(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面に樹脂層を有する平板状の被加工物を保持する第1ホルダと、微細な凹凸パターンを有する金型と、前記第1ホルダにて保持された被加工物の前記樹脂層と対向するように前記金型を保持する第2ホルダと、前記被加工物と前記金型とを相対的に接近および離間させる方向である移動方向に前記第1または第2ホルダを移動させる移動機構とを備え、前記金型の凹凸パターンを前記樹脂層に押し付けて凹凸パターンを被加工物に転写するように構成され、
前記移動機構は、前記第1または第2ホルダの3点以上の複数の特定箇所と連結する3本以上の複数の移動ロッドと、前記複数の移動ロッドを移動させる駆動部と、前記駆動部を制御する制御部とを備え、前記第1または第2ホルダの前記複数の特定箇所に対して前記移動方向に前記複数の移動ロッドを移動させるよう構成されており、
前記複数の特定箇所は、前記被加工物または前記金型を包囲する円周上に位置し、
前記制御部は、離型時において、前記複数の移動ロッドのうち、一の移動ロッドを所定距離分移動させた後、円周方向の一方向に隣接する他の移動ロッドを所定距離分移動させ、これを繰り返し行うように前記駆動部を制御するように構成されたことを特徴とするパターン形成装置。
前記離型工程の初期において、1番目の移動ロッドを所定距離分移動させた後、前記円周方向の一方向に隣接する2番目の移動ロッドを1番目の移動ロッドの移動距離よりも長い距離分移動させ、これを3番目以降の移動ロッドについても繰り返して一周させ、
その後は、1番目の移動ロッドから順に一定距離で移動させる請求項4に記載のパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のパターン形成装置は、表面に樹脂層を有する平板状の被加工物を保持する第1ホルダと、微細な凹凸パターンを有する金型と、前記第1ホルダにて保持された被加工物の前記樹脂層と対向するように前記金型を保持する第2ホルダと、前記被加工物と前記金型とを相対的に接近および離間させる方向である移動方向に前記第1または第2ホルダを移動させる移動機構とを備え、前記金型の凹凸パターンを前記樹脂層に押し付けて凹凸パターンを被加工物に転写するように構成されている。
前記移動機構は、前記第1または第2ホルダの3点以上の複数の特定箇所と連結する3本以上の複数の移動ロッドと、前記複数の移動ロッドを移動させる駆動部と、前記駆動部を制御する制御部とを備え、前記第1または第2ホルダの前記複数の特定箇所に対して前記移動方向に前記複数の移動ロッドを移動させるよう構成されている。
前記複数の特定箇所は、前記被加工物または前記金型を包囲する円周上に位置している。
前記制御部は、
離型時において、前記複数の移動ロッドのうち、一の移動ロッドを所定距離分移動させた後、円周方向の一方向に隣接する他の移動ロッドを所定距離分移動させ、これを繰り返し行うように前記駆動部を制御する
ように構成されている。
【0015】
本発明のパターン形成
装置は、次のように構成されてもよく、これらが適宜組み合わされてもよい。
(1)前記複数の特定箇所は、前記被加工物または前記金型の平面中心を中心とする円周上かつ等間隔の放射線上に位置して
もよい。
このようにすれば、凹凸パターンの欠陥率をより安定的に低減することができる。
【0016】
(2)前記移動機構の前記複数の移動ロッドは、前記第2ホルダの前記複数の特定箇所と連結してもよい。
このようにすれば、第2ホルダと共に金型を基材に対して移動させることができる。そのため、硬化した樹脂層の凹凸パターンを歪ませることなく離型工程を行うことができるため、凹凸パターンの欠陥率低減に有利となる。
【0017】
また、これらのパターン形成装置を用いた本発明のパターン形成方法は、
前記被加工物と前記金型とを相対的に接近させる接近方向に移動させることにより、前記金型の前記凹凸パターンを前記樹脂層に押し付けて凹凸パターンを転写する転写工程と、
