微小亜鈴断面構造体4の主元素であるCu及びAuは、Cu基板2とAu系はんだ層3をそれぞれ起源としている。
【0024】
次に、
図2(a)、(b)、(c)に示す工程図を参照して、
図1に示した半導体装置を製造する手順について説明する。まず、
図2(a)に示すように、前駆材料A1、B2、C3を準備する。前駆材料A1は、上述した
図1に示す炭化珪素(SiC)製のパワー半導体素子1である。市販されている炭化珪素(SiC)パワー半導体素子1の裏面の実装電極構造は、事実上ほとんど前述した実装電極12の構造と一致しているので、これらを用いる限り、本発明を実施するために特段の改変を必要としない。
【0025】
前駆材料B2は、
図1に示したCu基板2である。この前駆材料B2は、以下に示す手順で製作する。
【0026】
初めに、セラミック基板21の表面に金属Cu板22を貼り付けたCu基板2を、Wイオン(またはMoイオンまたは両イオン)を僅かに含有する無電解Niめっき浴(またはCoめっき浴)に浸漬して、金属Cu板22の表面にNi:W(またはNi:Mo、Co:W、Co:Mo等)緻密金属膜23を被膜する。即ち、Cu基板3の表面に緻密金属膜23を被膜する処理は、めっき法を用い、めっき浴に周期律表第5周期以上の高融点金属を含有するイオンを添加することにより、緻密金属に高融点金属を微量だけ含有させる。
【0027】
緻密金属膜23の典型的な厚みは、5μmである。なお、「:W」や「:Mo」の表記は、WやMoが極微量(1mol%以下)含まれることを意味している。また、この時点では緻密金属膜23に微細スリット24が開口していない点に注意する必要がある。
【0028】
なお、必須ではないが、緻密金属膜23の上に、フラッシングめっき法で薄いAu膜、または薄いAg膜を被覆すると、後続のリフロー工程においてはんだ濡れ性が更に改善され、歩留まりを向上させることができる。
【0029】
図2(a)に示す前駆材料C3は、Au系はんだ材3aである。該Au系はんだ材3aは、Auを主原料とするはんだであって、典型的には共晶AuGeはんだ、共晶AuSiはんだ、共晶AuSnはんだ等である。また、これらはんだの混合物を用いることもできる。更には、必ずしも共晶組成である必要はなく、液相線温度が概ね420℃以下である過共晶組成、亜共晶組成であっても良い。また、改質改善の不純物として、第3の元素を含んでいても良い。形態はプリフォーム(チップ状の固体)でも良いし、ペーストでも良い。注意すべき点として、Au系はんだ材3aと半導体装置を構成した後のAu系はんだ層3(
図1参照)とは、構成元素が一致していないことである。
図1に示すAu系はんだ層3には、
図2(a)に示すAu系はんだ材3aに含まれていないCuが有効成分として含まれている。
【0030】
前駆材料A1、B2、C3の準備ができたら、アセトンやイソプロピルアルコール等の溶剤を用いて有機洗浄を行い、これら各前駆材料A1、B1、C1の表面に付着している汚染物を除去する。
【0031】
続いて、前駆材料A1、B2、C3を減圧リフロー装置に設置する。減圧リフロー装置は5ミリバール程度まで減圧できる程度の排気能力を有し、純度99.99%以上の不活性ガス(窒素やアルゴンガス)が導入する仕様のものであるものとする。減圧リフロー装置の代わりに還元雰囲気や低露点雰囲気でリフローが実行できる常圧リフロー装置を用いることもできる。
【0032】
その後、減圧リフロー装置のリフロー台(加熱台)の上に前駆材料B2を置き、
図2(a)に示すように、前駆材料B2(Cu基板2)の上の所望する部位に前駆材料C3(Au系はんだ材3a)を載置し(ペーストの場合は塗布し)、更にその上に前駆材料A1(半導体素子1)を重ね合わせる。即ち、リフロー台(加熱台)の上に、周期律表第5周期以上の高融点金属を微量だけ含有させた緻密金属膜を表面に被膜したCu基板、液相線温度が420℃以下であるAu系はんだ材、及び半導体素子チップを順に重ね置きする。なお、
図2ではリフロー台の描画を省略している。
【0033】
ここで、前駆材料B2上の所望する部位に前駆材料C3、及び前駆材料A1を正確に載置し、リフロープロセス中の半導体素子1の位置ずれを防止するために、テンプレート式カーボン治具を使用することが望ましい。
