特許第6116859号(P6116859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オハラの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116859
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】光学ガラス、プリフォーム及び光学素子
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/21 20060101AFI20170410BHJP
   C03C 3/253 20060101ALI20170410BHJP
   C03C 3/064 20060101ALI20170410BHJP
   C03C 3/066 20060101ALI20170410BHJP
   C03C 3/068 20060101ALI20170410BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20170410BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   C03C3/21
   C03C3/253
   C03C3/064
   C03C3/066
   C03C3/068
   G02B1/00
   G02B3/00 Z
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-241357(P2012-241357)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-91639(P2014-91639A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年7月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000128784
【氏名又は名称】株式会社オハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】永岡 敦
【審査官】 飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−275182(JP,A)
【文献】 特開2012−091989(JP,A)
【文献】 特開2012−171848(JP,A)
【文献】 特開2007−254224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00−14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
成分を7.0%以上25.0%以下、
Bi成分を23.0%以上50.0%以下、
Nb成分を17.0%以上40.0%以下、
TiO成分を0.5%以上4.5%以下、
BaO成分を0.5%超10.0%以下、及び
成分を0.5%以上10.0%以下
含有し、
WO成分の含有量が12.0%未満、
LiO成分の含有量が10.0%以下、
NaO成分の含有量が10.0%以下、
O成分の含有量が10.0%以下、
であり、
1.70以上2.20以下の屈折率(n)を有し、25以下のアッベ数(ν)を有し(但し、屈折率(n)が2.05を超えるものを除く)、
ガラス転移点(Tg)から屈伏点(At)までの間における線膨張係数の最大値(αmax)が1500×10−7−1以下である光学ガラス。
【請求項2】
質量比WO/(TiO+Nb)が0.600以下である請求項1記載の光学ガラス。
【請求項3】
質量%で、RnO成分(Rnは、Li、Na及びKからなる群より選択される1種以上)の含有量の和が20.0%以下である請求項1又は2記載の光学ガラス。
【請求項4】
質量%で、GeO成分の含有量が10.0%以下である請求項1から3のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項5】
質量%で
MgO成分 0〜5.0%
CaO成分 0〜10.0%
SrO成分 0〜10.0%
である請求項1から4のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項6】
RO成分(Rは、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群より選択される1種以上である)の含有量の和が20.0%以下である請求項1から5のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項7】
質量%で
成分 0〜10.0%
La成分 0〜10.0%
Gd成分 0〜10.0%
Yb成分 0〜10.0%
である請求項1から6のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項8】
Ln成分(Lnは、Y、La、Gd及びYbからなる群より選択される1種以上である)の含有量の和が15.0%以下である請求項1から7のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項9】
質量%で
SiO成分 0〜10.0%
ZnO成分 0〜10.0%
Al成分 0〜10.0%
Ga成分 0〜10.0%
ZrO成分 0〜10.0%
Ta成分 0〜10.0%
TeO成分 0〜10.0%
SnO成分 0〜10.0%
Sb成分 0〜3.0%
