(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施した一態様の測距装置10は、
図1に示すように、対物レンズ11、受光レンズ12、パワー・測距操作部13、モード選択操作部14、録画操作部15、再生操作部16、外部表示部17、及び接眼窓18を備える。対物レンズ11は、赤外光のレーザー光を投光する投光光学系の一部と、被測定物を含む被写体を観察する観察光学系の一部とを構成している。
【0012】
受光レンズ12は、被測定物を反射するレーザー反射光を受光する受光光学系の一部を構成する。パワー・測距操作部13は、最初の操作により該装置10の電源をオンにするオン信号を送出し、そして、電源がオンした後の操作に応答して測距を開始させるための測距開始信号を送出する。なお、測距装置10は、長時間の無操作に応答して自動的に電源をオフする。
【0013】
モード選択操作部14は、光学ファインダモードとビューファインダモードとのいずれか一方のモードを選択するための操作部である。光学ファインダモードは、対物レンズ11により結像する被写体の像(実像)を接眼窓18から観察するモード、つまり光学ファインダ(OVF)を利用して観察するモードである。ビューファインダモードは、内蔵の撮像センサにより撮像した被写体画像(スルー画像)を、接眼窓18の奥に配した透過型の内部表示部、又は該装置10の外に設けた外部表示部17を通して観察するモード、つまり電子ビューファインダ(EVF)を利用して観察するモードである。
【0014】
録画操作部15は、ビューファインダモード(以下「EVFモード」と称す)の時に、撮像画像を記録媒体に記録する時に使用する操作部であり、繰り返し操作を行うことに応答して録画開始信号と録画停止信号とを交互に送出する。
【0015】
接眼窓18は、観察光学系を構成する接眼レンズを内部に備え、光学ファインダモード(以下「OVFモード」と称す)の時に、接眼レンズにより拡大された被写体像の虚像を、また、EVFモードの時には内部表示部に表示される撮像画像の虚像をそれぞれ観察するための窓である。
【0016】
外部表示部17の画面19には、内部表示部と同じ画像、つまり、撮像画像や照準(レチクル)画像等が表示される。外部表示部17は、垂直軸20を有するヒンジ部21を介して、本体22に設けた収納部23に収納される閉じ位置と、画面19を外部に露呈する開き位置との間で垂直軸20を中心に回転自在になっている。また、ヒンジ部21は、水平軸24を有し、画面19を接眼窓18側から視認させる向きと被写体側から視認させる向きとの間で前記水平軸24を中心に外部表示部17を回転させる。
【0017】
このため、外部表示部17は、対物レンズ11を設けた面を該装置10の正面とすると、右側面の方向に画面19を露呈する姿勢で収納部23に収納した姿勢にすることができる。勿論、このような姿勢で観察や測距をすることができる。この場合には、画面19の上下の向きが変わる。このため、該装置10は、画面19に表示される画像の上下の向きを自動的に反転する補正制御を行う。なお、外部表示部17を開き位置に開くことに応答して、自動的にEVFモードが選択されるように構成してもよい。再生操作部16は、録画した画像を内部表示部、又は外部表示部17に表示する。
【0018】
測距装置10の内部には、
図2に示すように、発光部材30、投光光学系31、受光光学系32、受光センサ33、観察光学系34、撮像センサ35、挿脱機構36、及び内部表示部37を備えている。
【0019】
投光光学系31は、対物レンズ11、及び部分透過ミラー(部分透過部材)38で構成されている。発光部材30は、不可視光である赤外光を発光するレーザー発光素子(LD)となっており、対物レンズ11の結像位置と共役な位置の近傍に配されている。部分透過ミラー38は、発光部材30から照射されるレーザー光を、ミラー39を介して対物レンズ11の光軸方向に向けて折り曲げる光路変更部材を構成する。なお、部分透過ミラー38は、詳しくは後述するダハプリズムの内部に形成されている。また、発光部材30、部分透過ミラー38、及びミラー39が本発明の発光部を構成する。なお、ミラー39を省略して、発光部材30から出射されるレーザー光を部分透過ミラー38に直接に入射させる構成としてもよい。対物レンズ11は、例えばコリメートレンズになっており、光路変更されたレーザー光を被測定物に向けて投光する。