前記被加工物と前記金型とを相対的に離間する離間方向に移動させる離型工程とを含み、
前記離型工程において、前記複数の移動ロッドのうち、一の移動ロッドを所定距離分移動させた後、円周方向の一方向に隣接する他の移動ロッドを所定距離分移動させ、これを繰り返し行う。
【0018】
このパターン形成方法は、次のようにしてもよい。
(I)前記離型工程の初期において、1番目の移動ロッドを所定距離分移動させた後、前記円周方向の一方向に隣接する2番目の移動ロッドを1番目の移動ロッドの移動距離よりも長い距離分移動させ、これを3番目以降の移動ロッドについても繰り返して一周させ、
その後は、1番目の移動ロッドから順に一定距離で移動させてもよい。
このようにすれば、効率よく、しかも凹凸パターンの欠陥率をより低減しながら離型工程を行うことができる。
【0019】
(II)転写工程と離型工程との間に、樹脂層を硬化させる硬化工程を行ってもよい。
このようにすれば、離型工程において、樹脂層に対する金型の離型性が向上するため、凹凸パターンの欠陥率をより低減することができる。
【0020】
(III)転写工程の前に、樹脂層を加熱して軟化させてもよい。
このようにすれば、樹脂層中に存在するガスが脱気し、凹凸パターンの欠陥率をより低減することができる。また、樹脂層を軟化させることにより、金型へのダメージを低減することができ、金型の寿命を延ばすことができる。
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳説する。
【0022】
(実施形態1)
<パターン形成装置>
図1は本発明のパターン形成装置の実施形態1を示しており、(A)は部分的な概略平面図であり、(B)は内部構造を説明する概略正面図である。
このパターン形成装置は、第1ホルダとしての基材ホルダ10と、金型20と、第2ホルダとしての金型ホルダ30と、移動機構40と、光照射部50と、複数の変位センサ60と、制御部70と、これらを収納する筐体80とを備え、ナノインプリント法により被加工物Wにナノメートルレベルの微細な凹凸パターンを転写成形する装置である。
【0023】
筐体80は、周囲壁81と、図示しない天板および底板と、周囲壁81の内面に固定された上水平板82、中水平板83および下水平板84とを有し、四角いボックス形に形成されている。これら上、中および下水平板82、83、84は、基材ホルダ10、金型ホルダ30、移動機構40、複数の変位センサ60等を支持する構造材である。なお、上、中および下水平板82、83、84を支持する構造物は、周囲壁81の代わりに、筐体80内に設けられた垂直な支柱であってもよい。
【0024】
基材ホルダ10は取付板11にネジ止めにて固定され、取付板11は上水平板82にネジ止めにて固定されている。この基材ホルダ10の上面の中心位置には、平板状の被加工物Wを嵌め込んで位置決めするための図示しない浅い凹部が形成されている。
なお、離型時に被加工物Wが金型20にくっついて持ち上げられないよう、被加工物Wを基材ホルダ10に、例えば、接着剤、真空吸着、ネジ止め等で固定する。
【0025】
被加工物Wは、板状の基材w1と、基材w1上に積層された樹脂層w2とから構成される(
図2(A)参照)。
基材w1は、ナノ構造体である微細な凹凸パターンを支持する基板となるものであり、その材質は目的に応じて最適なものが選択される。例えば、半導体装置への適用であれば、基材w1としてシリコン基板を用いることができる。
樹脂層w2の樹脂材料としては、熱可塑性樹脂材料、或いは光硬化性樹脂材料、或いは熱硬化性樹脂材料が挙げられる。
なお、被加工物Wについて詳しくは後述する。
【0026】
金型ホルダ30は、基材ホルダ10の上方に配置される板材からなる。この板材の材質としては、金型20を保持できるものであれば特に限定されず、例えば、ガラス材料、樹脂材料、金属等が挙げられる。これらの中でも、金型20に押し付けられた樹脂層w2を光硬化させることを考慮すれば、透光性を有する石英ガラス、紫外線透過性ガラス、硬質ガラス、紫外線透過性樹脂が好ましく、特に、石英ガラスが好ましい。
