(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態の食品保存庫について図面に基づいて説明する。
【0012】
以下、実施形態1の食品保存庫は冷蔵庫10であって、
図1〜
図6に基づいて説明する。
【0013】
(1)冷蔵庫10
冷蔵庫10の構造について
図1に基づいて説明する。
図1は、冷蔵庫10の全体の縦断面図である。
【0014】
冷蔵庫10のキャビネット12は断熱箱体であって、内箱と外箱とより形成され、その間に断熱材が充填されている。このキャビネット12内部は、上から順番に冷蔵室14、野菜室16、小型冷凍室18及び冷凍室20を有し、小型冷凍室18の横には製氷室22が設けられている。野菜室16と小型冷凍室18及び製氷室22の間には断熱仕切り体24が設けられている。冷蔵室14と野菜室16とは水平な仕切り体26によって仕切られている。冷蔵室14の前面には、観音開き式の扉14a,14bが設けられ、野菜室16、小型冷凍室18、冷凍室20及び製氷室22にはそれぞれ引出し式の扉16a,18a,20a,22aが設けられている。
【0015】
(2)野菜室16
次に、野菜室16の構造について
図2及び
図3に基づいて説明する。
図2は野菜室16の正面図であり、
図3は側面図である。
【0016】
図2に示すように、野菜室16の下部には、引出し式の野菜室容器28が設けられている。野菜室16の上部左側には、除湿室30が設けられている。
【0017】
図3に示すように、除湿室30は、複数の吊り下げ部材33によって仕切り体26に吊り下げられている。除湿室30は、直方体の箱型を成し、前面が開口している。
【0018】
除湿室30には、前後方向に引出し可能な除湿容器34が設けられている。この除湿容器34の上面は開口し、前面は扉36を構成している。除湿室30の開口した前面縁部にはフランジ部38が設けられている。また、扉36の裏面側には額縁状のガスケット40が設けられ、扉36を閉めた場合にガスケット40がフランジ部38に当接され、除湿室30は密閉される。
【0019】
除湿室30の背面には、除湿室30内部を除湿するための除湿装置100が取り付けられている。この除湿装置100については後から詳しく説明する。
【0020】
除湿室30の背面42の上部内側には、湿度センサ46が取り付けられている。この湿度センサ46は、密閉された除湿室30内部の湿度を検出する。
【0021】
(3)除湿装置100
次に、除湿装置100の構造について
図4に基づいて説明する。
図4は除湿装置100の縦断面図である。
【0022】
除湿装置100は、除湿室30の背面に取り付けられ、この場合に、除湿室30の背面42には矩形の開口部44が開口し、この開口部44の位置に除湿装置100を構成する立方体型のユニットケース102の前部が差し込まれている。
【0023】
ユニットケース102内部には、除湿ユニット104が収納されている。この除湿ユニット104については後から詳しく説明する。ユニットケース102の前面、すなわち、除湿室30側には吸湿口106が開口し、後面には排気口108が開口している。
【0024】
(4)除湿ユニット104
次に、除湿ユニット104について、
図4及び
図5に基づいて説明する。
図5は除湿ユニット104の分解斜視図である。なお、
図4及び
図5において、実際の各部材の厚みは薄いものであるが、説明を判り易くするために、図面ではその厚みを拡大して記載している。
【0025】
高分子電解質膜(以下、単に「電解質膜」という)116が縦方向に設けられ、電解質膜116の前部にはアノード層118が設けられ、電解質膜116の後部にはカソード層120が設けられている。電解質膜116は、ナフィオンで形成されている。「ナフィオン」とは、スルホン化されたテトラフルオロエチレンをもとにしたフッ素樹脂の共重合体であって、イオン電導性を持つポリマーである。そして、ナフィオンは陰イオンや電子は移動せず、陽イオンだけ移動する。カソード層120は、カーボン触媒とカーボンペーパーを積層したものである。また、アノード層118とカソード層120には白金の触媒がそれぞれ担持されている。電解質膜116、アノード層118及びカソード層120がホットプレスなどを用いて一体に接合されている。アノード層118の前方にはプラス側の集電体122が設けられ、カソード層120の後方にはマイナス側の集電体124が設けられている。両集電体122,124は、表面に白金メッキを行なったメッシュ状のチタン膜であり、集電体122はアノード層118にプラス通電を行い、集電体124はカソード層120にマイナス通電を行う。両集電体122,124は電線140,142から通電される。また、両集電体122,124が接触しないようにするために、絶縁体125が両集電体122,124の間に設けられている。この絶縁体125は額縁状であって、電解質膜116とアノード層118とカソード層120がその内部に収納されている。
【0026】