【0020】
受光センサ33は、アバランシェ増倍と呼ばれる現象を利用して受光感度を上昇させるアバランシェ・ホトダイオード(avalanche photodiode(APD))になっており、受光した光を電気信号に変換する。受光光学系32を構成する受光レンズ12は、集光レンズになっており、被測定物から反射されたレーザー反射光の一部をアバランシェ・ホトダイオードの受光面に集光させる。受光レンズ12と受光センサ33とが本発明の受光部を構成する。
【0021】
観察光学系34は、部分透過ミラー38、ダハプリズム40、撮像センサ35、内部表示部37、及び接眼レンズ41で構成されている。部分透過ミラー38は、被写体を反射した光を接眼レンズ41に向けて透過する。ダハプリズム40は、被写体光を90度曲げ、対物レンズ11により結像される被写体像の上下左右を反転(正立)させて、ダハプリズム40と内部表示部37との間に設定されている結像面に結像させる。結像面に結像される被写体像は、接眼レンズ41により拡大された虚像として観察される。なお、ダハプリズムの代わりに、例えばポロプリズム等の正立プリズムを使用してもよい。
【0022】
接眼レンズ41は、視度調節やピント調節のために、接眼窓18を回転させることに連動して周知のカム機構により光軸方向に移動される。ここで接眼レンズ41の光軸は、対物レンズ11の光軸と一致している。撮像センサ35は、例えばCCDやCMOS等の撮像素子とその駆動回路等を一体的に備えたものであり、撮像面には、可視光帯域に加えて赤外光帯域を通過させる帯域通過フィルタ42が取り付けられている。
【0023】
挿脱機構36は、例えばラック・アンド・ピニオン機構となっており、挿脱用モータ45からの駆動を、ピニオンギヤ46を介してラック47に伝達して、支持板48を固定部49に対して対物レンズ11の光軸に対して直交する方向に移動させる。支持板48は、ラック47を備え、かつ撮像センサ35を支持している。固定部49には、モータ45、ピニオンギヤ46が設けられている。撮像センサ35は、支持板48の移動に伴って、撮像面が対物レンズ11の光軸上から退避する退避位置と、詳しくは
図3に示すように、撮像面が対物レンズ11の結像位置にセットされる挿入位置との間で移動する。なお、挿脱機構36としては、ラック・アンド・ピニオン機構に限らず、周知の機構であればいずれも使用することができる。
【0024】
なお、帯域通過フィルタ42は、撮像センサ35と一緒に移動する。また、帯域通過フィルタ42を、撮像センサ35から分離して設けてもよい。この場合には、ダハプリズム40と挿入位置との間に帯域通過フィルタ42を固定して配置するのが望ましい。撮像センサ35の裏面(接眼レンズ側の面)には、遮光部50が設けられている。遮光部50は、撮像センサ35が挿入位置の時に、対物レンズ11から内部表示部37に向けて入射する光を遮光する。
【0025】
内部表示部37は、撮像センサ35の挿入位置と接眼レンズ41との間の光軸上に固定して配されており、接眼レンズ41側に向けて画像を表示する透過型の画面を備える。画面には、撮像センサ35が退避位置の時に、予め用意した照準(レチクル)画像が表示され、照準画像は、接眼レンズ41を通して被写体像と一緒に観察される。また、撮像センサ35が挿入位置の時には、内部表示部37の画面には、撮像センサ35により撮像した被写体画像と照準画像とが重畳して表示される。この内部表示部37の対物レンズ11側の面には、赤外光が測定者の目に入らないように、赤外光カットフィルタ51が設けられている。なお、赤外光カットフィルタ51は、内部表示部37の接眼レンズ41側の面に設けてもよいし、接眼レンズ41の前、又は後に設けてもよい。
【0026】
なお、OVFモードの時に、内部表示部37の画面を対物レンズ11の結像位置に移動させるシフト機構を設けてもよい。また、対物レンズ11の結像面に内部表示部37の像を形成する表示像結像光学系を前記挿入位置と内部表示部37との間に設けて、内部表示部37の像を対物レンズ11の結像面、又はそれと共役な位置に形成するようにしてもよい。これによれば、撮像センサ35が退避位置に移動すると内部表示部37の画面の画像が結像位置に表示されるため、OVFモードの時に被写体像に対して照準画像が見易くなる。
【0027】
測距装置10は、
