(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(定義)
本発明の理解を促進するために、以下に多くの用語を定義する。ここで定義する用語は、本発明に関連する分野の当業者が一般的に理解しているのと同じ意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」のような語句は、単に単数の実体を指すことを意図しているのではなく、説明のために特定の例を使用してもよい一般的な分類を含む。本明細書の専門用語は、本発明の具体的な実施形態を記述するために使用されているが、この用語の使用は、特許請求の範囲で概要を記載する場合以外は、本発明の境界を定めるものではない。
【0012】
シロキサンは、R
2SiOという形態の単位から構成される任意の化合物であり、Rは、限定されないが、水素原子、ハロゲン、アルキルまたは芳香族基をはじめとした原子または原子の基(group of atoms)をあらわす。シロキサンは、ケイ素と酸素原子が交互に並んだ−Si−O−Si−O−からなる有枝鎖骨格または有枝鎖をもたない骨格を有することができ、側鎖Rがケイ素原子に結合している。これらのシロキサンは、望ましい官能性を有する(本明細書に記載するような)特定の化学部分を付加することによって「機能化して」いてもよい。
【0013】
本明細書で使用する場合、「水素」は−Hを意味し、「ヒドロキシ」は−OHを意味し、「オキソ」は=Oを意味し、「ハロ」は、独立して、−F、−Cl、−Brまたは−Iを意味し「アミノ」は−NH
2を意味し(アミノという用語を含む基、例えば、アルキルアミノの定義については、以下を参照)、「ヒドロキシアミノ」は−NHOHを意味し、「ニトロ」は−NO
2を意味し、イミノは=NHを意味し(イミノという用語を含む基、例えば、アルキルアミノの定義については、以下を参照)、「シアノ」は−CNを意味し、「アジド」は−N
3を意味し、「メルカプト」は−SHを意味し、「チオ」は=Sを意味し、「スルホンアミド」は−NHS(O)
2−を意味し(スルホンアミドという用語を含む基、例えば、アルキルスルホンアミドの定義については、以下を参照)、「スルホニル」は−S(O)
2−を意味し(スルホニルという用語を含む基、例えば、アルキルスルホニルの定義については、以下を参照)、「シリル」は−SiH
3を意味する(シリルという用語を含む基(複数可)、例えば、アルキルシリルの定義については、以下を参照)。
【0014】
「アルキルシリル」という用語は、「置換された」という修飾子を用いずに使用される場合、−SiH
2R、−SiHRR’または−SiRR’R”と定義される一価の基を指し、ここで、R、R’、およびR”は、同じアルキル基または異なるアルキル基であってもよく、または、R、R’、およびR”の任意の2つの組み合わせが一緒になって、ジアルキル置換基をあらわしてもよい。−SiH
2CH
3、−SiH(CH
3)
2、−Si(CH
3)
3、−Si(CH
3)
2C(CH)
3という基は、非置換アルキルシリル基の非限定的な例である。「置換アルキルシリル」という用語は、−SiH
2R、−SiHRR’または−SiRR’R”を指し、R、R’、およびR”のうち、少なくとも1つは置換アルキルであるか、または、R、R’、およびR”の任意の2つが一緒になって、置換ジアルキルをあらわしていてもよい。R、R’、およびR”のうち、2個以上が置換アルキルである場合、これらは同じであっても異なっていてもよい。置換アルキルでも置換アルカンジイルでもないR、R’、およびR”のうち、任意のものがアルキルであってもよく、同じであっても異なっていてもよく、または、一緒になって、2個以上の飽和炭素原子をもち、その少なくとも2個がケイ素原子に結合したジアルキルをあらわしていてもよい。
【0015】
それに加え、本発明の化合物を構成する原子は、このような原子のあらゆる同位体形態を含むことを意図している。同位体は、本明細書で使用する場合、原子番号は同じであるが、質量数が異なる原子を含む。一般的な例として、限定されないが、水素の同位体としては、重水素およびトリチウムが挙げられ、炭素の同位体としては、
