特許第6117025号(P6117025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117025
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   H02K15/02 F
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-139874(P2013-139874)
(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公開番号】特開2015-15796(P2015-15796A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(72)【発明者】
【氏名】小田 仁
(72)【発明者】
【氏名】大田 祐三
(72)【発明者】
【氏名】馬場 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】緒方 萌
【審査官】 柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−136283(JP,A)
【文献】 特開昭54−124845(JP,A)
【文献】 特開平08−057642(JP,A)
【文献】 特開2000−295800(JP,A)
【文献】 米国特許第06477761(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁鋼板から打抜いた鉄心片を複数枚積層して形成した積層鉄心本体を、その積層方向両側から治具プレートで挟持した後、前記積層鉄心本体の半径方向外側の複数箇所で積層方向にわたって溶接する積層鉄心の製造方法において、
前記積層鉄心本体の積層方向一方側端部又は該積層方向一方側端部に接する前記治具プレートに設定した溶接開始点から、積層方向他方側に配置された前記治具プレートへ向けて、アーク放電を行いながら第1の溶接トーチを移動させて第1の溶接ビードを形成する第1工程と、
前記第1の溶接ビードの開始側で第2の溶接トーチによってアーク放電を行い、前記積層鉄心本体の積層方向一方側端部を超えて形成されたビード突出部の除去を行う第2工程とを有することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
電磁鋼板から打抜いた鉄心片を複数枚積層して形成した積層鉄心本体を、その積層方向両側から治具プレートで挟持した後、前記積層鉄心本体の半径方向外側の複数箇所で積層方向にわたって溶接する積層鉄心の製造方法において、
前記積層鉄心本体の積層方向一方側端部又は該積層方向一方側端部に接する前記治具プレートに設定した溶接開始点から、積層方向他方側に配置された前記治具プレートへ向けて、アーク放電を行いながら第1の溶接トーチを移動させて第1の溶接ビードを形成する第1工程と、
前記第1の溶接ビードの開始側から前記積層鉄心本体の積層方向一方側端部に接する前記治具プレートへ向けて、第2の溶接トーチによってアーク放電を行い、前記積層鉄心本体の積層方向一方側端部を超えて形成されたビード突出部の除去を行う第2工程とを有することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
電磁鋼板から打抜いた鉄心片を複数枚積層して形成した積層鉄心本体を、その積層方向両側から治具プレートで挟持した後、前記積層鉄心本体の半径方向外側の複数箇所で積層方向にわたって溶接する積層鉄心の製造方法において、
前記積層鉄心本体の積層方向一方側に設定した溶接開始点から、積層方向他方側に配置された前記治具プレートへ向けて、アーク放電を行いながら第1の溶接トーチを移動させて第1の溶接ビードを形成する第1工程と、
第2の溶接トーチによって前記第1の溶接ビードに連続してアーク放電を行い、前記第1の溶接ビードに連続する第2の溶接ビードを前記積層鉄心本体の積層方向一方側端部まで形成する第2工程とを有することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層鉄心の製造方法において、前記治具プレートは銅製又は銅合金製であることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層鉄心の製造方法において、前記第2の溶接トーチに前記第1の溶接トーチを用い、前記第1工程を行った後、前記第1の溶接トーチのアーク放電を停止して該第1の溶接トーチを移動させ、前記第2工程を行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の鉄心片を積層して形成される積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の固定子積層鉄心又は回転子積層鉄心は、電磁鋼板から打抜いた鉄心片を積層して製造している。この積層した鉄心片同士を接合する方法の1つとして、電極棒からのアーク放電により母材(鉄心片端部)を溶融させて接合するアーク溶接がある。