【0034】
ここで、本発明の必須要件ではないが、Au系はんだ層3(
図1参照)に発生するボイドを軽減するために、リフロープロセス中、特に、はんだ融解時に、半導体素子1に穏やかな圧力を加えると良い。必要な荷重は0.1g/cm2以上、より好ましくは0.3g/cm2以上である。例えば、4mm2の半導体素子1に対しては、好ましくは0.4g以上、より好ましくは1.2g以上の荷重を用いれば良い。
【0035】
上記準備が完了した場合には、その後リフロー工程を実行する。このリフロー工程では、初めに減圧リフロー装置の試料室の排気を行う。試料室内の圧力が5ミリバール以下となったら、該試料室内に不活性ガスを導入する。この操作を数回行い、試料室内の空気を不活性ガスで置換する。これにより、試料室内には不活性ガスが充満することになる。
【0036】
この状態で、リフロー台または試料室内全体を加熱して、前述した各前駆材料A1、B2、C3の温度を概ね200℃に昇温し、約2分間この温度を保持する。このとき、蟻酸蒸気を含む不活性ガスを導入して汚染有機物の除去を促進しても良い。
【0037】
次いで、不活性ガス導入を停止し、排気を再開して試料室内の圧力を5ミリバール以下に減圧すると共に、リフロー台(または試料室全体)を更に加熱して、各前駆材料A1、B2、C3をAu系はんだ材3a(前駆材料C3)の液相線温度以上まで昇温させ、この温度を保持する。保持時間は長くても5分で十分である。例えば、Au系はんだ材3a(前駆材料C3)が共晶AuGeはんだの場合、典型的なリフロー条件は温度410℃、1分である。Au系はんだ材3aの温度が液相線温度を超えると、該Au系はんだ材3aが融解し、融液層となって緻密金属基板23(WやMo等の高融点金属を微量含有したNi膜等)の表面と半導体素子1の裏面を濡らす。
【0038】
即ち、Cu基板2、Au系はんだ材3a、及び半導体素子1(半導体チップ)を加熱して昇温し、Au系はんだ材3aを融解させて、該Au系はんだ材3aを、Cu基板2と半導体素子1との間に挟持された融液層とする昇温工程が実施される。
【0039】
このとき、緻密金属膜23は、Au系はんだ材融液層と反応して収縮する。その結果として、
図2(b)に示すように、緻密金属膜23に微細スリット24が形成される。即ち、Au系はんだの融液と緻密金属膜23とを反応させ、緻密金属膜23にCu基板2に向けて貫通する微細なスリット(微細スリット24)を形成する処理が行われる。そして、微細スリット24が形成されると、この微細スリット24には、直ちにAu系はんだ材3a(前駆材料C3)のAu系はんだ融液3’(
図2(c)参照)が毛管効果等により流れ込み、微細スリット24を充填させる。即ち、微細なスリットを融液で満たす処理が行われる。
【0040】
そして、
図2(c)に示すAu系はんだ融液3’は、微細スリット24の底部において金属Cu板22の表面を融かしながら、融液/固体界面においてAuとCuの原子交換を極めて活発に行う。金属Cu板22から放出されたCuは、Au系はんだ融液3bに融解し、たやすく移動し、速やかにAu系はんだ融液層全体に分散する。即ち、スリット底部においてAu系はんだ融液とCu基板とを反応させる処理が行われる。その結果、
図2(c)に示すように、Au系はんだ融液3’の組成は、「Au+Ge」から「Au+Cu+Ge」に変わる。
【0041】
一方、
図2(b)に示すAu系はんだ融液3bから固体としての金属Cu板22側に放出されたAu原子は、金属Cu中を概ね等方的に拡散し、
図2(c)に示すように、拡散した領域の組成をAu+Cu合金4’に改変する。こうして、微小亜鈴断面構造体4の前駆構造体(Au+Cu合金4’)が形成される。なお、この時点でAu系はんだ融液3’は、未だ液相である。
【0042】
次いで、試料室に不活性ガスを導入し、所定の圧力まで上昇したら、直ちにリフロー台または試料室全体の降温を開始する。Au系はんだ融液3’の温度が固相線温度を下回ったところで、Au系はんだ融液3’が固化し、
図1に記載したAu系はんだ層3となって半導体装置が完成する。
【0043】
即ち、Cu基板、半導体素子チップ、及び融液層を冷却して、該融液層を固化させ、Cu基板と半導体素子チップとを接合させる冷却工程が実行される。