13Cおよび
14Cが挙げられる。同様に、本発明の化合物の1個以上の炭素原子(複数可)をケイ素原子(複数可)で置き換えてもよいことが想定されている。さらに、本発明の化合物の1個以上の酸素原子(複数可)を硫黄原子(複数可)またはセレン原子(複数可)で置き換えてもよいことが想定されている。
【0016】
ヘキサメチルシクロトリシロキサンは、以下の構造によってあらわされる。
【0017】
【化1】
3H,5H−オクタメチルテトラシロキサンは、以下の構造によってあらわされる。
【0018】
【化2】
ジメチルクロロシランは、以下の構造によってあらわされる。
【0019】
【化3】
3−ビニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンは、以下の構造によってあらわされる。
【0020】
【化4】
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタニドは、以下の構造によってあらわされる。
【0021】
【化5】
光酸発生剤(photoacid generator)(またはPAG)は、典型的には、カチオン性光開始剤である。光開始剤は、特に調合物に加えることによって、吸収した光エネルギー(UVまたは可視光)を開始種の形態(すなわち、フリーラジカルまたはカチオン)で化学エネルギーに変換する化合物である。カチオン性光開始剤を光学リソグラフィーに広範囲に使用する。ある種のカチオン性光開始剤が、非常に強いプロトン酸またはルイス酸の潜在的な光化学種として役立つ能力は、光画像作成用途でのそれらの使用の基礎となる。従来の光供給触媒(photo−supplied catalyst)は強酸であった。トリアリールスルホニウム塩およびジアリールヨードニウム塩は、一般的に合成が簡単であり、熱安定性、酸(また、ラジカル)発生について量子収量が高く、それらが供給する酸の強度および不揮発性のため、化学的に増幅されたレジスト調合物の標準的なPAG成分となっている。単純なオニウム塩は、DUV、X線、電子放射線に直接的に感受性であり、中程度UVと、これより長い波長の光で十分に機能を発揮するように構造を調節するか、または光感作剤と混合することができる。非イオン性のPAG(例えば、フロログルシニルおよびo,o−ジニトロベンジルスルホネート、ベンジルスルホン、およびある種の1,1,1−トリハロゲン化物は、一般的に疎水性媒体との適合性が高いが、その熱安定性および酸発生の量子収量は、低いことが多い。
【0022】
本発明が光酸発生剤(PAG)の性質によって制限されることは意図していない。PAGの選択において、限定されないが、良好なレジスト感受性のために十分に強い酸の発生を確保する十分な放射線感受性、金属元素が存在しないこと、温度安定性、分解の抑制など、考慮すべきいくつかの課題がある。一実施形態では、トリアリールスルホニウム(例えば、トリフェニルスルホニウムノナフラート、またはトリ−p−ヒドロキシフェニルスルホニウムトリフラート)またはジアリールヨードニウム塩が、一般的に合成が簡単であり、熱安定性、強酸(また、ラジカル)発生について量子収量が高く、それらが供給する酸の強度および不揮発性のため、好ましい。また、本発明が、使用する現像溶媒によって限定されることも意図していない。一実施形態では、現像溶媒は、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化テトラメチルアンモニウム)の水溶液であってもよい。
【0023】
(発明の詳細な説明)
本発明で想定される合成経路の一実施形態を
図1に示す。望ましい有枝鎖シロキサン(c)は、(a)であらわされるケイ素−水素結合を有するシロキサンと、(b)であらわされる非対称型直鎖シロキサンとを用いて得られる。非対称型直鎖シロキサンを、Yoshinoら、1990[3]の定期刊行物の手順に記載されるように、例えば、市販の環状化合物から出発して調製した。必要な水および活性炭の量の決定などの反応条件を最適化した。例えば、望ましい直鎖シロキサンのひとつ(m=2、X=Cl)を、収率77.9%、純度99.7%(GC/MS)で無色液体として得た。