具体的には、図3(A)、(B)に示すように、積層した複数枚の鉄心片90で形成される積層鉄心本体91の積層方向(軸方向)両端面を治具プレート92、93で挟持して、積層鉄心本体91を加圧した後、積層方向にわたって溶接する。この溶接は、溶接した積層鉄心本体91の品質を安定させるため、溶接の開始点を一方の治具プレート92の側面とし、終了点を他方の治具プレート93の側面として、この間で、図3(B)に示すように、電極棒94を移動させて行い、溶接ビード95を形成している。なお、この溶接の際、治具プレート92、93に電流が流れたときに、治具プレート92、93の発熱を抑制するため、治具プレート92、93を熱伝導性が高い銅等で構成している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−136283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した方法で、積層鉄心本体を溶接するに際しては、治具プレートの外形を積層鉄心本体の外形よりも大きくした場合、積層鉄心本体を形成する積層方向端部の鉄心片が十分に溶接されない溶接不良が発生する。そこで、図3(A)、(B)に示すように、治具プレート92、93の外形を積層鉄心本体91の外形よりも小さくしている。
しかし、電磁鋼板の材質によっては、治具プレートの外形を積層鉄心本体の外形よりも小さくすることで、図3(B)に示すように、溶接の開始側で、アーク放電によって溶融した鉄心材が、積層した鉄心片90の端面から積層方向に突出するという現象が発生する。このビード突出部96は、後工程において干渉物となるため除去する必要があり、この除去作業によって積層鉄心の生産効率の低下を招くだけでなく、除去したビード突出部96が積層鉄心本体91に誤って付着してしまうことで、モータ性能の低下を招くおそれもある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、積層鉄心本体の積層方向端面からの溶接ビードの突出を抑制、更には防止することで、モータ性能の低下を防止した積層鉄心を効率よく製造することが可能な積層鉄心の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る積層鉄心の製造方法は、電磁鋼板から打抜いた鉄心片を複数枚積層して形成した積層鉄心本体を、その積層方向両側から治具プレートで挟持した後、前記積層鉄心本体の半径方向外側の複数箇所で積層方向にわたって溶接する積層鉄心の製造方法において、
前記積層鉄心本体の積層方向一方側端部又は該積層方向一方側端部に接する前記治具プレートに設定した溶接開始点から、積層方向他方側に配置された前記治具プレートへ向けて、アーク放電を行いながら第1の溶接トーチを移動させて第1の溶接ビードを形成する第1工程と、
前記第1の溶接ビードの開始側で第2の溶接トーチによってアーク放電を行い、前記積層鉄心本体の積層方向一方側端部を超えて形成されたビード突出部の除去を行う第2工程とを有する。
【0007】
前記目的に沿う第2の発明に係る積層鉄心の製造方法は、電磁鋼板から打抜いた鉄心片を複数枚積層して形成した積層鉄心本体を、その積層方向両側から治具プレートで挟持した後、前記積層鉄心本体の半径方向外側の複数箇所で積層方向にわたって溶接する積層鉄心の製造方法において、
前記積層鉄心本体の積層方向一方側端部又は該積層方向一方側端部に接する前記治具プレートに設定した溶接開始点から、積層方向他方側に配置された前記治具プレートへ向けて、アーク放電を行いながら第1の溶接トーチを移動させて第1の溶接ビードを形成する第1工程と、
前記第1の溶接ビードの開始側から前記積層鉄心本体の積層方向一方側端部に接する前記治具プレートへ向けて、第2の溶接トーチによってアーク放電を行い、前記積層鉄心本体の積層方向一方側端部を超えて形成されたビード突出部の除去を行う第2工程とを有する。
【0008】
前記目的に沿う第3の発明に係る積層鉄心の製造方法は、電磁鋼板から打抜いた鉄心片を複数枚積層して形成した積層鉄心本体を、その積層方向両側から治具プレートで挟持した後、前記積層鉄心本体の半径方向外側の複数箇所で積層方向にわたって溶接する積層鉄心の製造方法において、
前記積層鉄心本体の積層方向一方側に設定した溶接開始点から、積層方向他方側に配置された前記治具プレートへ向けて、アーク放電を行いながら第1の溶接トーチを移動させて第1の溶接ビードを形成する第1工程と、
第2の溶接トーチによって前記第1の溶接ビードに連続してアーク放電を行い、前記第1の溶接ビードに連続する第2の溶接ビードを前記積層鉄心本体の積層方向一方側端部まで形成する第2工程とを有する。
【0009】
第1〜第3の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記治具プレートを銅製又は銅合金製とすることができる。
【0010】
第1〜第3の発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記第2の溶接トーチに前記第1の溶接トーチを用い、前記第1工程を行った後、前記第1の溶接トーチのアーク放電を停止して該第1の溶接トーチを移動させ、前記第2工程を行ってもよい。
【発明の効果】
【0011】
第1、第2の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1工程において、積層鉄心本体の積層方向に第1の溶接ビードを形成し、第2工程において、第1の溶接ビードの開始側で、又は、第1の溶接ビードの開始側から、第2の溶接トーチによってアーク放電を行い、ビード突出部の除去を行うので、モータ性能の低下を防止した積層鉄心を効率よく製造することができる。