【0027】
金型20は、下面側にナノ構造体である微細な凹凸パターン20pを有し、上面は平坦面となっている。そして、この上面が金型ホルダ30の下面に固定される。金型20の材質としては、例えば、ガラス材料、樹脂材料、金属等が挙げられる。これらの中でも、金型20に押し付けられた樹脂層w2を光硬化させることを考慮すれば、透光性を有する石英ガラス、紫外線透過性ガラス、硬質ガラス、紫外線透過性樹脂が好ましく、特に、石英ガラスが好ましい。
なお、金型20は、例えば、接着剤、真空吸着、ネジ止め等にて金型ホルダ30の下面に固定される。
【0028】
金型20の微細な凹凸パターン20pからなるナノ構造は、本方法により樹脂層w2に転写成形しようとするナノ構造に相当する。ここで、「ナノ構造」とは、最小サイズ(例えば一辺、高さおよび直径)がマイクロ及びナノメートルスケール(1nm〜1000μm、例えば10nm〜1000μm、50nm〜1000μm、または100nm〜1000μm)である1または複数の任意の形状(例えば多角柱、円柱、平板、多角錘、円錐)を有する構造である。ナノ構造は、一種類の形状または二種以上の形状(サイズのみ異なるものを含む)が繰返し配置された構造であってもよい。一態様では、
図2(A)に示すように、ナノ構造は平板列(例えば幅A1:50nm〜100nm、高さA2:500nm〜1000nm、繰返しピッチA3:50nm〜200nm)である。別の態様では、ナノ構造は円柱のアレイ状配列(例えば高さ100nm〜500nm、繰返しピッチ100nm〜300nm)である。
【0029】
ナノ構造は、(例えば半導体製造の分野で)微小加工に通常用いられている方法、例えば、リソグラフィー技術、特に電子線(EB)リソグラフィー技術、及び/又はエッチング技術、特に反応性イオンエッチング(RIE)やプラズマエッチングなどのドライエッチング技術、および/または電子線直接描画法などを用いて作製することができる。
【0030】
移動機構40は、被加工物Wと金型20とを相対的に接近および離間させる方向である移動方向に金型ホルダ30を移動させるものであり、金型ホルダ30の下面の3点以上の複数の特定箇所と連結する3本以上の複数の移動ロッド41と、複数の移動ロッド41を移動させる駆動部42とを備え、金型ホルダ30の前記複数の特定箇所に対して移動方向に複数の移動ロッド41を移動させるよう構成されている。
【0031】
実施形態1の場合、前記複数の特定箇所は、前記金型20を包囲する円周C
1上に位置している。より具体的には、この円周C
1の中心は、金型20の上面(金型ホルダ30との接触面)の平面中心G上にある。さらに、金型20の平面中心Gを中心とする等間隔の3本の放射線R
1、R
2、R
3と円周C
1との3つの交点箇所が、前記特定箇所P
1、P
2、P
3とされている。
【0032】
一方、移動機構40は3本の移動ロッド41a、41b、41cを有しており、各移動ロッド41a、41b、41cの上端が、金型ホルダ30の下面の3つの特定箇所P
1、P
2、P
3に連結している。以下、「1番目の移動ロッド41a」、「2番目の移動ロッド41b」、「3番目の移動ロッド41c」と言う場合と、これらをまとめて「移動ロッド41」という場合がある。
【0033】
また、3本の移動ロッド41は、上および中水平板82、83に形成された貫通孔に上下垂直方向にスライド可能に挿通されている。なお、金型ホルダ30は移動ロッド41の上に載置されている。すなわち、金型ホルダ30の下面が移動ロッド41の上端に当接することにより、金型ホルダ30と移動ロッド41が連結されている。
【0034】
移動機構40の駆動部42は、各移動ロッド41を上下垂直方向に高精度に往復移動させるアクチュエータであり、モータ42aと、ボールネジ機構部42bとを備えている。
ボールネジ機構部42bは、モータ42aにて回転するスクリューシャフト42b
1と、スクリューシャフト42b
1に螺着した移動板42b
2とを有する。
【0035】