【0024】
ケイ素−水素結合を有するシロキサンと非対称型直鎖シロキサンとを用いた反応により、望ましい有枝鎖シロキサンだけではなく、望ましくない副生成物も得られる。生成物を精製する最も効果的な方法は、蒸留である。カラムクロマトグラフィーは、直鎖シロキサンが、望ましい有枝鎖シロキサンと同様の性質(極性)を示すため、副生成物を除去するのに有効ではない。蒸留の後、望ましい有枝鎖シロキサンを無色液体として得る。核磁気分光法(NMR)、
1H、
13Cおよび
29Siは、標的構造を裏付けるのに有用である。マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)分光法(質量分光法)も、望ましい質量数を実証する。
【0025】
Si−12を得るための新しい合成経路を首尾よく開発し、これを
図9に示す。最終生成物Si−12への最適化した反応は、たった2工程となった。これは、従来の合成経路と比較して、求められる生成物を顕著により高い収率で、より少ない工程で製造することができる点で、驚異的な向上である。出発材料は、比較的安価であり、市販されている。新規合成経路は、容易にスケールを変えることができ、したがって、産業に適していることも示されてきた。
【0026】
Si−12は、2個のSi−H結合を有し、UVによる硬化可能な有枝鎖シロキサンに変換することができる。エポキシ−Si−12への合成経路を
図10に示す。この種の反応をヒドロシリル化と呼ぶ。この反応を首尾よく行い、生成物を高収率で回収した(87%)。
【0027】
得られた有枝鎖シロキサンは、信頼できる化学反応を用いて簡単に機能化することができる。例えば、UVによる硬化可能な官能基(例えば、アクリレート、メタクリレートおよびエポキシド)を、Si−H部分を介して有枝鎖シロキサンに導入することができる。この反応は、ヒドロシリル化反応と呼ばれ、
図3に示されており[4]、ここで、Xは、所望の機能的特性をもつ化学部分である。ヒドロシリル化は、触媒的ヒドロシリル化(hydrosilation)とも呼ばれ、不飽和結合へのSi−H結合の付加を記載する。通常は、この反応は触媒的に行われ、通常は、基質は、不飽和有機化合物である。アルケンおよびアルキンは、アルキルおよびビニルシランを与え、アルデヒドおよびケトンは、シリルエーテルを与える。機能化した有枝鎖シロキサンは、平坦化層およびパターン化可能な絶縁体を含むプロセスにおいて、半導体産業できわめて有用である。
【0028】
(表面ヒドロシリル化)
本明細書に記載する化合物は、限定されないが、半導体の製造を含め、種々の用途に有用である。例えば、ケイ素ウエハをフッ化水素酸(HF)でエッチングし、天然の酸化物を除去し、末端が水素のケイ素表面を形成させることができる。次いで、末端が水素の表面を不飽和化合物(例えば、末端アルケンおよび末端アルキン)と反応させ、表面に安定な単層を形成させることができる。室温でUV光を用いるか、または熱を加えることによって(典型的な反応温度は120〜200℃)、水分および酸素を含まない条件で、ヒドロシリル化反応を開始させることができる。得られた単層は安定であり、不活性であり、基礎となるケイ素層の酸化を防ぐ。この種の表面は、分子エレクトロニクス、生化学、および生体分子の直接的な電子センシングなどの分野での用途を見出すことができる。
【0029】
本発明では、(e)(xは1〜10をあらわし、yは1〜10をあらわす)に示されるように出発材料のシロキサンを変化させたとき、他の有枝鎖シロキサンを合成することが可能である。この生成物は、
図4に示される反応で示す部分的に有枝鎖したシロキサンである。
【0030】
本発明の化合物を、Ryuzakiら、米国特許出願第11/571,017号(本明細書に参考として組み込まれる)[5]に見出されるような層で使用することができる。
【0031】
有枝鎖シロキサンを、例えば、アクリレート、メタクリレート、ビニルまたはエポキシドなどの光架橋可能な基で機能化することができる。この反応は、通常は、ヒドロシリル化と呼ばれる方法を用いて、有枝鎖シロキサンのSi−H結合を介して行われる。
