(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116865
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】電力結合装置における出力特性補正装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H04B 1/04 20060101AFI20170410BHJP
H03K 5/13 20140101ALI20170410BHJP
【FI】
H04B1/04 D
H03K5/13
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-251139(P2012-251139)
(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公開番号】特開2014-72887(P2014-72887A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0109491
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】申 官浩
(72)【発明者】
【氏名】任 龍植
(72)【発明者】
【氏名】▲チョ▼ 榮珠
【審査官】
佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−017199(JP,A)
【文献】
特開2011−019154(JP,A)
【文献】
特開平07−143014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
H03K 5/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力結合装置の出力特性補正方法であって、
複数の電力増幅器の各々に備えられたデジタルアップコンバータの出力信号を同期化した後、前記同期化された前記デジタルアップコンバータの出力信号の相互間の微細遅延を補正するステップと、
前記微細遅延を補正した信号を位相シフトし、増幅した前記複数の電力増幅器の出力信号を合成して一つの結合信号として出力するステップを有することを特徴とする出力特性補正方法。
【請求項2】
前記結合信号から獲得した結合利得が設定された基準値を満たさない場合に、前記複数の電力増幅器のうちの一つであるマスタ電力増幅器内で前記微細遅延を補正した信号を増幅するために遂行される波高率低減(CFR)処理を通じて出力信号の位相を予め定められた分だけシフトさせるステップをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の出力特性補正方法。
【請求項3】
前記複数の電力増幅器それぞれの電圧定在波比(VSWR)を確認し、ルックアップテーブルで前記確認されたVSWRに対応して定義される値を用いて前記複数の電力増幅器のうちの一つであるマスタ電力増幅器内で前記微細遅延を補正した信号を増幅するために遂行されるCFR処理を経た出力信号の位相をシフトさせるステップをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の出力特性補正方法。
【請求項4】
前記位相シフト以後に前記複数の電力増幅器それぞれの出力信号に対するVSWRが目標レベルに達するまで前記CFR処理を経た出力信号の位相を細部調整するステップをさらに有することを特徴とする請求項2又は3に記載の出力特性補正方法。
【請求項5】
前記微細遅延に対する補正は、前記デジタルアップコンバータの出力信号に対するバッファリング時間を制御することにより行われることを特徴とする請求項1に記載の出力特性補正方法。
【請求項6】
前記複数の電力増幅器それぞれのVSWRに対するモニタリングを通じて設定されたイベントが発生する場合、前記微細遅延を補正した後にルックアップテーブルを使用する位相シフトと前記位相に対する細部調整のうち少なくとも一つを遂行することを特徴とする請求項4に記載の出力特性補正方法。
【請求項7】
前記イベントは、前記モニタリングによって前記複数の電力増幅器のVSWRのうち少なくとも一つのVSWRがしきい値レベル以下に減少した状態で一定時間維持される場合に発生することを特徴とする請求項6に記載の出力特性補正方法。
【請求項8】
複数の電力増幅器と、
前記複数の電力増幅器の出力信号を合成して一つの結合信号として出力する結合部と、