である請求項1から8のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項10】
分光透過率が70%を示す波長(λ70)が500nm以下である、請求項1からのいずれか記載の光学ガラス。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか記載の光学ガラスからなる研磨加工用及び/又は精密プレス成形用のプリフォーム。
【請求項13】
請求項12記載のプリフォームからなる光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、プリフォーム及び光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学系を使用する機器のデジタル化や高精細化が急速に進んでおり、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮影機器をはじめ、各種光学機器に用いられるレンズ等の光学素子に対する高精度化、軽量、及び小型化の要求は、ますます強まっている。
【0003】
特に、研削や研磨法で非球面レンズを作製することは高コスト、低能率であるために、非球面レンズの製造方法としては、ゴブ或いはガラスブロックを切断・研磨したプリフォーム材を加熱軟化させ、これを高精度な面を持つ成形型で加圧成形させることによって、研削・研磨工程を省略し、低コスト・大量生産が実現している。
【0004】
光学素子を作製する光学ガラスの中でも特に、光学素子の軽量化及び小型化を図ることに有益な、1.70以上の高い屈折率(n)と25以下の低いアッベ数(ν)を有するガラスの需要が非常に高まっている。このような高屈折率高分散ガラスとして、例えば特許文献1〜5に代表されるようなガラスが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−015904号公報
【特許文献2】特開2007−051060号公報
【特許文献3】特開2011−121831号公報
【特許文献4】特開2011−219278号公報
【特許文献5】特開2012−006787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜5に記載の光学ガラスでは、プレス成形を行った際にガラスの割れやクラックが多く発生していた。ここで、プレス成形後に割れやクラックが発生したガラスは、もはや光学素子として用いることができない。そのため、プレス成形時における割れやクラックに低減された光学ガラスの開発が望まれている。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、所望の高い屈折率(n)及び低いアッベ数(ν)を有しながらも、プレス成形時におけるガラスの割れやクラックを低減でき、ひいては光学素子の生産性を高めることが可能な光学ガラスと、これを用いたプリフォーム及び光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、本発明を完成させた。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 質量%で、P成分を7.0%以上30.0%以下、及びBi成分を10.0%以上60.0%以下含有し、線膨張係数の最大値(αmax)が1500×10−7−1以下である光学ガラス。
【0010】
(2) 質量%で、Nb成分を0%超含有し、TiO成分を0%超含有する(1)記載の光学ガラス。
【0011】
(3) 質量%で、Nb成分の含有量が50.0%以下であり、TiO成分の含有量が30.0%以下である(1)又は(2)記載の光学ガラス。
【0012】
(4) 質量%で、WO成分の含有量が20.0%以下である(1)から(3)のいずれか記載の光学ガラス。
【0013】
(5) 質量比WO/(TiO+Nb)が0.600以下である(1)から(4)のいずれか記載の光学ガラス。
【0014】
(6) 質量%で、
LiO成分 0〜10.0%
NaO成分 0〜15.0%
O成分 0〜15.0%
である(1)から(5)のいずれか記載の光学ガラス。
【0015】
(7) 質量%で、RnO成分(Rnは、Li、Na及びKからなる群より選択される1種以上)の含有量の和が20.0%以下である(1)から(6)のいずれか記載の光学ガラス。
【0016】
(8) 質量%で、BaO成分の含有量が20.0%以下である(1)から(7)のいずれか記載の光学ガラス。
【0017】
(9) 質量%で、GeO成分の含有量が10.0%以下である(1)から(8)のいずれか記載の光学ガラス。
【0018】
(10) 質量%で、B成分の含有量が10.0%以下である(1)から(9)のいずれか記載の光学ガラス。
【0019】
(11) 質量%で
MgO成分 0〜5.0%
CaO成分 0〜10.0%
SrO成分 0〜10.0%
である(1)から(10)のいずれか記載の光学ガラス。
【0020】
(12) RO成分(Rは、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群より選択される1種以上である)の含有量の和が20.0%以下である(1)から(11)のいずれか記載の光学ガラス。
【0021】
(13) 質量%で
成分 0〜10.0%
La成分 0〜10.0%
Gd成分 0〜10.0%
Yb成分 0〜10.0%
である(1)から(12)のいずれか記載の光学ガラス。
【0022】
(14) Ln成分(Lnは、Y、La、Gd及びYbからなる群より選択される1種以上である)の含有量の和が15.0%以下である(1)から(13)のいずれか記載の光学ガラス。