図4に示すように、各部を統括的に制御する制御部55を備えている。制御部55は、レーザー発光制御部56、駆動制御部57、内部表示制御部58、外部表示制御部59、文字発生回路60、画像合成部61、外部表示部姿勢検出部62、距離算出部63、及び傾斜角算出部64を有している。また、制御部55には、前述した操作部以外に、傾斜センサ65、内部メモリ66、パルス発生回路67、画像処理部68、ドライバ70、増幅・A/D回路71が各々接続されている。画像処理部68は、撮像センサ35で撮像した画像信号に対して、A/D変換、デモザイク、ノイズ除去、階調補正、色補正等の処理を施すことでRGBのフレーム画像のデータをそれぞれ生成する。これらのRGBの画像データは、制御部55に取り込まれた後に、内部メモリ66の記憶領域に予め割り当てた保存領域に記録される。
【0028】
なお、内部メモリ66とは別に、外部から着脱自在なカードメモリを設け、カードメモリに画像データを記録してもよい。また、圧縮伸長部を設け、画像記録メモリから読み出したRGBの画像データを圧縮伸長部で圧縮し、圧縮した画像データを内部メモリ66の保存領域に記録するようにしてもよい。
【0029】
レーザー発光制御部56は、パルス発生回路67を制御して発光部材30からパルス状のレーザー光を所定回数だけ対物レンズ11を介して被測定物へ向けて出射する。なお、レーザー発光制御部56は、パワー・測距操作部13を操作している間のみレーザー発光制御部56を作動して測距を行い、パワー・測距操作部13の操作を止めるとレーザー発光制御部56の作動を停止させて測距を終了させる。
【0030】
駆動制御部57は、モード選択操作部14による操作によりOVFファインダモードが選択されることに応答して撮像センサ35が退避位置に退避するように、また、EVFモードが選択されることに応答して撮像センサ35が挿入位置にセットされるように、ドライバ70を介して挿脱用モータ45をそれぞれ制御する。
【0031】
内部表示制御部58は、モード選択操作部14による操作によりOVFモードが選択されることに応答して照準画像を表示するように、またEVFモードが選択されることに応答して、照準画像と撮像画像とを重畳した合成画像を表示するように内部表示部37の表示を制御する。照準画像は、内部メモリ66に予め割り当てた作業領域に格納されている。内部表示制御部58は、ビデオメモリ(VRAM)を有しており、照準画像や合成画像をVRAMに展開し、展開された画像信号をビデオ信号としてVRAMから読み出して内部表示部37に表示する。
【0032】
外部表示制御部59は、モード選択操作部14からの操作によりOVFモードが選択される時には無表示とし、またEVFモードが選択されることに応答して照準画像と撮像画像とを重畳した合成画像を表示するように外部表示部17の表示を制御する。外部表示制御部59は、ビデオメモリ(VRAM)を有しており、合成画像をVRAMに展開し、展開された画像信号をビデオ信号としてVRAMから読み出して外部表示部17に表示する。
【0033】
外部表示部姿勢検出部62は、外部表示部17が開き位置に開かれることを検出し、その旨を示す開き信号を制御部55に送る。制御部55は、開き信号を受けることに応答して外部表示制御部59を作動させて外部表示部17に画像を表示する。また、外部表示部姿勢検出部62は、外部表示部17が画面19を上下反転した姿勢に回転されることを検出すると、外部表示部17の画像を上下反転させる反転指示信号を外部表示制御部59に送る。外部表示制御部59は、反転指示信号を受け取ることに応答して画像を上下反転して表示するよう外部表示部17の表示を制御する。
【0034】
傾斜角算出部64は、傾斜センサ65から得られる信号に基づいて、レーザー光が出射された位置(起点)から被測定物まで延びる直線と水平線(起点を通る予め決められた水平な仮想線)とのなす傾斜角度を算出する。この傾斜角度データは、内部メモリ66の作業領域に予め割り当てられている作業領域に格納される。
【0035】
増幅・A/D回路71は、受光センサ33から出力される電気信号を増幅して、デジタルデータに変換して距離算出部63に出力する。距離算出部63は、デジタルデータを受け取ることで、被測定物から反射されてくる反射光を受光するまでの経過時間を求め、求めた経過時間に基づいて被測定物までの直線距離を求める。求めた直線距離データは内部メモリ66の作業領域に格納される。
【0036】