前記複数の電力増幅器に備えられたデジタルアップコンバータの出力信号を同期化した後、前記同期化された前記デジタルアップコンバータの出力信号の相互間の微細遅延を補正し、位相シフトして増幅するように前記複数の電力増幅器を制御する制御部と、を含むことを特徴とする電力結合装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記結合信号から獲得した結合利得が設定された基準値を満たさない場合に前記複数の電力増幅器のうちの一つであるマスタ電力増幅器内で前記微細遅延を補正した信号を増幅するために遂行される波高率低減(CFR)処理を経た出力信号の位相を予め定められた分だけシフトさせるように前記マスタ電力増幅器を制御することを特徴とする請求項8に記載の電力結合装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記複数の電力増幅器それぞれの電圧定在波比(VSWR)を確認し、ルックアップテーブルで前記確認されたVSWRに対応して定義される値を用いて前記複数の電力増幅器のうちの一つであるマスタ電力増幅器内で前記微細遅延を補正した信号を増幅するために遂行されるCFR処理を経た出力信号の位相をシフトさせるように前記マスタ電力増幅器を制御することを特徴とする請求項8に記載の電力結合装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記位相シフト以後に前記複数の電力増幅器それぞれの出力信号に対するVSWRが目標レベルに達するまで前記CFRを経た出力信号の位相を細部調整するように前記複数の電力増幅器を制御することを特徴とする請求項9又は10に記載の電力結合装置。
【請求項12】
前記複数の電力増幅器は、各々
前記微細遅延に対する補正のために前記デジタルアップコンバータから出力される信号を前記制御部の制御によって所定時間の間にバッファリングするバッファと、
前記制御部の制御によってCFRを経た出力信号の位相をシフトさせ、あるいは細部調整する移相器と、を含むことを特徴とする請求項8に記載の電力結合装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記複数の電力増幅器それぞれのVSWRに対するモニタリングを通じて設定されたイベントが発生する場合に前記微細遅延を補正した後、ルックアップテーブルを使用する位相シフトと前記位相に対する細部調整のうち少なくとも一つを遂行するように前記複数の電力増幅器を制御することを特徴とする請求項11に記載の電力結合装置。
【請求項14】
前記イベントは、前記モニタリングによって前記複数の電力増幅器のVSWRのうち少なくとも一つのVSWRがしきい値レベル以下に減少した状態で一定時間維持される場合に発生することを特徴とする請求項13に記載の電力結合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力結合装置における出力特性補正装置及び方法に関するもので、特に電力結合装置を構成する複数の電力増幅器の位相シフトを通じて出力特性を補正する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に無線通信装置は、空気中において信号を伝達しなければならないという特殊性により大部分が電力増幅器を備える。電力増幅器は、送信信号を遠くまで送るための目的で使用される。このために、電力増幅器は、無線通信装置を構成する送信器の最後に位置して信号のサイズを増幅して出力する。
【0003】
一方、電力増幅器による最大出力電力容量を高めるために分散(divide)/結合(combine)方式による電力結合装置が主に使用される。例えば、電力結合装置は、入力信号を複数の信号に分け、分けられた入力信号を各々電力増幅器を用いて増幅した後、電力増幅器から出力される複数の信号を一つに合わせて出力することによって、最大出力電力容量を得るようにする構成を有する。
【0004】
但し、電力結合装置で最大出力電力容量を得るためには結合のための信号の位相差を最小化する必要がある。このために、電力結合装置を構成する複数の電力増幅器は共通クロックを使用する。
【0005】
しかしながら、複数の電力増幅器で共通クロックを使用するとしても、複数の電力増幅器に入力される信号の遅延及び位相差に従って最大出力の電力容量を得ることが容易ではなかった。
【0006】
一方、電力結合装置は、電力増幅器で内部信号の位相を一定間隔でシフトさせつつ最大出力の電力容量が得られる位相を探す方式を使用してもよい。
【0007】