【0023】
(15) 質量%で
SiO成分 0〜10.0%
ZnO成分 0〜10.0%
Al成分 0〜10.0%
Ga成分 0〜10.0%
ZrO成分 0〜10.0%
Ta成分 0〜10.0%
TeO成分 0〜15.0%
SnO成分 0〜10.0%
Sb成分 0〜3.0%
である(1)から(14)のいずれか記載の光学ガラス。
【0024】
(16) 1.70以上2.20以下の屈折率(n)を有し、25以下のアッベ数(ν)を有する(1)から(15)のいずれか記載の光学ガラス。
【0025】
(17) 分光透過率が70%を示す波長(λ70)が500nm以下である、(1)から(16)のいずれか記載の光学ガラス。
【0026】
(18) (1)から(17)のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
【0027】
(19) (1)から(17)のいずれか記載の光学ガラスからなる研磨加工用及び/又は精密プレス成形用のプリフォーム。
【0028】
(20) (19)記載のプリフォームを精密プレスしてなる光学素子。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、高い屈折率(n)及び低いアッベ数(ν)を有しながらも、プレス成形時におけるガラスの割れやクラックを低減でき、ひいては光学素子の生産性を高めることが可能な光学ガラスと、これを用いたプリフォーム及び光学素子を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の光学ガラスは、質量%で、P成分を7.0%以上30.0%以下、及びBi成分を10.0%以上60.0%以下含有し、線膨張係数の最大値(αmax)が1500×10−7−1以下である。これにより、所望の高い屈折率及び低いアッベ数が得られながらも、ガラス転移点より高い温度にガラスを加熱してプレス成形を行っても、プレス成形後のガラスが割れ難くなり、クラックも生じ難くなる。そのため、光学素子の薄型化や軽量化を図りながらも、特に光学素子の作製工程のうちガラスをプレス成形する工程で割れたりクラックが入ったりするガラスを低減できることで、光学素子の生産性を高めることができる。
【0031】
以下、本発明の光学ガラスの実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
【0032】
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中において、各成分の含有量は特に断りがない場合は、全て酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」は、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が溶融時に全て分解されて酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0033】
<必須成分、任意成分について>
成分は、ガラス形成成分であり、ガラスの分散を高めるのに有効な必須成分である。特に、P成分を7.0%以上含有することで、ガラスの線膨張係数の最大値を小さくでき、且つガラスの可視光透過率を高められる。従って、P成分の含有量は、好ましくは7.0%、より好ましくは9.0%、さらに好ましくは11.0%、さらに好ましくは13.0%、さらに好ましくは15.0%、さらに好ましくは16.5%を下限とする。
一方で、P成分の含有量を30.0%以下にすることで、屈折率の低下を抑えられる。従って、P成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは25.0%、さらに好ましくは20.0%を上限とする。
成分は、原料としてAl(PO、Ca(PO、Ba(PO、BPO、HPO等を用いてガラス内に含有できる。
【0034】
Bi成分は、ガラスの屈折率を高めつつアッベ数を低くできる必須成分である。また、ガラス転移点を低くできる成分でもある。従って、Bi成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは14.0%、さらに好ましくは17.0%、さらに好ましくは20.0%、さらに好ましくは23.0%、さらに好ましくは27.0%、さらに好ましくは30.0%、さらに好ましくは33.0%を下限とする。
一方で、Bi成分の含有量を60.0%以下にすることで、ガラスの可視光透過率の低下や失透を抑えられる。従って、Bi成分の含有量は、好ましくは60.0%、より好ましくは55.0%、さらに好ましくは50.0%、さらに好ましくは45.0%を上限とする。
Bi成分は、原料としてBi等を用いてガラス内に含有できる。
【0035】
Nb成分は、ガラスの線膨張係数の最大値を小さくでき、ガラスの屈折率を高めつつアッベ数を低くでき、且つ、ガラスの耐失透性を改善できる成分であるため、光学ガラスに0%超含有させることが好ましい。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは10.0%、さらに好ましくは13.0%、さらに好ましくは17.0%、さらに好ましくは20.0%、さらに好ましくは23.0%、さらに好ましくは24.5%を下限とする。
一方で、Nb成分の含有量が多すぎると、ガラスの液相温度が上昇して耐失透性が悪化する。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは50.0%、より好ましくは40.0%、さらに好ましくは35.0%を上限とする。