また、第3の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第1工程において、積層鉄心本体の積層方向一方側から積層方向他方側端部に第1の溶接ビードを形成し、第2工程において、第1の溶接ビードに連続する第2の溶接ビードを積層鉄心本体の積層方向一方側端部まで形成するので、ビード突出部の発生を抑制、更には防止でき、モータ性能の低下を防止した積層鉄心を効率よく製造することができる。
【0012】
特に、第2の発明に係る積層鉄心の製造方法のように、第2工程において、第1の溶接ビードの開始側から積層鉄心本体の積層方向一方側端部に接する治具プレートへ向けて、第2の溶接トーチによってアーク放電を行うことで、ビード突出部の除去効果がより顕著になる。
【0013】
更に、第2の溶接トーチに第1の溶接トーチを使用する場合、1つの溶接箇所を1本の溶接トーチで溶接できるため、溶接装置の構成を簡単にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)〜(C)は本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
図2】(A)〜(C)は本発明の他の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
図3】(A)、(B)は従来例に係る積層鉄心の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、図1(A)〜(C)に示す本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造方法を適用して製造する固定子積層鉄心(ステータ)について説明する。
【0016】
固定子積層鉄心は、図1(A)〜(C)に示すように、環状の鉄心片10を順次積層して形成される積層鉄心本体11を有する。なお、積層鉄心本体11を構成する1層の環状の鉄心片10は、周方向に連結部が設けられていない一体構造のものである。
この積層方向に隣り合う鉄心片10同士は、積層鉄心本体11の半径方向外側(外周部)の複数箇所で、積層方向全長にわたって溶接し、複数の第1の溶接ビード12を形成することで結合しているが、例えば、かしめ等を併用することもできる。
【0017】
積層鉄心本体11の第1の溶接ビード12は、固定子積層鉄心の大きさにもよるが、積層鉄心本体11の周方向に等ピッチで、複数箇所(例えば、6箇所以上、更には8箇所以上)設けることが好ましい。
この溶接ビード12は、平面視して積層鉄心本体11の外径(鉄心片10の直径)よりも外方へ突出しているが、各鉄心片の溶接該当箇所に窪み(凹部)を設けて、積層鉄心本体の外径(鉄心片の直径)と同等、又は、それより小さくなるようにすることもできる。
【0018】
続いて、本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造方法を適用した固定子積層鉄心の製造方法について、図1(A)〜(C)を参照しながら説明する。
まず、厚みが、例えば、0.15〜0.5mm程度の電磁鋼板からなる条材から、複数の鉄心片10を打抜く。そして、予め設定した枚数積層することで、積層鉄心本体11を製造する。
【0019】
次に、図1(A)に示すように、鉄心片10を複数枚積層して形成した積層鉄心本体11を、積層方向両側から治具プレート13、14で挟持する。
なお、各治具プレート13、14は、例えば、その厚みが10〜50mm程度、その外径が、平面視して積層鉄心本体11の外径(鉄心片10の直径)よりも小さくなっている(治具プレート13、14に対する積層鉄心本体11の半径方向の突出量は、例えば、0.3mm程度)。また、各治具プレート13、14の材質は、熱伝導性が高い材料(例えば、銅又は銅合金が好ましい)で構成されているが、積層鉄心本体11の溶接箇所の延長部分に該当する治具プレートの箇所のみ、上記した材質とすることもできる。更に、各治具プレート13、14は、水冷構造とすることもできる。
【0020】
そして、治具プレート13、14で挟持された積層鉄心本体11を、更にプレス手段(図示しない)で挟み、積層鉄心本体11を加圧した後、図1(A)に示すように、積層鉄心本体11の外周部を、積層方向全長にわたって溶接する。
なお、溶接法は、溶加材を使用することなく、母材となる積層鉄心本体11(鉄心片10)の外周側端部を溶融させて、積層方向に隣り合う鉄心片10同士を接合する電極棒15(第1、第2の溶接トーチの一例、即ち、本実施の形態では、1本の電極棒15で第1の溶接トーチと第2の溶接トーチを兼用している)を用いたアーク溶接であれば、特に限定されるものではなく、例えば、TIG溶接法やプラズマ溶接法等を使用できる。
以下、溶接の手順について説明する。
【0021】
まず、図1(A)の矢印で示すように、積層鉄心本体11の積層方向上側(積層方向一方側)に設定した第1の溶接開始点S1から、積層方向下側(積層方向他方側)に配置された治具プレート14へ向けて、アーク放電を行いながら電極棒(第1の溶接トーチとして)15を移動させる。