制御部55は、傾斜角算出部64で算出した傾斜角度データと距離算出部63で算出した直線距離データとを内部メモリ66から読み出して、これらデータに基づいて被測定物の高さ(水平線から被測定物までの垂直方向の距離)と水平距離(水平線上の起点から被測定物から垂線を下ろしたときの水平線との交点までの距離)を演算する。これら演算結果である直線距離、傾斜角度、水平距離は、内部表示部37や外部表示部17に表示される。
【0037】
文字発生回路60は、表示画像に合成するための文字画像を生成する。画像合成部61は、OVFモードの時には、照準画像、及び直線距離、傾斜角度、水平距離の値を各々示す画像を合成した合成画像を、また、EVFモードの時には、撮像画像、照準画像、及び直線距離、傾斜角度、水平距離の値を各々示す画像を合成した合成画像を生成する。
【0038】
帯域通過フィルタ42は、
図5に示すように、可視光帯域と赤外光帯域とを通過波長帯域とするB・G・Riフィルタ75,76,77で構成したものとなっている。つまり、Bフィルタ75は、可視青色光(B)帯域を、Gフィルタ76は可視緑色光(G)帯域を、そして、Riフィルタは、可視赤色光(R)に加えて赤外光帯域(Ir)との帯域をそれぞれ個別に通過させる。この例では、Riフィルタ77が、可視赤色光(R)帯域からレーザー光の波長78を含む赤外光帯域までの連続した帯域(780nm〜1100nm)を通過させる。なお、Riフィルタ77は、所定の波長、例えば850nmを超えて波長が長くなるほど分光透過率が低下する特性を有する。
【0039】
この場合、例えば、各画素の配列に対応した第1行第1列にGフィルタ76が配列され、第2行第1列にRiフィルタ77が配列され、第1行第2列にBフィルタ75が配列され、第2行第2列にGフィルタ76が配列されている。これらのフィルタ75〜77にそれぞれ対応する撮像素子の画素は、それぞれRi画素、G画素、及びB画素となる。つまり、撮像素子は、被測定物を含む被写体からの光を複数の異なる帯域通過フィルタ75〜77を介して受光することによりRi,G,Bとの3種類の波長帯域に応じた画素信号をそれぞれ出力する。これにより、EVFモードの時には、内部表示部37、及び外部表示部17に、可視光の被写体画像と赤外光であるレーザー光のポイント画像とが表示される。なお、各フィルタ75〜77の他の配列としては、Riフィルタ、Gフィルタ、及びBフィルタを千鳥状に配列してもよい。
【0040】
次に上記構成の作用を説明する。まず、測定者は、パワー・測距操作部13を操作して電源をオンした後に、モード選択操作部14を操作して観察するファインダをOVFとEVFとの何れか一方に選択する。これにより、測定物を含む被写体をできるだけクリアに見たい時にはOVFモードを、前記被写体の画像を記録したい時、又は外部表示部17を使用して測距する時にはEVFモードを、好みに応じて使い分けることができる。
【0041】
例えばOVFモードを選択すると、制御部55は、選択操作に応答してドライバ70を介して挿脱用モータ45を駆動して撮像センサ35を退避位置に移動させる。また、内部表示制御部58は、OVFモードを選択時に、照準画像を内部表示部37に表示するよう制御している。これにより、帯域通過フィルタ42は、
図2で説明したように、撮像センサ35と一緒に対物レンズ11の光軸上から退避する。
【0042】
被写体光は、対物レンズ11に入射し、被写体像は、対物レンズ11、及びダハプリズム40の作用により正立像として結像面に結像する。観察者は、接眼レンズ41により被写体像を拡大した虚像を、透過型の内部表示部37、及び赤外光カットフィルタ51を通して観察する。これにより、接眼窓18から覗くと、被測定物を含む被写体の像と照準画像とが重なって観察される。
【0043】
測定者は、接眼窓18から観察される被測定物に照準を合わせながらパワー・測距操作部13を操作する。この操作に応答してレーザー発光制御部56からパルス発生回路67に信号が伝達され、パルス発生回路67により所定の周期のパルスが生成される。生成されたパルスは、発光部材30に送られる。発光部材30は、パルスに同期してレーザー光を被測定物に向けて発光する。このとき、被測定物で反射したレーザー光の一部が対物レンズ11から入射するが、内部表示部37に設けた赤外カットフィルタ51によりカットされるため、眼に入射することはない。
【0044】
