(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117042
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】給電用コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
H01R13/11 301D
H01R13/11 302A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-155981(P2013-155981)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-26539(P2015-26539A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】淀川 昭洋
【審査官】
竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−060686(JP,U)
【文献】
特開平10−055836(JP,A)
【文献】
特表2007−531242(JP,A)
【文献】
実開昭57−002582(JP,U)
【文献】
実開昭51−051490(JP,U)
【文献】
実開平03−076374(JP,U)
【文献】
特開2003−308913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
H01R 12/00 − 12/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部を一体に設けた前側躯体及び後側躯体と、
前記前側及び後側躯体を相互に一体に連結する連結部と、
一方の躯体から他方の躯体に向けて延長するように一体に形成され、先端が前記他方の躯体の内側に位置する弾性接触子とを備えた、導電部材からなり、
前記連結部には、前記前側及び後側躯体間の距離を縮めるための曲がり部が形成されていることを特徴とする給電用コネクタ。
【請求項2】
取付部を一体に設けた前側躯体及び後側躯体と、
前記前側及び後側躯体を相互に一体に連結する連結部と、
一方の躯体から他方の躯体に向けて延長するように一体に形成され、先端が前記他方の躯体の内側に位置する弾性接触子とを備えた、導電部材からなり、
前記連結部のうちの1つは、相手側プラグの位置決めを行う馬台となっていることを特徴とする給電用コネクタ。
【請求項3】
前記弾性接触子は内側が凸面となるように湾曲し、前記弾性接触子の先端は相手側プラグの挿入時に前記他方の躯体の内面に当接することを特徴とする請求項1又は2に記載の給電用コネクタ。
【請求項4】
前記前側躯体の前側に相手側プラグと係合する係合部が一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の給電用コネクタ。
【請求項5】
前記前側躯体の前側に差込口を有するフロントカバーが一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の給電用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等の配線接続に用いる給電用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
給電用コネクタは、電力を効率よく伝えるために、相手側プラグと低電気抵抗で接続することが求められている。その要求を満たすために、相手側プラグとの接点を複数にすると共に接点における接圧を高くすることが通常行われている。
図13(A),(B)は従来の給電用コネクタの一例を示す。
図13(A)では多接点接触導電部材52と導体筐体53とからなる給電用コネクタ51がプリント基板30に固着されており、ケーブル45端部の相手側プラグ40を差し込む前の状態が示される。
図13(B)は相手側プラグ40を差し込んだ状態であり、導体筐体53が半断面として示される。従来の給電用コネクタは多接点接触導電部材52と導体筐体53とを備える。多接点接触導電部材52は、両端の円環を複数の帯状体で接続した略円筒形をなし、複数の帯状体が内側に湾曲して相手側プラグとの接点を構成している。導体筐体53は、多接点接触導電部材52円環部分を前後に摺動可能に収容し、相手側プラグが多接点接触導電部材52に差し込まれたときに帯状体が外側に押し広げられて両端の円環部分がそれぞれ離間する方向に移動できるように構成している。また、導体筐体53は、プリント基板30上の端子に、例えば、半田付けにより搭載されている。
【0003】
このような多接点接触導電部材52と導体筐体53とからなる給電用コネクタ51は、相手側プラグとの接点を複数にすると共に接点における接圧を高くするために特殊な構造の多接点接触導電部材52を必要とし、さらに、多接点接触導電部材52を保持する導体筐体53が必要となるため、高価なものとなる。
【0004】
また、下記特許文献1には、金属板の打ち抜き及び曲げ加工からなるパワーポート端子が示されているが、充分な接触圧力を確保できる端子構造となっていない。
【0005】
下記特許文献2には、金属端子部の周囲を絶縁ハウジングで囲ったパワーポート端子が示されているが、絶縁ハウジングを設けるため製造工数が多くなり、コスト高になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平7−506694号公報