【0032】
以下の節では、本発明をかなり詳細に記載する。しかし、本発明は、以下の実施例に限定されない。ヘキサメチルシクロトリシロキサンおよびジメチルクロロシランは、Gelest Inc.(USA)から購入した。活性炭およびPt(dvs)(白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液)、Pt 2%をAldrich(USA)から購入した。3H,5H−オクタメチルテトラシロキサンをAlfa Aesar(USA)から購入した。Pd/C、パラジウム/活性炭(5%Pd)をAcros organic(USA)から購入した。メタクリル酸アリルをTCI(日本)から購入した。
【0033】
(好ましい実施形態の記載)
好ましい実施形態では、本発明は、
図5に示した新規のUVによる硬化可能な有枝鎖シロキサン(エポキシ−Si−12)の合成である。すでに合成したSi−14から、新規合成経路のためにシロキサン鎖を短くした。エポキシド基は、架橋のために使用するように選択した。エポキシドで機能化したSi−12は、メタクリレート系の架橋よりもUVによる収縮が小さいことが示された。この合成を、従来の有機合成技術を用いて実施した。材料の特性決定は、NMR(VARIAN 400MHz)、GC/MS(Agilent Technologies 6890NにHP−5MSキャピラリーカラムを取り付けたもの、Agilent)、CI−MASS(Dionex ultimate 3000)、およびMALDI−MASS(VARIAN Pro MALIDI 12 Tesla)によって行った。
【0034】
さらに好ましい実施形態では、本発明は、
図6に示される他の機能化した新規のUVによる硬化可能な有枝鎖シロキサン(機能化したSi−12)の合成に関するもので、ここで、Xは、光硬化可能な官能基をあらわす。
【0035】
以下のエポキシ−Si−12の性質を調べた。外観、ケイ素含有量の比率、蒸気圧、粘度、UVによる硬化後の収縮。ケイ素含有量の比率は、モノマーの分子量から算出した。蒸気圧は、エポキシ−Si−12が入ったチャンバを液体窒素につけ、排気することによって測定した。次いで、減圧状態で密閉することによって、エポキシ−Si−12を解凍した後に、圧力を測定した。粘度は、Physica MCR 500 Rheometerによって測定した。UVによる収縮は、エリプソメータを用いることによって、UVによる硬化前後の基板上の膜厚の差から算出した(J.A.Woollam)。
【0036】
最初に、裸のケイ素ウエハで、エポキシ−Si−12のスピンコーティング試験を行った。PGMEA、PGME、シクロヘキサノンまたはブチルアルコールのような溶媒を調合物に加えなかった。0.7wt%のPAG(光酸発生剤)のみ(この例は、
図7に示されている)をエポキシ−Si−12に加え、UVをあてて架橋を開始させた。基板のスピン速度を2500rpmに設定した。一実施形態では、光酸発生剤は、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタニドである。1インチ×1インチのケイ素基板に対するエポキシ−Si−12の滴下量は、200μlであった。UVをあてた後の膜厚は、楕円偏光法によって測定された。すべての手順をイエロールーム(UVをフィルタでカットした部屋)で実施した。
【0037】
エポキシ−Si−12を用いたS−FIL/Rの実証を行った。プロセスのフロー、使用する調合物、および標的スタックの寸法は、
図8に認めることができる。このプロセスは、いくつかの工程からなっている。(1)基板の調製、(2)試験形体のインプリント(imprint test features)、(3)エポキシ−Si−12を用いた平坦化、(4)CHF
3によるエッチング、(5)O
2エッチング。
【0038】