モータ42aは下水平板84の下面に固定されている。また、スクリューシャフト42b
1は、中および下水平板83、84に形成された貫通孔に回転可能に挿通されており、その上端は中水平板83から抜け落ちないようフランジ42b
11が設けられている。
【0036】
また、移動機構40は、離型時に各移動ロッド41にかかる力を検出する前記荷重検出器43をさらに備えている。この荷重検出器43は、移動ロッド41の下端面に当接する筒形の圧力センサであり、かつ荷重検出器43の下端面が移動板42b
2の上面に当接している。これにより、荷重検出器43に移動ロッド41からの荷重がかかるようになっている。
【0037】
3個の荷重検出器43は、金型20、金型ホルダ30および3本の移動ロッド41の合計重量の約1/3ずつを支持しており、それらにかかる荷重を随時検出し、荷重データとして制御部70へ送信する。
なお、荷重データは、移動ロッドの初期位置の検出のためのデータとして用いる。
【0038】
このように構成された移動機構40によれば、モータ42aによりスクリューシャフト42b
1が所定回転角度で回転することにより移動板42b
2が上下方向に所定距離だけ移動し、それによって荷重検出器43および移動ロッド41が上下方向に所定距離だけ移動する。
【0039】
ここで、移動機構40におけるモータ42aとしては、ACサーボモータ、DCサーボモータ、ステッピングモータ等のサーボモータを用いることができる。
ACまたはDCサーボモータを用いる場合は、後述する変位センサ60にて金型ホルダ30における変位センサ60の直上位置までの距離を検出し、その距離データを制御部70へフィードバックし、各移動ロッド41が順番に所定距離だけ上昇するよう制御部70にて個別に各モータ42aの駆動を制御することができる。
ステッピングモータを用いる場合は、変位センサ60から制御部70へフィードバックされる距離データに基づくことなく、各移動ロッド41が順番に所定距離だけ上昇するよう制御部70にて個別に各モータ42aの駆動を制御することができる。
【0040】
複数の変位センサ60は、金型ホルダ30の下面における前記円周C
1の内側に同心円として存在する円周C
2上で、かつ前記3本の放射線R
1、R
2、R
3との3つの交点箇所p
1、p
2、p
3と各変位センサ60との間の距離を検出するよう、前記取付板11上に固定されている。各変位センサ60は、それらとそれらの直上の金型ホルダ30との間の距離を随時検出し、距離データとして制御部70に送信する。なお、変位センサ60としては、ミクロンメータレベルでの変位を検出できるものが好ましく、光学センサが好適である。なお、円周C
1の中心および円周C
2の中心は、金型20の平面中心Gから多少ずれてもよい。
【0041】
光照射部50は、上限まで上昇した金型ホルダ30よりも上方位置であって、金型20の直上に図示しない支持体によって吊り下げられている。光照射部50は、被加工物Wにおける基材w1上の光硬化性樹脂層w2を硬化させる波長の光を被加工物Wに向けて照射する。
【0042】
ここで、光硬化性樹脂層w2に使用される光硬化性樹脂は、任意の公知の樹脂である。
光硬化性樹脂は、商品名「PAK-01」(東洋合成株式会社から入手可能)、NICT(ダイセル化学工業株式会社から入手可能)等である。
【0043】
光硬化性樹脂層は、適切な基材w1上に、流体の薄膜形成に通常用いられている方法、例えばスピンコート、スプレーコート、蒸着により形成されてもよい。このとき、膜厚は、マイクロ構造の高さに対応してもよい。
基板w1は、所望の構造の反転構造が転写され硬化された樹脂層が破壊したり変形することを防止するための支持体として機能するに十分な強度を有しさえすれば任意の材質であり得る。基板w1の例としては、石英ガラス基板、金属(銅、ニッケル、ステンレス鋼など)基板、シリコン基板、使用する光硬化性樹脂と混ざらない樹脂基板(例えば、エポキシ基板や高分子量のアクリル基板)が挙げられる。
なお、被加工物Wは、全体が樹脂層w2からなるものであってもよい。