【0044】
その後、リフロー台または試料室の温度が十分低い温度まで下がったところで、完成した半導体装置をリフロー装置から取り出す。こうして、
図1に示した半導体装置を製造することができる。
【0045】
図3は、このようにして作成した本発明に係る半導体装置の、AuGeダイアタッチメント部の断面走査電子顕微鏡写真(反射電子像)である。また、
図4は、
図3の点線部分に示す領域の拡大電子顕微鏡写真である。同図には併せて、エネルギー分散型分光解析で同定した組成も写真上に記載している。
図4に示す写真において、白いコントラストで見える領域は元素Auを多く含んでいるAu+Cu相に対応する。
【0046】
図3、
図4から、Niめっき層(=緻密金属層)に開口した微細スリットを介して、
図1に示した如くの、微小亜鈴断面構造体4が、本発明で意図した通り形成されていることが確認される。
【0047】
図5は、上述した半導体装置の製造方法を採用して製造したAuGeダイアタッチメント半導体装置を、周囲温度300℃の大気に放置したときの、平均接合強度(シェア強度)の変遷を3000時間に渡ってプロットしたグラフである。半導体チップのサイズは、前述した非特許文献3と同様の2×2mm
2である。また、該非特許文献3の実験結果についてもこの特性図に記載している。
【0048】
図5に示すグラフから明らかなように、本実施形態に係る半導体装置の、AuGeダイアタッチメントの接合強度は、時間と共に多少の増減はあるものの、いずれの放置時間においても、IEC60749−19規格の10倍以上の十分な値を維持していることが理解される。特に、3000時間後の接合強度は102MPaであって、これは試験直後の初期強度とほぼ同じであり、且つ、IEC60749−19規格の16倍強の値である。
【0049】
このように、本発明に係るAu系はんだダイアタッチメント半導体装置及びその製造方法では、Au系はんだでダイアタッチを構成した半導体装置においては、「高温で長期に使用し続けるとはんだ接合層の接合強度が時間の経過とともに低下し、ついには半導体チップがめっき層付近から剥離する」という従来技術の問題を解決することができることとなる。
【0050】
ここで、非特許文献3に記載されている従来のAu系ダイアタッチメント半導体装置は、高温に放置すると時間の経過とともに接合強度が低下し、最終的に剥離に至る。本願発明者らは、この現象を実験で仔細に観察した結果、未だ仮説の部分はあるものの、その理由を下記のように解明するに至った。
【0051】
非特許文献3に記載されているAuGeダイアタッチの例で述べると、ダイアタッチを高温に放置し続けると、Auと対をなす元素Geが緻密金属膜であるNi−Pめっき膜と反応し、機械的に脆い金属間化合物(非特許文献3の例では、NiGe)を生成しながら、Ni−Pめっき膜を不均一に細らせる。Ni−Pめっき膜は、細る過程でPが次第に濃化され、このPが濃化されるに連れて、Ni−Pめっき膜も不均一な薄膜化の進行と相まって機械的脆弱性が高まってくる。何らかの原因により、ぬれ広がったはんだ層周縁部の濃化Ni−Pめっき膜に垂直に隙間のある亀裂が入ると(或いは、NiGe金属間化合物に入った亀裂が引き金となってNi−Pめっき膜に垂直に隙間のある亀裂が入ると)、Ni−Pめっき膜下のCuが局所的に酸化され、体積の大きなCu酸化物が形成される。この局所酸化物の形成によって、その後はNi−Pめっき膜下のCuに隙間が形成され、この隙間を通して酸素が供給され続けるので、Cuの酸化と隙間が半導体チップ下Ni−Pめっき膜下の内部へ伝播し行く。Cu酸化物とNi−Pめっきの密着性は良好ではないので、接合強度が徐々に減少してゆく。
【0052】
これに対して、本発明に係る半導体装置では、まず第1に、緻密金属膜23としてWまたはMoを含有したNiめっき膜等を用いているため、WまたはMoの作用によりAuGeはんだとの反応が抑制され、これにより、めっき膜の細りも、Pの濃化も、その速度を低下させることができる。また、本発明の半導体装置の構成においては、亜鈴形状を有する微小亜鈴断面構造体4がアンカー効果を発揮し、AuGe(Cu)はんだ層を金属Cu板に強固に固定し、Ni−Pめっきと下の金属Cu板の間に隙間が形成されるのを強く抑止することができる。この際、微小亜鈴断面構造体4の周囲には、隙間が形成されないので、酸素の供給がなく、隙間の内部への伝播が抑制される。こうして、本発明においては、高温に放置しても、