Nb成分は、原料としてNb等を用いてガラス内に含有できる。
【0036】
TiO成分は、ガラスの線膨張係数の最大値を小さくし、ガラスの屈折率を高めてアッベ数を低くし、耐失透性を高めるのに有効な成分であるため、光学ガラスに0%超含有させることが好ましい。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%、さらに好ましくは1.3%、さらに好ましくは1.7%を下限としてもよい。
一方で、TiO成分の含有量を30.0%以下にすることで、TiO成分の過剰な含有によるガラスの失透を抑制でき、且つガラスの可視光透過率を高められる。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは10.0%、さらに好ましくは4.5%を上限とする。
TiO成分は、原料としてTiO等を用いてガラス内に含有できる。
【0037】
WO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高めてアッベ数を低くできる任意成分である。
一方で、WO成分の含有量を20.0%以下にすることで、ガラスの線膨張係数の最大値を小さくでき、ガラス転移点を低くでき、且つガラスの可視光透過率を高められる。従って、WO成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%を上限とし、さらに好ましくは12.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満とする。
WO成分は、原料としてWO等を用いてガラス内に含有できる。
【0038】
Nb成分及びTiO成分の合計量に対する、WO成分の含有量の比率(質量比)は、0.600以下が好ましい。これにより、ガラスの屈折率を高めてアッベ数を低くできる成分の中でも、線膨張係数の最大値を小さくできるNb成分とTiO成分の合計量が、線膨張係数の最大値を高めるWO成分の含有量に相対して増加するため、高屈折率及び高分散を得ながらも、より線膨張係数の最大値の小さな光学ガラスを得られる。従って、質量比(WO/(Nb+TiO))は、好ましくは0.600、より好ましくは0.500、さらに好ましくは0.400、さらに好ましくは0.340を上限とする。
【0039】
LiO成分、NaO成分及びKO成分は、0%超含有する場合に、ガラス転移点を低くでき、且つ耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、LiO成分の含有量を10.0%以下にすること、及び/又は、NaO成分の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの線膨張係数の最大値を小さくでき、ガラスの屈折率の低下を抑えられ、且つ、LiO成分やNaO成分の過剰な含有による失透を低減できる。また、KO成分の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの屈折率の低下を抑えられ、且つ、KO成分の過剰な含有による失透を低減できる。
従って、LiO成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは2.5%、さらに好ましくは2.0%を上限とする。また、NaO成分及びKO成分の各々の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは4.0%、さらに好ましくは2.5%を上限とする。
LiO成分、NaO成分及びKO成分は、原料としてLiCO、LiNO、LiF、NaCO、NaNO、NaF、NaSiF、KCO、KNO、KF、KHF、KSiF等を用いてガラス内に含有できる。
【0040】
RnO成分(式中、RnはLi、Na及びKからなる群より選択される1種以上)の合計量(質量和)は、20.0%以下が好ましい。これにより、RnO成分の過剰な含有による、ガラスの線膨張係数の最大値の上昇や、屈折率の低下、耐失透性の悪化を抑えられる。従って、RnO成分の合計量は、好ましくは20.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは8.0%、さらに好ましくは6.5%、さらに好ましくは5.5%、さらに好ましくは4.5%を上限とする。
【0041】
BaO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率や耐失透性を高められ、且つ、可視光透過率を低下し難くできる任意成分である。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%超、さらに好ましくは0.8%超、さらに好ましくは1.1%超としてもよい。
一方で、BaO成分の含有率を20.0%以下にすることで、アッベ数の上昇を抑えられ、且つ耐失透性及び化学的耐久性の低下を抑えられる。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは6.0%を上限とする。
BaO成分は、原料として例えばBaCO、Ba(NO、BaF等を用いてガラス内に含有できる。
【0042】
GeO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率及び耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、GeO成分の含有量を10.0%以下にすることで、高価なGeO成分の使用が低減されるため、ガラスの材料コストを低減できる。従って、GeO成分の含有量は、好ましくは10.0%を上限とし、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