第1の工程では、基板を下部層(underlayer)NCI−NIL−01(日産化学工業株式会社(日本))でコーティングした。このような材料の目的は、輸送層(transfer layer)として機能し、接着性を上げ、その後のエッチングプロセスで、ケイ素基板に対するハードマスクとして機能することである。第2の工程では、商業的なインプリントツールであるImprio 100(Molecular Imprints Inc.、USA)をオースチンのテキサス大学に設置してインプリントを実施した。80nmの線と180nmの空間をもつ石英のテンプレート(鋳型)も、オースチンにあるテキサス大学によって購入された。このテンプレートを、インプリンティングの前に、フッ素化表面処理(Gelest Inc.(USA)製のトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルジメチルクロロシラン)によって剥離層(release layer)として前処理した。第3の工程では、CHF
3によるエッチングをOxford Plasmalab 80で行い、過剰なエポキシ−Si−12層を除去した。エポキシ−Si−12のエッチング比は、正確なエッチング深さになるように決定した。最後の工程で、有機層を貫く(break through)ように、O
2エッチングを実施した。SEM(Zeiss Neon 40)を使用し、第1の工程を除き、各工程の後に、スタックの厚みとエッチング深さを測定した。
【0039】
Si−12を得るための新しい合成経路を首尾よく開発し、
図9に示している。最終生成物Si−12への最適化した反応は、たった2工程となった。これは、従来の合成経路と比較して、所望の生成物を顕著により高い収率で、より少ない工程で製造することができるという点で驚異的な向上である。出発材料は、比較的安価であり、市販されている。新規合成経路は、容易にスケールを変えることができることも示されている。
【0040】
Si−12は、2個のSi−H結合を有し、UVによる硬化可能な有枝鎖シロキサンに変換することができる。エポキシ−Si−12への合成経路を
図10に示す。この種の反応をヒドロシリル化と呼ぶ。この反応を首尾よく行い、生成物を高収率で回収した(87%)。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
非対称型直鎖シロキサン(b)(m=2、X=Cl)の合成
2L丸底ガラスフラスコに250ml滴下漏斗を取り付けたものを用意した。ヘキサメチルシクロトリシロキサン(116.7g、0.524mol)、活性炭(2.151g)、およびヘキサン(330ml)をフラスコに加えた。ジメチルクロロシラン(88.5ml、0.795mol)、およびヘキサン(110ml)を滴下漏斗に加えた。N
2下、室温でジメチルクロロシラン溶液を1時間かけてゆっくりと滴下して添加した。この溶液を一晩激しく撹拌した。この反応物をGC/MSによって定期的に監視し、未反応のヘキサメチルシクロトリシロキサンがまだ20%より多い量存在していたら、追加の活性炭とジメチルクロロシランを加えた。0.2μm PTFE膜で溶液を濾過し、活性炭を除去した。ロータリーエバポレーターで、減圧下で溶媒を除去した。真空下(10Torr未満)、170℃で蒸留し、生成物を精製した。望ましい化合物129.6gを無色液体として得た。CG/MSスペクトルから、純度が99.7%であることがわかった。反応物の収率は77.9%であった。
【0042】
【化6】
(実施例2)
有枝鎖シロキサン(c)(n=2、m=3)の合成
500ml丸底ガラスフラスコに100ml滴下漏斗を取り付けたものを用意した。Pd/C(0.16g)、水(1.9g、0.106mol)、およびTHF(175ml)をこのフラスコに加えた。3H,5H−オクタメチルテトラシロキサン(10.0g、0.035mol)およびTHF(75ml)を滴下漏斗に加えた。この溶液をフラスコにゆっくりと滴下して添加し、完全に加え終わった後、反応物を室温で6時間撹拌した。酸で洗浄したCelite(商標)で溶液を濾過し、Pd/Cを除去した。3Lの丸底ガラスフラスコに250ml滴下漏斗を取り付けたものを用意した。N