【特許文献2】特表2000−504149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、相手方プラグと低電気抵抗で接続する構造を一体的に形成することによって、廉価な給電用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は給電用コネクタである。この給電用コネクタは、取付部を一体に設けた前側躯体及び後側躯体と、前記前側及び後側躯体を相互に一体に連結する連結部と、一方の躯体から他方の躯体に向けて延長するように一体に形成され、先端が前記他方の躯体の内側に位置する弾性接触子とを備えた、導電部材からな
り、
前記連結部には、前記前側及び後側躯体間の距離を縮めるための曲がり部が形成されていることを特徴とする。
本発明のもう一つの態様も給電用コネクタである。この給電用コネクタは、取付部を一体に設けた前側躯体及び後側躯体と、前記前側及び後側躯体を相互に一体に連結する連結部と、一方の躯体から他方の躯体に向けて延長するように一体に形成され、先端が前記他方の躯体の内側に位置する弾性接触子とを備えた、導電部材からなり、
前記連結部のうちの1つは、相手側プラグの位置決めを行う馬台となっていることを特徴とする。
【0009】
前記態様において、前記弾性接触子は内側が凸面となるように湾曲し、前記弾性接触子の先端は相手側プラグの挿入時に前記他方の躯体の内面に当接するとよい。
【0012】
前記態様において、前記前側躯体の前側に相手側プラグと係合する係合部が一体に形成されているとよい。
【0013】
前記態様において、前記前側躯体の前側に差込口を有するフロントカバーが一体に形成されているとよい。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る給電用コネクタによれば、弾性接触子の接触圧力を充分大きく確保して、低電気抵抗での接続を可能とし、かつ全体を一体構造とすることで廉価に供給が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る給電用コネクタの第1の実施の形態を示す斜視図。
【
図2】
図1の給電用コネクタをプリント基板に装着し、相手側プラグを図示した状態を示す斜視図。
【
図8】第1の実施の形態において示した給電用コネクタと相手側プラグとの関係であって、(A)は相手側プラグの挿入前の状態を示す側断面図、(B)は相手側プラグ挿入時の側断面図、(C)は相手側プラグ挿入時の平断面図。
【
図13】従来例であって、(A)は相手側プラグの挿入前の状態を示す斜視図、(B)は相手側プラグ挿入時のコネクタの一部を断面とした斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
図1乃至
図8を用いて本発明に係る給電用コネクタの第1の実施の形態を説明する。これらの図において、給電用コネクタ1は、1枚の導電性の平板からなる導電部材(例えば、銅合金等の金属板)を打ち抜いて、曲げ加工を施すことによって形成されており、前側躯体2及び後側躯体3と、前側及び後側躯体2,3を相互に連結する連結部4,5,6と、前側躯体2から後側躯体3に向けて延長するように形成された弾性接触子7,8,9とを備えている。
【0019】
前側躯体2は方形枠状に折り曲げて形成され、この前側躯体2の前面を覆うように前側躯体2の方形枠状部分の上辺部から下方に折り曲げてフロントカバー10が形成され、
図2の相手側プラグ40と係合する係合部としてのフック11がフロントカバー10の両側から前方に向かって設けられるとともに、フロントカバー10の下部から取付部としてのはんだ付け用リード部12が下方に延長するように形成されている。また、フロントカバー10の下部に別の取付部としてのはんだ付け用パッド13が前方に折り曲げて形成されている。フロントカバー10にはプラグ40の差込口10aが形成されている。プラグ40は、ケーブル45の端部に電気接続されており、円柱状嵌合部41とこの基端側に形成されたフランジ部42とを有している。フロントカバー10の差込口10aは、プラグ40の円柱状嵌合部41よりも大径で且つフランジ部42よりも小径に形成され、プラグ40が差込口10aに差し込まれたときにフランジ42がフロントカバー10に係合する。フック11はフロントカバー10の左右両側に配置されていて、差し込まれたプラグ40のフランジ部42と係合して、プラグ40の抜け出しを防止する機能を有する。
【0020】
連結部4,5,6には、前側及び後側躯体2,3間の距離を縮めるための折曲部が形成されている。すなわち、左右の連結部4,5は外側に凸となるように曲げ加工され、連結部6は内側(上側)に凸となるように曲げ加工されている。このように前側及び後側躯体2,3間の距離を縮めることで、前側躯体2から延びる弾性接触子7,8,9が後側躯体3の内側に入り込むことを可能にしている。連結部6は給電用コネクタ1に差し込まれた相手側プラグ40に当接して上下方向の位置決めを行う馬台(
リッジドラック)となり、補強のために長手方向に楕円形のリブ6aが形成されている。リブ6aはプラグ40に対向する面に凸部となるように形成されている。リブ6aは2つ形成され、それぞれプラグ40下面の左右に当接してプラグ40の左右方向の位置決めを行っている。
【0021】
後部躯体3も方形枠状に折り曲げて形成され、後部躯体3の左右側辺部の下部から取付部としてのはんだ付け用リード部3aがそれぞれ下方に延長するように形成されている。前側躯体2から後側躯体3に向けて延長する弾性接触子7,8,9はいずれも内側に向けて凸面となるように湾曲しており、かつ先端が後部躯体3の方形枠状部分の内側に位置している。
【0022】
図2及び
図8に示すように、給電用コネクタ1はプリント基板30の取付穴31にリード部12及びリード部3aを挿入し、はんだ付けすることでプリント基板30に固定される。また、プリント基板30側に表面実装用電極32が形成されていれば、給電用コネクタ1側のはんだ付け用パッド13も表面実装用電極32にはんだ付けすることで固着される。