しかしながら、電力結合装置から位相を一定間隔でシフトさせて最大出力電力容量を得ることができる位相を探す方式は、探索する位相の範囲(0度から360度)があまりにも広くて処理時間及び負荷が増加する要因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国特許出願公開第2003−0021010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、上記した従来技術の問題点を解決するために、本発明の目的は、複数の電力増幅器の間に微細遅延を考慮して出力特性を補正する電力結合装置及び方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の目的は、電力結合による出力信号のモニタリングを通じて複数の電力増幅器での信号が有する位相をシフトさせる電力結合装置及び方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、初期出力の特性補正以後にエージング(aging)により発生する電力結合特性の劣化を補正する電力結合装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような目的を達成するために、本発明の一態様によれば、電力結合装置の出力特性補正方法は、複数の電力増幅器の各々に備えられたデジタルアップコンバータを同期化した後、デジタルアップコンバータが周波数割り当てを考慮して結合した信号の相互間の微細遅延を補正し、微細遅延を補正した信号を増幅した複数の電力増幅器の出力信号を合成して一つの結合信号として出力するステップを有する。
【0013】
望ましくは、結合信号から獲得した結合利得が設定された基準値を満たさない場合に、複数の電力増幅器のうちの一つであるマスタ電力増幅器内で微細遅延を補正した信号を増幅するために遂行される波高率低減(CFR)処理を通じて出力信号の位相を予め定められた分だけシフトさせるステップと、結合信号から結合利得を獲得し、獲得した結合利得が設定された基準値を満たすときに、複数の電力増幅器それぞれの電圧定在波比(VSWR)を確認し、ルックアップテーブルで確認されたVSWRに対応して定義される値を用いて複数の電力増幅器のうちの一つであるマスタ電力増幅器内で微細遅延を補正した信号を増幅するために遂行されるCFR処理を経た出力信号の位相をシフトさせるステップをさらに有する。
【0014】
また、本発明の他の態様によれば、複数の電力増幅器と、複数の電力増幅器の出力信号を合成して一つの結合信号として出力する結合部と、複数の電力増幅器に備えられたデジタルアップコンバータを同期化した後、デジタルアップコンバータが周波数割り当てを考慮して結合した信号の相互間の微細遅延を補正するように複数の電力増幅器を制御する制御部を含む。
【0015】
望ましくは、制御部は、結合信号から獲得した結合利得が設定された基準値を満たさない場合に複数の電力増幅器のうちの一つであるマスタ電力増幅器内で微細遅延を補正した信号を増幅するために遂行されるCFR処理を経た出力信号の位相を予め定められた分だけシフトさせるようにマスタ電力増幅器を制御し、結合信号から獲得した結合利得が設定された基準値を満たすときに、複数の電力増幅器それぞれのVSWRを確認し、ルックアップテーブルで確認されたVSWRに対応して定義される値を用いて複数の電力増幅器のうちの一つであるマスタ電力増幅器内で微細遅延を補正した信号を増幅するために遂行されるCFR処理を経た出力信号の位相をシフトさせるようにマスタ電力増幅器を制御する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、複数の電力増幅器の出力を合成する際に、最上の結合特性を有するだけでなく、エージングにより発生する電力結合特性の劣化を継続的に補正することによって、電力送信による性能を改善することができる。
【0017】
また、本発明の実施形態により得られ、あるいは予測される効果については本発明の実施形態に対する詳細な説明で直接的又は暗示的に開示する。すなわち、本発明の実施形態により予測される多様な効果に対して、後述する詳細な説明で開示する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態による電力結合装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1での電力増幅器の詳細構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態により電力結合装置で出力特性を補正するための制御手順を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態による電力結合装置でエージングにより発生する電力結合特性の劣化を補正するための制御手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の望ましい実施形態を添付の図面を参照して詳細に説明する。
図面において、同一の構成要素に対してはできるだけ同一の参照符号及び参照番号を付して説明する。下記の説明で、本発明に関連した公知の機能又は構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不明にすると判断された場合に、その詳細な説明を省略する。また、後述する用語は、本発明の機能を考慮して定義されたものであって、ユーザー、運用者の意図、又は慣例によって変わることができる。したがって、上記用語は、本明細書の全体内容に基づいて定義されなければならない。