GeO成分は、原料としてGeO等を用いてガラス内に含有できる。
【0043】
成分は、0%超含有する場合に、ガラスの線膨張係数の最大値を小さくでき、且つ、ガラスの耐失透性を高められる任意成分である。従って、B成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%、さらに好ましくは0.6%を下限としてもよい。
一方で、B成分の含有量を10.0%以下にすることで、屈折率や可視光透過率の低下を抑えられる。従って、B成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%、さらに好ましくは1.9%を上限とする。
成分は、原料としてHBO、Na、Na・10HO、BPO等を用いてガラス内に含有できる。
【0044】
MgO成分、CaO成分及びSrO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、MgO成分の含有量を5.0%以下にすること、及び/又は、CaO成分及びSrO成分の各々の含有量を10.0%以下にすることにより、ガラスの屈折率の低下やアッベ数の上昇抑えられ、且つ、これら成分の過剰な含有によるガラスの失透を抑えられる。従って、MgO成分の含有量は、好ましくは5.0%、より好ましくは3.0%、さらに好ましくは1.0%を上限とする。また、CaO成分及びSrO成分の各々の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
MgO成分、CaO成分及びSrO成分は、原料としてMgCO、MgF、CaCO、CaF、Sr(NO、SrF等を用いてガラス内に含有できる。
【0045】
RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選択される1種以上)の合計量(質量和)は、20.0%が好ましい。これにより、RO成分の過剰な含有による、ガラスのアッベ数の上昇や失透を抑えられる。従って、RO成分の合計量は、好ましくは20.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは7.0%を上限とする。
一方で、RO成分は、合計で0%超含有する場合に、ガラスの耐失透性をより高められる。従って、RO成分の合計量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%、さらに好ましくは1.0%を下限としてもよい。
【0046】
成分、La成分、Gd成分及びYb成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つガラスの化学的耐久性を高められる任意成分である。
一方で、これら成分の各々の含有量を10.0%以下にすることで、アッベ数の上昇を抑え、且つこれら成分の過剰な含有によるガラスの失透を低減できる。従って、Y成分、La成分、Gd成分、Yb成分及びLu成分の各々の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
成分、La成分、Gd成分及びYb成分は、原料としてY、YF、La、La(NO・XHO(Xは任意の整数)、Gd、GdF、Yb等を用いてガラス内に含有できる。
【0047】
Ln成分(式中、LnはY、La、Gd及びYbからなる群より選択される1種以上)の合計量(質量和)は、15.0%以下が好ましい。これにより、アッベ数の上昇やガラスの失透を抑えられる。従って、Ln成分の合計量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
【0048】
SiO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高められ、且つガラスの耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、SiO成分の含有量を10.0%以下にすることで、屈折率の低下を抑えられる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
SiO成分は、原料としてSiO、KSiF、NaSiF等を用いてガラス内に含有できる。
【0049】
ZnO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、ZnO成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの屈折率の低下やアッベ数の上昇、ZnO成分の過剰な含有による失透を抑えることができる。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
ZnO成分は、原料としてZnO、ZnF等を用いてガラス内に含有できる。
【0050】
Al成分及びGa成分は、0%超含有する場合に、ガラスの化学的耐久性を高められ、且つガラス溶融時の粘度を高められる任意成分である。
一方で、Al成分及びGa成分の含有量を各々10.0%以下にすることで、ガラスの耐失透性の悪化を抑えることができる。従って、Al成分及びGa成分の各々の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
Al成分及びGa成分は、原料としてAl、Al(OH)、AlF、Ga、Ga(OH)等を用いてガラス内に含有できる。
【0051】