【0044】
光照射部50の光源は、紫外線露光の場合、例えば水銀ランプ(g線、h線、i線)であり得る。
露光線量は、使用する光硬化性樹脂層に応じて適切に選択される。光源として紫外線ランプを使用する場合、露光線量は10mJ/cm
2以上であり得る。
【0045】
露光は一般には押付け面に対して垂直な方向から行うが、垂直方向から傾斜した角度で露光してもよい。傾斜角度で二方向から露光を行うことで、マイクロ構造の凸部または凹部を例えばテーパ状とすることができる。
【0046】
<パターン形成方法>
次に、このように構成された本発明のパターン形成装置を用いたパターン形成方法について
図1〜
図5を参照しながら説明する。
図2は実施形態1のパターン形成装置を用いたパターン形成方法の説明図であって、(A)は転写工程前の離型状態を示し、(B)は転写工程を示している。
図3は
図2(B)に引き続く離型工程を説明する概念図である。
図4は離型工程における複数の移動ロッドの移動状態を説明する概念図である。
図5は離型工程における金型ホルダの上昇状態を説明する概念図である。
【0047】
このパターン形成装置を用いたパターン形成方法は、転写工程(押付け工程)と、離型工程とを含む。
【0048】
[転写工程]
転写工程では、
図2(A)に示す離型状態から、
図2(B)に示すように、被加工物Wと金型20とを相対的に接近させる接近方向に移動させることにより、金型20の凹凸パターン20pを樹脂層w2に押し付けて凹凸パターンを転写する。このとき、離型性向上のために、金型20の凹凸パターン20pの表面に離型剤を塗布する表面処理を行ってもよい。
【0049】
金型20の凹凸パターン20pは、「光ナノインプリンティング」と呼ばれる技術を利用する。よって、本工程(および関連する工程)で使用する技法、条件、装置などは、一般には、光ナノインプリンティングで通常に使用されるものと同様であるが、以下に簡潔に説明する。
【0050】
この押付け工程の1つの好適な条件は、使用する光硬化性樹脂によって異なるが、下記の実施例の記載に従って、又はR.Suzuki,N.Sakai,A.Sekiguti,Y.Matsumoto,R.Tanaka,Y.Hirai:Journal of Photopolymer Science and Technology 23 2010) 51.に記載の方法に従って容易に決定できる。
【0051】
押付け時の圧力は、使用する光硬化性樹脂およびその膜厚に応じて変化するが、一般に0.1MPa〜10MPaである。
【0052】
硬化工程(露光工程)では、転写工程にて金型20が樹脂層w2を押し付けた状態のまま光照射部50から樹脂層w2に向かって光Lを照射する。(
図2(B)参照)。
露光の手段および方法は、一般に、(例えば半導体製造の分野で)微小加工に通常用いられているリソグラフィー技術における露光の手段および方法と同様である。
本発明における露光には、リソグラフィー技術に使用できるエネルギー線、例えば可視光、又は紫外線を使用することができる。よって、本発明において、「光」とは、通常の意味での光(すなわち赤外線、可視光、紫外線)とする。露光は好ましくは紫外線露光である。
【0053】
[離型工程]
離型工程では、被加工物Wと金型20とを相対的に離間する離間方向に移動させる。この際、複数の移動ロッド41のうち、一の移動ロッド41を所定距離分上昇させた後、円周C
1の一方向に隣接する他の移動ロッド41を所定距離分上昇させ、これを繰り返し行う。
【0054】
このとき、
図3に示すように、金型ホルダ30の特定箇所Pに移動ロッド41からの上昇圧力Fが加わることにより、金型ホルダ30における特定箇所Pと交差する前記放射線の近傍部分が反りを生じ、それによって金型20の一部が基材w1上の樹脂層w2から僅かに浮き上がる。このとき、変位センサ60にて前記放射線上の特定箇所pの高さ位置を測定している(
図1(A)参照)。
【0055】
具体的に説明すると、
図4に示すように、離型工程の初期において、1番目の移動ロッド41a(