【0020】
後述する本発明の実施形態による詳細な説明では、複数の電力増幅器に各々備えられたデジタルアップコンバータ(Digital Up Converter:DUC)を同期化した後、複数の電力増幅器の間に微細遅延を補正して電力結合装置の出力特性を補正するための方案を開示する。
【0021】
また、電力結合装置により出力される信号の結合利得が設定された基準値(例えば、-2dB)を満たすか否かによって電力増幅器の内部信号の位相を予め定められた分だけシフトさせるか、あるいは電圧定在波比(Voltage Standing Wave Ratio:VSWR)に基づいて作成されたルックアップテーブル(Look-up table)を用いて電力増幅器の内部信号の位相をシフトする。
【0022】
その他に、結合利得及びVSWRによる電力増幅器の内部信号の位相をシフトした後に、複数の電力増幅器の出力信号に対するVSWRが目標レベル(例えば、3dB)に達するまで電力増幅器の内部信号の位相に対する細部調整を実施する。
【0023】
また、電力結合装置は、初期の出力特性補正がなされた後にもエージングによる特定イベントが発生する場合に微細な遅延補正及び位相シフトによる出力特性補正を追加して実施する。一例として、特定イベントは、電力増幅器のVSWRが12dB以下に一定時間(10秒)の間維持される状況を仮定することができる。
【0024】
一方、追加で実施される出力特性補正は、ルックアップテーブルを用いる位相シフトと位相に対する細部調整のうち少なくとも一つのみを遂行することに制限できる。これは、エージングによる出力特性の劣化によって電力増幅器により出力される信号の結合利得が基準値を満足しない程度まで落ちる状況が発生することは、非常に稀であると想到されるためである。
【0025】
図1は、本発明の実施形態による電力結合装置の構成を示す。
【0026】
図1を参照すると、電力結合装置は、制御部110、電力増幅部120、及び結合部(combiner)130を含む。そして、電力増幅部120は、n個の電力増幅器122,124,126から構成される。
【0027】
電力増幅部120を構成するn個の電力増幅器122,124,126は、共通クロックを用いて同一の入力信号を増幅して出力する。しかしながら、共通クロックを用いて同一の信号を増幅するとしても、n個の電力増幅器122,124,126の内部信号間には微細遅延が発生する。すなわち、n個の電力増幅器122,124,126では、共通クロックを使用しても入力された信号間には微細な遅延が発生する。微細遅延は、n個の電力増幅器122,124,126から出力される信号間の位相誤差を発生させ、電力結合装置で最大出力の電力容量を獲得しない理由となり得る。
【0028】
微細遅延が発生する原因のうちの一つは、n個の電力増幅器122,124,126の各々に備えられた構成、特にDUC間の同期が取れないためである。そこで、n個の電力増幅器122,124,126は、初期出力特性を補正する際に内部に備えられるDUCに対する同期化を遂行する。例えば、同期化は、n個の電力増幅器122,124,126に備えられるDUCの数値制御発振器(Numerically Controlled Oscillator:NCO)ブロックを同時にリセットすることにより遂行できる。
【0029】
n個の電力増幅器122,124,126は、DUCに対する同期化を遂行した後、入力信号に対する微細遅延を補正する。例えば、n個の電力増幅器122,124,126の各々にバッファを備え、バッファの出力時点を調整することによって微細遅延を補正できる。
【0030】
また、n個の電力増幅器122,124,126は、自身の出力信号と、電力結合装置の出力信号をフィードバックし、このフィードバックされる出力信号に基づいて内部信号に対する位相シフトを遂行する。このとき、好ましくは、n個の電力増幅器122,124,126の全部で位相シフトを遂行するよりは最小限の電力増幅器のみが位相シフトを遂行するようにする。以下、位相シフトを遂行する電力増幅器に対して‘マスタ電力増幅器’という用語を使用する。
【0031】
例えば、電力増幅部が2個の電力増幅器で構成されると仮定すれば、2個の電力増幅器のうちいずれか一つのみが内部信号に対する位相シフトを遂行する。しかしながら、電力増幅部を構成する電力増幅器がすべて内部信号に対する位相シフトを遂行しても、出力特性を補正するという同一の目的を達成できる。
【0032】
マスタ電力増幅器の内部信号に対する位相シフトは、多段階に分けられて遂行される。例えば、多段階による位相シフトは、電力結合装置から出力される信号の結合利得に基づく1次位相シフトと、電力増幅器それぞれのVSWRに基づいた2次位相シフトと、細部調整による3次位相シフトとから構成される。
【0033】