ここで、溶接開始点S1とは、積層鉄心本体11の積層方向上側端部に接する治具プレート13の側面であり、例えば、積層鉄心本体11の上面から1〜10mm程度上方位置である。なお、溶接開始点S1は、積層鉄心本体11の積層方向上側端部の側面に設定することもできる。
一方、この溶接の溶接終了点E1は、積層鉄心本体11の積層方向下側端部に接する治具プレート14の側面である(以上、第1工程)。
【0022】
しかし、上記した方法で溶接を行った場合、図1(A)に示すように、積層鉄心本体11の積層方向上側端部(上側端面)から、溶接ビード12の一部が、積層鉄心本体11を超えてその積層方向に突出することがある。即ち、ビード突出部16が形成される。
このため、図1(B)に示すように、溶接終了点E1で電極棒15のアーク放電を停止した後、この電極棒15を、第1の溶接ビード12の開始側の第2の溶接開始点S2まで移動させる。
ここで、溶接開始点S2とは、溶接開始点S1よりも下方位置(溶接開始点S1の近傍)であり、積層鉄心本体11の積層方向上側端部の側面(ビード突出部16の側面)である(以上、電極棒移動工程)。
【0023】
そして、図1(C)に示すように、溶接開始点S2で、電極棒(第2の溶接トーチとして)15を用いてアーク放電を行う。
このとき、電極棒15によるアーク放電は、溶接開始点S2から、積層鉄心本体11の積層方向上側端部に接する治具プレート13へ向けて、電極棒15を移動させながら行う。なお、この溶接の溶接終了点E2は、治具プレート13の側面である(例えば、溶接開始点S1)。
これにより、ビード突出部16を、確実に溶融除去できるが、電極棒15を溶接開始点S2から溶接終了点E2まで移動させることなく、溶接開始点S2の位置に固定して、溶接開始点S2でアーク放電を行い、ビード突出部16を除去することもできる(以上、第2工程)。
【0024】
次に、本発明の他の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法を適用した固定子積層鉄心の製造方法について、図2(A)〜(C)を参照しながら説明するが、前記した固定子積層鉄心の製造方法とは、溶接の手順のみが異なるため、同一部材には同一の番号を付し、以下、この手順についてのみ説明する。
【0025】
まず、図2(A)の矢印で示すように、積層鉄心本体11の積層方向上側に設定した第1の溶接開始点S3から、積層方向下側に配置された治具プレート14へ向けて、アーク放電を行いながら電極棒15を移動させる。
ここで、溶接開始点S3とは、積層鉄心本体11の積層方向途中位置の側面である。一方、この溶接の溶接終了点E3は、積層鉄心本体11の積層方向下側に配置された治具プレート14の側面である(以上、第1工程)。
【0026】
上記した方法で、第1の溶接ビード17を形成した後、図2(B)に示すように、溶接終了点E3で電極棒15のアーク放電を停止した後、電極棒15を第2の溶接開始点S4まで移動させる。
ここで、溶接開始点S4とは、上記した第1の溶接ビード17に連続してアーク放電を行い、この第1の溶接ビード17に連続する第2の溶接ビード18を形成できる位置であればよく、ここでは、溶接開始点S3よりも僅かに上方位置(溶接開始点S3の近傍)としている(以上、電極棒移動工程)。
【0027】
そして、図2(C)に示すように、溶接開始点S4で、電極棒15を用いてアーク放電を開始する。
このとき、電極棒15によるアーク放電は、溶接開始点S4から、積層鉄心本体11の積層方向上側に配置された治具プレート13へ向けて、電極棒15を移動させながら行う。なお、この溶接の溶接終了点E4は、積層鉄心本体11の積層方向上側に配置された治具プレート13の側面である。
これにより、積層鉄心本体11の積層方向端部から溶接ビードを突出させることなく、第1の溶接ビード17に連続して第2の溶接ビード18を積層鉄心本体11の積層方向上端部まで形成でき、積層方向に隣り合う鉄心片10同士を接合できる(以上、第2工程)。
【0028】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の積層鉄心の製造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施の形態においては、本発明の積層鉄心の製造方法を、固定子積層鉄心の製造に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、回転子積層鉄心(ロータ)の製造に適用することもできる。なお、回転子積層鉄心は、環状の鉄心片を順次積層して形成される積層鉄心本体を有している。
【0029】
また、前記実施の形態においては、第2の溶接トーチに第1の溶接トーチを使用した場合について説明したが、第1の溶接トーチと第2の溶接トーチに別々の溶接トーチを使用することもできる。この場合、第1工程と第2工程を並行して(略同時に)実施できるため、例えば、第1工程の開始直後に第2工程を開始することで、溶接時間の短縮が図れ、積層鉄心の生産効率の向上が図れる。
【符号の説明】
【0030】
10:鉄心片、11:積層鉄心本体、12:第1の溶接ビード、13、14:治具プレート、15:電極棒(第1、第2の溶接トーチ)、16:ビード突出部、17:第1の溶接ビード、18:第2の溶接ビード
図1
図2
図3