プラス側の集電体122の後方には、撥水層126が設けられている。この撥水層126は、額縁状のガスケット126内部に設けられている。また、マイナス側の集電体124の前方にも撥水層130が設けられ、この撥水層130も額縁状のガスケット131内部に設けられている。撥水層126,130としては、高分子フィルムを用いる。多くの高分子フィルムは撥水性であるが、水蒸気を透過させる必要があるため、材料によっては厚さの調整が必要であり、水を透過せずに水蒸気を透過させる性質としては、PTEフィルムや撥水性の樹脂を用いた不織布などが好ましい。
【0027】
撥水層126の前方には、シート状の吸湿体128が配されている。吸湿体128は不織布であり、合成樹脂繊維より形成されている。なお、この合成樹脂繊維には、親水性を持たせておくか、親水性のある合成樹脂繊維を用いる。また、吸湿体128としては、不織布以外にシリカゲルのシート、塩化カルシウムのシートを用いてもよい。
【0028】
上記のようにして順番に積層した部材を、前後一対の固定部材132と固定部材134によって挟持して固定する。アノード層118側に配される前方の固定部材132は直方体形状を成し、矩形の吸湿口136を有する。この吸湿口136は、
図4に示すように、前後方向に貫通し、ユニットケース102の吸湿口106、除湿室30の背面42の開口部44の位置に対応している。一方、カソード層120側に取り付ける後方の固定部材134も直方体形状を成し、中央部に排気口138を有する。この排気口138は、ユニットケース102の排気口108の位置に対応している。
【0029】
以上の部材により、除湿ユニット104が構成されている。固定部材132と固定部材134とは、不図示の数本のネジによって固定されている。
【0030】
固定部材132と固定部材134の前後方向の厚さは例えば10mmであり、吸湿体128の厚みは例えば0.2mm、撥水層126と撥水層130の厚みは例えば0.2mm、ガスケット127とガスケット131の厚みはそれぞれ例えば0.2mm、アノード層118の厚みは例えば0.25mm、電解質膜116の厚みが例えば0.2mm、カソード層120の厚みが例えば0.25mm、絶縁体126の厚みが例えば0.7mm、集電体122と集電体124の厚みはそれぞれ例えば0.5mmである。
【0031】
(5)除湿装置100の電気的構成
次に、除湿装置100の電気的構成について
図6のブロック図に基づいて説明する。
【0032】
冷蔵庫10は、キャビネット12の背面に、制御部48を有している。この制御部48は、冷蔵庫10の庫内温度の管理を行なうものであり、冷蔵室14、野菜室16、小型冷凍室18、冷凍室20などの庫内温度を温度センサによって検出し、冷凍サイクルを構成する圧縮機をON/OFFさせて、冷却状態を制御する。
【0033】
制御部48には、除湿装置100の除湿ユニット104から延びている電線140,142が接続されている。さらに、除湿室30内部に設けられた湿度センサ46も接続されている。
【0034】
制御部48は、湿度センサ46で検出した検出湿度が、予め定めた上限基準湿度(例えば、50%)を超えると、除湿ユニット104に対し通電を行ない、除湿装置100を駆動させる。また、逆に湿度センサ46の検出した湿度が予め定めた下限基準湿度(例えば、20%)より下がると、除湿装置100の駆動を停止させる。
【0035】
(6)除湿装置100の動作状態
次に、除湿装置100の動作状態について説明する。
【0036】
ユーザが、野菜室16の扉16aを開けた後、除湿室30の扉36を前方に引き出すと、除湿容器34も手前に引き出される。この除湿容器34内部に、湿気を嫌う食品(例えば、鰹の削り節、海苔などの乾物、小麦粉、パン粉などの粉状物、コーヒー、緑茶、紅茶などのお茶類、食べかけのスナック、薬、サプリメント)を収納する。そして、ユーザが扉36を閉めて、除湿室30内部を密閉状態にする。
【0037】
次に、制御部48は、密閉された除湿室30内部の湿度を湿度センサ46で検出し、上限基準湿度を超えた場合には、除湿装置100を駆動させる。
【0038】
次に、除湿室30内に収納された食品から発生した湿った空気が、除湿室30の開口部44、ユニットケース102の吸湿口106、固定部材132の吸湿口136を経て吸湿体128に吸湿され、集電体122,124が通電されているので、流入した湿った空気から除湿が行われる。この除湿のときのアノード層118とカソード層120では次のような反応が行なわれる。
【0039】
アノード層・・・2H
2O→O
2+H
++4e
−
カソード層・・・O
2+H
++4e
−→2H
2O
この反応式を説明する。
【0040】
ます、除湿容器36の湿った空気が吸湿体128で吸湿される。
【0041】
次に、吸湿体128で吸湿された水分が、水蒸気となって撥水層126を通過し、アノード層118で電気分解されて水素イオンが作られる。
【0042】
次に、その水素イオンが電解質膜116内を移動してカソード層120に到達し、野菜室16内部の酸素と反応して水蒸気を生成する。このときに、固定部材134の排気口138、ユニットケース102の排気口108から流入した酸素を消費する。
【0043】