2加圧条件下で、あらかじめ合成しておいた非対称型直鎖シロキサン(b)(56.4g、0.178mol)、トリエチルアミン(27.8g、0.275mol)、およびジエチルエーテル(700ml)をフラスコに加えた。Celite(商標)濾過から得た濾液を滴下漏斗に加え、0℃でフラスコにゆっくりと滴下した。滴下し終わったらすぐに、氷浴をはずし、懸濁物を室温で一晩撹拌した。この溶液に水(1L)を加え、過剰量の非対称型直鎖シロキサンをクエンチした後、水層と有機層を分離した。有機部分を水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。重力による濾過によって硫酸マグネシウムを除去した後、真空中で溶液の容積を減らした。クーゲルロール装置を用い、170℃、2Torrで蒸留を行い、副生成物と不純物を取り除いた。28.9gの無色液体が得られた(収率93.1%)。
【0043】
【化7】
(実施例3)
機能化した有枝鎖シロキサン(d)(m=3、n=2、X=メタクリレート)の合成
500mlの丸底ガラスフラスコを用意した。N
2雰囲気下、有枝鎖シロキサン(c)(n=2、m=2)(12.0g、13.7mmol)、メタクリル酸アリル(4.41g、34.9mmol))、トルエン(130ml)をフラスコに加えた。激しく撹拌しつつ、25滴のPt(dvs)触媒を溶液に加えた。溶液は黄色に変わり、撹拌を一晩続けた。溶媒を真空中で除去した。過剰量のメタクリル酸アリルを真空下(1Torr)、室温で除去した。14.9gのわずかに黄色の液体が、収率95.8%で得られた。
【0044】
(実施例4)
Si−12を得るための新しい合成経路を首尾よく開発し、これを
図9に示す。最終生成物Si−12への最適化した反応は、たった2工程となった。これは、従来の合成経路と比較して、求められる生成物を顕著により高い収率で、より少ない工程で製造することができるという点で、驚異的な向上である。出発材料は、比較的安価であり、市販されている。新規合成経路は、容易にスケールを変えることができ、したがって、産業に適していることも示されてきた。
【0045】
Si−12は、2個のSi−H結合を有し、UVによる硬化可能な有枝鎖シロキサンに変換することができる。エポキシ−Si−12への合成経路を
図10に示す。この種の反応をヒドロシリル化と呼ぶ。この反応を実施例3に記載した手順を用いて首尾よく行い、生成物を高収率で回収した(87%)。
【0046】
(実施例5)
エポキシ−Si−12の性質
エポキシ−Si−12の外観は、わずかに黄色がかった液体であった。生成物に色がついている理由は、精製プロセスで完全には除去されなかった少量の触媒のためであると推測される。この材料は、ケイ素含有量が30.0%であり、この量は、O
2エッチングプロセスに耐えるのに十分に高い。蒸気圧は、25℃で0.65Torrである。粘度は、25℃で29cPである。この性質は両方とも優れた平坦化材料の要求事項を満たす。UVによる収縮は、たった2.2%であり、メタクリレート誘導体より小さかった(Si−14は5.1%であった)。性質をすべて
図11にまとめている。
【0047】
(実施例6)
エポキシ−Si−12のスピンコート試験
得られたスピン曲線を
図12に示す。この結果は、1.0μm未満の膜厚を与えるのに約150秒のスピン時間が必要であることを示していた。データは、次のS−FIL/Rの実証に有用であった。
【0048】
(実施例7)
エポキシ−Si−12レジストを用いたS−FIL/Rの実証[6]
工程1.NCI−NIL−01(日産化学)を、下部層として裸のケイ素基板に、厚みが約100nmになるようにスピンコーティングした。
【0049】
工程2.Imprio 100(登録商標)で、80nmの線と空間をもつテンプレートのインプリントを実施した。SFILの形体のひとつは、基板上に液体レジストを分配するインクジェット分配システムだということである。最適化したインプリント分配パターンを
図13に示す。残留層(residual layer)の均一性だけではなく、レジスト材料の消費量が少ないという観点で、真正の(authentic)スピンコート分配システムを利用するために、このシステムを開発した。インクジェットノズルを介し、最適化したレジスト滴の配置によって、一貫性のある良好なインプリントパターンが得られた。