一方、被測定物で反射したレーザー光は、受光レンズ12により集光されて受光センサ33に受光される。受光センサ33は、被測定物で反射したレーザー反射光を受光して、受光量に応じた電気信号を増幅・A/D回路71に送出する。増幅・A/D回路71は、電気信号を増幅してデジタル信号に変換した後に、距離算出部63に送出する。距離算出部63は、レーザー光の戻ってくる時間に基づいて被測定物までの直線距離を算出する。この直線距離のデータは、内部メモリ66の作業領域に格納される。
【0045】
また、傾斜角算出部64は、測距開始の操作に応答して傾斜センサ65から信号を取得して取得した信号に基づいて傾斜角度を算出し、その傾斜角度のデータを内部メモリ66の作業領域に格納する。制御部55は、内部メモリ66から読み出した直線距離データと傾斜角度データとに基づいて水平距離を算出し、算出した水平距離データを作業領域に格納する。
【0046】
制御部55は、内部メモリ66に記憶しておいた直線距離データ、傾斜角度データ、及び水平距離データを読み出し、読み出したデータに基づいて文字発生回路60により文字画像を生成する。画像合成部61は、照準画像と、直線距離、傾斜角度、水平距離の値を各々示す画像とを合成した合成画像を生成する。そして、制御部55は、合成画像を内部表示制御部58に送る。内部表示制御部58は、直線距離、傾斜角度、及び水平距離の値を示す画像を内部表示部37に表示する。
【0047】
接眼窓18には、OVFモード時に、
図6に示すように、十字の照準画像81、その時点で計測された直線距離を示す[200YD]の画像82、傾斜角度を示す[ANG:+20°]の画像83、及び水平距離を示す[RECM:210YD]の画像84が、例えばゴルフ場のパッティンググリーン(以下「グリーン」)85、グリーンに立つ旗竿86、及び木87等で示す被写体像に重ねて観察される。なお、内部表示部37の画面37aの下には、電池残量を示す電池のマーク88が表示される。
【0048】
EVFモードを選択すると、制御部55は、ドライバ70を介して挿脱用モータ45を駆動して撮像センサ35を挿入位置に移動させる。これにより、
図3で説明したように、撮像センサ35と一緒に帯域通過フィルタ42が対物レンズ11の光軸上にセットされる。帯域通過フィルタ42がセットされると、可視光である被写体光に加えて、赤外光であるレーザー反射光が撮像センサ35に入射する。また、撮像センサ35の背後の遮光部50により内部表示部37の対物レンズ11側の光路が遮光される。つまり、透過型の内部表示部37の背後が真っ暗になり、接眼窓18から内部表示部37の画面37aに表示される画像のみが視認されることになる。
【0049】
画像合成部61は、撮像画像、照準画像、及び直線距離、傾斜角度、水平距離の値を各々示す画像を合成した合成画像を生成する。
【0050】
EVFモードの時には、
図6で説明したグリーン85、旗竿86、及び木87等の被写体画像、照準画像、その時点で測距した直線距離、傾斜角度、水平距離を各々示す値の画像82,83,84、及びレーザー光のポイントの画像89が表示される。なお、ここでは、OVFモードとEVFモードとの観察画像を
図6に兼用して図示しているが、
図6に示すポイント画像89は、OVFモードの時には観察されることはない。
【0051】
また、EVFモードの時に外部表示部17を開くと、外部表示部姿勢検出部62の開き位置を検出して、開き信号を制御部55に送る。制御部55は、開き信号を受け取ることに応答して外部表示制御部59を動作させる。これにより、外部表示部17の画面19には、
図7に示すように、内部表示部37と同じ画像が表示される。つまり、グリーン85、旗竿86、及び木87の被写体画像、照準画像81、その時点で測距した直線距離、傾斜角度、水平距離を各々示す値の画像82,83,84、及びポイント画像89が表示される。
【0052】
外部表示部17を画面19が上下反転する姿勢に回転すると、外部表示部姿勢検出部62がそれを検出して、外部表示制御部59に上下反転信号を送る。これにより、外部表示制御部59は、外部表示部17に表示する画像を上下反転して外部表示部17に表示する。
これにより、測距装置10を三脚等に固定して外部表示部17を画面19が右側面に向く姿勢に回転させることで、接眼窓18を観察せずに右側面から画面19を観察しながら測距を行うことができる。
【0053】