図5の実験データで示したように、適切な接合強度を長期にわたって維持することができる。
【0053】
本発明に係るAu系ダイアタッチ半導体装置のダイアタッチは、従来における同半導体装置のダイアタッチと対比すると、一見構造が複雑であるが、製造方法の項で説明したように、実際には従来とほぼ同様の手順で製造することができる。製造にかかる負担が大きくならない。また、金属Cu板表面を被覆する緻密金属膜(Niめっき膜等)にWやMoを含有する構成とする必要があるが、必要とするWやMoの量はごく僅かであり、これら添加物が大きなコスト増の要因にはならない。
【0054】
このようにして、本実施形態に係るAu系はんだダイアタッチメント半導体装置では、Cu基板2、Au系はんだ層3、及び緻密金属膜23に形成される微細スリット24に、Au及びCuを主元素とする微小亜鈴断面構造体4を埋設しているので、Au系はんだ層3の接合強度を強固とすることができ、時間の経過とともに低下剥離が生じるという従来の問題を解決することができる。
【0055】
また、緻密金属膜23を、Ni、Co、NiとCoの双方、のうちのいずれかを主材料とし、周期律表第5周期以上の高融点金属(W、Mo、Ta、Nb等)を微量だけ含有させるので、より強固な接合とすることが可能となる。
【0056】
更に、高融点金属として、W、Mo、Ta、Nbから選ばれる1つ以上の元素を用いるので、これらの高融点金属の作用によりAuGeはんだとの反応が抑制され、めっき膜の細りの速度を低下させることができる。その結果、より強固な接合とすることができる。
【0057】
また、緻密金属膜23は、めっき法で形成されたNi、Co、NiとCoの双方、のうちのいずれかを主材料とし、高融点金属は、W、及びMoのうちの少なくとも一方とすることにより、より強固な接合とすることが可能となる。
【0058】
また、緻密金属膜23に形成される微細スリット24の幅を、20μm〜1μmの範囲とするので、微小亜鈴断面構造体4による強固な接合とすることができる。
【0059】
更に、接合面積全体に占めるスリットの総正射影面積の割合が、0.1%〜10%の範囲とされるので、強固な接合とすることが可能となる。
【0060】
また、Au系はんだ層3は、Cu基板由来のCuが有効成分として含有するので、より強固な接合とすることが可能となる。
【0061】
更に、微小亜鈴断面構造体4の主元素となるCu、及びAuは、Cu基板2、及びAu系はんだ層3をそれぞれ起源とするので、微小亜鈴断面構造体4を強固とすることができ、ひいては強固な接合とすることが可能となる。
【0062】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法では、前駆材料A1、B2、C3を重ね置きする重ね置き工程と、前駆材料C3(Au系はんだ層)を融解させて融液層とする昇温工程と、融液層を冷却して固化させる冷却工程により製造可能であり、従来とほぼ同程度の工程により、より強固な接合を有する半導体装置を製造することが可能となる。
【0063】
更に、Cu基板2の表面に緻密金属膜23を被膜する処理として、めっき法を用いており、めっき浴に周期律表第5周期以上の高融点金属を含有するイオンを添加するので、簡単な処理により、緻密金属膜23を被膜することが可能となる。
【0064】
また、試料室内の圧力を5ミリバール以下の減圧下で昇温工程を実行するので、Au系はんだ層を円滑にはんだ融液とすることができる。
【0065】
更に、昇温工程のと冷却工程との間に、微細スリット24を形成する処理、微細スリット24内を融液で満たす処理、及び微細スリット24の底部にてAuはんだ融液とCu基板を反応させる処理を行うので、微小亜鈴断面構造体4を効率良く形成することが可能となる。
【0066】
以上、本発明のAu系はんだダイアタッチメント半導体装置、及びその製造方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。