図4のグラフ○)を所定距離分移動させた後、円周C
1の一方向に隣接する2番目の移動ロッド41b(
図4のグラフ△)を1番目の移動ロッド41aの移動距離よりも長い距離分移動させ、これを3番目以降の移動ロッド41c(
図4のグラフ□)についても繰り返して一周させ、その後は、1番目の移動ロッド41aから順に一定距離で移動させる。
【0056】
実施形態1の場合、離型工程の初期において、まず、1番目の移動ロッド41aを例えば10μm上昇させ、次に、2番目の移動ロッド41bを例えば20μm上昇させ、次に、3番目の移動ロッド41cを例えば30μm上昇させ、その後、1番目〜3番目の移動ロッド41a、41b、41cを30μmずつ順に上昇させ、これを繰り返す場合を例示している。このときの移動機構40の駆動制御は制御部70にて行われる。なお、移動ロッド41を1回上昇させる距離はこれに限定されるものではない。
【0057】
図4で説明したように、実施形態1では3本の移動ロッド41を前記のように1本ずつ所定距離で上昇させるため、金型ホルダ30の3つの特定箇所P
1、P
2、P
3の高さ位置は
図5に示すように上昇する螺旋方向に推移していく。
【0058】
図6は凹凸パターンの方向に対する傾斜離型モードの剥離方向を説明する図であって、(A)は実施形態1を示し、(B)は比較例1を示し、(C)は比較例2を示し、(D)は比較例3を示している。
例えば、
図6(A)に示すように、金型20の凹凸パターン20pが一方向に延びるストライプ状である場合、金型ホルダ30の3つの特定箇所P
1、P
2、P
3の高さ位置が上昇する螺旋方向に推移する実施形態1によれば、前記一方向に対して第1の剥離方向D1が垂直方向(90°)となり、前記一方向に対して第2の剥離方向D2が斜め方向(30°)となり、前記一方向に対して第3の剥離方向D3が斜め方向(30°)となることができる。
【0059】
すなわち、1番目の移動ロッド41aが上昇することにより第1の剥離方向D1が生じ、2番目の移動ロッド41bが上昇することにより第2の剥離方向D2が生じ、3番目の移動ロッド41cが上昇することにより第3の剥離方向D3が生じるよう、金型20の凹凸パターン20pの向きが定められている。なお、金型20の凹凸パターン20pの向きはこれに限定されず、例えば、第1の剥離方向D1はストライプが延びる方向と平行でもよい。
【0060】
(実施形態2)
図7は実施形態2のパターン形成装置の部分的な概略平面図である。なお、
図7において、
図1(A)中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
実施形態2のパターン形成装置は、4本の移動ロッド41を有し、金型ホルダ30の下面における前記円周C
1上かつ中心角度90°で等間隔の4本の放射線上の位置に、各移動ロッド41が連結している。これと同様に、4個の変位センサ60が、金型ホルダ30の下面における前記円周C
1と4本の放射線との交点位置の高さを測定するようそれらの直下に設けられている。なお、図示しない移動機構は4本の移動ロッド41をそれぞれ個別に昇降させるよう構成されている。
実施形態2において、その他の構成は実施形態1と概ね同様である。
【0061】
(実施形態3)
図8は実施形態3のパターン形成装置の部分的な概略平面図である。なお、
図8において、
図1(A)中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
実施形態3のパターン形成装置は、5本の移動ロッド41を有し、金型ホルダ30の下面における前記円周C
1上かつ中心角度72°で等間隔の5本の放射線上の位置に、各移動ロッド41が連結している。これと同様に、5個の変位センサ60が、金型ホルダ30の下面における前記円周C
1と5本の放射線との交点位置の高さを測定するようそれらの直下に設けられている。なお、図示しない移動機構は5本の移動ロッド41をそれぞれ個別に昇降させるよう構成されている。