次に、除湿ユニット104のカソード層120で発生した水蒸気が、固定部材134の排気口138、ユニットケース102の排気口108から野菜室16へ拡散される。
【0044】
これにより、除湿容器36内が除湿されて収納された食品が乾燥し、また、拡散された水蒸気によって野菜室16内が潤う。
【0045】
最後に、制御部48は、湿度センサ46が検出した湿度が、下限基準湿度を下回った場合には、除湿装置100を停止させる。
【0046】
(7)効果
本実施形態によれば、密閉された除湿室30内部の水分を除湿し、湿気を嫌う食品を安心して収納できる。この場合に、小麦粉、パン粉などの粉状物や緑茶、コーヒー、紅茶、などのお茶について、除湿室による振動が発生することがないので、ブロッキングが起こらず、密度の高い状態になることなく乾燥させることができる。
【0047】
また、除湿装置100は、モータなどの駆動部分がなく振動に加えて騒音も発生しないので、ユーザにとっても使用し易い。
【0048】
また、除湿室30は、吊り下げ部材33によって仕切り体26に吊り下げられているため、冷蔵庫10に設けられている圧縮機による振動が除湿室30に伝わらず、収納した食品を振動させることがない。さらに、除湿室30は野菜室16に吊り下げた状態で固定されているため、野菜室容器28を出し入れしても、除湿室30が振動しない。
【0049】
また、除湿装置100の排気口108からは水蒸気が拡散するため、野菜室16内部を水分で潤すことができる。
【0050】
また、湿度が低いときは除湿装置100を駆動させないため、除湿ユニット104の寿命を延ばすことができると共に、省エネ効果もある。
【0051】
また、吸湿体128が配されているため、除湿室内部の水分は、まずこの吸湿体128に吸湿され、更に湿度が上昇した場合にのみ除湿ユニット104が駆動するため、通電時間を短くでき、省エネになると共に、除湿ユニット104の寿命を長くできる。すなわち、吸湿体128が飽和するまで除湿ユニット104を駆動させる必要がない。
【0052】
また、吸湿体128は、親水性を有するため、水分を吸湿し易い。
【0053】
次に、実施形態2の冷蔵庫10の除湿装置100について説明する。
【0054】
本実施形態と実施形態1の異なる点は、除湿ユニット104に用いられている吸湿体128を有さない点にある。すなわち、本実施形態では、吸湿体128を用いることなく、集電体122、アノード層118を露出させ、アノード層118で水蒸気を直接吸い取る。
【0055】
本実施形態においても、除湿装置100によって、密閉された除湿室30内部を除湿できる。
【0056】
次に、実施形態3の冷蔵庫10の除湿装置100について説明する。実施形態1では、食品貯蔵庫として冷蔵庫で説明した。
【0057】
しかし、本実施形態では、食器棚、茶箪笥、米櫃、キッチンのシンクの下の収納庫などの食品貯蔵庫に、上記実施形態1の除湿装置100を用いる。
【0058】
次に、実施形態4の冷蔵庫10の除湿装置100について説明する。実施形態1では、除湿装置100の駆動のON/OFFは、湿度センサ46の検出湿度によって行なった。
【0059】
しかし、本実施形態では、除湿室30の扉36の開閉を検出する扉スイッチを除湿室30に設け、制御部48は、扉36が開かれた場合に除湿装置100を駆動させる。また、制御部48は、扉スイッチが開から閉状態を検出した後、予め定めた時間(例えば、1時間)が経過した後に除湿装置100を停止させる。
【0060】
次に、実施形態5の冷蔵庫10の除湿装置100について説明する。実施形態1では、吸湿体128を用いているだけであった。
【0061】
しかし、本実施形態ではこの吸湿体128の重量を計測する重量計も設ける。制御部48は、この重量計を用いて吸湿体128の重量を常に計測し、吸湿体128の計測重量が予め定めた基準重量より軽いときは、吸湿体128の吸湿能力が飽和していないと判断して、除湿ユニット104に通電を行なわない。一方、吸湿体128の計測重量が、この基準重量より重くなった場合に、吸湿体128の吸湿能力が飽和したとして除湿ユニット104を駆動させる。
【0062】
これにより、除湿ユニット104の寿命を延ばすことができると共に、省エネにもなる。
【0063】
次に、実施形態6の冷蔵庫10の除湿装置100について説明する。
【0064】
本実施形態では、除湿装置100に加えて、除湿室30に脱臭装置を設ける。
【0065】
家庭などにおいて湿気を嫌う食品は、お茶や海苔などの臭気を発生させるものが多く、一緒に収納すると臭い移りが起こることとなるが、この脱臭装置を設けることにより、臭いの発生を防止できる。
【0066】
次に、実施形態7の冷蔵庫10の除湿装置100について説明する。
【0067】
本実施形態では、除湿装置100に加えて、除湿室30に除菌装置を設ける。
【0068】
これによって、食パンや餅などの黴が発生し易い食品に関して、乾燥によって黴が発生し難くなるだけでなく、除菌装置によって更に黴を発生させることなく長期保存が可能となる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。