ZrO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの可視光透過率を高め、且つガラスの耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、ZrO成分の含有量を10.0%以下にすることで、ZrO成分の過剰な含有による屈折率の低下や失透を抑えられる。従って、ZrO成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
ZrO成分は、原料としてZrO、ZrF等を用いてガラス内に含有できる。
【0052】
Ta成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められる任意成分である。
一方で、Ta成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの耐失透性を高められる。従って、Ta成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
Ta成分は、原料としてTa等を用いてガラス内に含有できる。
【0053】
TeO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つガラス転移点を低くできる任意成分である。
一方で、TeO成分の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの可視光透過率を高めることができる。従って、TeO成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
TeO成分は、原料としてTeO等を用いてガラス内に含有できる。
【0054】
SnO成分は、0%超含有する場合に、ガラス転移点を低くでき、且つ可視光透過率を高められる任意成分である。
一方で、SnO成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの耐失透性を低下し難くできる。また、溶解設備(特にPt等の貴金属)の溶存によって生じる、ガラスの着色や可視光透過率の低下を抑えられる。従って、SnO成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
SnO成分は、例えばSnO、SnO、SnO等を用いてガラス原料に含有することができる。
【0055】
Sb成分は、0%超含有する場合に、ガラスの可視光透過率を高め、且つガラスを溶融する際に脱泡できる任意成分である。
一方で、Sb成分の含有量を3.0%以下にすることで、Sb成分が溶解設備(特にPt等の貴金属)と合金化し難くなることで、成形型に付着する不純物が低減されるため、ガラス成形体の表面への凹凸や曇りの形成を低減でき、成形型の長寿命化を図れる。また、Sb成分の含有量を3.0%以下にすることで、ガラスのソラリゼーションを低減できる。従って、Sb成分の含有量は、好ましくは3.0%、より好ましくは1.0%、さらに好ましくは0.5%を上限とする。
Sb成分は、原料としてSb、Sb、NaSb・5HO等を用いてガラス内に含有できる。
【0056】
なお、ガラスを清澄し脱泡する成分は、上記のSb成分に限定されるものではなく、ガラス製造の分野における公知の清澄剤、脱泡剤或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
【0057】
<含有すべきでない成分について>
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
【0058】
本発明の光学ガラスには、他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加できる。
【0059】
また、Ti、Zr、Nb、W、La、Gd、Y、Yb、Luを除く、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質があるため、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。
【0060】
さらに、PbO等の鉛化合物、及び、Th、Cd、Tl、Os、Be、Seの各成分は、近年有害な化学物資として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、不可避な混入を除き、これらを実質的に含有しないことが好ましい。これにより、光学ガラスに環境を汚染する物質が実質的に含まれなくなる。そのため、特別な環境対策上の措置を講じなくとも、この光学ガラスを製造し、加工し、及び廃棄できる。
【0061】
本発明のガラス組成物は、その組成が酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表されているため直接的にモル%の記載に表せるものではないが、本発明において要求される諸特性を満たすガラス組成物中に存在する各成分のモル%表示による組成は、酸化物換算組成で概ね以下の値をとる。
成分 10.0〜45.0モル%、
Nb成分 8.0〜40.0モル%及び
Bi成分 4.0〜25.0モル%
並びに
TiO成分 0〜60.0モル%、
WO成分 0〜20.0モル%、
LiO成分 0〜60.0モル%、
NaO成分 0〜50.0モル%、
O成分 0〜30.0モル%、
BaO成分 0〜30.0モル%、
GeO成分 0〜20.0モル%、
成分 0〜30.0モル%、
MgO成分 0〜25.0モル%、
CaO成分 0〜35.0モル%、
SrO成分 0〜20.0モル%、