実施形態3において、その他の構成は実施形態1と概ね同様である。
【0062】
(実施形態4)
図9は実施形態4のパターン形成装置の部分的な概略平面図である。なお、
図9において、
図1(A)中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
実施形態4のパターン形成装置は、6本の移動ロッド41を有し、金型ホルダ30の下面における前記円周C
1上かつ中心角度60°で等間隔の6本の放射線上の位置に、各移動ロッド41が連結している。これと同様に、6個の変位センサ60が、金型ホルダ30の下面における前記円周C
1と6本の放射線との交点位置の高さを測定するようそれらの直下に設けられている。なお、図示しない移動機構は6本の移動ロッド41をそれぞれ個別に昇降させるよう構成されている。
実施形態4において、その他の構成は実施形態1と概ね同様である。
【0063】
(他の実施形態)
被加工物Wを金型ホルダ30の下面に取り付け、金型20を基材ホルダ10に取り付けてもよい。すなわち、転写工程後、金型20に対して被加工物Wを上昇させて離型するようにしてもよい。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
図1〜
図6(A)で説明した実施形態1のパターン形成装置を用いて被加工物Wに微細な凹凸パターンを転写成形した。このときの条件は下記の通りである。
・金型20は10mm角のサイズであり、その凹凸パターン20pは、平板列であり、幅A1を2μm、高さA2を2μm、繰返しピッチA3を4μmとした(
図2(A)参照)。
・金型20の平面中心Gを中心とする円周C
1の半径を60mmとし、円周C
2の半径を30mmとした(
図1(A)参照)。
・10mm角の基材w1上に光硬化性樹脂を塗布し、転写工程、露光工程、および離型工程を行った。離型工程は、
図4で説明した要領で行った。
図10は、実施例1で得られた転写成形後の被加工物の凹凸パターンの状態を光学顕微鏡にて撮影した写真である。
【0065】
(比較例1)
比較例1では、
図6(B)に示すように、金型20の凹凸パターン20pが延びる方向に対して垂直な第1の剥離方向D1のみで離型を行った。
図11は、比較例1で得られた転写成形後の被加工物の凹凸パターンの状態を光学顕微鏡にて撮影した写真である。
【0066】
(比較例2)
比較例2では、
図6(C)に示すように、金型20の凹凸パターン20pが延びる方向が第1の剥離方向D1に対して平行になるように、金型20を金型ホルダ30に取り付け、離型工程において第1の剥離方向D1のみで離型を行った。
図12は、比較例2で得られた転写成形後の被加工物の凹凸パターンの状態を光学顕微鏡にて撮影した写真である。
【0067】
(比較例3)
比較例3では、
図6(D)に示すように、金型20の凹凸パターン20pが延びる方向が第1の剥離方向D1に対して45°になるように、金型20を金型ホルダ30に取り付け、離型工程において第1の剥離方向D1のみで離型を行った。
図13は、比較例3で得られた転写成形後の被加工物の凹凸パターンの状態を光学顕微鏡にて撮影した写真である。
【0068】
(比較例4)
3本の移動ロッドを同時に同じ上昇速度で上昇させて離型した。すなわち、比較例4では垂直離型モードを採用した。
図14は比較例4で得られた転写成形後の被加工物の凹凸パターンの状態を光学顕微鏡にて撮影した写真である。
【0069】
図10〜
図14から分かるように、被加工物に転写形成された微細な凹凸パターンの欠陥率は、実施例1(
図6(A)、
図10)が最も少なく、次いで比較例1(
図6(B)、
図11)が少なく、次いで比較例2(
図6(C)、
図12)が少なく、次いで比較例3(
図6(D)、
図13)が少なく、比較例4(
図14)が最も欠陥率が多かった。
すなわち、被加工物の加工面積に対する欠陥部分の面積の割合で求めた欠陥率は、実施例1(最大2%)<比較例1(16%)<比較例2(35%)<比較例3(39%)<比較例4(60%)という結果であった。