1次位相シフトは、マスタ電力増幅器が電力結合装置から出力される信号の結合利得を考慮して所定の位相分(例えば、180度)だけをシフトさせるものである。一例として、1次位相シフトは、マスタ電力増幅器が電力結合装置から出力される信号の結合利得が-2dB以下である場合に内部信号の位相を180度シフトさせる。
【0034】
2次位相シフトは、マスタ電力増幅器がn個の電力増幅器122,124,126それぞれのVSWRに対応してルックアップテーブルで定義している値だけの位相をシフトさせるものである。2次位相シフトは、マスタ電力増幅器でのみ遂行することでなく、すべての電力増幅器で同時に遂行してもよい。
【0035】
3次位相シフトは、1次又は2次位相シフト以後にn個の電力増幅器122,124,126それぞれの出力信号に対するVSWRが目標レベル(例えば、15dB)に到達又はそれ以上になるまで、内部信号の位相を微細な間隔で調整する。3次位相シフトまで遂行される場合、電力結合装置の出力信号は、出力特性で3dBの目標結合利得を有するようになる。3次位相シフトは、遂行する回数を予め定め、この定められた回数内で遂行可能にする。
【0036】
一方、マスタ電力増幅器は、上述したような初期出力特性の補正が行われた以後にエージングによって出力特性が変化する場合に、これを補正するための動作を遂行する。すなわち、マスタ電力増幅器は、設定されたイベントが発生するときに上述した微細遅延に対する補正と2次及び3次位相シフトのうち少なくとも一つを遂行する。このとき、上記イベントは、n個の電力増幅器122,124,126のVSWRのうちいずれか一つでもしきい値レベル(例えば、12dB)以下に減少した状態が所定時間(例えば、10秒)の間維持される場合に発生する。
【0037】
制御部110は、上述した電力増幅部120で出力特性を補正するための全般的な制御を遂行する。すなわち、出力特性を補正するために電力増幅部120を構成するn個の電力増幅器122,124,126により遂行されるDUCの同期化だけでなく、マスタ電力増幅器により遂行される微細遅延に対する補正及び位相シフトを制御する。
【0038】
より具体的に、制御部110は、n個の電力増幅器122,124,126に備えられたDUCを同期化させた後、DUCが周波数割り当てを考慮して結合した信号相互間の微細遅延を補正するようにn個の電力増幅器122,124,126を制御する。
【0039】
また、制御部110は、1次、2次、及び3次の位相シフトのためにマスタ電力増幅器を制御する。
【0040】
これに関して、より具体的に説明すると、1次位相シフトのために制御部110は、電力結合装置からの出力信号から獲得した結合利得が設定された基準値を満たすか否かを判定する。制御部110は、獲得した結合利得が設定された基準値を満たさない場合、マスタ電力増幅器の内部信号の位相を所定の位相分だけシフトさせるようにマスタ電力増幅器を制御する。
【0041】
2次位相シフトのために制御部110は、n個の電力増幅器122,124,126から出力される信号のVSWRに対応してルックアップテーブルで定義している位相値を用いてマスタ電力増幅器の内部信号の位相をシフトさせるようにマスタ電力増幅器を制御する。
【0042】
3次位相シフトのために制御部110は、n個の電力増幅器122,124,126それぞれの出力信号に対するVSWRが目標レベルに達するまで内部信号に対する位相を細部調整するようにn個の電力増幅器122,124,126を各々制御する。
【0043】
したがって、制御部110は、電力結合装置の出力信号から結合利得を獲得し、あるいはn個の電力増幅器122,124,126の各々から出力される信号に対するVSWRを確認しなければならない。そして、2次位相シフトを制御するために、制御部110は、VSWR別にシフトする位相値を定義するルックアップテーブルに対するアクセス権限を有しなければならない。このロックアップテーブルは、制御部110内に備えられ、あるいは制御部110によりアクセス可能な外部の記録媒体(図示せず)に記録されてもよい。
【0044】
結合部130は、電力増幅部120を構成するn個の電力増幅器122,124,126の各々から出力される信号を結合して一つの信号として出力する。
【0045】
図2は、
図1の電力増幅器の詳細構成を示す。
図2に示す構成は、
図1でのn個の電力増幅器に共通に適用され得る。しかしながら、下記では、
図2の構成をマスタ電力増幅器と見なして説明する。
【0046】
図2を参照すると、電力増幅器は、入力信号、共通クロック、制御信号、及びフィードバック信号を入力とする。ここで、制御信号は、
図1に示した制御部110から提供される信号であり、フィードバック信号は電力結合装置から出力される信号である。
【0047】
電力増幅器は、DUC210、バッファ212、CFR(Crest Factor Reduction)214、移相器(phase shifter)216、DPD(Digital Pre-distortion)218、DAC(Digital-Analog Convertor)220、第1のミキサー222、アンプ(amplifier:AMP)224、第2のミキサー228、ローカル発振器(LO)、及びADC(Analog-Digital Convertor)230を含む。