また、EVFモードの時には、録画操作部15を操作することで、内部表示部37、及び外部表示部17に表示される画像(合成画像)を内部メモリ66に記録することができる。記録した画像は、再生操作部16を操作することで内部メモリ66から読み出されて、内部表示部37、外部表示部17が開き位置にある時には内部表示部37とともに外部表示部17に表示される。
【0054】
[ポイント画像と照準画像との位置調整の例]
EVFモードでは、前述したように、外部・内部画面17,37に、レーザー光のポイント画像89と照準画像81との両方が表示される。このため、ポイント画像89と照準画像81とがずれていた場合、製造時に、例えば照準画像81の表示位置をずらす補正を表示制御部58,59が行うことで、照準画像81と前記ポイント画像89とを簡便に一致させることができる。ずらし(補正)量は、製造時のみ接続される、例えば十字キーや決定キー等を有する入力部を使って入力される。決定された補正量は、制御部55が内部メモリ66に記憶しておく。これにより、表示制御部58,59は、常に補正された位置に照準画像81を表示することができる。なお、照準画像81を固定しておき、逆にポイント画像89を照準画像81に一致させるように調整してもよい。この場合には、発光部材30、又はミラー39、あるいは両方30,39の位置を調整することで行える。どちらの場合もEVFモードを選択して外部・内部表示部17,37の画面を観察することで、ポイント画像89を視認することができるので、調整作業を簡便に行える。
【0055】
また、製造時以外でも調整が行えるように構成してもよい。この場合、測定者がポイント画像89と照準画像81との位置調整を行えるように構成する。例えば十字キーや決定キー等の方向指定操作部と、EVFモードの時の表示部17,37を観察しながら操作される方向指定操作部の操作に応答してポイント画像の位置、又は照準画像の表示位置を補正する補正部と、補正した値を記憶する記憶部とを設ければよい。
【0056】
[帯域通過フィルタの他の例]
帯域透過フィルタ42としては、
図8に示すように、R、G、B、Irとの4つのフィルタ90〜93を、分光透過特性が互いに異なるように設けたものでもよい。Irフィルタ93は、発光部材30が出射する赤外光の波長78を含む帯域を透過する特性を有する。各フィルタ90〜93は、所定の波長領域において、分光透過率が略等しくなる特性を有している。この場合、例えば、各画素の配列に対応した第1行第1列にRフィルタ90を、第2行第1列にGフィルタ91を、第1行第2列にBフィルタ92を、そして、第2行第2列にIrフィルタ93を配列すればよい。
【0057】
また、R・G・B・Irいずれかの複数帯域に感度を持つ補色フィルタを採用してもよい。補色フィルタの一例としては、各画素に対応して、可視波長領域と赤外波長領域とを有感度波長帯域とするYeフィルタ、Riフィルタ、Irフィルタ、及びWフィルタとで1つの単位フィルタ群を形成してもよい。
【0058】
Yeフィルタは、可視光帯域の青色帯域を除く帯域の光を透過する特性を有する。よって、Yeフィルタは主にイエローの光と赤外光とを透過する。Riフィルタは、可視光帯域の青色領域及び緑色領域を除く帯域の光を透過する特性を有する。よって、Riフィルタは主に赤色領域の光と赤外光とを透過する。Irフィルタは、可視光帯域を除く不可視光帯域、すなわち赤外光を透過する特性を有する。Wはフィルタを備えていない場合を示し、すべての波長帯域の光が透過される。補色フィルタを用いた撮像素子から取得する画像信号を補間処理して色差信号と輝度信号とを算出して、色差信号と輝度信号とに基づいてRGB信号を生成すればよい。
【0059】
[外部表示部の他の例]
外部表示部95としては、
図9に示すように、測距装置96の上面に開閉自在に設けてもよい。また、
図10に示すように、測距装置98の背面に外部表示部97を設けてもよい。この場合には、接眼窓18の下に固定して設ければよい。
【0060】
上記実施形態では、挿脱機構36を設けてEVFモードとOVFモードとを切り替えて使用することができるように構成しているが、本発明ではこれに限らず、挿脱機構36を省略し、撮像センサ35を挿入位置に固定して、EVFモードで常に観察するように構成してもよい。この場合、内部表示部37を透過型にする必要はない。また、この場合には、撮像光学系と観察光学系とを別々に設けてもよい。そして、撮像光学系を利用してレーザー光を投光するように構成すればよい。