【0023】
図2及び
図8(A)のように、ケーブル45の端部に設けられたプラグ40を、給電用コネクタ1のフロントカバー10の差込口10aから後部躯体3方向に挿入することで、
図8(B),(C)のようにプラグ40と給電用コネクタ1との電気接続を行うことができる。
図8(A)の拡大図示部に示すようにプラグ40が挿入される前は、弾性接触子7は後部躯体3の内側に位置しているが、その内面に弾接してはいない。一方、
図8(B)の拡大図示部に示すようにプラグ40が挿入されると、プラグ40の円柱状嵌合部41が弾性接触子7に当接して弾性接触子7を外側に向かって押し拡げ、弾性接触子7の先端が後部躯体3の内面に弾接する。このため、弾性接触子7はプラグ40に接する側が凸面となった実質的に従来の多接点接触導電部材52と同様な両持ちばね(両端が支持されているばね)として機能する。弾性接触子8,9も弾性接触子7と同様に両持ちばねとして機能する。弾性接触子7による両持ちばねの機能によって弾性接触子7と連結部6との間でプラグ40の円柱状嵌合部41を上下方向から挟み込むと共に弾性接触子8,9による両持ちばねの機能によって弾性接触子8と弾性接触子9との間でプラグ40の円柱状嵌合部41を左右方向から挟み込む。これによって、給電用コネクタ1は複数の箇所でプラグ40と接触することが可能となる。さらに、各弾性接触子7,8,9の両持ちばねの機能によって、プラグ40の円柱状嵌合部41に対して充分な接触圧力で接触することが可能となる。つまり、低電気抵抗での接続が可能となっている。また、フロントカバー10の左右両側に形成されたフック11は、挿入されたプラグ40のフランジ部42と係合して、プラグ40の抜け出しを防止する。
【0024】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0025】
(1) 給電用コネクタ1は、導電部材としての1枚の銅合金等の金属板を打ち抜いて曲げ加工を施すことによって形成されており、部品点数が1点であって廉価に供給することが可能で、量産性にも優れる。
【0026】
(2) 前側及び後側躯体2,3間を連絡する連結部4,5,6には、距離を縮めるための折曲部が形成され、前側躯体2から後側躯体3に向けて延長する弾性接触子7,8,9の先端は後側躯体3の内側に位置する。このため、相手側プラグ40が給電用コネクタ1に挿入され、嵌合状態となった時は、弾性接触子7,8,9の先端が後部躯体3の内面に弾接してプラグ40に接する側が凸面となった両持ちばねとして機能し、プラグ40に対して充分大きな接触圧力で接する。この結果、プラグ40との間で低電気抵抗での接続を可能にしている。
【0027】
(3) 連結部6は、相手側プラグ40の位置決めを行う馬台となっており、挿入されたプラグ40の位置を確実に規制することができる。
【0028】
(4) 前側躯体2の前側に差込口10aを有するフロントカバー10が形成され、フロントカバー10の左右両側に係合部としてのフック11が形成されているため、一対のフック11がプラグ40側のフランジ部42と係合して、プラグ40が抜けないように挟持することができる。これにより、給電用コネクタ1とプラグ40との連結状体を確実に維持することが可能となる。
【0029】
図9及び
図10で本発明の第2の実施の形態を説明する。
図9及び
図10の給電用コネクタ1Aと、第1の実施の形態で示した給電用コネクタ1との主な相違点は、前側及び後側躯体2,3間を連絡する左右の連結部4,5を前側及び後側躯体2,3の側面部分の上下に2本ずつ設けた点と、前側躯体2の下部からはんだ付け用リード部12を下方に延長形成した点である。2本に別れた連結部4,4および5,5の間にそれぞれ弾性接触子8,9が位置する。その他の構成は第1の実施の形態で示した給電用コネクタ1と同様である。
【0030】
この第2の実施の形態によれば、前側及び後側躯体2,3間を連絡する左右の連結部4,5が弾性接触子8,9を挟んで2本形成されているため、強度の向上を図ることができる。
【0031】
図11及び
図12で本発明の第3の実施の形態を説明する。
図11及び
図12の給電用コネクタ1Bは
図9及び
図10の給電用コネクタ1Aの前後方向の寸法を短縮したものである。前側及び後側躯体2,3間の連結部4,5,6や弾性接触子7,8,9を短くするとともに後側躯体3の前後の幅を短縮している。馬台となる連結部6には相手側プラグに対向する面に円形の凸部6bが形成されている。その他の構成は第2の実施の形態で示した給電用コネクタ1Aと同様である。
【0032】
この第3の実施の形態によれば、前後方向が短縮された給電用コネクタ1Bとなるため、これを装着するプリント基板側の設置面積を縮小することができる。
【0033】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0034】
各実施の形態では、弾性接触子は前側躯体から後側躯体に向けて延長しているが、逆に後側躯体から前側躯体に向けて延長して先端を前側躯体の内側に入り込むように形成してもよい。また、複数の弾性接触子のうち一部の弾性接触子が前側躯体から後側躯体に向けて延長し、残りの弾性接触子は後側躯体から前側躯体に向けて延長する構成であってもよい。弾性接触子の本数は各実施の形態では3本であるが、本数は適宜増減可能である。
【符号の説明】
【0035】
1,1A,1B 給電用コネクタ
2 前側躯体
3 後側躯体
3a,12 リード部
4,5,6 連結部
7,8,9 接触子
10 フロントカバー
11 フック
30 プリント基板
40 プラグ
41 円柱状嵌合部
42 フランジ部
45 ケーブル