成分 0〜10.0モル%、
La成分 0〜8.0モル%、
Gd成分 0〜7.0モル%、
Yb成分 0〜6.0モル%、
SiO成分 0〜30.0モル%、
ZnO成分 0〜30.0モル%、
Al成分 0〜20.0モル%、
Ga成分 0〜10.0モル%、
ZrO成分 0〜15.0モル%
Ta成分 0〜5.0モル%、
TeO成分 0〜25.0モル%、
SnO成分 0〜15.0モル%
Sb成分 0〜2.5モル%
【0062】
[製造方法]
本発明の光学ガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有量の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を石英坩堝又はアルミナ坩堝に投入して粗溶融した後、白金坩堝、白金合金坩堝又はイリジウム坩堝に入れて1000〜1250℃の温度範囲で2〜10時間溶融し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1200℃以下の温度に下げてから仕上げ攪拌を行って脈理を除去し、金型に鋳込んで徐冷することにより作製される。
【0063】
[物性]
本発明の光学ガラスでは、ガラス転移点(Tg)と屈伏点(At)との間の温度範囲における線膨張係数の最大値(αmax)は、1500×10−7−1以下である。これにより、特に屈折率が高く薄型の光学素子を作製する場合であっても、ガラス転移点より高い温度に加熱してプレス成形を行ったときにガラスが割れ難くなるため、光学素子の生産性を高めることができる。このようにガラスが割れ難くなる理由として、例えば、ガラスを加熱して軟化させる際や、軟化したガラスをプレス成形して冷却する際に、ガラス内部の温度差によって、ガラス内部に線膨張係数の大きいガラス転移点以上の高温部と、線膨張係数の小さいガラス転移点以下の低温部に分かれたときに、高温部の熱膨張や熱収縮が小さくなることで、高温部の熱膨張や熱収縮によって低温部に掛かる力が小さくなることが挙げられる。
従って、本発明の光学ガラスでは、ガラス転移点(Tg)と屈伏点(At)との間の温度範囲における線膨張係数の最大値(αmax)の上限は、好ましくは1500×10−7−1、より好ましくは1200×10−7−1、さらに好ましくは1000×10−7−11、さらに好ましくは900×10−7−11、さらに好ましくは800×10−7−11とする。一方で、この線膨張係数の最大値(αmax)の下限は、好ましくは100×10−7−1、より好ましくは200×10−7−1、さらに好ましくは300×10−7−1としてもよい。
なお、本明細書では、ガラス転移点(Tg)と屈伏点(At)との間の温度範囲における線膨張係数の最大値を、単に「線膨張係数の最大値」と記載することがある。
【0064】
本発明の光学ガラスは、高い屈折率を有しながらも、より高い分散(低いアッベ数)を有することが好ましい。
本発明の光学ガラスのアッベ数(ν)は、好ましくは25、より好ましくは23、さらに好ましくは20を上限とする。このアッベ数の下限は、好ましくは15、より好ましくは16、さらに好ましくは17であってもよい。このような低いアッベ数を有することで、例えば高いアッベ数を有する光学素子と組み合わせた場合に、高い結像特性等を図ることができる。
また、本発明の光学ガラスの屈折率(n)は、好ましくは1.70、より好ましくは1.80、さらに好ましくは1.85、さらに好ましくは1.89、さらに好ましくは1.92、さらに好ましくは1.95、さらに好ましくは1.99を下限とする。この屈折率の上限は、好ましくは2.20、より好ましくは2.15、さらに好ましくは2.10であってもよい。このような高い屈折率を有することで、さらに素子の薄型化を図っても大きな光の屈折量を得ることができる。
従って、このような高屈折率高分散の光学ガラスを、例えば光学素子の用途に用いることで、高い結像特性等を図りながらも、光学設計の自由度を広げることができる。
【0065】
本発明の光学ガラスは、可視光透過率、特に可視光のうち短波長側の光の透過率が高く、着色が少ないことが好ましい。特に、本発明の光学ガラスでは、厚み10mmのサンプルで分光透過率5%を示す最も短い波長(λ)は、好ましくは450nm、より好ましくは430nm、さらに好ましくは410nmを上限とする。また、本発明の光学ガラスでは、厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す最も短い波長(λ70)は、好ましくは500nm、より好ましくは490nm、さらに好ましくは480nmを上限とする。これにより、ガラスの吸収端が紫外領域やその近傍に位置するようになり、可視域の特に短波長側の光に対するガラスの透明性がより高められることで、ガラスの黄色や橙色への着色が低減されるため、この光学ガラスをレンズ等の可視光を透過させる光学素子の材料に好ましく用いることができる。
【0066】
本発明の光学ガラスは、ガラス作製時における耐失透性(明細書中では、単に「耐失透性」という場合がある。)が高いことが好ましい。これにより、ガラス作製時におけるガラスの結晶化等による透過率の低下が抑えられるため、この光学ガラスをレンズ等の可視光を透過させる光学素子に好ましく用いることができる。
【0067】
[プリフォーム及び光学素子]