【0048】
DUC210は、基底帯域の入力信号を中間周波数帯域に変換する。DUC210は、内部に複数の数値制御発振器(Numerically Controlled Oscillator:NCO)を備える。各NCOは、周波数割り当て(Frequency Assignment:FA)を考慮して入力信号を結合して出力する。
【0049】
DUC210は、初期出力特性の補正の際に制御信号によって他の電力増幅器に備えられたDUCと同期化を遂行する。例えば、DUC210内のNCOブロックは、制御信号によりリセットがなされることによって、他の電力増幅器のDUCとの同期化を遂行することができる。
【0050】
バッファ212は、DUC210から出力される信号を格納し、制御信号により格納された信号を出力する。すなわち、バッファ212は、他の電力増幅器のDUCから出力される信号と自身のDUC210から出力される信号との間に存在する微細遅延を制御信号によるバッファリング時間により補正する。すなわち、バッファ212は、制御信号によって他の電力増幅器のDUCから出力されて格納された信号と自身のDUC210から出力されて格納された信号が同時に出力されてCFRに印加できるようにする。
【0051】
CFR214は、電力増幅器の入力信号が有する最大波形振幅を知能的に制限することによって、出力パワーの最大値を導出する。移相器216は、制御信号によってCFR214から出力される信号に対する1次乃至3次位相シフトを遂行する。1次乃至3次位相シフトは、上記したようである。
【0052】
DPD218は、電力増幅器が線形特性を持つように、電力増幅器の伝送特性を考慮して移相器216によって位相がシフトした信号に歪みを適用する。これは、電力増幅器が有する特性の結果で信号の歪みが無力化できる。
【0053】
DAC220は、DPD218から出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換して出力する。DAC220により出力されるアナログ信号は、第1のミキサー222でLOから供給される周波数と混合して出力される。第1のミキサー222から出力される信号は、アンプ224により増幅されて出力される。
【0054】
アンプ224から出力される信号は、
図1に示す結合部130に提供される。また、アップ224から出力される信号は、スイッチ226に提供される。スイッチ226は、アンプ224から出力される信号と電力結合装置の出力信号のうちいずれか一つを制御信号によって選択的に出力する。
【0055】
スイッチ226により出力される信号は、第2のミキサー228に入力されてLOから供給される周波数と混合されてADC230に出力される。ADC230は、第2のミキサー228から提供されるアナログ信号をデジタル信号に変換してDPD218に提供する。
【0056】
図3は、本発明の実施形態により電力結合装置で出力特性を補正するための制御手順を示すフローチャートである。
【0057】
図3を参照すると、電力結合装置は、内部に存在する複数の電力増幅器のDUCに対する同期化を遂行する(ステップS310)。同期化は、DUCによって入力信号で微細遅延が発生することを防ぐためである。
【0058】
電力結合装置は、同期化された複数の電力増幅器内に備えられるDUC間の出力信号間の微細遅延を補正する(ステップS312)。例えば、微細遅延に対する補正は、複数の電力増幅器でDUCの出力端に備えられるバッファを用いて信号の出力時点を一致させる動作に該当する。
【0059】
電力結合装置は、出力される信号、すなわちフィードバック信号の強さを測定する(ステップS314)。すると、電力結合装置は、測定したフィードバック信号の強さとCFRから出力される信号の強さを比較して結合利得を計算する(ステップS316)。例えば、フィードバック信号の強さをCFRから出力される信号の強さで割ることで、結合利得を計算できる。
【0060】
電力結合装置は、計算された結合利得を考慮してマスタ電力増幅器のCFRから出力される信号に対する1次位相回転を遂行する(ステップS318)。1次位相回転は、フィードバック信号の結合利得が設定された基準値を満たさない場合に予め定められた分だけ位相(例えば、180度)をシフトさせる。一例として、マスタ電力増幅器が電力結合装置から出力される信号の結合利得が設定された基準値-2dB以下である場合、内部信号の位相は180度シフトさせる。
【0061】
しかしながら、フィードバック信号の結合利得が設定された基準値を満たす場合には、結合利得を考慮して位相回転を遂行する1次位相シフトを遂行せずに省略する。
【0062】