【0050】
インプリントのSEM画像を
図14に示す。残留層は、約52nmであると測定され、この厚みは、従来のS−FILプロセスについてのもの(20nm未満)より少し厚かった。レジストの容積を減らすか、またはインプリント力を変えるなどのさらなる最適化によって、残りの厚みを減らすことができた。しかし、S−FIL/Rプロセスの場合、平坦化層がその形状をコーティングし、覆うことから、それは、許容され得るものであった。インプリントされた線と空間は、テンプレートの形に対応する値を示していた。
【0051】
工程3.エポキシ−Si−12を用いた平坦化を実施し、SEM画像を
図15に示している。
【0052】
工程4.エポキシ−Si−12のエッチング速度を決定し(CHF
3:20sccm、O
2:12sccm、RF:50W、DCバイアス:192V、圧力:30mTorr)、
図16に示している。次いで、平坦化層の実際のエッチングを実施した。
【0053】
図17は、フッ素エッチング工程の後のSEM画像を示している。エポキシ−Si−12は、その後にインプリントされた層の上面まで完全にエッチングされていた。この深さに達するのに、計10分が必要であった。
【0054】
工程5.有機層を貫くように、O
2エッチングを実施した(O
2:3sccm、Ar:30sccm、RF:90W、DCバイアス:300V、圧力:6mTorr、エッチング時間:8分)。この結果から、
図18に示されているように、有機レジストが除去され、望ましいパターンが得られていることが示された。線および空間の幅は、最初のインプリントパターンと比較して、逆になっており、このことは、リバーストーンS−FILが行われたことを示している。
【0055】
参考文献:
【0056】
【数1】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
有枝鎖シロキサンを合成するための方法であって、
(i)式(a)によってあらわされる、ケイ素−水素結合をもつシロキサン
【化8】
(a)
〔式中、nは1〜20の整数をあらわす〕
と、
(ii)式(b)の非対称型直鎖シロキサン
【化9】
〔式中、Xは任意のハロゲンをあらわし、mは2〜10の整数をあらわす〕
とを反応させる工程を含み、該反応させる工程が、有枝鎖シロキサンと副生成物が生成する条件で行われる、方法。
(項2)
前記式(a)によってあらわされるケイ素−水素結合をもつ前記シロキサンが、3H,5H−オクタメチルテトラシロキサンである、上記項1に記載の方法。
(項3)
mが2または3のいずれかである、上記項1に記載の方法。
(項4)
前記3H,5H−オクタメチルテトラシロキサンが、前記非対称型直鎖シロキサンと反応させる前に、水存在下で触媒にさらされる、上記項2に記載の方法。
(項5)
前記触媒が、前記3H,5H−オクタメチルテトラシロキサンと前記非対称型直鎖シロキサンとを反応させる前に除去される、上記項4に記載の方法。
(項6)
前記触媒がパラジウム触媒である、上記項4に記載の方法。
(項7)
前記非対称型直鎖シロキサンのハロゲンが塩素である、上記項1に記載の方法。
(項8)
合成反応の前記副生成物を除去し、精製した有枝鎖シロキサンを得るために、蒸留によって前記有枝鎖シロキサンを精製する工程をさらに含む、上記項1に記載の方法。
(項9)
精製した前記有枝鎖シロキサンを機能化する工程をさらに含む、上記項8に記載の方法。
(項10)
前記機能化する工程が、アクリレート、メタクリレート、ビニル、エポキシドからなる群から選択される、光架橋可能な部分を結合する工程を含む、上記項9に記載の方法。
(項11)
前記機能化する工程が、ヒドロシリル化を含む、上記項9に記載の方法。
(項12)
図9に示す構造を有する有枝鎖シロキサンSi−12。
(項13)
図6に示す構造を有し、ここで、Xが化学部分である、機能化した有枝鎖シロキサンSi−12。
(項14)
図5に示す構造を有する機能化した有枝鎖シロキサンエポキシ−Si−12。