作製された光学ガラスから、例えばリヒートプレス成形や精密プレス成形等のモールドプレス成形の手段を用いて、ガラス成形体を作製することができる。すなわち、光学ガラスからモールドプレス成形用のプリフォームを作製し、このプリフォームに対してリヒートプレス成形を行った後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、研磨加工を行って作製したプリフォームや、公知の浮上成形等により成形されたプリフォームに対して精密プレス成形を行ってガラス成形体を作製したりすることができる。なお、ガラス成形体を作製する手段は、これらの手段に限定されない。
【0068】
このようにして作製されるガラス成形体は、様々な光学素子及び光学設計に有用である。特に、本発明の光学ガラスから、精密プレス成形等の手段を用いて、レンズやプリズム、ミラー等の光学素子を作製することが好ましい。これにより、カメラやプロジェクタ等のような光学素子に可視光を透過させる光学機器に用いたときに、高精細で高精度な結像特性等を実現しつつ、これら光学機器における光学系の小型化を図ることができる。
【実施例】
【0069】
本発明の実施例(No.1〜No.7)及び比較例(No.A)のガラスの組成、屈折率(n)、アッベ数(ν)、分光透過率が70%及び5%を示す波長(λ70、λ)及び線膨張係数の最大値(αmax)を表1に示す。なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例のみ限定されるものではない。
【0070】
これら実施例及び比較例のガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、水酸化物、メタ燐酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度原料を選定し、表に示した各実施例及び比較例の組成の割合になるように秤量して均一に混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス組成の熔融難易度に応じて電気炉で1000〜1250℃の温度範囲で2〜10時間溶解し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1200℃以下に温度を下げて攪拌均質化してから金型に鋳込み、徐冷してガラスを作製した。
【0071】
ここで、実施例及び比較例のガラスの屈折率及びアッベ数は、日本光学硝子工業会規格JOGIS01―2003に基づいて測定した。なお、本測定に用いたガラスとしては、徐冷降下速度−25℃/hrのアニール条件で、徐冷炉で処理したものを用いた。
【0072】
また、実施例及び比較例のガラスの可視光透過率は、日本光学硝子工業会規格JOGIS02−2003に準じて測定した。なお、本発明においては、ガラスの可視光透過率を測定することで、ガラスの着色の有無と程度を求めた。具体的には、厚さ10±0.1mmの対面平行研磨品をJISZ8722に準じ、200〜800nmの分光透過率を測定し、λ(透過率5%時の波長)及びλ70(透過率70%時の波長)を求めた。
【0073】
また、実施例及び比較例のガラスの線膨張係数の最大値(αmax)は、日本光学硝子工業会規格JOGIS08−2003「光学ガラスの熱膨張の測定方法」に従って測定し、ガラス転移点(Tg)から屈伏点(At)までの間における5℃刻みの線膨張係数の最大値を求めた。線膨張係数の計算には、5の倍数の温度における試料の長さを用いた。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に表されるように、本発明の実施例の光学ガラスでは、いずれも安定なガラスが得られており、且つ、ガラス転移点(Tg)と屈伏点(At)との間の温度範囲における線膨張係数の最大値(αmax)の上限が1500×10−7−1以下、より詳細には800×10−7−1以下であり、所望の範囲内であった。一方で、表1の比較例では、失透しており安定なガラスが得られなかった。このため、本発明の実施例の光学ガラスでは、線膨張係数の最大値(αmax)が小さい安定な光学ガラスを得られることが明らかになった。
【0076】
本発明の実施例の光学ガラスは、いずれも屈折率(n)が1.70以上、より詳細には1.99以上である一方で、この屈折率(n)は2.20以下であるため、所望の高い屈折率(n)を有していることが明らかになった。
【0077】
本発明の実施例の光学ガラスは、いずれもアッベ数(ν)が25以下、より詳細には20以下であった。このため、本発明の実施例の光学ガラスは、低いアッベ数(ν)を有していることが明らかになった。
【0078】
本発明の実施例の光学ガラスは、いずれもλ70(透過率70%時の波長)が500nm以下、より詳細には480nm以下であり、所望の範囲内であった。
また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれもλ(透過率5%時の波長)が450nm以下、より詳細には410nm以下であり、所望の範囲内であった。
【0079】
従って、本発明の実施例の光学ガラスは、所望の高い屈折率(n)を有しながらも、低いアッベ数(ν)を有しており、可視光に対する高い透過率を有しており、且つ、線膨張係数の最大値(αmax)が小さいことが明らかになった。
【0080】
さらに、本発明の実施例の光学ガラスに対してプレス成形を行い、レンズやプリズムの形状に加工した。その結果、実施例の光学ガラスをプレス成形したときに、線膨張係数の最大値(αmax)が小さいガラスほど、成形後のガラスに割れが生じ難いことが明らかになった。そのため、本発明の実施例の光学ガラスは、線膨張係数の最大値が小さいため、プレス成形後のガラスに割れが生じ難いことが推察される。
【0081】
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。