電力結合装置は、フィードバック信号の結合利得が設定された基準値を満たし、あるいは1次位相シフトが遂行された後、ルックアップテーブルによる位相調整(2次位相調整)を遂行する(ステップS320)。2次位相シフトは、マスタ電力増幅器がルックアップテーブルで複数の電力増幅器各々から出力される信号のVSWRに対応して定義された値を確認する。このとき、確認される値は、複数の電力増幅器間の位相差に対応する値である。そして、確認した値によってマスタ電力増幅器の位相をシフトさせる。2次位相シフトは、マスタ電力増幅器だけでなく、すべての電力増幅器で同時に遂行することもできる。
【0063】
電力結合装置は、複数の電力増幅器のVSWRが目標レベル(例えば、15dB)以上になるまでマスタ電力増幅器の内部信号に対する位相を微細な間隔で調整する(ステップS322)。3次位相シフトによって複数の電力増幅器のVSWRは、目標レベル(例えば、15dB)以上となるので、電力結合装置による出力信号の出力特性は、3dBの目標結合利得を持つようになる。
【0064】
電力結合装置は、3次位相シフトに対する最大遂行回数、すなわち基準値(例えば、15回)を設定し、最大遂行回数内で所望する目標結合利得を得るようにする(ステップS324)。最大遂行回数に達する前にすべての電力増幅器のVSWRが15dBを超える場合、3次位相シフトをこれ以上遂行しない。
【0065】
図4は、本発明の実施形態による電力結合装置でエージングにより発生する電力結合特性の劣化を補正するための制御手順を示すフローチャートである。すなわち、
図4では、
図3によって安定した電力結合特性による初期化がなされた後に時間の場合、すなわちエージングにより安定した電力結合特性の破れを補償するための動作を遂行する。
【0066】
図4を参照すると、電力結合装置は、所定周期又は任意の時点で複数の電力増幅器から出力される信号によるVSWRをモニタリングする(ステップS410)。電力結合装置は、VSWRのモニタリングを通じて設定されたイベントが発生するか否かを判定する(ステップS420)。例えば、イベントは、上記モニタリングによって複数の電力増幅器のVSWRの中から少なくとも一つのVSWRがしきい値レベル(12dB)以下に減少した状態が一定時間(10秒)の間維持されるケースに該当する。このようなイベントが発生する場合、電力結合装置は、電力結合誤りを知らせるための自体アラームを発生する。
【0067】
電力結合装置は、電力結合誤りによる自体アラームが発生すると、電力結合サブルーチンを遂行する(ステップS430)。電力結合サブルーチンは、マスタ電力増幅器の制御を通じる微細遅延を調整し、位相シフトを1回遂行して更に完璧な電力結合特性を有することが可能にする。例えば、電力結合サブルーチンでの位相シフトは、ルックアップテーブルを用いる位相シフト、すなわち2次位相シフトと細部位相同調、すなわち3次位相シフトのうち少なくとも一つにより遂行される。
【0068】
上述した本発明の実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせの形態で実現可能であることがわかる。このような任意のソフトウェアは、例えば削除可能又は再記録可能の可否に関係なく、ROMなどの格納装置のような揮発性又は非揮発性格納装置、又は例えばRAM、メモリチップ、装置又は集積回路のようなメモリ、又は例えばCD、DVD、磁気ディスク、又は磁気テープのような光学又は磁気的に記録可能であると同時に機械(例えば、コンピュータ)で読み取り可能な格納媒体に格納することができる。
【0069】
本発明のコンテンツ提供装置及び方法は、制御部及びメモリを含むコンピュータ又は携帯端末により実現することができ、メモリは、本発明の実施形態を実現する指示を含むプログラム又はプログラムを格納するのに適合した機械で読み取り可能な格納媒体の一例であることがわかる。したがって、本発明は、本明細書の任意の請求項に記載された装置又は方法を実現するためのコードを含むプログラム及びこのようなプログラムを格納する機械(コンピュータなど)で読み取ることができる格納媒体を含む。また、このようなプログラムは、有線又は無線接続を通じて伝達される通信信号のような任意の媒体を通じて電子的に伝送でき、本発明はこれと均等なことを適切に含む。
【0070】
また、コンテンツ提供装置及び方法は、有線又は無線で接続されるプログラム提供装置からプログラムを受信して格納することができる。プログラム提供装置は、グラフィック処理装置が予め設定されたコンテンツ保護方法を遂行させるような指示を含むプログラム、コンテンツ保護方法に必要な情報などを格納するためのメモリと、グラフィック処理装置との有線又は無線通信を遂行するための通信部と、グラフィック処理装置の要求又は自動で該当プログラムを送受信装置に伝送する制御部を含むことができる。
【符号の説明】
【0071】
110 制御部
120 電力増幅部
130 結合部
122,124,126 電力増幅器